凄惨な光景を見せつけられた拓也達は、船の中の探索を開始した。
「さっきの光景……終戦はしたが、あの王が裏切ったということなのかの?」
ティオがふと口にする。
「そうみたいだけど……ただ、ちょっと不自然じゃなかった? 壇上に登った時は、随分と敬意と親愛の篭った眼差しを向けられていたのに……内心で亜人族や魔人族を嫌悪していたのだとしたら、本当に、あんなに慕われると思う?」
ハジメがそう言う。
「……そうだね……あの人の口ぶりからすると、まるで終戦して一年の間に何かがあって豹変した……と考えるのが妥当かも……問題は何があったのかということだけど」
「まぁ、神絡みなのは間違いないな。めっちゃ叫んでたし。危ない感じで」
「うん、イシュタルさんみたいだった……トリップ中の。痛々しいよね」
それぞれが考察を口にする。
そんな話をしながら船内を進んでいると、ハジメのライトが何かを照らし出した。
それは白いドレスを着た女の子だった。
女の子が俯いてゆらゆらと揺れながら廊下の先に立っていたのだ。
こんな大迷宮に唯の女の子がいる訳がないため、その光景に猛烈に嫌な予感がする一同。
すると突然その女の子が倒れ込み、何処かの都市伝説の如く、手足があり得ない角度に曲がって蜘蛛の如く手足を動かして突っ込んできた。
その瞬間、
「いやぁああああああああああああああああああああああああっ!!!???」
香織の絶叫が響く。
「うわっ!? 落ち着いて香織! 腕を掴まないで!」
香織がハジメの腕を思い切り掴んでいるせいでハジメはドンナーを抜くことが出来ず、ホラー少女はどんどん近付いてくる。
ケタケタ笑い声を上げながら近付いてくるその姿は正に妖怪。
そのホラー少女が飛び掛かってきて、
「リヒト・ズィーガー!!」
光の魔力を纏わせた輝二の一閃によって真っ二つにされた。
「あ、ありがとう輝二………助かったよ………」
ハジメが輝二にお礼を言う。
「大したことは無い」
輝二はそう言って気にしない様に言う。
それからハジメは腕に捕まっている香織に視線を向け、
「香織って、こういうの苦手なの?」
「……得意な人なんているの?」
「魔物と思えばいいんじゃないかな?」
「……ぐすっ、頑張る」
そうは言いつつも、香織の手はハジメの裾を離さない
「香織は昔からお化け屋敷とか駄目だったからね~…………」
雫が苦笑する。
そのまま先へ進む。
廊下の先の扉をバンバン叩かれたかと思うと、その扉に無数の血塗れた手形がついていたり、首筋に水滴が当たって天井を見上げれば水を滴らせる髪の長い女が張り付いて俺達を見下ろしていたり、ゴリゴリと廊下の先から何かを引きずる音がしたかと思ったら、生首と斧を持った男が現れ迫ってきたり。
「いやぁあああああああああっ!!」
「来ないでぇえええええええっ!!」
「もう嫌ぁあああああああああああっ!!」
その度に香織の絶叫が響く。
一応襲い掛かって来るお化けは他のメンバーが対処できる程度なので、香織なら楽勝の筈だが、実際の強さと見た目の怖さは別らしい。
「えっぐ………ぐす…………雫ちゃ~ん…………!」
「よしよし………ほら、泣かないの…………」
香織が雫に泣き付き、雫が香織を慰めている。
因みにこれは昔からお化け屋敷に入った時の毎度の光景らしい。
そのまま進んで船倉に入ると、お約束の様に勝手に扉が閉まり、船倉の中に何故か霧が発生する。
更に今度は物理トラップがあって四方八方から矢が飛んできたが、拓也達の前には無意味。
全て叩き落される。
しかし、その直後に霧が渦巻いて暴風が吹き荒れた。
「きゃっ!?」
その暴風と共に、優花が霧に絡み付かれるように引っ張られ、吹き飛ばされる。
「優花っ!?」
拓也が咄嗟に手を伸ばすが、その手は空しく空を切り、優花は通路の奥へ吹き飛ばされてしまう。
「ッ!?」
拓也は急いで後を追おうとしたが、その前に亡霊のような騎士や戦士が立ち塞がった。
「邪魔をするな!」
拓也は大剣を構え、騎士達と相対する。
ハジメや輝二達の力もあり、程なく全滅させることに成功する。
「ッ……優花!」
拓也はすぐに優花が吹き飛ばされた方へ駆け出そうとした。
すると、
「ここよ………拓也………」
優花の声が聞こえ、拓也がそちらを向くと、そこに優花が立っていた。
見る限り、怪我があるようには見えない。
「良かった……! 無事だったか………!」
拓也は安堵の息を吐きながら優花に駆け寄ろうとした。
その時、
「待って! 拓也!」
ハジメが叫んだ。
「ハジメ………?」
ハジメの強い言葉に拓也は思わず足を止め、振り向く。
そのハジメは、厳しい目付きで優花を見つめ、
「あれは園部さんじゃない……!」
そう口にした。
「優花じゃない……? どういう事だ?」
拓也は思わず聞き返してしまう。
何処からどう見ても優花の姿だからだ。
「正確には、園部さんに『何か』が取り憑いてるんだ………!」
ハジメがそう言い放つと、
「……………フッ、フフフフッ!」
優花が怪しい笑い声を零した。
そして顔を上げると、
「つまんなぁい! バレちゃった~!」
明らかに優花とは違う妖しい笑みで、そう口にした。
「まあ、それが分かった所で如何する事も出来ない………もう既にこの女は私が掌握している。もし私を消滅させればこの女も壊れるわ」
「なっ!?」
その言葉に拓也は驚愕の表情をする。
「さあどうする? この女ごと私を殺せる!?」
まるで突きつける様に選択を強いろうとする。
すると、
「あ~、香織? ちょっとあいつの動き止めてくれない?」
恵理が何でも無い様な声色で香織に呼びかけた。
「えっ? うん、わかった。〝縛光鎖〟!」
香織は一瞬戸惑ったが、恵理の言う通りに光の鎖で優花を縛り上げる。
「くっ!? 無駄よ。動きを止めた所で私がこの女から出て行くなんて思わない事ね……!」
縛り上げられても強気な態度を崩さない優花に取り憑いた亡霊。
すると、その前に恵理が歩いて行き、
「うるさいよ」
右手で優花の頭を掴む様な仕草をしてその手を上に上げると、優花の身体から目、鼻、口が深淵のような闇色に染まった顔を持つ女の亡霊が引き剥がされた。
『なっ!? どうして!?』
女の亡霊は狼狽える。
「忘れてると思うけど、僕の天職は〝降霊術師〟なんだよ。亡霊やら何やらは僕の専門分野って事さ」
『そっ、そんな…………!』
予想外だと言わんばかりに女の亡霊は慌てる。
だが、
「さて、こいつは如何する?」
恵理が意味ありげな笑みを浮かべながら、拓也へ視線を移した。
そこには、
「………貴様………! 俺の『大切』な恋人に手を出した事………地獄で後悔しろ!!」
拓也は大剣を引き抜くと、その剣に炎のエネルギーが集中していく。
「それじゃ、バイバーイ!」
恵理はそんな気軽な声を掛けながら、女の亡霊を放り投げ、
「炎龍撃!!」
その亡霊に向かって拓也の剣の切っ先から莫大な炎のエネルギーが放たれ、呑み込んだ。
『ぎゃぁああああああああああああああああああっ!?!?』
断末魔の叫びを上げながら消え去る亡霊。
それを確認すると、
「優花!」
拓也は優花に駆け寄る。
優花は亡霊を引き剥がしたところで床に倒れていた。
拓也は優花を抱き起こす。
すると、優花がゆっくりと目を開けた。
「大丈夫か?」
拓也がそう言うと、
「ええ…………ごめんなさい…………不覚をとったわ………」
優花は申し訳なさそうに謝る。
「いいさ。助け合うのが『仲間』だ」
拓也は気にしない様に言う。
優花は立ち上がると、
「恵理、あなたにもお礼を言わなきゃね。助けてくれてありがとう」
優花はそう言って頭を下げた。
「別にお礼を言われるほどの事はしてないよ」
恵理は後ろを向いてどうでも良さげにそう言った。
その様子に、相変わらずだと微笑みを向ける一同。
そして、
「さあ、まだ大迷宮の中なんだ。先を急ごう」
ハジメの言葉に全員が頷いた。
周りを確認すれば、船倉の奥の方で転送用だろうと思われる魔法陣が輝いていた。
そこに足を踏み入れ、転送の魔法陣が輝く。
次の瞬間には、神殿の様な建物の中にある4つある魔法陣の1つに転移していた。
「……………魔法陣が4つあるって事は、ここに来るルートも4つあったって事か」
ハジメがそう零す。
それから前を向くと、神殿の中央の祭壇らしき場所には精緻で複雑な魔法陣が描かれていた。
それを見たハジメが目を見開いた。
「…………あれは魔法陣? まさか、もう攻略したの?」
「えっと、何か問題あるの?」
大迷宮攻略が初めての雫はそう聞くが、
「いや、まさかもうクリアとは思わなくて……他の迷宮に比べると少し簡単だった気が……」
「そうだね…………他と比べると確かに少し簡単だったね。ホラーは勘弁だったけど………」
ハジメの言葉に香織も同意する。
「いやいや! ちょっと待ちなさいよ! 十分大変な場所だったわよ。最初の海底洞窟だって、普通は潜水艇なんて持ってないんだから、クリアするまでずっと沢山の魔力を消費し続けるし、下手をすれば、そのまま溺死するし! クリオネみたいなのは、有り得ないくらい強敵だったし、亡霊みたいなのは物理攻撃が効かないから、また魔力頼りになる。それで、大軍と戦って突破しなきゃならないのよ? 十分、おかしな難易度よ!」
雫がハジメ達に突っ込みを入れる。
「そう言われればそうかも……」
「まして、この世界の人なら信仰心が強いだろうし……あんな狂気を見せられたら……」
「余計、精神的にキツいって事だね……」
まあ雫が言いたいことはハジメ達が強すぎるという事だ。
気を取り直して魔法陣に入る一同。
結果は、デジモンであるボコモンとネーモンを除き、全員が攻略者として認められた。
「私も認められたのね………」
雫が意外そうに呟く。
一応雫も戦ってはいたが、他のメンバーと比べれば、内容は何歩も劣るからだ。
「もしかしたら、心を折らずにここまで辿り着くのが試練なのかもしれんのう」
ティオがそう言う。
そして手に入れた神代魔法は、
「ここでこの魔法……大陸の端と端じゃん。解放者ェ…………」
「……見つけた〝再生の力〟」
ハジメが愚痴を零す。
それは、手に入れた【メルジーネ海底遺跡】の神代魔法が〝再生魔法〟だったからだ。
〝再生魔法〟はハルツィナ樹海の大迷宮に挑戦するための必須技能なので、大陸のほぼ東西にある2つの迷宮の位置にハジメは解放者の嫌らしさを感じた。
魔法陣の輝きが消えると、今度は小さめの祭壇のようなモノがせり出てきた。
その祭壇は淡く輝いたかと思うと、次の瞬間には光が形をとりオスカーの時の様に人型となった。
オスカーと同じくメッセージを残したようだ。
そこには海人族と思われる女性の姿が浮かび上がり、オスカーの時と同じ内容を語った。
そして最後に、
『……どうか、神に縋らないで。頼らないで。与えられる事に慣れないで。掴み取る為に足掻いて。己の意志で決めて、己の足で前へ進んで。どんな難題でも、答えは常に貴方の中にある。貴方の中にしかない。神が魅せる甘い答えに惑わされないで。自由な意志のもとにこそ、幸福はある。貴方に、幸福の雨が降り注ぐことを祈っています』
そう締めくくると、光の粒子となって消え去った。
その光が収まると、そこにはメルジーネの紋章が掘られたコインが置かれていた。
「証の数も四つですね、ハジメさん。これで、きっと樹海の迷宮にも挑戦できます。父様達どうしてるでしょう~」
シアはそう言って家族達に想いを馳せる。
若干微妙な顔をしたのは、黒装束を身に纏った忍者集団だったからだ。
すると突然、神殿が鳴動を始めた。
そして、周囲の海水のいきなり水位が上がり始める。
「うわっ!? また強制排出!? 全員、掴み合うんだ!」
「……んっ」
「またこのパターンか!」
「ライセン大迷宮みたいなのは、もういやですよぉ~」
「水責めとは……やりおるのぉ」
それぞれが慌てつつも、簡易宝物庫から、ハジメが『こんなこともあろうかと』と言わんばかりに作っておいた酸素ボンベを装着した。
その時天井が開いて海水が勢いよく流れ込んでくる。
その流れに巻き込まれて海中に放り出された。
ハジメが宝物庫から出した潜水艇に乗り込み、何とか事なきを得る。
そのまま一先ず海上を目指し、そこからエリセンに戻っていくのだった。
次回予告
ミュウやレミアと別れ、旅を再開する拓也達。
そこで偶然にも盗賊に襲われていた商隊を助ける事になる。
そして、その商隊に居た意外な人物とは………?
次回、ありふれたフロンティアへ
第27話 意外な再会
今、ありふれた伝説が進化する。
はい、第26話です。
本当は前回でここまで行きたかったので短いです。
FFⅦ REVERSEやってたのも理由ですけど。
メルジーネの攻略は恵理が居るとイージーモードになる気がする。
次回はアンカジを吹っ飛ばして彼女との再会まで行きます。
では、次もお楽しみに。
PS.今週の返信はお休みします。
『鋼』のスピリットの形態はどうする?
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メルキューレモン、セフィロトモンのまま
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既存の別デジモンを引っ張って来る
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オリジナルデジモンで!