現在、俺とカマクラは裏庭ダンジョンに来ている。
ダンジョン内を歩いてると、俺はこれからのダンジョンを攻略する上での方針を思い付いたので相棒に伝える事にした。
「良いかカマクラ。ダンジョン攻略は慎重に慎重を重ねた上で慎重を加速させるぞ。分かったな?」
「にゃ〜にゃ〜」
「何? 芋り過ぎだと? いやいや、命を最優先にするのは当たり前だろ。適度に稼いで、適度に魔石を食う、それで問題無いだろ」
「にゃ」
素っ気無くあっそ、と言われた。コイツ本当に大丈夫かよ。いくら強くても過信は良くない気がするんだけどな……。
カマクラに不安を覚えてると、俺は少し離れた先に2体のゴブリンが居るのを目視したので、バットを構えた。
「俺が陽動役に回るから、お前は隙を見て奇襲をk……」
「にゃっ!」
作戦を聞く前にカマクラが敵目掛けて飛び出した。そして、
「「ギィ……!?」」
首が宙を舞った。昨日と同様カマクラが瞬時に切り裂さいてみせた。
ゴブリン相手に作戦を立てるのはもう辞めよう。
「もうゴブリンはお前に任せるわ………」
「にゃ〜♪」
カマクラを撫でて、俺はゴブリンからドロップした小魔石、牙、布みたいなのを拾ってリュックに入れる。魔石の1つをカマクラに渡すとペロリと飲み込んだ。
「にゃぁ?」
カマクラは、1つだけ?みたいな表情を俺に向けてくる。
「申し訳無いとは思うが、俺も試したい事が多いんだ。魔石を少しは譲ってくれると助かるんだが……ダメか?」
「にゃっ!にゃ!」
カマクラは前足で地団駄を踏んで、地面に亀裂を入れまくる。まるで寄越さないとお前にも亀裂を入れるぞと言われてるみたいだ。
コイツ、魔石が絡むとかなり凶暴だな!?
「分かった、分かったから怒るなって! 今夜はお前にステーキを作るから。なっ? 良いだろ?」
「にゃ? にゃー!」
飛んだり跳ねたりで嬉しさを表現する辺り、飯さえ豪華にすれば大抵の事は許してくれそうだな。カーくんチョロいぜ。
「お、4体いるぞ」
足音が聞こえてきたので、音が鳴る方に目を向けると、4体のゴブリンがノロノロと歩い来ていた。
「にゃ……?」
カマクラが飛び出す直前に首根っこを掴んで制止させる。
「カマクラ、面倒を承知で頼む。一体だけ殺さずに瀕死状態に出来るか?」
「にゃぁ……」
まぁ良いけど、と言った感じに首を縦に振ってくれたので、俺はカマクラを離して「行ってこい」と送り出す。
「「「ギィ……!?」」」
3体の殲滅を確認。バットを握る手に自然と力が入り、俺は何回か深呼吸をして覚悟を決める。
「よし、やるか………」
カマクラが一匹のゴブリンの両腕を切り落として瀕死にしてくれたので、俺はそいつの前へと出た。
「ギィ……ギィ……」
これは忖度の無しの命の奪い合い。そしてこのゴブリンは虫の息だ。ビビる事は無い、ここはダンジョンで殺らなきゃ殺られる。
「こっちも生きる為なんだ……許してくれ」
そして俺は、全力で敵の顔面目掛けてバットを振りかぶって、頭部をグシャッと潰した。
━━━最悪の感触だ。
バット越しに命を奪う感覚、これが命の奪い合いってやつなのか。慣れない内は悪夢にうなされるかもな。
「にゃ? にゃ」
カマクラは俺の足をポンポンしてくる。ニュアンス的に「大丈夫か? まぁ元気出せよ」言ってるのであろう。
「ありがとうなカマクラ、心配してくれて」
俺は感謝を込めてカマクラの頭を撫でまわす。
従魔士の戦略として、従魔に敵モンスターを瀕死に追い込んで貰ってからトドメを刺す。多分これが従魔士の正しいレベル上げの筈だ。
「にゃ〜」
俺はドロップ品を拾い終わり、カマクラは3つの魔石を飲み込んだ。
「もう少し頑張るか」
恐怖心に飲まれないように自分を鼓舞し、歩みを進める。
それからはルーティンだった。ゴブリン共を見つけてはカマクラが突っ込んで殲滅する。瀕死の一体を俺が倒して、最後にドロップ回収。
「にゃ!」
カマクラがゴブリンの集団を壊滅させた時だった。
「……なんだ今の?」
【斬鉄爪】と言うワードが脳裏を過ぎったのだ。
「カマクラ。斬鉄爪って技は使えるか?」
「にゃ!」
首を縦に振るって事はカマクラのスキルか、考えられるのはカマクラがレベルアップして獲得。従魔がスキルを獲得すると従魔士に分かるようになってるのかもな。
「よし、試しにあのデカイ岩石にやってみようぜ」
「にゃぁぁぁぁあ!」
指示するとカマクラは爪を光らせ、大岩を縦5本に切り裂いて見せた。
「……流石っす、カマクラの兄貴! 一生付いて行きやす!」
ここまでカマクラが強すぎると、俺は全力で補助に回った方が良さそうだな。
「にゃ〜♪」
俺の三下ムーヴが気に入ったのか、凄く上機嫌だ。カマクラのお陰でゴブリンのドロップ品も大量に手に入れたし、結構な金になると思われる。
あれ? 俺ってカマクラのヒモじゃね? これだともうどっちが飼い主か分かんねぇよ。
「なぁまだ魔石食いたいか? 俺は腹が減ったんだが……」
「にゃ〜」
出口方向に向かって歩き出したって事はカマクラも帰りたいらしい。
「今日はステーキだ。楽しみしててくれよ」
昨日千葉市で買った肉を使って、約束したステーキを作るか。ステーキを食べれるかは知らないが、魔獣化してるし大丈夫だろ。何よりカマクラが食いたがってるし。
「にゃ〜」
カマクラが肩に乗ってきて、俺に肉球を向けてきた。
「なんだ、タッチがしたいのか? ほれ、これからも宜しくな相棒」
俺の拳とカマクラの肉球でグータッチをして、俺達は裏庭ダンジョンから帰宅した。
♢ ♢ ♢
「売却で考えると、ざっと合計で7万って所か」
ここ5日間の戦利品をスマホで調べながら日本円換算して分かったのは、ゴブリンからドロップした布は120円、牙が350円、10回に1回は出てくるゴブリン肉が3000円だ。ゴブリン肉なんて誰が食うんだよと思うが、世の中にはゲテモノマニアがいる事を考えると納得出来る。
因みに魔石はサイズ毎に極小が100円、小が500円、中が1000円、大が1万円、極大が10万円らしい。魔石の値段なんて俺には関係ないけどな。大体エサとして消えるから。
「不思議なのはドロップ率100%って事か……」
調べた中で1番驚きなのは魔石は確定だが、それ以外のドロップ率が低確率って事だ。
カマクラが倒すといつも確定ドロップするのは何でだ? てか、俺が倒しても確定で出てくるぞ。
カマクラが元々何かしらのパッシブスキルを所持してるか、あのダンジョンが特殊ってのが俺の推測だ。新しくカマクラに発現するスキルは俺の脳内に流れてくるが、元々からあるスキルは確かめようが無い。
「つーか、カマクラがダンジョンデビューした時って、俺まだ一般人だったよな……」
多分だが初めて魔石を食った時に、なんかしらのスキルを手に入れてる。
もう悩んでても仕方無いので『探索者 鑑定して貰う』と打ってスマホで検索する。
検索結果としては、簡易鑑定は役所でも出来て、普通の鑑定は探索者協会本部にいる鑑定士に直接依頼するか、知り合いの鑑定士にお願いするしかないようだ。で、探索者協会で依頼する場合は1万円掛かる。
「金払うのは良いけど、カマクラの存在がバレるのが嫌なんだよな〜」
俺は別に目立ちたい訳じゃない。ひっそりと生活費が稼げればそれで良い。初の高レベル従魔を従える従魔士って騒がれるのは御免だね。
「鑑定は今度にして、今は金策をしないとな」
ここ数日で色々調べた金策方法は主に5パターンある
1.探索者協会が仲介する依頼を受ける。
これが1番オーソドックスだ。
2.どこかの企業と契約を結び、専属の探索者になる。
これはBランク探索者ぐらいの実力を付けないと声が掛からない。
3.配信キューブと言われる物を買って、ダンジョン配信をする。
これは顔に自信があるか、相当バズる事をしなければ厳しいので論外。
4.日雇いのダンジョン攻略に参加。
これは従魔士を求めるパーティがいないので無理。と言うか俺にはカマクラがいるから悲しくなんか無いんだからねっ!
5.ドロップ品を集めて売却。
俺らがやってるやつね。
「やっぱ、パターン1と5の掛け合わせだよな〜3は論外で、2は実力があったとしても社畜になる未来が見えるからもっと論外だわ〜」
思い立ったら即行動。俺は探索者協会が提供するアプリをダウンロード。自身の探索者登録証カードを写真でスキャンして、登録を済ませる。
「ゴブリンのドロップ品を求める依頼は……お!ゴブリン肉5つで2万円ってのがあるぞ」
俺は詳細を読んだ上で、この依頼の受注をタップして準備に取り掛かった。準備と言ってもゴブリンの肉をデカめのタッパーに入れただけだが。
これを5個も食うやつの顔が見てみたいぜ、カマクラですら速攻で吐き出したのに。
「他は無いかな……ゴブリン布30枚で5000円の依頼もあるな。これも受けるか」
俺は片っ端からゴブリンのドロップ品を求める依頼を受けまくった。探索者協会宛の送料が掛かるから一気受けた方が得だからな。しかも普通に売却するより依頼のが高い。
「にゃ〜」
カマクラが行儀悪く机に乗ってきた。どうやら空腹になったみたいだな。
そんなカマクラに対して俺はニヤリとした悪どい笑みを向ける。
「今日は豚の生姜焼きだ、予想より儲かったからな。お前のお陰だぞカマクラ」
「にゃっん」
「笑顔が気持ち悪いだと? はぁ〜お前は何年俺と一緒に居るんだ? 俺が気持ち悪いのはデフォルトだろ」
「にゃ〜ん……」
デフォルトなのかよ、と言うカマクラのツッコミを無視して俺はキッチンで生姜焼き作りに取り掛かった。
因みに合計で9万円以上は儲けたぜ、ヒャッホー!
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