か、カマクラが若返ってる!?   作:9ナイン9

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7:意図しない形で、俺たちは日の目を浴びてしまう。

 現在、朝のムッキールーティンを全て終わらして、裏庭ダンジョンに来ている。

 そんな俺は今、ダンジョンの片隅でカマクラ達に見守れながら配信キューブの動作確認をしてる最中だ。

 

「これで完了だな。最後は魔力登録か」

 

 炊飯器並の大きさがある無機質な箱の上面をポチポチしながら動作確認を完了して、掌を乗せる事で魔力登録をする。

 これで、コメントが俺の周りをグルグルするんだっけ? 本当大した技術革新だよな。

 

 ここ数年でダンジョン素材と人類の科学力が合わさった事で、今まで世界のエネルギー問題──具体的には、天然資源の枯渇問題が解決に向かってると聞く。更に言えば医療分野も劇的に進歩した。

 もはやダンジョンは、人類に無くてはならない存在となってしまったのだ。

 

 1番不思議なのは、モンスターがダンジョンゲートから出て来ない事だが、モンスターの習性だと言われてる。

 正直、民衆を黙らせる為のこじつけ感が否めないけどな。

 

「おい、カm……じゃなくて、頼朝さんとゴブタニ。配信を開始するけど、いつも通りにしてくれれば問題ないからな」

 

 賭けても良い。俺らの配信なんて見に来る奴はいない。来たとしてもゴブリンを狩るだけの動画なんて、すぐ飽きてどっかに行くに決まってる。

 

「ゴブ!」

 

「にゃ〜」

 

 ゴブタニがヤル気を見せる一方、カマクラはすっげー面倒くさそうにしてる。ったく、誰に似たんだこの猫さんは。

 

「いやいや、頼むよ。カメラの前の時だけ頼朝さんって呼ぶから、反応してくれよ。な? 今晩は肉を食わせてやるから」

 

「にゃっ!? にゃにゃー」

 

 飯につられてヤル気を出したようだ。カー君チョロ過ぎだぞ。まるでスイーツに釣られた小町みたいだ。扱い易いから俺的には別に良いけど。

 

「よし、それじゃ配信開始するぞ」

 

 動画のタイトルを『猫さんと愉快な仲間達のダンジョン探索』に設定してポチッと押す。

 するとキューブは浮き上がり始め、姿を僅かに透過させた。

 確か、こうする事で魔物に対して認識阻害の効果を生み出してるらしい。

 

 まぁこんな高価な物を壊されたら堪ったもんじゃないからな。壊されたら泣くね。なんなら2ヶ月は引きこもりになる自信すらある。

 

 そこからは1階層でゴブリンを倒しながら探索を進めた。本当なら2階層に行きたかったが、慣れない場所で配信なんか出来る気がしないからな。

 

:初見です!てか、猫さん強過ぎません!?

:ちょw待ってww猫速すぎワロタww

:従魔士ですか?猫さんは従魔ですか?

:猫と一緒に戦ってるゴブリンめっちゃマッチョじゃね?

:マッチョゴブリンも普通のより強くね?特殊個体か何か?

:主は猫さん?それともゴブリンさん?』

:今、猫がゴブリンの首を刎ねなかったか!?

etcetc……

 

 俺が映らない様にキューブの後ろから2匹の戦いを眺めてると、俺の周りにコメントが流れ始めた。

 おいおい、どうなっていやがる!?

 なんでコメントが来てるんだよ!? 完全想定外なんですけど。

 これ挨拶しに出た方がいいよな……。カメラに映るとか超イヤだ……。

 

 俺はフルフェイスヘルメットを外して、リュックから念の為に持って来た猫の黒い仮面を取り出して顔に付けた。

 

「ゴブと頼朝さん! ちょっとこっちに来てくれ」

 

 仕方ないので、2匹を呼んでキューブの前に呼び寄せる。

 

「2匹とも、見に来てくれた視聴者さんに手を振るんだ。あとお辞儀も」

 

:キャーーー!猫ちゃん可愛い!可愛すぎてチャンネル登録しました! ¥250

:チャンネル登録4回押したぜ

:俺の肉体美がゴブリンに負けた……だと……

:俺のが可愛いし

:猫と張り合ってる奴いて草www

:猫さんは頼朝って言うの?

:いつの間にか猫が幕府を開いてた件について

:黒い猫仮面www顔出せよ主www

:頼朝と義経wwネーミング的に縁起悪過ぎだろwww

:毎日配信しますか? ¥250

:ゴブリンさんは最初から筋肉質だったんですか?

:テイムはどうやったんですか? ¥1000

etcetc……

 

 ヤバイヤバイ! どうすれば良い!?

 こっちとら配信童貞なんだよ!!

 いかん、落ち着け俺。金を顔面に投げられてる気分だが、中学の時に遭ったカツアゲよりはマシだ。

 まずは真面目なコメントとスパチャコメントに答えよ。

 それと、チャンネル登録ボタンは奇数回押せよ。じゃないと登録されねえぞ。

 

「えーとだな、まずはチャンネル登録あざっす。この猫さんは頼朝さんって言うんだ。で、ゴブリンの方は……ゴブって呼んでやってくれ。あとは……」

 

 返しやすいコメントから順に返すと、当然残るのは返しにくいコメントになる。

 

「テイムはだな、相手を縛った上で80時間テイムを掛け続けたんだ。メンタルに自信があるならオススメする。それと顔は……大量の火傷のせいで人様に見せれる顔じゃないんだ。だから仮面は取れない」

 

 大衆に嘘をつくのって、地味に良心が……あれ? あんま痛まないぞ。

 それよりガバガバ設定がバレる事の方が怖いわ。

 

:てかモンスターが筋トレするって地味に凄くない?

:ゴブの筋トレ動画はよ

:週1配信だと!?〇ね!もっと出せ! 

:猫さんはウォーキャット?グレイキャット? ¥1000

:80時間とか経ニキさんのメンタルがレベチwww

etcetc……

 

 おい、死ねとかあまり強い言葉を遣うなよ、ナチュラルに傷つくだろ。

 あと、カマクラをウォーキャットとかグレイキャットの猫型モンスターと勘違いしてるが、これは好都合だ。どっちのモンスターも図鑑でしか見た事ないからあまり詳しくはないけどな。

 

「かm……ゴホンッ、ゴホンッ、頼朝さんはグレイキャットだ」

 

 区切りの良い所で俺達は再び探索に戻る。2匹が戦ってる間は、俺は適度にコメントを返していく。

 

 俺が段々コメント返しに慣れてきた時だった。1つのコメントのせいでハプニングが起きてしまった。

 

『あれ?さっきからゴブリン素材のドロップ率100%じゃね?』

 

 このコメントのせいで、コメント欄が大盛り上がりしてしまったのだ。

 

 っべー、カマクラのスキルである【招福】の事が完全に頭から抜けてわ。

 だが、こう言う時の為の有効な手段はある。

 

「本当だな。昨日は全くドロップしなかったのにおかしいな……」

 

 そう、俺はすっとぼける事にした。雄弁は銀、沈黙は金って言うだろ? だから俺は知らぬ存ぜぬを貫き通す。

 

 コメント欄が盛り上がる中、俺は黙々とドロップ素材を拾い集める。

 マジでさぁ、なんで同接が3万人超えてる訳? 従魔が珍しいって言っても、猫とゴブリンだぞ? ファンタジー要素が加わった現代社会でそんな珍しい生き物でも無いだろ。暇人かよコイツら。

 日陰者の俺が大衆の注目を集めるなんてやはり間違っている。こうなったのも社会が悪い、俺は悪く無い。

 

:これさ、頼ニキが経ニキをテイムしたパターンない?

:おい、経ニキ少しは戦えよ。恥ずかしくないのか

:素材の拾い集めしかしてない経ニキwwもっと仕事しろwww

etcetc……

 

 こいつら……これは言ってやる必要があるな!

 

「いいか? 従魔士たる者はむやみやたら前に出ないんだよ。大事なのは己の命を従魔に預ける事だ」

 

:正論乙

:カッコ良く言ってるけど本体性能は雑魚って事ねwww

:効いてる効いてるww

:経ニキもスーパーマサラ人目指して頑張れよw

:やっぱり従魔士は性質上、従魔頼りってのがネックだよな〜

:魔石は従魔が食うのか、コスパは良くないな

:URL拡散しといたから感謝よろ

etcetc……

 

 スーパーマサラ人とかツッコミ所満載だが、1番ツッコミたいのはURLの拡散だ。

 俺は有名になりたくて配信してる訳じゃないんだよ! はっ!? これはまさか新手の精神攻撃なのか!?

 こいつらは俺のイヤがる事を理解してるのかもしれない。いや、拡散してくれたのは善意だろう。ありがた迷惑とはこの事を言うんだな。

 

「か、拡散ありがとうございます……」

 

「にゃー♪」

 

「ゴブ〜♪」

 

 2匹は笑顔でキューブに向かってサムズアップした。

 あ〜やっぱコイツら無駄に知能高いわ。

 

:やっべ、生まれて初めて猫が飼いたくなった

:なにこのゴブリン、一緒に居たら楽しそう!

:可愛いけど魔石を大量に食われるのは痛いわ。稼ぎが無くなる

:今の内に古参になっとこ

:ちょっとグレイキャット捕まえてくるわ

YY:可愛い猫さん、本当可愛い、凄く可愛いわ、ニャーニャー ¥10000

etcetc……

 

 可愛いって言う為だけに1万も投げるバカがいたよ。すっげー返答しづれえわ、このコメント。

 俺はバカの名前を確認するべく、YYと書いてあるスパチャコメントをタップしてみる事にした。

 

 うーん、ニックネームのみしか登録してないようだ。YYって事はフルネームのイニシャルである可能性が高いな。

 元カノもイニシャルが、YYで猫好きだったな……。まぁイニシャルがYYで、猫好きなんて世の中に山ほどいるか。 

 てか、今は雪ノ下を思い出してる場合じゃないな。

 

「ははん! 可愛いよなウチの猫!」

 

 特に返す言葉が無いので、元気よく対応することにした。

 でもやっぱり何かしらのサービスはした方がいいよな……。

 

「頼朝さーん。ちょっと失礼」

 

「にゃ〜ん?」

 

 流石に1万も貰って何もサービスしないのは気が引けるので、カマクラを抱えてドアップで映してあげる事にした。

 

「さっ!頼朝さん!お恵みを下さったファンの方にウィンクをするんだ!」

 

 俺の指示が理解出来たのか、カマクラは「にゃるん☆」と可愛いく鳴いて、あざとウィンクをしてみせた。

 コイツ、どこでそんなざとい技を覚えあがった。小町か? 小町に違いない、だって小町だもん。

 

YY:ありがとうございます。頼朝さんが忘れられない人の飼い猫さんに似てて暖かい気持ちになれました。僅かばかりの御礼ですが受け取って下さい ¥10000

YY:仕事があるので落ちます。次も必ず見に来ますね ¥10000

YY:またね頼朝さんฅ^•ω•^ฅ ¥10000

 

 おーい、3万円を僅かばかりって言うのは無理があるだろ。猫に貢ぐとかブルジョワかよこのYYって人。

 まぁでも、暖かい気持ちになれたなら良かったんじゃないの? 知らんけど。

 兎に角、下手なホストより稼ぐカマクラはなんて恐ろしい子!

 

:太客GETだぜwww

:ファンをテイムするとはさすが経ニキさんwww従魔士の鏡だぜww

:やっべ、ちょっと感動しちゃった。忘れらない人にまた会えるといいな! ¥100

:俺も義経さんをテイムしたい

:ヤバイ奴居て草

:ゴブには俺が付いてるぜ ¥500

etcetc……

 

 やっぱりネット民だわ。騒がし過ぎだろ。べーべー煩い戸部が可愛く思えるレベルだわ。

 明日はカマクラとゴブタニの為に黒毛和牛を買ってこよ。じゃないとバチがあたりそうだ。

 

「にゃ〜」

 

 カマクラが俺の足をぽんぽんしてきた。

 ああ飯時か。配信も3時間したし、今日はこれぐらいで良いだろ。

 

「従魔達が腹をすかしてるので、締めたいと思います。ゴブ君、ちょっとこっちに来るんだ」

 

「ゴブッ?」

 

「良いか、キューブに向かってジャンケンをするんだ。それで締めよう」

 

 ほら、サ〇エさんって最後ジャンケンで締めるだろ。アレをそのままパクる。オリジナルコンテンツとか一々考えるの面倒臭いからな。

 

「視聴者の皆さん。締めはゴブリンジャンケンです! 勝てば1週間、良い事ありますよ! 頑張って下さいね!」

 

 俺が、最初はグーから始まる合いの手を言い終えると、ゴブタニは勢い良くパーを出した。

 

「また次回も宜しくです」

 

「にゃ〜♪」

 

「ゴブ〜♪」

 

 サービス精神を理解してるのか、うちの子達はキューブに向かって愛想良く手を振る。

 同接が5万人まで伸びたのはビックリしたが、見てる感じうちの子達も楽しめたから良しとしよ。

 俺は胃が痛くて楽しめてないけどな。

 

:クソッ! ゴブリンにジャンケンで負けるとは不覚だった!

:ゴブリンがジャンケンするのオモロwww

:ジャンケンに勝ったので、明日好きな子に告ります

:最後まんまサ〇エさんwww

:おい、もう1回ジャンケンしろよ

:3回にしない?

:ジャンケンガチ勢多すぎ問題www

:次の配信も楽しみしてるぜ! ¥100

:鎌谷幕府クラスで宣伝しときます

:またねー頼朝さんとゴブさん!次いでに義経さんも

:これは頼朝さんとゴブにだからな! ¥320

etcetc……

 

 素人の俺でも分かる。初っ端の配信で、こんなにコメントやらスパチャが来るのは異常だ。これからは炎上にも気を遣わなきゃいけないのかよ。超面倒くせぇな。

 俺はそんな、後ろ向きな事を思いながらキューブのボタンをポチッと押して、配信を切った。

 念の為に電源も落としとこ。切り忘れ配信とか笑い事じゃ済まないからな。

 

「スパチャの合計額はどれどれ……げっ、8万円も儲けてるのかよ……」

 

 八幡来週が怖いよ。こうなれば、俺の必殺技であるバックレをかますか? 

 でもなあ、4万も投げてくれたYYさんが楽しみにしてるだろうしな……。

 

「来週も頑張るか……老後の資金の為に」

 

 40代以降は超楽したい。今の俺を突き動かさすのはその思いと、カマクラ達と楽しく余生を過ごしたいって思いだけだ。

 腹が減った俺達はひとまず、1階層の比較的安全な所に腰を降ろして、昼飯を取る事にした。

 

「ほらカマクラ、ツナ缶だ。ゴブタニには鶏胸肉サンドな」

 

 ゴブタニのリュックから飯を取り出してそれぞれに渡す。

 俺も雑に作った鶏胸肉サンドを食べながら、プロテインドリンクを飲む。

 こうしてると小さい頃の遠足を思い出す。遠足で飯を食う時も俺はぼっち飯だったけどな。

 

♢ ♢ ♢

 

「にゃ〜」

 

 飯を食べ終わって、座りながらぐったりしていると、カマクラが急にどこかへと向かいだした。

 

「うん? カマクラ、どこへ行くんだ?」

 

 俺とゴブタニは急いで準備を済まして、カマクラの後を付いてく。

 

 普段からマイペースだけど、一体どうしたんだ? 反抗期的なヤツか? 

 若返ったとは言え、精神年齢はおじいちゃんだから反抗期っての無いだろ。やっぱりいつものマイペースに違いない。休みの日とか勝手にどこかに散歩に行っちゃうし。

 色々考えながら黙って付いて行くと、2階層に続く通路を通り過ぎて、行き止まりの所で止まった。

 

「にゃっ! にゃあ!」

 

 行き止まりの石壁を叩いきながら、ここから声がするとか、ホラーチックな事を言い出したよこの猫。

 信じ難いので、俺も試しにバットで叩いてみる。

 

「言われてみれば他の壁より中身が詰まってなさそうだな……」

 

 叩いた時に、微妙に空洞音が耳に響いてくる。

 

「カマクラ。【斬鉄爪】を撃ち込んでみてくれ」

 

 指示を送るとカマクラは爪を光らせ、壁に強烈を一撃を叩き込んだ。

 辺りを土埃が舞い、視線を塞いでくる。

 

 そして、段々と土埃が収まると、

 

「………っ!? 隠し通路か?」

 

 目に映るのは人2人が並んで入れるぐらいの通路。

 どうする? 隠し財宝があるパターンもあれば、強い敵が出てくるパターンもありうる。ゲームなら大体この2択になる。

 だがこれはゲームじゃない。安全を考慮するとやっぱりここは撤退だな。

 

「にゃっ!」

 

「おい、バカ! 待て!」

 

 カー君のバカ! なんで行っちゃうのよっ! 八幡怖いよ!

 猫のクセに猪突猛進しやがって。アレか、前世は猪だった的な感じか。

 

 こうしてカマクラを追いかけるべく、俺とゴブタニも隠し通路へと入ってしまった。

 




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