魔法少女の敵に転生してしまった   作:但野ミラクル

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戦闘は唐突に起こる

 どうしてこうなってしまったのか。

「おい、インベーダー先手は譲ってやるぜ、来な

! ヒャハァー!」

 俺は今、訓練室で派手な格好をした魔法少女に戦いを申し込まれていた。

 

 ……なぜこんなことになったのか。それを説明するには一時間前の出来事から話す必要があるだろう。

 

 

 

 

 

「インベーダー、そろそろお前は実戦に投入されそうだ」

「ガアガア?(実戦ですか?)」

 実戦かあ。ついに実戦か。まだ美玲さんとしか戦ったことないからいきなり実戦投入は不安なのだ。しかし役に立たないと処分されるからなあ。

「今から一週間後に外来種のインベーダーと戦ってもらう。まあ、インベーダーが出ることがいつになるか分からないから一週間後すぐに戦うと決まった訳ではないが、言っておくべきだとは思ってな」

 なるほど、最低でも一週間猶予がある、ということか。戦う日程は敵次第で変わると。

「心の準備は必要だろう?」

 なるほど。

「まあ、やることは別に変わらん。今日も私と訓練だ」

 ……美玲さん、ほぼ毎日俺に付き合ってくれているけど大丈夫なのだろうか?無理をしているのではないだろうか。……喋れたら聞けるのになあ、なんてことを考えながら美玲さんと一緒に訓練所に向かう。

 ……?何か視線を感じる?俺は周りを見渡したが誰もいない。……気のせいか?

「おい、どうした。さっさと行くぞ」

「ガアガア(はーい)」

 美玲さんに呼ばれ俺は慌てて付いて行った。

 

 

 

 

「む?」

「ガアガア?(え?)」

 そして、訓練所に入ると――

「よう、遅かったな。インベーダー、新田。いきなりで悪いが、そのインベーダーと戦わせろ」

 派手な格好のドレスの格好をした少女がいたという訳である。

 

 

 この人、魔法少女かな? 冷泉さんや美玲さんと似たドレスを着ているし。まあ、二人とは違って黄色を基調にしつつ紫の星のマークが描いてあるというかなり派手派手なデザインだから確信はできないのだが。

「……どういうことだ。私は何も聞いてませんよ。岩井戸先輩」

「言ってないからな、安心しろ、学園長には通達済みだ」

「……ギャラリーを用意することも含めてですか?」

「ああ、もちろん」

 俺はぐるりと会場を見渡す。観客席を埋め尽くさんばかりの人、人、人。

「何故こんなに人がいるんです?」

「さあ? なんでだろうなあ? 俺は知らねえよ?」

「……何故戦わなくてはいけないんです? 別に戦う意味ないですよね」

「ははは、納得できねえからに決まってんだろ? 天下の魔法少女養成学校東京支部になんでインベーダー入れているんだよ。実験用ならともかく世話までしているんだぜ? だからよう、殺しに来たんだよお」

 岩井戸先輩とやらはまるで見せびらかすように両手を広げた。

「そんな事許される訳が」

「あるんだな、それが。魔法少女は少なからずインベーダーに対し、不満があるんだよ。そして、魔法少女の総意なら学園長も無理に意見を拒否できない」

「だから、殺すと?」

「ああ、お前らがなんでそいつを鍛えようとしているか知らねえ。俺らはインベーダーを殺すための機関だろうにインベーダーを守る意味がわからねえだろが」

 美玲さんははぁーと息を吐いた。

「戦力になる可能性があるからです。危険性も低く、冷泉の能力で人間に危害を加えることもできない。なら使わない手はないでしょう?」

「……規則には反してないのか?」

 美玲さんは短くふっと笑いを溢した。

「冷泉と契約した時点であのインベーダーは冷泉の所有物扱いです。危害がない限り所有物をどう扱おうが勝手にしてよいと規則に記されています」

「……特権項目のやつか」

「ええ、ですから役に立つならインベーダーがここにいたとしても問題はないことになります」

「役に立つならばな? やることは変わらねえ」

「ええ、そうですね」

 二人はニヤリと笑う。

 ……やることは結局一緒か。

「ルールは簡単俺に一発食らわせるか、十分間俺の攻撃から耐えきるか。どちらかを達成できたら俺は納得してやるよ。使えるってな」

「敗北条件はどうすんですか?」

「そりゃあ、惨めに三回床を叩くか、両手を挙げるかだろ?」

 そういうと彼女はバンバンバンと三回手で床を叩き、両手を挙げた。……挑発なのかな?

「さあ、さっさと始めようぜ」

 彼女はそう言って凶悪な笑みを俺に向けると、ポケットから棒状の物を取り出した。……あれって冷泉さんと最初に会ったときに持っていた物か。魔法の杖だったらするのだろうか。

 

 

 

 

 

 そして今に至る。はあ、人生って大変だなあ、まあ、俺もう人間ではないけども。

 

 

 

 

 

「どうした? 怖じ気づいたか? 来ないならこっちからいくぜ?」

 岩井戸さんはそう言うと、棒状の物を振るった。

 すると、拳大の炎が突如彼女の前に出現し、俺に向かって来た。

「ガアガア(まじか)」

 ……これが魔法もしくは能力ってやつか?

 厄介だな。俺は向かって来る炎の塊を避ける。炎の速さ自体はそこまで問題ではない。問題は――

「ヒャッハー、なるほど。これぐらいは避けるか。なら、数で押せばどうなんのかな?」

 岩井戸さんは嫌らしい笑みを浮かべ棒を振るう。そうすると、十数個の炎が彼女の周りに発生した。

「ガアガア(まじか)」

 そして、次々に発射される炎。

「ガアガア(くそっ)」

 あまりの数に避けきれず何発か胸の前に構えていた腕に当たる。熱っ! 

 ……これはヤバいなあ、数で押されるとどうしても当たる。

 しかもただ数を撃っているだけじゃない。俺の動きを予測し避けた場合の箇所にも撃たれている。そのせいで避けられない。

 俺の横でドドドンと音を立て炎が床にぶつかる。厄介だ

 頑張れば炎の直撃は避けれるが火の粉や熱は遮断できない。

 ……これ、十分耐えられるか?じわじわエネルギーを消耗させられてジリ貧じゃない?

「ヒャッハー!」

 これだけ炎を打ち出しても彼女は余裕そうだ。これは奥の手とか隠し持っているかもしれない。少なくとも炎を打ち出し過ぎて弱るなんてことはなさそうだ。となると……これしかないか。一番勝率が高そうなのはこれだ。

 俺は彼女を見据え、腰を低くする。

「ん? なんだ? 耐えることを選んだか。なら!」

 そう言って彼女は大量の炎を彼女の周りに出現させた。

「ヒャッハー!」

 そのヒャッハーという掛け声と共に炎は俺に殺到してきた。ご丁寧に逃げ場をふさいでだ。

 しかし、俺の狙いは耐えることではない。俺は重心を下げ、腕を頭の前に動かした。

 ……岩井戸先輩とやら島津の退き口ってご存知?俺は彼女に向かって突進した。

「は?」

 彼女は一瞬間が抜けた声を出したがすぐ建て直し、俺の突進を避けた。俺はそのまま、彼女の頭に拳を向けた。

「甘い! これでガードが抜けると……は?」

 俺は彼女の腹に拳を当てた。彼女は呆けた表情を浮かべた。

 俺がしたのは二段突き、頭を狙うと見せかけて同時に腹を殴る。意外と人間は頭を狙われるとつい防いでしまいがちだ。それを狙った技。名を――

「山突き……」

 おっと、岩井戸先輩とやらに言われてしまった。もちろん美玲さんに教わった。凄い使いやすいので助かる限りだ。

「そこまでっ!」

「……参った。俺の負けだ」

 岩井戸さんと美玲さんの言葉を周りにいた少女たちは信じられないと言いたげな表情で聞いていた。

「いやーやられたな。まさかここまでやるとはな」

「……でしょう?」

 岩井戸さんの感心したような言葉に、美玲さんは何か言いたげな表情をしつつも返答した。

「まさか山突きをインベーダーから受けるとはなあ、予想外だったよ、お前が教えたのか?」

「……ええ。でも使って見せただけですよ? いや名前は言いましたけど技の説明自体はしてません」

「……まじで?」

「大真面目に答えておりますとも」

「まじでやばいじゃねえか、このインベーダー」

 岩井戸さんは俺の方へとゆっくり向いて言った。

「うん、こいつは役に立つ。少なくとも囮役として有用だわ。いいぜ、認めようじゃねえか、こいつは敵ではないってな。お前らもそれでいいな?」

 岩井戸さんは観戦をしていた少女たちに向かってそう言った。少女たちは少し迷いながらも頷いた。

「……先輩ありがとうございます」

「元々役に立つならここにいてもいいってあいつらも思ってたんだよ、それでインベーダーの強さを見極めるための相手として俺が選ばれたってわけだ」

 ……岩井戸さんは本気で俺を殺そうとしたのではなかったのだろう。なんとなくではあるが、俺と戦っていたときも本気ではなかったよな。彼女としてはある程度の実力があれば良かったのだろう。

「インベーダーお疲れ」

 そんなことを考えていると、冷泉さんが観覧席から降りて俺の方に近づいてきた。

「ん? 冷泉お前インベーダーに名前を着けてないのか?」

「……ええ、まだ」

「……あれを、まだ引きずっているのか」

「……」

 冷泉さんは岩井戸さんの言葉を聞き黙った。

「まあ、お前の好きに任せるがな。でも後悔しないようにな。後回ししたことは後で回ってくるぞ」

 そう言って俺たちに背を向け岩井戸さんは訓練所を出て行った。

 ……冷泉さんは悩んでいるのだろう、何に悩んでいるかはわからないけども。

「……ごめんね、インベーダー。まだ覚悟ができないの、でもこのままじゃダメだとも思っている。……だからもう少しだけ待っていてね」

「ガアガア(いくらでも待ちますよ)」

 俺は伝わらないであろう言葉を呟いた。

 

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