ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第13話 ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮を攻略せよ!

 

 

ブルックの町で準備を整えた一行は、再びライセン大峡谷に足を踏み入れていた。

この大峡谷の何処かにあると言われる大迷宮の入り口を探す為だ。

言葉にすれば簡単かもしれないがライセン大峡谷はすさまじく広大だ。

その中で何処にあるかもわからない大迷宮の入り口を探すのは骨が折れる。

現に3日たった現在でもまだ見つけることが出来ていない。

 

「だぁ~! 畜生! 全然見つからねぇ~!!」

 

拓也が思わず叫ぶ。

 

「仕方がないじゃハラ………この大峡谷は広すぎるマキ………」

 

ボコモンが拓也を宥める様にそう言う。

 

「ボコモンの言う通り、この広すぎる峡谷で入り口を見つけるのは骨が折れるね………丸3日探しても手掛かりすら見つからないなんて…………」

 

ハジメも疲れた表情をしている。

その時、シアが近付いてきた魔物を、ハジメが作った巨大な戦槌『ドリュッケン』で叩き潰した。

そのままなんでも無い様に肩に担ぎ直すと、

 

「先に別の迷宮に向かいます?」

 

そう提案してきた。

 

「う~ん…………」

 

ハジメは悩む仕草をしたが、

 

「とりあえず、今日は日が暮れる。先に野営の準備をしよう」

 

傾いてきた日を見てそう言った。

 

 

 

 

見張りは交代制で、現在はハジメが見張りを行っている。

その為、拓也はテントの中で仮眠を取っていたのだが、

 

「た、大変ですぅ~~~~~!!」

 

突然テントの外からシアの大声が聞こえてきた。

 

「皆さ~ん!! こっちです!! こっちに来て下さぁ~い!!」

 

シアの声で仮眠を取っていたメンバーが起き出し、外の様子を見に出て来る。

 

「何なんだいきなり………?」

 

拓也は寝ぼけ目を擦りながら、先程からシアの声が聞こえる方へ足を進める。

シアの声は、崖の一部に空いた亀裂の中から聞こえてくる。

その亀裂を覗くと、

 

「どうしたの一体………?」

 

ハジメが若干怠そうな声で聞くと、

 

「これです! これを見てください!!」

 

シアが壁を指差す。

指し示された場所には、

 

『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』

 

そんな看板が設置されていた。

 

「「「「…………何だこれ?」」」」」

 

拓也達は思わず呟いた。

 

「なんて書いてあるんじゃハラ?」

 

この世界の文字が読めないボコモンがそう尋ねる。

 

「あ~、『おいでませ! ミレディ・ライセンのドキワク大迷宮へ♪』………だとさ」

 

拓也が内容を伝えた。

 

「何じゃそれ?」

 

ボコモンが唖然とし、

 

「何か面白そうだね~」

 

ネーモンは気楽にそう言う。

見た目的にはふざけてるとしか思えないが、

 

「…………なあ? これって本物か………?」

 

拓也が思わずそう言うと、

 

「実は僕も疑ってるんだけど………」

 

ハジメも同意らしい。

だが、

 

「…………多分本物………」

 

ユエがそう呟く。

 

「……根拠は?」

 

ハジメが聞き返すと、

 

「…………名前。オスカーの手記と一緒……」

 

「あっ、そう言えば、『ライセン』の名前は有名だけど、『ミレディ』の名前は伝わってない筈だよね?」

 

ユエの言葉に香織が気付く。

 

「そこだよねぇ…………」

 

ハジメも薄々感じていたのか頭を掻きながらそう言った。

 

「何でこんなチャラいの……」

 

「信憑性が減るな」

 

ハジメの言葉に拓也も頷く。

 

「でも、入口らしい場所は見当たりませんね? 奥も行き止まりですし……」

 

シアが看板の周りを見回したり、ペシペシと叩いたりしている。

 

「シア、そんな所に入り口があるわけが…………」

 

ハジメがそう言おうとした瞬間、

 

「ふぎゃっ!?」

 

ガコンとシアが叩いた壁が回転し、シアはそのまま壁の向こう側へ姿を消した。

 

「「「「「「「嘘………」」」」」」」

 

その光景を見た全員が同時に呟いた。

 

 

 

 

回転扉を潜った拓也達を出迎えたのは、矢の嵐だった。

とは言え、拓也達がその程度で如何にかなるわけも無く、銃で撃ち落としたりそのまま矢を掴んだりして簡単に防いだ。

まあ、シアがお漏らしをしてしまったというアクシデントがあったが…………

最初のトラップをクリアした拓也達の前に現れたのは石板だった。

少し見ていると、その石板に文字が浮かび上がる。

 

『ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ』

 

『こんな簡単なトラップに引っかかっちゃった奴は相当マヌケだね! ぶふっ』

 

それを読んで一呼吸後、

 

「ふんぬーーーーーーーーーっ!!!」

 

シアが切れて、ドリュッケンで石板を叩き壊した。

だが、

 

『ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!!』

 

その行動すらも読まれていたのか床にそんな文字が表示される。

 

「ミレディ・ライセンだけは〝解放者〟云々関係なく、人類の敵で問題ないね」

 

「……激しく同意」

 

「あはは…………落ち着いてハジメ君、ユエ。ねっ………」

 

香織が宥めようとしているが、その香織も若干声が上ずっている。

いくら女神と言われていた香織でも、限界はあるようだ。

 

 

 

 

「これは………ある意味迷宮らしいと言えばらしい場所だね」

 

「……ん、迷いそう」

 

「ふん、流石は腹の奥底まで腐ったヤツの迷宮ですぅ。このめちゃくちゃ具合がヤツの心を表しているんですよぉ!」

 

「……気持ちは分かるから、そろそろ落ち着けよ」

 

シアは入り口の事で未だに憤慨している。

この場にいる全員、シアの気持ちは理解できるので強くは言えない。

 

「それはそうと、どう進むんじゃマキ?」

 

ボコモンがそう言うと、

 

「そうだね………取り敢えずマーキングとマッピングしながら進むしかないかな………」

 

「そうだね」

 

ハジメの言葉に香織が頷く。

そのまま道を進んでいると、

 

「入り口とは違って明るいね~」

 

ネーモンがふと周りを見ながら呟いた。

 

「そう言えばそうだな。どうやら壁自体が発光しているみたいだけど…………」

 

「鉱物鑑定で調べてみたけど、『リン鉱石』って言うみたい。オルクス大迷宮には無かった鉱物だよ。これを使えば………」

 

ハジメがそう言いかけた時、ガコンと言う音と共に、ハジメの足元が少し沈んだ。

 

「「「「「「「……………………」」」」」」」

 

沈黙する拓也達。

 

「……このパターンでありがちなのは…………」

 

拓也がそう言った瞬間、目の前の両側の壁から一枚ずつの回転ノコギリの刃が飛び出し、回転しながら迫ってきた。

 

「回避っ!!」

 

「うぉおおおおおおっ!?」

 

拓也達は慌てて伏せる。

回転ノコギリが一行の頭上を通過し、後方に通り過ぎると何事も無かったかのように引っ込んだ。

 

「し、死ぬかと思った…………」

 

危うくスプラッターな状態になる所だった。

 

「ハジメ! 分からなかったのか!?」

 

拓也が叫びながらハジメに文句を言う。

 

「今のは完全な物理トラップだから魔眼石じゃ感知できない。今までが魔法トラップばっかりだったから油断してたよ………! 厄介だ………」

 

ハジメはそう言う。

 

「って言うか、あれぐらいハジメさん達の攻撃で壊してくださいよぉ!」

 

ウサ耳の先の毛をちょっぴり切られたシアがそう言うが、

 

「あぁ………その事なんだけど……………」

 

ハジメは香織やユエに視線を向けると、

 

「ん………困った。まともに魔法が使えない………使えても中級以下の魔法が数秒程度………」

 

「ライセン大峡谷より遥かに強い魔法の分解作用が働いてるみたいなの」

 

ユエと香織が試しに魔法を使おうとするが、すぐに魔力が四散する。

 

「外部に魔力を放出するとすぐに分解される。でも逆に言えば、体の内部の魔力には分解作用は働かない。これが如何いう事か分かる?」

 

「え、えっと………?」

 

ハジメの言葉にシアが首を傾けた。

 

「つまり、この迷宮では身体強化が重要なファクターを占めるって事じゃマキ」

 

ボコモンが代わりに答える。

ハジメは頷き、

 

「そういうこと。シア、ここの攻略は君の活躍に掛かってるからね」

 

皆が期待の眼差しをシアへ向けた。

 

 

 

 

 

 

「うわぁああああああああっ!?」

 

「おわぁああああああああっ!?」

 

「「「きゃぁあああああああっ!?」」」

 

「どわぁあああああああああっ!?」

 

「わ~~~~~~~~~~っ!?」

 

その拓也達は、急な斜面を滑りながら絶賛降下中だった。

 

「シア、お約束の様にトラップ踏まないでよ!」

 

「すみません~~~~!」

 

滑り落ちながらハジメが叫ぶ。

階段を降りていた時、シアが何かトラップを踏んだようで、階段の段差が無くなり、急なスロープとなった事で拓也達は猛烈な勢いで階下に向かって猛スピードで滑り落ちているのだ。

その時、

 

「ハジメ君! 道がっ!」

 

香織が気付いたのか叫ぶ。

道の先が途切れ、広い空間に繋がっているのが見えた。

そのまま全員がその空間に放り出されると、

 

「うわっ!?」

 

床一面に鋭利な突起が無数に敷き詰められた光景が映った。

 

「げっ!?」

 

拓也が声を漏らす。

 

「くっ!」

 

ハジメが咄嗟に左腕の義手のギミックの1つであるワイヤーを射出し、天井に撃ち込む。

そのお陰で、ハジメと、ハジメにしがみ付いていた香織、ユエ、シアの3人は落下せずに済んだのだが、

 

「拓也!?」

 

離れていた拓也達は届かない。

しかし、

 

「大丈夫だ!」

 

拓也が叫んだ。

 

「ボコモン! ネーモン!」

 

拓也は空中でボコモンとネーモンを抱えると、目を瞑って集中する。

すると、拓也の背中から炎の翼が広がり、落下速度がゆっくりになった。

拓也は以前橋から落ちた時にうまく飛べなかった事を教訓に、あれからも飛ぶ訓練を続けていた。

ヴリトラモンに進化すれば飛べるが、咄嗟の時には進化出来ないかもしれなかったので、人間の状態でも飛ぶ訓練をしていたのだ。

そのお陰で、今は自由自在とまではいかないが、グライダーの様に滑空するぐらいは出来るようになっていた。

 

「た、助かったハラ………」

 

「ありがと~、拓也~」

 

ボコモンとネーモンは両脇に抱えられたままホッと息を吐いた。

すると、

 

「ハジメ! あそこに!」

 

拓也の視線の先に、先へ続く通路の入り口が見える。

拓也はそこに滑空していき、ハジメもワイヤーの長さを調節してそこに飛び込んだ。

そこへ行くと、また広い空間に出た。

拓也達はいったん休憩しようとしたが、そこにはまた石板があり、

 

『焦ってやんの~~~~ダッサ~~~~イ!』

 

『この位で疲れるようじゃ先が思いやられるねー、ププッ』

 

見事に神経を逆撫でされる台詞が浮かび上がった。

 

「ッ……………!」

 

拓也は我慢できなかったのか、背中の大剣を抜くと同時に石板に叩きつけ、石板を砕く。

まあ、どうせまた一定時間経つと修復されるという文字が浮かび上がると思い、心構えはしておいたのだが、

 

『この程度でキレてやんの~~~~! プッ♪』

 

『最近の若者は短気でイカンな~~~~~♪』

 

『や~い、短気短気~~! プ~クスクス!』

 

予想を遥かに超える煽り文句に頭に血が上った。

 

「〝竜の本能〟…………!!」

 

赤いオーラを纏い、拳を地面に叩きつける。

その文字を中心にクモの巣状に罅が広がった。

 

「た、拓也、落ち着いて!」

 

「そ、そうだよ! ここで怒ったら相手の思う壺だから………!」

 

ハジメと香織にそう宥められる。

 

「あ、ああ………そうだな………」

 

拓也は落ち着くように深呼吸した。

休憩を取った後に探索を再開する。

何も変哲もない通路を歩いていたが、

 

「やたら広い所に出ましたね。こんな如何にもな所にトラップが無い訳が………」

 

とシアが言った所で、足元でガコンという音が。

 

「フラグウサギめ…………」

 

ユエが恨みがましい眼を向ける。

 

「わ、わざとじゃないですよぉ~~!」

 

シアが弁明するが、何処からともなくゴロゴロと言う音が。

 

「おい………この音………」

 

拓也が呟くと、通路の奥から巨大な丸い岩石が転がってきた。

皆は思わず逃げようとしたが、

 

「ありがちなトラップだけど…………!」

 

ハジメは左腕の義手を振り被った。

 

「ただの岩なら…………! 砕ける!!」

 

その言葉と共に『剛腕』と、義手に搭載されたギミック、『振動破砕』を使って岩石に殴りかかった。

 

「はぁああああああああああああああっ!!」

 

気合いの入った声と共に拳を振り抜くと、岩石が砕け散った。

 

「よしっと! 少しは僕もスッキリできた……………」

 

スッキリしたと言い掛けるが、直後にズドンと重そうな音が聞こえる。

ハジメが振り向けば、そこには先程とは違い、光沢のある球体。

即ち、金属で出来た巨大な鉄球が上から落ちてきたのだ。

 

「さ、流石にこれは砕けないかな…………?」

 

ハジメは冷や汗を流す。

今度こそハジメは逃げようとしたが、

 

「次は俺の番だな!」

 

拓也が前に出た。

 

「ええっ!? 拓也さん!? 何やってるんですか!?」

 

シアが驚く。

 

「拓也!? もしかして………!」

 

ハジメが拓也のやろうとしている事を察する。

拓也はデジヴァイスを取り出した。

拓也のデジヴァイスの画面に光が走り、スピリットの形を描く。

前に突き出した拓也の左手に、デジコードの輪が発生。

そのデジコードの輪に、右手に持ったデジヴァイスの先をなぞる様に滑らせる。

 

「スピリット……! エボリューション!!」

 

拓也がデジコードに包まれる。

拓也はそのデジコードの中で進化する。

 

「アグニモン!!」

 

デジコードが消えた時、拓也はアグニモンとなって姿を現す。

 

「わわわっ!? 拓也さんが変身しました!?」

 

進化を初めて見るシアは驚いている。

そんなシアを他所にアグニモンは炎を纏いながら回転し、炎の竜巻のようになった。

そして、

 

「サラマンダァァァァァァァッ…………! ブレイクッ!!」

 

炎を纏った旋風脚を繰り出した。

その蹴りが鋼鉄の鉄球に叩き込まれ、

 

―――ドゴォン!!

 

爆発と共に砕け散った。

 

「よし!」

 

「はは………やっぱりすごいや、アグニモン」

 

強くなったとはいえ、アグニモンには敵わないと思うハジメだった。

 

 

 

 

危機を脱した一行だったが、やはり大迷宮というだけあり、一筋縄では行かなかった。

同じ場所をグルグル回っていたり、時にはスタート地点に戻される事さえあった。

それでも攻略を進め、約1週間後………

ずっと続けていた探索は漸く進展を見せた。

その部屋は今までの部屋とは様子が違っていた。

壁際には騎士の甲冑がズラリと並び、部屋の奥にはオルクスの大迷宮でも見た隠れ家への扉。

 

「どうやら当たりみたいだね」

 

ハジメが笑う。

 

「シア!」

 

「は、はい! 何でしょう?」

 

「君は強い。僕達が保証する。ヤバい時は絶対助ける!」

 

「………うん、弟子の面倒は見る」

 

「ハジメさん………ユエさん………!」

 

ハジメとユエの言葉に感極まるシア。

 

「ッ………! ミレディ・ライセンを、ぶっ潰します!」

 

シアが戦槌ドリュッケンを振りかぶる。

更にハジメがドンナーとシュラークを構えて駆け出すと同時に周りの騎士甲冑が動き出した。

 

「ここがゴールって言うのなら、俺も遠慮しなくていいな!」

 

拓也もデジヴァイスを取り出して進化する。

 

「スピリット……! エボリューション!!」

 

拓也がデジコードに包まれアグニモンへと進化する。

 

「アグニモン!!」

 

アグニモンも空中に跳び上がると、

 

「ファイアダーツ!!」

 

炎を手裏剣の様に飛ばす。

アグニモンの炎は魔法では無いため、分解能力も働かない。

アグニモンの炎に当たったゴーレムはドロドロと熔けていく。

一方、前衛で戦槌を振り回すシアを、ハジメとユエが的確に援護している。

戦う力の無いボコモンとネーモンは、近付いてくるゴーレムを香織が杖を振り回して撃退して護っている。

香織は近接戦闘が得意ではないとはいえ、ステータスのゴリ押しによる杖の打撃はゴーレム程度粉砕できる。

因みに香織の杖はアザンチウム製で、打撃にも十二分に耐えうる強度を持っていた。

だが、倒されたゴーレムが再生しているのか、一向に数が減らない。

際限なく出てくるゴーレムを倒しながら前進し、漸く扉の前に辿り着く。

だが、ゴーレムは未だに迫ってくる。

 

「チッ! キリがない!」

 

舌打ちするハジメ。

するとシアが扉の前に降り立ち、

 

「うぉらぁああああああああっ!!」

 

戦槌を振り下ろしてその扉を叩き開けた。

その扉に駆け込む全員だったが、

 

「ッ! 皆! 跳ぶよ!」

 

ハジメが叫ぶ。

その先が途切れており、少し先(と言っても5mぐらいある)に足場が見えた。

アグニモンはボコモンとネーモンを両脇に抱えて跳躍。

ハジメ達も自力で跳んだ。

足場に着地すると、その足場が上昇していく。

そこでアグニモン達はこの空間の不可思議さに気が付いた。

 

「足場が浮いてる?」

 

この空間内には複数の足場があるが、そのどれもが空中に浮いていたのだ。

そのまま上昇していくと一際広い足場があり、上昇していくにつれその上にあった存在の姿が露になっていく。

 

「………マジですか………!」

 

ハジメが思わずそんな声を漏らす。

そこには今までのゴーレムとは比較にならない大きさを持つ巨大なゴーレムが存在していた。

それは上半身だけで浮いており、下半身はないがそれでも20m近い大きさを誇っている。

 

「いかにも親玉って感じですね………」

 

シアの言葉が切っ掛けになった様に、その巨大ゴーレムの目が怪しく光る。

それが瞳の様にアグニモン達の姿を捉え、全員は警戒する。

すると、

 

「やほ~、はじめまして~、みんな大好きミレディ・ライセンちゃんだよぉ~」

 

そんな空気をぶち壊すお気楽な挨拶がその巨大ゴーレムから聞こえた。

 

「「「「「「………………は?」」」」」」

 

アグニモン達は思わず固まる。

 

「初めまして~。ぼくネーモンだよ~」

 

だが、ネーモンだけは同じノリで挨拶を返した。

 

「あらら………挨拶してくれたのはそこの狐………? 狐………君だけか………他の人達も挨拶したんだから何か返そうよ。最低限の礼儀だよ? 全く、これだから最近の若者は……もっと常識的になりたまえよ」

 

何故か巨大ゴーレムに常識を説かれるアグニモン達。

その言葉と共に、左手に持った棘付き鉄球のメイスを肩に担ぎ、やれやれと首を振る。

その言葉と仕草に俺達全員が無性にイラッとした。

 

「………それはすみませんでした。でも、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずです。 まして、自我を持つゴーレムなんて聞いたこと無かったので……それで驚かすのも目論見通りだったんでしょう?」

 

「ん~? ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~何を持って人間だなんて……」

 

「オスカーの手記にあなたのことも少し書いてありました。きちんと人間の女性として出てきていましたよ」

 

 

「今、オスカーって言った? もしかして、オーちゃんの迷宮の攻略者?」

 

「ええ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略しました。 そして予想するに、あなたと戦って勝つことがここの神代魔法を手に入れる条件って事でしょうか?」

 

「……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな? あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな? オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?」

 

「神を相手にするかどうかは相手の出方次第って所です。僕達には、僕達の目的がある」

 

「ほうほう。その目的とは?」

 

「…………僕達はあなた達のいう狂った神とやらに無理やりこの世界に連れてこられた。そして元の世界に帰る手段の1つとして神代魔法を探してる。僕達が元の世界に帰るのを黙って見逃すならどうもしないけど、もし邪魔……もしくは僕達の世界に干渉してくるようなら戦う事になるかもしれません」

 

「ん~、そっかそっか。なるほどねぇ~、別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!」

 

「話が全く繋がってない気がするんですが?」

 

「気にしない気にしない。それじゃ、いっくよ~!」

 

ミレディの軽快な声と共に巨大ゴーレムが動き出す。

しかしその瞬間ハジメがドンナーを抜いて、ミレディゴーレムに向けてぶっ放した。

ミレディゴーレムは後ろに仰け反るが、あまりダメージを受けていない仕草で体勢を立て直すと、

 

「ふふ、先制攻撃とはやってくれるねぇ~。だけど、この程度じゃ私は倒せないよぉ~。言っとくけど私は強いよ~。死なないように頑張ってね~」

 

「戦闘開始を宣言されたから撃っただけなんですけどね………まあ、やるからには遠慮なくやらせてもらいますけど!」

 

「あはは~中々いい子だね君。いいよ、教えてあげる」

 

 

ミレディがそう言うとミレディゴーレムの背後に、騎士型ゴーレムが浮遊していた。

 

「これが私の神代魔法(ちから)。空飛ぶゴーレムは見た事ある? これが君達に一斉に襲い掛かるわけ! どう? ビビった? 今謝ったら………」

 

ミレディが得意げに語る。

その瞬間、ゴーレム達が細切れになった。

 

「アレ………?」

 

「浮いているだけなら只の的。あと、いちいちうるさい………」

 

ユエがそう言う。

因みに今更だがユエの持つ武器は、内部に水が入っており、それを『破断』という水魔法で圧力を掛けて、ウォーターカッターとして放てるようになっている。

 

「お~怖い怖い。話している最中に容赦ないな」

 

ミレディは未だに余裕を見せているが、ハジメが眼帯を外して魔眼石でミレディゴーレムを見る。

すると、

 

「なるほど。他のゴーレムと違ってあなたには核がありますね。皆、心臓の位置を狙うよ!」

 

ハジメが核の位置を看破し、それを皆に伝える。

 

「よっしゃ!」

 

アグニモンが跳び出し、

 

「バーニングサラマンダー!!」

 

両腕に炎を発生させ、火球として放つ。

それがミレディゴーレムの胸部に直撃し、爆発と共に炎に包む。

 

「どひゃぁああああああああっ!?」

 

爆発の衝撃で転倒するミレディゴーレム。

 

「な、何なの君達!? ここって魔法が使えない筈なんですけど!?」

 

「悪いが、俺の炎は魔法じゃ無いんでな!」

 

ミレディの言葉にそう返すアグニモン。

 

「ま、魔法じゃ無いって………!?」

 

ミレディが驚いた時、

 

「拓也さんだけに良いカッコはさせませんよ!」

 

アグニモンの頭上を飛び越え、シアが戦槌を振り下ろす。

ガァン!とけたたましい衝撃音が響く。

 

「つぅ~~~~~~~!? か、硬いですぅ~~!?」

 

シアは手が痺れたようで顔を顰める。

 

「あの強度………アザンチウムか!」

 

ハジメが胸部の装甲材質をそう予測した。

 

「流石オー君の迷宮攻略者。知ってて当然だよね~」

 

起き上がったミレディゴーレムにハジメはドンナーとシュラークのレールガンで攻撃するが、小さい傷が付くだけで突破できそうにない。

 

「この強度はコーティングしてあるだけじゃないね。装甲そのものがアザンチウムで出来てる。唯一の救いはアザンチウム製なのは核の周辺だけって事だね!」

 

「おおっ? そこまで見抜く? それじゃあ、第2ラウンドいってみよっか!」

 

ミレディがそう言った瞬間、上に浮いていた足場が突如として落下した。

アグニモン達は散開して避ける。

その瞬間、ハジメの横にあった足場が横滑り………というより横に落下したような動きを見せた。

ハジメは咄嗟に避けるがその顔は驚愕の表情だ。

しかし、ハジメは何かに気付いた様にハッとして、

 

「皆! こいつの神代魔法は多分重力! 浮いているゴーレムも、動く足場もそれで全て説明が付く!」

 

そう叫んだ。

 

「おや、思ったより早く気が付いたね。その通り! 重力を操れば例えば……」

 

ミレディゴーレムが左手に持ったトゲ付き鉄球のメイスをハジメ達に向けると、

 

「こんな事も出来るんだよ!」

 

その瞬間、鉄球がハジメ達に向かって放たれた。

メイスに見えたそれは、内部に鎖が繋がっている、所謂モーニングスターだったようだ。

正確にはハジメ達に向かって鉄球が『落下』しているのだろうが。

だが、

 

「させるか!」

 

ハジメ達の前にアグニモンが立ち塞がり、鉄球を全身で受け止めた。

 

「ググッ………!?」

 

だが、流石にきつい様で苦しそうな声を漏らす。

 

「マジ? これを正面から受け止めるとか………」

 

驚くミレディだったが、

 

「今だ! 皆!」

 

アグニモンが叫んだ瞬間、背後からハジメ達が跳び出す。

 

「く、来るな!」

 

ミレディゴーレムは右腕で薙ぎ払おうとしたが、

 

「どぉりゃぁああああっ!!」

 

その右腕をシアの戦槌が止める。

 

「ふぎぎ…………!」

 

シアが何とか耐えている所に、

 

「ナイスだよ! シア!」

 

ハジメが両肩にドンナーとシュラークを発砲。

罅を入れる。

更に、ユエが飛び出し、

 

「…………ここ」

 

ウォーターカッターで罅の入った両肩を切断した。

 

「くっ、このぉっ………!」

 

ミレディが何とか逃れようとした時、

 

「まだです!」

 

右腕を抑えていたシアが、両腕を切断された事で自由になり、戦槌を思い切り振りかぶる。

そのまま思いっきり振り切ってミレディゴーレムを吹き飛ばした。

足場の1つに叩きつけられるミレディゴーレム。

 

「や、やるじゃないか………でも、こんな事しても無駄だよ。私もゴーレムだって事忘れてないよね? 核が破壊されない限り素材があれば何度だって再生できるんだよ」

 

そう言いながら再生を始めようとしていた。

だが、

 

「そうはさせない………」

 

ユエがミレディゴーレムの近くに降り立つと足場に手を着き、

 

「………凍って。“凍柩”!」

 

その瞬間、ミレディゴーレムの足場に接している部分から凍り付いていき、体の大半を氷漬けにする。

 

「嘘!? どうしてここで上級魔法が使えるのさ!?」

 

ミレディが驚愕の声を上げる。

 

「水を使った攻撃をしていたお陰。これなら水を凍らせるだけで使える。それでもほぼすべての魔力を使うけど………」 

 

「いい判断だよ、ユエ」

 

「ん、頑張った………」

 

ユエはハジメに褒めてもらって嬉しそうな声を漏らす。

 

「終わりだよミレディ。この状態じゃ再生も身動きも出来ないでしょ? 諦めて神代魔法を渡しますか? それともこのまま止めを刺さした方が良いですか…………?」

 

ハジメがそう言った瞬間、シアがバッと上を見上げた。

 

「ハジメさん!! 『未来』が見えました! 天井が降ってきます!!」

 

その言葉に上を向けば、天井に正方形の亀裂が無数に入る。

 

「まさかこれは!?」

 

ハジメが目を見開く。

 

「………ふふふ、とっておきのお返しだよ。今からこの部屋の天井全てを、君達の頭上に『落とす』」

 

天井が正方形のブロックに分かれて落下を始めた。

この部屋の天井は重力魔法によって支えられていた物の様だ。

 

「さあ、見事これを凌いで見せてよ」

 

ミレディが楽しそうにそう言った。

 

「くっ! 皆! 集まれ!」

 

アグニモンが叫んだ。

アグニモンはボコモン、ネーモン、香織の近くに降り立つ。

 

「アグニモン!」

 

「ん………!」

 

「わ、分かりました!」

 

ハジメ、ユエ、シアがアグニモンの所に集う。

その直後、天井から降り注いだブロックに埋もれてしまった。

やがてブロックが落ち切ると、

 

「ふう~、終わったかな?」

 

ミレディゴーレムが氷の束縛を振りほどき、起き上がった。

そのまま各部を再生させ、

 

「ミレディちゃん、ふっかーつ!!」

 

そのままブロックの山に目を向け、

 

「うーん、流石にちょっとやり過ぎちゃったかなぁ………でも、この位何とかできないとね。あのクソヤロー共には勝てないし…………」

 

そう呟く。

その瞬間、ブロックの山が突如として爆散した。

 

「な、何!?」

 

驚く声を上げるミレディ。

その爆散したブロックの山があった場所には、

 

「はぁああああああああああああっ!!」

 

炎の魔竜、ヴリトラモンが咆哮を上げる様に天を仰いでいた。

体を前に戻すと、その眼がミレディゴーレムを見据える。

 

「なっ!? これって竜!? まさか、竜人族だったの!?」

 

ミレディは驚愕の声を上げるが、ヴリトラモンは翼を羽搏くと同時にミレディゴーレムに向かって突撃する。

そして、

 

「はぁあああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

その右腕を振り被り、ミレディゴーレムの胸部に叩きつけた。

その瞬間、ミレディゴーレムの胸部が割れ砕ける。

 

「嘘ッ!? アザンチウムの装甲を殴っただけで………!?」

 

「ハジメッ! シアッ!!」

 

ヴリトラモンが叫ぶ、

その背に乗っていたハジメとシアが跳び出す。

ハジメはその手にアザンチウム製の杭を。

シアはドリュッケンを振り被る。

 

「これでぇぇぇぇぇっ!!」

 

ハジメが杭を再生しようとした装甲の隙間に差し込む様に突き立てる。

更に、

 

「………終わりですぅ!!」

 

その杭を、シアがドリュッケンで打ち込んだ。

杭の先がミレディゴーレムの核を貫く。

 

「きゃぁああああああああああああっ!?」

 

ミレディゴーレムは力を失い、そのまま目の光が消えた。

 

「やっと終わったかな?」

 

ハジメが疲れたと言わんばかりにそう言った。

すると、シアに視線を向け、

 

「シア、今回の迷宮攻略は君がいなければ危ない所は沢山あった…………その、なんて言うか………? 君が居てくれて良かった………!」

 

ハジメは少し照れ臭そうに笑みを向けながらそう言う。

 

「ハジメさん…………!」

 

感極まるシアにハジメが歩み寄ると、

 

「よく頑張ったね………」

 

ハジメがシアを抱きしめながらその頭を撫でた。

 

「ハジさん………私………わたし…………怖かったですぅ! 何度も死んじゃうかもって思いましたぁ!!」

 

ハジメに抱き着いて大泣きした。

そんな様子を皆は優しい眼差しで見つめる。

すると、

 

「………あのぉ~、良い雰囲気の所悪いんだけど、ちょっといいかな?」

 

ミレディゴーレムが目に光を取り戻し、動き出していた。

それに気付くとハジメが杭を持ち、更にその後ろでシアが戦槌を準備する。

 

「ちょっとちょっと!? 待ってってば! 少しだけ話をさせてよ!!」

 

ミレディは慌ててそう言うが、今までおちょくられ続けたハジメ達は聞く耳を持たない。

 

「シア、全力でやれよ………!」

 

ハジメが確実にトドメを刺すようにそう言う。

 

「勿論ですぅ!」

 

シアは間髪入れず頷く。

 

 

「大丈夫だって! 試練はクリア! あんた達の勝ち! 全員合格!!」

 

ミレディはあっさりと負けを認める発言をする。

 

「核の欠片に残った力で話してるだけ。後数分も持たないよ」

 

「…………何の話? 狂った神を倒してくれって言うの?」

 

本当に話したいだけと判断したのかハジメが続きを促す。

 

「言わないよ。話したい………というより忠告だね。必ず私達『解放者』全員の神代魔法を手に入れる事。君の望みを叶えるには必要な事だよ」

 

「なら、他の迷宮の場所を教えて欲しい。ほとんどが記録にも残ってなかったんだ」

 

「あぁ、そうなんだ……そっか、迷宮の場所がわからなくなるほど……長い時が経ったんだね……じゃあ、一回しか言えないと思うからよく聞いてね。砂漠の中央にある大火山『忍耐の試練』、『グリューエン大火山』。西の海の沖合周辺にある『狂気の試練』、『メルジーネ海底遺跡』。教会総本山『意志の試練』、『神山』。東の樹海にある大樹ウーア・アルト『絆の試練』、『ハルツィナ樹海』。そして最後は……………」

 

全ての迷宮の場所を告げ終えると、

 

「………以上だよ。頑張ってね」

 

「随分しおらしいね。あのうざったい口調はどうしたの?」

 

「あはは……ゴメンね。神奴らと戦う時の為に少しでも慣れておいて欲しくて」

 

「神殺しをしてくれとは言わないんじゃなかったの?」

 

「戦うよ。君達が君達である限り………必ず神殺しを成す………」

 

ミレディはそう断言しきった。

 

「君は君の思った通りに生きればいい………それがきっと………この世界にとって最良の選択だ………………もうちょっと話したいけど残念だけど時間の様だ。大丈夫………先には進めるようにしておくから…………」

 

しおらしいミレディの言葉。

そんなミレディの前にユエが立つ。

 

「何………かな………?」

 

ミレディが問いかけると、

 

「………お疲れ様。色々考えたけど、これ以上の言葉が見つからない」

 

すると、香織もミレディの近くに行き、

 

「あの、本当にありがとうございました!」

 

そう言葉を贈った。

 

「ふふっ………ありがとね…………」

 

そう言い残すとミレディゴーレムは消え去った。

 

「嫌な人だと思っていましたけど、違っていたのかもしれませんね」

 

「ん…………」

 

消え去ったミレディゴーレムを見てシアとユエはそう呟いた。

しかし、ハジメは微妙な表情をしている。

 

「如何したんだ? ハジメ」

 

ヴリトラモンから退化した拓也がハジメの表情に気付き、問いかける。

 

「あ、いや………まだ確証がないから黙っておくよ………」

 

ミレディが用意した足場に乗ると、勝手に動き出して通路の先へ進んでいく。

 

「動く床で案内してくれるなんて優しいですね!」

 

「ミレディは演技してただけなのかも………」

 

女性陣は笑みを浮かべながらそう話し合っているが、ハジメは気まずそうに何かを言うに言えない表情をしていた。

やがて足場が通路の奥に辿り着き、その先にある扉が開く。

そこで出迎えたのが、

 

「やっほーー! さっき振りーー! ミレディちゃんだよーーー!」

 

先程と同じ声で動く、子供位の背丈のゴーレムだった。

それを見た瞬間、ハジメは顔に手を当て天を仰ぐ。

 

「ああ………やっぱり………」

 

ハジメは当たって欲しくない予想が当たってしまったと言いたげだ。

 

「ミレディが消えたら、このあといったい誰が案内役をやるんだろうと思ってたけど、やっぱりかぁ……………」 

 

「あっちゃー! バレてたか。流石は私の試練の攻略者だね!」

 

ミレディはあっけらかんとそう言うが、

 

「…………さっきのは?」

 

ユエを筆頭に女性陣が白けた目を向ける。

 

「おっ? さては女の子達は消えたと思ってた?」

 

ミレディの小型ゴーレムはしてやったりの笑みを浮かべ、

 

「ないな~い! そんな事あるわけないよ~! じゃあ女の子達にはドッキリ大成功~☆騙されてやんの~! プークスクス!」

 

その言葉で周りの空気の温度が下がった。

ミレディはゴーレムだからなのか、その変化を感じ取れないらしい。

 

「良かったでしょあの“演出”! やだ、ミレディちゃん役者の才能まであるなんて………」

 

と、そこまで言ってようやく女性達の周りに流れる冷たい空気に気付いたらしい。

冷ややかな視線を受けて狼狽え始める。

 

「あ………あの………? もしかして………ちょっとやり過ぎちゃった………?」

 

女性達に囲まれ、ミレディは…………

 

「……………ゴメンね☆」

 

テヘペロという反省ゼロの態度で謝った。

 

 

 

 

 

 

その少しあと、

 

「………はい、魔法陣の中に入って………じゃ、起動するよ。ああ、それとそっちに居る亜人2人組は残念だけど攻略者とは認められないよ。唯ついて来てただけだからね」

 

ミレディの言葉で魔法陣が輝き始める。

 

「別に構わんじゃハラ。ワシらは魔法は覚えられんマキ」

 

ボコモンはあっさりとそう言う。

因みにミレディの小型ゴーレムの各部には所々が焼け焦げていたり、殴られた跡があったりと、全く同情の出来ない有様だった。

 

「………次ふざけたら破壊するから」

 

ユエの言葉に、

 

「はい! 全力でやらせていただきます!」

 

ミレディは背筋を伸ばして敬礼することで答えた。

魔法陣が起動すると、

 

「思ってた通りだね」

 

「ん、重力操作の魔法」

 

ハジメとユエがそう言う。

 

「金髪ちゃんは適性ばっちり! そっちの白い髪の女の子と竜人族?の男の子はそれなりだね。ウサギちゃんは出来て体重を変える事ぐらいかな」

 

「私、適性無いんですね?」

 

シアが残念そうに言う。

 

「白い髪の男の子はビックリするほど適性無いね」

 

「………いいですよ。人には得手不得手ってものがあるんだから………」

 

ミレディの言葉にそう返すハジメ。

 

「あと君にはコレ」

 

そう言ってミレディがハジメに指輪を投げ渡す。

 

「攻略の証だよ。大切に取っておいてね」

 

すると、

 

「どうも………それから聞きたい事があったんだけど、ゴーレムを遠隔操作してたよね? あれってどういう仕掛け?」

 

「え? あれは〝感応石〟。魔力を定着させると遠くから操る事ができる鉱石だよ」

 

「それ分けて! それがあればいろんなものが作れそうだし!!」

 

ミレディに詰め寄るハジメ。

 

「え……え?」

 

「そうだ! 他にも………」

 

「え? もしかしてこの子、オー君の同類!?」

 

暫くミレディはハジメに質問攻めと共に、それなりの鉱石やアーティファクトを巻き上げられることになった。

 

 

 

 

 

ミレディから半ば強引に使えそうなものを分けて貰ったハジメは満足そうな笑顔だ。

 

「よーし、これだけあれば、またいろんなものが作れるぞ~!」

 

既に構想があるのか、ワクワクしているハジメ。

 

「この子、絶対に詐欺師の才能あるね」

 

最終的に溜め込んでいた物の半分以上を取られたミレディが呆れた様にそう言う。

 

「じゃあ、もうやることは済んだかな?」

 

「まぁ、そうだね」

 

ミレディの言葉にハジメがそう返事をすると、

 

「オッケー☆ それじゃ、とっとと出ていってね♪」

 

いつの間にかミレディの横に垂れて来ていたロープを引っ張った。

すると、スルスルとミレディがロープに引っ張られて宙に浮くと、突如としてこの部屋に水が流れ込むと同時に部屋の中央に穴が開く。

そのまま水に飲まれる拓也達。

 

「これってまさか……!」

 

ハジメが気付いたように声を上げる。

 

「いやな物は水に流すに限るね! それじゃ、引き続き攻略頑張るんだよ~~~~!」

 

ロープで空中に退避していたミレディが気楽な声でそういう。

 

「このっ! 覚えておけ!!」

 

「………許さない!」

 

「いつか絶対破壊してやるですぅ~!」

 

ハジメ達はそう言うが水の流れには逆らえず、まるで便所に流される“ピーー”の様に部屋の中央の穴に呑み込まれて迷宮から強制排出されたのだった。

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

 

ライセン大迷宮を攻略した拓也達。

次の大迷宮を目指すため、ブルックを後にする。

新たに辿り着いたフューレンで待ち受けるものは………?

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

第14話 護衛依頼! フューレンでの騒動!

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 

 





はい、第13話です。
スタートダッシュ10です。
何か書き始めたら次話が完成してしまったので、本日2回目の投稿です。
まあ、細かい所は変わっていますが大筋は変わらないって事で。
さて、ウル編までもう少し。
次も頑張ります。
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