殺意を込めて 作:人間の業
「実技総合成績出ました」
「今年は豊作だな」
「爆豪勝己……救助ポイントが0で二位とはなぁ!!」
「強力な個性、恵まれた体格、そして何よりも、それを最後まで失速せずに戦い抜いた……。タフネスの賜物だな」
「こっちは対照的に、ヴィランポイントが0で八位。緑谷出久か……」
「一撃で吹っ飛ばしちゃったのは久しく見てないねぇ」
「だが、自分の体を壊してしまっているのはいただけない」
「そこを改善させていくのが教育なのさ」
ある程度意見が出尽くしたところで、皆が目を逸らしてスルーしていた存在へメスを入れる。
「――そんで、一位。厭憎忌。ナニモンだ、コイツ?」
「急な合図に逸早く反応」
「その後の、高台から状況を把握してたのも評価高いよな」
「戦闘能力も文句なし」
「遠くにいた怪我人にも気付いて救助」
「それも、試験の途中、残り時間はまだ三分間も残ってやがった」
「その三分間でヴィランポイントを稼ぐより、人助けを優先、か」
「だが、その三分間を残した状態で、既に成績は一位確定してる」
「そしてその後、ロボ・インフェルノを一撃。緑谷の様な自壊も無しときた」
教師たちの間に共通の認識が生まれる。
『既に、下手なプロヒーローよりも出来上がっている』
凄まじいとしか言い様の無い成績。
歴代の試験成績の中でもトップを争う程。
――実技試験 一位 厭憎忌
ヴィランP 94P
レスキューP 55P
合計 149P
◇
「合格……」
自信はあった。
けど、ほっとした部分があるのは否定できない。
これで、やっとスタートラインだ。
「耳郎は、どうだったんだろ」
ベッドの上に寝転びながら、試験を思い出す。
あの後、怪我人達を先生が片っ端から治していき、そこで試験は終了。
耳郎の足もしっかり治療して貰っていた。
耳郎とは試験終了後に少し話をしたが、悔しそうにしながらも晴れ晴れとした表情を浮かべていた。
だから僕も、『またね』と、それだけ言って別れた。
レスキューPなる物があるのなら、最後の行動もきっと評価されている。
せっかくなら、一緒に高校生活を送りたい。ほんの少しでも、知っている人がいると話しやすいし。
入学の日まではまだもう少しある。
一体どんな生活が待っているか、非常に楽しみだ。
窓から差し込む温かい日光に、微睡む意識は次第にぼやけて深い闇に落ちていった。
◇
「――受かった……」
ウチは正直ダメだと思ってた。
自己採点は合格ラインを超えてたし、筆記はそこまで心配じゃなかったけど、実技試験がずっと頭に残ってた。
ヴィランP 18P
もし、この試験がこれだけで判断するものなら、ウチはどうあがいても不合格だったはずだ。
レスキューP 50P
結果的に、ウチはアイツに合格させてもらった訳だ。
アイツが、あの場面であんなこと言わなきゃ、この結果は無かった。
「……まさか――」
――ここまで読めてた上で……?
と、言いかけて辞めた。
アイツの表情を思い返せば、答えなんかすぐに分かる。
「……うん、無いな」
あの瞬間、アイツが見ていたのは、雄英高校の合格なんかじゃなかった。その、ずっと先を見てた。誰もが必死に、試験に合格しようと足掻いてる中で、アイツだけがヒーローを見てた。打算がどうとか、合理的じゃないとか、関係なくて、ただ、一人のヒーローとして在るために。
レスキューPの存在なんて知らなくて、試験には落ちるかもしれなくて、その上で構わず飛び込んで行ったんだ。
――負けられない、負けていられない。
カッコイイと、思ってしまった。これが、ヒーローなんだと思わされてしまった。多分、少し憧れに近い感情を持ってしまった。
だから、ウチも、そんな風になれるように、超えていけるように――。
「――ああもう、こんな時間に見るんじゃなかった……!」
色々考えて、頭が冴えてきちゃった。
ベッドに入り込んで、横になっても、一向に眠気が来ない。
「会ったら一発殴ってやる……」
どうせ受かってるだろうし、入学式の日にもう一度会えるはずだ。
ちょっとムカつくけど、今から楽しみなのは否定できない。
ベッドの中で悶々とすること十数分、気付けば意識は薄くなり、瞼が重くなっている。
そのまま流れに身を任せ、静かに眠りについた。
雲一つない空で輝く星々は、これからの未来を祝福している様だった。
とりあえず今書いてた分は終わり。
あとは不定期更新。頑張ります。