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現在、冬季休暇なのにも関わらずダンジョンに来ている。
食べ盛りな奴らのせいで、貯めていた魔石が底を尽きた。まさか、数日で食い尽くされるとは思はなかったぞ。
それと一応、ルーメリアが居たら飯をゴブタニに持たせて渡すつもりでいる。
俺は会うつもりは無い。なんて声を掛けて良いか分からないし、気まずいからな。
「ソフィーは後ろに下れ、【モンスターズシフト】! ゴブタニ、前から来る敵を切れ! サブレは後ろから来る奴らを燃やし尽くせ!」
ソフィーとゴブタニを位置交換。各々に指示を飛ばして、蹂躙を開始する。
「ゴブゴブ!」「ワウーン!」
目の前の魔物は斬殺され、後ろにいた魔物は燃え盛っている。
そして遠目から、大量のヘビ共が接近しているのが確認できた。
新手のようだな。まあいい。カマクラのマップ破壊スキルのパワー検証をしてみるか。
「カマクラ、パワーを抑えながら【毛玉】を使ってみてくれ」
「にゃー!」
カマクラは口の周りにエネルギーを少なめに集めて盛大にぶっ放し、バァァァンとダンジョン中に響く程の轟音が聞えてくる。次の瞬間には大量のヘビが圧倒的エネルギーで跡形もなく消えていた。
パワーを抑えてもこの威力。ダンジョンの石壁がかなり抉れている。やっぱこのスキルはNARUTOで言う所の尾獣玉だ。
スキル一つで漫画の大技を再現できるとか、ヤバすぎだろ
「ワウーン……」
「やっぱり匂いはしないのか」
サブレは最近、【嗅覚強化】と言うスキルを手に入れた。
そのスキルを使って、ルーメリアを探知して貰ってるが、このダンジョンにはいないようだ。
どうせルーメリアのことだ、チートアイテムを使って他のノラダンジョンに行ってるに違いない。あくまで可能性だが。
「ゴブ!」
「うん? ああ、まだ生きてる奴がいたのか」
ゴブタニが指さす所に、蛇型の魔物──パープルサーペントの生き残りがいる。
「ん?」
なんか、あの蛇の様子おかしくないか?
不自然に思いながら全員で近づく。
「シャ、シャー……」
近づくと、仰向けになって死んだフリをしだした。
「ゴブタニ、殺れ」
「シャ……!? シャ! シャ!」
ゴブタニが近づくと、今度は頭を何度も下げまくる動作をしだした。命だけは勘弁してくれと、懇願してるみたいだ。ちょっと面白い。
「待てゴブタニ」
刀を振り下ろすゴブタニを寸前で止めて、俺は蛇の目の前に魔石を置いた。
「それ食って帰れ。お前達、戻るぞ」
ちょっと可哀想になったので、見逃すことにした。見るからに戦意喪失してるようだったしな。
俺たちはそのままドロップ品を拾い集めて、休憩すべく5階層の開けた場所に戻って腰を下した。
「ほらお前ら、仲良くたらふく食えよ」
「わん!」「プルプル!」「ニャー!」「ゴブゴブ!」
タマエとエルランの分を残して、手に入れた約50個ほどの魔石を放出。
久し振りに体を動かしたからか、凄い食いつきだ。
因みにタマエは、ルーメリアが帰ってくるかもしれないから、念の為に留守番をして貰っている。
「ゴブ?」
「どうした? ……ってアイツ、さっきのか……?」
索敵役であるゴブタニの【間合】に、何かが入ったようなので、視線の先を追う。
すると、さっき見逃したやったパープルサーペントが、岩陰からコチラを覗いていた。
「……シャー」
試しに手招きをすると、目をキラキラさせながら近づいてきた。
え、なんでコイツ嬉しそうに近づいて来るの?
魔石を集りたいからって、敵に近づくのはリスキーすぎるぞ。
「なぁお前……もしかして、仲間になりたいのか?」
「シャー?」
言葉の意味が分からないのか、首をかしげてる。
「テイム」
興が乗ったのでスキルを発動してみると、あっさり契約が完了した。自身の魔力を流した魔石無しで、テイムに成功したのは初めてだ。
普通の魔石をあげただけで、好感度高くない? 魔物によってはチョロイのもいるんだな。
「シャー♪」
マフラーみたく、俺の首に巻きついてきた。しかも、細くて枝分かれした蛇特有の舌で頬を舐めてくる。
「おい、くすぐったいって」
コイツ、人懐っこくて意外と可愛いぞ。名前を付けてやらないとな。
蛇だから大蛇丸……いや、オカマ属性になりそうな名前はよそう。
なら、オロチはどうだ? これも安直なネーミングだな。
蛇が出てくるアニメとかドラマって他にありそうだが……。
撫子とか可愛い……いや、これもダメだ。ヤベー女になっちまう気がする。
悩んでいると昔、小町と一緒に見た映画を思い出した。あの映画、原作も面白いんだよな。因みに俺のオススメは、炎のゴブレットな。名前を言ってはいけないあの人の完全復活したシーンは圧倒的絶望感と共に超興奮したのを覚えてる。
ならコイツの名前は決まりだ。
「お前の名前はザリンだ」
「シャシャー!」
頬ずりしてきた。どうやら名前を気に入ってくれたようだな。
今回のネーミングはいつも以上に自信があった。なんたって、偉大な魔法使いの名前を参考にしたんだからな。
「お前ら、新入りのザリンだ。仲良くしてやってくれ」
紹介すると真っ先にサブレが友好的にザリンを、ペロッと舐めだした。
コイツって本当に飼い主に似てコミュ力高いよな。ちょっぴりアホな所も似てるし。
「ニャ~」
「ゴブ!」
「ワンワン♪」
「プルプル!」
「シャァー」
ザリンが尻尾を使って、それぞれと器用に握手していく。ソフィーは触手でだけど。
「こいモンスターブック」
ネーム:ザリンLv3
種族:パープルサーペント
スキル:【レッサーポイズン】
ステータス
生命力:180/180
魔力量:220/220
筋力 :+ 260
耐久力:+130
敏捷力:+330
知力 :+100
敏捷が高い遊撃タイプって所か。【レッサーポイズン】は蛇らしく噛み付いた敵に毒を与えたり、毒液を吐くようだ。
──【にゃんMAX】
ザリンの運用をどうするべきか、と考えてたら脳に情報が走った。
このふざけた名前、絶対カマクラの新スキルだろ。
スキルの詳細を確認すべく、カマクラのページを開き、スキルをタップする。
にゃんMAX:一時間巨大化する。
ざっくりしすぎだろ! まあいい。ちょうど開けた場所にいるし、直接確認した方が手っ取り早い。
「カマクラ、新スキルを使ってみてくれないか」
「ニャァァァアア!!」
咆哮をあげると、カマクラが大きくなっていく。
どうやらカマクラはとんでもないスキルを手に入れたようだ。
「おいおい……!? 全員離れろ!」
大急ぎでカマクラから距離を取るべく、猛ダッシュ。
マジでどうなってんだよ! なにこのダイマックスもどき!
「誰か飼い主を呼んでこい!」
「ゴブ!」
訳:アンタだよ!
そうか俺だったわ。ついつい現実逃避しちゃった、テヘッ☆
ある程度距離を取った所で振り返って確認すると、怪獣と言われても不思議に思わない程の大きさ、ぱっと見50m近くの大きさになっていた。
「ニャァァン」
おー! スゲェ声が響くぞ。これで背中にエラが生えてたら、リアルゴジラだ。いや、この場合ゴジニャーのが正しいか? てかもう鳴き声が怪獣にしか聞こえない。これなら大型の魔物に遭遇しても安心だな。そん時はカメラを回して、怪獣映画を撮るのもありだな。
そうだ、小町に見せる用に写メを撮ろう。きっと驚くぞ。
「おい! なにしてんだカマクラ!? やめろ!」
写メを撮っていたら、いきなり俺の後ろ襟を摘まんで持ち上げだして、自身の顔の真ん前まで持っていかれた。目の前には巨大化したカマクラの顔がドアップ。怪獣映画に出てくる食われる寸前の人間の気持ちが分かったわ。ってコイツ、俺を食べるつもりじゃないよな!?
「ニャ、ニャニャ」
訳:ド腐れがちいせぇ
「おいマスターに小さいとか、随分と偉くなったな腐れ猫。いいから早く降ろせ!」
「ニャ~」
訳:そんなこと言って良いのかな~
ニヤッとしだしたカマクラは、俺を摘まんだまま揺らし始めた。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉおおおっ!! あぁぁあぁぁあああっ!?」
これは人類未体験の絶叫アトラクションなのかもしれない。
浮遊感、恐怖感に襲われて絶叫してまうが、カマクラはやめてくれない。
結局ゴジニャーことカマクラさんが満足するまで、俺は玩具にされる羽目となった。
♢ ♢ ♢
カマクラの玩具にされた翌日。
結局あの後、俺はあまりの恐怖にダンジョンで気絶した。起きたら家のソファーで寝てたけどな。
勿論カマクラにはお仕置きした。タマエ協力の元、風呂に無理矢理入れたらいい声で鳴いてたよあの腐れ猫。ククッ、ざまぁ。
「ザリン、お前の飯が出来たぞ」
「しゃ~♪」
首に巻き付いてるザリンにゆで卵を殻ごと渡すと、一気呑みしていく。昨日、冷蔵庫にある物を見せたら卵に反応してたから、色々試したら殻付きゆで卵が一番の好物だと判明。
ゆで卵を三つ吞み込んだ辺りで満足したのか、細い舌で俺の頬を撫でてきた。
「そうかそうか、美味かったか。ザリンは素直でスベスベしてて可愛いな」
「むぅ~、あるじ様が蛇さんとイチャイチャしてる~、ズルーい!」
ザリンのスベスベ鱗を堪能してたら、タマエが俺の腕を雑に揺らしてきた。
昨日からずっと俺の首に巻き付いてるザリンに嫉妬しちゃったのかもしれない。アレだ、お兄ちゃんが取られたと感じたんだろうな。うん、そう思いたい。
「ちょ、ちょタマエ。暇ならジャガイモの処理をしてくれ」
「あるじ様、後でわたしとも遊んでね?」
「ああ、スマブラでも桃鉄でも何でも付き合うから」
「わーい! スマブラ!」
納得したタマエは、エプロンを付けて料理の補助に入ってくれた。
最近のタマエはソニックの使い方がいやらしくなってきたから、手加減出来ないんだよなー。そろそろクッパじゃなくて、得意キャラのMrゲーム&ウォッチで本気を出すときが来たようだな。
タマエが手伝ってくれた事で、カレーが予定より早く完成した。
従魔士Lv8→従魔士Lv9。
謎だ。何故かジョブレベルが上がったぞ。
「あ……【テイマークッキング】か」
確かテイマークッキングは、自身の料理にオートで従魔へのバフ効果を付けるスキルだったな。昨日のザリンのテイム成功と合わせて、経験値が溜まったのかもしれない。てか、今回はスキルの追加はねえのかよ。よこせよ。
「あるじ様?」
「いや、なんでもない。料理も出来たし、他の奴らを呼んで来てくれ」
従魔達と料理を食べ終わって、その後は思う存分タマエ、ゴブタニとスマブラで遊んだ。
いや、マジで危なかったわ。大人気なくハメ技を使いまくったぞ。お陰で二人からの視線が痛かった。
俺は悪くない。スマブラはハメ技を覚えてからが真のスタートだ。二人とも今まで以上に精進したまえ。
「ギミィ、ギミィ」
ネットで情報収集をしてると今度はエルランが、俺のズボンを噛みながら引っ張ってきた。なにこれ、今日の俺めっちゃ人気者じゃん。ったく、人気者はツラいぜ、HAHA。
「何だよ? お前が俺に用って、珍しいな」
そもそも引きこもりのコイツが、俺の部屋から出てきてる時点で驚きだ。腹でも減ったのか?
「ギミィギミィー」
「車? 車に乗ってみたいのか?」
そう聞くと騒がしく跳ねだした。引き籠りのこいつが、何かに興味を持つって珍しいな。
せっかく興味を持ってくれた事だし、自由にさせてやるか。
俺はエルランを抱えて、外に行く。
プリウスのドアを開けてやると、ベロで物色しだした。
気持ち悪いから、あんまりハンドルを舐めないで欲しいんですけど……。仕方ない、後でアルコールで拭くか。
「ギミィ」
「はいはい、ボンネットとトランクね。エンジンは汚いから舐めるなよ」
「ギィ、ギミィ!」
ボンネットとトランクを開けると、さっきより騒がしくはしゃぎ始めた。
コイツ、どんだけ車大好きなの? まさか同種と勘違いしてる? それとも、loveな方の意味で車に恋した?
「ギミィ!」
しまいには走らせたいとか言い出したぞ。
「運転はさせられないが、ドライブに行くか?」
行きたいらしのでタマエ達にも聞くと、カマクラとサブレ以外が乗車する。
多分だがカマクラとサブレにとっては、車=病院なのかもしれない。要はトラウマ。病院が怖いなんて可愛い所があるなアイツら。
「あるじ様とドライブ~♪」
「お前ら、シートベルトしたか?」
全員のシートベルトを確認して出発。辺りを30分程軽くドライブした。
軽くドライブをしただけなのに、物凄く疲れた。
原因はゴブタニの乗車マナーが超悪かったからだ。人が近くを通る度に、車窓から顔を出して驚かせると言うトンデモ
♢ ♢ ♢
目指すべきは
中々寝付けない中、そんな事を考えながら自室の天井を呆然と眺める。
英雄と言うのは言い過ぎだが、俺は何かしらの大きな功績を得なければならない状況にある。
別に誰かに強要されてる訳じゃないし、陽キャじみた英雄願望に取りつかれた訳でも無い。ただ、俺にとって一番都合の良い未来を掴み取るにはデカイ功績が必要だ。
功績が必要な一番の理由としては、俺と雪ノ下が交際──結婚を視野に入れてるからだ。
雪ノ下との結婚を視野に入れた場合、嫁入り及び婿入りどちらにせよ名門である雪ノ下家の仲間入りをする事になる。
予想だが、結婚の条件に幹部候補として雪ノ下HDに入社させられる気がする。
いや予想では無く、確定だろうな。
何故なら昔、雪ノ下建設に入社する体裁で話が進んでたからだ。まぁ雪ノ下と破局して白紙になったけど。
一見雪ノ下HDの幹部候補とか好条件に思えるが、今の俺には最低最悪な条件だ。
雪ノ下HDがGAFAM並みの規模に成長したとは言え、サラリーマンになったら年収に天井が出来る。上席役員になっても良い所、2500万であろう。とてもじゃないが従魔達を養える額じゃない。今後も従魔が増える可能性が高いしな。なんならドラゴンが生まれるのは確定してるし。
故に婿入りは下策。俺が目指すべきは雪ノ下を嫁として貰い、雪ノ下家にフリーの探索者として認めて貰う事。
事情を話して雪ノ下HDお抱えの探索者になる道もあるが、これは下策を通り越して愚策。
確実に、週に何回も宣伝の為に配信をさせられるし、難易度の高いモンスター素材を依頼される可能性が高い。高難易度ミッションはまだ良いとして、配信なんて週一で良いんだよ、週一で。アレは従魔達の趣味みたいなもんだ。ネットリテラシーの高い俺は、どちらかと言うと心情的には未だ配信には反対だ。
ああ、陽乃さんが誰か捕まえて電撃結婚でもすれば、雪ノ下家の跡継ぎ問題が解消されるんだが……。うん、そんなミラクルは起きないな。
まあベラベラと建前を並べたが、結局の所全て俺の我儘だ。せっかくサラリーマンから解放されて、老後の資金集めも順調。交際相手の実家とは言え、企業だとかの組織に入るのはもう御免だね。俺は今の、休みたい時に休める従魔達と暮らす環境を凄く気に入っている。
かと言って、雪ノ下家に認めて貰えるぐらいのドデカイ功績ってなんだ?
そう言えば、俺のYouTubeアカウントってチャンネル登録者50万だよな……いやダメだ。これだと小さい。
雪ノ下の従姉妹はチャンネル登録者が200万、それに比べたら自慢にすらならない。
やはり配信ではなく、本業であるダンジョン探索の功績が必要だ。
「なら行くべきは──」
──
【
また世界には【オリンポス】【ヴァルハラ】【エデン】【アトランティス】と呼ばれる超高難易度ダンジョンがあるらしい。
俺が【邪魔大極】に狙いを定めた理由は東京にあるから。種別は超広域型ダンジョン。規模の詳細は不明。なにより未攻略(世の中のSランクダンジョンは全て未攻略)。
だが果たして俺達に、
やはり準備が必要だ。だからと言って年単位の時間は掛けられない。時間を掛け過ぎれば、俺と雪ノ下の復縁があちらの実家に露呈する。
「悩んでる場合じゃないな」
やる事は決まった。
俺の──違う、
柄じゃないのは理解してる。
でも、もう目立ちたくないとか言ってる場合じゃないだろ。
目立ちに行くんだ。
春先に偉業を成し遂げ、万雷の拍手を浴びる。
大衆に見せつけるは、誰もケチをつける事が出来ない程の
ダンジョン史に刻むは、
なにより探索者が手っ取り早く有名になる方法は
「……やってやるよ」
腹を括った俺は次第に意識がまどろみ、気づけば夢の世界へと飛んでいた。
♢ ♢ ♢
目の前にあるのは虹色の卵。探索者協会から情報提供の報酬で貰った八億の価値がある卵だ。
現在リビングにて、その卵を従魔全員で囲んでいる。
ルーメリアが表情を引きつってるのは一体、どうしてなのだろうか……
「マスター、盛大にやらかしましたわね」
「……またオレ何かやっちゃいました?」
「キッショ」
冷たく言われ、俺は潔く「ごめんなさい」と謝った。
ちょっとはマスターの鈍感系ごっこに付き合ってくれてもよくないですか? 例えばさ「これだからマスターは~」ってヒロインが言いそうな事を言ってくれてもいいじゃないですか。
まぁそこは、流石異世界魔王と言った所か。あっさり村人の戯言を切り捨てる辺り、容赦がない。
「その様子だと、何の卵か知らないみたいですわね」
どうやら、魔王様は何の卵か知ってるようだ。セリフからしてヤラかし案件なのは間違いが無い。俺的にはユニコーンみたいな可愛い魔生物が生まれて欲しい。
遠慮願いたいのは、ドラゴンみたいな大きくて食費の掛かる奴だ。ドラゴンなんて生まれてみろ、間違いなく俺の胃がヤバイ事になる。もうヤフーニュースなんかに乗りたくない!
「まあ良かったですわね。これはどっから見ても龍王種の卵、超大当たりですわ」
……orz。聞かなかった事にしたい。
ヤバイ、胃が超痛い。なんでユニコーンじゃないんだ。これがフィクションの中ならドラゴンは超大当たりかもしれない。だが、ここはリアルだ。ましてやドラゴンの飼育方法なんて確立されてない。
本当龍王ってなんだよ、ラスボスの種族じゃねえか。いやさ、マジで鎌谷幕府の方向性が魔王軍じみてきてる気がする。魔王だとか、九尾だとか、征夷にゃん将軍とか、龍王って最早過剰戦力だろ。アニメとゲームに登場するラスボスのオールスターだよ。
「……HAHA」
もう笑うしかない。世界初のドラゴンの飼い主になった、と自信をもって言えるぞ。全くもってイヤな世界初だなオイ。
「ニャ……」「ゴブ……」
訳:ドラゴンの肉……
おい、肉食のオス共が良からぬ事を考えてるぞ。その証拠に、涎を垂らしてる。まあ俺もドラゴンの肉に興味が無い訳では無い。だが、この卵は中身も含めて八億もの価値がある。なんなら、龍王種って分かった現状、価値が跳ね上がったまである。悪いが、八億以上もの価値がある肉を食う勇気なんて俺には無い。
念の為、卵は肉食共から遠ざけておこう。
「わーい! ドラゴンさんの卵!」
どうやらタマエは、ドラゴンに興奮してるようだ。まあ子供からしたらドラゴンってカッコイイよな。
小学生の時、俺が買った裁縫セットはモロにドラゴンのイタデザインのヤツだったしな。今思えば男子小学生なんて、あのドラゴンの絵柄のヤツ一択だろ。
俺も童心に帰る事が出来れば、どんなに幸せな事か……。
「やっぱ協会に返してくる」
うん、童心には帰れないけど、協会に返してこよ。そして五億を貰う。
卵を抱えようとしたら、ルーメリアに腕を掴まれた。
「待つんですのマスター、龍王種ならとびっきりの戦力になりますわよ」
「ランニングコストを考えないならそうだろうよ。悪いが、養える気がしない」
「大丈夫ですわ。幼龍の内はそんなに餌代は掛からない。強くなっていけば龍人化のスキルを覚えるので、餌代も節約可能ですわよ」
ああ、この展開はアレだ、どうせ龍人化したらメスガキドラゴンになって俺に
「あぁ、なるほどですわ」
魔王様が勝手に一人で納得しだした。
「マスターは反乱を危惧してるんですのね。でも、わたくしが居るから安心! 全盛期の時は何体もの龍王を倒しましたわ」
聞いてると安心に思えてくるが、俺は1ミリも安心出来ない。ドヤ顔で全盛期の頃の話をされても、説得力ねーよ。
「そもそもマスターの魔力で孵化させるんだから、反乱なんて起きませんわよ」
「うん? 魔力で孵化って何だ?」
たまにルーメリアのこう言う所には、付いて行けなくなる。
異世界の常識を、さも俺が知ってる前提で話さないで欲しい。ルーメリアとの認識の齟齬を無くすべく来週辺り、異世界講義でも開いて貰うか。
「龍を孵すには毎日コツコツと、卵が光るまで魔力を流せば良いんですのよ。そうすれば、生まれた時に仲間だと勝手に思ってくれますわ。早速やってみて下さいな」
探索者協会が孵せない訳だ。誰もお試しで魔力を流さなかったんだろうな……。
結局場の空気に流されて、俺は卵に優しく触れながら魔力を流す羽目になった。
だってしょうがねーだろ。従魔達が、期待の眼差しで見つめてくるんだから。
お兄ちゃん的には、応えたくなっちゃうんだよ。
「わぁぁ……光ってますね、あるじ様」
タマエの言う通り、卵は虹色に光だした。
ドクンドクン、と温かさが卵に触れてる手から伝わってくるのを感じる。
──よろしくね
なぜだか卵の中から、薄っすらと声が聞こえた気がする。
間違いない、この卵の中には命が宿っている。
「あぁ、焦らず元気に生まれてこいよ」
まぁ何だ、予定変更だ。これも何かの縁だと思って、俺がちゃんと責任を持って育てよう。
番外編の時系列は30話と31話の間です。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!