ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第10話 残念なウサギ

 

 

 

 

拓也達が、【真のオルクス大迷宮】を攻略してから数ヶ月。

この間にハジメは失った左腕の代わりの義手の作成。

失った右目の代わりになる、神結晶を元に作り出した魔眼石の開発。

そして新たに作り出した装備の数々。

あとは『宝物庫』を始めとした、オスカーが残したアーティファクトの数々。

そして漸く準備も終わり、いよいよ地上へ向かう時が来た。

因みにこの間、魔物肉を食べ続けていたハジメと香織のステータスはこのようになっている。

 

 

 

 

 

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:???

 

天職:錬成師

 

筋力:7950

 

体力:8190

 

耐性:7670

 

敏捷:8450

 

魔力:24780

 

魔耐:24780

 

技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成][+圧縮錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・先読・金剛・豪腕・威圧・念話・追跡・高速魔力回復・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

 

 

 

 

 

 

白崎香織 17歳 女 レベル:???

 

天職:治癒師

 

筋力:5450

 

体力:6880

 

耐性:5780

 

敏捷:5043

 

魔力:28650

 

魔耐:28650

 

技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇] [+複数同時発動] [+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少] [+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇] [+持続時間上昇][+連続発動] [+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想] ・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地] [+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知[+特定感知]・魔力感知[+特定感知]・熱源感知[+特定感知]・気配遮断[+幻踏]・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・追跡・魔力変換[+体力][+治癒力]・限界突破・生成魔法・言語理解

 

 

 

 

 

 

どえらい上がりようであった。

尚、魔物肉を食べず、純粋に修練だけで鍛えた拓也のステータスは、

 

 

 

 

神原 拓也 17歳 男 レベル:60

 

天職:炎の闘士

 

筋力:2250

 

体力:2000

 

耐性:2250

 

敏捷:800

 

魔力:1000

 

魔耐:1000

 

技能:炎熱操作・竜の本能・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・火属性耐性・格闘術[+身体強化][+部分強化][+集中強化][+浸透破壊]・大剣術・剛力・物理耐性[+金剛]・気配感知[+特定感知]・言語理解

 

 

 

 

ハジメ達に比べれば一歩も二歩も劣るが、十二分にチートなステータスである。

因みに竜の本能は、暴走状態で筋力値が最大約10倍になるが、そんな事をするならアグニモンに進化した方が手っ取り早い。

因みに拓也は、ハジメがアーティファクトの開発に着手している間、修行の為に香織についてもらって奈落の魔物と戦っていたが、途中でやたら強い蹴りウサギと出会い、引き分けに終わり、そいつと週一程度の割合でやり合っていたが結局決着はつかず、時間切れとなった。

例の魔法陣に集まった拓也達。

集まったのだが………

 

「…………………………」

 

拓也がジトーッとした目でハジメ達を見ていた。

 

「ど、どうしたの拓也…………何か睨むだけで人を殺せそうな眼だけど…………」

 

ハジメが恐る恐る尋ねると、

 

「別に~~!」

 

明らかに含みのある声を出しながら目を逸らした。

因みに拓也がこんな目をしている原因は、毎夜の如く行われるお三方のくんずほぐれつで、部屋の外まで聞こえる声である。

これを今日までの数ヶ月間聞かせられ続ければこんな目にもなるだろう。

因みにボコモンとネーモンは性別の無いデジモンなので人の営みについては意識していない。

ともかく気を取り直し、魔法陣に集まる拓也達。

彼らの服装は、ハジメが眼帯に黒コートという厨二全開の恰好である。

ユエのチョイスの様だがハジメは断り切れなかったようだ。

香織は元々着ていた聖職者の恰好に近い服装を探し、仕立て直したものだ。

ユエは白いブラウスと黒いスカートの上に長めの白コートを着ている。

拓也は黄色いシャツに赤いジャケットに薄茶色のズボンを穿いて、野球帽のような帽子を後ろ向きに被り、トレードマークのゴーグルを額に掛けた、デジタルワールドの時の服装をイメージした格好だ。

因みに普通の服に見えて、ハジメの生成魔法で色んな効果が付与してあるため、そこらの鎧よりも遥かに防御力があったりする。

さらに言えば、拓也は無骨な大剣を背負っていた。

それはオスカーの残したアーティファクトの武器の1つで、ベヒモスとの戦いで武器を失っていた拓也が丁度いいと拝借したのだ。

まあ、その剣の名前が『ドラゴン殺せる剣・命名オスカー』だったので、一瞬どうするか迷ったが、名前を除けばとてもいい剣なのは間違いなかったので、名前には目を瞑って持っていく事にした。

魔法陣の中心を囲むように、ハジメ、香織、ユエ、拓也、ボコモン、ネーモンが並ぶ。

すると、ハジメが口を開いた。

 

「皆……僕の武器や僕達の力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないと思う」

 

「そうだな…………」

 

「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」

 

「ん……」

 

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれない」

 

「そうだね……」

 

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅になる。命がいくつあっても足りないぐらいね」

 

「冒険っちゅうのはそういうもんじゃマキ」

 

「うん。そうだね~」

 

ハジメの言葉に皆は答えていく。

皆には不安も恐怖も無い。

拓也達の様子を見て、ハジメは不敵に笑う。

 

「けど、僕達は最強だ。全部なぎ倒して、世界を越えよう」

 

「「「「「「「ああ/うん!」」」」」」」

 

その言葉に拓也達はハッキリと頷いた。

それと同時に、魔法陣が強く輝き、一同はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

彼らが再び目を開けた時、そこに映ったのは……………洞窟の壁だった。

 

「なんでやねん」

 

ハジメが反射的に突っ込んだ。

太陽の光を期待していたのに裏切られたからだろう。

 

「……秘密の通路……隠すのが普通」

 

「あ、ああ、そうか。確かにね。反逆者の住処への直通の道が隠されていないわけないか」

 

ユエの指摘にハジメはハッとする。

そのまま道なりに進み、途中のトラップや封印された扉はオルクスの指輪が反応して解除されていった。

更に進むとやがて新鮮な空気の流れを感じるようになり、更に光が見えてくる。

その光を潜れば、待望の地上へと出た。

そこは地上の人間たちにこう呼ばれていた。

【ライセン大峡谷】と。

 

「……戻って来たんだ……」

 

「うん………」

 

「……んっ」

 

ハジメが呟き、香織とユエが頷く。

 

「くぅ~~~~! 久々の地上だ!」

 

拓也も思いっきり伸びをしてそう口にする。

デジタルワールドに行っていたため、ハジメ達よりかは短いだろうが、地下暮らしは気が重かったのだろう。

 

「久し振りの太陽じゃマキ!」

 

「やっぱりお日様はいいね~」

 

ボコモンとネーモンも太陽の光を一杯に浴びる様に手を広げる。 

すると、

 

「よっしゃぁああーー!! 戻ってきたぞ、この野郎ぉおー!」

 

「戻ってきたーーーーっ!!」

 

「んっーー!!」

 

ハジメ、香織、ユエが抱き合いながら叫ぶ。

因みにここ【ライセン大峡谷】は地上の人間にとって地獄にして処刑場だ。

断崖の下はほとんど魔法が使えず、にもかかわらず多数の強力にして凶悪な魔物が生息する。

深さの平均は1.2km、幅は900mから最大8km、西の【グリューエン大砂漠】ら東の【ハルツィナ樹海】まで大陸を南北に分断するその大地の傷跡。

それが【ライセン大峡谷】だ。

そんな場所で笑い合ったり抱き合って喜ぶ彼らの姿をもし誰かが見れいれば、間違いなく狂人と思われる事だろう。

だが、奈落の底の底から這いあがってきた彼らにとっては、地獄だろうが処刑場だろうが地上という名の楽園に思えた。

ただ、魔物が生息するという事実は変わらないので、そんな大声を出していれば魔物が寄ってくるのは当然だ。

ようやく皆の笑いが収まった頃には、すっかり魔物に囲まれていた。

 

「はぁ~、全く無粋なヤツらだね……確かここって魔法使えないんだっけ?」

 

ハジメは確認する様に呟く。

 

「……分解される。でも力尽くでいく」

 

ユエは魔力を注ぎ込むと、その手に炎を発生させる。

 

「力尽くって……効率は?」

 

「……10倍くらい」

 

ハジメの問いに若干の間を置いて答えるユエ。

何とも効率が悪い。

 

「あ~、じゃあ僕がやるからユエは身を守る程度にしといて」

 

「うっ……でも」

 

「いいからいいから、適材適所。ここは魔法使いにとっちゃ鬼門でしょ? 任せて」

 

「ん……わかった」

 

ユエは渋々と言った表情で引き下がる。

その瞬間、ドパンッ! と魔物1体の頭が吹き飛ぶ。

ハジメが銃を抜いて発砲したのだ。

 

「さて、奈落の魔物と君達、どちらが強いのか……試させてもらうよ?」

 

ハジメはそう言いながら、もう1つの銃を抜きながらそう言った。

ハジメは失った左腕の代わりの義手を手に入れたことで、両手で銃を扱えるようになり、ハジメが迷宮内で使っていた『ドンナー』の強化型に加え、『シュラーク』というもう1つの大型のリボルバー式の拳銃を作り出した。

二丁拳銃で魔物を撃ち抜いて行くハジメ。

拓也も背中の大剣を抜き、

 

「おぉぉぉぉぉらっ!!」

 

大きく振りかぶりながら飛び掛かり、大型の魔物を真っ二つにする。

程なくして、集まっていた魔物は全滅していた。

ハジメは銃をホルスターにしまうと首を傾げた。

 

「……どうしたの?」

 

「いや、あまりにあっけなかったもんだから……ライセン大峡谷の魔物って相当凶悪って話だったから、もしかしたら別の場所かと思って」

 

「……ハジメが化物」

 

「ひどい言い様だなぁ。まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことかな」

 

ハジメはそう結論付けて考えるのを止める。

 

「さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうけど……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だし。せっかくだから、樹海側に向けて探索でもしながら進まない?」

 

魔力は使えないとはいえ、ヴリトラモンに進化すればあっさり越えられるだろう。

 

「何で樹海側なの?」

 

香織がそう尋ねると、

 

「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌でしょ? 樹海側なら、町にも近そうだし」

 

「あ、確かに」

 

ハジメの答えに香織が納得した様に頷いた。

するとハジメは宝物庫から魔力駆動四輪を取り出す。

ハジメが作った魔力で動く自動車だ。

ハジメが運転席に座り、香織とユエが前列に、拓也、ボコモン、ネーモンが後列に座る。

因みにこの魔力駆動車は車体底部に錬成機構があり、殆どの荒地を快適に走破できるという便利機能がある。

暫く走っていると、

 

「ん?」

 

ハジメが不意に気付く。

目の前から、ティラノサウルスを双頭にしたような魔物が走ってくる。

そしてその前に、泣きながら双頭ティラノから逃げ惑うウサ耳を生やした少女の姿があった。

 

「……何あれ?」

 

「……兎人族?」

 

「なんでこんなとこに? 兎人族って谷底が住処なの?」

 

「……聞いたことない」

 

「じゃあ、あれ? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよね?」

 

「……悪ウサギ?」

 

ハジメとユエがそう話し合っているが、

 

「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」

 

そんな声が聞こえてくる。

 

「はぁ~」

 

ハジメはやれやれと溜息を吐くと、

 

「流石に見捨てるのは後味悪いしね」

 

窓から身を乗り出してドンナーを構えると、ドパンッドパンッ! と2発の銃声が鳴り響いて双頭ティラノのそれぞれの頭を撃ち抜く。

頭を撃ち抜かれた双頭ティラノはそのまま勢い良く体を地面に激突させた。

 

「ひぃやぁあああああああっ!?」

 

その際に潰されそうになったウサ耳少女が悲鳴を上げていたが。

ハジメは魔力駆動四輪をそのウサ耳少女の前で停止させる。

それぞれが様子を伺おうと車を降りた所、

 

「ありがとうございますぅ~~~~~~~~!!!」

 

そのウサ耳少女が涙や鼻水を撒き散らしながらハジメに向かって飛び込んできた。

 

「ええっ!?」

 

ウサ耳美少女に抱き着かれ、困惑するハジメ。

一応自分からは手出しして無いと香織とユエにアピールする為に両手をバンザイしている。

 

「と、とりあえず落ち着いて…………一体どうしたの? 何で兎人族の女の子がこんな所に……?」

 

ハジメがそう尋ねると、そのウサ耳少女はハッとなり、

 

「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの長の娘、シア・ハウリアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 

そして現在、そのウサ耳少女のシアを魔力駆動四輪に同乗させて谷底を走っていた。

そのシアから聞いた話を要約すると、シアは魔力を持たない亜人族の中に魔力を持ち、更に直接魔力を操る力を持って生まれた上に、未来視という固有魔法まで持った異端児。

家族の情が深い兎人族であるハウリアの一族は他の亜人たちからシアの存在を隠し続けていたが、つい先日それがバレてしまった。

このままではシアが処刑されるため、ハウリアの一族は捕まる前に【ハルツィナ樹海】を出た。

行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。

山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。

未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

だが、運悪く帝国の兵士に見つかってしまい、南へと逃れてきたがその際に半数近くが捕まってしまった。

全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。

流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし、ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。

魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。

小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。

もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。

そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い、峡谷に逃げ込んだ約60人のハウリア族は、既に40人ほどまで減ってしまったという。

ここまで聞いて無視するのは彼らの良心が痛むので、半ば強引に近いが、一先ず助ける事にした。

ただし、ユエの発案で樹海の案内を条件に、という前置きが付いた。

それなら一応ハジメ達にもメリットがある為、ハジメが危惧していた無償での慈善活動という使い潰されそうな面倒な事態にはならずに済む。

そうしてシアを連れて峡谷を魔力駆動四輪で爆走中なわけだが、その際にハジメ達の事情も少し話した。

 

「え、それじゃあ、ハジメさん、香織さん、ユエさんも魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」

 

「そうだね」

 

「うん、そうだよ」

 

「……ん」

 

それぞれが頷く。

しばらく呆然としていたシアだったが、突然何故か泣きべそをかき始めた。

 

「……えっ? いきなりどうしたの?」

 

思わず尋ねるハジメ。

 

「……手遅れ?」

 

「手遅れって何ですか! 手遅れって! 私は至って正常です! ……ただ、1人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」

 

「「「「「「「……」」」」」」」

 

その言葉に皆が黙り込む。

シアの気持ちは、分からないでもない。

それから暫く走っていると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。

 

「! ハジメさん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様達がいる場所に近いです!」

 

「ッ! この分だと魔物に見つかってる可能性が高いね! 飛ばすからしっかり掴まってて!」

 

ハジメはそう言ってスピードを上げる。

そこから少し走ると、上空にワイバーンのような魔物、ハイベリアが上空に屯しているのが見えた。

ハイベリアは群れで行動し、連携して獲物を追い詰めるのだ。

その時、狙いを定めたのかハイベリアの1体が急降下を始めた。

 

「ッ!」

 

ハジメは窓から身を乗り出し、ドンナーを構えると発砲。

レールガンの紅の閃光が走り、急降下したハイベリアを撃ち抜いた。

 

「おおっ………よくこんな距離から当たるなぁ………?」

 

拓也はハジメの銃の命中率に感心する。

ハイベリアとの距離は500mぐらいあったのだが、スナイパーライフルならともかく、拳銃のドンナーでこの距離の狙撃を成功させたハジメの狙撃能力は異常である。

 

「まあ、これでもユエに協力して貰って毎日訓練してたからね」

 

「ん。ハジメ頑張った」

 

いや、いくら頑張っても2カ月前後でこれほどの狙撃能力は努力だけでは身に着かないだろうと拓也は呆れる。

ハジメには射撃の才能もあったらしい。

とりあえず、ハジメが手早くハイベリアを全滅させると、

 

「みんな~、助けを呼んできましたよぉ~!」

 

シアが窓から身を乗り出しながら、ハイベリアが飛んでいた下の岩場に居た集団に呼びかけた。

 

「「「「「「「「「「シア!?」」」」」」」」」」

 

数十人の集団は、揃って驚いた声を上げる。

 

「父様!」

 

車から降りたシアが兎人族の男性に駆け寄る。

 

「シア! 無事だったのか!?」

 

それは、シアの父親であるカム・ハウリア。

 

「はい、心配かけてごめんなさい…………でも、もう大丈夫ですぅ~! 強力な助けを呼んできましたから!」

 

シアはニッコリと笑ってそう言う。

 

「助け………?」

 

カムは、ハジメや拓也達を見ながらポカンとするのだった。

 

 

 

 

 

 

その後、シアの父であり族長であるカムに事情を説明し、俺達は【ハルツィナ樹海】に向けて移動を開始していた。

そして、間もなく【ライセン大峡谷】の出口に差し掛かるという時、

 

「帝国兵はまだいるでしょか?」

 

シアがハジメにそう話しかけた。

 

「ん? どうだろう。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性もあるけど……」

 

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら……ハジメさん達は……どうするのですか?」

 

「? どうするって何が?」

 

シアの質問の意味が分からなかったのか、ハジメはそう返す。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。ハジメさんと同じ。……敵対できますか?」

 

「シア、君は未来が見えていたんじゃないの?」

 

「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさんを……」

 

「だったら……何が疑問なの?」

 

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

 

「同族か如何かなんて関係無いよ」

 

「えっ?」

 

「僕は護りたいと思ったものを護るし、護るものを傷つけようとする相手なら戦う。それだけだよ」

 

「そ、それは、だって同族じゃないですか……」

 

「君達も、同族に追い出されてるでしょ?」

 

「それは、まぁ、そうなんですが……」

 

「それにあれだけ助けを求められて見捨てるのは気分が悪いから助けただけで、この後ずっと守っていくつもりは無いよ。一先ず一時の安全の確保ができるまでの護衛。見返りとして樹海の案内をして貰う。そういう約束だ」

 

「ハジメさん………」

 

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。そっちが約束を守るなら僕も約束を守る。相手が人間族だろうと魔物だろうと、君達を護るという約束がある以上、危害を加える相手とは戦うだけだよ」

 

「そ、そうですか………」

 

そんな話をしながら峡谷の出口である階段を登っていく。

そしてそれを登り切ると、

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

30人ほどの帝国兵が屯していた。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

 

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

 

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

 

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

 

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

そんな兵士達を、拓也は冷めた目で見ていた。

 

「…………帝国の兵士ってこんなんなのか?」

 

兵士というより盗賊と言った方が良いんじゃないかと思う位にガラが悪い。

少なくとも、王国の兵士はメルドを始めとして規律は守られていたので、印象は良い。

すると、ハジメが1人で前に進み出る。

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」

 

「そうだね。僕は人間だ」

 

「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

 

命令口調でそう言う帝国兵の小隊長らしい男。

 

「お断りします」

 

ハジメは即答した。

 

「……今、何て言った?」

 

「お断りします、と言ったんです。今現在彼らは僕の保護下にあります。僕らは彼らの護衛なので、彼らを奴隷として扱う様な輩に預ける訳にはいかないんです」

 

「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

 

「十分に理解していますよ。全て分かった上で、お断りしますと言ったんです」

 

すると、小隊長の視線が拓也達に………

というより、香織とユエに向いて下品な笑みを浮かべた。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らずな糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんたちはえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」

 

すると、ハジメが冷たい目で隊長を見据える。

 

「…………もう十分です。出来れば穏便にお引き取り願いたかったんですが、思った以上に話が通じないのでこれ以上は無駄ですね」

 

ハジメがそういうと、

 

「あぁ!? まだ状況が理解できてねぇのか! てめぇは、震えながら許しをこッ!?」

 

小隊長の言葉は最後まで続かなかった。

ハジメが瞬時にドンナーを抜いて発砲。

隊長が勢いよく後ろに吹っ飛んだ。

非殺傷のゴム弾だ。

 

「お前達は、僕の『大切』に手を出すと言った………! ただで済むと思うなよ!」

 

ハジメが怒りの籠った声でそう言う。

次々と発砲し、帝国兵を気絶させていく。

当然帝国兵も反撃を試みていたが、

 

「〝縛光鎖〟!」

 

香織が作り出した兵士の人数分の光の鎖が雁字搦めにして、反撃も退却も許さない。

兵士達は、成す術なくハジメの非殺傷弾を喰らい、気絶していく。

そしてついに最後の1人になり、

 

「ひぃ、く、来るなぁ! い、嫌だ。し、死にたくない。だ、誰か! 助けてくれ!」

 

「勝手な言い分だね。君達が今自分でしようとしていた事が、自分達の身に降りかかってるだけじゃないか。あと、言っておくけど1人も殺していないよ。殺すまでも無いし。だけど…………」

 

ハジメはドンナーの弾丸を装填し直すと、その兵士の顔すれすれに発砲。

その頬に傷をつけた。

 

「君が素直口を開いてくれないと、君の眉間に穴が開くことになるけど?」

 

そう言って笑みを浮かべるハジメに、兵士はコクコクと頷く事しか出来なかった。

その兵士から残りの兎人族からどうなったかを聞けば、既に人数を絞って帝国に移送済みらしい。

その後、これ以上用は無いとばかりに非殺傷弾で気絶させるハジメ。

 

「…………何もする事無かったな」

 

拓也がポツリと呟く。

前衛は拓也の役目なのだが、余りにも帝国兵が弱い………というよりハジメが強すぎたので、本来後衛寄りなハジメでも何の問題も無く全滅させてしまった。

その後、帝国の兵が使っていた馬車に兎人族を乗せ、魔力駆動四輪で引っ張るという運び方で樹海へ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

保護したハウリア族と共に樹海を訪れる一行。

ハウリア族を処刑しようとする亜人達を退け、亜人の長老たちとの面会する。

迷宮の入り口と思われる大樹に行くまでに空いた時間でハウリア族を特訓する事になるが………

 

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

第11話 ハウリア族の訓練

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 

 

 

 







はい、第10話です。
スタートダッシュ7です。
まあ、半分ぐらい前作のコピペです。
題名が残念なウサギとか書いておきながら、そこまで残念でも無かった気がする。
このハジメなら、まあ、ほっとく訳にもいかないでしょうし。
帝国兵も気絶で済ませました。
原作ファンにとっては甘すぎる対処でしょうけど。
まあ、このハジメはこんなんなんで。
因みに奈落で拓也とやり合っていたウサギは何バさんなんだ………?
それにしてもハウリア族は如何しよう?
原作通りにヒャッハーさせるか割と真っ当に強くするか………

ハウリア族の特訓は?

  • 原作通りにヒャッハー!
  • 真っ当に強くしてみましょう
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