火山の噴火と共に外に飛び出る潜水艇と、それを担ぐヴリトラモン。
潜水艇の中では、
「ふう………何とか無事脱出できたね…………」
ハジメが呟く。
そう言いながら周りを窺ったがフリード達の姿は無い。
噴火に巻き込まれないよう退避した様だ。
「今回は生きた心地がしなかったですぅ………!」
シアも極度の緊張感から解放されたようにホッとしながらそう零した。
「ヴリトラモン様様だな」
幸利も息を吐きながらそう言った。
ヴリトラモンは、潜水艇を担いだままアンカジの方へ向かって飛んでいった。
アンカジでは、今まで噴火した事のないグリューエン火山が突如噴火した事で、動揺が広がっていた。
「ハジメ君………」
「輝二…………」
「輝一………」
香織、雫、恵理の3人が噴火したグリューエン火山を見つめながら心配そうな声を漏らす。
「きっと大丈夫じゃハラ」
ボコモンがそんな3人にそう言う。
「そうそう。拓也達なら大丈夫だよ~」
ネーモンも、そこまで心配した様子は無い。
「それはそうだけど………」
それでも心配だと再び香織は火山の方向を見つめる。
すると、
「……………………あっ!」
香織が何かに気付いた。
香織の視線の先には、火山弾とは明らかに違う動きでアンカジの方に向かってくる影。
その影が近付くにつれ、その全貌が明らかになる。
それは、潜水艇を担いだヴリトラモンだ。
それを見た香織達は思わず駆け出した。
アンカジの広場にヴリトラモンが着地し、潜水艇を降ろすと中からハジメ達が出て来る。
香織、雫、恵理は思わず恋人達に抱き着き無事を喜んだ。
ボコモン達も、拓也や優花、幸利を労った。
採掘した静因石を取り出すと、早速患者達に配られ始めた。
拓也達もその手伝いを行い、3日後には香織の力が必要な患者は居なくなり、一行はアンカジを後にした。
再び魔力駆動四輪で砂漠を横断し、大陸とエリセンを繋ぐ港に到着する。
そこで一行は定期船に乗ってエリセンに向かう事にした。
潜水艇でも行けないことは無いが、常識的に考えて騒ぎになると思い、定期船で行く事になった。
運良く翌日の便の予約が取れた一行は、宿に一泊する事にした。
ホルアドに到着してから久々にゆっくり休むことができる事もあり、恋人が居る者達は何も起きない筈が無く………………
翌日の早朝。
各部屋の扉が3つ並んだ宿の廊下。
その3つの扉がほぼ同時にガチャリと開いた。
「「「「「あ……………………」」」」」
その部屋から出てきた者達がバッタリと顔を合わせ、同時に声を漏らした。
まず、一番左の部屋から出てきたのは輝一と恵理。
2人はお互いの腕を絡め合って………というか、恵理が輝一の腕に抱き着いている形だが、これはまあ、いつも通りの光景だろう。
次に真ん中の部屋から出てきたのは輝二と雫。
輝二は平静を装っているが、その頬は若干赤く、雫は輝二の背に隠れながら、顔を赤くしていた。
そして、左の部屋から出てきたのは、拓也と優花。
この2人は例の如く優花がぐったりとなって拓也に背負われている。
「「「「「…………………」」」」」
6人…………優花はぐったりしているので、正確には5人だが、何とも言えない気まずい雰囲気が流れた。
要は3組とも昨夜は夜を共にしたという事だ。
拓也と優花は言わずもがな。
輝二と雫も恋人同士になってから初めての野宿以外の落ち着いた夜なので雰囲気に流されて。
輝一と恵理は、拓也達が合流するまでも一緒だったが、拓也達が行方不明の間はそういう雰囲気になれるはずもなく、輝二達と同じく初めての落ち着ける夜だったので、遂に大人の階段を上ったのだ。
「あ~、あはは…………お前らもか?」
拓也が苦笑しながらそう聞く。
「ま、まあな…………」
「ううっ………!」
輝二は頬を染めながらそっぽを向くが否定はせず、雫は恥ずかしそうにポニーテールを顔に巻いている。
「僕達も、漸く身も心も結ばれる事が出来たよ!」
恵理が恥じらいも見せずに堂々と宣言する。
「ははは………」
その様子に輝一は思わず苦笑した。
すると、
「おはよう、ご主人」
廊下を歩いてティオが現れ挨拶する。
「ああ。おはようティオ」
拓也はそう返すと、
「優花は大丈夫かの?」
ティオは拓也の背中でぐったりしている優花を顔を覗き込んだ。
「ううっ………」
優花は辛そうに呻くだけだ。
「ほれほれ。そう意固地にならんでも、そろそろ妾も閨に呼んでくれんかのう? その様子では、1人では辛かろう?」
すると、優花はもぞもぞと顔を上げ、
「………………うっさい」
疲れ果ててはいるものの、気丈にもティオを睨み付けてそう答える。
「強情じゃの………」
呆れを通り越して感心すら覚える優花の気の強さに、ティオはそう零した。
そして香織の回復魔法で優花が復活した後、一行は定期船に乗ってエリセンへと向かった。
「あっ、ハジメさん! 見えてきましたよ! 町ですぅ!」
「へ~、ほんとに海のド真ん中にあるんだ」
船の甲板の上で、シアがエリセンの町を指差しながら叫び、ハジメも物珍しそうに眺める。
船が桟橋の1つに停泊する。
架けられた橋を渡ってエリセンの町に降り立つ一行。
ハジメは、最初はエリセンの町長を訊ねて事情説明と共にミュウの護送依頼の完了を行うつもりだったのだが、
「パパ、パパ。お家に帰るの。ママが待ってるの! ママに会いたいの」
ミュウにそう言われてしまえばハジメに否という選択肢は無い。
「……………そうだね……早く、会いに行こう」
ミュウに急かされながら、報告はあとでいいかと思い直し、ミュウに引っ張られながら歩みを進めた。
一方、エリセンの一角にあるとある民家。
そこには、ミュウに似た顔立ちをした、1人の海人族の女性がいた。
この女性こそミュウの母親であるレミアだ。
しかし、美しいと評判の筈のその表情は暗く、あまり眠れていないのか目元に隈もあった。
レミアは足に怪我をしており、歩く事も泳ぐことも儘ならなかった。
しかし、レミアの表情が暗い原因は、足のケガよりも愛娘であるミュウを攫われたからだ。
レミアも攫われそうになっていたミュウに気付き、何とか取り返そうとしたが、返り討ちにあってしまい、このザマだった。
「ミュウ…………」
レミアはベッドに腰掛けながらその名を呟く。
身の回りの世話は、近所の海人族達が手伝ってくれて何とかなっているものの、精神的に参ってしまっていた。
攫われてしまったミュウは奴隷として売り飛ばされ、まともな人生など遅れる筈が無いだろう。
いや、それどころか、グリューエン大砂漠の過酷な環境に耐えきれず、既に死んでしまっている可能性だってある。
「ミュウ………!」
次から次へと悪い予想が浮かんできて、レミアの精神を擦り減らす。
レミアはポロポロと涙を零した。
と、そんな時、
―――コンコン
不意に玄関の扉がノックされた。
「ッ!?」
レミアはハッとなって涙を拭うと、杖を持って立ち上がった。
きっとまた近所の人が様子を見に来たのだろうとレミアは思った。
杖を突きながら辛そうに玄関の前に辿り着く。
そして、
「はい、何でしょう…………?」
玄関の扉を開けて、要件を伺おうと訊ねた瞬間、
「ママッ!!」
ドンッと突然レミアの身体に衝撃が走った。
「きゃっ!?」
杖で何とか立っていたレミアはその衝撃に耐えきれずに尻餅を着いた。
だが、
「ママッ……! ママッ………!!」
レミアの胸に涙を流しながら縋り付くその姿を見て、レミアは一瞬固まった。
「ッ…………!?」
息を呑んで言葉を失う。
「ママッ……………!」
だが、その胸に抱き着く温もりが、これが夢でないと教えてくれる。
「ミュ、ミュウ…………?」
「うん! ミュウなの!」
半ば確かめるように呟いた娘の名前に、ミュウはハッキリと頷いて答えた。
「ッ! ミュウッ!!」
今度こそレミアはミュウをしっかりと抱きしめた。
「ミュウ………ミュウ……!」
レミアは涙を流しながらミュウを抱きしめる。
「ミュウ……ごめんなさい。守ってあげられなくて………」
人攫いから護れなかった事を謝罪するレミア。
「大丈夫なの。ママ、ミュウはここにいるの。だから、大丈夫なの」
「ミュウ……」
母親を気に掛けるミュウの姿。
それは、短いながらもハジメや拓也達との交流で培った、ミュウの成長の証だろう。
そんなミュウの姿に、母親であるレミアは目をパチクリとさせて驚いていた。
レミアはミュウに微笑みかけると再び抱きしめる。
すると、突然ミュウが叫び声を上げた。
「ママ! あし! どうしたの! けがしたの!? いたいの!?」
ミュウの言う通り、彼女のロングスカートから覗いている両足は、包帯でぐるぐる巻きにされていた。
レミアは慌てて大丈夫と伝えようとしたようだが、それよりも早く、
「パパぁ! ママを助けて! ママの足が痛いの!」
「えっ!? ミ、ミュウ? いま、なんて……」
「パパ! はやくぅ!」
「あら? あらら? やっぱり、パパって言ったの? ミュウ、パパって?」
ミュウは世界一頼りにしている『パパ』へと助けを求めた。
すると、今の今まで気づいていなかったが、レミアの前にはハジメを先頭に拓也達が居た。
ミュウに助けを求められた『パパ』であるハジメは苦笑しながら、
「パパ、ママが……」
「大丈夫だよ、ミュウ……ちゃんと治るから。だから、泣きそうな顔しないで」
「はいなの……」
ミュウを宥める様にそう言うと、レミアに向きなおり、
「えっと………詳しい話は後でしますので、今はちょっと失礼しますね?」
「え? ッ!? あらら?」
ハジメは一言断りを入れると、レミアを抱き上げた。
それも横抱き………俗にいうお姫様抱っこである。
ハジメはレミアをソファに座らせると、香織に治療を頼んだ。
「香織、どう?」
「ちょっと見てみるね……レミアさん、足に触れますね。痛かったら言って下さい」
「は、はい? えっと、どういう状況なのかしら?」
目まぐるしく変わる事態にレミアはついて行けない様だ。
やがて香織の診察が終わると、
「うん、大丈夫。私の治癒魔法で十分治せるよ。念のために明日一日かけて、ゆっくり治そうと思う」
香織の言葉を聞き、
「あらあら、まあまあ。もう、歩けないと思っていましたのに……何とお礼を言えばいいか……」
「ふふ、いいんですよ。ミュウちゃんのお母さんなんですから」
「えっと、そういえば、皆さんは、ミュウとはどのような……それに、その……どうして、ミュウは、貴方のことを〝パパ〟と……」
漸く頭が追いついて来たのか、レミアはハジメにそう尋ねた。
ハジメは、事の経緯を説明する。
フューレンでのミュウとの出会いと騒動、そしてパパと呼ぶようになった経緯など。
全てを聞いたレミアは、その場で深々と頭を下げ、涙ながらに何度も何度もお礼を繰り返した。
「本当に、何とお礼を言えばいいか……娘とこうして再会できたのは、全て皆さんのおかげです。このご恩は一生かけてもお返しします。私に出来ることでしたら、どんなことでも……」
「………気にしないでください」
ハジメはそう言うがレミアは納得しない。
とりあえず今日の宿を探す事を口実にハジメがこの場を離れようとした時、レミアはこれ幸いと自宅に泊まることを勧めた。
「どうかせめて、これくらいはさせて下さい。幸い、家はゆとりがありますから、皆さんの分の部屋も空いています………流石に全員は無理ですが………エリセンに滞在中は、どうか遠慮なく。それに、その方がミュウも喜びます。ね? ミュウ? ハジメさん達が家にいてくれた方が嬉しいわよね?」
「? パパ、どこかに行くの?」
ミュウは目をパチクリさせて首を傾げる。
ミュウにとって、ハジメが自宅に泊まることは当然の様だ。
「母親の元に送り届けたら、少しずつ距離を取ろうかと思っていたんですけど……」
「あらあら、うふふ。パパが、娘から距離を取るなんていけませんよ?」
「いや、それは説明したでしょう? 僕達は……」
「いずれ、旅立たれることは承知しています。ですが、だからこそ、お別れの日まで〝パパ〟でいてあげて下さい。距離を取られた挙句、さようならでは……ね?」
「……それも………そうですね……」
「うふふ、別に、お別れの日までと言わず、ずっと〝パパ〟でもいいのですよ? 先程、〝一生かけて〟と言ってしまいましたし……」
レミアがそう言った瞬間、香織の眼がキラリと光った。
「本気ですか………!?」
「え………?」
「本気で、ハジメ君の『妻』になる気があるんですか?」
香織の眼は真剣だ。
反対したり責めているわけではない。
単純な『確認』だ。
それでも、香織はこれ以上無いほど真剣だった。
「か、香織………?」
ハジメが香織の反応に困惑した。
すると、
「…………………少なくとも、今言った言葉に嘘はありません」
レミアも真剣な表情で返した。
香織もその目を見つめ………………
「……………………それなら、私は反対しません」
そう答えた。
「香織!?」
その答えに驚くハジメ。
すると、
「あ~、じゃあ、俺達はお邪魔みたいだから退散するとしますか」
拓也が立ち上がる。
「そうね。ここからは本人達の問題だわ」
優花も立ち上がる。
「依頼の完了の報告は、俺達の方でやっておこう」
輝二も続き、
「…………え? ほっといて良いのコレ……!?」
雫は困惑しつつも輝二につられ、
「あはは…………」
輝一は苦笑しつつも止めはせず、
「ごゆっくり~」
恵理は煽る様にそう言う。
「ハジメ…………爆発しろ」
幸利はその一言だけを送り、
「まあ、いつものパターンじゃマキ」
「いつものパターンだね~」
ボコモンとネーモンは特に疑問を持たず。
「さてミュウよ。ハジメ達とレミア殿はこれから大事な話があるそうじゃ。依頼の報告もある故、今日は妾達についてきて欲しいのじゃ」
「ふえ?」
ティオがミュウをヒョイと抱えると、その豊満な胸に抱きしめながらレミア宅を出た。
「み、皆…………!?」
残されたハジメは、
「さてハジメ君? 皆が気を遣ってくれた事だし、ゆっくりと仲を深めようね?」
香織がそう言い放つ。
この時のハジメは、肉食獣に囲まれた草食獣の気分だったらしい。
尚、翌日のレミアの肌は、やたらツヤツヤしていたという。
次回予告
ミュウ達と一旦別れ、メルジーネ海底遺跡へと向かう拓也達。
ラーナモンの力もあり、順調に迷宮を進んでいく。
彼らが迷宮の先で見た物とは?
次回、ありふれたフロンティアへ
第25話 メルジーネの試練
今、ありふれた伝説が進化する。
はい、第24話です。
原作通りではつまらないと思ったので、今回の再会はサプライズ的なものにしてみました。
そして、本当のパパになって発言は何と…………
次回はラーナモン無双になりそうな?
『鋼』のスピリットの形態はどうする?
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メルキューレモン、セフィロトモンのまま
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既存の別デジモンを引っ張って来る
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オリジナルデジモンで!