盃兄弟の長女は怪盗でした【アニポケXY / XY&Z】 作:小花
Heroine Side
次の日。私はお兄ちゃんよりも早い早朝4時に起きて朝から今夜の決行のために入念な準備を重ねる。道具を揃えたり、使う機械のメンテナンスをしたり。
「おはよ。もう起きてたんだな」
『おはよう』
するとそこから見て1時間半後の早朝5時30分、黒いタンクトップに半ズボン姿のお兄ちゃんが起きてくる。
「もう行くのか?」
『いや、まだ行かないよ。でも朝のうちから準備しておかないと』
「なるほどな… 今はなんの準備をしてんだ?」
『道具を準備したり、場所の把握。この豪邸は宝物庫が2ヶ所あって、2ヶ所全ての宝物庫の他にそれに通じる扉は全てカギがかかってるから』
「ほお、なかなか厳重じゃねェか。」
『そうでもしないと、私達のような宝を奪うような賊に取られちゃうでしょ』
「それもそうだな」
笑い合いながら打ち合わせを進める私達。私は単独だった時から夜にしか動いておらず、これはお母さんが怪盗アリアとして活躍していた時そうしていたと… ある新聞で見たからそれを取り入れて娘である私も夜に動くようにしているのだ。だからお兄ちゃんが加わり2人組になった今回も同じように夜に宝を強奪するため、日没までには道具を持ってアジトを出る。
◆◆◆
数時間後、いよいよ出発の時。私は怪盗サクラとして活躍している時の服装に着替え、髪型さえもガラリと変える。お兄ちゃんは… まだ着替えていてここにはいない。
「やあ、おまたせ」
と思えば彼もまた変装して歩いてきた。発する声、放たれる雰囲気… 全てが普段の時とは違う。お兄ちゃんの方を見れば黒い帽子を目深く被り口元だけしか見えておらず、服装は黒いロングジャケットと黒い革靴を身にまとって左腕にはブレスレットがいくつも装着されていた。最早お兄ちゃんの正体である火拳のエースはなりを潜め、そこにいたのは紛れもない怪盗エルだった。
「サクラ… ボクはいつでもいいよ」
『了解』
「じゃあ、行こうか。」
夕方5時30分。日没までもうあと少し、手が届きそうだというところで私もお兄ちゃんも背中に翼を生やしてアジトを出た。
◆◆◆
屋敷に着いたのは想定通り夜6時45分。アジトからターゲットの屋敷までは距離があり、2時間以内には着くものの1時間半はかかるだろうと見ていた。着くなり横にいるお兄ちゃんは不敵に笑っていて、これより訪れる任務を心待ちにしているのが分かる。
第1関門は宝物庫に通じる扉へ着くまでの間。入り口の見張りは2人いて、私達も同じ見張りになりすまして奥方らにバレないよう防犯カメラを止めなければならない。この場をどうかいくぐろうかと思っていたら、お兄ちゃんが「見張りの事ならボクに任せて」と言って左フックでパンチしたり、右から左へ回し蹴りしたり… 言葉通り見張りをノシた。
その後彼が持ってきたロープでぐるぐる巻きに縛り、2人分の服を奪った。これは黒ひげを捜索していた際にとある海軍基地で実行した方法らしい。
『見張りは突破して服も奪ったから、次は防犯カメラだ』
「防犯カメラ… ってこの上の?」
『そうだ』
ここの防犯カメラは私達のような侵入者が来たら目ざとく知らせて屋敷の旦那や奥方にすぐバレるという優秀な仕組み。だからこのカメラを止めるにはカメラごと破壊する以外に無い。
「どう止めるの…?確かここのカメラって優秀なんでしょ?」
『ぶっ壊す以外にねェ』
このカメラは入り口と宝物庫近辺、宝物庫の3ヶ所に設置されているのも全て把握済。屋敷の入り口と宝物庫は私が壊すから、宝物庫近辺はお兄ちゃんに道具を渡して壊してもらおうかな。
『おいエル、お前宝物庫の近くの防犯カメラ壊せ』
「それだけでいいの?カメラは力あるからボクが宝物庫のも壊すけど…」
『やり方分かんのか?』
「サクラが壊してる姿を見れば分かるよ、2番隊隊長をナメないで?それにこういう力仕事はボクみたいな男がやるもんなの!腕も磨きたいしさ… やらせてよ、ね?」
『力仕事っつったってよォ… アタシでもやれるし壊した事あんのに… はあ、わかった。』
「ほんと!?ありがとう!!!」
宝物庫近辺だけでなく宝物庫そのものに付いている防犯カメラもお兄ちゃんが壊すと聞かず、本当は私が壊そうと思っていたのだが彼に色々経験して怪盗としての腕を磨きたいだのこういう物は男の仕事だの熱弁されてしまい根負け。嬉しそうにしながらお礼を言われた。
『ただし絶ッッ対ミスんなよ。ひとつひとつのミスが命取りなんだ』
「もちろんさ、ここの旦那様や奥様にバレてはいけないもんね」
お兄ちゃんは時間をかけて経験を積み、何度も任務をこなしてきた私と違って今日が初めての任務。初心者の彼に防犯カメラの破壊はできるのだろうか、など思いながらもこの場所の主である旦那や奥方にバレてはならない事を分かっているのなら少しは信用してみる事にした。
そしてとうとう入り口の防犯カメラ前へ到着。見張りになりすまし、お兄ちゃんの視線を浴びる中背中に翼を生やしてカメラの真っ正面へ。まずは刺さっていたコードを抜き取りカメラの映像を見られなくすると、あらかじめ用意してきたドライバーやレンチなどといった金具を使って防犯カメラを破壊。
「叩いたり踏み潰したりしてもよかったのに」
『ンな事できっか。アタシはお前みてェな馬鹿力なんて持ち合わせてねーよ』
「ふふ、キミは女の子だもんね」
お兄ちゃんのにこやかな笑みを見ながら入り口突破、そのまま宝物庫へと通じる扉へと急ぐ。
◆◆◆
『ここだ。この扉を越えれば宝物庫に出る」
「ワ〜オ… ずいぶん大きな扉だね。……でもまずは
いよいよここから第2関門。宝物庫に通じる扉はかなり大きく、さすが豪邸だと言える。お兄ちゃんは「あの防犯カメラを壊さないと突破できないでしょ?」と言い、そのガッシリとした背に黒い翼を生やし飛び上がっていき…
「ふんっ!!!!」
なんとお兄ちゃんは素手で2つ目の防犯カメラを壊した。
『うわっ、おいてめェ何で素手だけで壊してやがんだ!!屋敷に物音響いたらどーすんだよ!!!』
「ごめんごめん、見てたら素手でも壊したくなっちゃって… 最後の物はきちんと道具使うからさ!許して〜」
『今回だけだ。次はちゃんと道具使えよ』
見ていたら疼いてしまったらしく、お兄ちゃんらしいといったららしい(?)理由に呆れながらも許してあげると嬉しそうな顔で歩き始めた。……かわいい…
『くそ、カギかかってる… こりゃピッキングしねェとダメだ』
宝物庫へ通じる扉には案の定カギがかかっており、今度はカギを開けるために必要な道具を使って鍵穴に差し込み厳重なセキュリティを突破。すぐにカギを開けてみせた。
「ぶーーっ、ボクもそれやりたかった」
『この屋敷はあと1個宝物庫があって、そっちの宝物庫や入り口にもカギかかってるはずだ』
「マジ!?じゃあそっちをボクにやらせてよ!」
『いいぞ。で、2個目の方もそうだが今から行く方には扉の所に指紋認証と暗証番号の解除がある。』
「指紋認証と暗証番号の解除… ボクがやる!」
『わかった、じゃあ2個目の方は全部お前に任せる』
「やった〜!!サクラありがとう!」
お兄ちゃんはやはり自分がピッキングしたかったと拗ね始め、2個目の方のピッキングと指紋認証などを任せることに。そこでお手並み拝見かな…
「指紋認証… 間違いない、この部屋だね」
『くぐらせてもらうぜ』
この屋敷に住む奥方と仲が良いという見張りの指紋を使い突破。宝物庫なのにこんな物でも突破できてしまうのか… と内心呆れかえりつつ下調べしてきた暗証番号を入力すると【UNLOCK】との文字が浮かび上がる。
「やったあ… これでお宝奪えるね…!!」
『まだだ、2個目も奪いきらねェと』
セキュリティを突破し1ヶ所目の宝物庫に入ると、さっそく中央に目当ての宝が入った箱がある。……が、やはりというべきかレーザー式のセキュリティがしかけられてあった。
「こんなのまでしかけてるとはね」
『用意周到だな。1個目でこれだから2個目もそうだろう… エル、お前はひとまずカメラ壊してこい。道具使ってな』
「はーい」
宝物庫の防犯カメラの破壊をお兄ちゃんに任せてどうにかレーザーをくぐる事を決行する… 現在時刻は午後9時。夜中というにはまだかなり早いが生憎奥方は旦那と翌日にかけて旅行中だそうで、明日の夕方まで不在。こんな絶好のチャンスを逃すわけにいかず何としてでも宝は取りたい。四苦八苦しながらもレーザーをくぐり抜け、10分たらずでようやく宝を強奪。
『取れた…!私が欲しかったのはこれよ…』
「サクラ!お宝取れた?」
『今しがた取ってきた。』
「よかった!!」
『じゃあ早く2個目のとこ行くぞ。』
「わかった、帰るまで気ィ抜けないもんね」
それからすぐにお兄ちゃんも来て、宝は取れたか聞かれ答えると彼に任せた防犯カメラを見やる。上で刺さっていたコードはきちんと抜き取られていて、私と同じようなやり方で壊れているのが見受けられる。なんだ、道具使ってでも壊せるじゃん… なんて思いながら1つ目の宝物庫を出た。
◆◆◆
Ace Side
1つ目の宝物庫を突破し、今度は最後の2つ目。1つ目の所は屋敷の別館的な場だったと発覚。……どおりで人が少なかったのか… と思いつつ最後の2つ目が本邸なのだろうと納得するおれがいる。さて、今回の任務である最初の別館を妹がこなし残っている本邸をおれにやらせるという事は… 怪盗としての腕を試されている。兄貴として、バディとして期待に応えねェとな。
「何者だ!?」
「悪党めっ、今すぐ立ち去れ!!」
「……ふっ!!」
「「ぐあっ…」」
入り口に来ると、本邸というだけありさっそく見張り2人に見つかる。これはヘタすりゃさっきの別館よりもセキュリティ
別館で奪ってきた見張りの制服に着替えると、またも防犯カメラがコンニチハ!と顔を出した。おれは背中に黒い翼を生やして防犯カメラの真っ正面に行きカメラを見る事のできるコードを抜き取り、ドライバーとレンチを使って防犯カメラそのものをぶっ壊した。
「よし!防犯カメラ壊してきたよ。」
『やるな。道具使えんじゃん』
「へへんっ、ボクだってできるもん」
ここは別館ではなく屋敷の本邸なのでいつバレてもおかしくない環境に立たされているのを頭に入れて気を抜かねェよう注意しつつ妹に褒めてもらおうと彼女の元に近寄る。今の彼女は変装してガラッと雰囲気を変えているためにまるで男のような口振りでいつもより冷たく振る舞われているが、おれも同じように変装しているのもあり気にする事なく会話を続けた。
◆◆◆
『さあ、ここが宝物庫の入り口に通じる扉だ。……やれ』
「おまかせあれ…」
妹は鋭い目つきでギロリと睨むようにしながら「やれ」とただ一言だけで命じてくる。そのやれ、というのは再び防犯カメラを壊してこのバカでけェ扉をおれ1人の手で開けろ、というものだ。さっそく先ほどと同じように自分の背中に翼を生やし防犯カメラの真っ正面に来ると、コードを抜き取ってドライバーとレンチをうまく使って防犯カメラをぶっ壊す。最後には大きなハサミも使って防犯カメラに吊り下げられたコードも切っておいたから、間髪入れずにドン!!と落ちてきた。
「「あっ!?」」
「なんだっ、今の音は!!」
(……やべ、やりすぎたな)
その声ふたつで見張りが宝物庫の入り口にいたと分かり、おれはそいつらをノシに行く。今度は右フック、からのなぎ払い。
「はああっ!!」
「「ぐあっ…!」」
つくづく弱い。こいつらだけじゃ準備運動にもならねェな… ロープで縛って歩き去るとそのまま宝物庫に通じる扉の鍵穴へ。本邸に入る前に妹から借りてきた道具を使って鍵穴に差し込み厳重なセキュリティを突破する。
「開いた…!」
『へえ、やるな』
それはすぐにガチャリと開き、妹とともに宝物庫の入り口へ。その入り口の扉へ着くと妹はすばやく何かの書かれた紙を取り出しおれに見せてくる。これは… 暗証番号の書かれた紙だ。自身の目で見て急いで脳に叩きつけその紙を返すと、今度は指紋認証に必要な物を渡される。妹はゴニョゴニョとおれに耳打ちしてきて、それは【ここの入り口だけは旦那か奥方の指紋じゃないと開かない】との事だった。本邸なだけあってセキュリティもかなり厳重なのか。
妹が渡してきたのは旦那の指紋だそうで、道ばたに忘れていったというハンカチがあった。そこからヤツの指紋を採取したのだろう。
「使わせていただきますよ、旦那様…」
2個目の宝物庫に繋がる扉の指紋認証を難なく突破して、すぐに紙に書かれてあった通りの暗証番号を入力すると【UNLOCK】との文字が浮かび上がり、ゆっくりと扉が開いた。
『やっぱりか…』
「……ここは慌てずいこう。」
セキュリティをかいくぐり宝物庫へ入ると、まずは防犯カメラをぶっ壊してから中央にあった目当ての宝が入った箱へ向かう。その箱にはレーザー式のセキュリティがしかけられていて、妹共々少し動揺した。……だが油断は禁物、レーザーのセキュリティをどうにかくぐり抜けて宝を奪った。
「よかった…!サクラ、お宝奪えたよ!」
『でかした。ンじゃトンズラだな… 今回は怪盗らしくドハデにな』
『てことでお前こーいうのやりたいだろ?ここは任せた』
「うん!ありがとうサクラ、期待に応えられるよう頑張るよ」
2つ目の宝物庫の側には大きな窓ガラスがあり、妹いわく今回は怪盗らしくドハデに逃走するらしい。妹はおれの仕事だというようにここでも下がる。おれも入れ違いのように前に出て、窓を割って逃走するために銃をかまえる。
「
バリィィィィィィイイン!!!!!
大きな音が鳴り響き破片が飛び散りながら窓ガラスが割れると、おれは即座にワイヤーを取り出し別館の屋根にめがけてそのワイヤーをかける。妹も同じようにワイヤーを出して別館の屋根にかけていた。それをうまいこと使って別館の屋根に向かうと2人同時に背中に翼を生やし、逃走の準備を始めた。
「か、怪盗の仕業よ!!!宝物庫の宝が全部ないわ!!」
しばらくするとメイドが見張りを連れ立って宝物庫へ来た。あんた達はこの屋敷の召使いなのに今頃気づいたのか… 今は留守にしているという旦那サマや奥方に見つかって怒られても知らねェぜ?
「フフ… ご名答。別館の物も本邸の物もボク達がいただきました」
『てめェら揃ってセキュリティガバガバなんだよ!!』
「なにを… っ」
『そんじゃ、』
「『バイバーイ。』」
「……ッ、待ちなさい!!!」
おれ達は言いたい放題言うとそのまま生やした翼をバサリと広げ、屋敷のヤツらの制止も聞かずに宝を奪ってアジトへ帰った。