カマクラに付いて行き、ひたすらに通路を歩く。途中でカマクラを強引に抱き抱えたりしたが、顎を蹴られたので俺は諦めて付いて行く事にした。
にしても、ここの通路だけ何か変だ。今までの通路は、天然の洞窟の中って感じだったが、この通路は人工的に作られた洞窟って感じがする。
周りに注意を配りながら歩みを進めてると、石室へと辿りついた。
「なんだよここ……棺桶!?」
部屋に入ると、ダイニングテーブルと椅子が4つあった。何より壁に立て掛けてある壮麗な棺桶が真っ先に目に付く。
少し離れた所には、壁にもたれ掛かりながら白骨化した何かがいる。
「これは……人間じゃなさそうだな……」
頭部はトカゲみたく、身体は人間。何の生き物だったのか皆目見当がつかない。
白骨化した死体を恐る恐る触ってみると、本みたいなのが手から落ちてきた。
これは日記か?
日記をパラパラ捲ってみるが、書いてある字が理解出来ない。
何も読めん。これ何語だよ……。
「にゃ〜」
「ゴブ……?」
カマクラとゴブタニがテーブル辺りで騒がしいので、確認しにいく。
「これは……魔石……? でも赤い魔石なんてあるのか?」
テーブルの中心にあったのはガラスケースの中に飾られた、サッカーボールぐらいの大きさがある真紅の魔石だった。
「にゃ〜」
カマクラはテーブルから降りると、棺桶を叩き始めて、ここから声がすると言う。
イヤイヤ、これ何のホラーゲームだよ。確実に何かヤバいのが中にいるだろ。
だが、万が一にもスーパーアイテムがある可能性だってある。俺も探索者の端くれである以上、興味が無い訳では無い。が、やはり命が第一優先だ。
「にゃ!」
退却を提案しようと思った矢先、カマクラが強引に棺桶を開けやがった。
「カマクラ!?お前なn……って、はっ!? 女!?」
真紅のドレスを纏った余りにも白い肌、流れるように中分けされた白銀の長髪。胸に付いた程よい大きさの2つの果実。
まるでおとぎ話に出てきそうな、お姫様みたいな女性が死んだ様に眠っていた。
いや、てか死んでるよなこの人……?。
「ご、ゴブ……ゴブゥ!」
「コブタニ……急にどうした?」
ゴブタニは突如と跪いて、女性に向けて頭を垂らした。まるで王様に挨拶する家来のように。
ゴブタニを行動を見る限り、この女が食物連鎖のカースト上位に位置する存在なのは分かったわ。
それ即ち、退却って意味だ!!
「お前ら! すぐ逃げるぞ!!」
「にゃ、にゃにゃ!」
「お前何言ってんの!?」
カマクラ曰く、刃向かって来ても自分なら勝てるらしい。
コイツ強くなったからって、増長してんじゃねぇの!?
「にゃ!」
しかも、敵意は感じないとの事。
敵意って意味分かんねぇよ。まるで生きてるみたいに言うなよ。てか、この女は生きてるのか?
「おい、コイツは生きてるのか?」
「にゃにゃ、にゃ〜」
真紅の魔石に魔力を流し込めば分かるらしい。
「分かるらしいって……こんな得体の知れないヤツを、目覚めさせるのはリスキーだろ!」
「にゃーん!」
カマクラを呼ぶ声がさっきよりデカくなってるから早くしろとの事。
俺は再度、女と魔石に対して交互に視線を配る。
本当に大丈夫なのかよ。いや、大丈夫じゃないが、これも探索者としての冒険だと思って割り切るしか無いだろ。何より、声のせいか、カマクラが鬱陶しそうにしてる。こうなったらカマクラの戦闘力を信じよう。
テーブルにあったガラスケースから真紅の魔石を取り出して、俺は魔石が光るまで自身の魔力を流し込んだ。
若干立ち眩みがする……。この魔石、結構な量の魔力を持っていきやがった。
「流し込んだぞ」
「にゃー」
女の心臓付近に近づけろって言われてもな……。俺は明日と言う日を迎えられるか心配になってきたよ。
「どうか何も起こりませんようにっ!!」
ヤケクソな気持ちで、女の胸に魔石を当てた。
魔石が自然と女の胸へと入っていき、
バサッ
開く音がした。
真紅の瞳と目が合った。
「あら、素敵な腐れ目さんね」
脳に響くような甘美な音色が耳に響き渡る。
恐怖と理性がせめぎ合っている中、俺は真紅の瞳から目を逸らす事が出来ないでいた。
「な、なにを……」
どうにか恐怖に抗いながら、声を絞り出す。
幻想的な美貌を持つ女は何も言わず、真紅の瞳でじっと見つめてくる。
居心地が悪過ぎる。まるで死神に心臓を握られてる気分だ。
女の瞳に宿る感情は計り難いが、好奇心か……?
「わたくしは貴方のモノよ、腐り目さん」
意味不明な事を言った女性は、棺桶から出て、2歩ほど俺へと近づく。
髪が鮮やかになびいた。
綺麗だ……。
雪ノ下の髪もこんな風に綺麗に揺らいでたな。
今でもロングなのかな? ロングだと嬉しいな……。
相手の動きを見ながら、そんな事をぼんやりと考える。
自分の思考が現実逃避に傾いた時だった。
女性はゆっくりと両の手を伸ばして、
俺の両頬を包み、
ぶっちゅううううううううううううう!!!
頭が理解するより早く、口で口を塞がれてしまった。
俺ナニされてんの!?
キスなんて可愛いもんじゃねえぞコレ!!
思考を加速させて、腕を動かそうとした時だった、
ヌルリ。
ふざけんなっ! こいつ舌入れてきやがった!!
じゅるるるくちゃ
YA☆ME☆RO!! HA☆NA☆SE!!
頼むからやめてくれぇぇぇぇええ!
てか、何で力が入らねぇ!?
駄目だ!全く動けんッ!
力づくで振り払おうとしたが全くかなわない。
なんなのこいつ!?
俺の事好き、大好き、フリスキーなのか!!?
じゅるるるくちゃぺちゃぐちゃぬるのるぬるるッ。
うわぁぁぁぁぁぁあああっ!!
結局10分もの間、放して貰えませんでした。
1つ言える事は、ファーストキスを雪ノ下に捧げといて良かったぜ。
♢ ♢ ♢
「おい! カマクラ! 助けろよ!?」
「にゃ……」
「俺が楽しそうにしてただぁ!? あれのどこが楽しそうなんだよ!! お前マジで、眼科に連れてくぞ!?」
俺の口が凌辱をされてる間、我がパーティの最高戦力であるカマクラは毛繕いをしていやがったのだ。
「そんなイヤだったかしら、わたくしの初めては?」
女は楽しそうにカマクラを抱えだして、俺に不敵な笑みを向けてきた。
「ひっ!? て、てか、お前一体何なんだよ!?」
「にゃ〜♪」
カマクラのヤツ、撫でられて嬉しそうだな。中身オッサンなんじゃねえの。
「あら、猫さん。主人を連れきて頂いてありがとう♪ お陰で、わたくしやっと棺桶から出れましたわ」
無視すんなよ。情事が済んだら俺はお払い箱かよ。お姫様みたいなナリしてるクセに、とんだビッチだな。
「失礼ですわ、腐れ目さん。わたくし、貴方と一緒で初めてだったのよ?」
「思考を読まないでくれる? マジで怖ぇから。それと、俺は初めてじゃないからね?」
何が初めてだ、ビッチめ。あのキス、相当な経験を積んだテクニックだったぞ。
てか、何で俺の事そんな生暖かい目で見てるんだよ?
「初めてなのは、恥ずかしい事じゃいですわよ?」
「いや本当だからね? これでも可愛い元カノいたからね? 1兆賭けてもいいぞ!」
「男は見栄を張りたい生き物だと聞きますし……。凄く憐れですわ」
もう良いよ、面倒臭い。どーせ俺の見た目なんて童貞だよ。
押してダメなら諦めろだ。グスッ
べ、別に泣いてなんか無いんだからね!!
「へいへい、憐れ憐れ。で、アンタ何? 敵?」
「またまた失礼な、敵じゃありまんせんわ。戦っても今のわたくしでは、この猫さんに勝てないですもの。それに、お気づきでしょ?」
お嬢様口調の女は舌なめずりをすると、さらりと確信を突いてきた。
一つ一つの動作がエロい。
それに何となく分かってた。テイムを掛けた訳じゃないのに、コイツは俺の従属下にいる。言うなれば、ディープなマウストゥマウスのせいで、コイツと俺の何かが繋がってしまったのだ。
こんな得体のしれないヤツを、仲間にしたくない。いつ寝首を掻かれるか分からないからな。
「早く名前を下さらない? わたくしは貴方の愛しい下僕ですのよ」
断じて愛しいなんて思って無い。むしろ怖い。
「名前って……名前無いのか?」
「※%##^0=&##ですわ」
聞きなれない何か、雑音みたいなのが耳に聞こえてきた。
「なんだって?」
「ふむふむ、やはり異世界言語はここでは意味無いですわね」
1人で納得したのか、頷き始めた。
「異世界ってなんだよ……意味分かんねえんだけど。なに、お前電波系?」
「電波系とは? 電気系統の魔法かしら?」
言語は通じるし、言葉でのコミニケーションは問題無いと見える。だが、意味不明な存在なのには変わりない。
「いや……やっぱ何でもない」
「それより、早くわたくしに相応しい名前を下さいな。美しくセンスのある名前を所望しますわ」
名前に高望みしやがって。
俺は、口を陵辱されたのを根に持ってるからな。
いっその事ポチって名付けてやろうか、お姫様系電波ビッチめ。
いや、後が煩そうだからやめよう。
しゃーない。一応女性だし、ちゃんと考えてやろう。
見た目だけは幻想的で美しいしな……真夜中でも輝きそうな白銀の髪……。
ダメだ、思いつかない……。
だが、俺は常に不測の事態に備えて、準備をしている。
テイムしたモンスターの名前を考える時用にラテン語辞典を持ち歩いてるんだからな。
俺は女にちょっと待ってろと言い、辞典を取り出す。
なるほど、輝きはルーメンって言うのか。
決めたぞ、これならセンスあるだろ。
「ルーメリアでどうだ……?」
「あら、響きは素敵ね。どんな意味ですの?」
「夜でも輝いて欲しい、って意味でつけた」
名前と意味が気に入ったのかルーメリアは純粋な笑顔を向けてくる。
やめろ。少しドキッとしたじゃねえか。俺はビッチの笑顔になんか落とされないんだからね!
「凄く気に入りました。これからはマスターと呼ばせて頂きますわ」
名前を付けた瞬間だった、
脳に情報が走った。
従魔士Lv2→従魔士Lv5。
スキル【テイマークッキング】
スキル【ビーストハッシュ】
おいおいどうなってる? 一気にジョブLvが3も上がったっぽいぞ。
スキルの内容はなんとなく理解出来たが、確認は後だ。
今はいち早くコイツが何者か確認すべきだからな。
「こい、モンスターブック」
俺はルーメリアの情報を見るべく本を開く。
「…………っ!? 嘘だろ、なんだよこれ!?」
思わず声が出てしまう程に、ルーメリアのステータス情報に有り得ない事が書いてあったのだ。
ネーム:ルーメリアLv1(幼体)
種族 :ヴァンパイアプリンセス
スキル:【異世界言語】【操血魔法】
称号
【戦血の魔王】【勇者殺し】【神殺し】
ステータス
生命力:500/500
魔力量:500/500
筋力 :+500
耐久力:+500
敏捷力:+500
知力 :+500
歪だ、意味が分からない。いや、書いてある事の意味は分かる。だとしても意味が分からない。
魔王だとか、大層な事が書いてある称号に対して、ステータスが見合ってないのが、俺の頭を混乱させてくる。
魔王をテイムしたからLvが3も上がったのか?
それに異世界言語って……ダメだ、信じたく無い。頭が理解するのを拒否してくる。
「なぁお前……ここに書いてある事は全部本当か? あと幼体には見えないんだが……」
俺は本をルーメリアに向ける。
本を確認するルーメリアは「やっぱりですわ」と言いながら納得する表情を見せた。
「マスター。ここに書いてある事は本当ですわ。それに……この姿を維持するのもここまでのようです」
ルーメリアの体が突如と光を帯びた。
段々と小さくなっていく。
やがて光はなくなり、ブカブカのドレスに包まれた幼女が目の前に現れた。
「…………は?」
「見蕩れるなんて、マスターはエッチですわ。幼女趣味ですの?」
どうなってる。ルーメリアが幼女になった。やはりコイツは埒外の存在だ。【モンスターブック】の中に永久封印をするのも視野に入れる必要がありそうだな。
「ちんちくりんの体を見ても、興奮なんてしねーよ。とりあえずこれを着ろ」
ほぼ裸状態だったので、俺のジャージの上着を渡す。
「ありがとうですわ。マスターは意外と紳士ですわね。好感度が上がりました」
俺のお前に対する好感度は地の底まで落ちてるけどな。
「あっそ。で、お前は本当に魔王なのか? それに勇者殺しとか神殺しってなんだ?」
ったく、魔王なんてこの世で陽乃さんだけで充分だっつーの。
だがステータスは嘘をつかない。なら、本当にルーメリアは魔王なんだろうな。
なに、て事は俺って魔王と暮らさなきゃならないの?
それなんの罰ゲームだよ。罰ゲームで終末を味わうとか俺の人生終わってんだろ。
さっきの配信の盛り上がりと言い、俺の立てたスローライフ計画がどんどん足元から崩れていってるんですけど……。
「それは後で話しますわ。先ずは色々と片付けさせて下さい」
そういうとルーメリアの左手に付いてる指輪の1つが僅かに光り、空間の一部が歪んだ。
そして、歪んだ空間にドレスと棺桶を放り込んでいく。
今コイツ何した……!?
「おい、今のなんだ……」
「うん? 空間収納ですわよ?」
いや、サラッとラノベに出てくるチート魔法を使うなよ。
ああ、このチート具合はアレだわ、決まりだ。コイツやっぱ魔王だわ。ロリだけど。
「空間収納って本当にあんだな……」
「まさかとは思いますが、この世界にはストレージリングは無いですの?」
この電波ビッチ、しれっと小首を捻ってきょとんとした表情を作りやがった!
可愛いのが余計ムカつくな。
「いや、ねーよ。お前そのアイテム、控え目に言ってチートだからな?」
ルーメリアはふむふむと頷きながら空間に手を突っ込んで、何かを取り出した。
「わたくしを従属させた褒美に、ストレージリングを1つプレゼントして差し上げますわ。喜びなさいマスター」
従属してるクセに偉そうだなコイツ。
だが安易に貰っていいのか?
一部のRPGゲームには、魔王から世界の半分をやるから仲間になれってお誘いがある。
それでYESを押すとゲームオーバーになるのが相場だ。
こいつからアイテムを受け取ると、ゲームオーバーとか無いよね?
でもラノベ中毒者だった俺は、そのリングが堪らなく欲しい。なんなら家宝にしたいまである。
ここである事を思い付いた俺は、リュックからコーラ味のグミを取り出して、ルーメリアに見せる。
「お前から施しは受けたくない。が、俺はそれが欲しい。このお菓子と交換って事でどうだ?」
「なぜ素直に受け取らないか疑問ですわ……でも、この世界の甘味には興味が……良いですわ、それと交換します」
この世界って言葉がヤケに引っかかるが、聞き出すのは後にしよ。
ロリっ子魔王と物々交換を済まし、リングを指に嵌めてみる。
試しにスマホを空間に入れたら、何事も無くしまう事が出来た。
マジッ!? 本当に空間が開けるんだが!?
これもうリュックいらねえじゃん。ナニコレ凄い! 超便利、八幡泣きそうだよ!
「モグモグ……ストレージリングごときで、はしゃぐなんて気持ち悪いマスターですわ……モグモグ」
「涎を垂らしながらグミを貪ってるヤツに言われたくねえ」
「べ、別にもっとくれても良いのですよ?」
俺が「また今度な」って言うと、ルーメリアは舌打ちをして、悲しげな表情をしながら白骨死体の方へと向かった。
多分あの死体は、ルーメリアの関係者だろうな。なら黙って見守ろう。
俺がそう思ってる中、カマクラはスヤスヤとテーブルの上で寝ていて、ゴブタニは依然として跪いたままだ。
2匹とも疲れてそうだから、本に入れとくか。
なので俺は、2匹をモンスターブックに入れた。
ルーメリアは白骨死体に近づき、その頭に愛おしいそうに手を添えてポツリと言葉を零し始めた。
「クラウス、大儀でしたわ。貴方のお陰で、わたくしは今もこうして生き長らえる事が出来てます……四天王最強であった貴方を糧にする事、どうか許して下さい」
ルーメリアは白骨死体の心臓部に手を突っ込み、魔石をもぎ取った。
そして魔石を呑み込んだ。
「…………マジかよ」
ツッコミたい事が多すぎる。四天王って、ファンタジーに良く出てくる魔王軍四天王の事だよな? それだと味方の魔石を呑み込んだって事か?
情報量の多さに俺が唖然としてると、ルーメリアは白骨死体と日記を空間収納に入れ終える。
「時間をかけ過ぎましたわ。行きましょうマスター」
「待て。お前が魔王だとしてだ、なぜ俺の下に付く? そこだけハッキリさせてくれ」
どう見てもルーメリアは誰かの下に付くような器じゃない。むしろ上に立つ者の器だ。
「ステータスを見ましたよね? わたくし凄く弱体化してますの。なら貴方の下に付いて、安全を確保した方が得策だと思いましたのよ。強い猫さんもいますし」
なるほど。もっともらしい理由だ。
「それは建前だろ。本音は?」
「あら、お気づきになるとは。また好感度が上がってしまいましたわ。参考としてどうして分かったか教えて頂けます?」
「俺の従魔であるゴブリンがお前に跪いてただろ。いくら弱体化してても、お前なら魔物に襲われないと思ったんだよ。それに……操血魔法だっけ? アレがあれば少なくても低階層では無双できるだろお前」
「目敏いマスターですわね。まぁマスターのゴブリンがわたくしにひれ伏したのは、地味に知能が高かったからでしょう。大事に育ててますわね」
ふふっと妖しく笑って見せるロリっ子魔王。
「今のお前にエロさなんか感じ無いからね? 色気で誤魔化すな。いいから早く本音を言え」
「全くせっかちなマスターですわ。詳細はダンジョンを出てから言いますが、この世界で生きるには、この世界で生きる強い者に与しながら力を、取り戻した方が賢明だと思ったのが本音ですわよ?」
弱肉強食主義で生きてそうな魔王からすれば当然の観点と言えそうだな。
「力を取り戻した後は? 返答次第では永遠に本の中に閉じ込めるぞ」
「わたくしはもう……復讐と言う目的を果たしてますわ。力を取り戻したいのは、あくまで自衛の為。それと……今の目的を敢えて言うなら、わたくしの為に散って逝った者達の分を生きる事ですわ。信用できないなら……どうぞ、本に閉じ込めて下さい」
俺の恐怖を帯びた視線と、ルーメリアの真紅の瞳──互いの視線と視線が、互いの真意を読み取ろうとぶつかる。
目を見る限り、嘘は付いてなさそうだな。
ルーメリアの言う、果たされた復讐と言うのは【神殺し】と【勇者殺し】に関係があるに違いない。
それにさっきの白骨死体への対応を見た限りでは、極悪人とも思えない。
「はぁ〜……。分かったよ。言っとくが、ちゃんと働けよ?」
魔王って称号が付く程だ。戦力としては期待できるだろう。
ソフィーは雑草やらゴミを食べてるから問題無いとして。問題なのはやはり食費だ。稼ぎは増えてるが、カマクラとゴブタニの食費がかなり重い。そこに加えてこのロリっ子魔王だ。
計算上、このままだと3ヶ月後には赤字コース確定。ゴブリン素材だけでは、もう正直キツイ。
「むむっ。魔王に働けとは恐れ知らずのマスターですわ」
「ウチは貧乏なんだよ。皇帝だろうと魔王だろうと、働かないヤツに食わせる飯は無いからな」
渋々納得したのか「分かりましたわ」と返してくれた。
帰りの準備も済んでるので、カマクラとゴブタニを再度、本から呼び寄せる。
「話は済んだぞ。新しく仲間になったルーメリアだ。仲良くしてやってくれ。それとルーメリア、猫がカマクラで、ゴブリンがゴブタニだ」
「戦血の魔王、ルーメリアですわ。よろしく」
鮮やかなカーテシーで挨拶してるが、服がジャージなせいで全く映えない。
「にゃ〜♪」
「ご、ゴブゥ……」
訳:ま、魔王様だ……
カマクラはルーメリアに体をスリスリしてる辺り好意的だが、ゴブタニは怯えきっている。
「ゴブリン。身の程を弁えていて、偉いですわ。お行儀の良い貴方には、これをあげます」
傲慢不遜な態度のルーメリアは空間から、錆びた棒を取り出すとゴブタニに渡した。
「ゴブゥ……?」
おーい、ゴブタニの方が先輩だぞ。
まぁいいや。度が過ぎたら注意するとしよ。
「それはなんだよ……ゴミか?」
「ゴミとは失礼な! 勇者を殺して手に入れた、聖魔神機ですのよ。聖なる者が使えば聖神機に、魔なる者が使えば魔神機になりますわ」
そこまで言い切るとルーメリアはゴブタニを一瞥して、再度口を開いた。
「もっとも……今のそのゴブリンでは力不足なので、扱えないですわね。それと……まだ99個ありますのでマスターにもあげますわ」
俺にも錆びた棒を押し付けてきた。
ゴミにしか見えない……。
聖魔神機なんて大層な名前が付けられてるらしいが、ゴミを渡さられたようにしか思えないぞ。
大体、コイツの電波話が本当なら勇者を少なくても100人は倒した事になるぞ。
いや、ツッコムのはよそう。話が長くなりそうだからな。
面倒臭いが勝った俺は、何も言わなずに棒を空間に入れた。
「よし、行くぞ。スーパーの特売に間に合わなくなる」
そして俺達は帰宅を開始したのだが、
ズボンを後ろから引っ張られた。
「どうした、ルーメリア? 早く行くぞ」
「気が利かないマスターですわね。エスコートして欲しいですわ」
そう言って右手を差し出してきた。
コイツ……エスコートとか綺麗に言ってるけど、要はお手々を繋ぎたいって事だろ。
俺は抵抗として、冷めた視線を送る事にした。
「エスコートも出来ないんですの? やっぱり童貞ですわね」
ああ、やっぱ魔王って面倒くせえわ。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます!