私、園部 優花が『彼』と出会ったのは、高校に入学した時だった。
『彼』を知ったのはごくごく当たり前の流れ。
同じクラスの自己紹介の時だった。
同じクラスメイトという事で、教室に来て挨拶を交わすぐらいはあったけど、『彼』は基本部活のサッカーに打ち込んでおり、自分の家が経営している洋食店の手伝いの為に帰宅部を選んでいる私は、女子と男子という事もあって、『彼』との接点は殆ど無いに等しかった。
そんな彼との関係に転機が訪れたのは、高校入学から数ヶ月したある休日。
高校に入学してから仲良くなり、友達となった菅原 妙子と宮崎 奈々と一緒に休日の買い物を楽しんでいた時だった。
日が傾き始め、そろそろ帰ろうかと思っていた時、
「やあ! そこの彼女達!」
3人組の男が声を掛けてきた。
3人とも髪を染め、チャラい雰囲気を感じさせる。
「よかったら俺達と遊ばない? 丁度3人同士だしさ」
そう言ってくるけど、下心が見え見えね。
「悪いけど、私達これから帰る所なの。他を当たってくれる?」
私は奈々と妙子を庇いながら、その横を素通りしようとする。
だけど、
「まあまあ、そう言わないでさ」
肩を掴まれて止められる。
「勝手に触らないでよ!」
私は勢いをつけて振りほどこうとする。
だけど、思った以上に男の力が強くて振りほどけない。
「放しなさいよ!」
私はそう叫ぶけど、
「ちょっとぐらい付き合ってくれてもいいんじゃないか?」
優しそうな口振りとは裏腹に、その眼の奥には下種な感情が見て取れる。
「奈々、妙子……逃げなさい………!」
私は後ろにいる2人に逃げる様に言う。
「だ、だけど優花っち……!」
「早く!」
奈々が少し渋るけど、私が強く言うと、躊躇しながらも妙子と一緒に駆け出す。
「あっ! 待ちやがれ!」
男の仲間の1人が2人を追いかけようとしていた。
だから、
「てやっ!!」
手に持っていたバッグを振り回して顔面にヒットさせる。
「ぐわっ!?」
流石に顔面は痛かったのか、男は怯んで足を止める。
「こ、このアマ………!」
男は2人を追う事を止め、私を憎々し気に睨む。
これでいい、これで2人はターゲットから外れた。
後はこっちを何とかしないと………
私は隙を見て逃げ出そうとチャンスを伺ってたけど、
「身の程を分からせてやる!!」
この男は思った以上に直情的だった。
私の腕を乱暴に掴むと路地裏に引っ張り込もうとする。
「いやっ! 誰かっ……もごっ!?」
私は叫んで助けを呼ぼうとしたけど、すぐに口を手でふさがれた。
抗おうとしたけど、男3人に力では敵わず、なす術無く路地裏に引きずり込まれる。
この時間は、周辺に人通りが少ない事も災いした。
男達は、元々そのつもりだったのか、ガムテープを取り出して私の口を塞ぐ。
「ん~~~~!」
すると、男2人が私の両腕を両側に開きながら固定し、もう1人の男が正面からにじり寄る。
実際に経験は無いけど、男達が何をしようとしているのかは容易に想像がついた。
「んっ!? んんっ!?」
私は首を横に振って拒否の意を示す。
だけど、男は薄ら笑いを浮かべて更ににじり寄る。
私は両足を使って蹴飛ばそうとしたけど、予想していたのかあっさりと掴まれる。
そのまま両側に広げられ、スカートの下の下着が覗かれる。
「ん゛~~~~~~っ!!」
羞恥と悔しさで顔が熱くなり、顔を逸らして目を瞑る。
「へへっ、この様子だと初めてみたいだな。ラッキーだぜ。こんな可愛い子が処女なんてな。しかも、歳の割には結構胸もあるじゃねえか」
男はカチャカチャとズボンのベルトを外し始める。
その音が私の不安を更に煽り、
―――ドコッ!
「ぶべっ!?」
何かがぶつかった音と、男のヘンな声が響いた。
「んっ………?」
私は恐る恐る目を開ける。
すると、仰向けに倒れた男と、ポンポンポンと数回バウンドして転がるサッカーボールがあった。
「な、なんだぁっ!?」
私の両腕を捕まえている男達が動揺する。
すると、
「ワリィワリィ! サッカーの練習してたらミスっちまってよ! 怪我は無いか?」
そんな気軽な男の声が聞こえた。
私がそっちに視線を向けると、そこには『彼』がいた。
「な、何してくれんだテメェ!!」
男の1人が声を上げる。
倒れている男は、打ち所が悪かったのか完全に伸びていた。
「だから悪かったって。ワザとじゃないんだ許してくれよ!」
『彼』は片手を上げて気軽な様子で謝罪の意を示す。
正直全く誠意が籠って無いのが丸わかりだ。
「ふざけやがって………オラッ!」
男は『彼』に殴りかかる。
「あぶねっ!」
『彼』は声を上げるけど、少し仰け反るだけで避ける。
「こんにゃろ!」
反対の手で殴りかかるけど、今度はしゃがむことでその拳を避けた。
その時、避けられた拳は、勢いを止める事が出来ずに横の塀を殴りつけた。
「うぎゃっ!?」
手を抑えて蹲る男。
「こ、この野郎! よくも!」
「落ち着けって。ワザとじゃないんだからさ」
宥める様に言うけど、男は止まらない。
次々と『彼』を殴ろうと腕を振り回す。
でも彼は全て見切って掠りもしない。
喧嘩に縁のない私でも分かる。
『彼』と男には圧倒的な差があると。
それでも諦めない男に、『彼』は拳を避けた瞬間、右手の拳を握り、
「フッ!」
鋭い右フックが男の顔面へ………
「ヒッ………!?」
当たる直前に寸止めしていた。
「落ち着けって………なっ?」
「は、はひ…………」
男は完全に戦意を失ったのか座り込む。
私は何か言おうとして口にガムテープが張られている事を思い出し、慌てて剝がす。
『彼』は私の方に歩いて来て、手を差し出す。
「大丈夫だったか?」
そう言って微笑む彼の姿に、私は一目惚れをした。
私は呆然と『彼』の手を取り、立ち上がる。
これが私、園部 優花と、『彼』、