か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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37:得てして、比企谷八幡の仕事は増えていく。

 何故だか楽しいクリスマスパーティーが終わっており、翌日になっていた。

 マジで記憶がねぇ……。何が一番怖いって、起きたらルーメリアとタマエに挟まれる形で一緒にベッドで寝てた事だ。

 だがまぁ、情事特有の性的な香りもしなかったし、2人はちゃんと服を着ていた。恐らく変な事はしてない筈だ。うん、してないと信じたい。

 

 今度から酒はマジで程々にしよう。日々の胃痛案件のせいで、ストレスが溜まってたからと言って酒に逃げるのは良くない。酒は飲んでも呑まれるな。これからの教訓にしよう。

 

「準備出来ましたわ。それでは、これから魔力を用いた戦闘技術の基礎を教えますわ」

 

 ルーメリアに戦闘に関する技術を教えてもらうべく、現在庭で胡坐をかいて座っている。

 こっちは汚れる事を想定してジャージだと言うのに、ルーメリアはI♡千葉Tシャツを着ていてダル着姿だ。

 教えを乞う側だから余り偉そうな事は言いたくないが、コイツは本当に教える気が有るのか……?

 

「まずは……マスターが自身の強さと従魔士についてどれぐらい認識してるのか、知りたいですわね」

 

 そして「ご自身の強さについて、従魔士について、どう思っていますの?」と聞かれた。

 質問の意味は分かるが、マシな答えが用意出来そうに無い。

 そもそもジョブについても良く分かってない。ルーメリアが前に言った通り、この世界はファンタジーに関しては黎明期。よって未だに様々な事に対して手探りな部分が多い。 

 とりあえず、今までの経験から分かってる事だけを述べよう。

 

「正直従魔士については、魔物依存の(ジョブ)と言う事以外は分からん。だから俺の強さは、お前達従魔に依存している。俺単体なら虫けら以下だ。よって、これからも俺を養ってくれよ」

 

「卑屈な上にクズですわ……しかもなんで、そんなに誇らしげな顔が出来るんですの……」

 

 ゴミムシを見るかのように、痛い視線が飛んでくる。

 おいおい、何年ごみぃちゃんをやってると思ってるんだ? その視線はむしろご褒美だ。やっぱ噓です、俺はマゾヒストなんかじゃない。

 

「兎に角だ、俺単体だと雑魚過ぎるから戦闘技術を教えて欲しいんだよ」

 

「まあ雑魚なのは確かですわね~、マスターの雑ぁ魚♡ 雑ぁ魚♡ ざこざこマスタ~♡ 飲み比べでわたくしに負けたゲロマスタ~♡」

 

 唐突に始まったメスガキ構文による煽り。コイツは進化して側がお姉さんになっても、中身は邪悪(メスガキ)のようだ。

 超ぶん殴りたい、そのメスガキフェイス。

 殴り掛かった所で返り討ちに遭うのが目に見えるから、やらないけど。

 

「そうか、今日のお前の飯は水とコッペパンだけだ。良かったなメスガキヴァンパイア」

 

 質素な飯が嫌なのか、メスガキの表情が死んでいく。

 分からせに成功したようだな。

 

「…………冗談は置いといて、わたくしが元の世界で戦ってきた従魔士達は間違いなく、単体だけで見るならマスターより何倍も強かったですわ」

 

 冗談じゃなかった癖に、冗談って事にして自身の知見を語りだした。

 これだよ、これ。俺以外の凄腕従魔士の話が聞きたかったんだよ。正直もっと早めに聞けばよかったとも思う。ただ、俺的にはどこまでルーメリアの過去に踏み入っていいのか、いまいち判断が付かないんだよな。こいつの事だから、なんでも話してくれそうな気がするけど。でもコイツの過去話って、確実にグロテスクマシマシなんだよな~。

 

「従魔の質はわたくしやカマクラさんがいるからマスターが圧倒的ですが、個人の強さに関してはド底辺ですわ」

 

「お、おう……」

 

 いやさぁ、自覚はしてるんだよ? でも面と向かってド底辺って言われると、流石に傷つくんですよね。

 

「そもそもこの世界の冒険者……あぁ、この世界では探索者でしたわね。YouTubeの配信を見た限りだと、誰も彼もジョブスキルとステータス頼りで、戦士としての質が低すぎですわ。ステータス基準の考えはすぐに改めた方がいいですわよ」

 

 根本的な考えが覆されていく。補正値の数字が強さの基準にはならないのか……。まあよくよく考えてみれば、ルーメリアが以前使ったみせた魔力燃開みたいな魔力技術(バフ)もあるしな……。

 

「……なぁ、良く分からないけど、お前のいた世界だとジョブに当たりハズレの概念が無かったって事か? ステータスの補正値を過信するなってのも、魔力技術で自己バフが出来るからか?」

 

「そうですわ。時にマスターは、ワンピースは好きですの?」

 

 これは多分、服のワンピースじゃなくて、ジャンプのワンピースだよな。

 でも、なぜいきなりワンピース……。海賊王になるつもりは無いぞ。

 

「いきなり話が変な方向に行ったな。ああ、普通に好きだぞ」

 

「悪魔の実ってありますわよね? どんなジョブも悪魔の実と同じで、腐らないで鍛え上げれば化けますわ。まあ、戦闘で一番大事なのは、魔力の戦闘技術ですけど」

 

 ああ、言いたい事が分かったわ。ジョブが悪魔の実で、魔力を用いた戦闘技術が覇気みたいなものか。

 確かにその理論だと、どんなジョブを引いてもハズレは無いな。仮に生産系のジョブになったとしても、サブウェポンとして使えば良い、と思考になるしな。

 そう思うとワンピースの主人公(ルフィ)って凄いよな。ゴムゴムの実なんて一見弱そうなのにギア2、ギア3だとかのカッコ良くて強い技を生み出したのは流石としか言いようがない。今でこそヒトヒトの実幻獣種モデルニカだと発覚したけどな。

 

「これからマスターに教えるのは、放魔、変魔、強魔の戦闘技術……って言いたい所ですが、まずは基礎的な魔力操作からですわね」

 

 意味分かんないんですけど。魔力操作以外の単語が意味不明過ぎて、気になる。

 聞こうかな……いや、ここは魔力操作だけに集中すべきだな。うん、こう言うのは焦っても仕方ない。

 

「お、おう。まず何からすれば良いんだよ」

 

「なら早速、右手に魔力を集めてみて下さいな」

 

 そう言われたので、魔力を右手に集めてみる。

 めっちゃ楽じゃね? 簡単にできるぞ。

 舐め腐ってると、目の前のメスガキが憎たらしく鼻で笑った。

 

「フッ……手の内側では無く、外皮に纏って下さる? こんな風に」

 

 自身の光る右手をドヤ顔で見せてきた。

 ほんの少し……いや、結構ムカッときたので、見返すべく俺もやってみる。

 

「出来ねぇんだけど……」

 

 何故だ。魔力を右手に集めるのは簡単だが、外皮と言うか、外に纏わす事が出来ない。

 悪戦苦闘してると、メスガキ魔王がゲス顔で煽ってきた。

 

「プッ、ププ、出来ないんですの? 意外と余裕じゃね?みたいな顔したのに? ねぇねぇマスター、今どんな気持ですの!? ねぇねぇどんな気持ちですの!? 教えて欲しいですわマスター!」

 

「ぐっ、ぬぬ」

 

 ムカつき過ぎて集中力が切れた。

 マジでコイツ、クソみたいな煽り構文をどこで覚えたんだ。

 たまに炎上系YouTuberの動画を見てる影響かもしれない。あのクズ共、教育に悪過ぎだろ。

 

「言っときますけど、これも修行の一環ですのよ? どんなに煽られても、魔力操作の集中を切らせてはダメですわ」

 

 本当かよこのメスガキ。面白半分で、煽ってるようにしか見えなかったぞ。

 

「そう言う事にしといてやるよ」

 

 とりあえず魔力操作を再開。右手に集めた魔力を内から外に押し出すイメージでやってみるが、何も起きない。

 難し過ぎだろ。外皮に纏うって言われても、うんともすんとも言わねえぞ。

 

「あの魔王様? アドバイス下さいよ」

 

「これは理論では無く、感覚ですわ。割とマジで」

 

 理論派の俺にとって優しくないアドバイスだな、おい。

 ウワーってやってガオーってやれば出来るよ、と言われるよりはマシだけどな。

 

「そもそも一日で出来る訳無いですわ。わたくしですら完璧にマスターするのに2日も掛かりましたのよ」

 

 いやいや2日って充分天才の分類だろ。一週間かけても出来る気がしねーぞ。

 そうだ、よくよく考えればコイツは魔王だ。王の資質を持つ奴と自分を比べても意味がない。大人しく一週間を目標にやってみよう。

 

「強いてアドバイスするなら、魔力を強引に押し出すのでは無く、魔力を底から浮していくイメージですわ」

 

「そうか……当面、一週間を目標にやってみるわ」

 

 こう見えて俺はそこそこスペックが高いからな。一週間あれば何かしらのコツは掴めるだろ。

 

「まぁ妥当ですわね」

 

 朝の筋トレする時間と寝る前に魔法操作の訓練も加えよう。

 うん、こう言う地味な一歩一歩が強さに繋がる筈だ。

 

「最後に聞きたいんだが……お前が倒してきた従魔士達って、どのぐらい強かったんだ?」

 

 強さの指標を設定するべく、異世界の従魔士について聞くことにした。

 

「うーん、どう答えるか難しいですわ……少なくとも全員、わたくしを10分ぐらいは足止め出来るだけの実力はありましたわよ」

 

 10分って聞くとショボく聞こえるが、全盛期の魔王ルーメリアを相手に10分も粘れるのはかなりの強者だ。俺だったら2秒も持てばいい方であろう。マジでショボいな俺。

 違うな、俺がショボいんじゃない。コイツのいた世界の住人共が頭サイヤ人なだけだ。うん、そうに違いない。

 

「マスターは従魔の防衛線が突破された時を想定して、2分間粘ることを目標にされては? 2分もあれば確実に誰かしら、前衛から救援に来ますわ」

 

「お、おう、その的確な意見、検討しとくわ」

 

 確かに、俺には強い従魔達がいる。俺個人が最強になる必要はない。ある程度、足を引っ張らないぐらいの強さがあればそれでいい。やはり長所は活かしてこそだな。魔王様の意見は採用って事で。

 今日の訓練はこれで終わり。教えてくれたルーメリアに感謝を述べ、俺達は朝食を食べる事にした。

 

「おっと、朝食の前に」

 

 俺はルーメリアの最新のステータスを見るべく、モンスターブックを呼び寄せた。

 

ネーム:ルーメリアLv25(亜成体)

種族:トゥルーヴァンパイアクイーン

スキル

【異世界言語】

【操血魔法】

【魔力感知】

【状態異常無効】

【マジックドレイン】

【眷属招来】

【ミスト】

【魅惑の魔眼】

【日光無効】

 

称号

【戦血の魔王】【勇者殺し】【神殺し】

 

ステータス

生命力:2300/2300

魔力量:2300/2300

筋力 :+2300

耐久力:+2300

敏捷力:+2300

知力 :+2300

 

 姫様から女王様になっちまったよ……。女王にして魔王ってなんだよ。肩書き絞れよ。大企業にいる無駄に肩書きだらけのお偉いさんみたいだぞ。

 更に確認すべく、初見のスキルをタップする事にした。

 

【眷属招来】:蝙蝠を呼び出す

【ミスト】:自身を霧状に変化させる

【魅惑の魔眼】:自身より劣る存在を惑わし、従属させる

【日光無効】:太陽光による被害を受けない

 

 コイツ、もう吸血鬼の弱点らしい弱点ねぇだろ。

 でも、間違いなく一番ヤバイのは【魅惑の魔眼】だよな……。

 この魔眼が俺に向かない事を祈るしかない。

 

♢ ♢ ♢

 

 朝食も食べ終わって、魔石を補充するべくダンジョンに来ている。

 一部の従魔をルーメリアに預けて、俺の率いる部隊は一階層でゴブリンを相手に戦っている。

 何故、今更一階層かというと、引きこもりの為に様子見の研修をしてるからだ。

 

「よくやったザリン、そのまま抑えてろ!」

 

 ザリンによって首を締め付けられてるゴブリンの頭にバットで強打撃を与え、地面にひれ伏させる。

 探索者なりたての頃は、生き物を殴る感触に嫌悪感があったが、最近はなんとも思わなくなった。なんなら、殺すと魔石とドロップ素材を落とすATMだと思うようになっちまったよ。慣れてとは怖いものだ。

 

「シャー!」

 

 地面にひれ伏したゴブリンは、ザリンに首を嚙み千切られて粒子となって消えた。

 

「ギャギャ!」

 

 別方向から新手のゴブリン。最近ゴブリン駆除をしてなかったからか、数が多い。

 なんでこう言う弱小種族って、ゴキブリみたく増えるのだけは早いんだよ。

 

「エルラン、右側から来る新手を頼む」

 

「ギミィ!」

 

 そう、今日はなんと引きこもりのエルランが一緒に来ている。

 どういう風の吹き回しか分からないが、『俺も付いて行っても良いぞ』と言い出したので連れて来ている。

 言ってしまえばエルランの為に、今日は一階層で戦っている。

 ニートだった奴にいきなり難易度の高い仕事とか任せられないしな。それに、今回の戦いで自信を付けて貰えれば、今後も積極的にダンジョンに来てくれる可能性がある。

 

「ギャ……?」

 

 ゴブリンが棍棒で数回エルランを叩くが、びくともしないエルランに対して首を傾げる。

 多分効いてるぞ。耐久力が高めなだけで、痛みは有る筈だ。

 

「ギミィ、ギミィ!」

訳:イッテェなおい、ぶっ殺すぞ!

 

 エルランは牙を剝き出しにし、ゴブリンの頸動脈目掛けて嚙み付いた。

 スキルの【パラライズバイト】の影響か、嚙み付かれたゴブリンが麻痺してぴくぴくしだした。

 

「アイツ……意外と凶暴だな」

 

 そして、首を嚙み砕いてゴブリンにトドメをさすエルラン。

 引きこもりと言えど、魔物の本能は健在のようだ。

 

「「「ギャギャ!」」」

 

 またもやゴブリンの群れが現れた。

 おい、いい加減飽きた。もう50体は駆除してるぞ。ここは猫将軍様に無双乱舞して貰うか。

 

「やっちゃって下さいよ、カマクラの兄貴」

 

 後で毛繕いをしてるカマクラにお願いすると、大きく口を開けだして、エネルギーが集まっていく。

 

「ニャァァァァ!!」

 

 威力を抑えた【毛玉】がカマクラの口から発射され、敵は爆散。後に残ったのは魔石とドロップ素材のみ。

 

「きたねぇ花火だ」

 

「シャー?」

訳:なんのアニメ?

 

 やめてザリンちゃん、そんな真面目に聞かないで。恥ずかしくなってくるから。

 でも、言ってみたい個人的イキリセリフランキング20位の『きたねぇ花火だ』が言えたのは満足感が高い。因みに一位は『俺に勝てるのは俺だけだ』である。

 

「あー、良い運動になりましたわ」

「お姉ちゃんの魔眼? 凄かったね!」

 

 素材やら魔石を拾ってると、おてんば娘2人の明るい声が聞こえてきた。

 どうやら、アイツらも下層での狩りを終えたようだな。

 

「お前達、魔石はたらふく食えたか?」

 

「ええ、結構食べましたわよ」

 

 エネルギー補充が出来たようだな。それにしても、サブレとソフィーの姿が見当たらないんだが……。

 

「あれ、サブレとソフィーはどこだ?」

 

 そう聞くと、タマエが笑顔で答えてくれた。

 

「いるよ、近くに」

 

 いやいや、どこにもいないぞ。

 まさか……! 二匹は死んで、余りのショックでタマエの頭がおかしくなった。充分にあり得るぞ。

 俺は由比ヶ浜になんて言えば良いんだよ……。ああ、とりあえずルーメリアに詳細を聞こう。

 

「なぁルーメリア」

 

「うん? 何ですの?」

 

「まさかとは思うが、ソフィーとサブレは、グヘッ!?」

 

 いきなり後ろからフカフカモフモフした感触みたいなのが、俺を押し倒す形でのしかかってきた。

 その存在を確認するべく、首を動かして確認する。

 

「…………お前……サブレか?」

 

 雄々しくも美しい紅い紋様の付いた、白狼(大型バイクサイズ)がいた。こんなイケメン犬を俺は知らない。

 拝啓由比ヶ浜さんへ。どうやらサブレ君は進化しちゃったようです。

 これならもう車に轢かれる心配はないな。むしろ、車の方が大ダメージを負うまである。

 

「ワウーン♪」

 

 サブレはルンルン気分なのか、盛大に俺の顔を舐めてきた。

 

「やめろ! あー、涎まみれじゃねえか」

 

 どうにかサブレをどけて、立ち上がる。空間からタオルを出して、涎でベタベタの顔を拭く。

 ケルベロスみたく多頭タイプにならなくて、マジで良かったわ。

 でもどうしよう。お正月に俺は二日ほど実家に帰る。そのついでに、サブレも由比ヶ浜の元に一時的に実家帰りさせようと思ったが、この大きさで帰しても大丈夫なのだろうか……。

 

「って、ソフィーは……うん? なんだこれ?」

 

 俺の腹辺りにサファイヤのような美しい色の縄……っておい、これソフィーの触手じゃねえか!

 ソフィーのモノだと理解し、振り向こうとしたら、逆さ吊り状態で持ち上げられた。

 この状態、知ってるぞ。よくアニメとかである、ヒロインが触手に捕まってパンチラしちゃうテンプレシーンですよ。少なくとも俺みたいな、腐った目のアラサーがやっていいシーンではない。あとルーメリアとタマエ、一々写メを撮るんじゃない。

 

「よ、よぉソフィー。進化おめでとさん。その……降ろしてくれると、嬉しいんだが……」

 

 なんと、ソフィーのサイズが軽自動車並みに、大きくなっているではないか。

 

「プルプル、プル?」

訳:ねぇマスター、昨日の事覚えてる?

 

 なんか珍しくソフィーが怒ってる。と言うより、朝からソフィーはずっと機嫌が悪い。

 まさか原因が俺だったとは。昨日の俺は、一体何をヤラかしたんだ……。

 

「え、えーと、悪いな。昨日は酔っ払い過ぎて、何も覚えてないんだ……」

 

「プルプル?」

訳:マスターが『見ろ、俺の火遁・豪火球の術!』って言って吐いたゲロ、僕が処理したんだけど?

 

「……」

 

 oh……。要は俺の口から出たゲロをソフィーがイヤイヤ取り込んで処理したって事だろ?

 なにゲロマズい事してんだよ俺! ゲロだけに。

 いくら味を感じ無いスライムとは言え、ゲロなんて処理したくないよな……。仏のソフィーさんも不機嫌になる訳だ。

 

 猛省してると、他の従魔達までもが俺に冷めた視線を向けてきた。

 え、また俺何かやっちゃいました?

 

「昨日のマスターは、品性の欠片も無かったですわよ。腰を振りながら『俺が本物だぜフォー!』とか万歳しながら叫んでましたし」

 

「あるじ様、パンツ一丁になって『そんなの関係ねぇ!』とか、『オッパッピー!』とか言いながら一人で爆笑してたよ」

 

「ファッ!?」

 

 フォーとかオッパッピーってなんだよ!? ネタのチョイス古過ぎんだろ! しかも従魔達の反応を見る限りウケなかったんだろうな……。

 

「ゴブゴブ、ゴブ」

訳:昨日の旦那、酷かったよな。『聞いてくれよ、ごとよめでのハーレム計画を。俺なら三玖と結婚して、一花とは愛人関係になって、二乃とは遊びで付き合って、四葉は程よくキープして、五月とは隠し子を作る』ってクズ発言した時は流石にドン引きしたぜ

 

「俺、終わってんな……」

 

 ごとよめの件はマジで酷過ぎる。ゴブタニの言ってる事が本当なら人として終わってるぞ俺。大体、俺は三玖一筋だ。それ以外を推した覚えは無い。俺と不毛なごとよめ論争をしたい奴がいるなら、いつでも喧嘩を買ってやる。

 

「ニャー」

訳:大志に小町を取られたとか、BSSされたとか、うだうだ言いながらキモイ泣き方してたしな

 

「……俺の方が先に好きだったし、フッン」

 

 カマクラの発言に関しては受け入れよう。だって俺、BSS被害者だし。僕の方が先に小町の事好きだったし。よって大志が悪い、俺は悪くない。

 

「ワンワン」

訳:一回で良いから結衣のおっぱい揉みたい、って言ってたよね

 

「冗談だって、冗談……HAHA」

 

 サブレの言ってる事は……まぁ、飲み過ぎて、つい冗談が出ただけだろ。っつーか、健全な男子なら一回はあのたわわを揉んでみたいと思うんですよ。よって俺は健全である。由比ヶ浜に対して、やましい気持ちなど一切無い。ハチマンウソツカナイ。

 

「シャー」

訳:ロジカルシンキングで論理的に、とか意味分からない事も言ってた

 

「俺そんなアホな意識高い系じゃないんだけど……」

 

 分かってないな~、ザリンちゃん。俺が『ロジカルシンキングで論理的に』とか偏差値低めな事を言う訳無いだろ。きっと、玉……昔すぎて名前忘れたわ。兎に角、玉なんとか君のモノマネをしてたんだよ、きっと。

 

「ギミィ? ギミィ?」 

訳:あと何だっけ? 女子に告白する時は『お前の人生歪める権利を俺にくれ』って言えば間違いなく成功するんだっけ?

 

「もうやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇええっ! いっそのこと殺してくれぇぇぇぇぇぇぇぇええっ!」

 

 なんて事言うんだエルラン! お前は俺の言った事を忘れろ。普通の女子にその告り方をした場合『重いし、キモイ』とか言われて振られるのがオチだ。ああ因みに、次の日クラスの全員に知れ渡って馬鹿にされるまでがセットな。

 総括すると、来世に期待して屋上からのワンチャンダイブがしたい。以上。

 

「プル? プルプル?」

訳:マスター? 僕になんか言う事ないの?

 

「は、はい……本当の本当に申し訳ございませんでした! これからは、お酒は程々にしたいと思います!」

 

「お酒はやめないんだ……」

「懲りないんですのね……」

 

 いや、別にお酒は良いだろ。今回問題なのは飲み過ぎた事だ。マジで何で昨日の俺は、べろべろに酔うまで飲んだんだよ。今後飲む時は程々にしよう。

 

「プルプル」

訳:謝ってくれたし、もう良いよ

 

 そう言いながら、触手を解いて降ろしてくれた。

 どうやら、言葉だけの謝罪で許してくれるようだ。うん、近いうちに誠意を込めて、何か買ってあげよう。

 

「ほら、昨日の動画ですわ。これを見て震えて下さい」

 

 ルーメリアがニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべながらスマホを近づけてきたので、距離を取る。

 

「そんなの見せんじゃねえ。てか消せよ」

 

「嫌ですわ。これをネタに、10年ぐらい強請るつもりですもの」

 

 なんて品性下劣な邪悪さだ。これからは当分、コイツに対して頭が上がらないのかよ……。

 てか俺って君のマスターだよね? パワーバランスおかしくなってない? 

 

「もう帰ろうぜ……なんか疲れた」

 

 新たな黒歴史のせいで精神的に疲れたので、帰宅する事にした。

 帰宅の道中は案の定、従魔達のイジられ役と言う名の人気者になってしまったよ。何故だろうな、人気者なのに全く嬉しくない。

 因みに、以下が料理の片手間で確認したソフィーとサブレの新ステータスだ。

 

ネーム:ソフィーLv12

種族:アース・ミスリルスライム

スキル

【高速消化】【ミスリル硬化】【酸烈消弾】【粘性液】【触手強化】【拡縮】

 

ステータス

生命力:400/400

魔力量:390/390

筋力 :+370

耐久力:+480

敏捷力:+360

知力 :+370

 

 アルミ硬化がミスリル硬化に、酸消弾が酸烈消弾にそれぞれアップデートされたようだな。

 確実に陽乃さんが、あげたミスリル鉱石が影響してるよな……。

 一番嬉しいのは【拡縮】だ。このスキルで、体のサイズを今までのボールサイズに戻す事が出来る。これで家を圧迫せずに済むのはありがたい。

 

ネーム:サブレLv10

種族:大照狼

スキル

【聖炎魔法】【嗅覚強化】【脚力強化】【熱エネルギー変換】【炎剣双牙】

 

ステータス

生命力:610/610

魔力量:1220/1220

筋力 :+320

耐久力:+370

敏捷力:+490

知力 :+1090

 

 うん、変異種なだけあってやはり強い。【炎剣双牙】と言うのは、両サイドの牙が灼熱を纏いながら剣のように鋭く伸びるスキルで、【熱エネルギー変換】は火炎系統の攻撃を食らうと、吸収して自身の魔力に変換するスキルだ。

 進化して強くなったのは嬉しいが、大きくなってしまった故に家が手狭だ……。早急にどうにかしなければ。

 

♢ ♢ ♢

 

 晩飯を食べ終わり、他の従魔達がTVを見てたり、スマホを弄ってる中、俺はノートPCをカタカタしながら絶賛仕事中である。 

 まぁ仕事と言っても、ちょっとした確定申告の為の確認作業だ。本格的に確定申告書を作るのは少し先。もう一年が終わるから今まで作った帳簿を確認している。

 

 余裕で売上が1千万超えてるせいで、免税事業者から外れてるのが気持ちとして複雑だ。

 この売上なら来年から法人化して、色々節税対策を取った方が良いよな……。社長、俺が社長……胃が痛い。

 社長ってアレだろ、社員が除草剤を撒いただけで記者会見をする羽目になる役職だろ? うちで言う所のルーメリアが『うっかり殺人しちゃいましたわ』みたいな事をやらかしたら俺が記者会見するのか……。

 

 ここはお得意の検討に検討を重ね、検討を加速させよう。

 リスクリターン的に法人化すれば経費の幅が増えるし、自身の役員報酬を低めに設定すれば社会保険料の負担は少なくてすむ。法律上従魔は人間じゃないから、社会保険料と給料を払う必要はない。何より上手いこと経費を使いまくって赤字経営にしてしまえば、法人税は……発生しない!

 

「……クッ、クク」

 

 完璧だ。経費なんて従魔関連で使いまくれば簡単だぞ。しかも事実上、株主兼一人社長だから誰も俺の経営を邪魔する事が出来ない。なんだ、大してリスクなんて無いじゃないか。細かく言えば、リスクなんて動画配信の炎上ぐらいだ。それは今まで通り気を付ければ良いだけだ。我ながら、なんて神算鬼謀だ。これで俺は新世界(ヒエラルキー)(トップ)になれる!

 

『流れ切った文字の後ひとり続きを~待った~♪』

 

「うん? 誰だこんな時間に」

 

 自分の叡智に酔いしれてると、スマホがプルプルと着信音を奏でだした。

 表示画面を確認すると『雪ノ下陽乃』と表示されている。

 夜の20時になんの用だ……。

 よし、無視しよう。後日適当に『ダンジョンに潜ってました~テヘッ☆』とか言っとけば問題ないだろ。

 しばらくすると電話が鳴り止み、一通のSMSが届いた。

 

『源義経さ~ん、二日以内に折り返しが無いとコメント欄にあ~んな事や、こ〜んな事を書いちゃうかもよ~♡(≧▽≦)♡』

 

 動画のコメント欄に何を書く気だ、この魔王。マジで怖ぇな。

 従魔達に聞かれると面倒な予感がするので、俺はリビングを出てから電話を折り返した。

 

『ひゃっはろー! 今大丈夫だった?』

 

 大丈夫じゃないと言っても逃がしてくれないだろ……。

 

「いや、超忙しいですよ。主に体を休めるのに忙しいっすね」

 

『要するに暇って事ね』

 

「まぁ人によっては、そう思う人もいるかもしれないですね」

 

『所でさ、鎌谷幕府にお願いしたい仕事があるんだけど、どうかな? ギャラは結構弾むからさ♪』

 

 本来ならこの怖いお姉さんからの仕事は遠慮願いたいが、将来の為に陽乃さんは味方でいて貰いたい。なので、心証をよくするべく、色よい返事をする事にした。

 

「いいですよ」

 

『…………え、本当にいいの!?』

 

 なんでお願いしてる側がそんなに驚いてんだよ……。どんだけ俺ってNOマンに思われてんの。むしろ超YESマンだぞ。小町にアイスを買ってきてと頼まれたら行くし、小町に夏休みの宿題を手伝ってと頼まれたら、見返り無しで手伝ってきた。しまいには、頼まれても無いのに、大志とのデートに何回も同行しようとした。その度に『もう口効かないから』と脅されて、泣く泣く諦めたがな。

 

「まぁ……仕事に対して色々と思う所がありまして」

 

 陽乃さんは短く「へぇー」と返してきた。その声からは感情が読み取れなかった。

 

『てことは雪乃ちゃんと上手く復縁出来たんだ。それで大方、将来の事を考えたら雪ノ下家の仕事を、快く受けた方が良いって考えた訳ね。それでかー、へー、ふーん』

 

 何で今のやり取りだけで分かっちゃうんだよ。超ホラー現象。

 しかもちょっと拗ねてない?

 

「あの、なんか怒ってます……?」

 

『べっつに~、なんか上手く行き過ぎだな~、って思っただけ』

 

 ええぇ、雪ノ下と話すように俺を説得したのアンタだろ……。

 

「あの……この事は、まだ雪ノ下夫妻には黙ってて貰えると……助かります」

 

『別に良いよ、気持ち分からなくないし。昔の件もあるしね』

 

「あ、ありがとうございます」

 

 強請られると思ったが、案外すんなりと通ったぞ。まぁ俺が昔の件に対して申し訳ない気持ちがあるのと一緒で、陽乃さんも思う所があるのであろう。

 

『じゃあ仕事の話しよっか♪』

 

 陽乃さんからの依頼(オーダー)は、二月に開催される東京ビッグサイトの技術展覧会で雪ノ下HDのブースの一つで、催し物をやって欲しいとのこと。制限は無くて、出し物は屋台でもサイン会でもなんでも良いらしい。そしてギャラは200万。催し物で儲けた金も、全てこちら側が貰って良いとの事。

 

 自由度が高いと、逆に困るな……。普通に考えるなら、従魔達のサイン会が一番経費が掛からないし楽だ。だが、サイン会ってのは、一定数問題を起こす奴が現れる。アイドルにセクハラをする奴とかな。

 俺は別に大してルーメリアとタマエの心配はしてない。むしろ逆だ、セクハラを起こした奴の命が危ない。マジで殺人事件が起きてしまう。そして、俺が頭を丸めて謝罪動画を出す羽目に……考えただけで胃が痛い。

 

『それとさ、これはお願いなんだけど、展覧会の締めにステージの上でルーちゃんに歌って貰う事って出来たりする?』

 

「……えー、ルーメリアがライブって、マジか……厳しいっすね」

 

『そこを何とかさ、ねぇっ比企谷P♪』

 

「あの、俺って別にアイドルのプロデューサーじゃないんですけど」

 

 っつーか、探索者だし。決してYouTuberでも無ければ、Pでも無い。なんなら検討士でも無い。

 

『受けてくれたら、ライブ代500万! どう? 唆るでしょ?』

 

 唆るどころじゃない。登録者数50万のチャンネルに500万は大盤振る舞いだ。

 だが、俺は音楽の素人。ルーメリアも歌は上手いには上手いが、別にプロって訳じゃない。歌だけ上手くても、楽器やら音響やらについては知識も何も無い。問題が起きた時に対処が出来ない可能性が高いのだ。よし、それとなく有耶無耶にして断ろ!

 

「あー、検討に検討を重ねた上で、っておい! 返せ!」

 

 有耶無耶にしようとしたら、突然現れたルーメリアにスマホを取られた。

 

「もしもし、ハルノ。ルーメリアですの。話は聞きましたわよ、特別に歌ってあげますわ。ただし、私が歌いたい曲を歌いますけど、よろしくて?」

 

 コイツ、大役を受けやがったよ……。魔王属性の奴って、どんだけ目立ちたがり屋なんだよ。

 そして、そのまま話がどんどん進んでいった。

 

「えぇ、マスターに言っときますわ。ギャランティーの契約書、郵送よろしくですの。今度お茶? ハルノの奢りなら良いですわよ。それじゃあバイバイですわ」

 

 笑顔で大企業の副社長に図太い事を言いながら電話を終わらせたルーメリアは、スマホをぽいっと投げ返してきた。

 

「マスター、二週間以内に催し物の内容を決めて、ハルノに連絡よろしくですわ」

 

 そう言って自室に行くのか、階段を上がっていくルーメリア。なんでアイツは『一仕事終わらせたぜ~』みたいなスッキリした顔をしてんだよ。むしろ仕事が増えた気がするぞ。

 

「はぁー……」

 

 催し物って何をやれば良いんだよ。もうタピオカミルクティー屋さんでもやろうかな……。

 こうして我ら鎌谷幕府は、大イベントの仕事を受ける事となった。

 

♢ ♢ ♢

 

番外編:小町の仕事……?

 

 何故か夜中に目が覚めると、喉が酷く乾いていた。

 喉を潤すべく、階段を降りてリビングに入ると、暗い中ルーメリアがTVでアニメを見ている。

 夜更かしかよアイツ。まぁ別にいいけど。俺もガキの頃はしょっちゅう深夜のチョイエロアニメとかみてたしな。

 

 特に気にする事なく、冷蔵庫を開けてアップルジュースを取り出す。

 そのままリビングテーブルに座ってゴクゴク、と喉を潤した。

 

「マスター……」

 

 飲みながらスマホを弄ってると、神妙な顔をしたルーメリアが、悲しみを含んだ声で話掛けてきた。

 どうしたコイツ、なんだか涙ぐんでるし……。まさか、泣いてたのか?

 

「どうしたんだよ」

 

「小町が、小町が……っ! 小町が死んでしまいましわ!」

 

 事情を聞こうとしたら、とんでもない事を言い出したよ。

 

「…………は? お前、もしかしてアタオカ?」

 

 意味が分からない。なんでいきなり小町が死ぬんだよ。アレか、バイトをさぼりたい時におばあちゃんが都合よく死ぬ的なやつか。だとしても、人の妹を都合よく殺すんじゃねえよ。

 いや、違うか。ルーメリアがサボりたがるような、仕事は与えてないしな。

 

「頭はマスターより正常ですわ! アレを見て下さい」

 

 マジで雑な事しか言わない魔王は、TVの方を指さした。映ってるのは、SAOのエンディングロール。ED曲からして……これはマザーズロザリオ編か?

 

「SAOのエンディングロールを見せられても分からねぇよ」

 

「アレだけ小町大好きとか言ってるのに、本当に分からないんですの? それでも小町の兄君ですの?」

 

 信じられない、と言いた気な表情で見てくるルーメリア。対して俺は、お前は何が言いたいの、と言う意味を込めて見つめ返す。

 マジで、は?って感じなんだけど。え、なに、俺ってまさか小町への愛を試されてる感じなの? SAOのアニメで? 上等だ、何を言いたいか知らないが、小町の事とあっては黙ってられない。

 

「きゃー! マスターったら大胆♡」

 

「うっせ、付き合って貰うからな」

 

 俺はルーメリアの手を強引に引いて、共にソファーに掛ける。リモコンの巻き戻しボタンを押して、ルーメリアが見てた回を一から見ることにした。

 

『ボク、がんばって、生きた……。ここで、生きたよ……』

 

「マジで分かんねぇ……てか、泣けてきた……グスッ」

 

 やはりマザーズロザリオ編の最終回はずるい。頼むから誰か絶剣さんの病気を直してやれよ。この際、マッドサイエンティストの茅場でも良いから。なんで、こんな健気な子が退場すんだよ。辛過ぎるだろ……。うん? 絶剣が死ぬ……小町が死ぬ……っは!?

 

「お前さぁ、まさかとは思うけど、絶剣さんに小町を重ねてないよな?」

 

「いやいや、この薄命の少女はまごうことなき小町ですわ、特に声」

 

「…………確かに似てるな」

 

 もう一回巻き戻しボタンを押して、意識しながら絶剣さんの声を聞いてみる。

 マジかよ、超似てるんだけど。明るい妹キャラってのも被ってるし……。てことは絶剣は小町で、小町は絶剣……!!

 

「小町ぃぃぃぃぃぃいい! 死ぬんじゃない! 今お兄ちゃんが助けに行くからな、リンクスタート!」

 

「いやマスター……流石にそれはドン引きですわ」

 

 ポンッと頭に軽い痛みが走って、冷静になっていく。

 

「っは!? 俺は何を……」

 

 どうやら軽めなチョップを貰ったようだ。

 あっぶね、感情移入し過ぎてTVに向かってダイブスタートする所だったわ。

 

「で、お前は結局何が言いたいの? 死んだって言っても、声が小町に限りなく似てる二次元(アニメ)存在(キャラ)だろ」

 

「だからわたくし、小町の演技に感服しましたわ。素晴らしき演技の仕事でした、と伝えておいて下さい」

 

「……ああ、なるほど」

 

 コイツ、小町の仕事を声優だと勘違いしてるな。マザーズロザリオ編がリアタイでやってたのは俺が中坊の頃。小町なんてギリ小学生だったぞ。よって小町が絶剣さんの声優をやってると言う線は、どう考えても有り得ない。

 そのことをルーメリアに話すと、ガッカリしたのか肩を落とした。

 

「あと、今スマホで調べたけど、絶剣さんの声を担当してるのは『Y.aoi』って人だ」

 

「じゃあ、小町は何の仕事をしてるんですの?」

 

 アイツの仕事は確か……大手コンビニチェーンの本社勤めで、商品企画部だった筈だ。我が妹ながら出世コースだな。兄として鼻が高いぞ。

 

「普通のOLだよ。因みにOLってのは、超分かりやすく言うとPCをカタカタしてるお姉さん達の事な」

 

「ふーん、小町も声優とやらをやればいいのに」

 

 どうやらコイツは、小町が声優をやってないのが不服のようだ。さっきまで、恥ずかしい勘違いをしてたもんな。

 

「あのな、声優って簡単になれるようなモンじゃねんだよ。いくら小町が可愛くても狭き門なんだ」

 

「まぁ、わたくしなら簡単になれますわね」

 

 鼻を鳴らして、余裕の笑みを浮かべるルーメリア。

 どんだけ自己肯定感が高めなんだよコイツ。まぁイケそうな気もしなくはないな。悪役に限るけど。

 

「お前なら悪役令嬢とか魔性の女とか、あとイジメ役の性悪女子とかイケるな。ああ、ムカつくメスガキ役も──」

 

「ヴァンパーンチ!!」

 

「──グヘッ!?」

 

 中々に良いボディーブローが鳩尾に入った。なぜだ、肯定してやったのに……解せぬ……。

 そして俺はそのまま、リビングの床で夢の世界へと旅立った。




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