か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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28:配信が盛り上がる一方、比企谷八幡は未来に思いを馳せる。

 月曜日は憂鬱だ。別に配信が嫌いって訳じゃない。嘘です、やっぱり嫌いです。小中の時、俺に掃除を押し付けた奴らと同じぐらい嫌いかもしれない。

 まあ具体的に何が憂鬱かと言うとだな、配信の日に限って問題が起きやすいって事だ。しかも、小町と由比ヶ浜も確実に見にくる。なんなら、葉山と陽乃さんだって見にくる可能性が高い。

 知り合いに配信を見られるって結構恥ずいからね? どんぐらい恥ずいかと言うと、中二のときに書いた漆黒のノートを見られるのと同じぐらい恥ずい。

 

 まあでも、今日さえ乗り切れば一ヶ月もの冬期休暇が待っている。

 個人事業主になって良かったわ。休む日を自由に設定出来るんだからな。まさか大人になって、一ヶ月も休めるとは夢のようだ。凄い! 鎌谷幕府って超ホワイト☆

 

「……後は髪を結んでっと」

 

 るんるん気分で、鏡と向き合いながら髭剃りと歯磨きを終えて、長髪を後ろで束ねる。

 なんでこんなに髪伸びてんだろうな。ロン毛アラサー腐り眼男の需要なんて絶対に無いだろ。もう女子がキャーって叫ぶ要素しかねえじゃん。うん、俺ただのキモロン毛だな。

 

「これで完了」

 

 最後に配信用の猫仮面を付ける。

 よし、今日もイケメンだな俺。

 

 身だしなみを整え終えたので、リビングに行く。

 

「あるじ様、言われた通りご飯と飲み物を並べたよ〜」

 

 タマエに言われ、さらっとソファー前のテーブルを確認する。

 お菓子と飲み物のセッティングは良し。配信キューブのセッティングも良し。

 ……あとは魔石も必要だな。

 

 空間収納からストックしてた魔石を30程出して、大皿に盛り付ける。

 食べ物はこれで良いとして、後は従魔達と大まかな流れを確認すれば完璧だな。

 

 今日の配信は、飲み食いしながらの雑談配信。雪ノ下HDの案件と鎌谷幕府のグッズの宣伝をする為に、今日はこの配信形式にした。いつから鎌谷幕府は、こんなYouTuberチックになっちまったんだ。

 

 一通りの確認を終え、従魔達を呼び集めて最終確認に入る。

 

「セッティングは完璧だ。念の為、もう一度今日の配信の流れだけ確認するぞ。まず、雪ノ下HDのレビュー案件をお前達がする。その後は飲み食いしながら2時間程、雑談配信だ。ルーメリアとタマエで、適当にコメントを拾って答えればいい。で、最後に鎌谷幕府のグッズ宣伝を俺がする」

 

 今日はいつものダンジョン配信じゃない。なので今回、一番負担が行くと予想されるのは人語を話せるルーメリアとタマエになる。

 二人以外の従魔達はサポートつうか、基本ほのぼのしてもらうつもりだ。

 

「で、ルーメリアとタマエ以外はお菓子を食いながら適当に愛想良くしててくれ……。何か質問があるヤツはいるか?」

 

 ルーメリアがハーイ、と真面目な表情で手を上げた。

 

「マスター。その仮面、そろそろ卒業したらどうですの?」

 

「イヤだわ。身バレとか御免だね。あと、素顔を晒した所で俺のビジュアルレベルが中の上だから華がねーんだよ」

 

「プッ、ゴブ」

訳:意外と自己評価がたけぇな

 

 おい、このゴブリン今笑ったよな。オカシイナ、俺の顔そんなに悪くない筈だろ。目を除いて。おまけに身長も175cmあるし、充分イケメンの要件を満たしてるぞ。目が全てを台無しにしてるけど。

 

「大丈夫ですわマスター。そのアンデットみたいな腐った目、魔族からしたらイケメンですわよ」

 

 え、マジで? 魔族から見て俺ってそんなイケメン? なにそれ、生まれてくる種族間違えたわ。って、危なく人間を辞めたくなる所だったぞ。

 大体、魔物と魔族の違いって何だよ。言葉が通じれば魔族なのか? 分からん。

 

「兎に角、仮面は取らないからな。他に質問が無いなら全員ソファーに座れ」

 

「「はーい」」

 

 全員納得したようで、カマクラ以外がソファーに座りだした。カマクラは狭苦しいのが嫌なのか、地面で寝そべっている。

 ……まあカマクラのマイペースはいつもの事だし、別にいっか。

 

 俺は配信キューブの操作に取り掛かる。

 #雑談配信 #従魔 #企業案件

 ハッシュタグの設定はこれで良いだろう。

 タイトルは『猫将軍と愉快な仲間の雑談配信』にしとくか。

 

「よし、開始する……。ってもう食ってるし」

 

 開始する前に従魔達がポテチを食い始めた。本当に食い意地だけは凄いよな。

 これ以上グダグダになる前に、俺はポチッと配信ボタンを押した。

 

:嫁ニキさんチィースwww

:しきのんを助けてくれてありがとうございます ¥1000

:Yahooニュース掲載おめでとう! ¥500

:推しが死なずに済みました、ありがとうございます ¥5000

:嫁ニキはやる奴だって思ってたぜ

:救出代です ¥10000

:嫁ニキさんマジヒーローでしたよ!

:初めまして! 初見です!

 

お米こまち:経ちゃんポイント高い(≧∇≦) ¥800

ゆいゆい:やっはろー!有名人だねニッキー(^o^)/ ¥800

YY:頼朝さん凄く会いたかったわ ¥10000

はるのん:義経氏頑張ってね〜♪ ¥80000

HAYATO:応援してるよソフィーちゃん ¥8000

etcetc……

 

 マジか……。西なんとかさんを救出した影響なのか、開始5分未満でスパチャの総額が10万突破したぞ。

 っておい、この8万も投げてるの陽乃さんだろ。八幡だから8万? あの人のアピール額がえげつねえな。流石は上級国民。

 あとこのHAYATOとか言うスライム厨、葉山だろ。なんか配信をする度に高校時代の知り合いが増えていってる気がする……。恥ずかし過ぎて胃が痛くなってきたよ。

 

 これ以上考えるとネガティブの渦に嵌りそうなので、俺はリスナーに挨拶する事にした。 

 

「まずはスパチャあざっす。リスナー諸君、今日も見に来てくれてあざっす。それとチャンネル登録をして頂いた新規の方々もあざっす」

 

 適当に挨拶も済ませたので、今日の本題に入りますか。

 

「えーと、雑談に入る前に、まずは雪ノ下HDの新製品のレビューをさせて貰いますね」

 

:凄いビックネームが出てきたな

:とうとう居場所特定された?www

:大手の組織力には敵わなかったかww

:待ってwww雪ノ下HDとかすっごwww

:まさか日本きっての大手企業とコネクションが出来てたとは

:美人な有名配信者を助けて良かったな

:気づけば鎌谷幕府がこんなに有名に!

:企業案件とかヤラなそうなのに意外www

 

ゆいゆい:雪ノ下HDってマジ!?

お米こまち:え、仲直りしたの!?

etcetc……

 

 やっべ、小町と由比ヶ浜には言っとくべきだったかもしれない。誤解してる可能性が高そうだ。後でLINEしとこ。

 

「こちら雪ノ下HDの新商品、ダンジョン用エネルギー携帯食品の『ダイバーモンスター』です。では早速、従魔達にレビューして頂きたいと思います」

 

 ポップなパッケージイラストを画面に映しながら商品紹介をざっくり終え、後を従魔達に任せる。

 従魔達はパッケージを破いて、口に入れていく。

 

「……ッ! シュワシュワパチパチですわーーーーー!! この弾力感凄く良いですわ!!」

 

 このヴァンパイア、焼きたてジャパン顔負けのリアクションしだしたぞ。頼むから服を破くなよ。

 

「美味いです! あるじ様の作るミラノ風ドリアと同じぐらい美味いです!」

 

 余りの美味さにタマエのケモミミと尻尾がピンっと立った。だが、例えが妙に分かりにくい。

 俺の手料理と比べられても困るんですけど。未だにオリジナルのミラノ風ドリアを超えられる気がしない。なんなら一生越えられない気がする。

 

「うみゃーい!」

 

 うん? カマクラが美味いって言ったような……。きっと空耳だな。

 

「ワウーン!」

 

 なんでサブレは体は発火させてるんだ。発火するほど美味かったんだなきっと。

 他の従魔達もダイバーモンスターに舌鼓を打っているが、リアクションが如何せん分かりにくい。

 事前に何個か食べてる俺が、分かり易くリスナーに説明しとくか。

 

「補足しますとサイダー風味ですね。腹持ち良い食品なので三粒も食べれば、ダンジョンで結構長く戦えますよ。因みに年明けに税込420円で発売予定なので、興味のある方は是非ご購入下さいね」

 

 こんだけ宣伝すれば大丈夫だろ。めっちゃ仕事したわ俺。

 

:魔物でも美味いと言う携帯食品……ゴクッ

:美味そう!

:嫁ニキがミラノ風ドリア作れる事の方がビックリwww

:従魔達が美味いって言うなら信用出来るな

:美味そうだから絶対買うわ

:従魔のレビュー代 ¥3000

:嫁ニキの補足代 ¥300

:ルーちゃんのリアクション代 ¥1000

:サブレーヌちゃんの発火代 ¥1000

:猫将軍様が美味いって言ったぞwww

:ルーちゃんとタマエちゃんのリアクションが可愛い! ¥1000 

:従魔の宣伝効果が凄いwww

:ちょっとお菓子買ってくるわ

 

YY:頼朝さんが喋ったわ! ¥10000

ゆいゆい:お腹が空いてきた

お米こまち:頼くんが喋った!

はるのん:宣伝ありがとうね~♪

etcetc……

 

 空耳ではなく、やっぱりカマクラは美味いと言ったようだ。凄く不思議なんですけど。俺の補足代ももっと寄越せよ。

 まあいいや、第二フェイズに入るとしよ。

 

「リスナーの皆さん、こっからは飲み食いしながらのほのぼの雑談配信をしたいと思います。質問も個人特定に関する事以外なら答えたいと思います……。て事で、ルーメリアとタマエ、後は任せたぞ」

 

 後を2人に任せて、俺は画面外にエスケープ。こっからは見守るだけの簡単な仕事だ。

 

 雑談タイムに入った事でリスナーは大盛り上がり。色んな質問がバンバン飛んでくる。

 ルーメリアとタマエは質問を捌いていく。最初タマエは若干テンパってたが、ルーメリアが上手くフォローし事で今は落ち着いてトークを楽しんでいる。

 思いの外、ちょいちょい俺宛にも質問が飛んでくる。バイト募集してますかとか、年収とか、男に興味はありますかとか。

 いや、俺はゲイじゃないんですけど。

 

「マスター、一万円のスパチャでミミックが見たいって要望が入りましたわ」

 

「……ちょっと交渉してくるわ」

 

 急いで階段を駆け上がって自室に行く。

 

「よおエルラン。ちょっとだけ動画に出て挨拶してくれないか?」 

 

 部屋の端っこで存在感を消してるエルランに話し掛けるが、反応がイマイチだ。

 

「…………ギミィ」

訳:働いたら負けって教わった

 

 確かに教えたけども! だからって真に受けないで欲しいけどな。コイツを平塚先生に預けて奉仕部に入れるのを、本格的に検討した方が良さそうだな。

 

「出てくれたらこの魔石をくれてやるよ。どうだ?」

 

 以前グレートアリゲーターからドロップした大サイズの魔石を見せる。

 よしよし、魔石が食べたいらしく、悩みだしたぞ。

 

「……ギミィ」

 

 OKを出してくれたので、魔石を渡す。飲み込んだのを確認した所で、俺はエルランを抱えて一階へと降りた。

 

「こちらが鎌谷幕府、幻のシックスマンのエルラン君です。引きこもり屋さんなので、あんまり動画には出ないですが応援してあげてくださいね」

 

 良く考えたら、幻ですらないな。家に引きこもってて迷宮(コート)にすら上がらないから、幻ってよりも非存在と表現した方が正しいかもしれない。

 

「ギミィ……ギミィ」

訳:どうも……応援はしなくていいよ

 

 エルランはカメラに向かって、手を振るように大きなベロで挨拶をする。

 コイツの挨拶が後ろ向きなんですけど。一体誰に似たんだよ。ボッチの哲学を教えたのが良く無かったのかもしれない。

 

:マジでミミックだwww

:ミミックに出会うなんて凄い確率だぞ

:初めてミミックが見れてワイは感激 ¥2000

:生きてる内にミミックが見れて嬉しいです ¥2000

:ミスディレクションは使える感じ?

:幻のシックスマンwww

:ちょっと可愛いかも ¥500

 

お米こまち:その子からお兄ちゃんと同じオーラを感じる(-_-;)

ゆいゆい:なんかニッキーに似てるね(; ・`д・´)

YY:どこか懐かしさを感じるわ……

etcetc……

 

 そんなに似てるのかよ。お兄ちゃん軽くショックだよ。

 まあこれで、鎌谷幕府全員を紹介出来たな。

 

「良く頑張ったな、エルラン」

 

 要望に応えて挨拶も済ましたので、エルランと一緒に画面外に引っ込む。

 俺は画面外で胡坐をかき、エルランを撫でながら様子を見守ってると、いつに間にか趣味の話になっていた。

 

「わたくし最近、遊戯王のアニメにハマってまして、ゼアルまでは見ましたのよ。因みに推しは海馬さんとユベルですわ。マスターにも海馬さんぐらいパワフルになって欲しいですわね」

 

 趣味の話をしてるルーメリアはいつも以上に饒舌だ。

 初耳だわ、海馬とユベルが好きなのかよ。いやまあ人気キャラだとは思うけどさ。海馬ならイシズ戦で未来を覆したのが俺的には名場面だ。ユベルは……ヤンデレ過ぎて怖い印象しかないわ。

 

「えーとね、えーとね、わたしは余り詳しくないけど、クリボーさんとブラックマジシャンガールさんが好きです」

 

 うん、タマエの好きなキャラがあざとい。クリボーを入れてるのが本当にあざとポイント高い。

 とは言え俺もブラマジガールは好きだ。ガキん時に散々夜のお世話になったからな。

 

:ルーちゃんの趣味が意外www

:ワイもブラマジガールは好やで、色んな意味で

:まさかアニメ好きとは、幕臣としてもっと貢献します! ¥5000

:タマエちゃんと好きなキャラが一緒でワイ歓喜www ¥3000

:ブラマジガールは男子なら誰もがお世話になるキャラwww

:ここにいる野郎共が最低過ぎてワロスwww

:ワイのデッキにクリボー入ってるで ¥500

:昂る、昂るぞ遊戯!

:全速前進DA☆

:粉砕!玉砕!大喝采!!

:初期のブルーアイズ代 ¥30000

:一応先に言っとく、ARC-Vは好き嫌いがハッキリ別れる

 

お米こまち:お兄ちゃんが遊ぶ相手いないのにデッキ作ってたな~

etcetc……

 

 ネタコメントが多い中、小町のコメントが目に付く。

 なんて事を言うんだ小町。俺にもデュエル相手なら居たぞ、もう一人の僕と言うイマジナリーフレンドが。

 フンッ。俺ぐらいボッチを極めると、もう一人の僕を一人や二人ぐらい簡単に作り出せるんだよ。

 おかしいな、何故か泣きたくなってきたぞ。

 

「この質問……残念ながらわたくしは恋愛経験が豊富じゃないんですの。なので交際経験があるマスターに任せますわ」

 

「あるじ様ぁ~」

 

 悲しい幼少期に内心涙を流してると、二人が困った様子で俺を呼んできた。

 

「どうしたんだ?」

 

「あるじ様、この質問……」

 

 タマエが固定してるコメントに指をさす。二人の間に座り、俺はコメントに目を通す。

 なになに……『いつも優しくしてくれる女子に脈ありだと思って告白したら振られました。どうやったら立ち直れるのでしょうか? アドバイス下さい¥500』か……。

 恐らく質問してる奴は中学生か高校生だな。

 仕方ない。投げ銭も貰ったし、黒歴史を作ってしまった青臭いリスナーに励ましの言葉を送ってやるか。

 

「いいか良く聞けよ。お前に優しい女子は他の野郎にも優しいんだ。だから優しい女子なんて信じるな。優しい女子ってのはな、皆に優しくしてる自分に酔ってるだけなんだよ。でも良かったな、今回の事を教訓にもう勘違いなんかせずに済むぞ」

 

 ちょっとアドバイスに熱が入り過ぎたが、我ながら100点満点の答え。貰った投げ銭分のアドバイスは出来た筈だ。

 なーんて思ってたら、タマエとルーメリアがドン引きしていた。

 

「あるじ様、その……何かあったの?」

 

「マスター……あんまり良い幼少期を過ごせ無かったんですのね」

 

 何故だ、なぜ俺はドン引きされているんだ。

 そうだコメントを見よう。コメント欄に居る同族達なら分かってくれる筈だ。

 

:嫁ニキ捻くれ過ぎだろwww

:アドバイスが人間不信過ぎて草www

:嫁ニキどんだけ振られたんだよwww

:人間不信に陥るぐらい振られたんだなwww

:ある意味真理ではあるwww

:優しい女子が嫌いなのは伝わったわwww

:正しいけどなんか違うwww

:相当拗れてんなwww

:ヤッベwwwマジワロスwww ¥500

:めっちゃ熱く語るやんwww

:まあ分からなくも無いwww

 

お米こまち:ルーちゃん!ごみぃちゃんをどうにかして(>_<)

ゆいゆい:ニッキーのそう言うの久しぶりに聞いた(^^;

YY:何故かしら、デジャヴを感じるわ……

はるのん:wwwwwwwwwwwwwwwwww ¥8000

HAYATO:辛い時はいつでも話を聞くからな  ¥800

etcetc……

 

 草が生え過ぎて、大草原どころかサバンナになってんじゃねえか。一人ぐらい俺と同じ思いをしてる奴が居たっていいだろ。

 とりあえず陽乃さんが、腹抱えて大爆笑してる姿だけは想像できたわ。

 あと葉山、変に優してくんなよ。泣きたくなっちまうだろ。グスッ

 

「ハズカシイヨ、オウチカエリタイ」

 

「あるじ様、ここお家だよ?」

 

 そうだ、ここ我が家だったわ。家で黒歴史を作っちゃうとか、もうこの世に安全地帯ねーじゃん。世の中地雷だらけとか怖すぎだろ。

 

「マスター、また恋愛絡みの質問が1000円付きで来ましたわ」

 

 よし、次こそはまともなアドバイスをして見せるぞ。ここで挽回して、ちっぽけでちんけな自尊心を守ってやるぜ。

 俺が意気込む中、ルーメリアが質問を読み始めた。

 

「とりあえず読みますわ、『高校二年生の男です。クリスマス前に同じグループの女子に告白しようと思ってます。だけど振られるのは嫌なので、絶対に振られない告白を教えてください』……」

 

 あれ、なんか過去にも、この手の似たアホな相談を受けたような……。

 あ、思い出したぞ。修学旅行の戸部だ。懐かしいな、あん時の依頼は様々な要因が重なったせいで難易度が鬼畜(ヘルハード)だったぞ。

 まあ結論から言って、絶対に振られない告白なんか無い、としか言いようが無い。相手の弱みを握って脅す場合と相思相愛の場合は別だけどな。

 質問してきてる奴は高校生だし、人生の先輩たる俺が優しく諭してやるか。

 

「まず結論から言って、」

 

「この質問、凄く気に食わないですわ!!」

 

 何故かルーメリアがドン、と机を叩きながら割って入ってきた。

 え、怖い。なんでコイツ激オコなの?

 確かに舐め腐ってる質問ではあるよ? 言うても若気の至りで済む範囲だと思うけどな……。

 

「ルーお姉ちゃん怖い……でもこの質問は嫌い」

 

 ほらタマエも怯えてるだろ。

 

「ルーメリア、少し落ちつけって」

 

「マスターは黙るんですの! これはわたくしが答えますわ!」

 

「は、はい……どうぞ」 

 

 っべー、ルーちゃん怖すぎですわ! 睨まれて防御力が下がっちゃいましたの!

 

「振られるのが嫌だ? 絶対成功する告白? 恋愛を舐めてんじゃねぇですわよ!! そんなに振られるのが怖いなら、一生恋愛しない事をオススメしますわ。わたくしなんて、マスターに想いを伝えても返ってきた言葉が『家族だから無理』ですのよ! ですが……わたくしは諦めません。傷つくのを覚悟の上で、何億回でも想いを伝え続けますわ。だから貴方も、傷つく覚悟を持って恋をなさい!」 

 

 うん、恥い。しかもなんか、俺が乙女の恋心に応えないで踏みにじってるみたいじゃないか。

 

:ルーちゃんが男前過ぎる ¥1000

:嫁ニキはいけ好かないけど、ルーちゃんの事は応援するぜ ¥2000

:おいおい応えてやれよ嫁ニキ、それでも男かよ 

:美しい異種族恋愛だ ¥1000

:質問者に言える事は一つ、恋愛は振られた数だけ強くなれるぜ 

:嫁ニキ貴様!なんて羨ましい奴なんだ!! ¥10000

:ヤッベ、久しぶりにグッときたわ ¥1000

:ルーちゃんマジで乙女やん ¥1000 

:相手が嫁ニキなのが癪だけど応援します ¥1000 

 

お米こまち:今後とも愚〇をよろしくお願いします(>_<) ¥800

ゆいゆい:メリメリカッコイイ(*'ω'*) ¥800

はるのん:義経氏モッテモテだね~♪ ¥800

HAYATO:あの時は本当にありがとう ¥800

etcetc……

 

 ほらな、やっぱ俺が精神ダメージを食らう羽目になるんだよ。てかこれ、全世界の人間が見れるんだよな。やっぱ配信者を始めたのは間違ってたのかもしれない。うぅ、元総武の皆さん見ないで下さい、八幡恥ずか死んじゃうから!

 

 内心悶えてると、タマエが腕を俺の腕に絡めてきた。

 

「あるじ様はわたしを、お嫁さんにしてくれますよね? あるじ様は約束しましたよね?」

 

 上目遣いで、とんでもない事を聞いてきやがった。

 確かにその場しのぎで、そんな約束をいつかの配信でした気がする……。選択ミスりまくってるだろ俺。このままだと、刺されENDを迎える事になっちゃう!

 

 試しに、恐る恐る視線をルーメリアに向けてみる。

 

「なんですの? 魂ごと滅ぼしますわよ?」

 

 やっべ、めっちゃ怒ってるよ。このままだと、また修羅場配信になりかねない。

 落ち着け俺、ここは冷静になって適切に対処すべきだ。何度も修羅場配信なんてしてたまるか。

 

「いいかタマエ。その話はタマエが大人になったら、一緒に検討に検討を重ねた上で、検討を加速させよう。そうする事で異次元の検討になるんだ。で、異次元の検討をした後に一緒に話し合おじゃないか」

 

 俺の言ってる事が理解出来ないのか、タマエはう~んと悩みだした。

 これぞ俺が、今は亡き二代前の日本国総理から学んだ誤魔化し術だ。

 

「……えーと……あるじ様は無駄な話し合いを、いっぱいしたいって事……?」

 

 なんも誤魔化せて無かったよ。やっぱり無能総理と言われた奴の誤魔化し術はダメだな。

 

「と、とりあえず配信の後に将来の事を話そうか」

 

「うーん……あるじ様が誤魔化してる気がする……」 

 

 そう言いながら、タマエは皿に盛られた魔石に手を伸ばす。

 セーフ。納得はしてない様子だが、この場は矛を納めてくれるみたいだ。

 

:チッ、あと少しで修羅場だったのに

:とりあえず嫁ニキが女泣かせなのは理解したわwww 

:魔族の女性を誑かすクソ野郎で草www

:異次元の検討って何だよwww

:タマエちゃん賢い! ¥1000

:ワイはタマエちゃんを応援するで ¥1000

:今日もタマエちゃんは安定の可愛さ ¥5000

:タマエちゃんの尻尾モフモフ可愛い ¥1000

:いつか嫁ニキが刺されるに1000ペリカ 

:リアルでハーレムしやがって、許せねえ

:最近従魔士が当たりジョブに思えてきたわ 

etcetc……

 

 やめろリスナー共、応援なんてしなくていい。

 ああ、気づけば配信の同時接続数が12万になってるし……。ダメだ、胃が痛くなってきた。

 

「……ちょっと外すわ」

 

 俺は画面外に出て、最近愛用してる胃痛薬を口に入れてマッ缶で流し込む。

 

 登録者数50万越えで、スパチャ額は従魔達のお陰で30万以上をキープ。当初はこんな大型チャンネルになるなんて、思いもよらなかった。

 従魔士初のチャンネルとして先駆者利益が発生してるのは理解出来るが、いくらなんでも異常だ。

 俺は目立ち過ぎる事を危惧している。本来、配信者として目立つのは悪い事じゃないが、鎌谷幕府は度が過ぎてる。

 これ以上目立てば、何かしらの悪意やら権力が忍び寄って来る可能性が高い。

 まあ、これに関しては策が有る。この策が成せれば俺の心を平穏に保つ事が出来る筈。

 

 今後の計画をスマホに打ち込んでたらタマエが騒ぎ出した。

 

「あるじ様! 体が……! 体がおかしいです!」

 

 タマエの体が輝き出した。

 oh……。これって進化じゃねえか!

 

「落ち着くんだタマエ! それは進化だ!」

 

 原因は皿の魔石を食ってたからか。出来れば配信じゃない時に進化して欲しかったよ。

 

「いやぁ……」

 

 何が嫌なのか分からないが、タマエの表情は絶望に満ちている。それに進化を拒んでるせいか、光りが発散しないままだ。

 どうして良いか分からない俺は、助けを求めてルーメリアの方に視線を向ける。

 

「タマエ、何が嫌なんですの? 進化はメリットしかありませんのよ?」

 

「だって、グスッ……変わったら、あるじ様が……グスッ……いやぁぁ」

 

 取り乱してるせいで、話しが出来ない。

 推察でしかないが、タマエは自分が変わったら捨てられるとでも思ってるのかもしれない。

 

 見くびられたもんだな俺も。27年もお兄ちゃんをやってんだぞ。可愛い家族がどんな姿になろうとも受けとめるのがお兄ちゃんだ。

 落ち着かせるべく、俺はゆっくりとタマエへ近付く。

 

「グスッ……あるじ様……?」

 

 タマエの小さな体を両腕に納めて、胸に抱き寄せた。

 

「安心しろ。万が一おばあちゃんになっても、お兄ちゃんはタマエを嫌いにならないし、ずっと家族だ」

 

「……グスッ、目が三つになっても、嫌いにならない?」

 

「良いんじゃねえの。視力が良くなって」

 

「腕が四つになっても……?」

 

「飯を食うのに便利そうだな」

 

「凄く不細工になっても、本当の本当に嫌いにならない?」

 

「どんな風になっても、俺にとってタマエはずっと可愛い女の子だぞ」 

 

 落ち着いたのか、タマエは穏やかな声で「あるじ様」と言葉を発した。

 そして俺から僅かに距離を取り、真っ直ぐとあどけない笑顔で俺を見据えてくる。

 

「好きっ」

 

 俺の口辺りに口付けして来た。

 だけど惜しいかな、仮面をしてるせいで感触は伝わって来ない。

 

「もう大丈夫そうだな」

 

「はい!」

 

 笑顔を浮かべたままタマエは光に包まれる。

 シルエットが大きくなった所で、光が弾けた。

 

「あるじ様……どう?」

 

「ああ……予想はしたけど……可愛いな。うん、超可愛いぞ」

 

 尻尾は三本に増え、幼女から中学生ぐらいの女の子になった事で可愛さが増した。問題が有るとすれば、進化したせいで巫女服が少しパッツパツだ。

 胸も大きくなったし、もう一緒に風呂には入れないな。後日、服を仕立てに唐ヶ原さんの所に行くか。

 でもよ、完全に最終進化は九尾の妖狐ルートだよな……。もういっそのこと、影分身と螺旋丸の練習でもしようかな。俺が火影になるってばよ!

 

「ゴブゴブ」

訳:タマエの嬢ちゃん、可愛くなって良かったじゃねえか

 

「プルプル」

訳:尻尾が増えて凄い

 

「ワンワン!」

訳:タマエおめでとう!

 

「ニャー」

訳:良かったなタマエ

 

「フフッ、わたくし程じゃないですが、綺麗になりましたわねタマエ」

 

 ルーメリアのマウント取りは照れ隠しだから良いとして、従魔全員が仲良くしてる光景は微笑ましいな。

 

「凄く嬉しい、皆祝ってくれてありがとう! これであるじ様を虜に出来ます!」

 

 うん? ううん? 不穏な何かが聞こえた気がするが、聞かなかった事にしよ。俺は今日から難聴系になるんだ。

 

「聞き捨てなりませんわね、タマエ。まぁ無謀な戦に挑む、その度胸だけは認めてあげますわ」

 

「無謀じゃないもん、あるじ様は妹系のが好きだもん!」

 

「フンッ、いい機会だから教えてあげますわ。マスターのスマホには、ヴァンパイアであるキスショットとか言うアニメキャラの画像が沢山ありましたわ。どう見たってわたくしの事を意識してますのよ」

 

「……それはどうかな? ルーお姉ちゃん」

 

「なんですって!?」

 

「あるじ様は最近ね、仙狐さんのDVDBOXを買ったんだよ? だから、あるじ様が意識してるのはわ・た・し♪」

 

 スマホの中身と最近購入した物が知られてるのは一旦置いとくとして、少女達の口論が全部聞こえてくる。やはり俺は生まれながらの健聴系だったんだな。

 てか! 進化ハプニングで忘れた事が有ったわ!

 

:【速報】タマエちゃんが三尾になった模様

:嫁ニキのセリフがイケメン過ぎて草www ¥1000

:どうやって女性従魔を誑し込んでるのか理解しました ¥500

:タマエちゃん進化オメ!  ¥3000

:また進化が見れるとは ¥500

:俺ら忘れられてない?www

:久しぶりに泣いたわ ¥1000

:タマエちゃんは九尾って事でOK?

:九尾になる日が楽しみです! ¥2000

:嫁ニキが従魔に愛されてる理由が分かったわwww ¥2000

:タマエちゃんが可愛く進化出来て良かった(´っ;ω;c `) ¥5000

:可愛いぃぃぃぃいいい!! ¥5000

:タマエちゃん推しのワイ大歓喜 ¥10000

:タマエちゃんの為にパチンコに勝ってきました ¥50000

:短編ドラマを見た気分 ¥1000

:軽く正妻戦争が起きてて草www ¥300

:正妻戦争は猫将軍様が勝つに一票

 

お米こまち:こうやって従魔を恋に落としてるんだね(-_-)

ゆいゆい:タマエちゃーーん良がっだねぇぇえ(´;ω;`) ¥1000

YY:ほんの少しだけ泣いてしまったわ ¥10000

はるのん:ねえねえ義経氏、私も進化してみたい(๑✧∀✧๑) ¥1000

HAYATO:進化おめでとう  ¥1000

etcetc……

 

 いま俺の心情を表すなら『カメラの前でくさいセリフを言いまくったワイ、無事死亡www』てな感じになるな。要するに消えたい。

 なんか、小町は呆れてるし、由比ヶ浜は大号泣してるし……。

 あー、陽乃さんが進化とか笑えねーよ。もう充分パーフェクトヒューマンだろ。

 

 もういいや、ここはモンスターブックでも見ながら現実逃避しちゃう!

 

ネーム:タマエLv11

種族:三尾ノ妖孤

スキル

【妖術】

【結界術】

【狐火】

【狐変化】

【獣爪】

 

ステータス

生命力:530/530

魔力量:1400/1400

筋力 :+280

耐久力:+290

敏捷力:+330

知力 :+1300

 

 おお、攻撃系スキルを習得している。

 ただアタッカーはもう足りてるんだよな。今まで通り妨害ユニットとして活躍して貰う感じになりそうだ。

 

 てな訳で確認も終わったし、リスナー諸君に鎌谷幕府のグッズ発売のお知らせでもするか。

 仕事を終わらせるべく、俺は配信キューブの前へと行く。

 

「あー、色々ありましたが、ここで朗報です。鎌谷幕府のグッズを提携して頂いてるお店で発売する事になりました。詳しくは概要欄に貼ってあるリンクから飛んで下さい。Tシャツやらスマホケース、その他諸々を発売する予定です。……とりあえず、自分からは以上です」

 

:マジで!?絶対買うわ!

:鑑賞用、保存用、実用、布教用で四つ買います!

:速攻で売り切れる予感が半端ないwww

:タマエちゃんの尻尾ストラップはありますか?

:御利益がありそうなサブレーヌちゃんの置物が欲しいです!

:その黒い猫の仮面が欲しいです!

:ルーちゃんのプリントTシャツは絶対に手に入れてやる!

:握手券は付いてきますか?

 

ゆいゆい:ありがとう!絶対に買うね(^O^)/

YY:頼朝さんのグッズを全て手に入れてみせるわ

HAYATO:ソフィーちゃんのグッズが買える!

はるのん:はいはーい!義経氏の抱き枕カバーが欲しいでーす!

etcetc……

 

 概要欄に貼った【ワンダーカーテン】のホームページを見ろよ、と思いながら俺は片っ端から来る質問を処理していく。

 

 おやおや? はるのんがフザケ過ぎな件について。俺の抱き枕カバーなんか有る訳ねーだろ。自信を持って需要が無いと言えるぞ。それはそれで泣きたくなるんだけどね。

 

 もう今日は三時間も配信したし、充分だろ。そろそろ締めるか。

 

「今日はもう締めたいと思います。締めのジャンケンは……」

 

 ここでルーメリアが「わたくしがやりますわ」と名乗りをあげた。

 

「そうか、最後のジャンケン任せたわ」 

 

「違いますわ。わたくし、一曲歌いますの」

 

 ルーメリアの歌います宣言でコメント欄が湧き出した。可哀想な結果にならないように俺はルーメリアを、やんわりと止める事にした。

 

「…………お前マジで言ってんの? 黒歴史になるよ?」

 

「兎に角マスターは指を咥えて見てれば大丈夫ですわ」

 

 コイツ凄い自信だな……。アカペラとか黒歴史になる予感しかしないぞ。

 ソースは俺。中学生の時に好きな女子の前で歌ったら引かれた。因みに動画を撮られて後日クラスの奴らに拡散されるまでがセットな。

 

 ルーメリア以外は俺を含めて画面外に退避する。主役は配信キューブの真ん前で行くと、鮮やかに一礼した。

 

「それでは一曲──」

 

 ──新時代は、この未来だ 世界中全部、変えてしまえば~ 変えてしまえば~

 

 

 余りの美声に、歌い出しから聞き惚れてしまった。音響設備とマイクも無いのに、ウタに負けず劣らずの歌唱力なんですけど。こうなると、ルーメリアの特筆すべき弱点は料理だけになる。

 何より同じ屋根の下に住んでるのに、歌が上手いなんて初めて知ったぞ。

 

 疑問に思った俺は、ルーメリアのルームメイトであるタマエの耳元に近付き、コッソリと聞く。

 

「なあタマエ、アイツって歌うのが好きなのか?」

 

「えーとねあるじ様、ルーお姉ちゃんonly my railgun?ってのを良く歌ってるよ」

 

 そんな10年以上も前のアニソンも知ってんのかよ。夜な夜なリビングにある家族用PCで聴いてるに違いない。

 今度、家族サービスとして全員をカラオケに連れてってやるべきだな。

 

 次第にルーメリアは、歌にダンスまで交えて場を白熱さていく。おい、踊りまでやれんのかよ!?

 

──新時代は、この未来だ♪世界中全部、変えてしまえば~♪ 変えてしまえば~♪

 

 サビに差し掛かった所で、盛り上がるコメント欄を見ながら俺は思う、良かったなと。

 ルーメリアは戦争が絶えない異世界に居たんだ。戦争の無いこの日本でアニメ、ゲーム、歌やらの平和な趣味に興味を持ち始めるのは何ら不思議じゃない。むしろ微笑ましいまである。

 

 それに、こんだけ歌が上手ければ、俺が寿命で死んだ後も稼げんだろ。

 何でだろな……生まれて初めて寿命なんて、どうしようもない事について考えてるわ。

 それだけ従魔との生活が幸せになってるって事か……。

 って感傷的になり過ぎだろ。精々俺に出来る事なんて、いい思い出を残してやる事だけだ。

 

 従魔達の未来について考えてると、歌も終盤に差し掛かった。

 

 ──さあ行くよ NewWorld! 信じたいわ、この未来を♪世界中全部、変えてしまえば~♪ 変えてしまえば~♪

 

 歌が終わる頃には、ほのん少しだけ仮面の内側が濡れていた。

 

「~♪ 新時代だ! ご清聴ありがとうですわ!」

 

 笑顔で歌え切ったルーメリアは綺麗なお辞儀をする。全力を出し切ったようないい表情だな。

 俺と他の従魔達は、敬意を込めて自然と拍手を送っていた。

 

:アンコール! ¥10000

:ブラボー!! ¥10000

:アカペラでこれは凄い ¥3000

:これはウタもニッコリ ¥5000

:歌手デビューも夢じゃない ¥5000

:上手すぎて草も生えないんだがwww ¥3000 

:You're a fantastic person! ¥100000

:音楽ライブする時は絶対行きます! ¥3000 

:ワンピースファンのワイ拍手喝采 ¥5000

:ライブ代 ¥3000

:おい嫁ニキ!これで音楽設備に投資しろ! ¥50000

:次はタマエちゃんとデュエットでお願いします! ¥5000

:そのうちTVからオファー来るぞ ¥2000

 

YY:¥10000

お米こまち:こまち的にポイントMAXだよ! ¥5000 

ゆいゆい:メリメリ凄い(。>ω<ノノ゙パチパチ ¥5000

はるのん:いい事思いついたよ(・∀・)  ¥10000

HAYATO:素晴らしかった ¥10000

etcetc……

 

 やっぱワンピースファンが多いな。

 さーてと、今のライブでどれぐらい稼いだか見てみよ。

 一、十、百、千、万……やっぱ怖いから、数えるの辞めるわ。

 とりあえず、音楽機材は買っておくか……。

 

「最後にわたくしの方から、リスナーの皆さんに言いたい事がりますわ」

 

 うん? なんだ、まだ目立ちたいのかアイツ……?

 そして、ルーメリアはビシッと指を勢い良く、配信キューブに向けてさした。

 

「わたくしはここに宣言する。遠くない未来、我が愛しきマスターが必ずや新時代を切り開き、魔王として君臨しますわ! そして、鎌谷幕府の武名を全世界に轟かせますのよ!」

 

 え……うんんんんんんんん!!!???

 

「…………っ!!? なに言ってんだバカッ!!」

 

 突然過ぎて一瞬思考が追いつかなかった。巻き込み事故に遭ったのを理解した俺は、直ぐにルーメリアの口を後ろから強引に手で塞いだ。

 

「うぅぅぅぅぅ! うぅぅぅぅぅ!」

 

「頼むからお前はもう黙ってろ!」

 

 このメスガキ、こんな事を言う為だけに新時代を前座に使ったのかよ!

 兎に角、バカ騒ぎしてるリスナー共に弁明しなければ!

 

「り、リスナー諸君、コイツはアレだ、カッコイイ事を言いたいお年頃なんだ。だから真に受けてはダメだ。頼むから忘れてくれ!」

 

:仕方ねーな応援してやるよ嫁ニキwww

:頑張って新時代を切り開けよ嫁ニキwww

:俺は応援してるぜ嫁ニキwww

:頑張って天下獲れよ嫁ニキwww

:ルーちゃんが言ってるし、仕方なく応援してやるよ嫁ニキwww

:お前の事は好きじゃないけど応援してやるよwww

:嫁ニキにダメージが全部行ってて草www

:頑張って魔王にれよ嫁ニキwww

:とばっちりで草www

:こう言うオチを期待してたよwww

:仕方ないからSNSで拡散してやるよwww

:本当は嫁ニキもノリノリなんだろwww

 

はるのん:ヤバイwwwこのチャンネルwwwおもしろ過ぎwww ¥1000

etcetc……

 

 コイツら……完全に悪ノリしていやがる!

 

「お前らなんて嫌いなんだからねっ!」

 

 最後に情けない捨て台詞を吐いて、俺は配信キューブの停止ボタンを押した。

 

「フフッ、最後の最後で盛り上がりましたわね」

 

 ニヤリ顔で言ってきたので、ルーメリアに思いっきりデコピンしてやる事にした。

 

「痛い!」

 

 まだまだ気が収まらない俺は両手をグーにしてルーメリアの頭にセッティング。

 さあ、懺悔の時間だ。お前の罪を数えろ。

 

「ぐりぐりは痛いですのぉぉぉぉぉぉぉぉお!」

 

「うっせ、お前の自業自得だ! あと今日のデザートは抜きだからな!」

 

「そんなぁぁぁぁあああ!!」 

 

 ルーメリアをお仕置きした後にXでエゴサーしたら、見事に『嫁ニキの新時代』がトレンド入りしてたよ。

 何でこうなった、チクショウ!




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