サーガ・ファイスとナイティア・ノクト・ブラッドノヴァは白銀世界-アルブス С-へ来ていた。
五感を塞ぐ効果は、2人に影響を与えていない。
ナイティアの能力、【惑星術】の中で行使できる力の一つである、『惑星に応じた耐性が得られる』というものにより、影響を受けないのだ。勿論、寒さ無効もしっかりと付けている。
「ああ…お前と一緒に戦えるとは……」
隣でナイティアが何事か言っているが、サーガは完全スルーを決め込んだ。
別に仲が悪い訳ではない。
事の発端は外殻─宇宙のようなものだ─が生成された日にある。
サーガ率いる玲瓏の理想郷と、ナイティア率いる暗影の祝園は、光と闇として生誕した。そのものとも言える。
そんな彼ら、或いは性別可変の観点から見て彼女らは、互いに距離を適度に保ちつつ過ごしていた。
その距離感を壊したのがナイティアだ。
ある日偶然、本当に偶然に、ナイティアはサーガを見てしまった。
一瞬だった。
その一瞬で、ナイティアは心を奪われた。
二度目。
遠目で見た時に(決してストーカー行為をしていた訳ではない。たまたまである)湖に足をつけて、夜闇の中で淡い光に照らされたその姿が、何よりも美しかった。
そして、決定的な出来事があった。
配下であり、同じ族の中の一人である、クレセントダイバー・ディバストと、サーガと同類のイージス・アリアの間で戦闘が勃発した。それを止める為にナイティアがその場に赴いた際、同じ目的でサーガも姿を現した。
「本当ごめんな、迷惑かけて」
ナイティアが謝罪の言葉を発するより先に、サーガはナイティアに頭を下げた。
話を聴けば、先に手を出したのはクレセントダイバーだったとの事。向こう側に落ち度がないにも関わらず、自らが出向き、謝罪まで施すその姿。
見た目の麗しさも然る事ながら、真摯な性格に吸い寄せられてしまった。
そして、次に気が付いた時には膨大な光を諸に喰らっていた。
目の前には、顔を真っ赤にして女の姿を取ったサーガと、すぐ側で睨みを効かせるイージス。クレセントダイバーまでもが、ナイティアから距離を取った。恐らく、闇の塊であるクレセントダイバーなりに、「引き」というものを表そうとしたのだろう。
だが、それより何よりナイティアを興奮させたのは、サーガからの攻撃だった。
闇にとって、光は致命傷。当然のように身体を焦がし、そのまま浄化される可能性もある。
然し、最早ナイティアにとっては自分の命など惜しくない。
その日から、ナイティアの全てはサーガになった。
それから、今日に至るまで、ナイティアは身体だけでなく、心までも焦がされながら生きてきた。外殻創始から、何億年という月日が流れているのに、少しも飽きる素振りがない。
執拗にストーカー、基執着して、何がしたいのか?
それは、ナイティアにしか分からない事である。
─────
「…構えろ」
目の前の少女を認めて、サーガはナイティアに声をかけた。
すると、少女─ノウは槍を召喚し手に取る。
「リベンジですの?魔王さんもたーいへん!なのです!」
自身よりも大きな槍を、器用に回しながら2人を見詰める。
前回は、身体能力が中途半端に秀でていたからこそ起こった事だ、と夜鴉は考えたようだ。
ならば、その反対で能力を主な攻撃として使うこの2人の方がいい、と結論を出したのだろう。
だが、他にどんな能力を使ってくるのかまでは分からない。
「近接じゃダメだからって、能力ですの?ワタシの能力も知らないのに?」
面白そうに笑うノウ。
それもそのはず、この世界に足を踏み入れた瞬間から、【
【
但し、それは使えればの話である。
「【権利剥奪】」
その瞬間、ノウの能力権利が剥奪される。
権利なければ意味は無い。これより先、ノウは一切の能力行使を許されなくなった。
そしてそれは、【
能力効果は解除され、ただの槍へと成り下がった。
サーガの能力、【権利術】。
権利を与えることも、剥奪する事も可能であり、その有効性は能力、行動、命、存在、そして全ての権利。
存在権を剥奪されれば、存在を認められず消え失せる。
生命権を付与すれば、そのものに命が宿る。
権利あってこその存在から、それが無くなったならばどうなるか。
結果は、ご覧の通り。
「あ、れ…?そんな…なんで?」
ノウは、能力が使えない事に疑問を抱いたらしく、手を握っては開き、注視する。
そして、能力のせいだと気付いた瞬間、
「殺す…!」
ノウは、槍を振り回し一直線にサーガに突っ込む。
「ナイティア!」
「分かっている」
間に割り込み、効力を失った槍を正面から受け流す。そして、指先から星屑を放った。
能力が連発出来ないのには、理由がある。
男体はオールラウンダーで、能力発動から魔術、体術まで熟せる上、基礎的な身体能力も女体より向上する。その分、能力や魔術に制限がかかってしまうのだ。
女体になれば、能力については解決する。但し、身体能力が著しく低下してしまう。
流石に、守りながら戦う事はナイティアにもやや難しい。
故に、自立行動が問題ない様に、能力のクールタイムを割り切った。
更に、サーガを戦わせない事にもれっきとした理由がある。それは、この世界を安全に無力化する為には、権利剥奪が最も有用であるという事。
ナイティア1人でも落とす事は可能である、と断言する。しかし、それはあくまで『死亡』であり、気絶ではない。鍵が死亡した時点で、世界の崩落はどう抗っても止められないのだ。一か八かの脱出劇に賭けるよりも、より安全な択を選んで此処に来ているだけ。
何より、サーガの死は、ナイティアにとって認められるものでは無い。
そのような背景事情があって、ナイティアは鍵の相手を引き受けている。
「(だが…普通に強い…)」
凍りつつある床を踵で砕き、そこに足を引っ掛けてその場に留まりながら考える。
能力がなくても、圧倒的なリーチと純粋な身体能力で、ペースを握られつつあるナイティア。
その一瞬の隙を見逃さず、ノウは槍をサーガに向けて投擲した。
「くっ…全然クールタイムが上がらねぇ…!」
横に飛び退き躱すも、スケート宜しく足元が滑る。
姿勢が崩れた、その刹那。
「これで終わらせます!」
「おいサーガ気をつけろ!」
「お前もだ馬鹿野郎!」
「な…!?」
ノウの背後から、無数の巨大な氷が、地形をも破壊し2人へと迫る。
「〖
双方に、真白な霰が降り掛かった。
─────
「…どうですの?」
ノウは気配を探り、一息つく。
まだ霰は晴れないが、躱しきれるとは思えない。
…のだが、敏感なセンサーは、2人の気配を探知した。
「危なかったな、今の」
口調は男なのだが、その声は女然としている。
「…生きて…あの量を…受けきったんですの?」
「教える訳ねぇだろ」
白景色が晴れると、そこには翠色の長い髪を靡かせた青眼の少女が立っていた。女体へと変化したサーガを見て、ノウはパチリと目を瞬かせる。
受け切れた理由は簡単で、サーガが〖
その際、サーガは隠れて
「お前、クールタイム凍らせてただろ」
サーガの指摘に、ノウは口を噤み、代わりに槍を手元に呼び戻した。
女体になれば、能力の代償は無くなる。
最早、クールタイムは関係ない。後は、行動権と意識権を剥奪すれば良いだけだ。
「最後に聞かせろ。…世界効果とは別か?」
その問いにも、ノウは答える事はなく。
「…〖
その場に凄まじい吹雪を撒き散らし、自滅した。
─────
吹雪が晴れる前に、地が、空が、空間が揺れる。鍵が死んだ事で、崩壊を迎えているのだ。
視界不良。その上、出口は既に氷により固められている。
そして──
「大丈夫かサーガ!」
「体が凍って…動かねぇ」
「ああ…彼奴、道連れにする気だ」
二人の身体の7割は、氷で覆われ身動きが取れなくてもなっていた。
「ここか。崩壊寸前の様だが…」
出入口の氷壁が木端微塵に切り刻まれると共に、刀を携えた1人の人影が入ってくる。
「…
「そうだが…夜鴉から、二人がこの世界に来ていると聞いた故、念の為に確認しにきたのだが…む」
話の途中で、觜霊は2人の姿を認めたらしく、下駄の音を鳴らしながら、歩み寄った。
「成程。凍ってしまって動けぬ、と。無理に動かないではもらえぬか。…間違えて腕を斬り落としてしまうかもしれぬ故…」
瞬間。
2人を捕らえていた氷は、綺麗に削ぎ落とされた。
「時間も無い。1度学園まで転移する。」
觜霊の宣言と共に、3人の足元に魔法陣が展開される。
転移と殆ど同時、表世界の1ピースを道連れに裏世界は崩落した。
時間帯は夜。
こうして、2日目は終わりを告げた。
影星はどうしたのかって?出番は向こうからやってくる
攻略済み世界一覧
②闇世界-メギド э-
3話〜4話。影星とみのりで裏世界から鍵を追い出した上、6話で夜鴉に殺され攻略完了。
③水世界-アクア μ-
6話。ヘヴィー・プラネットホームとヴァリネッタ・クロスディールにより攻略完了。
⑨白銀世界-アルブス С-
5話+10話。1度永克覇王を退けたが、サーガとナイティアにより追い詰められ自滅し攻略完了。
⑩贋作世界-ヴェルス И-
7話。みのりが死亡、影星の謎の形態2より、3人全てが死亡。世界崩壊により攻略完了。