ウルの町を守り切り、幸利も無事戻って来た後、拓也達はウィルを連れてフューレンに戻る事にした。
その際、
「では、源君、清水君、園部さんは、南雲君達と行動を共にすると………」
愛子が少し残念そうに言う。
「俺の目的は、そもそも以前の優花を光輝や檜山から離しておきたかっただけだ。拓也が戻ってきた今、そんな事を気にする必要は無いだろう」
輝二はそう言う。
「俺も償いの為には、ハジメ達と行動を共にするのが一番の近道だと思う。ハジメの旅はきついものになるんだろうけど、だからこそ俺はハジメ達を手助けしたい………『土』の闘士としてもな」
幸利は笑みを浮かべながらそう言った。
「私も……拓也と離れ離れになるのはもう嫌だから………」
優花も自分の思いを口にする。
「そうですか………あなた達が自分で決めたというのなら、先生は反対しません。ですが、出来れば定期的に無事だという連絡を頂けたら嬉しいです」
「「「はい!」」」
愛子の言葉に3人は返事を返した。
「南雲君達も、出来ればホルアドに寄って無事な姿を皆に見せてあげてください。きっと八重樫さん達も喜びます」
「はい」
「もともと雫ちゃんには会いに行くつもりでしたから」
ハジメと香織はそう答えた。
「輝一にも無事を伝えなきゃいけないしな」
拓也もそう言う。
その時、
「幸利さん!」
茶髪の少女、アリサが駆け寄って来る。
「アリサ………」
幸利はアリサに向き直る。
アリサは幸利の前まで駆けてくると息を整え、顔を上げた。
そして、
「……待ってますから………!」
笑顔を浮かべてそう言った。
「ッ……!?」
その言葉に、幸利は一瞬虚を突かれたように目を見開き、
「ああ。全てを終わらせたら、必ず迎えに来る!」
力強く頷いてそう言った。
「はい!」
アリサも頷くと、幸利に近付いて抱擁を交わす。
「「…………………」」
少しすると、どちらからともなく離れ、幸利は踵を返す。
そして、
「行こう!」
力強くそう言った。
「いいのか?」
拓也がそう聞くと、
「ああ、言っただろ? 全てを終わらせたら迎えに来るさ!」
幸利は迷いなくそう言った。
このウルの町で拓也達に合流したメンバーは、輝二、優花、幸利、そしてティオ。
新たに加わったメンバーと、ウィルを連れて拓也達はウルの町を後にした。
尚、フューレンへの道すがら、優花と幸利のビーストスピリットの制御訓練をしたのだが………
ウルの町からフューレンへの道の所々にドでかいクレータやら薙ぎ倒された木々が増えた事から、何が起きたのかはお察しである。
まあ、その甲斐あって2人はビーストスピリットの制御には成功した。
フューレンに着くと、門番に話が回っていたらしく、検問を待つことなく中に入る事ができた。
そのままウィルを連れてギルドへ直行する。
そして、今はイルワ支部長にウィルを合わせた所だ。
「ウィル! 無事かい!? 怪我はないかい!?」
イルワ支部長がウィルに駆け寄る。
「イルワさん……すみません。私が無理を言ったせいで、色々迷惑を……」
「……何を言うんだ……私の方こそ、危険な依頼を紹介してしまった……本当によく無事で……ウィルに何かあったらグレイルやサリアに合わせる顔がなくなるところだよ……二人も随分心配していた。早く顔を見せて安心させてあげるといい。君の無事は既に連絡してある。数日前からフューレンに来ているんだ」
「父上とママが……わかりました。直ぐに会いに行きます」
ウィルはそう言うと俺達にもう一度礼を言って部屋を出て行った。
因みに、父親の事を『父上』と呼んでいたのに母親の事を『ママ』と呼んでいたウィルに、聞いていた一同はマザコン認定したのは仕方のない事だろう。
ウィルが出て行ったあと、イルワ支部長が拓也達に振り返り、
「皆、今回は本当にありがとう。まさか、本当にウィルを生きて連れ戻してくれるとは思わなかった。感謝してもしきれないよ」
「色々幸運が重なっただけですよ」
「ふふ、そうかな? 確かに、それもあるだろうが……何万もの魔物の群れから守りきってくれたのは事実だろう?」
イルワ支部長は小さく笑みを浮かべながらそう言う。
ハジメが若干動揺した仕草を見せた。
「隠さなくてもいい。私の部下が君達に付いて行ったんだ。あのとんでもない移動型アーティファクトのせいで常に後手に回っていたようだけど……彼の泣き言なんて初めて聞いたよ。諜報では随一の腕を持っているのだけどね」
「随分情報が早いですね?」
ハジメがそう言うと、
「ギルドの幹部専用だけどね。長距離連絡用のアーティファクトがあるんだ」
イルワ支部長がそう言う。
FAXや無線の類だろうかとハジメは予想したが、
「それにしても、大変だったね。まさか、北の山脈地帯の異変が大惨事の予兆だったとは……二重の意味で君達に依頼して本当によかった。数万の大群を殲滅した力にも興味はあるのだけど……聞かせてくれるかい? 一体、何があったのか」
「はい、構いません。でも、その前にユエとシアのステータスプレートを頼みます……ティオは『うむ、2人が貰うなら妾の分も頼めるかの』……ということです」
「ふむ、確かに、プレートを見たほうが信憑性も高まるか……わかったよ」
イルワ支部長が職員を呼んで新しいステータスプレートを3枚持ってこさせる。
それぞれのステータスは、
ユエ 323歳 女 レベル:75
天職:神子
筋力:120
体力:300
耐性:60
敏捷:120
魔力:6980
魔耐:7120
技能:自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・高速魔力回復・生成魔法・重力魔法
シア・ハウリア 16歳 女 レベル:40
天職:占術師
筋力:60 [+最大6100]
体力:80 [+最大6120]
耐性:60 [+最大6100]
敏捷:85 [+最大6125]
魔力:3020
魔耐:3180
技能:未来視[+自動発動][+仮定未来]・魔力操作[+身体強化][+部分強化][+変換効率上昇Ⅱ] [+集中強化]・重力魔法
ティオ・クラルス 563歳 女 レベル:89
天職:守護者
筋力:770 [+竜化状態4620]
体力:1100 [+竜化状態6600]
耐性:1100 [+竜化状態6600]
敏捷:580 [+竜化状態3480]
魔力:4590
魔耐:4220
技能:竜化[+竜鱗硬化][+魔力効率上昇][+身体能力上昇][+咆哮][+風纏][+痛覚変換]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮]・火属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇]・複合魔法
「天之河のステータスが可愛く見えるぜ………」
幸利が呆れた様に呟く。
流石のイルワ支部長もあんぐりと口を開けている。
「いやはや……なにかあるとは思っていましたが、これほどとは……」
そんなイルワ支部長にハジメが事の顛末を聞かせる。
全て聞き終えると、イルワ支部長は疲れた表情でソファーに座り直した。
「……道理でキャサリン先生の目に留まるわけだ。ハジメ君が異世界人の1人だということは予想していたが……実際は、遥か斜め上をいったね……」
「……それで、イルワさん。あなたはどうしますか? 危険分子だと教会にでも突き出しますか?」
イルワ支部長は、ハジメの質問に心外だと言わんばかりの眼差しを向けると口を開いた。
「冗談がキツいよ。出来るわけないだろう? 君達を敵に回すようなこと、個人的にもギルド幹部としても有り得ない選択肢だよ……大体、見くびらないで欲しい。君達は私の恩人なんだ。そのことを私が忘れることは生涯ないよ」
「……そうですか」
「私としては、約束通り可能な限り君達の後ろ盾になろうと思う。ギルド幹部としても、個人としてもね。まぁ、あれだけの力を見せたんだ。当分は、上の方も議論が紛糾して君達に下手なことはしないと思うよ。一応、後ろ盾になりやすいように、君達の冒険者ランクを全員〝金〟にしておく。普通は、〝金〟を付けるには色々面倒な手続きがいるのだけど……事後承諾でも何とかなるよ。キャサリン先生と僕の推薦。あとは、危険な山から伯爵家の息子を助けたって言う実績もあるしね」
イルワ支部長の大盤振る舞いにより、ギルドが直営している宿のVIPルームを使わせて貰える事になり、今夜はそこで休むことになった。
因みに部屋は4部屋取ってあり、ハジメ、香織、ユエ、シアで一部屋。
拓也、優花で一部屋。
輝二、幸利で一部屋。
ティオ、ボコモン、ネーモンで一部屋であった。
因みに翌日も優花は朝起きれない程に疲弊しており、香織の回復魔法のお世話になったという。
この日はそれぞれがグループに分かれて買い出しを行う事になった。
それぞれが受け持つ買い出しを済ませれば、あとは自由時間。
拓也と優花も、久し振りのデートを満喫していた。
腕を組みながら街を回り、アクセサリーショップや出店を回り、時には公園で散歩したり、外壁の上から街の光景を眺めたりもした。
召喚されてからこれまで、ここまでゆっくりできたのは初めてとも言える時が流れた。
丁度昼時になった所で、手ごろな喫茶店で軽食を摂る事にした。
そこはオープンテラス………というか、外にテーブルが置かれており、そこでお茶や軽食が摂れる様になっている。
そして、拓也と優花が空いている席を探していた時、
「おや? 奇遇じゃのうご主人」
大き目の丸テーブルの席に腰掛けるティオ。
「おお。拓也はんと優花はんやマキ」
「偶然だね~」
同じテーブルに着いているボコモンとネーモン。
この3人は同じグループで行動していた。
更に、
「おっ、相変わらず仲いいな」
「……………………」
気軽に声を掛けてくる幸利と、チラッと一瞥しただけで紅茶に口を付ける輝二、
この2人もまた別のグループだった。
「何で皆集まってんだ?」
「何、単なる偶然じゃよ。小腹が空いてきたのでな、偶々この店に立ち寄っただけじゃ」
「こちらも同じく」
拓也の問いに、ティオと幸利がそう答えた。
「………まあいっか。一緒でいいか?」
拓也は優花に訊ねる。
「別にいいわよ。食事が一緒になる事ぐらい」
拓也と優花も同じ席に着き、適当に飲み物と軽食を頼む。
注文した物が運ばれてくると、それぞれが雑談をしながら穏やかな時間が流れる。
「優雅なひと時じゃのう………」
ティオがしみじみと呟く。
全員が同意する様に、飲み物を口に運び、
―――ドゴォン!
背後の建物の壁が爆散し、人が吹っ飛んできた。
「「「ッ!?!?」」」
突然の事に驚愕する優花、輝二、幸利。
そして爆散した壁の向こうから現れたのは………
「あっ! やっぱり皆の気配だった!」
丁度いいと言わんばかりの口調で現れたハジメが言った。
「あれ? 皆さんお揃いで。こんな所で如何したんですか?」
ハジメの後ろには香織、ユエ、シアの姿もある。
「今度は何をおっぱじめたんだ?」
冷静な態度で拓也が聞くと、
「海人族の子供を人身売買の組織から助けたんだけど、保安所に預けた所でまた攫われてね。しかも、香織達もターゲットになってたみたいだから、もうこの際見せしめを含めて今回関わった組織とその関連組織の全てを潰してしまおうと思ってね」
「………何でデートから犯罪組織を潰す事になってるんだよ………」
拓也は呆れた様に溜息を吐く。
「ハジメはん、違う街に来るたびにトラブルに巻き込まれとらんマキか?」
「何事もなく済んだ街が無い様な気がするね~」
ボコモンとネーモンがそう突っ込む。
「あ~、言わないで。僕も薄々そう思ってた所だから……」
ハジメは明後日の方向を見ながらそう言う。
「それで聞き出したところによると、結構大きな組織みたいでね……関連施設の数も半端ないみたいなんだ。悪いけど手伝ってくれない?」
「ま、見て見ぬ振りは出来ないよな」
ハジメの言葉に拓也は答え、他の皆も頷く。
「それじゃ、行動開始だ!」
ハジメがそう言った。
犯罪組織のとある支部の建物。
「アースクエイク!!」
そんな叫びと共に、建物が根こそぎ吹き飛ぶ。
またある所では、
「ウインドオブペイン!!」
建物が暴風により吹き飛び、
またある所では、
「フレイムストーム!!」
建物が炎に包まれ、
更にまたある所では、
「スピードスター!!」
閃光と共に建物がバラバラに切り裂かれ、呆気なく崩れていった。
そんな事がフューレンの街のあちこちで次々と起こり、周辺は何事かと騒動になった。
そして、辺りが西日に照らされオレンジ色に染まる頃、とある地下施設で、非合法のオークションが行われていた。
そのオークションの目玉商品として出品されたのは、大人が抱えるほどの水槽の中に水が満たされ、その中にエメラルドグリーンの髪をした幼い少女が入れられていた。
水槽の中が水で満たされているにも関わらず、その少女が溺れることは無い。
何故ならば、その少女は海人族と呼ばれる亜人であり、良く見れば耳がヒレの様になっている。
海人族は水中でも呼吸が可能で、水槽の中が水で満たされているのは海人族であることを証明する為だろう。
そして海人族は、その特性を生かして大陸に出回る海産物の8割を採って送り出しているので、王国の利益になるからと亜人族の中で唯一保護されている種族なのだ。
亜人を差別しているのに利益になるから保護しているというのは、何とも現金な話である。
そして、その為に本来海人族は奴隷になることは無い。
しかし、だからこそ価値が出る。
この海人族の少女、ミュウもそんな理由で犯罪組織、フリートホーフの構成員に捕まり、奴隷としてこの街に連れて来られたのだ。
そんなミュウの入った水槽を、元締めの男が蹴りつける。
「ッ!?」
「おらガキ! 喚け! それが出来ないなら芸の1つでもやって見せろ!」
ミュウは元締めの男の荒げた声に完全に怯えている。
「俺の手を煩わせるんじゃねぇ! この半端もんの能無し擬きが!!」
更に手に持った杖で水槽を突こうとした時、
「その言葉、そっくりそのままお前に返すよ、クソヤロー!」
「ッ!?」
その声に元締めの男が天井を見上げると、ハジメが天井の格子の上に立っていた。
「て、テメエはっ!?」
次の瞬間、ハジメは天井から飛び降り、そのままダイレクトで元締めの男を踏みつけた。
「ぐあっ………!? て、テメェ………ッ!?」
男はハジメを睨み付けようとしたが、その男には銃口が向けられていた。
「寝てなよ」
ハジメは引き金を引く。
非殺傷弾が眉間に直撃し、元締めの男は白目を剥いた。
「「「「「「「「「「きゃぁああああああああああっ!?」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「うわぁああああああああああああっ!?」」」」」」」」」」
オークションに参加していた客達が悲鳴と共に逃げ出す。
しかし、出入り口の前の地面がいきなり爆発する様に吹き飛び、
「おっと! ここから先は通行止めだ!」
そこに現れたのは、茶色い鉱物で身体を構成した巨人ギガスモン。
「あなた達も同罪よ!」
その後ろから舞うように現れたのは、背中と頭部に鳥の翼を生やし、手足の先もカギ爪と化した女性の姿をしたシューツモン。
「自分達だけ逃げられると思うなよ?」
赤き竜、ヴリトラモン。
「因果応報だ」
そして白き狼、ガルムモン。
元々秘密の競売所の為、出入り口は少ない。
その全てを十闘士のビースト形態で立ち塞がれれば、単なる貴族達に成す術は無かった。
「倒壊した建物22棟、半壊した建物37棟、消滅した建物15棟、フリートホーフの構成員の内、再起不能261名、重傷28名……死者と民間人の被害がゼロなのが奇跡としか思えない………で? 何か言い訳はあるかい?」
「ムカついたので計画的にやりました。反省も後悔もありません」
「はぁ~~~~~~~~~」
冒険者ギルドの応接室で、ハジメがイルワ支部長に報告していた。
そのハジメの膝には海人族の女の子であるミュウが座っている。
因みにやけに再起不能者が多いのは香織の所為である。
骨折などを矯正せずにワザと変な形のまま回復させたため、骨が変な向きで固定され、日常生活も難しい体にしてしまったのだ。
「まさかと思うけど……メアシュタットの水槽やら壁やらを破壊してリーマンが空を飛んで逃げたという話……関係ないよね?」
「……ミュウ、これも美味いよ? 食べてみて」
「あ~ん」
イルワの言葉をスルーするハジメ。
「まぁ、やりすぎ感は否めないけど、私達も裏組織に関しては手を焼いていたからね……今回の件は正直助かったといえば助かったとも言える。彼等は明確な証拠を残さず、表向きはまっとうな商売をしているし、仮に違法な現場を検挙してもトカゲの尻尾切りでね……はっきりいって彼等の根絶なんて夢物語というのが現状だった……ただ、これで裏世界の均衡が大きく崩れたからね……はぁ、保安局と連携して冒険者も色々大変になりそうだよ」
「まぁ、元々、其の辺はフューレンの行政が何とかするところです。今回は、たまたま身内にまで手を出されそうだったから、反撃したまでだし……」
「唯の反撃で、フューレンにおける裏世界三大組織の一つを半日で殲滅かい? ホント、洒落にならないね」
イルワ支部長は苦笑いしている。
シャレにならない事だが、フューレンの街にとっては行幸だ。
「一応、そういう犯罪者集団が二度と俺達に手を出さないように、見せしめを兼ねて盛大にやりました。支部長も、僕達の名前使ってくれても構いませんよ? 何なら、支部長お抱えの〝金〟だってことにすれば……相当抑止力になると思いませんか?」
「おや、いいのかい? それは凄く助かるのだけど……そういう利用されるようなのは嫌うタイプだろう?」
イルワ支部長はハジメに意外そうな顔を向ける。
本心は是非と思っているだろう。
「まぁ、持ちつ持たれつって奴です。世話になるんだし、それくらいは構いません。支部長なら、そのへんの匙加減もわかるだろうし。僕らのせいで、フューレンで裏組織の戦争が起きました、一般人が巻き込まれましたっていうのは気分悪いですし」
「そうかね」
すると、イルワ支部長はミュウに視線を移し、
「それで、そのミュウ君についてだけど……」
その言葉にミュウがピクッとして、不安そうにハジメを見上げる。
「こちらで預かって、正規の手続きでエリセンに送還するか、君達に預けて依頼という形で送還してもらうか……二つの方法がある。君達はどっちがいいかな?」
イルワ支部長はそう言って来た。
「ハジメさん……私、絶対、この子を守ってみせます。だから、一緒に……お願いします」
シアは最初に保護した際、かなりミュウを気に入ったようだ。
「お兄ちゃん……一緒……め?」
「………まぁ、最初からそうするつもりで助けたからね……ここまで情を抱かせておいて、はいさよならなんて真似は流石にね………」
「ハジメさん!」
「お兄ちゃん!」
シアとミュウが満面の笑みになる。
「ミュウ。そのお兄ちゃんってのは止めてくれないかな? 普通にハジメでいい」
ハジメがそう言うと、ミュウは少し考えて、
「……じゃあパパ!」
「………………な、何だって? 悪い、ミュウ。よく聞こえなかった。もう一度お願い……!」
「パパ!」
「……そ、それはあれ? 海人族の言葉で『お兄ちゃん』とか『ハジメ』という意味?」
「ううん。パパはパパなの!」
「うん、ちょっと待とうか」
ハジメが目元を手で抑えると、
「何で『パパ』なの?」
「ミュウね、パパいないの……ミュウが生まれる前に神様のところにいっちゃったの……キーちゃんにもルーちゃんにもミーちゃんにもいるのにミュウにはいないの……だからお兄ちゃんがパパなの」
「何となくわかったけど、何が『だから』何だとツッコミたい。ミュウ。頼むからパパは勘弁して。僕は、まだ17なんだから?」
「やっ、パパなの!」
「わかった。もうお兄ちゃんでいい! 贅沢はいわないからパパは止めて!」
「やっーー!! パパはミュウのパパなのー!」
ミュウにとって意外なほどしっくり来たようで、パパ呼びを変えようとはしない。
「おっ? 娘が出来たのか。良かったなハジメパパ」
拓也がそう言う。
「んなっ!?」
目を見開いて驚愕するハジメ。
「そうね。子育て頑張ってね、ハジメパパ」
優花も悪ノリする。
「子供の世話は大変だぞ。しっかりしろよ、ハジメパパ」
幸利も続く。
「お、お前ら…………!」
「「「頑張れ、ハジメパパ!」」」
「いい加減にしろぉぉぉぉぉぉっ!!!」
ギルドの建物にハジメの声が響いた。
「娘か…………パタモンを育てていた頃を思い出すじゃハラ………」
ボコモンが腕を組みながらうんうんと思い出に浸る。
「育てたって言うか、寧ろ守られてたみたいな」
「むっ!? やかましいわい!」
「アイタッ!?」
いつものゴムパッチンをネーモンに喰らわせるボコモン。
「…………やれやれ」
そんな彼らを見て、輝二は呆れた声を漏らすのだった。
次回予告
フューレンを後にし、ホルアドに辿り着いた拓也達。
しかし、ホルアドのギルドに辿り着いた時、そこに居たのはクラスメイトの遠藤 浩介だった。
浩介から勇者パーティー達がピンチに陥っている事を知らされ、一行は勇者救出の為に迷宮を駆ける。
果たして彼らは間に合うのか!?
次回、ありふれたフロンティアへ
第19話 走れ輝二! 疾走ガルムモン!!
今、ありふれた伝説が進化する。
第18話です。
ミュウのパパは順当にハジメとなりました。
そしてビーストスピリットの制御はごくあっさり。
実際は結構苦労しました。
でも、この段階で制御できとかないと自分の考えているシーンが出来ないので。
あと、暫く後の話になりますが、拓也のヒロイン増やす事にしました。
いやね、漫画版を読んでたらあのキャラがえらく魅力的に見えまして………
ご都合主義を重ね合わせて何とか引っ張り込もうとしてる次第です。
そのヒロインが誰なのかはお楽しみに。
まあ、漫画版でピンと来る人もいるかもしれませんが。
といわけでまた次回。
P.S 今日は時間が無いので返信はお休みします。
ミュウのパパは? 決選投票
-
ど真ん中ストレート! ハジメ
-
決め球はフォーク! 輝二
-
まさかのチェンジアップ!? 幸利