か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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25:魔王と魔王は惹かれ合い、比企谷八幡は胃痛と惹かれ合う。

 東京の安いホテルに一泊して、久しぶりのスーツを着てる俺は、商談をするべく秋葉原のとある店に来ている。

 まさか、探索者になって商談をする羽目になるとは思わなかった。

 いやまあ、サラリーマン時代も商談なんてした事無いんだけどね、管理部署だったし。故に尚更、商談に慣れて無いせいで抵抗がある。

 

「【ワンダーカーテン】にお願い出来ないですかね……仲介料はちゃんと払うんで」

 

「私は全然良いんですけど、比企谷さんが直接売った方が絶対にもっと利益出ますよ?」

 

 目の前に座ってる【ワンダーカーテン】の女性店主──唐ヶ原桃華は優しく指摘してくる。

 商談内容は従魔達と言うか【鎌谷幕府】のグッズを作りたいから、唐ヶ原さんに各企業とのやり取りを任せたいのと【ワンダーカーテン】の方で売って欲しいと言う内容である。

 

 なんで作る事にしたかと言うと、一昨日に遡る。

 『何でも良いからカマクラのグッズを作って! あとサブレのもよろしく!』

 とダンジョンから帰還したら、何故か由比ヶ浜からこんなメッセージが来ていたのだ。

 結構悩んだが、作る事にした。都合よく東京にも来てる事だしな。

 アイツがサブレのグッズを買う事で、寂しさが紛れるなら売ってやろうではないか。

 でも何で由比ヶ浜の奴が、カマクラのグッズも欲しがってるんだ? 俺の遠い記憶だとアイツって猫がそんなに得意じゃなかった気がするんだがな。そこら辺は今度会ったら聞いてみるか。

 

「私事と言いますか……他の企業と商談ってなると、自分の正体を知る人間が多くなるのが面倒と言うか、何と言うか……」

 

 俺のメンドクサイと言う本音を理解したのか、唐ヶ原さんは呆れ笑いを零した。

 

「比企谷さんって、どっかから指名手配でもされてるんですか?」

 

「指名手配って、エリートボッチの俺以上に人畜無害な人そうそういませんよ。しかも今までどちらかと言うと、俺ってカツアゲに遭ったりで、狩られてきた側なんですが」

 

 忘れもしない中学二年生の夏、俺をカツアゲした金髪二人組の不良。次会ったらゴブタニの餌にしてやる。

 

「色々大変だったんですね……」

 

 自虐ネタへの返答に困ってるようで、引き気味の表情を浮かべる唐ヶ原さん。

 ごめんなさいね、自虐ネタでしか人を笑わせられない呪いに掛かってるんです俺。

 大抵はドン引きして、笑ってすらくれないんだけどね。

 

「なんか比企谷さんって、必要以上に秘密主義を徹底してるなって思うんですけど」

 

「それはアレですよ、芸能人とか有名配信者ってプライベート無いみたいなもんじゃないですか。そんなの俺は絶対耐えられないんで、必然的に秘密が多くなるんですよ」

 

「そう思うと私って、比企谷さんが頼れる数少ない人間って事ですよね。これは儲かr、嬉しいですね!」

 

 おい、今この人の目が¥マークにったぞ。しかも儲かるって言いかけたよね。商根が逞しいゴスロリメイドとかギャップ激し過ぎんだろ。

 まあいいや、ここは同調しとこ。

 

「そっすね~、俺も嬉しいですよ。唐ヶ原さんと一緒にアホな信者共から金を搾り取る事が出来て」

 

「言い方が酷い!?」

 

 今度はドン引きされましたわ!

 ちょっと待て、配信者なんてファンを金蔓としか思ってないぞ。ソースは俺とルーメリア。

 ルーメリアの奴、マジ怖いからね。金の無い信徒なんてわたくしには不要ですわ、とか言ってますのよ。

 てか、なんか最近、俺のモノローグがルーメリアのお嬢様口調に侵食されてる気がする……。

 

「とりあえず全然儲けて貰って構わないんで、諸々の制作とか交渉を一任してもいいっすかね」

 

「乗った! 今日は店も休みにしましたし、具体的に詰めていきましょう!」

 

 この人は何故か俺と商談する為だけに、今日の店舗営業を休みにしたらしい。

 流石は商売人と言った所か、大々的に儲けるチャンスだと思ったのであろう。

 俺も個人事業主として、少しは見習わなければな。

 

 出された茶菓子をつまみながら、グッズの展開プランを詰めていく。

 各従魔のTシャツ、スマホケース、ステッカー、キーホルダーと言った定番グッズを千個ずつ作る事に決定。少量では有るが、限定感を出すためにヴァンパイアと狐をモチーフにした純銀ネックレスも30個ほど作る事となった。

 これ経費いくら掛かるんだ……。過剰在庫にならないか心配だ。

 

「こ、これ、本当に千個も売れるんですか……?」

 

 俺の心配を唐ヶ原さんは、ノープロブレム!と大声で吹き飛ばした。

 

「比企谷さん甘いです、あの甘いだけしか取り柄の無いMAXコーヒーより甘いです!」

 

 この人は、マックスコーヒー信者の俺に喧嘩売ってるようだな。

 上等だ。今度この店に来る時は、感謝の気持ちとして沢山持ってきてあげますわ!

 あ、コレが信者の気持ちってやつか。

 

「いやいや、千個づつって過剰在庫になりません?」

 

 そう聞くと、意外そうな表情をされた。

 

「あの、比企谷さん? 一応聞くんですけど、自分のチャンネルの登録者数って知ってます?」

 

 これは随分と舐められたもんだな。そんぐらい知ってんに決まってんだろ。

 

「15万人ですけど」

 

 ドヤ顔で答えてやると、デカイ溜息をつかれた。

 瞬間、背筋に寒気が走る。

 なーんか嫌な予感がすんるですけど。

 

 スマホで鎌谷幕府の登録者数を確認すると、

 

「ご、ごご五十三万人!?」

 

 身に覚えのない数字にスマホを持つ手が震える。

 そこそこ人気があるYouTuber並みの登録者数じゃねえか!

 

 あれ? なんか小町と由比ヶ浜からラインが来てるぞ。

 

『お兄ちゃん五十万登録おめでとう!今度回らない寿司屋でお祝いだね!あ、今の小町的にポイント高い(≧▽≦)』

 

 妹が奢られる気満々な件について。これ絶対に俺が奢るパターンだよね、普通逆だろ。まあちょいちょいスパチャしてくれるし、回らない寿司屋に連れてってやるか。

 因みに俺と大志の経済力の差を見せつけてやるのが目的だ、ククッ。

 

『五十万登録おめでとうヒッキー!職場の皆にオススメしといたよ(^O^)/』

 

 なんだろ、陽キャってオススメ大好きだよな。俺なんて親に一人暮らしをオススメされた事しかねえぞ。

 センキュー、これで送信っと。

 

「……比企谷さん? スマホを見ながらニヤけてどうしたんですか?」

 

「うん? あ、えーと、余りの出来事に、もう笑うしか無くて……」

 

 べ、別に同級生だった既婚女性からラインが来たのが嬉しいとかじゃねえし。ちょっとイケない妄想とかもしてねえし。

 祝いのメッセージが来たのがちょっと意外だっただけだからね。ハチマンウソツカナイ。

 

「あの、まさか心当たり無いんですか?」

 

 いやいや、ある訳無いだろ。

 俺的にはルーメリアとタマエの信者共が結託して、アカウントを量産してんじゃないかと疑ってるんだが。

 そんな事を思ってると、やれやれと言った感じで唐ヶ原さんが回答してきた。

 

「大物配信者を助けたんですから、当たり前じゃないですか。Yahooニュースにも載ってましたよ」

 

 大物配信者と聞いて、雪ノ下姉妹に似た女性の記憶が脳内を駆け巡った。

 あ、西御門か! 思い出したぞ、確かに配信されてたわ。

 二百万登録の配信者だっけ? 絶対その信者共が流れて来てんじゃねーか。

 だがまあ助けて良かったと思う。俺は後少しで、雪ノ下家の関係者を見殺しにする所だった。

 これでやっと雪ノ下家に対して、ある種の償いが出来た気がする。

 

「そう言う理由も有って、鎌谷幕府のグッズを千個作っても必ず売れます! なんなら千個でも少ないぐらいです!」

 

 身を乗り出す勢いで、勝利宣言をしてくる唐ヶ原さん。

 そのせいで顔が近いし、胸元が若干見える。

 小柄な体系にしては、ある方だな。

 しかも紫って、随分と大胆な趣味をしてらっしゃる。

 

「比企谷さんのエッチ」

 

 今度は凄いジト目で見つめてきた。

 どうやらチラッチラッのチラーミをしてたのがバレたようだ。

 だが俺は、伊達に29年間も生きていない。こういう時の為に対策は用意してある。

 

「似合いますね……紫色」

 

「まさかの白状!?」

 

 俺の経験上、こう言うのはさっさと白状して罪を認めた方がいい。

 罪は軽くするに限る。

 それと眼福です、ありがとうございました。

 

「まあ儲けさせて頂くんで、こんぐらいのチラ見せサービスは別に良いんですけどねー♪」

 

 おい、それならもっとガン見すべきだった。

 

「じゃあ大まかなには詰められたんで、あと細かい所で言うと……」

 

 お金と契約に関しての細かい話の内容は以下に要約する。

・【鎌谷幕府】に関する商品制作業務全般を【ワンダーカーテン】に委託する。

・商品制作おける必要経費は予め【ワンダーカーテン】が支払い、その後の売上から回収。

・【ワンダーカーテン】は経費に関する請求書は必ず開示をする。

・【鎌谷幕府】に関するグッズの独占販売権を【ワンダーカーテン】に与える。

・グッズにおける【ワンダーカーテン】への委託料は、【鎌谷幕府】に関する商品の売上の10%。

 

 より詳細な契約書は後日、郵送するから目を通すように言われた。

 うん? 話しの内容的にちょっとこちら側に有利すぎないか?

 まず商品制作に関する業務全般をやって貰える時点で、かなり楽が出来る。

 独占販売権も俺的にはどうでもいい。【ワンダーカーテン】以外に頼もうと思わないしな。

 

「あの、委託料10%と独占販売権だけで良いんですか? 正直、委託料はもっと貰ってもいいですよ。面倒事は全部任せる事になりますし」

 

「確かにこんな丸投げ案件、比企谷さんじゃなかったら30%ぐらいは貰いたいですね」

 

 だがしかし! と人差し指を立てる唐ヶ原さん。

 

「ダンジョン史に伝説を残すであろう鎌谷幕府のグッズ販売権を独占出来るのは、私としては好機! しかも五十万もの登録者を持ってるチャンネルで、宣伝して貰えるのは超ありがたいんです! 比企谷さんは私に丸投げして楽がしたい、私はより利益を追及したい、win-winですっ!」

 

 伝説とか、なんか買い被られ過ぎな気がするんだが……。普通ダンジョン史に伝説を残すのはSランク探索者の役目だろ。

 だがそうか、店の宣伝になるのは確かに唐ヶ原さん的に利益になるな。宣伝は俺のSNSでするから、広告宣伝費は掛からないし、鎌谷幕府のグッズを買いにきた奴は【ワンダーカーテン】の商品も買う可能性が高い。確かにwin-winだ。  

 

「そ、そうですか。なら商談成立って事で」

 

「はい! これからもよろしくお願いしますね!」

 

 唐ヶ原さんと交渉成立の熱い握手を交わす。

 なんで女性の手って、こんなにスベスベしてるんだ。

 手に残った唐ヶ原さんのヌクモリを感じながら、俺は席から立つ。

 

「因みに、従魔さん達の写真をあるだけ全部送って下さいね」

 

 そうか、グッズ制作には必要だよな。

 仕方ない、俺の家族コレクションを送るか。

 

「了解です、じゃあ俺は帰ります」

 

 唐ヶ原さんにエレベーターまで送ってもらった所で、ちょっとした悪戯を思いつた。

 なのでエレベーターが来たタイミングで、空間収納からマッ缶を取り出して、唐ヶ原さんに押し付ける。

 

「友好の証に、故郷の甘いだけのソウルドリンクをあげますよ。それじゃあ」

 

「え、ちょっと比企谷さん!?」

 

 唐ヶ原さんの慌て声を聞きながら、エレベーターが出発する。

 ククッ、栄えある千葉県民としての役目を果たせて嬉しい限りですわ。

 

♢ ♢ ♢

 

 商談が終わり、二時間以上も掛けて富津の家に到着。サイドサーペントとバレットモンキーの納品依頼も無事完了。

 今日はもう充分な達成感もあるので、ダンジョン探索はお休み。

 今は帰り道の途中で、大量に買ったマックのバーガーとポテトを従魔達と一緒に貪りながら、アニメを鑑賞している。

 

『遊戯さん、このデュエルは貰った!』

 

『それはどうかな』

 

 この声、この壮大なBGM、とうとファラオのおでましだ。

 

『来るぞ十代、キングオブデュエリストに眠るもう一つの魂が!』

 

『行くぜ、十代くん! トラップ発動、黒魔族復活の棺!』

 

「マスター、アテムですわー!! アテムが降臨しましたわ! これどっちが勝つんですの!?」

 

 前作で冥界に帰っていたアテムが見れて、ルーメリアはよっぽど嬉しいのか、俺の肩を掴んで凄い勢いで揺らしてくる。

 教えても良いが、これは是非ともネタバレ抜きで見て欲しい。

 そんな事を思ってると、

 

ピンポーン

 

 うん? ピンポン音が鳴ったぞ。来客予定なんて勿論無いし、アマゾンからの品も全部宅配済。

 

ピンポーン、ピンポーン

 

「あるじ様、出ないんですか?」

 

「あー、ちょっと行って来るわ」

 

 なら考えられるのはN○Kの集金。とうとこのド田舎にまで手を伸ばしか、あの害悪腐敗組織め。

 まあいい、「うちにTVはありません」ってガツンと言ってやれば済む話しだ。

 集金人を追い返すべく俺は、ガチャッとドアを開けた。

 

「ひゃっは、」

 

 余りに有り得ないモノを見たせいで、条件反射的にガチャン!と勢い良く閉めてしまった。

 

「ま、ままま魔王おぉぉぉぉおぉぉお!?」

 

 あの人はいつからN○Kの集金人になったんだよ。なんなら集金人が似合い過ぎる! 脅威の集金率120%達成してるだろ!

 いや、落ち着け俺、これはきっと悪い夢だ。昨日陽乃さんを見かけたせいで夢を見てるだけだ。

 必死に自分に夢だと言い聞かせる中、ドア越しから恐怖の戦慄が響いてきた。

 

「比企谷く~ん、魔王って誰のことかな~♪ お義姉さんはお・は・な・しがしたいだけなんだよ~♪」

 

 それ拷問(おはなし)じゃねえか! クッソ、こんなリアルな悪夢があってたまるか!

 と言うか何で所在地がバレた!?

 所在地がバレるようなヘマをした覚えは無いぞぉ!!

 

「それとも、こう呼んだ方が良い?──」

 

──源義経さん♪

 

「ひっ、ヒィィッ!?」

 

 バレてる、全部バレてるぅぅぅぅぅぅぅうう!!

 もうダメだ。魔王の軍門に降るしかないのか俺は!?

 

 全身が恐怖に包まれてると、もう一人の魔王が現れてしまった。

 

「マスター? 魔王って呼んでどうしたんですの?」

 

 違う、お前じゃなぁぁぁぁぁああい!!

 背中のドア越しには現代魔王、目の前には異界魔王。

 マジでなにこのクソゲー? 村人の家で魔王と魔王がエンカウントしようとしてるよ!

 

「その声ってヴァンパイアちゃんだよね? ねえヴァンパイアちゃん、比企谷君に開けるように言ってよ~♪」

 

 陽乃さんの声を聞いたルーメリアは、ギロッと俺を睨めつけてくる。

 

「良い度胸ですわねマスター……真っ昼間から女を連れ込もうだなんて……」  

 

 ルーメリアの腹の底から出てくる低い声のせいで、体中から良からぬ汗が出てくるのを感じる。

 もうイヤだ。今なら自分の意志で気絶出来る気がする。でも気絶したら二度と起きれない気がする。ってソレ死んでじゃねーか!

 

「は~い、比企谷君の女でーす♪」

 

 なに言ってんのこの人? 頭オカシイのん!

 

「……っ!! 話しは後ですわ!!」

 

 数本の血の槍をドアに向けて展開しだしたルーメリア。

 

「る、ルーメリア、一体なにを……!?」

 

「マスターどくんですの! その女を殺せないですわ!」

 

 こいつ、ドアごと陽乃さんを貫く気だ!?

 

「ルーメリアやめるんだ! そんな事をしてはイケない! 大体、俺の女でも何でも無いぞ、本当だ!」

 

「なら何でドアを開けないんですの? やましい関係だからじゃなくて?」

 

 槍は引っ込めてくれたが、未だに疑われている。

 もう腹を括るしかないのか……。

 

「そうだよね~、いやらしい関係じゃないなら開けられるよね、ひ・き・が・やくん♪」

 

 扉の向こう側からは、勝利を確信した魔王の喜声が聞こえてきた。

 なんだこの魔王のサンドイッチプレスは。

 【村人である俺の家で魔王と魔王がエンカウントした件について~何故か異界魔王が家族になりました~】、今時のタイトルを付けるならこんな感じだろ。

 

「はぁ~……開けますよ、開ければいいんでしょ!」

 

 もういい、どんな理由で来たかは知らないが、陽乃さんにはちゃんと話して帰って貰お。

 空間収納から仮面を取り出して顔に付ける

 そして俺は、明るい未来への扉を開けた。

 

「ひゃっはろー、比企谷くん。十年ぶりだね、会いたかったよ」

 

 やっぱ暗い過去への扉だったかもしれない。

 

♢ ♢ ♢

 

 胃が痛い。これ以上の言葉で現状を表現するなら、あえて胃痛が痛いと言わせて貰お。

 なぜこんなにも胃痛が天元突破してるかと言うと、目の前に座ってるダブル魔王が原因だ。

 

「キャー! やっぱ画面越しで見るより凄く可愛い! ねえねえ、ルーちゃんって呼んでいい? ていうかお姉さん家に来ない?」

 

 昔と変わらないウザがられる構い方で、ルーメリアの頬をツンツンする陽乃さん。

 その光景に耐えかねた俺は、空間収納から二錠の胃痛薬を取り出して、そのままマッ缶で口に流し込む。

 ダメだ、薬でどうにかなるタイプの胃痛じゃない。

 ルーメリアの怒りが沸点に達しないのを天に祈ろう。

 

「なんですのこの女!? 凄く鬱陶しいですわ!」

 

 諦めろルーメリア。そもそもお前が「この女が変な真似をしないように、わたくしが隣で監視しますわ」とか言ったのが運の尽きだ。

 やはりスタンド使い同士が惹かれ合うように、魔王同士が惹かれ合ってるのかもしれない。そのせいで俺は胃痛と惹かれ合ってるんだがな。

 

「えー、せっかくルーちゃんに美味しいスイーツを買ってきたのにな~、残念だな~」

 

 わざとらしい口調で、いかにも高そうな箱を見せつける陽乃さん。

 その箱にルーメリアの視線が釘付けになり、喉をゴクリと鳴らした。

 

「ま、魔王ハルノ。同じ魔王同士、特別に仲良くしてあげてもよろしくてよ……?」

 

 おそろしく速い手のひら返し、オレでなきゃ見逃しちゃうね。

 うん、チョッロ! うちの魔王様がマジでチョロイですわ! 

 

「う~ん、わたしって魔王じゃないんだけどなー」

 

 一瞬こちらにチラッと目を向けてきた事で、金縛りに遭った感覚に陥る。この人は特級呪霊かよ。誰か六眼持ちの術師を呼んでくれ。従魔士の俺じゃ無理だ。

 

「まあいっか♪」

 

 はい、と高そう箱を受け取ったルーメリアはホクホク顔だ。

 

「こ、このスイーツは……!? TVで見た予約が2年待ちの五つ星スイーツですわー!!」

 

 箱を開けるとそこには、金粉がふんだんに乗ったショコラケーキが幾つか入っており、スイーツ好き大好きフリスキーのルーメリアはビックリ仰天。

 いや待て、二年待ちのスイーツとかどんなコネで買えんだよ。

 

「お店の人にお・は・な・しをしたら売ってくれたよ♪」

 

 こちらの思考を先回りしたかのように発言された。

 店の人には同情するぜ……。

 

「ゴブゴブ、ゴブ」

訳:旦那、この女なんかヤバイですぜ。旦那が良く言ってる美人局ってヤツですよ

 

 俺を警護するように、後ろに立っていたゴブタニが耳打ちしてくる。

 偉いなこいつ、俺の教えをちゃんと理解しているではないか。感心したぞ。

 

「ねえゴブタニくん、うちの従妹を助けてくれてありがとうね。そんな君には、これをあげる♪」

 

 ゴブタニは袋を受け取り、中身を確認する。中身はシャトーブリアンを使った高級カツサンドが三パックも入っていた。

 うん? いとこって……。あー西御門か。やはり雪ノ下家に連なる者だったようだな。

 にしても雪ノ下家の細胞凄すぎだろ。美人が確定する細胞とか、もう国家遺産に登録した方が良いまである。

 

「ゴブ、ゴブゴブゴブ」

訳:旦那、このお姉さん天使ですぜ

 

 前言撤回。俺の感心を返せ。コイツは間違いなく美人局に引っかかるタイプだ。

 

「ねえねえ、あるじ様。このお姉さんとあるじ様は……ドウイウ、カンケイデスカ?」

 

 隣に座ってたタマエが若干ヤンロリモードになってしまった。

 うぅ、また胃痛がしてきたよ。ハチマン、オウチカエリタイ。

 

「ねえねえタマエちゃん。私ね、陽乃お姉さんって言うんだ♪ ここにはタマエちゃんの比企谷君に、お願い事をしに来ただけだから安心してね。で、これはタマエちゃんへの土産♪」

 

 タマエちゃん()を強調しながら、次はタマエに袋を渡した。

 陽乃さんも伊達に、お姉ちゃんを32年もやってるだけはあるな。年下を言いくるめるのが板についてる。

 そう言えばこの人、もう32歳か。おば、

 

「ねえ比企谷くん、言いたい事でもあるのかな~?」

 

「ひっ!? イヤ、何も無いです!」

 

 笑顔で殺気を飛ばしてくんなよ、チビっちまうだろ。なんならチビったわ。ここまで来ると、もう思考を読まれるのには慣れたわ。 いや、やっぱり慣れないし、怖いですわ!

 

「わー……お稲荷さんがいっぱーい!」

 

 タマエが貰った袋には、浅草の高級いなり寿司が沢山入っていた。

 いま理解した。この人、鎌谷幕府の動画を隅から隅まで見聞していやがる。

 余りにも従魔達の好みに詳し過ぎる。戦いは始まる前から負けてたと言うのか。

 

「はるのお姉さんありがとー! あるじ様、はるのお姉さん凄く良い人です!」

 

「ソ、ソウダネー……」

 

 別に俺も悪い人だとは思って無い。少し拗れてるだけで妹思いの優しい人だとは思う。俺が勝手に苦手意識を持ってるだけだ。

 

「うんうん、どういたしましてタマエちゃん。因みにお姉ちゃんって呼んでも良いからね、むしろ推奨!」

 

「はーい、はるのお姉ちゃん♪」

 

「キャー!タマエちゃんも凄く可愛い!ねえねえ比企谷君、タマエちゃんとルーちゃんを預からせ、」

 

「ダメですよ、絶対渡さないですからね」

 

 余りにも早い即答をしてやると、ちぇーと言いながら、あざとく頬を膨らませる陽乃さん。

 この人なにうちのアイドル2人を、ちゃっかりお持ち帰りしようとしてるの。マジで油断できねえわー。

 何より恐ろしいのは、この短時間でほぼ全員を懐柔した事だ。

 因みにカマクラとサブレは、とっくに高級ドックフードと高級キャットフードで陥落してるよ。

 

「所で、そこに隠れてないで出ておいでよ、ソフィーちゃん。取って食ったりしないから♪」

 

 俺の胸元に隠れていたソフィーが恐る恐る出てくる。さっきから胸に感じてたべちゃべちゃ感がやっと無くなったよ。

 普段は人見知りなんかしないソフィーだが、魔王はるのんから何か良からぬモノを感じたのかもしれない。

  

「ソフィーちゃん、おいで。良い物あげるから」

 

 もう逃げれ無いと思ったのか、ソフィーは陽乃さんに向かって跳ねた。

 

「あ……」 

 

 揺れた、プルンって。

 いま俺の目の前では、三つのモノがプルンプルン揺れている。

 事もあろうに、陽乃さんの胸の上に着地してしまったのだ。

 ソフィー、似てるけど、それはお前の仲間じゃないぞ。目のやり場に困るから早く降りるんだ!

 

「へ~スライムって生で見ると可愛いね。プルンプルンなソフィーちゃんにはこれをあげちゃうぞっ♪」

 

 陽乃さんは青く輝く綺麗な石を取り出すと、ソフィーに渡した。

 なんだあの鉱石? なんか見覚えが有るような、無いような……。

 次第に石は溶けていくように、ソフィーの中に取り込まれた。

 

「何を渡したんですか……?」

 

「うん? ミスリル鉱石だけど?」

 

「…………」

 

 ミスリルって、一キロ当たり五百万する、あのミスリルかな? いやいや、そんなばっかなー☆

 

「えと、なんかミスリルって聞こえた気が……」

 

「だから、正真正銘のミスリルだってば♪」

 

 本物だったよ! この人ここ十年でボケたんじゃねえの!?

 でも、どおりで見覚えがあったはずだ、ルーメリアの大量に保有してる鉱石コレクションから見せて貰ったからな。

 

「失礼な事を考えてると、流石のお義姉さんでも怒っちゃうぞっ☆」

 

 だから俺の思考を読むなよ。怖ぇから、マジ怖い、あと怖い。

 しかもお姉さんのイントネーションがオカシイ気がするのは、俺の気のせいか?

 何とも言えない恐ろしさを感じてると、ソフィーが陽乃さんの頭に乗っかった。

 

「プルプル」

訳:この人、良い人だった

 

 お前もか、ソフィー……。

 人心掌握だけじゃなく、魔心まで掌握するとかどんだけ凄いんだよこの人。

 

「そんなに喜んでくれると、こっちも嬉しくなるね~」

 

 これで俺の従魔が全員懐柔されてしまった。

 まだエルランがいるが、アイツは俺の部屋に引きこもってるから頭数に入らない。

 

「それでさ、比企谷君。本題があるんだけど」

 

「…………ちょっと待って下さい」

 

 従魔達全員にビジネスの話しをするから二階に行くように伝えると、全員お口をモグモグしながら行ってしまった。どんだけ食い意地張ってんだよアイツら……。

 てか、陽乃さんを無害認定したからなのか、案外素直に従ったな。

 

「やっと二人っきりで話せるね……心配してたんだよ……比企谷くん」

 

 凄く大切に、慈しむように、それでいてどこか後悔を感じさせるような口調で語り掛けてきた

 

「……っ!?」

 

 そして剝がれた。いや、正確には自ら剥がした。

 雪ノ下陽乃は、以前よりバージョンアップした仮面をあっさりと外したのだ。

 この人のこんな表情は初めてだ。だが何故、俺の前で外した?

 

「こうでもしないと、比企谷君は物理的に外してくれないでしょ?」

 

 俺は迷いながら自分の付けてる仮面に手を添える。

 

「未だに、貴女に……いえ、あなた方にどんな顔をして会えば良いか……分からないんですよ」

 

「ねえ、雪ノ下家は誰も比企谷君を責めて無いんだよ? いつまでも自分自身を責めるのはもう辞めない?」

 

 分かってる。雪ノ下家が誰も俺を責めてないのは、心のどこかで理解してたさ。

 でも、もう何もかもが今更なんだ。雪ノ下家の全員がどんだけ俺を庇っても、俺は自身を許せない。

 期待を裏切った上に、雪ノ下を心無い言葉で傷つけた俺には雪ノ下家と関わる資格は無い。

 

「陽乃さん、わざわざ俺に優しい言葉を言う為だけに来た訳じゃないですよね? 目的は何ですか?」 

 

「そうだね、じゃあまずは」

 

「……」

 

 あの雪ノ下陽乃が村人なんかに深々と頭を下げてる光景が、俺を酷く動揺させてくる。

 本当、一体なんなんだよ……。

 

「比企谷君。大切な従妹を助けて頂き、雪ノ下ホールディングス役員として……いいえ、雪ノ下陽乃として心から深く感謝します」

 

 …………辞めてくれ、そもそも俺は見捨てる気満々だったんだ。顔があんた達に似てなかったら確実に見捨てていた。

 到底感謝されるようなヒーローなんかじゃない。

 

「辞めてくださいよ……。西御門にも言いましたが、その件はゴブタニのお陰です。それに……動画をカットして貰う事で手打ちにした筈ですよ」

 

 彼女は顔を上げる。その真剣な瞳は俺を映している。

 

「だとしても、比企谷君と他の従魔達も四季乃ちゃんの為に命懸けで戦ってくれた。だからこの感謝は私、家族としての自己満足。いらないなら勝手に捨てて貰って構わないよ」

 

 目の前に細い紙を置いてきた。その紙には雪ノ下陽乃個人の印鑑が押されており、値段が書かれている。

 一、十、百……一千万って、これ小切手じゃねえか!? っべー、相変わらずブルジョワですわ。

 

「捨てて良いって言われても……」

 

 要らないと言っても、この人は引き下がらないだろうな……。

 

「分かりましたよ、一応貰っておきます」

 

 有効期限は一年と書いてある。使わなければ良いだけの話しだ。

 

 小切手を空間収納にしまう。それを確認した陽乃さんは、ターンエンドすること無く話しを続ける。

 

「それと今から言うお願いも、私のワガママ……ねえ比企谷くん、よりを戻せとは言わない、昔みたいに仲良くしろとも言わない。でもお願いだから雪乃ちゃんと話して、お互い前に進んで欲しいの」

 

「……」

 

 本当にアンタは昔と変わらず、妹思いの優しいお姉ちゃんだよ……。 

 今の陽乃さんのお願いで、雪ノ下の現状が何となく理解できた。こんな未練が刺激されるような事は理解したくなかったよ。

 アイツも俺に未練がある。嬉しいよ、凄く嬉しい、海に向かって叫べるぐらい嬉しいわ。

 

 だが、俺には素直に喜べない理由がある。

 俺は探索者、いつ死ぬか分からない……いや、これはただの言い訳だな。

 本音は、養うべき家族が俺にはいるって事だ。仮に雪ノ下と仲直り出来ても、家庭と両立が出来る気がしない。

 もう何もかもが、遅かったんだ。

 

「近い内に……責任は果たしますよ、約束します」

 

 最後に、雪ノ下雪乃に対して果たすべき責任。人生を歪める権利、その権利を正しく放棄しなければならない。

 それが俺の……最も愛してる女性への果たすべき最後の責任だ。

 

「そう。じゃあ、ワガママもお願いも終わり。ここからは雪ノ下ホールディングスの役員として、ビジネスの話しをするね」

 

 みるみるうちに強化外骨格が形成され、陽乃さんの顔がにこやかになった。

 なんだこの千変万化は。背筋が凍るからやめて欲しいんですけど。

 

「マジックスチールタートルのドロップ素材を三個お願い出来ないかな~比企谷くん♪」

 

 指を三本立てて、こんだけ払うから、と言う陽乃さん。

 

「三十万も……」

 

「なに言ってるの? 三百万だよ?」

 

「は!?」

 

 急いでスマホで調べる。検索エンジンに『マジックスチールタートル 素材 値段』と入れる。

 わーお、ドロップする甲羅の売却値が一つ八十万だ。色を付けてプラス二十万って事か。

 だがダメだ。社畜になってしまう気がする。

 

「いやいや~、俺ってEランクなんで力不足じゃないですかね~、雪ノ下ホールディングスお抱えの探索者に頼んだ方が良いですって……HAHA」

 

「またまた~そんなでまかせ言ったって無駄だよ。猫ちゃんがいるじゃな~い♪」 

 

 ちゃんとカマクラの戦闘力を理解していやがる。

 

「この案件、強ければ良いって訳じゃないのよ。空間収納を持ってる比企谷君にしか頼めないんだよね~」

 

 改めてスマホをもう一度眺める。

 ああ、成程。ドロップしたとしても、甲羅が物凄く大きい上に重過ぎるのか。運搬には三人と専用の台車が必要と書いてある。

 本来であればサポーターを雇うだけでもかなりの人件費が掛かる。だが俺に依頼すれば、色を付けたとしても安く済む。大方こんな所か。

 よしここは、仕事で予定が埋まってるから仕方ないよね作戦、で行こう。

 

「いや~俺ってこう見えて引っ張りだこなんですよ。半年先まで予や、」

 

 だが魔王は、俺の言い訳をぶった切る。

 

「うっそだ~、あの夜明けの勧誘を蹴っておいてよく言うよ。だいたい動画でも誰とも組まないって言ってたじゃん♪」

 

 くっ、動画での発言が全部裏目に出ていやがる。てか夜明けって、やっぱそんな有名なのかよ。

 次なる手を考えてると、リビングの扉が開いて、幼女と少女が騒がしく寄ってきた。

 

「あるじ様、受けましょう! はるのお姉ちゃんが可哀想です!」

 

「そうですわマスター。いつものちんけな依頼よりは、こっちのが高収入ですわよ」

 

 この子達、貰ったお土産を凄く気に入ったようだな……。

 

「流石はルーちゃんとタマエちゃん! 比企谷くんが儲かればいっぱい美味しいモノ食べれるよね~」 

 

 源義経、富津合戦にて敗れたり!

 四面楚歌。離間の計。流石だ魔王、完敗だ。

 これで理由なく断れば、従魔達からはケチなマスターだと思われかねない。

 

「分かったから、お前達はこれを持って庭でサブレと遊んでなさい。じゃないと本に入れちゃうぞ」

 

 従魔二人にフリスビーを渡して庭に行くように、と追い返す。

 再度、席に座って魔王との会談に臨む。

 

「で、陽乃さん。荷物の量的に依頼はそれだけじゃないですよね?」

 

 陽乃さんの横にある雪ノ下HDのロゴが書かれてる袋に目を向ける。

 一体アレに何が入ってるんだ……。

 

「話が早くて助かるよ、比企谷くん」

 

 ガサガサと、取り出した物を机の上に置く陽乃さん。

 うん、なんだこれ? 見た事が無いお菓子だな。

 

「これを是非とも鎌谷幕府でレビューして欲しいんだよね。ギャラは100万でどう?」

 

 レビュー案件かよ。俺は一体いつから本格的にYouTuberになったんだ……。

 

「それこそ超有名人の従妹さんに頼んで下さいよ……」

 

「勿論、弊社お抱えの探索者達にも頼んでるよ」  

 

 聞けば広告宣伝費が思った以上に余ってるから、使っておきたいらしい。

 

「とりあえず食べてみてよ♪」

 

 ポップなパッケージを破く。水色のグミみたいなのが出てきたので、口に入れて咀嚼してみる。

 

「……美味い」

 

 シュワシュワしてる。例えるなら、サイダー味のグミ。

 売ってたら普通に買うわコレ。 

 

「これね、弊社が開発したダンジョン用のエネルギー携帯食品。どう、美味いでしょ? あ、因みに開発したのはなんと! 雪乃ちゃんです!」

 

 そうか、俺は空間収納があるから忘れがちになるが、普通は質素なエネルギー食品で我慢しなきゃイケないんだよな。

 それにしても、これ雪ノ下が開発したのか。俺なんかより全然ダンジョン産業に貢献してるな。

 

「そうですか……了解、次の配信で宣伝しますよ」

 

 まいいや、グッズの宣伝と併せて次の配信のネタが出来たわ。

 話も終わった事だし、魔王にはお帰り願おうか。

 

「それじゃ、帰りはあちらです。気を付けて帰って下さいね」

 

「え~、久しぶりに会ったんだからもっとお義姉さんとお話しようよ~」

 

 会ったんじゃなくて襲来の間違いだろ。血が流れなくて本当に良かったわ。

 

「せっかく静ちゃんの面白い武勇伝を用意してきたのにな~」

 

 なにそれ、めっちゃ聞きたい!

 俺はスマホで予定の確認をするフリをする。

 

「あ~、もうちょい時間ありますね」

 

「そう来なくっちゃねっ! 面白いのがさ……」

 

 結論を言うと、平塚先生は現在、総武高に帰ってきており教頭に昇格したらしい。

 教頭になるまでの経緯としては、総武高を離任したあとに、巣頭乱高校と言う東京にある関東一の不良校に赴任したとの事。

 で、そこにいるヤンキー全員を、奉仕の精神溢れる好青年に更生させた。

 しかも、巣頭乱高校の偏差値を38から52まで底上げするのに成功。卒業生達からはGTH(グレートティーチャーヒラツカ)の愛称で親しまれてるとの事。これらの功績が認められて、特別扱いで教頭になったらしい。

 

「あの人、凄すぎだろ……」

 

「だよね~、ヤクザに捕まった教え子を救出しに、相手の事務所に単車で突撃したらしいよ」

 

 漢だ、リアルGTOだ、と言うか強い。

 平塚先生の人生だけで映画が一本作れるぞ。

 

「しかも、そこの組長に惚れらて求婚されてるみたいだね」

 

 いや、もうその人と結婚しろよ平塚先生。

 

「相変わらず未婚なんですね……」

 

「未婚、ミコン……ミコン……ミコン……」

 

 なんか陽乃さんがブツブツ言い出したんだけど。なんなら若干強化外骨格が剝がれてるんだが……。

 

「え? 聞こえないんですけど」

 

「聞いてよ、比企谷くん!」

 

 ドン、と机を大きく叩いた。

 怖い。いきなり叫びだしたんだけど、この人!?

 

「き、聞くだけ聞きますよ……」

 

 結局俺は気圧されて、陽乃さんが三年間付き合った彼氏に捨てられるまでの話を、一時間近く聞かされる羽目になった。

 まあ端的に愚痴をまとめると、陽乃さんは元カレに『もう君に振り回されるのはウンザリだ!俺は自由になる!』と言われたらしい。

 うん、聞いた感じ陽乃さんが悪いな。

 

♢ ♢ ♢

 

番外編:Let'sロリロリダンシング!

 

 俺は今、気が進まない仕事をしている。まあ、そこまで気が進まないかと言われると、そう言う訳でも無い。何故なら面白くて可愛い映像が撮れそうな予感がするからだ。ククッ

 

「「あるじ様(マスター)、本当にこれ踊るんですか?(ですの?)」」

 

「あのな、元はと言えば、お前達がダンジョン配信以外の撮影もしてみたいって言ったのが原因だろ」

 

 そう、うちのルーちゃんとタマエちゃんが「企画系の撮影もしてみたい!」と言ったのが原因だ。

 なので俺が二時間で考えた企画を現在、撮影中だ。

 

「ほら、この音楽に合わせて踊れ」

 

 そう言って俺はサビの部分を流すべく、YouTubeの再生ボタンを押した。

 

『せーのっ! 触ったら逮捕! 極チュで点呼! いちにーさんしー?ごめんなさい! ハァ?ゴメンナサイが聞こえなーい♪え~! しゅく・せい!ロリ神レクイエム~♪』

 

「やっぱりマスターはロリコンですわ!」

 

「あるじ様は小さい子が好き……てことは私の事が大好き!」

 

 どーも最近ロリコンに目覚めた比企谷八幡でーす☆とでも言うと思ったか。

 俺は至ってドノーマルだ。

 

「あのな、お前達の魅力を最大限に引き出せるのがこの曲だ。これで踊ってみた、を出せば十万再生以上は絶対に行く」

 

「まあ良いですわ、マスターがそこまでお願いするなら特別に踊って差し上げますわよ」

 

「あるじ様の頼みなら、わたし頑張ります!」

 

 いや、だから君達がやりたいって言ったんだよね? これだと俺が、凄い撮りたがってるみたいじゃん。うちの従魔達がニワトリですわ。

 

「まあいいや。よし、始めるぞ」

 

 音楽を再生っと。

 音楽に合わせて踊っていく二人を撮りながら俺は思った、超可愛い!と。

 ヒャッホー!やっぱり小さい子は最高だな!

 

 おっと、スパッツがチラーミしたぞ。まあ可愛いから何でもいっか。

 軽くキャラ崩壊しかけながら、三度目の撮影をし終える。

 おお、段々クオリティーが上がっていってるぞ。

 

「次で最後だ。フハハハ! 可愛いぞー、凄いぞー、最高だぞー!!」

 

「マスターがキモイですわ……」

「あるじ様が壊れた……」

 

 なんかゴキブリを見るような目で見られてる気がするが、今更だ。なんならゴキブリに失礼まである。

 

 幸せを嚙みしめながら撮影終了。

 俺は二人の可愛いダンス映像の編集に入る。

 

 うぅ、勢いで編集ソフトを入れたのわ良いが、全く分からん。

 はぁ、音源はどうやって挿入するんだ……。動画編集が難しい。

 

 あれこれググりながらやってたら、カーテンの隙間から日差しが入ってきた。

 気づけば、お日様がやっはろーしてるんだが。いつ間にお月様のターンが終了してたんだ……まあもう今更だ。

 えーと、これでこうしてっと。よし、編集も終わって動画の投稿も完了! もう今日はダンジョンお休み!

 

 結局ダンジョンに行く事なく、俺は睡眠を優先した。

 

・・・・

・・・

・・

 

「ふぁ〜今は……昼の13時か。結構寝たな……」

 

 次第に脳が目覚めていき、動画を投稿したのを思い出した。

 

「そうだ、確認確認っと」

 

 一、十、百……っておい、ミリオン再生達成してんじゃねえか! 流石は、我がパーティーのアイドル二人だ。マスターとして鼻が高いぞ。

 コメント欄には、やっぱり嫁ニキはロリコン野郎だ、とか書いてあるが気にしない。そんな事を気にしてたらこの界隈で生きていけないからな。

 

「うん? なんだこのメッセージ」

 

 Xで俺のアカウント宛に外国語でメッセージが来てるので、グーグル翻訳に掛ける。

 

『我々は全世界のロリコンをマークする会です。我々は貴方をロリコンと認定します』

 

 oh……。色々と調べたらちゃんと活動してる会だった。

 どうやら俺は世界規模の会から、ロリコン認定されてしまったようだ。

 だが、いくら世界規模と言えど、ちゃんと訂正してやらないとな。

 

 ロリコンじゃなくシスコンと言え、これで送信っと。

 メッセージを打ち終え、今日も従魔達との楽しい楽しい日が始まった。




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