か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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第三章:臥雄飛翔編
43:何だかんだ配信者として、比企谷八幡もそれなりにさまになっている。


 楽しい冬季休暇だった……。いや、休暇の筈なのにダンジョンに潜ったり、雪ノ下の誕生日を大慌てで取り繕ったりで、休暇感がなんも無かったわ。強いて言えば、小町と初詣をしたのと雪ノ下の笑顔が見れたのが癒しだったと言えよう。

 

 今日は1月5日の月曜日。世間の大人達がお正月休みを終え、満員電車と言う名の奴隷船に乗って仕事始めをする日だ。

 俺のサラリーマン時代なんて、正月休み無かったけどな!

 

「全員揃ったな。今から全世界に醜態を晒すだけの恥ずかしい仕事を始めるが、意見のあるの者は?」

 

 ダンジョン内にて天井の鉱石が光る中、集まった全員を見渡す。従魔達と聖女様が俺の発言に対して、微妙そうな表情をしているのは気の所為だと思いたい。

 

「いつも醜態を晒してるのはマスターだけですわよ……」

 

「あるじ様の言い方が最悪……」

 

「ニャー」

訳:お前、昔から既に恥ずかしい奴だっただろ

 

 ちょっとカー君、何言ってるの。確かに中学んとき、カマクラがいるのにも関わらず家で自作ソングを熱唱したりしてたけどさ……。しまった、猫だと甘く見て気にして無かったよ! まさかカー君『コイツ恥ずっwww』とか思ってたの? やっべ、俺マジで恥ずかしい奴じゃん。

 

 カマクラの前で披露しまっくた黒歴史に悶えてると、セインフィールさんが額に青筋を浮かべながら手を上げた。

 

「ねぇ八幡さん、これどう言う事? 設定台本を見たら、私がグリーントレントから進化したエルフっぽい植物妖精って事になってるんだけど!」

 

 グリーントレントとは、四国の愛媛県にあるダンジョンに出現する植物型の木の魔物だと魔生物図鑑に記載されたいた。

 昨日そのページを眺めていた俺は閃いた。もうセインフィールさんを、俺がテイムした魔物の進化体って事にしてしまおうと。妖精もエルフもさして変わらないだろ。ラノベ作品によっては、エルフは森の妖精扱いされてるし。

 

「その設定を守るのが出演させる条件だ」

 

「私が魔物だなんて……ならピアス付けるから、パーティーメンバーってことにしてよ」

 

 人間の耳に変化させて誤魔化す手は考えた。だが、人間のメンバーを幕府に加えたってなると加入希望のメッセが大量に来そうで嫌なんだよな。

 

「検討はしたが無理だ。俺は動画で散々ソロアピールをした。そのせいで人間のメンバーを加えたってなると、面倒事が増えちまう可能性が高いんだ」

 

 うん、俺がお祈りメッセを書きまくる羽目になる。お祈りメールとかマジで心にくるからね。こっちが送る分には『残念でした乙www』ぐらいにしか思わないけどな。

 

「いや、でも魔物って……由緒正しいハイエルフなのに……」

 

 魔物設定に納得いかない聖女様は、不満を漏らしだした。その様子を見てルーメリアは、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべている。君はそのイジメ主犯格みたいな表情をやめなさい。

 

 ぶっちゃけ最初は、配信にセインフィールさんを出す気は無かった。なので、留守番を命じたら『やっぱり私って、八幡さんに嫌われてるのね……。こうやって仲間外れにされて、私だけ窓際に追いやられて行くんだわ……』なんて悲しい事を言い出したから、検討に検討を重ねた上で出演させる事にした。

 ハラスメント問題にされて、労基に行かれたら面倒だしな。決して情に絆された訳じゃない、決してだ。

 

「あのな、セインフィールさん。ガチのエルフを仲間にしました、なんて言えないだろ。それとも、政府お抱えの特殊機関に目を付けられて、解剖でもされたいのか?」

 

「は? 解剖とかあるの!?」

 

 でっち上げたデマを信じたようだ。ただまぁ、ファンタジーが混ざった世界になったから、存在しないとも言い切れないのが怖い所である。

 

「目を付けられて、攫われたら有り得るかもな。まぁアンタは強いから大丈夫かもしれないが、ゴタゴタは嫌だろ? 勿論、俺はイヤだね」

 

 流石に大事にしたくないのか、セインフィールさんは諦めた様子で溜息を吐いて、渋々了承してくれた。

 

「先ず俺がリスナーに年始めの挨拶をするから、お前達は合図があるまで画面外に待機しててくれ」

 

 説得も済んだので、俺は配信キューブの操作に入った。

 今日の配信タイトルも『猫将軍と愉快な幕臣達のダンジョン探索』にしとこ。

 

#あけおめ #ヤラかしました #可愛いが増えた #進化 #胃痛

 

 ハッシュタグはこれでいいだろう。最後のなんて、俺の胃の叫びがハッシュタグ化されちゃったよ。少しは世間の奴らにマスターの大変さを分かって欲しいものだ。本当に従魔達のマスターって大変だからね。きっとマサラボーイも初期の言う事を聞かないリザードンに胃を痛めてたに違いない。

 

「ゴブ?」

訳:なんで体操してんすか旦那?

 

「今から俺がガキんときに極めた芸を見せてやるよ」

 

 配信の設定を完了させた俺は、足を伸ばしたり、背伸びをしたりで準備体操をしている。

 

 軽い体操を終えて、配信スタートのボタンをポッチと押した。

 後ろに下がって軽く距離をとった俺はカメラの前まで走り、全身のバネを使ってジャンプ。空中で正座ポーズを取ってそのまま着地と同時に手と頭を地面に擦り付けた。

 これが俺の108の技の一つであるジャンピング土下座だ。

 

「すいません! また俺やっちゃいました!」

 

:初手からいきなり土下座www

:土下座が綺麗過ぎて見惚れたわwww

:初手天元並に意外すぎる手だ

:リアルでジャンピング土下座するやつ初めて見たwww

:土下座代 ¥100

:土下座があまりにも綺麗過ぎる男

:年始の挨拶が土下座www

:『また俺やっちゃいました!』は新たなジャンルwww

:土下座するレベルのヤラかして何だよwww

:まさかドラゴン!?

:あけおめ!

:その土下座に全部もっていかれたわwww

 

お米こまち:何やってんのごみぃちゃん……

はるのん:ちょっとwww最初から土下座は飛ばし過ぎwwwwwwwww ¥800

ゆいゆい:えーと、綺麗な土下座だね!

HAYATO:なんて鮮やかな土下座なんだ…… ¥500

YY:これと似たような土下座を見た事があるわ……

etcetc……

 

 何故だか、土下座だけで軽く2000円以上も稼いだぞ。まさか幼少期に極めた芸で稼げるなんてな。八幡少年、君が涙を流しながらしてきた土下座は無駄じゃなかったぞ。これからは特級土下座パフォーマーを肩書に加えよう。

 それとごめんな小町。こんな不甲斐ない兄の姿を見せて。

 

 土下座で稼いだ俺は立ち上がり、年始めの挨拶をする事にした。

 

「どうも嫁……ゲフンゲフン、特級土下座パフォーマーの源義経だ。とりあえずリスナー諸君、あけおめことよろ。うちの従魔が何体か進化したから、改めて紹介させて貰うわ」

 

:進化!楽しみ!

:検討士の次は土下座パフォーマーかよwww

:土下座までして上げたハードルを超えられるか見ものだな

:誰が進化してもヤラかしwww

:特級土下座パフォーマーは草www

:おい、いま自分のこと嫁ニキって言い掛けただろwww

:その土下座に対する自信はなんなんだよwww

:俺も配信でジャンピング土下座しようかな

etcetc……

 

 土下座をしたことでハードルが上がってしまったのか。だが問題は無い。ハードルを超えるどころか、ハードルを破壊する存在がこっちには2人いるからな。

 手始めに俺はソフィーを手招きする。大きくなった体でポヨンポヨンと跳ねながらカメラの前までくると、機嫌良く触手を伸ばしてカメラに向かって振った。

 

「プルプル♪」

 

「ソフィー、軽くあっちの岩壁に酸を撃ってくれ」

 

 ソフィーがどれだけ凄くなったか、リスナー見せるべく指示をすると、ソフィーはスキルである【酸烈消弾】を勢い良く飛ばす。すると岩壁がぶつぶつと煙を上げながら直ぐに溶解した。

 

「補足だが、ミスリルを食った影響でこの色になった」

 

:めっちゃ大きくなってるwww

:ファッ!?

:岩があっという間に溶けたぞwww

:ソフィーパイセン流石っす ¥1000

:スライムですら強キャラにしてしまう嫁ニキの育成力がレベチ

:上級ダンジョンで出会ったスライムもこのぐらいヤバかったわ

:ソフィーちゃん凄い! ¥2000

:殺意の塊なのに可愛い ¥1000

:ミスリルを食わせる経済力がパナイ

:魔物によっては進化先が食った物から影響される説は本当っぽいな

:初っ端からヤラかしてるんだよなーwww

 

ゆいゆい:プルンプルンで可愛い!

HAYATO:ソフィーちゃん……大きくて可愛い ¥10000

etcetc……

 

 おっと、ソフィーのファンであるHAYATOさんが1万円くれたぞ。

 流石はイケメン、聡明、高学歴、高年収、既婚者であるエリート街道まっしぐらのナイスガイ君だ。なんかムカついてきたな。よし、この金を使ってサイゼで好きなだけ食いまくろう。

 

「次サブレーヌ君、来なさい」

 

 サブレを呼ぶと、尻尾を派手に揺らしながら猛スピードで寄ってきた。

 え、ちょっと、飛び掛かる気じゃないよな!?

 

「違う! あぁ仮面がズレる! やめなさい! 俺じゃなくてあっちだ、あっちのカメラの方に直れ!」

 

 どうにか俺の顔を舐めまくるサブレをどかして、カメラにの方に向かせる。

 やっぱこいつ由比ヶ浜に似てるわ。

 

「ワウーン!」

 

 芸のつもりなのか、自身を中心にして半径1メートルに光輝く炎の渦を発生さてた。

 うん、これなら撮れ高ばっちりだな。

 

:本当に愛されてるな ¥1000

:こっちも大きくなってるwww

:フェンリルだ!

:マジでフェンリル?

:フェンリルに紋様はないだろ

:ほらな!大口真神説が正しかっただろ!

:お布施ですサブレーヌ様! ¥3000

:あの!うちのワンちゃんとコラボして下さい! ¥1000

:やっぱりデカい狼って男心がくすぐられるわ ¥2000

:ただ単にヤベェ&カッコいい ¥1000

 

ゆいゆい:頑張ってねサブレーヌ(^o^)/ ¥1000

お米こまち:およよ!サブちゃんもデカくなってる!

YY:夜に出会ったら泣く

etcetc……

 

 なるほど、大口真神って噂されてるのか。確かにこのまま進化を重ねれば、真神っぽい凄い狼になりそうだな。

 

 次は幕府の大看板を担う魔王様を呼びますか。きっと萌豚共が驚くに違いない。ククッ

 ルーメリアに視線で合図を送ると、ファッションモデルがランウェイを歩くような足取りで優雅に歩いてくる。服装は魅せる用の真紅と黒で彩どられた艶麗なドレスアーマー。高身長のスタイルも合わさって、かなり似合っている。

 

「幕臣の方々、久方ぶりですわね。二度目の進化を果たしたルーメリアですわ」

 

 自己紹介を終えると鮮やかなカーテシーをした。普段もこのぐらいおしとやかだと、マスター的にはポイント高いんだけどな。

 

:お姉さんになってる!

:もうヤバいうん本当ヤバイ、ヤバイしか言えない ¥10000

:昨日パチンコで勝った金全部あげます! ¥30000

:なら俺は競馬で勝った金だ! ¥50000

:こっちは株の儲けだ! ¥100000 

:ルーメリア様俺を罵って下さい! ¥1500

:スタイルヤッバwww

:ルーたん可愛いよルーたん ¥3000

:これはハリウッド出れる

:カーテシーをしてる姿が美しすぎる ¥1000

:ふっ…ふつくしいっ…! ¥3000

:これで大好きな海馬デッキを組んで下さい! ¥100000

:嫁ニキが憎いです ¥666

:るーちゃんの胸にダイブしたいです ¥4545

:叡智すぎる ¥1000

 

お米こまち:ルーちゃんとタマエちゃんの分のお年玉! ¥20000

ゆいゆい:メリメリのスタイルやっばΣ(゚ω゚ノ)ノ

はるのん:これは流石のお姉さんもビックリΣ(OωO ) ¥5000

HAYATO:進化おめでとう 

etcetc……

 

 やめろやめろ、俺に悪魔の数字を投げるんじゃない。

 てか噓だろ、今時の海馬デッキって10万も掛けないと構築出来ないのかよ。だが残念だったな、その10万円でデッキを組む事は無い。何故なら新築の資金に回させて貰うからだ。

 

「それとわたくし、マスターに身も心も大人にされてしまいましたわ、キャッ♡」

 

 わざとらしく照れた様子で、頬に両手を当てながら意味不明な事を言うルーメリア。

 この異世界魔王は何で配信で紛らわしい事を吐くかなぁ。身も心もってさぁ、お酒を解禁しただけだろ。もうイヤだ、異世界を滅ぼした魔王が、次は俺の胃世界を滅ぼそうとしてるよ。

 

:身も心も大人にされた……だと!?

:死ね嫁ニキ!

:お前早く船降りろ!

:謝罪動画だせよ

:これは頭を剃るしかないなwww

:ダメだ羨ま死にそうだ

:合意の上だったとしても死ね

:俺と決闘しろよ嫁ニキ

:確かにこれは土下座案件www

 

お米こまち:マジごみいちゃん

ゆいゆい:ニッキー……

HAYATO:やってしまったか……

はるのん:ぼっちんぽ

YY:ケダモノ

etcetc……

 

 案の定、嫉妬に憑りつかれたコメントが多い。知り合いからのコメントは……これは軽くドン引きされてますね。

 あと、はるのんさんは意味不明な下ネタを書くのをやめようか。YYさんに関しては雪ノ下みたいな事を言わないで下さい。

 

「痛いですわ!」

 

 メスガキの頭に軽めのチョップを入れる。当然、脅迫も添える。

 

「お前つぎ変なこと言ってみろ、二度とふわふわなパンケーキ作ってやんないからな」

 

 叱ってやると頬を膨らませながら『ブーブー』言い始めた。メス豚かよコイツ。

 とりあえず今は、火消しだ。

 

「勘違いするなリスナー諸君。コイツと俺は下半身で繋がってなどいない。身も心と言うのは、飲酒を解禁してやっただけの話しだ」

 

:そんな事だろうと思ったよwww

:今後嫁ニキが酔い潰される所までは予想出来たwww

:どちらかと言うと嫁ニキの貞操が心配www

:ふわふわパンケーキwww謎に女子力高くてウケるwww

:私も晩酌に付き合ってくれる従魔が欲しいな〜

:嫁ニキが作るふわふわパンケーキの方が気になるんだが

:フワフワパンケーキを作れる嫁ニキがあざといwww

 

ゆいゆい:ねえねえ、あたしの作るパンケーキいつもフワフワにならないんだけど、何でかな? ¥300

etcetc……

 

 えー、何で俺の作るパンケーキがそんなに気になるんだよ。そこら辺のサイトにあったレシピで作ったヤツだぞ。なに、俺がパンケーキ作るのが、そんなにおかしいのかよ。ギャップがあって良いだろ。

 一つ言えるのは、由比ヶ浜は絶対に充分に卵白を泡立ててないって事だ。

 

「アレだ、ここだと長くなるから作り方はXに載っけておくわ」

 

 次はエルラン、って言いたい所だが、アイツは来ていない。

 誘ったら『俺が配信に出ると、凄すぎて他のヤツの見せ場を奪っちゃうんだよな〜、仕方ないから遠慮してといてやるよ〜』って超イキった台詞を延々と吐いてから置いてきた。まぁアイツは俺と一緒で、根が陰キャだから仕方ない。

 

 なので、新入りのザリンに目線で合図を送った。

 

「シャ〜♪」

 

 ズルズル滑りながら俺の方にきて、肩に上がってきた。

 

「こいつは新入りのザリンだ。さぁザリン、カメラに向かってお辞儀をするんだ」

 

 挨拶を命じると、ザリンは体を下に揺らした。良く分からんが、これが蛇式のお辞儀なのかもしれない。

 

:お辞儀wwwお前はヴォルデモートかよwww

:嫁デモート

:名前の由来絶対スリザリンだろwww

:蛇型の従魔とか分かってんじゃん ¥1000

:嫁ニキはスリザリン

:嫁リドル君

:闇の帝王を目指してる感じ? ¥1000

:名前がナギニだったら完璧だった

:予言の子には気を付けろよwww

:スリザリン適正SSS

:やっぱりマグルは嫌いですか?

:なるほど従魔達がデスイーターなんですね

:何故だかスリザリンが似合う男

:これは名前を呼んでも大丈夫なヴォルデモートwww

:偉大な魔法使いから取った名前、将来が楽しみだ ¥2000

:分かったぞ!お前現代日本に転生してきたヴォルデモートだろ!

 

はるのん:この子可愛い! ¥2000

HAYATO:似合うなスリザリン

etcetc……

 

 ネタに振り切ったコメントが大量に目に付く。俺の細かいネタが伝わって良かったよ。あとホグワーツに入るならハッフルパフが良いです。一番安全な生活を送れそうだからな。そもそもあんな問題だらけの学校行きたくないけど。

 

 さてと、本日一番の目玉を紹介する時がきた。果たして植物妖精だと信じて貰えるのだろうか……。ヤベェ胃がキリキリしてきた。

 

「ら、ラスちゃーん、来なさい」

 

 可愛い感じで呼び掛けると、聖女様が引きっつた表情を浮かべた。

 その『ちょっと名前で呼ばないでくれる、ヒキタニマジキモ〜い』みたいな顔するのやめてくれませんかね。俺だってセクハラ扱いされる可能性があるから呼びたくないよ。でも従魔設定なんだから仕方ないだろ。

 大体ラスちゃん呼びの何が不満なんだよ。レッサーパンダのラスカル君みたいでなんか可愛いだろ。知らんけど。

 

 少し緊張してる聖女様は深呼吸をして、前に見た杖とは違う大きい杖を握りしめながらカメラの前まで歩いてきた。

 戦闘用の装備なのか、ファンタジーの聖職者を彷彿させる法衣アーマーを着ている。靴は白のブーツで、法衣アーマーは白を基調としていて、青の差し色と金の紋様で彩られ、肩の露出が僅かにあるだけで、手首と足首まで覆っている。まさに聖女らしい清楚な印象を受けた。

 

「鎌谷幕府の視聴者の皆様、どうも初めまして。えーと……グリーントレントから進化した植物妖精のラスティーです。幕府では主にヒーラーをやらせて頂いてます。好きな食べ物と飲み物は、仕事終わりのビールと枝豆。趣味は休日に、ピザを食べながら洋画ドラマを見る事。ケチャップよりマヨネーズが好きです。あとは、」

 

「ちょっと待て、長い長い。もう充分だから」

 

 延々と自己紹介しそうだったので強引に止めた。

 なんでこのエルフ、妙に真面目なんだ。配信の自己紹介なんて『チーッス!』ぐらいの戸部ってるノリで良いんだよ。好きな食べ物がやけにオッサンっぽいのは、この際置いとくとしよう。

 

:は!?

:エルフだー!!

:エルフキタ━(゚∀゚)━!! ¥3000

:エルフだと!?

:開いた口が塞がらないです ¥1000

:植物妖精だって言ってるじゃんwww

:妖精と書いてエルフですよね ¥2000

:【緊急速報】ハーレムにエルフが増えた模様

:エルフも作品によっては妖精扱いだからこれはエルフ

:ひんぬーエルフがリアルで見れたワイ大歓喜 ¥10000

:嫁ニキアンタもう伝説の従魔士だよ

:何故か後光が見えるんだけどwww

:グリーントレントは愛媛県のダンジョンに出現する模様

:ラスちゃんに一目惚れしました ¥10000

:魔物の進化って無限大なんだな……

:これは土下座を挟んで正解 ¥1500

:聖女様衣装が凄く素敵です ¥3000

 

YY:可愛い長耳さんね ¥1000

お米こまち:またお義姉ちゃんが増えてる(´゚д゚`)!?

ゆいゆい:あーあーあたしもう知ーらない┐(´д`)┌

HAYATO:エルフが見れるとは思わなかったな…… ¥1000

はるのん:大奥御殿を建設の際は弊社にご依頼下さいね♡ ¥10000

etcetc……

 

 ヤバイヤバイ。ある程度予想はしてたけど、同時接続数が20万超えたぞ。流石はファンタジー定番のエルフと言った所か。

 あと小町、お義姉ちゃんとか言うな。このエルフは、ただの訳あり正社員だから。大奥御殿はスルーするとして、確かにこっちの事情を知ってる陽乃さんに、新築豪邸の建設を依頼する事になりそうだな。

 

「ねえねえ、はち……ゲフンゲフン、マスター義経。どんなコメントがきてるの?」 

 

「……あ、あー、可愛いとか綺麗って良いコメントが沢山来てるぞ」

 

 本人の名誉の為にひんぬーエルフとか、ぺちゃパイエルフってコメントが来てるのは内緒にしとこ。

 

「え? 可愛い? も~、全然そんな事ないのにな~、困ったな~」

 

 頬を紅に染めながらモジモジしだしたし……。このエルフ凄く分かり易い。

 それより、もう新入りと進化した従魔は紹介したし、ゆるーく探索しますか。

 

「全員出てきていいぞ」

 

「ニャ~」

「ゴブ~」

「皆さんこんにちは~!」

 

 来るように言うと、ワイワイと残りの従魔達が手を振りながらカメラの前に出て来てきた。こう見ると本当に大所帯になったな……。

 

:どうやったらこの数を養えんだよwww

:従魔の飯代 ¥2000

:嫁ニキの飯代 ¥300

:嫌いだけど嫁ニキお前スゲェよ ¥1000

:俺は二体いれば充分かな……

:タマエちゃん!会いたかったよ! ¥10000

:あとミミックもいるんだよな……

:流石は異世界転移してきた疑惑のある従魔士だ

:ギリ野球チームが作れるなwww

:タマエちゃんの尻尾になりたい ¥1000

etcetc……

 

 うんうん、俺も良くこの数と共生出来てると思うよ。お陰様で我が家はファンタジーハウスですよ。

 

「ここからの実況は、わたくしルーメリアがお送りしますわ♡」

 

 ここから先の探索の実況はルーメリアに任せて、俺は画面外にエスケープ。

 よし、後は見守りながらドロップ品を拾うだけの簡単な仕事だ。

 

♢ ♢ ♢

 

 何故だ、なぜ同時接続数と登録者数が増え続ける……。こんなのは想定外だ。

 探索者協会がテイムの詳しいやり方を情報拡散したのは、ネットでの情報収集で確認出来た。本来なら俺以外の従魔士YouTuberも人気になって、人気が分散すると思ったんだがな……。やはり、人語を介する従魔の存在が大きいのかもしれない。

 

「……ら、ラスちゃん、リスナーから活躍して欲しいって要望が来てるから頼む」

 

 当てが外れた事にガッカリしながら、セインフィールさんに指示をする。要望に応えるために聖女様が前線へと踊り出る。大きな杖を敵に向けて、スキルを声高らかに発動した。

 

「シャイニングアロー!」

 

 光の矢が魔法陣から現れ、魔物共を貫いていく。

 癒しのスキルと、光系統の魔法。やはり聖女様は光属性か。陰キャ歴=年齢の俺には眩し過ぎるキャラだ。

 心中で軽くセインフィールさんを褒め称えながら、後に残ったドロップ品を俺は拾って空間収納に入れてく。

 

「ヒーラーのくせに、しゃしゃり出てきましたわね」

 

「ねえ、何か文句でもあるの?」

 

「文句じゃないですわ。嫌味ですのよ」

 

「本当陰湿ね」

 

「あ?」

 

「何よ?」

 

 魔王と聖女が視線に殺気を乗せて、バチバチしながら険悪な雰囲気を作り出し始めた。

 おいおい、頼むから配信でバチらないでくれよ。

 

:2人仲悪いの?

:キャットファイトwww

:これは恋愛絡みだと見た

:どーせ嫁ニキが悪いんだろ

:嫁ニキが腹を抑えてるwww

:怖い怖い

:喧嘩しちゃダメだよ!

:腹を抑えてないでどうにかしろよ嫁ニキwww

:女の喧嘩ほど怖いものは無いぞ

 

お米こまち:出番だよごみぃちゃん

etcetc……

 

 コイツらの喧嘩の原因は俺じゃないんですけど。本当に何で俺が、異世界のごたごたに巻き込まれてるんですかね。

 俺は軽く溜息を吐く。イタイタする腹を抑えながら、マスターとして配信に割って入る事にした。

 

「こいつらはアレだ、仲が悪い訳じゃないんだ。一緒に桃鉄するぐらいには仲が良いから」

 

 罵詈雑言の飛び交う地獄の桃鉄だったけどな。最終的に、胸倉を掴み合うまでがセットな。

 穏便に場を収めるべく、2人に賄賂としてマッ缶とビール缶を渡した。

 

「これあげるから、今日は喧嘩しないでくれ。マジで頼む」

 

「「まぁ、そこまで言うなら」」

 

 ウゼェこいつら。妙に息ぴったしなのがまたウゼェ。本当は賄賂の為に、わざと喧嘩したんじゃないのか。

 

「じゃあ、このまま実況任せるからな」

 

 引き続きルーメリアに任せて、俺は見守る事に徹した。

 配信が賑わう中、2階層の奥までくると大量の魔物が出現した。

 

「さぁ! 幕府の眷属たる同胞達よ、今こそ天下に我らが幕府の威光を派手に示すときですわ!」

 

「狐変化!」

 

 ルーメリアの力強い号令により、タマエが真っ先にサブレと同サイズの三尾の(ケモノ)に変化した。その姿は白面金毛の雄々しいくも美しい狐であった。

 おお! あれはタマエが進化と同時に手に入れた【狐変化】のスキルか。タマエ最高にカッコイイぞ!

 

 カマクラ、サブレ、タマエは敵を嚙み砕いたり、切り裂いたりする。ゴブタニは上達した居合剣術で敵をスパスパ切っていく。ソフィーとセインフィールさんは酸と光の雨を降らせ、敵は蒸発されていく。あぶれた敵はザリンによって死角からステルスキル。

 うちの子達の殺意が凄い……。

 コメント欄の方に目を向けると、凄い勢いでコメントが流れていた。

 

:ルー様の胸から目が離せない ¥5000

:荒々しいタマエちゃんも素敵 ¥5000

:ゴブさんの居合切りがカッコイイ ¥2000

:初見です!凄い従魔の数ですね! ¥1000

:うわーヤッベェ ¥5000

:獣になったタマエちゃんカッコイイ! ¥10000

:こんだけの魔物を相手しても実況出来る余裕がヤバイ ¥2000

:他の従魔士には絶対に真似出来ない光景

:これが幕府の威光…… ¥3000

:エルフさんの殲滅力パネェwww ¥2000

:流石は原点にして頂点の従魔士チャンネル ¥3000

:この幕府は倒幕不可能ですわ ¥10000

:総大将の嫁ニキも戦えよwww 

:鎌谷幕府を超えるとかほざいてた奴ら息してる?

:ラスちゃん推しになります! ¥10000

 

お米こまち:頼ちゃん頑張って! ¥1000

YY:戦ってる頼朝さんも凄く素敵 ¥10000

ゆいゆい:カッコイイよサブレーヌ! ¥5000

HAYATO:ソフィーちゃんファイト! ¥5000

はるのん:義経氏のカッコイイ所が見たいな~♡ ¥20000

 

「勿論、大将たるマスターも力を示してくれますわ! さぁ、練習した技を見せる時が来ましたわマスター!」

 

「……は?」

 

 余裕ぶって欠伸しながらコメント欄を眺めてたら、唐突に無茶振りされたんですけど。

 まさか、このはるのんとか言う魔王のスパチャのせい?

 

「いやマスター。2万も貰っておいて何もしないのは、流石にどうかと思いますわよ」

 

 ルーメリアは顎で俺に、前線に行けと指図してきた。

 魔王のせいだったよ。なんで魔王属性の奴らって無茶振りが好きなの。誰かに無茶振りしないと魔王になれないのん?

 練習した技って、あの再現技の事か。えぇ、マジ配信でやるの超恥ずいんだけど。でも2万も貰ってるしな……。

 ええい! 2万も貰ったし、ちんけなプライドなんて捨ててやる。小学校から中学時代までずっと笑われてきたんだ。いまさら黒歴史の一つや二つなんて屁でもないね。

 

「来いソフィー、ザリン。アレやるぞ」

 

 ソフィーが縄状となり、左腕に巻き付く。ザリンは右腕に。

 見せてやるよ、ネタに全振りした蛇博士の再現技を。

 

 俺は地面を蹴り、目についたイノシシ型の魔物に接近。距離を詰めた所で、敵に向かって両腕を伸ばした。

 

「シャー!」

「プルプル!」

 

 伸ばされ手からは、更にザリンとソフィーが伸びる。ソフィーは敵を締め上げ、ザリンが首元を噛み千切った。

 

「マスターが再現した潜影蛇手によって、敵は倒されましたわ。リスナーの皆様はマスターの勇姿に拍手を!」

 

 粒子になってゆく魔物を見てると、後ろから無駄にオモシロオカシク俺を褒め称えるルーメリアの声が聞こえてくる。

 どうせコメント欄は、ネタコメントで溢れてんだろうな。

 

:潜影蛇手は草www

:再現する技がマニアック過ぎるwww

:木の葉崩しに失敗した人だ!

:少年編の時だけ強キャラ感が出てた男

:潜影蛇手代 ¥1000

:凶悪犯なのに謎に許された男

:それは孤独を紛らわせるための術だ

:少年編で一番のクソ野郎

:大蛇丸扱いされてて草www

:おい凶悪犯早く謝罪動画だせよwww

:ヒルゼンと風影を殺したクソ野郎

:柱間と扉間をエドテンしたのに木の葉崩しに失敗した雑魚www

:砂隠れの里に謝罪しろよ

:木の葉崩しに失敗した時どう思った? ¥1000

:付き合ってあげてるザリンちゃんとソフィーちゃん偉い ¥10000

:大蛇丸のとばっちりをくらってて草www

etcetc……

 

 ほらな、やっぱりネタで溢れてたよ。何で俺に大蛇丸の文句を言うんですかね。作者に言えよ。

 コメントを読み続けると、ふざけたのが目に付いた。

 なになに、木の葉崩しに失敗した時どう思ったか……。そんなの悔しかったに決まってんだろ。腕まで持って行かれて、死にたい気持ちでいっぱいだったね。勿論、猿飛先生は絶対に許さないリストに入れてやった。って何で俺は、大蛇丸の気持ちに寄り添ってんだよ。大して好きなキャラでもねーし。そもそも俺は大蛇丸とソック・リーでもなければ、ロック・リーでもない。

 くそっ、金も貰ったし、少しだけ大蛇丸ムーヴに付き合ってやるよ。

 

「私じゃなくて、ミナトを火影に推した猿飛先生が全部悪いのよ。私、悪くないもん。私の方が火影に相応しいの。頑張って穢土転生覚えたもん!」

 

:大蛇丸口調でもんとか言うなwww

:マジで草だってばよwww

:ちょっとだけ似てるの草www

:エドテン頑張る奴を火影には出来ないだろwww

:恩師に責任転嫁すんなよwww

:頑張る方向がズレてんの草www

:逆ギレすんなってばよ大蛇丸

:モノマネ代 ¥500

:二次創作の新しいインスピレーションが湧きました!ありがとうございます! ¥5000

:うん、これは卑の意志を継いでるわ

:スリザリンに10点! ¥1000

 

YY:砂隠れにはちゃんと謝った方が良いと思うけれど

お米こまち:大蛇丸好きじゃない

ゆいゆい:なんでオカマ口調?

HAYATO:次は螺旋丸の再現を頼む ¥500

はるのん:私も穢土転生好きだよ(∩゚∀゚)∩ ¥888

etcetc……

 

 ちゃんと俺の道化ぶりを楽しんで貰えたようだ(白目)。道化ってよりはオモシロ蛇人間だけどな。

 あー、陽乃さんがエドテン好きとか怖すぎだろ。絶対に碌な使い方しないぞ。気づいたらビンゴブックに載ってるまである。

 

「マスター、もう3時間を超えましたわ。続けますの?」

 

「いやもう終わりにしよ。マジで疲れた」

 

 こう言う配信だとかの陽キャっぽい仕事をすると、陰キャの俺は疲れるんですよ。早くベットにダイブしたい。あー、でも家事があるわ。明日の為にエルランとも交渉しなきゃだ。燃やせ俺の社畜ソウル!

 

「ノー、ノー。カメラが回ってる時に疲れたとか言うのは、プロの配信者としてナンセンスですわ」

 

 こいつの配信への無駄に高いプロ意識は何なんだ……。さっきカメラが回ってる中、思いっきり聖女に喧嘩吹っかけてたよね魔王様。それともアレは、エンタメプロセスの一種だと言い張るつもりか。

 プロ配信者を目指す気の無い俺は、適当に「へいへい」と言って、画面外へと逃げる事にした。

 

「見てくれてる皆様に告知ですのよ。知ってる人もいると思いますが、わたくしとタマエがXアカウントを作りましたわ。概要欄にリンクがあるので、フォローよろしくですの!」

 

 いつの間に概要欄に貼りやがった……。これからは俺の業務に、従魔のSNSを監視を加えなきゃな。あぁなんてことだ、仕事が増えてく。俺の悠々自堕落計画が日に日に怪しくなっていやがる。クソッ!

 

「今日は最後に……質問コーナーをやりますわ! 適当にスパチャから二つ選ぶので、どしどし送って下さいな!」

 

 川の氾濫が如く、どんどんスパチャ質問が送られてくる。

 ルーメリアの奴、ファンから金をむしり取るの上手いな。質問コーナーをやるのは良いが、まともな質問を選べよ。

 

「ではこれ! マケイン@ぬっくん推しさんからのコメントですわね。『義経さんには何か夢はありますか?良ければ教えて下さい!』……おお、マスター宛てですわ。さぁ答えて下さいマスター」

 

 ルーメリアが元気良く話を振ってきた。

 質問者分かってるわ。ぬっくん良いキャラしてるよな。水道水マイスターを自称する辺り、得も知れない親近感を覚えてしまったもんだ。あの男はもしかしたら俺よりプロのぼっちかもしれない。

 よし、同じキャラ推しとしてちゃんと答えてやろうではないか。

 

「俺の夢はな、さっさと数十億単位の資産を築いて悠々自堕落生活(スローライフ)を送ることだ。この大願のためなら、嫁ニキと呼ばれようが、ハーレム野郎と呼ばれようが俺は耐えてみせるぞ。そして妹に子供が生まれたら、お小遣いをいっぱいあげて俺の好感度を上げるんだ」

 

 小町に子供が生まれたら、俺はきっと甘やかしちまう。お小遣いをお願いされたら絶対にOKする自信もある。そしてお小遣いをあげたら、女の子なら『将来伯父さんと結婚するー』、男の子なら『伯父さんみたいなカッコイイ男になる!』って言われるまでがセットだ。よし絶対に甘やかそう!

 

:スローライフとか言ってる奴の夢は大抵叶わないぞwww

:お前の夢が叶わないに1000ペリカ

:これは金だけが無駄に貯まるパターンwww

:嫁ニキの妹ウハウハ案件

:お前絶対シスコンだろwww

:妹の友達を紹介して下さい

:俺にもお小遣い頂戴

:精々頑張れよハーレム野郎www

:嫁ニキの妹になりたい

:ちゃんと従魔全員を養おうとしてるのは一応尊敬する

:お金溜まっても配信は続けてね ¥1000

 

YY:なぜか知り合いの腐ったシスコンと同じ匂いがするわ……

お米こまち:キャー!カッコイイ!こまちにもお小遣いよろしくね♡

ゆいゆい:ニッキーらしいね夢だね! 

はるのん:へぇスローライフか~、叶うといいね~( ≖ᴗ≖) ¥800

HAYATO:君のスローライフが叶うことを祈ってるよ…… ¥800

 

 オノレェリスナー共め。どいつもこいつも俺の夢が叶わいと思ってるな。もう八幡は怒っちゃったからね。

 夢が叶った暁にはSNSに『じゃあなアホリスナー共www』って投稿してやる。

 

 次にお気に入り欄にいる知り合いの反応が気になったので見てみることにした。

 えー、ちょっと小町ちゃん、画面越しにタカらないで。こっちからは投げ銭出来ないから。あとはるのんさんは意味深なコメントやめて。マジで怖いから。

 葉山ァ、お前のその反応は叶わないと思ってる奴の反応だぞ。

 

「マスターの消極的な夢が叶うかは怪しいとして、次はこれですわ! 牛丼は松屋派さんからのコメント『ラスちゃんはマスターの事をどう思ってますか?』……はぁ……早く答えなさい植物妖精」

 

 セインフィールさん関連のスパチャだと分かった途端に、ルーメリアはやる気の無い声を出し始めた。

 本当に良くないスパチャを選びやがったな……。これは聞かなくても分かる。俺に対してセインフィールさんの好感度は間違いなく超低い。無理もない、問答無用で殺そうとしたしな。別に好感度を上げようとも思わないけど。

 

「なんで私の時だけ適当なのよ」

 

 ルーメリアに対して不満の声を上げるセインフィールさんは、俺をまじまじと見つめてきた。

 分かってた事だけど、間近で見るとエルフって超美形だな。っておい、こっち見んな。ちょっとドキッとしちゃったじゃねえか。 

 セインフィールさんは俺の顔を見ながらうんうん、と頷いてから配信をキューブの方へと向き直った。

 

「その……マスター義経は……私にとって特別な人……です」

 

 頬を染めながら、乙女のような表情で紛らわしい事を言い放った。

 誤解を招くような言い方すんじゃねーよ。言葉足りて無さ過ぎだろ。本当は『特別な(人の魂が混ざった)人』だろ。いや、それを言うのも良くないんですけどね。もっとこう『良いマスターです』とか他の言い方あっただろ。

 

「グヌヌッ! とうとう本性を現わしましたわね、クソ妖精め! マスターは渡しませんわ!」

 

 しまいには勘違いを起こしたルーメリアが、手に持ってた魔石を地面に叩きつけてセインフィールさんといがみ合い始めた。

 

「なによ! 間違った事なんて何も言って無いわよ、幼稚ヴァンパイア!」

 

 やめろ、頬の掴み合いをするな、恥ずかしいから。

 あー、もうさっさと止めて配信を終わらせよう。

 

「お前らマジでやめろ。見てて恥ずかしい」

 

 止めに入ると2人がギロッと睨んできた。

 え、また俺何かやっちゃいました?

 

「そもそもマスター、いつの間にこの女の特別な人とやらになったんですの!」

 

 俺の胸を指でドンドンと押してくるルーメリア。

 痛いってばよ……。

 

「ねぇマスター義経、私なにか間違った事を言った? 言って無いよね?」

 

 問い詰める感じで、グイっと顔を近づけてきたセインフィールさん。

 近い近い、マジで顔近いから! その浮気を責める感じで寄らないで!

 なんで和平調停に来ただけの俺が責められてる感じなの? 理不尽過ぎない?

 

:修羅場キタ━━(゚∀゚)━━!!

:モテる男はつらいな嫁ニキwww

:毎度お馴染みの修羅場なう

:もうチャンネル名修羅場CHに変えろwww

:今日も良質な修羅場をありがとう ¥3000

:修羅場になると輝き始める男 ¥500 

:ヒロインレースの参加者募集中

:もっとハーレム増やそうぜ!

:アソコ爆発しろ 

:ちゃんと全員幸せにしろよ ¥1000

 

YY:ハーレム願望は身を滅ぼすのね……

お米こまち:ちゃんと全員と式を挙げなね ¥800

ゆいゆい:ハーレムって怖いね(>д<*)

HAYATO:刺されないようにな(笑)

はるのん:メシウマwwwwwww ¥8000

etcetc……

 

「「マスター?」」

 

 現実逃避しながらコメント欄を眺めてると、2人が語気を強めてくる。

 

「タマエ! 代わりに締めの挨拶を頼む!」

 

 指示を飛ばすと、タマエがケモ耳をぴょこぴょこさせながら元気良くカメラの前に出た。

 

「あのねあのね、リスナーの皆さん。あるじ様の一番はタマエだからよろしくね! じゃあまた来週!」

 

 意味不明なアピールをしたタマエは、停止ボタンをおした。

 結果として、ルーメリアとセインフィールさんの愚痴やら悪口を、一時間近く聞かされる羽目になりましたとさ。

 俺は絶対にこんな胃が痛くなる数々の現象を、ハーレムとは認めないからな。




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