異世界招来
用事がないんやから、外に出る意味も無いな、とか思ってたのは午前。午後になって、「時間を浪費してる気がする」と何となく思った私は、私に名前をくれた恩人の引きこもりネトゲ廃人の家に遊びに行く事にした。連絡なんて入れなくても、ほぼ家にいるんやし問題ねーな。
善は急げ。前の世界で作ってもらったバズーカはライフルとマシンガンに解体されたから、それと一応ナイフ付きの靴も履いて外に出る。
そして、数歩歩いた所で急激な眠気に襲われた。
何だか嫌な予感と、少しのデジャブを感じて、目を閉じた。眩しい光が、瞼の裏にも焼き付いて─
─光を感じられなくなった頃に目を開ける。ここはどこだ?
辺りを見渡す。どっかの学校の前か?校門が見える。また神格の誰かに変な所に飛ばされたんか?それとも…いや、手掛かりが足りねーな。とにかく、もう少し周りを…
と、視界に入った赤い着物が目につく。この色、確か…
そう思いながら、色を辿って、私は思わず驚きの声を上げた。
「…は?…何で、お前がいるん…?」
「元気な様で良かったよ。協力してくれるかい?
…
協力?何の話だ?いやその前に、私はなんでここに呼ばれた?疑問は尽きない。
「協力って何のだ?そもそも私はお前に従う理由なんてどこにもねーよ」
「その話は後でするよ。手伝ってくれるの?くれないの?」
ここで安易にYESと答えたら、どうせこの先も使われる。それに、話も聞いてないのに承諾とかバカみたいな事、私はしたくねーからな。
「断る。説明も無しに協力しろなんてふざけてるんか?」
「…そう。」
予め、このパターンも考えてたんだろ。紅葉は、私に手を翳す。そして、衝撃的な事を言った。
「なら、キミの親友に手伝ってもらうとしよう。キミとは違って、直ぐに受け入れてくれそうだし。帰ってもらって構わないよ」
親友?みのりか?
…違う。違う!みのりじゃない、そっちじゃない!
こいつが言ってんのは…
「…お前…ショゼの事言ってるんやな…」
「そうだけど。何が嫌なんだい?」
「ふざけてるんか?勝手に他の世界の奴連れてきて説明もせずに協力しろ?出来るわけねーだろ!」
「だから言ってるだろ?」
私の体を光が包む。ここに来る前と同じ光。
こいつは、本気でショゼを呼ぼうとしてる。
「キミが嫌なら、キミの親友に頼むって」
「は、待て!」
それは、それだけはダメだ。
ショゼを、この世界に二度と連れて来させたくない。
あいつには、元の世界で穏やかに過ごしてほしい。
何があるかも分からない世界に、親友を、恩人を、巻き込みたくない。
「私が協力するって言えば、ショゼをこの世界に連れてくる事はねーんか?」
「約束しよう。キミがここで頷いてくれれば、彼女をこの世界に連れてくる事はこの先も無い。どうする?」
「…詳しく話聞かせろ」
紅葉を睨みつけながら言えば、一応は満足したのか光が消える。強制転送と、ショゼが巻き込まれる事は避けられたか。
「…キミが良ければ、これからこっちの世界に住んでもいいけど。厄介な事には巻き込まれずに済むよ。それに、ここにいればキミが好きな殺戮を咎める人はいない。最も過ごしやすい世界になる。どうだい?」
「…急に何を…」
「ただの交換条件だよ」
私の中の殺人癖が疼く。いくら殺してもいいなんて…マジで言ってるんか?そんな所、住みたいに決まってる。私が…殺りたい様に殺れる世界…
いや、でも。ショゼ達が、心配で。
「まあ、今すぐ決めなくてもいい。返事はこの件が終わったら聞くよ」
「…OK」
とりあえず先送りにするとして、紅葉の話を聞くことにした。
「簡単に言えば、この世界はこれから裏世界と戦う。それで、キミに加勢を頼みたいんだ。難しい話じゃない。つまり、殺してきて欲しいって訳。キミなら簡単だろう?」
「…そんで、報酬はこの世界に住む権利、か?」
「そういう事。どう?」
合法的な殺戮のチャンス。願ったり叶ったりだ。断る理由はどこにもないし、どうせいつ死んでもいい命。どうなろうが知った事じゃねーから、楽しむだけ楽しむか。
「OK任せろ、んでどうやって行くんだ?」
そう聞くと、紅葉は私の背後の空中を指差した。何があるのかと思って、指の方向を見上げると、そこにはどっかに繋がってそうなホールがあった。
「あれだよ。キミに行って欲しいのは」
「ふーん、なるほどな」
早速乗り込もうとして、ライフルとマシンガンを探すがどこにもない。代わりに見つけたのは、ストラップ。
…これ、縮小拡大可能なバズーカか。って事は、この世界に来たら武器も自動で切り替わるんやな。世界補正と本の効果と…前来た時と変わりねーな。
んじゃ準備も出来た事だし…
「あ、そうだ影星。天性を発動させてみて」
「天性?」
ノリノリの私を止めて、紅葉は唐突に意味不明な事を言い出す。なんだ天性って。
「本だよ、キミの」
「あー、あの本…」
あの本、天性って言うんか…知らなかったわ。まあ説明受けてないから当然やけど。
前と同じ感覚で、本を召喚する。随分懐かしく見えるな…とりま開いてみよっと。
本を開いたら、1ページ目にこんな文章が書かれてあった。
『クトゥルフ神話〜Real〜に新たな情報が追加されました。再構築しますか?YES or NO
※再構築には100のコストが必要となります。』
なんだこれ、再構築?よくわかんねーけどとりあえず再構築するか。コスト100もあったか?いやあったな…悪魔共との戦闘の後強化してねーわ。
YESの文字に触れると、本は突然ページを捲り出す。パラパラと捲られるページに書かれていく、読解不能な文字列。何語かも分からないし、もしかしたら存在しない文字かもしれない。どうなるのか分からない不安と、それよりも好奇心が勝って暫く眺めていると、本がパタリと閉じた。これは開けていいんか?開けてみるか?開けてみるか。
本を開くと、新たに何かが追加されていた。
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表世界 身体増強Lv4
HP増強Lv3
MP増強Lv4
コスト:1
魔界 身体増強Lv1
HP増強Lv1
MP増強Lv1
コスト:1890
=====目次=====
HP増強
MP増強
身体増強
呪文
コスト
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また増えてる…いや本だから言っても無駄やけど。んでコストな…とりあえず増強したいから身体増強から行くか。
ん?いや、先にコストから見るか。何追加されてるか分かんねーからな。
=====コスト=====
コストとは、殺した人数の事を指し示します。
増強にはコストが必須であり、Lvを上げる度に必要コストは2倍求められます。
増強倍率はLvを1上げる度に二乗になります。
コストが余っている場合、一度に可能なレベルまで増強する事が出来ます。
レベルは合算され、合計値で計算されます。
レベルは自由に上げる、または下げる事が可能です。
その世界で得たコストは、他の世界で利用は出来ません。
クトゥルフ神話〜Real〜で得た増強効果は、自身の身体に移し共有する事が出来ます。他者との共有は出来ません。この共有効果は、増強効果が消されても消える事はありません。また、共有効果が消されても、増強効果が消えることはありません。
共有は、本に応じて更新されます。
共有は、常に行われています。
2度以上訪れた世界のレベルを強化する場合は、必要コストが半分に減少します。その為には、各レベル5回以上の強化が必要です。
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なるほど。って事は、魔界で得たコストで表世界の倍率を強化する事は出来ないんか。で、魔界にも1回しか行ってねーから恩恵は受けられない、と。しゃーねーか。
「天性は天性でしか打ち消せない。だから安心して」
「OK…とりあえず強化しとくわ」
共有は常にされている、ってのが心強いな。それに繋がってないってことは…なるほどな、使えそうやん。重複は…するんか?でも明記されてねーならさすがにしねーか。
そういえば、一度に可能なレベルまで出来るとか何とか…翳してる時間によるんやろな、多分。
んじゃ魔界の方で強化出来るだけ強化してくか。
=====HP増強=====
Lv1
強化後 Lv1→Lv2
コスト:1
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どーするか…とりあえず5まで上げとくか?えーっと手を翳して…5秒くらい待てばいいんかな。そういやみのりはどーすんだろ、戦うんかな…でもヘヴィーが許さねーよな多分。あいつなんだかんだ助手のみのりの事大切にしてそうやし…知らんけど…
=====HP増強=====
Lv7
強化後 Lv7→Lv8
コスト:256
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…ん!?Lv7!?
ちょっと考え事してたら強化しすぎたらしい。まーでもないよりはいいやろ、あった方が。大丈夫大丈夫Lv2くらい誤差の範囲。そんなLvが2想定より多かった程度じゃ大した効果ねーよ。問題ない。……よな?
んな事より今のコストはどうなってんだ?
=====コスト=====
残りコスト:1,644
増強可能
・HP増強
・MP増強
・身体増強
解放可能呪文
・悪魔退散
・悪魔の暴露
・悪夢
・暗黒の呪い
・イブン=グハジの粉
・癒し
・鋭敏な2人
・黄金の蜂蜜酒の製法
・空中浮遊
・魚の招来
・精神交換
・ゾンビの創造
・無欠の投擲
・門の観察
・夢の映像
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なんか…コスト多くね?いやこんなもんか…強化してたらすぐ無くなるよな。ゲームとかやってるとあるあるの現象のやつ。でも折角やから全部7まで上げてみるか。
強化には差程時間はかからず、MP増強と身体増強もLv7にしてきた。残りコストは1,152。これでもまだ4桁余ってんのか…ならそれぞれもうちょい行けそうやな…いや、呪文欲しいしその為に取っとくのもありやな…
んー…身体増強とMP増強だけLv8に上げとくか。必要に応じて強化した方が良さそうやし、相手の実力もまだ分かんねーからな。
=====MP増強=====
Lv7
強化後 Lv7→Lv8
コスト:256
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これをLv8に強化…ってかこれやっぱコスト重いな…魔界行かねーと無理か…?いや、行っても殺せる奴ら居ないか…
=====MP増強=====
Lv8
強化後 Lv8→Lv9
コスト:512
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=====身体増強=====
Lv7
強化後 Lv7→Lv8
コスト:256
===============
これで残りは640。これだけあれば呪文の殆どが取れそうなんよな。今度こそ心臓麻痺とか…んーでもそろそろ回復の奴も取っときたいんだよな…いいか、戦ってみて決めれば。どうせ私が負ける相手の方が少ねーだろーし。
=====身体増強=====
Lv8
強化後 Lv8→Lv9
コスト:512
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よし、これでいいな。合計値で計算するんだっけか。えーっと、って事は今の私はどうなってるん?
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表世界 身体増強Lv4
HP増強Lv3
MP増強Lv4
コスト:1
魔界 身体増強Lv8
HP増強Lv7
MP増強Lv8
コスト:640
=====目次=====
HP増強
MP増強
身体増強
呪文
コスト
=============
って振り方同じじゃねーか、HP面心許無さすぎやろ。んま別にいいんよ、だって食らわなきゃいいだけやし。でも流石にちょっと脳筋な所が出てる様な…まあ私の武器は主に体やから身体増強は最優先だと思うけどな。それにしてもLv12か…どんな火力出るんやろ、今からちょっと楽しみだわ。
あ、一応呪文使えるか確認しとこーっと。
=====呪文=====
・肉体の保護
・門の創造
・萎縮
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よし、使えるな。正直この3つあれば戦える気がするし、随時付け足しって感じにするか。
「んじゃ私行ってくるわ」
「あ、ちょっと待って」
ワープホールに飛び込もうとした私を引き止めると、紅葉は真剣な声で言った。
「各裏世界に『
「ふーん、なるほど」
それ以外は殺しちまって構わねーんか、いいやん、楽しみだわ。
「気をつけるのはそれだけか?」
「嗚呼。…行って来て」
「OK任せろ、
本を仕舞って、私はバズーカと共に裏世界へ続くワープホールへ飛び込んだ。
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「で、如何して司令塔のキミがここにいるの?」
「…どういうつもりだ」
闇世界-メギド э-へと転移した影星を見送ると、先程から自分達を見ていた司令塔、夜鴉へと声をかける。招来から見られていたのだろうが、紅葉に取っては心底どうでもいい事だった。
「どういうつもりって?呼び出した事?」
「…違う…彼奴を…1人で送り込んだ理由だ…」
そんな事か、と紅葉は思った。大魔王になって長い彼だが、如何して分からないのだろうか、とも。
「もし影星がこの世界で生きていくなら、あれくらいは出来ないと。…だろ?そんな簡単に負ける雑魚は必要無い」
「人間なのを分かっているのか…?」
「勿論」
でも、彼女はそれなりのポテンシャルはあると思うんだ。と、伝えかけて、辞めた。言わなくてもいい事はあるのだ。気になるのであれば、直接見て、聞けばいい。
「まあ、そういう事だからさ」
「紅葉…!」
夜鴉の声を振り切って、紅葉は学園の中へと姿を消した。
多分どこかしらで計算間違えてると思うんですけど、何回か計算はしたので多分大丈夫だと…思います…
おまけ:身体増強Lv12のSTRは281兆4749億7671万656、DEXは582兆6222億3722万9761
HP増強Lv10は2兆159億9390万449
MP増強Lv12は281兆4749億7671万656
STRに関しては、数値がそうなだけで実ダメージはこれを超えると予想します。多分こっちの計算も違う