魔法少女の敵に転生してしまった   作:但野ミラクル

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転生、したのだが……。

第一話 転生したら怪物になっていた

  目が覚めたら知らない天井だった。明らかにいつも見慣れた天井ではない。後、何故か体がガムテープのような物で拘束されている。

 …………いや、どういうこと!?  昨日は普通に布団に入って寝たはずだ。いや本当に何故こうなった?

 夢ならいいのだが、それにしてはふわふわとした感じがない。それに加え拘束して動けない。金縛りにしては拘束している物の触感や質感がリアルだ。夢と断じていいのだろうか。

「ガア、ガア!?(誰か、ってえ?)」

 とりあえず、誰か近くにいないかと声を上げようとしたのだが、自分の喉から出たのは声ではなく鳴き声だった。え? え? え?

 もしかして……俺、人間じゃない? いや、落ち着け。トラブルに巻き込まれたら大体焦った人間から死んでいく。いや、俺人間じゃなくなったかも知れないけれどそこは置いておこう。

 まず今は可能性のあることから検討していこう。この状況に陥った経緯としてありえるのは大きく分ければ二つ考えられる。一つはこれが夢であること。これなら問題は何もない。だって夢だから。何も起こらない。

 問題があるのは二つ目のパターン、これが現実で俗に言う転生等の人智では説明できないであろう何かが起き人間でなくなった場合だ。この場合、まずい。何がまずいかというと転生したなら、自分の命は自分で守っていかなきゃならない。……が、今俺は拘束されていて、人間じゃなくなっている。つまり、結論として、要するに、ヤバい。客観的に判断して今の俺の状況は実験動物になっているようにしか考えられない。

 いや、夢なら問題ない。ないはずだが、もし現実だとしたら死ぬ運命しか見えない。……とりあえず現状把握だ。もし夢だったら自分の臆病さを後で笑って終わりだ。何事も最悪を考えた方がいい。あのときのように……。とりあえずできることからしよう。

 まず、この場所についてだが体を動かせないので目だけを動かして見たが、天井、床ともに白く無機質な印象を受けた。物もほぼ置いておらず、俺が乗せられているベッドのような物と監視カメラのような物しか見当たらない。

かろうじて扉は俺の足の向こうにあることは分かった。それと自分の皮膚が白くなっていた。俺は生粋の日本人だったはずなのでこの体に何かが起こったとしか考えられない。後、服らしき物も見えないので、おそらく裸である。

 ……まあ、見えたのはそれぐらいだ。拘束に関してはかなり強くて縛っているようで拘束を解こうとしてもほぼ体を動かせない。まあ拘束具はそういう物だろう。そうでなければ拘束具の意味がない。

 ただ結論として何もできない。鳴き声は出せそうだが、この状況で出したら死期が短くなる気しかしない。結局なにもできないししないのがおそらく正解だろう。

 そう考えて幾ばくか時間が経ち、欠伸が出そうになったそのときだった。

 コツコツコツ。靴の音が近づいて来るのが聞こえた。

 

 

 

 

 

「……これが捕らえられたインベーダーだよね? 本当に死んでないの、これ? 普通もっと暴れるよね?」

「……死んではないはずです。監視カメラで確認しましたが、呼吸もしてますし、何より声も出していましたから」

「ふむ、どうやらかなりおとなしい個体のようだな、名草先生、どうします」

 俺は今六名の奇妙な格好をした人間に囲まれている。まず、最初に喋っていた女性は白衣を纏い俺をじろじろと見ている。背はかなり小さく中学生くらいに見える。しかし、今の俺に近づけることと大人びた言動から見た目より年齢が高い可能性がある。白衣を着ていることからも普通の子ではない気がする。普通の子は白衣なんて着ないと思う。が、この子はまだ普通の格好である。

 問題は他の五人である。

 死んでないはず、と言った人は青く長い髪の女性だった。それに加え奇妙な格好をしていた。彼女は青を基調とし胸元に大きな白色の宝石を携えたミニスカートのドレスを着ている。それに加え何故か黒く短い棒状の物を持っていた。

 ……まるで魔法少女がアニメの世界から出てきたかのようだ。

 白衣の人に名草先生、と声をかけていた女の子も先ほどの青いドレスを着た子と大体似た格好をしている。ドレスの基調とした色が黒いことと髪が灰色であることしかほぼ違いはない。

 そして、他の3人はごついヘルメット、ベスト、銃を持っている。何で、と思ったけど……今の自分が危険生物だからか。この状況、やばすぎる。

「うーん、普通だったら解剖か、即殺処分だけど、この感じだと冷泉ちゃんの能力使えそうなんだよね」

「……はい」

 青い髪の、冷泉ちゃんと呼ばれた少女はじっと俺を見る。青い髪の子じゃ分かりにくいし俺も冷泉さんと心の中で呼ぶことにしよう。

 えっ?能力?能力って、この世界、超能力とかある感じなのか?……俺に何をする気なんですかね?

「本当に全然暴れないな、このインベーダー」

「不思議なインベーダーもいるもんだね、確かにこの貴重なインベーダーを殺すのは惜しいね、……やっちゃうか、許可自体はすでにもらっているし。冷泉ちゃん、契約やっていいよ」

 ……契約?なんだそれは?

「……わかりました。ねえ、あなた」

 冷泉さんとやらが俺に話しかけて来た。

「死ぬか私の命令に従う人生を送るかここで選んで」

「ガア!?(両極端だな!?)」

「おい、冷泉もっと言葉を選べ。一応私たち乙女の範疇にいるんだぞ」

 おっ、黒い服を着た人が冷泉さんに抗議してくれてるぞ? まあ、俺のために言っているわけでは断じてないけど。

「例えば?」

「死ぬか奴隷になるか選べ、とか?」

 変わらなくない? むしろそっちの方が酷くない?

「一緒じゃない?」

「……そうだな。まあ、さっさと答えさせろ、確か契約書にサインさせればいいのだろう?」

「ええ」

 冷泉さんはどこからか取り出した紙と俺の手程ある巨大な朱肉を俺の目の前に突き出した。

「これは契約書、あなたと私を結ぶ呪いみたいな物。契約すればあなたに最低限の生活を送らせる。その代わりあなたには私の命令を何でも聞いてもらう。私たち人間に危害を加えない。この契約を結ぶならこの契約書に手で判子を押して、結ばないなら押さないで、押さなかったら殺すけど」

 ……労働の契約書みたいなものか、普通だな。殺すこと以外は、と注釈は入るが。

 うーん、何させられるかによるけど、今死ぬのは嫌だ。最低限の生活をできるなら契約してもいいのだが……その前に契約書を読まないとな。ここまで契約書にサインさせようということは契約書に強制力があるということ。ならばその契約書と今言われたことが本当か確かめないとな。

 ……ふんふん。今言ったことと書かれている内容は違いはないな。

「……冷泉そもそも言葉が通じているのか?」

「通じてないでしょうね。でも大丈夫よ。言葉は通じなくても感情はインベーダーにも通じる。論文にも書いてある。大体のことは意志疎通できる」

「ならいいが」

 うん、これは押すしかないな。押さないと死ぬし。

 俺は朱肉に手を当てた後契約書に手を押した。

 もちろん、空中で押したのでほぼ手形は掠れているがこれでよかったらしい。押した瞬間、俺の体に妙な感覚を感じたのだ、熱いような、落ち着くようなくすぐったい変な感覚、そして冷泉さんと繋がったような感覚を。

「……これで契約は完了ね」

「案外あっさり終わったな。私はてっきり実力行使で無理やり契約させるのかと思っていたのだが」

「あー、新田ちゃんそれ意味ないんだよね」

 怖いことを平然と口にした黒いドレスの子に名草先生と呼ばれていた人が手をひらひらと振った。

「飽くまで契約者同士が契約内容に納得しないと効力を発揮しないの、何回か実験したんだけど無駄だった」

「つまりこのインベーダーは理解した上で契約したという訳ですか」

「うん、そういうことになるね、かなり頭がいい個体かもね、魔法少女のこともちゃんとわかるように説明したら理解するんじゃない? もしかしたら魔法と能力の違いも認識できるかもよ?」

 ……何か色々気になるワードが飛び出して来た。ひとまず気になるのは魔法少女、魔法、能力の3つか。

 多分だが魔法少女ってこの子たちのことだよね。魔法少女みたいだなと思ったけどまじで魔法少女なんだな。

 あと、魔法と能力についてだが違いとかもあるのか。能力っていうのが冷泉さんが使っていたやつか?それと魔法もあるのか。あんまり難しい違いだと認識出来るか不安である。大丈夫かな。

「無理でしょう。頭がいいといっても所詮獣ですよ」

「まあ、分類上インベーダーは獣に近いからね。間違ってはいないけど、このインベーダー頭に角が生えていること以外は大分人間に近い体をしているし、あっちの世界での人間に近い生物かもよ? 案外面白いことになるかも、……本とかでも絵付きなら理解出来るかな? 冷泉ちゃん色々終わったら与えてみていい?」

「……名草先生の好きにしてもいいですが、ちゃんと自己責任でお願いしますよ」

「インベーダーには無理だと思いますがね」

 名草先生とやらに二人は呆れた表情を浮かべながら言った。

 ……色々言いたいことはあるけど俺、角生えているのか。……人じゃないじゃん、明らかに。いや言葉をガアガアとしか出ない時点で怪しかったけどさあ。しかも俺のことインベーダー、インベーダー言われているし、もうこれ確定だな。これが夢でない限り俺の生活ヤバいことになること確定だ。

 まじでどうなることやら……。

 

 

 

 

「ここがあなたの部屋よ」

「ガアガア……(えっ、豪華)」

 契約したことで少し警戒が解かれたのか拘束を解かれ連れていかれたのは割りと豪華な部屋だった。布団と毛布あり、机と椅子あり、トイレあり、中々よさそうなところだ。水道も通っている。もっと狭くて物もないところに入れられると覚悟していたのだが杞憂だったらしい。

「あなたはここで暮らしなさい、……物は壊さないようにね」

「ガアガア(了解です)」

「……あなたはこれからかなり危うい立場になるわ、役に立ちそうだから殺されていないだけ。役に立たなかったら平然と殺される。……死にたくなかったら役に立つことね」

「ガアガア(は、はい!)」

 こ、怖え。役に立てるように頑張らないとな。 ……なにやらされるか知らないけど。 

「……相づちもちゃんとできているし、本当に賢いわね、あなた。まるで……いえ何でもないわ。明日からやることを説明するわ、午後4時辺りに来るから心の準備だけはしておくように」

「ガアガア(了解です!)」

 そう言うと、冷泉さんは俺の部屋から出ていった。

 はあー、これからどうなるんだろう。……でもとりあえず、死なないように頑張るか。……はあ、死にたくねえなぁ。

 あ、ちなみに頭触ったら本当に角があった。俺、本当に人間じゃなくなったんだな……。

 

 

 




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