「ねえ、アイギスさあ、実はちょっと喋れたりしない?」
ギクッ!?
部屋に入ってきた菊川さんが俺をしゃがませてこそこそと耳元でささやいてきたのがそれだった。
「……」
「ふふ、冗談だよ?」
いや、絶対冗談じゃない。冗談だとしても今の反応で多分ばれてるだろう。……なぜ気づかれた?監視カメラがないところで密かに練習していたはずなのだ。
それに俺が隠していることを分かった上で何故ヒソヒソと話してきたのかも疑問だ。何故秘密にする?彼女の立場からしたら隠す意味も感じられないのだが……。
「まあ、それは一旦置いておくとしてさアイギスにとっておきの技を教えようと思ってね」
「ガアガア(とっておきの技?)」
絶対置いておけない話を置かれてしまったが、とっておきの技というのも気になる。どんな技なのだろうか。
「いい?今から伝えるからちゃんと聞き漏らさないようにね、この技はね――」
……え?これ?この技ですか?
まあ、使えなくはないけど……、え?これ?
「ふっふっふ、普通なら使いどころが限られているけどアイギスなら効果覿面だと思うよ?」
……まあ、一応練習しておこう。
そんなこんなで、魔法少女トーナメントに出場した俺だったが――
「えー、アイギス選手の勝利です準決勝に難なく進みました」
申し訳なくなるくらいに3回戦に進んでいた。魔法少女トーナメントは32名の魔法少女が競うため後二回戦えば優勝である。
「いやー、戦った魔法少女がかわいそうでしたね」
「そうですね、戦った二人は決して弱くないんですよ? 一回戦でアイギス選手と戦った守護川さんは魔法少女の中でもトップクラスの耐久の持ち主です。十発も直撃を耐えられたのは彼女だからでしょう」
「本当にかわいそうでしたね」
「今戦っていた毒島さんに関してはその、……相手が悪すぎましたね」
「毒を使う魔法少女なのに毒が効かない相手と戦わされるのはただの罰ゲーム、いや、もはや罰ですよ。何ですか、毒が効かないって。せめて搦め手には弱くあれよという感想しか出ませんでしたね」
実況と解説の二人が俺の戦いを振り返ってくれているがその、本当に嬉しさよりも申し訳なさの方が来る。
……まあ、それはそれとして本番はここからだ。上層部の本命が来る。
『最強の魔法少女は誰だ? この問いに真っ先にあがる人は決まっている。うちのエース、平等院天音だ。だが、二番目は結構拮抗していてな、魔法少女ごとに得意な戦いのジャンルが違うせいなのだが、肉弾戦で二番目に強い魔法少女はほぼほぼ彼女だとされている』
美玲さんに事前に聞かされていた情報、それによると俺をぼこぼこにする本命は彼女らしい。保険として平等院天音も決勝に進ませてはいるがあくまでも保険らしい。つまり、ここを凌げば上層部の企みは一応突破になる。
「さあて、優勝候補の一角ついに登場です。肉弾戦は最強クラス京上無頼!!」
闘技場に既に上がっていた俺は威圧感たっぷりに悠々と歩いてくる彼女を見つめる。……うわあ、腕、足ともに太い。その上で無駄な脂肪もついてないように見える。
京上さんか、ヤバそうである。
アイギスと戦った魔法少女は弱くはないんです。上層部からこいつなら勝てるかもと思われた精鋭の魔法少女なんです。
ただただ相手が悪かった。