ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第20話 復活の闇の闘士!

 

 

 

雫の危機に突如として現れたのは、鋼鉄の鎧で身を包み、背中に2本のブレードを広げた白き狼。

その白い狼は、雫が圧倒された馬頭の魔物2体を一瞬で真っ二つにしてしまった。

すると、背中に翼の様に両側に広がっていた2本のブレードが動き、狼の体と水平になる様に収納された。

 

「な、何だあれは………?」

 

「新手の魔物………?」

 

龍太郎と光輝が驚いた声を漏らす。

だが、

 

「ガルムモン!?」

 

輝一だけは違った意味で驚愕し、その名を叫ぶ。

その白い狼――ガルムモン――は雫に向かって歩み寄る。

 

「あ………………」

 

歩み寄って来るガルムモンに、雫は不思議と恐怖を感じていなかった。

ガルムモンの眼と雫の視線が交わる。

ガルムモンが雫のすぐ傍まで歩み寄ると、

 

「………………無事か?」

 

一言そう問いかけた。

 

「……………………輝二」

 

自然とその名が雫の口から零れた。

雫はすぐにハッとなり、

 

「わ、私………何言って…………」

 

何故目の前のガルムモン………白い狼を見て輝二の名を呼んでしまったのかと雫自身困惑する。

すると、

 

「よくわかったな」

 

半ば感心する様な声色でガルムモンがそう言う。

 

「………え?」

 

その言葉の意味が一瞬理解できずに声を漏らすと、ガルムモンがデジコードに包まれる。

そして、そのデジコードが消えると、そこには片膝を着いた輝二が雫と視線を合わせていた。

 

「こ、輝二……………?」

 

雫は目を見開いて驚きを露にする。

すると、輝二は雫の状態を確認し、

 

「酷い怪我だな………」

 

そう言うと輝二は雫を横抱きで抱き上げた。

 

「きゃっ……!? こ、輝二………!?」

 

突然抱き上げられた雫は恥ずかしさから小さく悲鳴を零す。

 

「少し我慢しろ……!」

 

輝二は雫を抱き上げたまま跳躍し、光輝達と合流する。

すると、

 

「辻! 雫に回復魔法を!」

 

治癒師である綾子に呼びかけた。

だが、

 

「ご、ごめんなさい! 魔力が……もう………」

 

綾子の魔力は、これまでの戦いの回復と、メルドの命を繋ぐため、魔力を使い切っていた。

輝二は小さく舌打ちすると、雫を近くにあった石柱に寄りかからせながら地面に下ろす。

 

「輝二…………」

 

「もう少し我慢しろ。すぐにあいつらが来る」

 

「えっ………? 『あいつら』って…………」

 

雫が聞き返そうとするが、輝二は立ち上がって踵を返す。

 

「輝二!? お前、何でここに!? それにさっきの姿は一体……!?」

 

光輝が驚愕しながら問い詰めようとするが、輝二はそれをスルーし、

 

「輝一! 俺達でここを食い止めるぞ!」

 

輝二は輝一に向かって呼びかける。

 

「輝二!」

 

戦っていた輝一は、一旦大きく飛び退いて輝二の隣に並ぶ。

すると、輝二はデジヴァイスを取り出し、輝一に向けた。

 

「輝一! 受け取れ! 『闇』のスピリットを!」

 

その瞬間デジヴァイスの画面が輝き、『闇』のヒューマンスピリットとビーストスピリットが飛び出す。

 

「スピリット!」

 

輝一がその輝きに右手を翳すと、そこに黒と灰色のデジヴァイスが現れ、『闇』のスピリットがそのデジヴァイスに吸い込まれた。

輝一はそのデジヴァイスを握る。

その画面には『闇』の紋章が浮かび上がっていた。

その時、

 

「ふん、一体何者なのかは知らないが、よくもあの御方から賜った魔物をやってくれたね! 絶対に許さないよ! ()れ! お前達!」

 

魔人族の女が魔物達に命令を下す。

魔物達が、一斉に輝二と輝一に向かい始めた。

 

「こ、輝二………!」

 

それを見た雫が、何とか自分も加勢しようと身を起こし、立ち上がろうとする。

すると、

 

「雫」

 

輝二が背中越しに雫に声を掛けた。

雫はハッとなって輝二を見た。

輝二は首だけを回して背後の雫に視線を向けると、

 

「大丈夫だからそこでジッとしていろ」

 

そう言った。

 

「輝一!」

 

今度は恵理が輝一に呼びかけた。

その表情は不安が伺える。

輝一はそんな恵理に笑い掛けると、

 

「安心してくれ。もう負けない!」

 

自信を持ってそう言い切った。

2人は魔物達に向き直ると、デジヴァイスを同時に突き出した。

突き出したデジヴァイスの画面に光が走り、それぞれに『光』と『闇』のスピリットの形が描かれる。

前に突き出した2人の左手に、デジコードの輪が発生した。

そのデジコードの輪に、右手に持ったデジヴァイスの先をなぞる様に滑らせる。

 

「「スピリット……! エボリューション!!」」

 

2人がデジコードに包まれる。

デジコードの中では、2人がスピリットを纏っていく。

顔に。

腕に。

体に。

足に。

2人の身体にスピリットが合わさる。

そして、そのデジコードが消えたとき、『光』と『闇』の闘士が現れた。

 

「ヴォルフモン!!」

 

「レーベモン!!」

 

ヴォルフモンと、各部に獅子の顔のレリーフが刻まれた黒い鎧をまとったレーベモンが姿を現す。

 

「ま、また変わった……!?」

 

魔人族の女が驚いた声を漏らす。

 

「一体何なんだい、お前達は!?」

 

魔人族の女が疑問を投げかけた。

すると、

 

「光の闘士………ヴォルフモン!」

 

「闇の闘士……レーベモン!」

 

2人がそれぞれ名乗りを上げる。

 

「光の闘士に………闇の闘士だって………?」

 

魔人族の女が呟くと、レーベモンが右手を前に突き出す。

すると、その手に槍が現れた。

レーベモンがその槍を掴むと、突如真横にその矛先を突き出す。

すると、その先から血が噴き出した。

一瞬遅れてその場にキメラが現れた。

レーベモンの突き出した槍は、そのキメラを貫いている。

 

「ど、どうして分かったのさ………?」

 

キメラの隠蔽能力を容易く見破られた事に、魔人族の女が動揺する。

続けて狼のような魔物が集団で襲い掛かるが、

 

「リヒト・ズィーガー!!」

 

ヴォルフモンが光の剣を抜くと、

 

「はっ! ふっ! せいっ!」

 

一瞬で全ての狼が両断される。

 

「ッ………!?」

 

すると巨大な亀のような魔物が口を開き、魔力を溜めていた。

魔力砲撃を放とうと言うのだろう。

すると、レーベモンが真正面から立ちはだかり、腕をクロスさせると力を溜め始める。

 

「うぉおおおおおおおっ!」

 

その瞬間、亀の口から魔力砲撃が放たれる。

レーベモンが腕を広げると、同時に胴体の獅子の顔の口が開かれ、そこに闇のエネルギーが集中し、

 

「エントリヒ・メテオール!!」

 

闇のエネルギー波が放たれた。

亀の魔物が放った魔力砲撃と闇のエネルギーがぶつかり合う。

その瞬間、闇のエネルギーが一気に魔力砲撃を貫いて行く。

亀の魔物は慌てて甲羅に閉じこもるが、闇のエネルギーは無意味とばかりに甲羅ごと亀の魔物を消し飛ばした。

 

「アプソドを歯牙にもかけないなんて………!」

 

魔人族の女は歯を食いしばる。

その時、

 

「「「ピコダーツ!」」」

 

ピコデビモンが大きな注射器を投げつける。

 

「はっ!」

 

ヴォルフモンがその全てを斬り払った。

すると、

 

「はっ! お前達がいくら強くとも、こっちにはまだ不死身の魔物が居るのさ!」

 

魔人族の女は気力を取り戻したようにそう叫ぶと、ピピスモンとピコデビモンが2人に襲い掛かって来た。

すると、ヴォルフモンが左腕を構え、

 

「リヒト・クーゲル!!」

 

左腕の砲口からレーザーを放ち、ピコデビモン達を一気に貫く。

 

「「「「「ヒィィィィィィィィィィッ!?」」」」」

 

更にレーベモンが跳躍し、

 

「エーヴィッヒ・シュラーフ!!」

 

闇のエネルギーを纏った槍の一撃をピピスモンに叩き込んだ。

 

「ギェエエエエエエエエッ!?」

 

それぞれが悲鳴を上げてデジコードを浮かび上がらせる。

 

「無駄無駄! そいつらは不死身だ! それはお前がよくわかっているだろう!?」

 

魔人族の女はレーベモンに向かってそう叫ぶ。

輝一は雫が戦っていた時、このデジモン達を何度も戦闘不能にしているが、その度に蘇ってきている。

しかし、

 

「それは如何かな?」

 

レーベモンは不敵な笑みを浮かべた。

 

「何ッ………?」

 

その言葉に魔人族の女は声を漏らす。

すると、ヴォルフモンがピコデビモン達の前に、レーベモンがピピスモンの前に立った。

そして、

 

「闇に蠢く魂よ、聖なる光で浄化する!」

 

「乱されし邪悪な心よ、闇に埋もれて眠るがいい! このデジヴァイスが浄化する!」

 

それぞれの手には、いつの間にかデジヴァイスが握られている。

そして、そのデジヴァイスをピコデビモンやピピスモンから発生しているデジコードになぞる様に滑らせると、

 

「「デジコード……! スキャン!」」

 

そのデジコードがデジヴァイスに吸い込まれていった。

それと共に、ピコデビモンとピピスモンの姿が消滅していき、光のタマゴ……デジタマとなって空中へ上っていき、やがて光の粒子となって消え去った。

 

「…………倒した………のか?」

 

それを見ていた光輝が呆然と呟く。

 

「そ、そんな馬鹿な…………!」

 

魔人族の女は予想外だと声を漏らす。

 

「こ、こうなったら………!」

 

魔人族の女の視線が向いたのは、傷付き、まともに動くことができない勇者パーティーの面々。

残っている魔物達を彼らに差し向けた。

 

「ッ! させるか!」

 

レーベモンが即座に駆けつけようとする。

だが、ヴォルフモンは何かに気付いた様に天井を見上げ、

 

「大丈夫だ。あいつらが来た」

 

「何?」

 

ヴォルフモンの言葉にレーベモンが声を漏らすと、

 

―――ドゴォッ………! ドゴォッ……! ドゴォッ! ドゴォッ!! ドゴォッ!!!

 

遠くから破砕音が連続したかと思うと、天井が爆砕。

その向こうから茶色の巨人ギガスモンが現れた。

天井から現れたギガスモンはそのまま真下に勢いよく落下し、真下に居たキメラを踏みつぶした。

 

「おっと! ビンゴだったみたいだな!」

 

後に居た光輝達を見てそう言うギガスモン。

 

「なっ!? 何だ!?」

 

光輝が思わず叫ぶ。

 

「あれはギガスモン!? 何故!?」

 

レーベモンが驚愕する。

すると、穴の開いた天井から飛び降りてきたアグニモンが着地し、続けてボコモンとネーモンを抱えたフェアリモンが舞うように降り立ち、

 

「はっ!」

 

「せいっ!」

 

近くのブルタールモドキの魔物を殴りつけ、蹴りつける。

 

「アグニモン!? それにフェアリモンにボコモン、ネーモンまで!」

 

レーベモンが続けて驚愕する。

 

「久し振りだな、レーベモン」

 

アグニモンがそう呼びかける。

その言葉だけで、レーベモン……輝一は悟った。

 

「生きていたんだな……!」

 

喜びを伺わせる声色でそう言う。

 

「俺がそう簡単に死ぬかよ」

 

アグニモンはそう答える。

 

「おおっ! あれは紛れもなく伝説の十闘士の1人、『闇』のレーベモンじゃマキ!」

 

ボコモンがそう叫ぶ。

 

「別に態々言わなくても知ってるし」

 

ネーモンがツッコミを入れる。

 

「むっ! やかましいわい!」

 

「アイタッ!?」

 

ネーモンにゴムパッチンを食らわせるボコモン。

変わり無い仲間の姿を見て、思わず顔がほころぶレーベモン。

そして、

 

「そっちのフェアリモンは………」

 

「優花だ」

 

「ッ………! そうか」

 

一瞬驚くが、頷くレーベモン。

その直後、再び穴の開いた天井から人影が飛び降りて来る。

それは、白い髪に黒コートを纏った青年。

続けて、その隣に白く長い髪に聖職者のような服装をした女性が着地する。

更に金髪の少女が降ってきて青年が抱き留めると、金髪の少女が魔法を発動。

続けて振って来たウサミミの少女と、エメラルドグリーンの少女を抱いた黒髪で着物を着た女性がその魔法をクッションにして地面に降り立つ。

そして最後に、真っ黒い服を着た少年が着地に失敗しつつ、

 

「皆………! 助けを呼んできたぞ………!」

 

地面に倒れ込みながら、その少年、浩介がそう言った。

 

「「「「「遠藤(君)!?」」」」」

 

クラスメイト達が驚く。

すると、

 

「ハジメ! そいつらの護りを頼む! 香織! 雫達を治療してくれ!」

 

ヴォルフモンがそう叫ぶ。

 

「任せて!」

 

「うん!」

 

白い髪の2人、ハジメと香織が返事をした。

 

「え………? 香織………? 南雲君………?」

 

雫が、ヴォルフモンが口にした名前に一瞬呆然となる。

すると、香織が振り返って駆け寄って来る。

 

「香織! 無事で…………!」

 

光輝が立ち上がって出迎えようとしたが、

 

「雫ちゃん!」

 

香織は光輝には目もくれず、傷付き、石柱に背中を預ける雫に駆け寄った。

 

「酷い怪我………! 大丈夫? 雫ちゃん……!」

 

「香織………本当に香織なの………!?」

 

確認する様に涙を滲ませ、そう叫ぶ雫。

 

「うん、そうだよ! ちょっと見た目が変わっちゃったかもしれないけど、雫ちゃんの幼馴染で親友の、白崎 香織だよ!」

 

改めて名乗る香織に、雫は思わず涙を零し、

 

「よかった………! 本当に良かった………!」

 

縋る様に香織の肩を掴み、頭を香織の胸に当てる雫。

 

「心配かけてゴメンね………雫ちゃん。大丈夫だよ、私はここに居るから………」

 

安心させるようにそう言い聞かせるように言う香織。

すると、

 

「ゴホッ! ゴホッ!」

 

雫が咳き込んで血を吐いた。

 

「あっ! 大丈夫雫ちゃん!? 待ってて! すぐに治すから!」

 

香織がそう言うと、

 

「わ、私よりもメルド団長を先に………まだ生きてるわ………」

 

雫はそう言って香織の魔法を止めようとした。

しかし、

 

「メルド団長も酷い怪我だね…………大丈夫! 皆纏めて治すから!」

 

香織はその場で杖を掲げると、

 

「〝回天〟!」

 

光の波動が広がり、クラスメイト達とメルドを包み込む。

すると、

 

「これは………身体が………!」

 

雫が重傷だった自分の傷が、見る見るうちに治癒されていく事に気付く。

 

「…………うっ………!」

 

意識が無く重体だったメルドも全快近くまで回復し、意識を取り戻した。

 

「す、すげぇ………!」

 

龍太郎が、傷だけ塞いでいた自分の背中も完全に治癒された事に驚愕の声を漏らす。

 

「……一瞬であれだけの人数を回復させただと………死にかけの騎士まで………!?」

 

魔人族の女が香織の治癒魔法の力に驚きの声を漏らす。

しかも、今香織が使ったのは、中級範囲回復魔法の回天。

それが並の治癒師達が使う上級回復魔法以上の回復力を見せた。

彼女の驚きもその為だ。

 

「一応皆生きてるみたいだね」

 

ハジメが皆を見渡しながらそう言った。

 

「南雲………なのか………?」

 

髪が白く、目が赤くなっているが、その面影から光輝が驚きながらそう漏らす。

 

「まあね」

 

「生きていたのか…………」

 

「ッ………………!」

 

その時、1人の生徒が歯を食いしばった事をハジメは見逃さなかった。

だが、今はスルーし、

 

「皆はここを動かないで」

 

ハジメはそう言うと、迫りくる魔物達に向き直る。

 

「南雲!? 何をする気だ!? 君じゃ無理だ!」

 

光輝は『無能』だった頃のハジメから変わっていないとの判断からそう叫ぶ。

すると、

 

「心配しなくても大丈夫だよ、天之河」

 

そう言って来たのはいつの間にか光輝の隣に移動してきた浩介。

 

「遠藤!? だが『無能』の南雲じゃ………!」

 

光輝がそう言いかけた瞬間、

 

―――ドパンッ!

 

銃声が鳴り響いた。

何も無い空間からキメラが現れ、倒れ伏す。

その頭は弾け飛んでいた。

 

「なっ!?」

 

光輝は絶句した。

更に猫のような魔物が素早い動きで近付いてくるが、ハジメはドンナーとシュラークを構えると、連続して銃声が鳴り響き、光輝達が捉えるのも苦労した猫のような魔物を一発も外さずに撃ち抜いて行く。

 

「お、おい……ありゃ銃か………?」

 

龍太郎がハジメの持っている物を見て驚きながら訪ねる。

 

「ああ。南雲の奴が一から作り上げたらしいぜ。ここに来るまでに出会った魔物も全部雑魚扱いだった。ベヒモスですら一撃だったし」

 

浩介がそう言う。

因みにベヒモスはガルムモンに無視された後、途方に暮れていたが、あとからやって来たハジメ達に意気揚々と咆哮を上げた瞬間に頭を撃ち抜かれた。

 

「マジかよ………」

 

「ほえ~………」

 

龍太郎と鈴が呆然とした声を漏らした。

 

「〝蒼龍〟」

 

「うりゃぁあああああああああああっ! ですぅ!」

 

「ふっ………! はっ………!」

 

ユエとシアが近付く魔物を焼き払い、戦槌で叩き潰す。

更にティオはミュウを抱いたまま炎の魔法で襲い来る魔物を次々と焼き払って見せる。

 

「因みに聞きたいんだけど、君らと一緒にやって来たあの巨人達は何だい? 輝一や輝二が変身した姿にも似てる気がするけど?」

 

恵理がそう問いかけた。

 

「ああ。俺もマジで信じられないんだけど………あの茶色い巨人は清水だ」

 

「ハリケーンボンバー!!」

 

「「「「「「「「「「……………………は?」」」」」」」」」」

 

浩介の言葉と、回転しながら両腕で魔物達を粉砕するギガスモンを見て、クラスメイト達とメルドは素っ頓狂な声を漏らした。

 

「それで、あの蝶の羽が生えた妖精みたいな姿なのは園部さんだ」

 

「ブレッザ・ペタロ!!」

 

「「「「「「「「「「…………………へ?」」」」」」」」」」

 

竜巻を発生させて魔物達を吹き飛ばすフェアリモンを見て、再び素っ頓狂な声を漏らす。

 

「最後にあの赤い鎧を纏った奴は、神原だよ」

 

「バーニングサラマンダー!!」

 

「「「「「「「「「「なっ…………………!?」」」」」」」」」」

 

炎を放つアグニモンに驚愕の声を漏らす一同。

 

「神原も生きていたのか!?」

 

光輝が信じられないといった声を漏らす。

 

「だが、あの姿は一体…………?」

 

光輝が疑問の声を漏らすと、

 

「あれは伝説の十闘士のスピリットで、拓也はん達が『進化』した姿じゃマキ!」

 

その疑問に答える声がした。

ボコモンとネーモンが彼らに歩み寄る。

 

「なっ!? 何だこいつら!?」

 

光輝が反射的に聖剣を構えた。

しかし、その前に杖が突き出され、

 

「ボコモンとネーモンは敵じゃないよ」

 

香織がそう言った。

 

「か、香織………」

 

すると、

 

「ワシはボコモンじゃマキ」

 

「僕、ネーモン。よろしく~」

 

2人は自己紹介する。

 

「ボコモンとネーモン? その名前って、輝一達が話してた物語に出て来る、皆と一緒に旅をしたって言う………」

 

恵理が聞き覚えのある名にそう言うと、

 

「うん。その2人だよ。あの話は実際に神原君達が体験した実話だったんだって」

 

香織がそう説明する。

すると、雫がハッとして、

 

「じゃ、じゃあ輝二達が変身したあの姿って………」

 

「輝二はんが進化した姿が伝説の十闘士の1人、『光』の闘士ヴォルフモン。輝一はんが進化したのが同じく伝説の十闘士の1人、『闇』の闘士レーベモンじゃハラ。そして拓也はんが進化したのが『炎』のアグニモン。優花はんが進化したのが『風』のフェアリモン。幸利はんが進化したのが『土』のギガスモンじゃマキ!」

 

ボコモンがそれぞれの説明をした。

その時、全ての魔物達が倒された。

 

「どうやら打ち止めの様だな?」

 

ヴォルフモンが魔人族の女に向かって言い放つ。

魔人族の女は悔しそうに歯ぎしりをした後、突如ニヤリと笑い、

 

「〝落牢〟!!」

 

予め詠唱しておいて温存しておいたであろう上級石化魔法を放った。

 

「これはさっきの……!」

 

レーベモンが警戒の眼差しを向け、一旦飛び退いた。

しかし、

 

「フッ………」

 

ヴォルフモンは不敵な笑みを浮かべると、自らその煙の中に突っ込んだ。

 

「ヴォルフモン!?」

 

レーベモンが驚愕の声を上げる。

 

「ハッ! バカな奴だ! アンタがどれだけ強くても、この煙に触れたらこっちのもんさ! さて……どんな石像が出来上がってるだろうね」

 

魔人族の女が薄ら笑いを浮かべながら煙が晴れるのを待っていた時、

 

「ッ!?」

 

その煙を切り裂いてヴォルフモンが現れ、その首筋に光の剣を添えていた。

 

「………冗談だろ? 一体どんなトリックを使ったんだい?」

 

驚愕を通り越して唖然となり、そう聞き返す魔人族の女。

すると、

 

「残念だが、対象に直接作用する魔法はデジモンには通用しない」

 

そう言い放つヴォルフモン。

これは、優花や幸利のビーストスピリットの制御訓練の中で分かった事だ。

制御に失敗し、暴走したシューツモンやギガスモンを抑える際、ダメージを負ったアグニモンやヴォルフモンを香織が回復させようとしたが、アグニモンやヴォルフモンには効果が無かった。

それから色々実験するうちに、デジモンには対象に直接作用する魔法………つまり治癒魔法や状態異常魔法は効果が無い事を突き止めたのだ。

 

「おそらく生物としての構造が根本的に違うからだろうな。魔法によって引き起こされる熱や冷気、衝撃には影響を受けても、魔法そのものはデジモンには効かないのさ」

 

「何だって………!?」

 

ヴォルフモンの言葉に魔人族の女は驚愕する。

 

「さて、お前には聞きたい事がある。どこでデジモン………不死身の生物を従える事ができた?」

 

「ッ………答えると思うのかい? 人間族の有利になるような事を…………」

 

「少なくとも、デジモンを配下に加えたのはここ最近の事だろう? デジモンの事をよく知らないことがその証明になる」

 

「ッ……………!」

 

ヴォルフモンの言葉に僅かな動揺が伺えた。

 

「そしてデジモンを配下に出来たのも何者かの手引きがあったと予想する。デジモンが不死身だと嘘でも吐かれたか?」

 

「クッ………!」

 

魔人族の女は悔しそうに歯を食いしばった。

 

「そんなウソつきの為に、命を張る必要は無いと思うがな」

 

「それは……………」

 

魔人族の女が口を開こうとした。

その瞬間、

 

「ッ………!? ガハッ!?」

 

その胸から刃が飛び出した。

 

「何ッ!?」

 

驚愕するヴォルフモン。

 

「余計な事を口走って貰っては困るな」

 

魔人族の女の背後に、赤いフード付きのマントを纏った死神のような姿をした存在が現れた。

その手に持つ巨大な鎖鎌の刃で魔人族の女の胸を背後から貫いていた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【Digimon Analyzer】

 

 

 

ファントモン:完全体 ゴースト型 ウィルス種

 

必殺技:ソウルチョッパー

 

 

備考: 巨大な鎖鎌を持った死神のようなデジモン。体を覆う布の中身は別次元のデジタルワールドに通じていると言われ、必殺技は巨大な鎖鎌で敵の魂をも切り裂く『ソウルチョッパー』。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「貴様!」

 

ヴォルフモンがファントモンに斬りかかる。

 

「おっと………」

 

ファントモンは刃を抜くとひらりと空中に身を躍らせる。

 

「私の役目は済んだ。ここは退かせてもらおう」

 

ファントモンはそう言って迷宮の壁をすり抜けて姿を消した。

 

「ッ…………! 逃げたか」

 

逃がした事を悔しそうにして拳を握りしめる。

 

「…………………………」

 

ヴォルフモンは息絶えた魔人族の女の亡骸を見つめる。

結果的に危機は脱したものの、後味の悪い終わりになってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

勇者パーティーの危機を救い、地上へ戻った一行。

次の大迷宮へ向かおうとする彼らを雫が呼び止める。

呼び止めた彼女の真意とは?

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

第21話 告白と別離。雫の『選択』。 

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 

 

 

 






はい、第20話の完成です。
ヴォルフモンとレーベモンが中心の無双となりました。
でもってカトレアに止め刺したのはハジメでも仲間の誰かでも無く何と突然現れたファントモン。
真実は未だ謎の中って事で。
それでは次回もお楽しみに。


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