か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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51:結局のところ、雪ノ下母はお見通しである。

 表情は至って友好的で柔らかいが、その目は決してこちらを信用などしていない。信用足り得る存在なのか、そう目でこちらに問いかけていた。10年以上も会っていなかった葉山でさえ、簡単に俺の正体に気づいた。正直言って、目の前の大魔王を欺ける自信なんて俺には無い。かと言って現時点で安易に正体を晒すのは違う。全てを明かすのは、俺が栄光を掴んだ時だ。八幡大ピンチ! 高校時代のラスボスが目の前に現れました。なんならパワーアップしてるまである。前作のボスが復活するパターンって妙に興奮するよな。お陰で冷や汗ダラダラですよ。

 

 改めて俺はダメもとで正体が看破されないように、詰まりそうになりながらゆっくりと低い声を出して会話に励んだ。

 

「す、すみません。大企業のトップを前に緊張してしまいました。……どうぞ遠慮なくオークバーガーを召し上がって下さい。味は保証します」

 

「ふふ、それでは一つ頂きますね」

 

 雪ノ下大魔王は皿を手に取ってから、ハンバーガーを持ち上げて口に運んだ。一かじりだけすると、目を瞑り、味わうようにゆっくりと咀嚼する。味を楽しむというよりも、査定しているように見える。

 やがて、大魔王の喉が揺らぎ、目を開いた。

 

「少し意地悪なことを言いますね。95点です」

 

「なるほど……」

 

 疑問に思いながらも、敢えて理解の意を示す。

 ただ味だけの審査なら、95点はナチュラルに喜んで良い高得点だ。相手が相手だけに、俺はそう思わないけどな。この大魔王は確実にこっちを試しにきている。足りない5点が何なのか、暗に問いかけてきているのだ。

 ぎぃー! この大魔王、今回も試すのかよ! ガキんときのテーブルマナーの件は忘れて無いからねっ!

 

 まあいい。昔のことより今だ。

 95点ということは、味に文句は無い筈だ。あの飲み込むまでの長さを見るに、味以外の要素で失点があったと考えるべきか。

 食感と匂いは違うな。普通にハンバーガーの食感と匂いだし。肉と特性オーロラソースの組み合わせが悪いとも思えない。だってソースは有名シェフの動画を丸パクリしたやつだし。オマケに、いかにも小さい頃から良い物を食って育ってきた感じの葉山と陽乃さんが大絶賛したんだ。

 葉山と陽乃さん、そして雪ノ下母か……。

 

 改めて、離れた所にいる葉山に目を向ける。次に陽乃さん。最後に目の前の雪ノ下母。

 ……分かったかもしれないぞ。

 

「あ、あの……失礼なことを言ってもよろしいですか?」

 

「ええ、どうぞ」

 

「雪ノ下社長みたいな40代の方には、少し脂っ濃かったかもしれません……」

 

 俺が推察を述べると、雪ノ下母は扇子で口元を隠して妖しく笑った感じがした。

 どうやら、お望みの答えを言えたようだな。実際オーク肉の脂質は異常に高くて重い。体を動かさない職業の人間が毎日食べ続けたら、間違いなく速効で太る。

 

「ご明察です。もし私が20代、あるいは30代だったら、あと3個は食べたいぐらいです」

 

 そう言って、雪ノ下母はハンバーガーを食べ進めた。先ほどと違って、食べるペースが早い。やはり味に不備は無かったようだ。

 

「気に入って頂けて何よりです」

 

「それと、私は50代後半ですよ。ふふっ」

 

 知ってるよ! どうせ年齢を言い当てたら不機嫌になるんだろ。これでも小町に鍛えらてんだぞ俺は。なんなら調教されたまである。……小町と暮らした21年が、まさかの調教期間だったとは! 小町なんて恐ろしい子!

 

「へ、へぇ……見えないですね。てっきり、社長は40代前半かと……HAHAHA」

 

 どうにか正体がバレないように頑張って誤魔化してると、雪ノ下母は目を細めて、こちらに不信感を向けてきた。

 

「変なことを聞きますけど、どこかで会ったことありますか? さっきからどうも源さんに、懐かしさのようなモノを感じていて」

 

「……き、気のせいじゃないですかねぇ……雪ノ下社長とは初めましてですよ」

 

 源義経として会うのは初めてだ。なんら噓はついていない。噓発見器にかけられても異常が発生しない自信すらある。

 もしもの時のために自身の内で詭弁を並べてると、雪ノ下母は腕組みしながら首を傾げて記憶を辿るような仕草をしだした。

 思い出される前に、俺は少し足を動かしてタマエの踵をツンツンして合図を送った。その意図を察したタマエは即座に動いてみせた。

  

「わぁ、凄く綺麗! 服も素敵!」

 

「……あらあら、従魔のお嬢さんね。間近で見ると、本当に可愛いわ。お名前は確か、タマエさんでしたっけ?」

 

「うん、わたしねタマエ! えーと、ハルノお姉ちゃんのママ?」

 

「そう、陽乃のママです」

 

「ほんとー? ハルノお姉ちゃんのお姉ちゃんじゃなくて?」

 

「ええ、本当ですよ。タマエさんは嬉しいことを言ってくれますね。……その……撫でてもいいですか?」

 

 おやおや、雪ノ下母がタマエのケモ耳に釘付けだ。

 分かるよ。妙に触りたくなるよな、そのケモ耳。やはりケモ耳少女は正義!

 

「撫でるの特別だよ~♪ オススメはね、耳と尻尾!」

 

「では遠慮なく……」

 

 優しい手付きでタマエの頭部全体を撫でる雪ノ下母。

 

「~~♪」

 

 タマエを撫で続けると、雪ノ下母の鼻から上機嫌な音が鳴りだした。

 あのママのんさん? あなたのそんな可愛い表情初めて見ましたよ? いつもの俺を品定めするようなおっかない目はどこ行ったのん? ほら、周りの人達も反応に困ってる顔になってるから。

 もうアレだ。顔がパンさんのぬいぐるみを抱きしめる時の雪ノ下と完全に同じ顔だ。面白い人間(オモチャ)を構う時の陽乃さんも同じ顔になるな。……やっぱ母娘だわこの人達。全員もれなく大魔王の血筋だったよ。俺って今日生きて帰れるのかなぁ……。

 

「ちょっとお母さん、長いってば~。パンさんグッズを見つけた時の雪乃ちゃんと同じ顔になってるよ」

 

「……すみません。少しはしたない表情になってしまいましたね」

 

 雪ノ下母は佇まいを正してから、ゴホッゴホッ、と誤魔化すように咳をした。

 

「タマエさん、うちの子になりませんか? 毎日三食おやつ魔石温泉カラオケキングサイズベッド付きですよ」

 

「それに今ならなんと! 油揚げも大量に付いてくるよ!」

 

 おい、クソ母娘ども。揃って引き抜こうとするな。

 

「温泉カラオケ……しかも油揚げ……………………ッハ!? ダメダメダメ! あるじ様と一緒に鈍感成り上がり俺tueeeeeグルメスローライフハーレムしなきゃいけないの!」

 

 あわあわしながら手を大袈裟な動作で雪ノ下母娘に向かって振るタマエ。

 ちょっとタマエちゃん、今の長い沈黙は何かな? 温泉とカラオケがそんなに魅力的だったのん? あと、そのなろう系要素のオンパレードみたいな目標をお兄ちゃんは立てた覚えないよ?

 

「「ハーレム……」」

 

 やめて! 二人揃っていかがわしそうに、こっちをジーっと見ないで!

 

「え、えと、うちの従魔を引き抜こうとしないでください……」

 

「軽い冗談ですよ、ふふっ。娘2人がいつまでも孫の顔を見せてくれないもので、つい」

 

 その言葉がぐさり、と俺の胸に突き刺さった。

 こちらこそ孫の顔をお見せ出来なくてごめんなさいね! 何カ月後かには雪ノ下とのことを報告した上で頑張りますんで!

 

「し、知ーらなーい……」

 

 陽乃さんも申し訳なさがあるようで、明後日の方角を向いて下手な口笛を吹き出した。うんうん、まずはこの人が長女として頑張った方がいいと思います。

 

「ハンバーガーの確認も出来ましたし、陽乃。引き続き任せるわね」

 

「はーい」

 

 帰ろうとした雪ノ下母は、一旦足を止めてから名刺を取り出して裏に何かを書きだした。

 

「源さん、私の名刺です」 

 

 俺が超低姿勢で名刺を受け取ると、雪ノ下母はドアの方へと向かって行った。部屋から出る直前、雪ノ下母は一瞬だけこちらに振り向き、明るい笑顔を振り撒いてきた。

 その笑顔にある種の恐怖を感じた俺は、急いで名刺の裏側を確認した。

 

「……っ!?」

 

 名刺の裏側には『またねひ・き・が・や・く・んฅ(^・ω・^ฅ)ノ࿐೨』と書いてあった。

 やっぱバレますよねー。てか狐の顔文字上手いな。

 

♢ ♢ ♢

 

 バレることは承知の上だったが、やはり居心地が悪くてソワソワする。

 タマエをモンスターブックに戻した俺とセインフィールさんはビジネスの話をするために、陽乃さん、あと眼鏡を掛けた素材調達部のお偉い男の人と共に別室に移動した。

 

 相手方が席に座ってから、俺とセインフィールさんも席にかけた。

 

「で、義経氏。商談って何かな? お姉さんワクワクしちゃうなー♪」

 

「もしかして、オーク肉を定期的に卸す契約ですかな? 大歓迎ですぞ!」

 

 どうやら、素材調達部のお偉いさんはオーク肉に魅了されたようだ。

 この人の名前何だっけ……。

 目を頑張って凝らすと、ネームストラップには尾上と書いてあった。

 

「……いえ、違います」

 

「えー、違うのー? 私にだけでいいからプライベートで売ってよ♪」

 

 プライベートで少量を売るのは良いが、間違い無く太るぞ。ぶくぶくになった雪ノ下陽乃副社長か……貫禄が倍になりそうで逆にアリじゃね?

 

「よ、義経さん、私にも……」

 

「あー、とりあえず2キロずつあげるんで、商談で出す商品に色を付けて下さいよ」

 

 空間収納から袋に包んであるオーク肉を合計4キロ取り出して、目の前に置いた。まだまだ80キロ以上あるけど、俺達だけで処理できるかな……。

 

「賄賂ってことね。義経氏ってしたたかだよね~」

 

 あんたにだけは言われたくないよ~。

 

「こんなに……今日は家内に頼んでハンバーグだな」 

 

 あのハンバーガーを食べたら、ご飯との組み合わせも試したくなるよな。ご飯と合わせても普通に美味いけどね。

 

「ハンバーグもオススメですけど、個人的にはカツ丼が一番ですね」

 

「なら今日の晩御飯はカツ丼にしよう!」

 

「尾上さん、晩御飯食べれるといいね~。義経氏の商談の内容によっては残業だよ? 私は定時で帰るけどね!」

 

 宣告を受けた尾上部長の表情が死んだ。

 この副社長なんて鬼畜なんだ!

 

「じゃあ、本題に入りますね」

 

 続けて集めたミスリルの一部、約1キロ分をドサッとだした。

 目の前の二人と言えば、目が点になっている。

 

「ミスリルざっと20キロ分はあります。買い取って欲しいです」

 

「20キロも……どこで集めたの?」

 

「ダンジョンですけど」

 

「どこのダンジョン……やっぱいいや、これ以上の詮索は野暮よね」

 

 何かに感づいた様子の陽乃さんは、追求を中止した。大方プライベートで聞こうとしているのかもしれない。

 

「素材調達部的にも願ったり叶ったりじゃない? 製品開発部と技術研究部からミスリルの調達依頼きてたよね?」

 

 製品開発部と言えば、雪ノ下が統括してる部署だったな確か。

 

「あ、あの副社長……確かに色んな部署から調達依頼は来ていますが……来てる依頼の多くは研究目的が大半で、すぐに利益が見込める案件が少ないんですよ……」

 

「なるほどね~」

 

 見るからに、ミスリルは一応欲しいけど緊急性がない案件が大半だから先送りにしてる、って感じか。

 ことの成り行きを見守っていると、陽乃さんが何か閃いてポンっと手を叩いた。

 

「とりあえず素材調達部で全部買い取って、半分の10キロは海外事業部に回せば?」

 

「それも考えましたが、送料やら関税までを考慮するとギリ赤です」

 

「でもさ、どの道いつかは開発系部署の依頼には応えなきゃでしょ? 多少赤が出ても仕方ないって感じじゃない? 稟議を通し易くしたいなら、経理に副社長案件ってことで話をしておくけど」

 

「それなら……まぁ……はい」

 

 尾上部長の顔色は、諦観の色が濃くなっていった。

 出た! 稟議を無理やり押し通す最強の一手! トップの命令! 

 この手を使うと、誰も何も言わなくなる。ちなみに巻き込まれた部署の予算は増額されないまでがセットな。

 ただ、色々と疑問が湧いたので、俺は聞くことにした。

 

「あの、すみません。……後学のために聞きたいんですけど、海外の方がファンタジー鉱石って高く売れるんですか?」

 

「それに関しては私が答えよう!」

 

 陽乃さんが答えるより早く、尾上部長が名乗りをあげてきた。まるで水を得た魚のような活き活きした顔をしている。この人、頼られるのとか好きそう……。

 

「知っているとは思いますが、海外の方が探索者人口が多いんですよ」

 

 確かによくニュースとかで、その手の話は聞いたことがあるな。日本の探索者人口は例年増えてるとは言え、1割そこそこ。探索者専業だと1割にも満たなかった気がする。海外だと、ダンジョンに行く人間はガッツのある勇敢な人間だと褒められる。だけど、日本の場合は野蛮な犯罪者予備軍だと思われる傾向が強い。

 仕方のないことだと思う。力の形は違えど、力に溺れて犯罪に走る人間はどこの業界にも一定数はいる。そう言う人間に限って、オールドメディアが数字欲しさでピックアップするから余計に業界の印象が悪くなる。やっぱオールドメディアは悪だな。

 

「ファンタジー鉱石が海外と比べて安いのは、需要です。ミスリルが優れた素材のは分かってはいるんですが、如何せん日本だと欲しがる人や企業が少ないんですよ。海外だと富裕層用の家の建材に使ったりするんですが、日本では日常的に使うには、まだまだオーバースペック素材扱いですね」

 

 海外は大企業でも『当たって砕けろ』の精神が強く、日本は大企業になるに連れて『石橋を叩いて渡る』の精神が強い。

 どちらのスタンスにも一長一短はあるが、技術の成長性だけを重視するなら間違い無く前者だ。話を聞く限りだと、日本では探索者用の防具か武器にしか使われていないのであろう。ミスリル製の武具を買える探索者なんて一握りだけどな。

 尾上部長の白熱する講義は更に続いた。

 

「そのせいで日本だと金1キロが2000万近くなのに、ミスリルは1キロ500万。正直言ってこのレートはおかしいです! 海外だとミスリル1キロで3000万ですよ、3000万!」

 

「は、はぁ……」

 

 あまりの勢いに、気圧されてしまった。オッサンの顔が近いんですけど……。

 とにかく、海外で売った方が良いって事だけは分かったよ。

 

「はいはい、講義はそこまでね」

 

 陽乃さんが尾上部長の肩を掴んで引き戻した。

 

「それで義経氏、色を付けて一キロあたり600万でどうかな?」

 

 正直言って、個人的には悪くない額だ。だが、さっきの話を聞いた手前、もっと吊り上げられる可能性を見つけてしまった。

 

「一つ相談なんですが、関税やらの海外への輸送コストが発生しない条件なら、いくらで買い取ってくれますか?」

 

 言った瞬間、陽乃さんと尾上部長の目が厳しいモノとなった。

 え、めっちゃ怖いんだけどこの空気……。

 

「ねぇ、もしかしてだけど、従魔達のスキルやら能力で密輸する手段でもあるの? 雪ノ下建設だった頃の中小企業時代なら考えたかもだけど、大手上場企業になっちゃったからそう言うコンプラ違反なチャレンジには乗れないな~」

 

 思ったよりも健全な経営方針だったよ。ただ、こっちにも豪邸を建てるという目的がある。そのためには、なるべく早く何億もの大金が欲しい。

 

「も、勿論、そちらに迷惑を掛けるつもりはありません。10キロ分は単価600万で買い取って頂いて、あとの10キロは海外での受け取りを確認でき次第、金を振り込んで頂ければ……このやり方なら、こちらが万が一しくじっても、知らぬ存ぜぬでいけると思いますが?」

 

「理屈はそうだけど、密輸を平気で提案する人とビジネスしてるってのが問題かな~♪」

 

 ぐっ、それを言われると何も言い返せない。今更だが、リスクの観点から大手企業はこういうのに厳しいようだ。無理もない、現代社会だと、バレたら一瞬でSNSで拡散されて吊し上げられるからな。しかも外的要因でも株価が暴落してまう世の中だ。代表的なので言うと、回転寿司にきた客が回ってる寿司をペロっとして、レーンに戻すだけでアウトだ。お陰で一時期の回転寿司業界はどこも寿司が回転していなかった。客のせいなのに株価が下がるとか世知辛い世の中だまったく。

 自分の提案に後悔してると、陽乃さんが妖しげに笑った。 

 

「って言いたいところだけど、私が聞いたのは『君が勝手にプライベートで海外へ行って、うちの社員と休日に遊んだ』って世間話。で、弊社は君にコンサルを依頼するって事でいいかな?」

 

 今の言葉を都合よく意訳すると『その作戦だと10キロ分のミスリルは買い取りって名目に出来ないから、コンサル案件にするね』ってところだろうな。

 あっぶね! どうにか耐えた。旧知の仲じゃなかったらオフィスから摘まみ出されてるところだったぞ。

 

「……そうですね」

 

「うんうん。コンサル10ヶ月間で、計2億でどうかな? 正直これ以上はキツイな~」

 

 にこやかに条件を提示してくる陽乃さん。

 なんか『キロ単価2000万まで吊り上げたんだから、この条件で飲めよ。飲めないならこの件からは手を引くぞこの野郎』に聞こえるんですけどぉ……。あと目が笑ってないのが怖い。

 直接海外に行って3000万で売りさばくという手もあるが、俺にそんなコネクションは無い。現地であれこれ言い掛かりを付けられて、安く買い取られるのが関の山だ。もっと言えば、換金とかも自分でやるハメになるから超メンドクサイ。やはりここが落としどころのようだ。

 

「じゃあその条件でお願いします。あと……」

 

「まだ何かあるの?」

 

 家の採掘ダンジョンでドロップした宝石類も空間収納から取り出した。

 

「普通の宝石って買い取り出来ないですよね……どこに売って良いか、いまいち判断付かなくて」

 

 悩みを打ち明けると、陽乃さんと尾上部長は白手袋を付けて興味深そうに見だした。

 

「へぇ、このアメトリンとか凄く綺麗だね。ダンジョンで出たの?」

 

 陽乃さんは紫の宝石が気に入ったようだ。だって目がキラキラしてるもん。

 

「そうですね。なんかカラフルな鉱石型巨大ワームを倒したら大量にドロップしたんですよ」

 

「ふーん。普通の宝石は扱ってないけど、手間賃が貰えるなら雪ノ下家御用達の宝石商に話を通すけど、どう?」

 

 御用達ってなんだよ……。絶対に俺とは縁遠い格式高い店だろそこ。やっぱセレブ一族は違うなー。正直、俺には宝石の価値を見極める知識なんて無いし、もう全部任せよう。

 

「それでお願いします。これで自分からは以上ですね」

 

「じゃあ、あとは契約書を巻くだけだね♪」

 

 粗方の商談を終えて、先にミスリル10キロ分を雪ノ下HDに預けた。このあと諸々の検査をして問題が無ければ、契約書が郵送されるらしい。それを返送して俺のサインが確認出来たタイミングで金が振り込まれるとのこと。

 

「それとコンサル料だけど、このままだと法外な金額になるから、義経氏にも工作を手伝って貰うよ♪」

 

 話を聞く限りだと、どんなに高いコンサルでも月500万が精々らしい。それを、いきなり個人の俺に2億も払うから、念入りな契約を巻く必要があると。じゃないと、国税局に目を付けられた時にツッコまれて色々面倒な事態が起きるとのこと。

 

「要は2億もの大金を払う大義名分が欲しい、ってことですか……」

 

 アドバイスしてるだけのコンサルが2億貰ったら流石に怪しいか。

 

「そうそう。ゴブリンとかの雑魚魔物の素材でいいから、月に何個か送ってよ。コンサル料に実働費込みって証拠が作れるからさ」

 

 確かにそれなら形のある証拠が作れるな。なんなら、余ってる素材とか腐る程あるし。

 

「了解です。適当に見繕って送りますよ」

 

 もうコンサルというよりは、事実上下請けになっている気がするぞ……。まあいい、大金に多少目が眩んだ感は否めないが、結果オーライだ。

 これも憧れのスローライフのため! 俺は従魔達と暮らせる豪邸を建てるんだ!

 

 商談もなんとか無事に終わり、俺とセインフィールさんは先方に別れの挨拶を済まして、エレベーターに乗った。

 そして、エレベーターのドアが閉まって下に向かって動いた瞬間、さっきまで笑顔だったセインフィールさんが怒りだした。

 

「ちょっとマスター義経! 大企業の副社長に密輸を持ち掛けるなんて気でも狂ったの!? 本気でヒヤヒヤしたんだけど!」

 

「……う、うん、金に目が眩んだと言うか、何と言うか……まぁ結果オーライだから良いんじゃね?」

 

 言い訳しながら俺は仮面を外して、サングラスを付けた。

 ふー、ずっと仮面ってやっぱ息苦しいな。

 

「八幡さんの昔の知り合いじゃなかったら、追い出されてるところよ」

 

「昔の知り合いと言うより……実は彼女の姉です……」

 

「尚更なにやってるのよ!? あれ完全に呆れてたわ! 彼女さんと引き裂かれ案件よ!」

 

 この聖女は分かっていないなー。ちゃんと説明してやらねば。

 

「あー大丈夫大丈夫。昔からヤラかしすぎてとっくに呆れらてるから。なんなら面白いオモチャとしか思われてないまである」

 

「それ胸張って言えることなの!?」

 

 聖女様の説教を適当に聞き流しながら、俺は聖女様にラインを送った。

 

「ラインで住所を送ったから、配達に行ってくれ」

 

「……ってこれ、私が密輸の実行犯じゃない!?」

 

 到着音が鳴り、俺達はエレベーターから降りて、そのまま雪ノ下HD本社ビルから外に出た。

 依然とブーブー言っている聖女様に、俺はカッコ良く指令を飛ばした。

 

「さぁ異界の聖女よ。天高く羽ばたいて、アメリカの地へと赴け」

 

「なにその気取った言い方。似合わないし、尚更ムカつくわね」

 

 部下が言うことを聞いてくれない……。でもお前、公孫瓚の首を埋葬するために中国に不法入国したじゃねえか。仕方ない、奥の手を使うしかないようだな。

 

「いや、あの、結構マジでお願いします。エビスビールをダンボールで取り寄せておくんで」

 

 超低姿勢お辞儀からの賄賂。こうすることで部下を自尊心をくすぐれるし、得も出来る。

 

「アメリカのニューヨークね! 密輸なんてちょちょいのちょいよ!」

 

 聖女様からの了承も得られて、俺達は近くの公園内にある木の陰に移動した。残りのミスリル10キロ分を渡すと、セインフィールさんは自身の空間収納に入れた。

 

「この住所にいる雪ノ下HDの駐在員に渡せばいいのね」

 

「ああ、マジで頼むわ」

 

 念入りにお願いをすると、強風が吹く。既に目の前からは、セインフィールさんがいなくなっていた。きっと今頃は空の彼方を飛んでいるに違いない。

 

「フッ、計画通り」

 

 一人公園で笑う俺。

 ビールで買収出来るとはな。安い聖女様で良かった良かった。

 

♢ ♢ ♢

 

番外編:料理の時間

 

 

 車で一時間以上かけて家に帰宅すると、リビングでカマクラ、ソフィー、ルーメリアが片手を上げながらカメラの前で跳ねていた。ソフィーはポヨンポヨンしてるだけだが。

 ……こいつら、なんでアホっぽいことしてるのん? なんの撮影?

 

「あ、マスター」

 

「お前らなにやってんだよ……」

 

 ツッコミを入れようとした所で、スマホが鳴った。確認すると、陽乃さんからのメッセージであった。

 

『早速ニューヨークからミスリルが届いたって連絡がきたよ☆

ワープでも使った?

さっきの今で届けるとか規格外すぎだよ(ー_ー)!!』

 

 え? セインフィールさんもうアメリカに届けたの? まだ一時間と少ししか経ってないよ?

 

「どうしたんですの? 間抜け面になってますわよ」

 

「……なあルーメリア、お前って飛行でアメリカに何分で行ける?」

 

「飛行の場合なら、多分行きだけで20分ですわね。魔法に時間を掛けて良いなら、空間転移で秒ですわ」

 

 異世界人ならこの程度のことはデフォルトのようだ。バトル漫画の住人かよこいつら。てか空間転移ってワープだよな? マジでワープ使えるのかよ。

 

「……お前らがヤバイってことは分かった」

 

 まあいいや。ここは仕事が速攻で片付いたとポジティブに考えよう。仕事なんて早く終わる分には誰も困らないからな。その代わり、早く終わらせると、次からはそいつに仕事が集中しだすまでがセットな(悲しき記憶)。

 とりあえず俺は陽乃さんに『ミスリルの査定よろしくお願いします』とだけ送った。

 

「で、何やってたんだ?」

 

 気を取り直して改めて聞くと、ルーメリアはフッと鼻を鳴らした。

 

「ショート動画を撮っていましたわ」

 

「……ヘンシュウ、ダレ、スルノ?」

 

「そんなの、マスターがやるに決まってんじゃないですの」

 

 何で仕事を秒で減らしたら、秒で増えんだよ。大体何で俺がこいつのお遊び動画に付き合わなきゃいけないんだよ。

 

「イヤダ」

 

「いいですかマスター? 最近わたくし達はマスターのワガママで配信をしてないんですのよ? ここで生存報告用の動画を出して、ファンの心が離れないようにしなきゃですのよ!」

 

 思ったより戦略的な動画だったよ。ここ最近アーサーが動画に出てしまったから、ほとぼりが冷めるまで控えている。でも動画を出さない日が続けば、当然離れていくファンも増える。ぶっちゃけ配信反対派の俺からしたら別に構わないけどね。

 ……ただ、従魔達が頑張って獲得した数字なのも確かだ。なのでマスターとして、その頑張りに報いる必要はある。超イヤだけど。

 

「分かったから、もう熱弁しないでくれ。っつーか、アレどこの部族のダンスだよ?」

 

「暗殺教室のオープニングですわよ」

 

「……あー、言われてみれば」

 

 やりきってないからヤリキレナイ~♪的な歌詞だった気がする。謎に片腕を上げるだけの痛いダンスをネット上にあげるとか、勇気ありすぎだろコイツ。やはり現代はデジタルタトゥーを積極的に彫りに行くことが成功できる秘訣なのかもな。

 ……こんな間違った世の中には手入れしなければ。ヌルフフフ。

 

「とりあえず後で編集しとくわ」

 

 仕事が増えたことにうんざりしながら、テーブルに座る俺。パソコンを開いて適当にネットサーフィンをしていると、リビングのドアが開いた。

 

「ただいまー、ちゃんと雪ノ下HDの人に渡したわよ」

 

 USAサイズのスタバカップを片手に帰ってきたセインフィールさん。ちゃっかりアメリカを満喫してきたようだ。

 

「おう、お疲れさん」

 

「はいこれ。少し疲れたから部屋に戻るわね」

 

 サイン済みの納品書とお土産のマカデミアナッツチョコを置いて、セインフィールさんはリビングから出て自室へと戻って行った。このお土産は絶対に3秒で選んだ手抜きだろ。普通に嬉しいけどさ。

 

「マスター、今日のご飯はわたくしに任せて欲しいですわ」

 

 ネットサーフィンを続けてると、よくない内容が耳に入ってきた。

 

「……なあ、お前が料理するとか聞こえたんだが、どうやら俺は疲れてるようだな」

 

「大丈夫ですわ! 沢山練習したので、今回こそは信用してくださいまし」

 

 涼しげな表情で自信満々に言うルーメリア。

 最近朝起きたらフライパンが汚れてたり、身に覚えのない汚れた皿がシンクに溜まっていた。ようやく犯人を見つけたぞ。

 

「お前は料理より先に皿洗いを覚えた方がいいぞ」

 

「はぁ、これだからマスターは~」

 

 え、なんでコイツが呆れてるの? 洗い物を増やして何で堂々としていられるの? ちょっとコイツの頭がおかしいんじゃないかって心配になってきたよ。

 

「わたくしが洗い物をしたらエライことになりますわよ」

 

 ルーメリアが堂々とした佇まいで放った言葉に、俺は納得した。同時にふざけんな、とも思ったけど。

 

「確かに」

 

 基本的に戦闘や探索においては高スペックなルーメリアだが、生活能力は限りなく低い。皿は割るし、掃除機の中身はぶちまけるし、服を干させると汚すしで本当に意味が分からない。

 

「ちょっとゴブリン来なさい!」

 

 ルーメリアに呼ばれたゴブタニが腕立て伏せを中止して、面倒そうにやってきた。

 

「ゴブ?」

 

「マスターがわたくしの料理の腕を疑っていますわ。あなたからも言ってやりなさい」

 

 いやいや、疑いではなくダメだと確信してんだよ。

 

「ゴブゴブ、ゴブゴブ。ゴブゴブ」

訳:旦那、どうか一回だけお嬢の飯を食ってやってくだせぇ。特定の料理ならそこそこ食えるレベルになったんで

 

 その特定の料理ってのが気になるんだが……。とは言え、ゴブタニが試食をした上でお願いしに来てるのは見て分かるしな……。

 

「オーケーオーケー。それと、次は片付けにも挑戦しとけよ」

 

「はいはーい」

 

 適当な返事をしながらルーメリアはキッチンに立った。

 許可をだしたとは言え、やっぱ怖いな。俺も手伝うか? 

 ……ダメだ。不安があってもここはマスターとして見守るべきだ。我が恩師平塚先生ならそうする筈。でもあの人、今思うと自分の首賭けてたよな……。

 

 本当に素晴らしい先生だと今でも思う。あの人は俺達奉仕部が成長できるように信じて任せてくれた。俺達がヤラかしたら責任取らされてクビになりかねない案件がちょくちょくあった、のにだ。もし俺が平塚先生の立場だったら、あそこまで生徒を信じて任せることは出来ない。だってクビになるリスクとか、問題教師の烙印を押されるリスクとか取りたくねぇし。

 

 でもだ、マスターとして腹を下す程度のリスク、そのぐらいは流石に取れる。可愛い従魔が苦手分野に挑戦してんだ。喜んでダークマターだろが木炭だろうが食ってやるよ。

 

 記憶の中の平塚先生に背中を押された俺は、モンスターブックを呼び出してタマエを帰還させた。

 

「おうち! ただいまー!」

 

「お帰りタマエ。ルーメリアが飯を作るまで休んでてくれ」

 

「…………ルーお姉ちゃんが料理!?」

 

 おっと、露骨にタマエがムンクの叫びポーズをしだしたぞ。その叫びたい気持ちは分かるよ本当に。

 

「わりぃ、どうか信じてやってくれ」

 

「……うん、分かった」

 

 いやいや感をだしながらタマエはなんとか納得してくれた。

 ルーメリアが料理してる間に、俺は他の獣型従魔達にオークの生肉を与える。アーサーにはオークの首。

 

「ゴブゴブ?」

訳:旦那、俺には?

 

 こいつ、なんで自分は回避できると思ってんだ。お前だけは絶対に逃がさないからな。

 

「良かったな、お前も俺達と一緒にルーメリアの手料理コースだ」

 

「ゴブ……」

訳:なんでこうなった……

 

 項垂れるゴブタニを無視して、俺はパソコンと配信キューブを接続して編集作業を始める。

 作業に没頭していると、程なくしてルーメリアがタマエの前に完成した料理を置いた。

 

「……これ本当にお前が作ったの?」

 

「ええ、メチャクチャ練習しましたわ。まさか、料理でこのような芸術を作りだせるなんて、知ったときは目から鱗ってやつでしたわ」

 

 皿の中心にはターメリックライス。周りにはハヤシソースのルー。だけど、ただのハヤシライスでは無い。

 

「殺せんせーの再現度たっけぇなあオイ」

 

 いわゆるキャラ飯ってやつだ。ターメリックライスで殺せんせーの顔を上手く再現していた。

 ……特定の料理ってキャラ飯のことだったのん? 逆に凄くない? 普通の料理が出来ないのに、キャラ飯がナチュラルに作れるとか、料理のスキルツリーおかしいだろ。なんなら俺が教えて欲しいレベルだよ。

 

「殺せんせーだぁ! ルーお姉ちゃん凄い!」

 

 タマエもニッコリな出来だ。スマホで撮影までしている。俺も小町にお送る用で撮っておこう。

 ただ、ゴブタニだけは微妙そうな表情をしている。 

 

「ゴブ……」

訳:これで10回目っすよ……

 

 どうやらコイツは試作品を散々食わされたようだ。

 分かるぞ、どんなに美味い料理でも連日食べると嫌になるよな。

 

 ゴブタニの前にも皿が置かれて、残すは俺の分だけとなった。普通に美味そうだから早く食べたいんだが……。

 

「ちょっと俺の遅くない? 焦らし?」

 

「マスターのは特別製ですわ♡」

 

 10分以上焦らされて、いよいよ俺の目の前にも皿が置かれた。

 

「……………………おいこら」

 

 あまりの失望感から冷たい声が出てしまった。

 

「もうマスターってば~、礼なんていいですのよっ☆」

 

「違う、礼じゃない。クレームだよ」

 

「は? せっかく愛を込めて作ったのにクレーム? いったい何が気に食わないんですの!!」

 

 言わないと分からないのか……。なら言ってやるよ。

 

「全部だよ! 何で俺だけ鷹岡なんだよ!!? てか鷹岡の再現度高すぎて逆にキモイよ!」

 

 本当に意味が分からない。俺もヌルヌルが良かった。

 

「あれ? 鷹岡ってマスターの推しじゃなくて? 気持ち悪くてネチネチしてるところとか、マスターにそっくりですわよ」

 

「似てねえし推しでもねえよ! むしろ嫌いだわ! てか好きな奴いないだろ」

 

「失礼な。鷹岡にだってファンはいますわよ。ああいう教育が好きな人だって絶対にいますわ」

 

「いねえよ! 今の時代あんな体罰教育やったら速攻で炎上だわ!」

 

 なんで俺らは鷹岡なんかで白熱してんだよ。これほど無駄な時間ないぞ。まだワンピースの正体について語り合った方が有意義だ。

 俺がツッコミを入れるのに疲れていると、ルーメリアは何かに気づいた様子で頷きだした。

 

「ふむふむ……なるほど、鷹岡モドキの方が良いと」

 

「寺坂も大して好きじゃねえよ! てか、いい加減鷹岡から離れろ」

 

「本当に文句ばっかり言いますわね。じゃあ誰が好きなんですの?」

 

 暗殺教室での推しキャラか。少し迷うな……。

 

「それはお前……か、神崎さんとか……」

 

 言った瞬間、空気がシーンとした。

 あの、何この空気?

 

「「フッ」」

 

 タマエとルーメリアが鼻で笑った。

 何で笑われてんの俺? 神崎さん普通に可愛いじゃん。鷹岡より1万倍マシだろ。なんなら鷹岡と比べるのが失礼なまであるぞ。

 

「マスターの夢を壊すようなことを言って申し訳ないですが、ああいう一見おしとやかそうな女に限って、裏でウェイウェイ遊んでますわよ」

 

「……」

 

 何も言い返せねえ。実際ゲーセンでウェイウェイしてたし。

 

「ねえねえあるじ様。黒髪でロング、しかも大人しそうな女の子には気を付けた方がいいよー? なんかね、男受け狙いすぎって感じがする~」

 

「ちょっとタマエちゃん? 笑顔で急に怖いこと言わないで」

 

 何でこの子はたまにブラックモードになるの。でも妖狐だし仕方ないか。

 そもそも神崎さんが、そんな計算してあのキャラをやっているとは思えない。知らんけど。

 

「とりあえずマスターが黒髪ロングの物静か系、なーんていかにもベタベタな女性キャラが好きなのは理解しましたわ」

 

 人の好みを笑いやがって。銀髪で吸血鬼で戦闘力が高いお前もベタベタキャラだけどな。これでこいつが金髪だったら、俺の人生が傷物語になる所だったぞ。

 

「さぁ皆さん、早く食べて下さいまし」

 

 ルーメリアに急かされて俺以外が食べ始めた。黙々と食べるのを見る限り、味に問題はなさそうだ。

 もう一度自身の目の前に置かれた皿を見ると、血走った目でスマイルを浮かべる鷹岡いた。

 やだー、俺も殺せんせーがいいよぉ。イカレてる体罰教師とか超イヤなんだけど。これマジでイジメだろ。

 

「ちょっと待つんですの!」

 

 鷹岡の顔面にスプーンを入れようとした途端、ストップが掛かった。

 

「次はなんだよ……」

 

「何で写メを撮らないんですの? せっかく愛しき従魔が作ったというのに」

 

 ……スマホの容量を鷹岡で埋めたくねぇ。奇術師風に言うならば、容量(メモリ)のムダ使い♡って感じだな。

 

「お前マジでメンドクセェ奴だな」

 

 このままだと腹を満たせない俺は、イヤイヤ写メを撮った。それでも納得のいってないルーメリアは自身のスマホを見せてきた。画面にはTwitterが表示されている。

 ハイハイ、投稿しろってことね。

 俺はため息をつきながら『ルーちゃんがキャラ飯を作ってれました。ありがとうございます』と幕府のアカウントで投稿した。少し待つとコメントが付いた。内容は『何で鷹岡www』的なのが大半であった。

 マジ分かるー、俺も同じ感想だよ。

 

 一通りのSNS作業を終えて、俺は鷹岡の顔面にスプーンを入れてから口に運んだ。

 

「……普通に美味いのがムカつくな」

 

 なんかアレだな、鷹岡のことが好きになりそうな味だ。

 ほんの少しだけこれからは鷹岡を推してみようかな。

 

 ……いや、やっぱ嫌いだし無理だわ。




オハ幕府!
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!
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