か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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4:やはりダンジョン攻略には、質と量が必要である。

 結論から言おう、超攻撃特化役(ダメージディーラー)の1匹と荷物持ち(サポーター)の1人だけではダンジョン攻略は不可能だ。いや戦力は申し分ないが、継続戦闘がキツイ。腹が減るから食い物は必要だし、ドロップ品も金銭的に拾う必要があるから荷物が次第にかさむ。だから荷物持ちがもう1人……いや人では無く従魔が欲しい。

 だから、

 

「カマクラ。悪いが今日は実験に付き合って貰うからな。だから、魔石はあんまり食べれないぞ」

 

 現在、俺達は庭裏ダンジョンにいる。

 俺の持ってる魔石の数は30。実験には心許ない数だが、今後を考えるとやるしか無い。ここでやらなきゃエリクサー症候群になっちまう。

 

「にゃっ!?」

 

 え、マジ!?と言いた気な良いリアクションだ。こんな面白いリアクションする猫は初めて見たぞ。

 

「いやいや、良く考えてみろ。荷物持ちをもう一匹増やせば今後はもっと魔石を食べれるぞ?」

 

 荷物持ちに食わせる魔石も用意しなきゃイケなくなるけどな。まぁそれはどうにかする。て事で任せたぞ未来の俺。

 

「……にゃーん」

 

 渋々だが了承してくれたようだ。まったく、本当に食いしん坊さんなんだから。

 食いしん坊な相棒の了承も得て、俺達は進んだ。そして、進んだ先でお目当ての集団に出くわす事が出来た。

 

「カマクラ。あの気の抜けてそうな面してるゴブリンだけは痛めつけるだけに留めて置いてくれ」

 

 4体のゴブリン集団の中に一匹だけマヌケ面がいたので、そいつでテイム実験をする事にした。マヌケ面にした理由は顔がそこまで醜悪じゃないからだ。俺は寝起きで視界に入れてもsan値が減らないヤツを従魔にしたい。

 

「にゃぁぁぁぁあ!」

 

「「「ギィィ!?」」」

 

 カマクラは瞬く間に3体を三枚おろしにした。そして、

 

「ゴブ!ゴブ……ゴッ……ゴッ……」

 

 マヌケ面はカマクラにマウントを取られ、猫パンチで顔面をボコスカ殴られる。

 猫パンチなんて響きは可愛いが、カマクラは地団駄で地面に亀裂を作るぐらいだから相当痛いに違い無い。てか、アイツだけゴブって鳴くのかよ。ちょっと可愛いな。

 

「ストップだカマクラ! そいつはもう気絶してる」

 

 カマクラは殴るのやめて、ゴブリンから降りた。近づいてみるとゴブリンは口を開けながら目を渦巻きにして倒れていた。

 

「第1実験をやるか」

 

 俺は倒れてるゴブリンに掌を向けて、契約魔法の「テイム」を唱えたが、

 

「っ!!……チッ」

 

 ビッ、と静電気が流れる感覚。感覚的に魔力の繋がりを弾かれた事を理解したからか、舌打ちが零れた。

 

「もう1回だ。テイム!」

 

 またビッと弾かれた。

 まぁいい、これならまだ想定内だ。

 

「第1実験失敗。第2実験に移行する」

 

 手に持っている小魔石に魔力を流すと、魔石は緑色に小さく輝きだした。

 俺はゴブリンの口の中に輝く魔石を強引に捩じ込んだ。

 

「よし、もう1回検証だ……テイム!」

 

「ゴッ……!」

 

 一瞬ゴブリンがピクッとしたが、また気絶した。成功したのか失敗したのか分からない。弾かれた感覚はしなかったが……。

 

「カマクラ。コイツが起きた時に攻撃する素振りを見せたら首を刎ろ」

 

「にゃー!」

 

 カマクラの返事を聞き終え、待つこと5分程。

 

「ゴブ……」

 

 ゴブリンが気絶から再起して、頭を掻きながら周りをキョロキョロしてると俺と視線が重なった。

 

「おいゴブリン。お前は敵か?」

 

 バットを向けながら冷たく問うと、ゴブリンは慌てて両の掌を左右に振りまくった。こっちの質問の意図が通じてるようだ。

 

「なら味方か?」

 

「ゴブッ!ゴブッ!」

 

 今度は大袈裟に首を縦に降ってくる。

 当たりだ。まだサンプル数は1だが、ひとまず実験成功だ。

 成功体験に内心浮かれていると、

 

従魔士Lv1→従魔士Lv2。

スキル【モンスターブック】。

 

 今までに無かった情報が頭の中に急にインプットされたような感じがした。

 俺個人のレベルが上がる前に、ジョブLvが上がるのか……。従魔士は個人Lvが上がりにくいのかもな。単体だと雑魚だから仕方ないが。

 

「来い、モンスターブック」

 

 脳内にインプットされた情報を元にスキル名を唱えると、目の前に広辞苑4本分ぐらいの大きさがある黒い本が浮かんで出現した。

 宙に浮かぶ本とかマジでファンタジーだな。うっかりアカンパニーオンって叫ぶとこだったぞ。

 

「どれどれ……」

 

 1ページ目にはカマクラの情報が書かれていた。

 これだよ、これ。俺が1番知りたかった従魔の情報だ。従魔の情報が無いと作戦が立てづらいんだよ。こう言うスキルぐらい最初からオマケしろってんだ。

 

ネーム:カマクラLv5

種族:招き猫

スキル:【招福】【斬鉄爪】

 

ステータス

生命力:2500/2500

魔力量:1300/1300

筋力 :+2800  

耐久力:+1800

敏捷力:+3100

知力 :+800

 

 カマクラのステータスが高いのか低いのか、分からん。見て分かるのは、物理アタッカー寄りのステータス構成だって事だ。+ってのは多分、レベルが付与してくれる数値に違いない。

 それと、

 

「お前って招き猫だったのかよ……」

 

「にゃ〜♪」

 

 気になったのでスキル【招福】をタップしてみた。

 

・招福

自分と周りに幸運を招く。

 

 はい! チートスキルでした! 確定ドロップだったのはこのスキルのお陰なのね。これで俺は一生カマクラさんに頭が上がらなくなったぜ☆

 

「物理アタッカーでラック補正持ちとか、お前はどこの主人公だよ」

 

 カマクラは引き続き前衛だな。と言うより前衛以外は考えられない。

 

「ゴブ! コブ!」

 

「あ、悪ぃお前の事忘れたわ……」

 

 そうだったゴブリンを従属させたばっかだった。

 

「ゴブ、ゴブ」

 

「うん? 名前が欲しいのか?……ちょっと待ってろ」

 

 困った、なんも考えてねぇわ。そう言えばカマクラの名前は小町が付けたんだっけ。て事はこれが俺の人生初の名付けになるのか……センスが試されるな。

 

「ゴブリンだから……ゴブ太郎……いや、ありきたりか。ゴブ……! よし、お前はゴブタニだ」

 

「ゴブッ!」

 

 ゴブタニ君が手で万歳をして喜んでるから問題無いな。昔、ヒキタニ君ってのが居たらしいからそいつから取った。まぁ俺はヒキタニ君と話した事なんて無いけどな。

 

「お、ページが追加された。名前を付けると追加されるシステムなのか……?」

 

 僅かに本が光ってページが増えた。

 しかも面白い事に意識しただけで勝手にページが捲れてくれる。

 

ネーム:ゴブタニLv1

種族:ゴブリン

スキル:

 

ステータス

生命力:250/250

魔力量:200/200

攻撃力:+230

耐久力:+140

敏捷力:+160

知力 :+30

 

 なと言うか……弱っ! カマクラと比較するとゴブタニ君マジで弱い。そんなゴブタニ君より弱いのが俺だけどな。

 従魔の確認も終わったので、戻るように念じてみると本が消えた。

 

「…………一緒に頑張ろうな、ゴブタニ」

 

「ゴブ……」

 

 ゴブタニのあっはい、となんとも言え無い返事を聞き、俺達はダンジョンの外へと出た。

 

「よし。来い、モンスターブック」

 

 ダンジョン外に出れた事を確認したので、モンスターブックを改めて出現させる。試してない能力がまだあるから試さなきゃな。

 

「えーと、タップっと」

 

 ゴブタニの絵を「入れ」と念じながらタップすると、ゴブタニが光となって本の中へと吸い込まれた。

 次に「出てこい」と念じながらタップすると本から現れた。

 

「なるほどな、これは便利だ。カマクラも入ってみるか?」

 

「にゃーん」

 

 魔石くれるなら良いよ、らしい。

 経験させるのも大事なのでカマクラを本の中に入れてみる。

 

 よし、カマクラも問題なく入れるな。て事で出て来い、カマクラ。

 

「どうだったカマクラ?」

 

「にゃ〜♪」

 

 暖かい場所らしい。俺も無職に優しいくて暖かい世界に行ってみたい。因みに実家は暖かく無い上に、確実に白い目で見られる。

 

「お前達にはこれをやろう」

 

 上機嫌な俺は2匹に魔石を渡した。

 カマクラはいつもみたく素早く呑み込み、ゴブタニはせんべいを食べるみいたいに齧じりながら口に入れた。

 

 ゴブタニはどうするか……。本に入れっぱなしにするのも可哀想だしな。普段から一緒に居た方がいざって時の連携も取りやすいだろ。

 

「おい、ゴブタニ。家の敷地内からは出るなよ。あと、女に話かけられたら美人局だと思え。まだあるぞ、『友達だろ?金貸してくれよ〜』って言ってくる奴も信じるな。次は……」

 

 ゴブタニに社会の厳しさを教え終えると、敬礼しながら「ゴブッ!」って返してくれた。そんな俺達を何故か、カマクラは冷めた目で見てたけどな。

 どうやら、カマクラにも社会の厳しさを教える必要があるな。

 

「今日は新入りも居るし、晩飯はすき焼きにするか」

 

 と言う訳で、晩飯は2匹と一緒に牛すき焼きを食べた。初めて人間の食べ物を食べたゴブタニが、美味さのあまりに昇天しかけたのは見てて面白かったぞ。

 MAXコーヒーは吐き出したけどな。解せん!

 

♢ ♢ ♢

 

 朝の清々しい空気を吸いながら、俺とゴブタニは庭でせっせっとバットを素振りしている。

 素振りしてる理由は、バットを振るにも技術と言うか、慣れが必要だと思い知らされたからだ。振る際に重心が定まらずに体が持ってイカれそうになるし、何より連続で振ると直ぐに腕が疲れる。

 優れた刀とか剣を買えば良いって思うかもしれないが、買った所で宝の持ち腐れになる。ファンタジー小説と違って、素人が切断に特化した武器を一朝一夕で扱える訳が無い。かなりの熟練度を要求される。その点、バットなどの打撃系武器のがまだ扱いやすい。

 

「29……ハァハァ……30!」

 

「ゴブッ!」

 

 疲れたせいか、俺は仰向けで地面に横たわる。

 地面ってこんなに冷んやりしてて気持ち良いんだな……。

 ハァハァ息を上げながら視線を横に向けると、ゴブタニは未だにバットを振り続けていた。

 ゴブリンって体力あんだな。いや、俺が無さ過ぎるのか。

 

「ゴブタニ。俺はランニングしてくるからカマクラのキャットフードを用意してやってくれ。棚の2段目にあるから宜しく」

 

「ゴブッ!」

 

 了解の返事を聞き、俺は敷地外へと走り出した。

 

 最近やけに生活習慣が良い。これも金策の目処が立って、希望が出てきたからに違いないな。当面の目標は戦力のさらなる増強って所か。いずれカマクラの物理攻撃が通じ無い敵が現れるかもしれないからな。後は……俺個人のレベル上げ。このままカマクラに寄生プレイさせて貰お。飼い主としてのプライド? あるかそんなもん。戦闘面は従魔に頑張って貰って、こっちは衣食住を提供する。これが従魔士としての正しい生存戦略だ。

 

 そんな事を考えながら走ってると、気づけば家の周りを2キロ分周回していた。満足した俺は家に戻り、朝風呂を済ませて朝食を食べ終わってから裏庭へと行く。

 

「おっし。今日も稼いで、魔石を食べるぞ!」

 

「にゃー!」

「ゴブッ!」

 

 俺の掛け声に、2匹は気合いバッチシで応えてくれた。今の俺ちょっとだけリーダーぽくなかった? まぁ人間相手にやったら「リーダー面すんなよ雑魚」とか言われるに違いない。俺のリーダー経験なんて小学校の時に無理矢理遠足の班長にされたぐらいだからな……。うん、もう昔の事は忘れよう。

 ゴブタニの分の登山用リュックやバットも買ったから、意外と支出がデカかった。故に我らはより稼ぐ必要がある! て事で今日も、いざダンジョンへ!

 

 ゴブタニを加えた俺らは順調にダンジョン探索を進めている。

 俺とゴブタニで、荷物持ちをやる事でかなり効率が良くなった。俺が継続戦に必要な物、主に飲食類をリュックに入れ、ゴブタニがドロップ品を回収する。こうする事で以前より長くダンジョンに滞在出来るようになった。

 

「行くぞゴブタニ!」

 

 カマクラが2体のゴブリンを瀕死状態にしてくれたので、俺らはリュックを下ろし、瀕死のゴブリンにバットを振ってトドメを刺す。

 

「相変わらず慣れねぇわ……」

 

「ゴブッ!」

 

 ゴブタニも倒し終えた様だ。

 どうやら同胞を殺す事への忌避感は無いらしい。かなり積極的にボコスカとバットで殴ってたしな。嬉々として同族をぶちのめすゴブリン、マジおっかねぇわ。

 

 そんな、いつものカー君寄生ルーティンを遂行してると、

 

「お前ら待ってk……あぁぁぁぁああ! 全身が痛い!」

 

 気だるさを感じた次の瞬間、急に俺の全身が痛みによる悲鳴を上げ出した。そんな俺は地に腰を下ろすが、痛みが止む気配が全く無い。

 誰かに攻撃された訳でもないのに、一体何が起きてる!? 全身筋肉痛みたいなこの痛みは何だよ!

 

「お前ら…あぁ!痛い!……撤退だ! ゴブタニ、俺を引きずってくれ!」

 

 即撤退を二匹に命じると、カマクラは俺のリュックを口に咥える。ゴブタニは俺の服の襟を掴み、俺を引きずりながら出口へと向う。傍から見たら完全に凶悪なゴブリンに狩られた人間だ。

 途中、何体かのゴブリンに遭遇したが、ラッキーキャットことカマクラさんが蹴散らしてくれた。カマクラが居なかったらマジで詰んでたわ。 

 

 出口から裏庭へと出ると、ゴブタニが離してくれたので手に持ってたバットを杖のように使ってどうにか立ち上がる。

 

「今日は解散だ。各自自由にしてくれ。それと、ゴブタニは分かってるとは思うが外に出るなよ」

 

 二匹の返事を背中越しに聞きながら俺は自室に行き、ベットの上に横たわる。

 身体中が軋むが、命が危機に瀕しているって感じはしない。むしろ、身体が何かしらの準備をしてるような感じがする。

 やっぱり俺はダンジョンを知らな過ぎる。そう思いながら俺の意識はブラックアウトした。

 




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