殺意を込めて   作:人間の業

5 / 7
個性把握テスト

 

「最下位除籍って……! 入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても……理不尽すぎる!!」

 

 クラスメイト達が抗議の声を上げるが、先生はそれを一蹴する。

 

「自然災害、大事故、身勝手な(ヴィラン)達……いつどこから来るか分からない厄災、日本は理不尽にまみれてる。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎、これから三年間雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。――“Plus Ultra”さ、全力で乗り越えて来い」

 

 この言葉を受け、クラスメイト達の顔つきが変わる。どうも良い影響を受けたみたいだ。

 

「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ。まずは50m走から、準備しろ」

 

 それだけ言うと、一足先に50mのラインの場所に移動してしまう。僕たちはそれを追いかけるように移動していく。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 さて、今回の個性把握テストだが、僕の個性と非常に相性が良い。

 僕の個性は、身体性能の強化だ。人間が出来る事を延長させる個性。

 

 体力テストは身体能力を試すためものであり、僕の体を満遍なく強化できるこの個性はどの種目においても比較的高い記録を残すことが出来るはずだ。

 

「次、厭憎忌と麗日お茶子」

 

 50mなら、走るというより跳んだ方が速い。強化するのは主に脚力と体幹。地面を強く蹴る事の出来る脚と、そのスピードに耐えられる体が必要になってくる。あとは聴力と反射神経も鋭くしておく。笛の音を聞き逃さず、踏み込みを出来るだけ速くするためだ。

 体勢は出来るだけ低く、真っ直ぐに。倒れていると錯覚する程の前傾姿勢が理想。そこまで出来れば後は、蹴り出すだけ。

 

 

 ドン―ーッ!!

 

 

「2秒89!!」

 

「うーん、三歩になっちゃった」

 

「「「普通は三歩でも行けねぇんだよ!!!」」」

 

「と、得意種目で、負け、た……!」

 

 なかなかノリの良い人たちなことで。三年間は退屈しなくて済みそうだ。

 

「アンタどうなってんのよ……。地面、抉れてるんだけど……」

 

「仕方ないよ、耳郎。地面の強度が足りなかったんだ」

 

「十数年生きてきて初めて聞いたわよ、地面の強度が足りないなんて言葉……」

 

 耳郎との会話はテンポが良くて好きだ。ノリも良いし、割と何でも拾ってくれるから直ぐにボケに走ってしまう。自重しないと。

 

「とりあえず一位を目指すつもりだからね。出来る限り全力で行くよ」

 

 最下位を取らなきゃそれで良いなんて考えではいけない。現状を知ることは成長の第一歩みたいな言葉をどこかで見た気がする。やれるだけやるべきだろう。

 先生のあの目を思い出す。

 

「――さて、ね」

 

 ――除籍宣告を食らうのは、一体誰になるだろうか。

 

 あの人は多分本気だ。まったく、初日からクラスメイトが一人減るなんて気分が滅入ってしまう。まぁ、それでもあの人の言う事にも一理ある。この程度の理不尽、乗り越えないとヒーローになんかなれやしない。

 首を、コキリと鳴らした。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 あれからも調子良く記録は出せている。

 今は第五種目のボール投げ。僕は一度投げているので、とりあえずは見学だ。

 

「すげえ!! ∞が出たぞーー!!」

 

 その声で先生の方に目をやると、端末にはしっかりと∞の表記が。

 

「なんてこった……。宇宙空間まで飛ばさなきゃ引き分ける事すら出来ないじゃないか……」

 

「アンタは一体何を目指してんのよ……」

 

 どうやら、今ボールを投げた麗日さんの個性は重力の無効化らしい。

 これこそが特化型の強みという奴だろう。汎用性は無い代わりに、ある特定の分野にて無類の強さを発揮する。どちらが優れているとかは無いし、工夫次第で差は縮められるだろうが、少し悔しい。

 

 それ以降は、特に大きな記録が出る事も無く順調に進んでいく。

 

 次は、緑のもさもさした髪型の男子生徒。

 そういえば、彼の個性は何なのだろう。まだ一度も使ったところを見ていない。

 

「ねえ、耳郎は彼の個性知ってる?」

 

「……いや、知らない。けど確かにそう言われるとちょっと気になるかも。まだ使ってないよね、個性」

 

「うん。ほかの種目でも大きな記録は出てなかったはずだし、このままだと最下位も危うくなってくる頃だと思うんだけど」

 

 この種目が終われば、残っているのは持久走と上体起こしに長座体前屈と、大記録を出すのが難しい種目になってくる。

 雄英高校ヒーロー科に合格しといて無個性だなんてことは無いだろうし。

 

 ゆっくりと、ボールを持って円の中に入っていく彼を見つめる。……目つきが変わった。

 

「どうやら見れるみたいだ」

 

「……え?」

 

 怯えを孕む、覚悟の決まった目。

 使うのに覚悟のいる個性か……気になるな。

 

 フォームは普通。けれど、その体には尋常ではない力が纏われている。なんだこれ。本当に一人の人間が持つ個性なのか。そして、その力が、全部腕一本に集約されている。

 

「……は? 何やってんだアイツ! 体ぶっ壊す気か!?」

 

「ちょっ、いきなりどうしたの!?」

 

 止めようと急ぐも、もう遅い。彼はそのまま振り切った。

 

 

「――46m」

 

 

 結果として、個性は発動しなかった。

 

「な……今確かに使おうって……」

 

「“個性”を消した」

 

 これは多分、先生の個性か。

 

「つくづくあの入試は……。合理性に欠くよ。お前のような奴も入学出来てしまう」

 

「消した……! あのゴーグル……そうか……! 抹消ヒーロー『イレイザーヘッド』!!」

 

 “個性”を消す“個性”とは……非常に強力な個性だ。

 ヒーローとしては限りなく優秀な個性だろう。

 

「見たとこ、個性を制御できないんだろ? また()()()()になって、誰かに救けてもらうつもりだったか?」

 

「そっ、そんなつもりじゃ……!」

 

 ……制御の出来ない個性、か。

 あれだけの力の奔流を見れば、納得の行く話ではある。

 

「どういうつもりでも、周りはそうせざるを得なくなるって話だ。――緑谷出久、お前の“力”じゃヒーローにはなれないよ」

 

 厳しい話だ。だけど、先生の話は間違ってはいない。どれだけ個性が強くても、上手く扱えなければそこまででしかない。恐らく、先生の言う「ヒーローになれない」は、今現状での話。彼のあの力は、きちんと扱えれば、僕らの誰よりも強くなって何らおかしくない。

 

「“個性”は戻した……。ボール投げは二回だ、とっとと済ませな」

 

 けど、それは未来の話。

 先生が見ているのは、今、ここで何ができるか。

 

 ボールを持って、もう一度円の中に入る。

 何もしなければ、最下位に沈むのは彼になる。

 

 心にあるのは、葛藤、焦燥といったところだろう。制御の出来ない個性で博打に出るか、個性を使わずに最下位に収まるか。

 

 見ものだ。

 

 

 少ない助走。大きく振りかぶる。

 個性の使用は、――無し、か。

 

 これもまた、一つの選た――

 

 

 ――違う。目が、死んでいない。これは……。

 

 

 

 

 ……なるほど。

 最後の一瞬だけ、ボールを押し出す指先のみに個性の発動し、腕一本丸ごとの犠牲を指一本に抑えた。犠牲を出さずに結果が出せないなら、その犠牲を最小限にしてしまおうという思い切った思考。

 

 

「――まだ……動けます!」

 

 

 かっこいいじゃん。

 今出来る、最善。

 

「すごっ……。何の個性だろ」

 

「多分、身体強化かな。使い方はへったくそだけど」

 

 逆に言えば、伸びしろはクラス一位だ。

 これは非常に良いものを見た。これからの学園生活が楽しみで仕方ない。

 

「――――!」

 

「――!?」

 

 とげとげした金髪頭の男子生徒が何かを叫びながら彼のもとに突貫しているが、会話の内容はよく聞こえなかった。というか、会話を聞き取るほど脳のリソースが余ってなかった。

 今後の学園生活に思いを馳せるので忙しかったから仕方ない。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「んじゃ、パパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 そう言って、先生は手元の端末を操作し、空中に結果を映し出す。

 僕は耳郎への宣言通り一位。

 

 そして最下位は、緑谷出久。

 

 うーん、ダメだったか。被害を抑えても響いたものはあるだろうし、現に持久走は酷い結果を残していた。

 楽しみが一つ減ってしまった。

 

 先生が、結果を消す。

 

 

「――ちなみに、除籍はウソな」

 

 

 おっと、これは急展開。

 

 

「「「…………!?」」」

 

「「「「「はーーーーーーー!!!??」」」」」

 

「あんなのウソに決まってるじゃない……。ちょっと考えればわかりますわ……」

 

 

 みんな騙されたことに奇声を上げているが、一人の女子生徒は当然とばかりに呆れ顔を浮かべている。

 

「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類があるから目ぇ通しとけ」

 

 その言葉に同意するようにして、先生は校舎の方へ体を向ける。先生の最初の目。あれは本気だった。だから、緑谷君のあの結果を『見込み有り』と判断したのだろう。

 

「なるほど……。これがツンデレ」

 

「アンタは一体どうした」

 

 ついにイヤホンの様な耳たぶに頭をはたかれるようになってしまった。距離が縮まってイイネ。

 

「緑谷」

 

 名前を呼ばれガチガチになっている緑谷君に先生が一枚の紙を渡す。

 

「リカバリーガールのとこ行って治してもらえ。明日からもっと過酷な試練の目白押しだ」

 

 そうして、今度こそ校舎の方に戻っていった。

 

 ……ふむ。

 

 

「……やはりツンデレ」

 

「……もうツッコまないから」

 

 

 ダメだった。

 

 

 





??????

バーが赤くなってんだけどナニコレバグ?


自分の癖でしかない、こんな拙い小説にこれだけの評価がつくなんて、感謝感激の極みでございます。

これからも自分のペースではございますが、きっちり書いていこうと思いますので応援いただけると幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。