戦うヒロインっていいですよね、でもって戦闘で負傷したヒロインを見て曇る主人公もさらにいいですよね。
呪霊の持つ刀が、真人の両足を素早く斬り落とす。それと同時に真人の両手が鎌のように変化し、呪霊の喉笛を掻っ切ろうと一直線に伸びて行った。
『攻撃が直線的だね、呪術師と戦っていないとは聞いていたけど、本当みたいだ』
「……チッ」
速度は十分、だが軌道を読まれ両手を砕かれてしまう。
(……さっき急に現れたのは、恐らくあの呪霊の術式だ……なら何で術式を使わない?何か条件があるのか?)
術式は使用する際に条件が必要なものもある、例えば真人の術式“無為転変”は真人の手のひらで触らなければ他者へ術式を行使することは出来ない。
(とにかく今は攻めまくるしかない!!)
先程斬り落とされた両足の足首が針のように伸び、呪霊を背後から突き刺そうと襲いかかる……が
『発想はいいね、もう少し速度が速ければ当たっていたかもしれないよ』
死角からにも関わらず、当然のように攻撃を防ぐ。
「……テメェも魂に攻撃できてねえじゃんか、どうすんの?このままじゃ俺の根勝ちだよ?」
『それもそうだね……そろそろ、本気を出すとしようか』
呪霊が刀を鞘へ納め、手印を組む。
『領域展開』
真人と呪霊のいた空間が黒く塗り潰されて行き、開けた原野へと変貌する。
「……まじか」
『先程からこの呪霊の術式を探っていた様だから教えてあげようか』
「……術式の開示ってわけかよ、ご丁寧にどーも」
『この呪霊は慶長の頃に契約してね、その術式は“確実な不意打ちの成功”。けど残念なことに一人に対して一度きりしか効かないんだ』
(……ッ呪霊の姿が消えた!!)
瞬間、真人の左足が斬り落とされる。
「ッ━━━!!!」
『まあ領域内では話が別だけどね』
領域内ではあらゆる術式が必中となる。その為本来一度しか成功しない筈の不意打ちが、領域によって何度だろうと当てることが出来るようになってしまったという訳だ。
『魂を傷つけられたのは初めてかい?』
真人は自身の術式“無為転変”により、魂の形を保つ事で自身へのダメージをゼロにする事が出来る。だが領域内では術式が中和される為、真人への攻撃が効いてしまうのだ。
「……がァッ!!!」
攻撃を当てようと全身から山荒のように針を突き出すが、当たる寸前に全て叩き切られ寧ろダメージが帰ってきてしまう。
(……これじゃ的が広がるだけか、なら今度は)
先程までの青年の姿ではなく5~6歳ほどの少年の姿へと変身し、その場から直ぐに離れた。
『小さくなっても無駄だよ、領域内では術式が必中になるって忘れたかい?』
「ンなこた知ってんだよ、もっと脳味噌使って考えろやカス」
呪霊の斬撃が真人の首へ当たる━━━━その瞬間に真人は反対方向へと跳び、傷を最小限に抑える。
『成程、姿を小さくした代わりに全身の感覚器官を研ぎ澄ませたのかな?不意打ちが成功した判定になった瞬間に避け、ダメージを最小限に抑えたわけだ』
「……何で分かんだよ、ガチキショいなお前」
『ふふ、まるで反抗期の娘のような反応だね…………そう来るなら、少し攻撃の速度を上げてみようか』
先程と同じく真人の首を切ろうと刀が迫り、真人は反対方向へ跳ぶ。しかし先程よりも速度の上がった刀は首を落とすとまでは行かずとも、人間ならば確実に死ぬであろう程の切れ込みを入れる。
「……チッ」
『さて、術式の話が途中だったね……まあつまりは初見であれば、不意打ちが成功するまで、この呪霊は誰にだろうと気付かれることは無いってことさ、たとえそれが五条悟だったとしてもね……まあ彼の場合無下限があるから直ぐに祓われちゃうだろうけど』
そして再度呪霊は姿を消し、今度こそ首を落とそうと刀を振るった。
『先程の不意打ち、いきなり背後に現れたと思ったかい?この呪霊はずっと君に憑いていたんだよ、誰も気付かなかっただけでね』
「━━━━ご高説ご苦労さま!!!」
その攻撃が真人の首に当たる瞬間、領域が崩壊した。
『……なに?』
「忘れたかよ!リーマン術師を逃がした時、俺はどうやって壁を作った!!」
攻撃は当たった、だが当たる寸前に領域が崩壊した為に術式は中和されず、真人にダメージは通らない。
そして呪霊の背後から
『…………分裂か!!!』
「正ッ解!!」
最初の不意打ち、それを食らった瞬間に真人は七海を逃がす壁を作るため、壁の内部の真人と壁で魂を3:7に分けた。壁に魂を割いたのは、壁の強度を上げるため……そして、領域展開をされた際に外側から領域を崩壊させるためだ。
『……この呪霊を今無くすのは惜しいし、ここは私も引かせて貰おうかな』
「させると思ってんのかよ」
二体に分裂していた真人が一人となり呪霊へと向けて最後の一撃を叩き込もうとするが、呪霊は水に沈む様に消えてしまった。
『素晴らしかったよ真人、君の成長を私の肌身で感じられないのは実に残念だけれどね』
「待て、お前順平に手ェ出してないだろうな」
『そんなに心配なら吉野順平を術師にでもしてしまえばいいのに、何故しないんだい?』
「……テメェには関係無いだろ」
『ふふ、そんなに心配しなくとも元から手を出すつもりなんて無かったよ、ただ君と戦うための口実が欲しかっただけさ』
呪霊は消えたと言うのに、何時までも人間の声が下水道の中で響く。
「それなら早く消えろ、不愉快だ」
『つれないね……嗚呼そう、これ』
そう言うと、真人の足元に
「……宿儺の指」
『虎杖悠仁に渡しておいてくれ、彼にはもっと強くなってもらう必要があるからね』
「誰がテメェの言うことなんか」
真人がそう言い返すが、既に下水道からは人の気配が消えていた。
「…………虎杖悠仁、か」
ふと口から零れた……誰に言う訳でもない台詞は、下水道の中で反響したままに消えていった。
オリジナル呪霊に関してはまた登場させるつもりなので解説はその時にします。一応元ネタが居るにはいるんですけど、あって無いような設定なので出すかも怪しいです。