か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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#メンズコーチ #ドラゴン #ピクルスガチ勢


46:配信をする上で、比企谷八幡は危機感が足りなかった。

 今日の仕事を全て済ませ、全員で夕飯(オークハンバーガー)を食べている。と言うより当分の間は、我が家の食卓はオーク料理しか出ない。しかも主にハンバーグ。食費がかなり浮く反面、飽きが早く来そうだ。これも慣れて調理スピードを上げる為なのだ、仕方ない。

 

「ドラ~♪」

 

 切り落としたオークの頭を抱えながらむしゃむしゃ食べるドラゴンのアーサー。絵面が結構グロイ。

 オークの首から上は牙を回収するだけで、特に活用方法がなかった。こうやってアーサーの飯になってくれるのは結構ありがたい。一応魔石もあげてみたが、首を横に振られて拒否られた。ルーメリアに聞いたら龍種は魔石を食べないようだ。因みにドラゴンは雑食とのこと。

 唯一の注意事項が、お酒厳禁。どうやら龍種の源泌器官と言われるモノと相性が悪いらしく、直ぐに悪酔いして火をしっちゃかめっちゃかに噴くそうだ。なんかスサノオのヤマタノオロチ退治みたいだな。

 

「プルプル♪」

 

「おう、今日も楽させてくれてありがとうな」

 

 食器洗いをソフィーと一緒に済ませて、俺は風に当たるべく外に出た。プラスちょっとした疑問を解消する為にも。

 自身の財布から、以前再会した元同級生の色男から貰った名刺を取り出して、書いてある番号に電話をかけた。

 

『いつもお世話になっております。雪ノ下HD法務部長の葉山です』

 

「あ、よう……えーと、お世話になっております、比企谷です」

 

 っべー、雪ノ下HDの部長職って肩書にビビっちまった。目の前にいる訳じゃないのに、なに会釈までしてんだよ俺。  

 

『これは驚いたな……。まさか比企谷の方から電話を掛けてくるなんて』

 

「ちょっとな……。アレだ、大手企業の法務部長であるお前の見解が聞きたくてな」

 

『見解? て事は迷宮基準法に関連することか。うん、力になれそうだから何でも聞いてくれ』

 

 なにこのイケメン、めっちゃ良い人なんだけど。オレ大した顧客でもないのに。今度会ったらソフィーを好きなだけ撫で撫でさせてあげよう。

 念の為にと結構前に買った迷宮法令集を空間収納から引き出して、付箋を貼っておいたページを開く。

 

「えーとだな、法令集の法48条に書いてある『健全な状態で迷宮生物を迷宮から外に出してはならない』があるだろ。それの健全じゃない状態ってのが、調べてもどう解釈していいのか分からなくてな」

 

『なるほど。これはいくつか判例があったから少し待ってくれ』

 

 ポップな保留音が流れだした。

 俺達は好き放題オークを外に輸送している。個人的にはプライベートダンジョンだし、バレないなら法律なんて気にしなくて良いだろとも思った。

 だが明日の配信でツッコまれて炎上騒ぎになったら困るので、説明出来る根拠が欲しい。それと一応行きつけのダンジョンでオークを捕獲してる、と言う設定にするつもりだ。

 

 程なくすると、葉山の声が聞こえてきた。

 

『悪い、待たせた。大まかに解釈すると3パターンある』

 

 葉山曰く、健全じゃないとされる解釈は以下の通りである。

・頑丈にな物に拘束されてる状態であること。

 分かりやすく言うと、檻に入れてる状態。

 

・歩行不可能、または攻撃不可能な状態であること。

 

・催眠及び長期間の非覚醒状態であること。

 

『これは補足だけど、従魔の場合も、つい最近判例があったんだ。従魔は契約者と精神的契約状態にあるから精神的には拘束されていて健全じゃない、と判決が下った。だから一応、従魔と一緒に外を散歩するのは大丈夫だぞ』

 

 へー、そう言う扱いになるのか。ルーメリアなんて平気でテロ事件を起こしそうなぐらい健全だけど、外を歩かして大丈夫なのだろうか……。うん、これ以上は胃が痛くなりそうだから考えないようにしよう。

 

「なあ、気絶さた上で鎖でグルグル巻きってのは大丈夫か?」

 

『その場合は、鎖の拘束力がキモになるな。どのぐらいの拘束力なんだ?』

 

 操血魔法の拘束力か。ツインタイガーヘッドでも破けないぐらいの拘束力だから問題無いとは思うが……。いやでも操血魔法って、火に弱いんだよなー。

 

「えーとだな、スキルで作った鎖だ。少なくとも脅威度B+の魔物でも破けない」

 

『B+でも破けないなら拘束力の条件は充分満たしているよ。……ただ一応、機会があったら動画を撮って映像的証拠を残したが方が良いかもしれない』

 

 確かにそうだな。明日の朝、グルグル巻きにされて藻掻く可哀想なオーク君の動画でも撮っておくか。

 

「分かった、動画は撮っておくわ。でも結局、両腕、両足、顎の骨を砕いた状態が一番良いって事か」

 

『君は見ない間に、かなり野生的になったな……』 

 

 おいおい俺昔から野生的だっただろ。遭遇率が極端に低い野生のぼっちだっただろ。探しに来る人がいないだけですけどね。

 

『あと判例のPDFデータを送りたいから、メールアドレスを教えて貰ってもいいか』

 

 データは普通に欲しいので、俺はアドレスを口頭で教えた。

 

『今データを送った。後で確認しておいてくれ』

 

 わーい、あの葉山君とメールしちゃったー。誰かに自慢しよっと。あ、自慢する人いなかったわ☆

 

「ありがとな、それじゃ──」

 

『で比企谷。これうち絡みの案件だろ』

 

 終わらそうとしたら、葉山が雑談を続けてきた。

 

「──何で分かっちゃうんだよ」

 

『まさか、まだ雪ノ下HDのホームページ見てないのか?』

 

 そう言われて急いでググると、なんと雪ノ下HDのホームページに『鎌谷幕府緊急参戦!』と桜が舞うエフェクトと共に派手に書いてあった。

 はるのーん……。大企業のHPでこんな派手に告知されるなんて聞いてないんですけど。確かに昨日電話したときに、雑談次いでに宣伝する的な事は言われたけどさ。こんなデカデカと書かれると恥ずかしいじゃないですか。

 

「おたくの副社長のせいで胃が痛いんだけど」

 

『はは、あるよなそう言う時。俺も高校時代よく胃が痛かったよ』

 

 電話越しでも笑顔だと分かるような爽やかな声で、過去をサラッと語る葉山。

 おいおい10年越しにトンデモなカミングアウトしてきたよコイツ。やっぱ皆の葉山隼人であり続けるって大変だったんだな。

 

「馬鹿の世話で大変そうだったもんなお前。主に戸部。あと戸部」

 

『相変わらず戸部に辛辣だな、はは。凄くいい奴なんだけどな』

 

 あともう2人いたな。確か、鈍重優柔不断の大和と童貞風見鶏の大岡だったよな。凄いよな、コイツら今じゃトップYouTuberグループだからな。

 

『それにしても、あの比企谷が周りから応援される凄い探索者になって本当にビックリしてるよ。なんだか君は、遥か遠くの存在になってしまったな』

 

 おいおいやめろよ。トップカーストだった聖人君主にそう言われると、むずがゆいだろ。そう言えばコイツよく周りから『HA・YA・TO! フゥ!』とか応援されてたよな。全然そっちの方がいいじゃねーか。ネット民の応援なんて『頑張れよ嫁ニキwww』だからな。応援に草生やすとかオカシイだろ。なんなら悪口だからな。

 

「そんな褒めるなよ、代ってやりたくなるだろ。俺の代わりに配信してくれても良いぞ」

 

 葉山出したら頭お花畑の女性(カモ)が増えそうだな。ホストに貢ぐアホ女とかいらねぇな。なんかメンタルがヘラってるの多そうだし。

 

『情けない話だけど、俺にはダンジョンに入る勇気なんかないよ。だからこそ、君の事を勇気のある凄い人間だと思う』

 

 俺より間違いなくコイツのがダンジョン適正高いだろ。運動神経も抜群だし。あくまで予想だが、葉山がダンジョンに入ったら勇者やら聖騎士やらのTHE主人公ジョブが発現する気がする。そんなジョブがあるかどうか知らんけど。

 

「全然凄くねーよ。ダンジョンなんて自殺志願者か頭パッパラパーが行く所だからな」

 

『……なあ、なんか悩んでるなら相談にのるよ』

 

 やめろやめろ、優しくすんな。まるで俺が頭パッパラパーの自殺志願者みたいじゃないか。魔物料理に挑んだ時点である意味、頭パーなんですけどね。

 

「わりぃ、で、なんの話だっけ?」

 

『そうそう、この相談が技術展覧会絡みの案件なのか聞いてみたくてね。一応、君が料理するとだけは陽乃さんから聞いてるよ』

 

「まあそうだよ。魔物っつーか、オーク料理を出すつもりだ。それでオークの肉を確保する為に外に輸出してて、それが合法か聞きたかったんだよ」

 

 答えると、長い沈黙の間が訪れた。

 このパターン、もう俺には分かるぞ。ゲテモノを出すことにビックリしてるんだろ。コイツには真っ先に食わしてやろうではないか。きっと驚くぞ。ククッ

 

『…………ヤラかしで有名な君の事だ。きっと凄く美味しいんだろうな。楽しみにしてるよ』

 

「前々から思ってたけど、ヤラかしで有名って何だよ。問題児みたいじゃねえか」

 

『君は史実の源義経に負けないぐらい世間を賑わしてるよ。はは』

 

 別に問題児になりたいから源義経を名乗ってる訳じゃないんですけど。でも実際に源義経ってかなりの問題児だよな。有名なので言うと、頼朝に黙って官位を貰った件は超ヤラかし。そう言えば、俺も配信で色々ヤラかしてるわ。うわっ、偉人と俺シンクロしてんじゃん。超嬉しくない。

 

「もし指名手配されたら東北じゃなくて、ダンジョンの奥底に逃げることにするわ」

 

『次はチンギスハンでも名乗るのか?』

 

 でたよ有名な都市伝説。ロマンはあるが、あんな珍説を信じる奴なんていないだろ。

 

「なれるなら劉禅が良い」

 

『本当に何もしたくないんだな……』

 

「おい、劉禅めっちゃ良いだろ。ちゃんと降伏して無用な戦争を回避しただろ」

 

 無能君主と言われているが、俺は評価している。何もしないで周りに任せたのは偉い。無能な働き者よりマシだと思うぞ。大体本当に無能だったか怪しいけどな。本当の暗君だったら40年も王様できてないだろ。なので、評価としては凡庸君主だ。

 

『確かにそうかもしれないね。所で、今度二人で飲みに行かないか? 純粋にダンジョンでの君の武勇伝が聞きたい』

 

 わー、あの葉山君に飲みに誘われちゃった~。コイツと飲む権利とか、雪ノ下HDの女性社員に売れそうだな。

 

「酒の肴になる武勇伝なんて、俺は特に無いぞ。従魔達のなら腐る程あるけどな」

 

『そう言わずにさ。いい店知ってるんだ』

 

 昔の俺ならコイツとの飲みなんて確実に断っていただろうな。

 思い出すのは高校時代の反目し合っていた頃。互いに面と向かって『嫌いだ』って本音を言えるのはある意味、通じ合ってたのかもしれない。認めたくないけど。うん、マジで認めたくないな。今にでも『ハヤハチキター!』とか聞こえてきそうだ。攻められちゃう側かよ俺。ウェー

 

「お前の奢りなら……別に良いぞ」

 

 これはあ、アレだ、誘われたのが嬉しいわけじゃないからな。ただの人脈作りだからな。しかもただ飯が食える!

 

『……意外だ、てっきり断られるかと思ったよ』

 

 じゃあ何で誘った……。断られる趣味でもあるんですか。なにMなのん?

 

『勿論奢らせても貰うよ、貴重な話が聞ける訳だし』

 

 心の底から喜んでる声だ。本当にコイツいい奴だな。投げ銭してくれるし。でも投げ銭してるのはどうかと思うぞ。

 

「で、いつ行く? 少なくとも直近は、おたくん所の案件が忙しいから無理だけど」

 

『全然いつでも良いよ。良ければ君の方から連絡をくれないか? 合わせるよ』

 

 今の言葉だけで分かる。コイツは仕事の出来る奴だ。いつでも定時に仕事を終わらせられる自信が伺える。

 

「了解、落ち着いたら適当に連絡するわ」

 

『うん、それじゃ楽しみにしてるよ。それとソフィーちゃんによろしく言っといてくれ』

 

 適当に返事をして、電話を終わらせた。

 葉山のやつ、スライムの液体でわらび餅を作ってやったら喜んで食いそうだな。作ってやろうかな。ククッ

 

♢ ♢ ♢

 

 朝から写真を撮るためだけに、従魔達にオークを何体か捕まえさせて解体(バラ)した。

 そんな血生臭い仕事から始まった今日は、配信予定日。今日の為に、豪華キッチンを借りる事が出来た。具体的に言うと、アーサーが生まれた後に市に『撮影用にキッチンのあるスタジオを使いたいです』と問い合わせたら、市が運営してるキッチン付き二階建ての建物のレンタルを提案された。しかも思いの外、キッチンはアイランド型で豪華だし、海も近いから東京湾が一望できる。

 そんなオサレな建物が一日使い放題で10000円。激安の理由は、きっと田舎で利用者が少ないからであろう。

 

 役所に必要書類を提出した俺は鍵を受け取った。今はその撮影スタジオにオフィスカジュアル姿のセインフィールさんと一緒にいる。因みに、ここまでの運転もセインフィールさんがしてくれた。社員がいると楽だね☆

 

「こいモンスターブック」

 

「ドラ~♪」

 

「え……?」

 

 本を出した瞬間、タップもしてないのにアーサーがいきなり飛び出してきた。なにこのソーナンスみたいな出現方法。今日はアーちゃんの出番ないよ?

 そんな困惑気味の俺にセインフィールさんが答えてくれた。

 

「これはね、モンスターブックが魔物に強いスキルだからよ。龍種に対してモンスターブックの拘束力が弱いの。ね~、アーちゃん」

 

「ドラドラー」

 

 ハイタッチしだしたし。何一つ喜ばしい要素ねーんだけど。

 

「アーサー、今日は大事な仕事をするんだ。悪いけど本に戻れ」

 

 何が何でも配信にアーサーは出さないからな。またヤラかしとか言われたくねーし。と言うよりドラゴンをテイムしたとか大騒ぎになる。そして確実にヤフーニュース乗るまでがセットな。

 

「ドラァ……」

 

 やめろ、そんな捨てられそうな声を出しながらウルウルした瞳で見つめないでくれ。

 

「…………分かったよ。でも言う事はちゃんと聞けよ」

 

「ドラッ♡」

 

 俺の胸に飛び込んできたので、抱きしめ返す。

 ったく調子のいい奴だな。まあいいや。画面外にいて貰おう。

 

「一応わたくしも強引に出れますわよ」

 

 次はいきなり魔王が顕現してきた。

 

「お前もかよ!」

 

 コイツは出演予定だからいいけどさぁ。ただ問題なのは、簡単にモンスターブックから出れちゃう事だよ。

 

「当たり前じゃないですの。偉大な魔王であるわたくしに、こんなちゃちな拘束は効きませんわよ。疲れるから普段はやらないですけど」

 

 そんなドヤ顔で言われても……。て事は何か、最初に出会った時に封印しても意味なかったって事だよな。封印すれば?みたいなこと言ってたのは、破れる自信があったからか。本当に良い性格してるよコイツ。

 

 文句を言っても仕方ないので、この問題は一旦棚上げにして、俺はハンバーガーの味を理解出来る従魔達を顕現させた。

 

「全員聞いてくれ。知ってるとは思うが、今日は急遽配信する事にした。もうXでの告知も済ませてある。一昨日からオークハンバーガーばかりを食わせて悪いとは思ってるが、オーバーリアクションで美味しさを表現して欲しい。頼む」

 

 従魔達に仕事のお願いすると、全員が了解してくれた。この士気の高さなら問題ないな。

 今夜は流石にオーク肉で別の料理でも作るか。オークのチャーシュー丼とかアリだな。

 

「んじゃ、俺は今日の(ゲスト)を迎いにいくから。それまでゆっくりしといてくれ。因みに、後で文句を言われたくないから言うけど、ゲストは女だからな」

 

 言った瞬間、首と両腕に恐ろしく冷たい圧が加わった。

 

「また女ですの? わたくしと言うモノが居ながら女ですの? 何でわたくしで満足してくれないですの? ねえ答えてマスター」

 

「アルジサマ、オンナヨクナイヨ」

 

「シャー」

訳:どんな人?

 

 ドス黒いオーラを出す吸血鬼、目のハイライトがオフになっている三尾之妖狐、ガン見してくる蛇。八幡はこの子達が怖いです。

 

「ちょ、離せって。お前達のグッズを作ってくれてる取引先の人だよ」

 

 強引に圧を振りほどくが、女性陣は不満気味だ。

 

「あとタマエは会った事あるだろ。唐ヶ原さんだよ」

 

「あ、トーカお姉ちゃん!」

 

「そう、そのお姉ちゃんだ。頼むからあんまり失礼な事はしないでくれよ」

 

「何でわたくしの方を見るんですの!」

 

 特に一番問題を起こしそうな魔王を見ながら注意をすると、ブーブー言い始めた。

 だってお前が一番粗相を犯しそうじゃん。気付いたら取引先の人が肉塊に変わってたとか、有り得そう。なにその超ホラー展開。

 

「ほらアーサー、カマクラに構って貰え」

 

「ドラ~」

訳:カーくん遊ぼ~

 

「ニャァ……」

 

 軽い注意も済んで、カマクラにアーサーを押し付けて外へと行く。俺は車に乗り込んで、問題が起きないように、と祈りながらゲストを迎いに車を走らせた。

 

♢ ♢ ♢

 

 駅で唐ヶ原さんを回収して、撮影スタジオに戻ってきた。

 そして、その唐ヶ原さんと言えば大興奮中である。

 

「わー、凄い! 本当に幕府の従魔ちゃん達に会えてるんだ私!」

 

 唐ヶ原さんはテンション高く従魔達と長い握手を交わしていく。

 

「トーカおねえちゃん、久しぶり!」

 

「キャー! タマエちゃん会いたかったですー!」

 

 何で女子同士って久しぶりに会うとキャーキャー言いながらハグすんだろうな。しないとハブかれるのかな。そう言えば雪ノ下は由比ヶ浜にハグされる度に『由比ヶ浜さん。暑苦しいのだけど、離してちょうだい』って言ってたな。なんか雪ノ下と言う人間が特殊過ぎて参考になんねえな。

 

「おい女。偉大なるわたくしに馴れ馴れしく触れるな。滅ぼすぞ」

 

 友好的な唐ヶ原さんの握手を、不遜な態度で仰々しい椅子に座っている問題児が拒絶した。その魔王が座ってそうな椅子どっから持ってきたんだよ。

 

「わお、配信では見れないツンツンなルー様も素敵です! あとこれ良ければ皆さんで食べて下さい!」

 

 持ってきた袋から、東京ばな奈と言うthe東京の手抜き土産5箱を取り出して、ルーメリアに渡した。

 あのそれ、普通は組織の長である俺に渡すべきなのでは……。確かにルーメリアの方が威厳があってリーダーっぽいけどさぁ。

 

「スイーツ!……ゴホッゴホッ、ほう。トウガハラとやら、礼儀は弁えてるようですわね。マスターの顔に免じて、特別に今日起こる無礼の全てを許して差し上げますわ」

 

 満足気な顔で握手に応じだすルーメリア。偉そうな事言ってる割に、東京ばな奈で満足しちゃうんだな。それ職場にお土産を買うのが面倒な時に選ぶ、手抜きで有名なお菓子だぞ。美味いけど。

 

「比企谷さん比企谷さん、ルー様って魔王みたいでカッコイイですね!」

 

 俺の肩を興奮気味に揺らしてくる唐ヶ原さん。

 みたいじゃなくてリアル魔王です。なんなら魔王以外に職業適正がないまである。

 

「いや、うん、アイツそう言うお年頃なんです。失礼なこと言われても戯言だと思って気にしないで下さい」

 

 余りにもルーメリアの態度が行き過ぎたら、一発チョップを頭に入れるか。

 

「お客様、こちらお茶です。それといつも、マスター八幡がお世話になっております」

 

 よそ行き顔のセインフィールさんがニコニコしながらお茶を出して、軽く一礼した。

 このエルフ、そんなOLっぽい事できるんだな。マジでちゃんとした企業に転職をオススメしちゃうレベル。俺なんて新入社員の時、客にお茶を出したら露骨に『女じゃないのかよ』って顔されて溜息を吐かれたぞ。因みに、出したお茶が一滴も飲まれないまでがセットな。

 

「幕府の聖女キター!」

 

 おい、聞き捨てならない単語が聞こえたぞ。

 

「あの聖女って……?」

 

「え、比企谷さん知らないんですか?」

 

 いや知らねえよ。配信でも聖女です、なんて自己紹介させてねーし。思い当たる場面に思考を巡らせてると、唐ヶ原さんが答えてくれた。

 

「探索用の衣装とか雰囲気が異世界系アニメの聖女っぽいってSNSで話題になってるんですよ」

 

 どうやら見た目の印象から奇しくも聖女って渾名が付いたようだ。そこは同感だ。だってなんか癒してくれそうで、聖女っぽいもん。

 偶然に感心してると、カマクラの後ろいたアーサーがテクテク歩いてきて、唐ヶ原さんの足をツンツンしだした。

 

「ドラ~」

 

「え……? えぇぇぇぇええ!?」

 

「こら馬鹿!」

 

 俺は急いでアーサーを隠すように抱きかかえた。

 

「あの比企谷さん、その子ドラゴンですよね……」 

 

「なに言ってんですか……HAHAHA。デカイトカゲのぬいぐるみですって」

 

「どら!」

訳:トカゲじゃないよ!

 

 トカゲ呼びに怒ったアーサーが、急に俺の腕にがぶっと噛み付いてきた。

 

「いって!? アーサー悪かった! トカゲって言ったのは悪かったから離してくれ!」 

 

 謝り続けると、離してくれた。ただ腕にはガブられた痛々しい痕が付いていた。

 ドラゴン怖っ! 危うく腕を持って行かれる所だったぞ。これからは絶対にトカゲ呼びだけはしないようにしよう。

 

「やっぱドラゴンじゃないですか! しかもアーサーちゃんって言うんですか。偉大なる騎士王の名前を付けるなんて比企谷さんセンスありますねー」

 

 そうだろそうだろ、センス抜群だろ。ルーメリアの言う通りになら、アーサーはいつか龍人化する。だからその時のために『私のこの剣はマスターに捧げる』とか、いかにも忠誠心が高そうな事を言ってくれる気高い名前を付けた(願望)。純粋にペンドラゴンと掛けたってのもあるが。

 

「ドラドラ~♪」

 

「えへへ、アーサーちゃんめっちゃ可愛いです!」

 

「写真撮らせて貰いますね。ほらアーサー、ピースしろ」

 

 唐ヶ原さんに抱えられるアーサーが可愛いかったので、俺は写メをパサシャっとした。

 

「それ私にも送ってください。あと他の従魔ちゃん達との写真撮影もお願いします!」

 

 仕事までまだ時間があったので、唐ヶ原さんと従魔の撮影会をしてあげた。

 これも取引先との円滑に関係構築になるし、何より従魔達の思い出写真が増えてお兄ちゃん嬉しいです。

 

「ほら比企谷さんも」

 

「え俺、ってちょっと」

 

 なぜか俺と唐ヶ原さんのツーショットも撮影する羽目になりました。

 この人、男子を勘違いさせてどん底に落したこと何回もあるだろ。あ、いい匂いがしたのはここだけの話な。

 

 配信の時間も迫ってきたので、仮面を付けてキッチンに材料を出す。あと未解体の超ドデカイオーク肉(首と皮がない状態)。

 

 料理の準備も終えて、配信キューブの設定に取り掛かった。

 動画タイトルは『義経さんと愉快な仲間達のお料理教室』で良いか。

 #グルメ #ゲストいます #料理 #展覧会 #宣伝配信

 ハッシュタグの設定もこれでいいか。

 

「配信を始めるけど、今回は全員食レポだけしてくれれば良いからな」

 

 業務確認をすると、全員が頷いてくれた。

 

「おー、これがプロの配信現場。なんか緊張してきました」

 

 そう言ってるが、表情を見た限り唐ヶ原さんは大丈夫そうだな。

 俺は一応、イレギュラーに改めて釘を刺すことにした。

 

「いいかアーサー、絶対にカメラの前に出るなよ。フリじゃないからな」

 

「ドラー♪」

 

 分かってる風に可愛く鳴いてるけど、本当に分かってるのかコイツ……。ダメだ、胃が痛くなってきそうだ。

 これ以上考えると、仕事を放棄しそうになったので、俺はスタートボタンをポチっと押して、キッチンに立った。

 

:嫁ニキさんちぃーすwww

:金曜日に配信って珍しい

:マジで料理すんのかよお前www

:嫁ニキの料理教室はーじまーるよー!

:今回は従魔いないの?

 

YY:頼朝さんまだかしら 

お米こまち:経ちゃん料理頑張ってね(≧▽≦)

ゆいゆい:頑張ってねニッキー(^O^)/

はるのん:料理頑張ってね~

HAYATO:ソフィーちゃんがいない……

etcetc……

 

 ミスったな、ソフィー出しとけば葉山が貢いでくれたのに。

 まぁいいや、昨日寝る前に全員で考えた挨拶をするか。

 

「リスナー諸君、どーも源義経だ。えーと、お、オハ幕府……」

 

 昨夜ルーメリアが、売れてるYouTuberは独自の挨拶があるとかギャーギャー言ってたので、仕方なく全員で意見を出しながら作った。しかも言いだしっぺの案と言えば『滅ぼすぜ天皇!鎌谷幕府です!』だったしな。どう見ても国家転覆を企んでいそうなヤバイ挨拶だったから全力で拒否した。結果、相対的に可愛く聞こえるタマエ考案のオハ幕府を採用する事になった。

 

:オハ幕府www

:草www

:オハ幕府は厳しいって

:ツライって

:センスに危機感持った方がいいって

:ヤバイって

:ダサイって

:恥ずかしいって

:カッコ悪いって

:やめた方がいいって

:土に還った方がいいって

:スポーツやった方がいいって

:メンズコーチが大量湧きしてて草

 

お米こまち:ポイント低いって(≧◡≦)

ゆいゆい:やっはろーにしようよ(o^^o)

はるのん:ひゃっはろーのがオススメだよ(★‿★)

HAYATO:可愛い挨拶だな(笑)

etcetc……

 

 何故だか急にメンズコーチが大量に湧き出したんだけど。メンズコーチって確か、画面の向こうからこっちを陰キャだと断定して口悪く罵ってくるヤバイ奴だよな。なに今どきのメンズコーチは挨拶のコーチングもするのかよ。土に還れに関してはただの悪口だし。

 

 自身の挨拶に悶えながら読み続けると、知ってる奴らのコメントが目に付いた。

 ……おい小町ェ、お前もコーチングしちゃうのかよ。あとハロー系列のバカっぽい挨拶は、俺には厳しいって。

 もうこうなったら救世主(タマエ)を呼んで、強引にこの挨拶を正当化しよ。

 

「タマエ~、助けてくれ~、お兄ちゃんがイジメられてるよ~」

 

 助けを求めると、画面外にいたタマエが目薬を差してからやって来る。そのままカメラの前まで行くと、哀しげな表情を浮かべながらあざとく上目遣いをした。

 

「リスナーの皆さん、頑張って考えたんだけど……オハ幕府ダメなの……? あるじ様が凄く喜んでくれたから悲しいよ……」

 

:オハ幕府最高です! ¥1000

:朝昼晩その挨拶使います ¥1000

:自分のセンスに危機感持ちました ¥1000

:センス良いって ¥1000

:最高だって ¥1000

:俺が土に還ります ¥1000

:メンズコーチやめます ¥1000

:スポーツやめます ¥1000

:命尽きるまでその挨拶を使います ¥1000

:手のひらグルグルwww

 

お米こまち:やっぱポイント高いって(≧◡≦)

ゆいゆい:やっはろーよりオハ幕府のが良いよね!

はるのん:それでもひゃっはろーのがオススメだよ(★‿★)

etcetc……

 

 萌豚共め、コイツらの手のひらはドリルかよ。天でも突く気なんですか? 天元突破はヤバイって。

 

「じゃあこれからは挨拶をオハ幕府にするから、リスナー諸君よ・ろ・し・く・な!」

 

:でもお前は危機感持った方がいい

:fuck

:スポーツしたこと無いくせに

:調子のんなハーレム野郎

:土に還れ

:挨拶ぐらい自分で考えろ!

:クソめ

:引っ込めハーレム野郎!

:コーチされろ

:タマエちゃんを盾にしやがって!

etcetc……

 

 どうしてもさっきから、一つだけ意味不明なコメントがあるな。こうなったら分からせてやる。

 

「おい、言わせて貰うが、俺はこう見えてそこそこスポーツが得意だ。野球なら何時間でも壁とキャッチボール出来るし、テニスも何時間だって壁当て出来るし、サッカーも壁と長時間パス練てしてきたぞ」

 

 あれ、よくよく考えたら思い出が壁だらけなんだけど。心なしか従魔達と唐ヶ原さんも俺を可哀想な目で見てるし……。

 

:なんかごめんな……

:人間の友達いないんだな……

:ほらこれやるから元気出せって ¥500

:正しいスポーツのやり方知ってるか?www

:遊び相手が全部壁www

:壁と友情を育んだ男

:草

:これは大草原不可避www

:それ全部人とやるスポーツwww

:壁との思い出多すぎてワロスwww

:柴三郎で涙拭けって ¥1000

:【悲報】嫁ニキに友達がいなかった模様

:余りにも可哀想で草生えない

:従魔士で良かったなお前www

 

はるのん:wwwwwwwww ¥1000

YY:何故だか他人に思えないわ…… ¥100

お米こまち:また自分の傷を抉ってるよ

ゆいゆい:そうだ!うちの旦那さんとキャッチボールしようよ!

HAYATO:俺が入ってる社会人のサッカーチームに入るかい?

etcetc……

 

 ワー、スゴイナー、自分の傷を抉っただけでお金が貰えたよ。でも何故だろう、お金が貰えてウレシクナイ。あと葉山と由比ヶ浜、お前らの純粋な優しさが傷に染みてツラいです。やっぱこの歳になっても陽キャとは相容れないな。

 

「……あ、アレだ、話が逸れたな。気を取り成して、先ずはゲストの方を紹介します」

 

 唐ヶ原さんに視線を送ると、にこやかにやって来た。

 

「どーも、知ってる方もいると思いますが、幕府と提携してるワンダーカーテンの桃華ちゃんでーす!」

 

:人間の女性だ!

:またハーレム要員ですか?

:とーかちゃんだ!

:とーかちゃん出てるwww

:なんか人間いるの新鮮www

:また女かよ!

:とーかちゃんお久さ ¥500

:魔物と可愛い女性しか出て来ないチャンネル

:また今度お店いくね!

:嫁ニキとどういう関係ですか? ¥1000

:可愛い! ¥1000

 

お米こまち:どんだけお義姉ちゃんが増える予定なの(ー_ー)

ゆいゆい:可愛い人だね!(*'▽')

はるのん:私にオファーくれてもいいじゃんブーブー(·。·)

etcetc……

 

 へー、うちのグッズを売ってるだけあって割と有名なんだな。おっと小町、お義姉ちゃんとか言うんじゃない。ただの取引先だから。大人の関係だから。なんか大人の関係って言うとエロく聞こえるな。

 

「ハーレム要員だと思われてますよ」

 

「えー、ないない! 私、黒バスの黄瀬君がタイプなんで、義経さんは無いですってー。あとハーレム作ってる人とか普通に嫌です」

 

 高速で手を横に振りながら、明るく否定する唐ヶ原さん。 

 なんかこれだと、俺がイケメンに負けて振られたみたいになるんですけど。しかも理想高すぎだろ。いつか黄瀬をパーフェクトコピーしてる高スペ男性に出会えるといいですね。そんな男いないと思うけど。

 

:黄瀬かよ……

:やっぱりイケメンが正義なのか

:俺のがバスケ上手いし

:残念だったな嫁ニキ

:死にたくなってきた

:現実が残酷すぎる

:俺のが黄瀬より性格いいし

:取り敢えず嫁ニキがイケメンじゃないのは分かったわwww

:ドンマイ嫁ニキwww

:黄色に染めてくるか……

etcetc……

 

 ダメージくらってる奴がちょいちょい居るな。ザマァ。

 

「挨拶も済んだし、一つ宣伝させてくれ。俺たち鎌谷幕府は二月の技術展覧会に雪ノ下HDのブースで出店する事になった。だから今日はその日に売る商品を料理する。て事で頼朝さんアレを」

 

「にゃー」

 

 カマクラに合図を送ると、ドデカイオーク肉を持って来た。俺とカマクラはその肉が上手くカメラの画角に収まる用に立てる。

 

「これはオークの肉だ。俺達はこの肉でハンバーガーを作って売るつもりだ」 

 

:は?

:美味いの?

:頭おかしくなったか

:血迷ったか嫁ニキ

:そもそもその肉塊ドロップ品じゃないだろ

:グロwww

:ドロップ品の場合はもっと小さいぞ

:どうやってその肉用意した

:お前法律違反はヤバイって

:違法輸出をやるならコッソリやれよ……

:取り敢えず話は聞いてやる

 

はるのん:詳しい説明よろしくね(・∀・)

ゆいゆい:不味そう……

お米こまち:いつも魔物食ってるの!?

etcetc……

 

 案の定コメント欄は法律違反を疑う声が多い。しかもクライアントからは説明を要求をされてるし。

 

「不安の声は尤もだ。だが法律には抵触していない。法律には『健全な状態で迷宮生物を迷宮から外に出してはならない』と書いてある。これは簡単に言うと、抵抗出来ない状態なら外に輸出して良いって事だ。だから俺たちは手足と顎の骨を砕いた上で外に輸出している」 

 

:で証拠は?

:簡単には信じられん

:法律をクリアしてても食いたくない

:そもそも魔物肉って体に悪いって噂あるよな

:通報してやる

:俺は興味ある

:解体とかスゴォ

 

はるのん:一応なんかの証明資料作っておいてね~

etcetc……

 

「通報でも起訴でもしたいなら、お好きにどうぞ。こっちは証明する準備は出来てるし。と言う事で料理を開始します。予め小さく解体した肉がここにあるから、今日はこれを使う」

 

 俺はドデカイオーク肉を空間にしまって料理を開始した。

 普段と同じく、いつもの手順で調理する。その間のコメント欄の相手は、ルーメリアたち女性陣に任せる。

 

「おっとここでマスターがパンをフライパンに投入して、肉汁で焼き始めましたわー! この手際の良さ、流石は専業主夫を志望してるだけありますわ! おー、漂ってくるジューシーな匂いがたまらないですわね~♪」

 

 何故かハイテンションで実況されてるんですけど。なにこれ食戟の八幡なの。

 

:本当に料理は出来るんだな

:あれなんか美味そう

:これ普通に美味いだろ

:専業主夫志望www

:普通のハンバーグにしか見えないの不思議

:本当に女子力高くてウケルwww

:そうか!俺も料理すればモテるんだな!

:ただの飯テロ配信じゃねえか

:ルー様の実況代 ¥5000

:俺展覧会行くわ

:飯テロ代 ¥500

:腹減ってきた

:何故か料理してる時だけカッコ良く見える

etcetc……

 

 肉とパンの焼き調理を終えて、盛り付けに入る。パンにパティを乗せて、その上に下から順にチーズ、トマト、レタスを重ねてBBQソースを掛けて完成。これと同じ要領で残り五個も作り終えた。

 

「では完成したので、まずは人間の唐ヶ原さんに食べて貰いましょう」

 

 ハンバーガを唐ヶ原さんに渡すと、文句を言いたそうな目で睨んできた。

 

「義経さん嵌めましたね……!? オークなんて聞いてないですよ!」

 

「だって聞かれてないですし」

 

「義経さんの鬼畜!」

 

:嫁ニキ悪魔かよwww

:とーかちゃんファイトwww

:提携先を実験台にするクソ野郎で草

:見てる分には面白いからアリ

:普通の人間が食えるか見ものだな

:女にゲテモノを食わせて喜ぶ男

:とーかちゃんこれあげるから頑張って ¥1000

 

お米こまち:ごみぃちゃん本当にそう言う所だよ

etcetc……

 

「これを食えば、おもしれー女として名前を売れますよ」

 

「ヤバイ男に目を付けられる枠じゃないですかそれ! うぅ、分かりましたよ食べますよ……」

 

 覚悟を決めた唐ヶ原さんは皿からハンバーガを手に取り、目を瞑りながら恐る恐る口へと運んだ。

 

「……っ!?」

 

 バクバクと食い終わると、急に立ち上がってカメラの真ん前まで走りだした。一体どうしたんだ?

 

「幕府リスナーの皆さん、これぱな美味いんですけど! あと10個ぐらい余裕で食べれますよ! え、マジで何この美味さ。義経さんって料理の神様か何かなの? 味の暴力パナイんですけど!」

 

 はい今日もパナイを頂きました。出来れば、ぱないの!って叫んで欲しかったな。

 

:そんなにか……

:配信だしリアクション的にはヤラセに見えないな

:でもTVで魔物の肉は有害って言ってたぞ

:魔物食べたことあるけど食材によっては美味いで

:当日行くわ

:展覧会興味なかったけど行きたくなってきた

:未だにオールドメディアを信じてる情弱がいて草

:聖女様に会いたいから買いに行くわ ¥2000

:普通に食べたい

:でも二足歩行だぞ……

:純粋に魔物料理に興味が湧いてきた

:ヤラカシ男と提携してしまったオモシレェ女

:フッ、おもしれー女 ¥580

 

YY:当日買ってみようかしら

ゆいゆい:マック食べたくなってきた!

お米こまち:当日行くね(≧▽≦)

はるのん:君に依頼して正解だったよ( ≖ᴗ≖)

etcetc……

 

 最初に比べて好意的なコメントが増えたな。マジで唐ヶ原さん呼んで良かったわ。おもしれー女とか言われてるし、名前が売れて良かったね☆ 

 従魔達も唐ヶ原さんに続いて食べ終わり、オーバーなリアクションでリスナー共を楽しませてくれた。

 せっかくだし、リサーチもかけてみるか。

 

「リスナー諸君に聞きたいんだが、ピクルスは入れた方が良いか?」

 

:ピクルス抜く奴は頭湧いてる

:パンより必要だろ

:抜いたらハンバーガじゃない

:彼氏がピクルス抜いてたら別れる

:ピクルス要らない派のワイが通りまーすwww

:客がピクルス抜きでって頼んだらいつも殴ってる

:抜く奴は生きてる価値無い

:トマトのがいらない

:ピクルスが入って無かったら店員をぶん殴る

:友達がピクルス抜いてたから絶交した

:ピクルス入ってなかったら店のレビューをボロクソに書く

:上司がピクルス抜きで頼んでたから退職してやった

:抜きで頼む奴は非国民だ!

:ピクルスの入ってないハンバーガーを食うならクソを食った方がマシ

 

ゆいゆい:パンは抜いても良いけど、ピクルスは絶対必要だよ!

YY:もし姉がピクルスを抜いてたら家族の縁を切るわ

HAYATO:10個は入れた方が良い

お米こまち:兄がピクルス抜いたら妹やめる

はるのん:もし妹がピクルス抜いてたら監禁する

etcetc……

 

 え、ちょっとピクルスの過激派が多いんですけど。コメント欄がピクルスの狂気に満ちてるんですけど。何が怖いって、知り合いがピクルスガチ勢なのが一番怖いよ。

 もうこれ以上ピクルスの話はやめよう。

 

「う、うんピクルスは入れとくわ……。じゃあ唐ヶ原さん、あとは好きなだけ自社宣伝していいですよ」

 

「ヒャッホーイ! 義経さんマジ神!」

 

 さっき俺のこと鬼畜って言ったよなこの人。いきなり神とか短時間で進化しすぎだろ俺。簡単に進化出来るソシャゲーの雑魚キャラかよ。

 

 そんなおもしれー女こと唐ヶ原さんは、持ってきた荷物から色々取り出して、宣伝しまくった。主にダンジョンで着る服やらの装備関係。

 俺は手持ち無沙汰になったので、後で自分が食べる用のハンバーガーを作り始めた。勿論トマト抜きのチーズマシマシだ。

 

「義経さん終わりました〜。あ、そのハンバーガーって、まさか私の分……」

 

 この人は骨の髄まで、オーク肉の虜になったようだな。ハンバーガーを見る目なんて肉食獣みたいだし。

 

「違いますよ、後で自分が食べる分ですよ」

 

「はぁ~、バレンタインデーにチョコあげようと思ったのに残念です」

 

 なに! 女子からバレンタインチョコが貰えるだと!って並の男子なら思うかもしれないが、歴戦のぼっち経験を持つ俺はバレンタインデーなどと言う製菓会社が作りあげた幻想(マーケティング)に引っ掛けたりなどはしない。

 

「ドラドラ〜♪」

 

「…………」

 

 ぼっちとして培ってきた自身の聡明さに酔って油断していたら、気づけばアーサーが俺のハンバーガーを食べていた。

 

「あ、あの義経さん……カメラ回ってます……その、ドンマイです、HAHAHA」

 

 オーケー、クールに行け俺、クールにだ。一切動揺するな俺。いつも通りに配信をスマートに終わらせる。なに簡単な事じゃないか。

 なので俺は、ムシャムシャとハンバーガーを食べるアーサーを持ち上げて、画面外にそっと置いてから、何事も無かったかのようにカメラの前へと戻った。

 

「それじゃ配信を終わらせたいと思います」

 

:おいちょっと待てwww

:終わらせねえよ!?

:今のってまさか……

:ドラゴンだぁぁぁぁぁぁぁ!

:【超緊急速報】嫁ニキがドラゴンをテイムした模様

:なに逃げようとしてんだよwww

:お前ついにやったのか

:貴様ァァァ!!逃げるなアア!!

:説明責任から逃げるなアア!!

:頼むからもっとドラゴンを見せてくれ!

:なに終わらそうとしてんだテメェwww

:放送事故で草www

:今日も超ヤラかしてて草生えるwww

 

HAYATO:凄いな……

ゆいゆい:可愛い!

お米こまち:今度見にいくね!

YY:興味深いわね

はるのん:これはバズるねwwwwwwwwwww

etcetc……

 

「もうイヤだ……厳しいって!」

 

 結局メンズコーチなのかよ。




オハ幕府!
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
仕事が増えた為、こちらでの投稿頻度がこれまで以上に低くなります。
楽しみにしてる方々申し訳ないです。
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