殺意を込めて 作:人間の業
書きたくなったら書けばいい。
私の心の中の悪魔がそう囁いてるのでぶん投げ。
ヒロアカって世界観とキャラたちが曇らせ適正めちゃ高くねって思った結果生まれた謎小説。
自己満って事だけ理解しててくださいな。
※なお、ヒロアカにわかの模様。
冷たい、真っ白な息が零れる。
今は2月。雪は無いにしろ、まだまだ寒い季節だ。
灰色の空を見上げたまま、ただぼーっとしている。
あと少しで高校入試を控えているにも関わらず、こんな場所で油を売っている生徒に対し、教師なら何と声をかけるだろうか。
「最後まで真面目に勉強しろ!」とか、「それで落ちたら恥だぞ!」とか、「他の生徒の事も考えろ!」とかだろうか。
まあ、仮に言われたとて、どうもこうもしないが。
中学のテストは毎回学年一位だったし、模試の結果も何度やっても平均90後半。筆記試験に対しては思う所もクソもない。
そう、僕は入試に対して微塵も緊張なんてしていない。
――それがたとえ、偏差値79、倍率300倍と言われる天下の雄英高校だったとしても。
グラウンドを見渡せば、こんな寒い中で元気に駆け回って笑い合う生徒の姿が目に入る。
今は昼休み。だが、遊んでいるのは推薦などで一足先に入試を終わらせた者達だ。
それ以外は皆教室にこもってノートに向かい合っている。
僕を除いては、だが。
ただ、景色を眺めていると、自然と欠伸が出た。それと同時に、屋上のドアが空く。
「屋上は立ち入り禁止だと、何度言ったら分かるんだ?」
「何回言われても分かりませんね。ここ、風が気持ちいいので」
爽やかで、柔らかい、聴き心地の良い声色。
僕の担任だ。
「ま、それには僕も同意するけどね」
そう言って、先生は僕の隣に歩いてきて、手すりに体重を掛けた。
胸ポケットからタバコとライターを取り出し、火をつける。
「良いんですか、仮にも教師が、生徒の前でタバコなんか吸っちゃって」
「はは、良いわけないだろう。バレたら僕も大目玉さ。だから、内緒にしててくれよ? 最近の世の中は喫煙者に優しくないんだ」
「その発言の方が、ダメだと思いますけどね」
他愛も無い会話。けど、それが僕の楽しみでもあった。
この人にだけは気を遣わなくていい。
会話が途切れて、タバコを吸って吐く音だけが揺れるようになっても、雰囲気は悪くならない。むしろ、心地良い位だ。
そうして数分が過ぎてから、ふと、僕の口が緩んだ。
「ねぇ、先生」
「どうした」
「先生は、どうして教師に?」
卒業が近いからだろうか。
何となく、気になった。
「……教師になったワケ、か」
肺に溜め込んだ煙を、ふぅー、と吐き出した。
「まあ、第一志望が教師だった訳じゃない。僕も、ヒーローになりたかった」
先生は、どこか遠くを見つめている。
「でもま、無理だった。当たり前だよな。だって僕、無個性だもん」
その眼は、薄暗い。けど、光がない訳じゃない。
「だから、ってわけじゃないけどさ。俺は、俺も憧れるような、そんなヒーローを育てたくなった。俺の、無個性っていう憂いも、想いも、全部任せられるような、そんなヒーローを見たくなった、そんなヒーローに関わりたくなった」
段々と、語る声に熱が籠っていく。
一人称が変わっている事に、先生は気付いているだろうか。
「俺は、良い先生なんかじゃない。どこまで行っても、ただの人間だ。でも、全部を預けられる、そんなヒーローが生まれるとして、そのヒーローに、何か少しでも良い影響を与えてやれたらって、思ったんだ」
先生の独白が、寒空に溶けてゆく。
「やっぱり俺は、良い先生じゃない。結局子供に、背負わせてる。良い訳無い」
「僕にとっては、先生は良い先生ですよ。先生の言いたい事も分かってるつもりですけど、それでも、良い先生だと思います」
「そう言ってくれるのは、嬉しいけどな」
嘘じゃあ、ないんだけどな。
「俺はさ、お前と会って初めて思ったよ。無個性って、最悪じゃないって」
「そうですね。個性があってしまう事で、大変な事もありますから」
「ああ、だから、俺はお前を尊敬してる。多分、お前は今後、俺以上にっていうか、比べるのも烏滸がましい位に辛い道を歩む」
「承知の上です」
「……おう、やっぱすげぇよ、お前」
先生に褒められるのは、何と言うか気恥ずかしいけど、嬉しい。
「世知辛い世の中。でもお前は、ずっと先まで進んでいくんだって、確信を持って言える。本当に、情けない大人の、情けない頼みだけどさ、俺の憧れになってくれよ」
やっぱり、ずるいと思う。
「そうなるように、祈っといて下さい。僕がどう見られるかは、分からない」
先生の眼を見つめて言葉を紡ぐ。
「それでも、もし、もし先生の憧れになれたなら、その時は自慢してくださいよ。アイツは俺の教え子なんだって、アイツを育てたのは俺なんだって」
僕は、屋上に唯一ある出入口へと向かった。
そこから、校舎の中へ入りつつ、捨て台詞のように言葉を放った。
「やっぱり、僕の先生が貴方で良かった」
◇
猫背気味な背中を見やった後、もう一本、タバコに火をつけた。
世知辛い世の中だと思う。
アイツのような子供は、さぞ生きにくいだろう。でも、アイツもそれを望んで産まれてきた訳じゃない。産まれは誰にも操作出来ない。
俺は、俺が嫌いだ。
弱い自分が、何も出来ない自分が、どうしても他人任せな自分が、弱さにかまけて諦めた自分が、どうしようもなく、嫌いだ。
多分、アイツと俺は少し似ている。
だから、俺はアイツにどうにも自分を重ねてしまう。
アイツの強さに、惹かれてしまう。
凄いんだよ、アイツは。誰も理解しないけど、凄いんだ。
多分、能力的には雄英も余裕で合格出来ると思う。
でも、俺は応援する。
応援が無くても、きっと合格する。それでも俺は応援してる。届くとか、届かないとか、関係無い。
だって俺は、あのヒーローの一番のファンだから。
「――頑張れよ、