ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第27話 意外な再会

 

 

メルジーネ海底遺跡を攻略した拓也達は、その後も数日間エリセンに滞在していた。

攻略の疲れを癒す事も勿論だが、それ以上にハジメがミュウと別れ辛かったことも大きな理由の1つだろう。

しかし、レミアから諭され、旅立つ決心がついたハジメは、ミュウやレミアと再会を約束してエリセンを後にした。

その後、再びグリューエン大砂漠を横断し、序とばかりにアンカジのオアシスを再生魔法で復活させた後、ハルツィナ樹海に向かって車を走らせていた。

その道中、

 

「ハジメさん、あれって何か襲われてませんか?」

 

最初に気付いたのはシアだった。

その視線の先には、隊商らしき馬車の一団が結界に覆われ、その周囲を40人程の集団が囲っていた。

 

「うん……相手は賊みたいだね。人数は約40人………馬車の護衛は15人ぐらいか………あの戦力差で拮抗してるのは凄いね」

 

「……ん、あの結界は中々」

 

「ふむ、さながら城壁の役割じゃな。あれを崩さんと本丸の隊商に接近できん。結界越しに魔法を撃たれては、賊もたまらんじゃろう」

 

「でも、一向に引く気配がありませんよ?」

 

「まあ、あんな隊商全体を覆うような結界は異世界組でもなければ、そう長くは持たないだろうしね。多少時間は掛かるけど、待っていれば勝手に解けるって算段なんだろうけど………」

 

ハジメはそう言いながら運転席から後ろを振り返り、後部座席に座る拓也達の表情を確認する。

それぞれの表情は、迷いが無く、決意した表情だ。

それを見ると、ハジメも頷き、

 

「行くよ!」

 

アクセルを踏み込んだ。

 

 

 

隊商を囲っている盗賊達は、結界に手を焼きながらも攻撃を加え続けていた。

この規模の結界は、長く保たない事が分かっているからだ。

結界内からの攻撃で数人がやられているが、盗賊達からすれば些細な事。

やがて結界を張っている者の限界が近いのか、結界に罅が入り始めた。

それを見て盗賊達はニヤリと笑い、ここぞとばかりに攻勢を強めた。

そして、間もなく結界が破られる。

誰もがそう思った瞬間だった。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおっ………! らあっ!!」

 

炎の翼を広げた拓也が大剣を振り被りながら上空から急降下。

盗賊が密集していたど真ん中の地面に大剣を叩きつけた。

激突の衝撃と共に地面の土や石が飛び散り、周辺の盗賊達に軽くない怪我を負わせる。

因みに拓也は重力魔法を併用する事で、現在ではほぼ自由自在と言っていい程に飛行が出来るようになっていた。

盗賊や隊商の護衛達の視線が拓也に釘付けになる。

その瞬間、

 

「「はぁああああああああああああっ!!」」

 

スピードのある輝二と雫が一気に駆け抜けて来て、すれ違い様に腕や足を斬ったり、峰打ちで気絶させていく。

混乱していく盗賊達を、リーダーや幹部らしき盗賊が立て直そうとしたが、恵理や幸利の闇魔法で更に場を混乱させ、シアがこれでもかと言う位に盗賊を宙に打ち上げたり、ハジメの非殺傷弾や優花の投げナイフが盗賊達を行動不能に陥らせ、隊商の人間を人質に取ろうとした者も輝一が見逃さず、最終的にユエとティオの範囲魔法で全滅した。

 

 

 

隊商の負傷した者達を香織が回復魔法で治癒していく。

残念ながら既にこと切れていた者たちも居たが。

すると、

 

「雫!」

 

隊商に居たフード付きのローブを纏った人物が雫に駆け寄った。

声からすると少女の様だ。

ズレたフードから覗く金髪と碧眼、そして整った容姿が見て取れた。

その顔を見た雫が目を見開き、

 

「リリィ!? あなたリリィじゃない! 何でこんな所に居るの!?」

 

驚愕の表情と声でそう叫んだ。

 

「私も、こんなところで雫に会えるとは思いませんでした。……僥倖です。私の運もまだまだ尽きてはいないようですね」

 

雫にリリィと呼ばれた少女は笑みを浮かべてそう言った。

 

「リリィ? それってどういう……」

 

雫が尋ねようとした時、

 

「雫ちゃん? 知り合いでも居たの?」

 

香織が不思議そうにしながら歩み寄って来た。

すると、その少女は香織に振り返ると、

 

「…………香織! 香織ですよね!? 雰囲気が変わっていたので危うく気付かない所でした! あなた方の生存は聞いていましたが、無事で本当に良かった!」

 

笑みを浮かべてそう言う少女。

それに対し、香織は一瞬怪訝そうな表情をしたが、何かに思い当たった様にハッとなり、

 

「………………あっ! 誰かと思えばリリアーナ王女!」

 

香織がパンと手を叩いて思い出したと言わんばかりにそう言った。

彼女はその反応に慌ててフードを深く被り直すと、口の前で人差し指を立てて静かにと言うジェスチャーをした。

すると、

 

「……………香織。その子って誰だっけ? いや、何処かで会った記憶はあるんだけど、よく思い出せなくて…………」

 

ハジメが申し訳なさそうにそう言うと、

 

「へっ?」

 

リリアーナが素っ頓狂な声を漏らした。

 

「あ~、ハジメ君? ハイリヒ王国の王女様なんだけど………覚えてない?」

 

「…………ああ! そうだった。王国の王女様だった!」

 

ハジメが納得いった様に頷いた。

 

「ぐすっ、忘れられるって結構心に来るものなのですね、ぐすっ」

 

リリアーナがショックを受ける。

 

「あ~その~………ごめんなさい」

 

ハジメは謝罪する。

雫が苦笑しながら、

 

「それでリリィ。どうしてあなたがこんな所に居るの?」

 

王女である筈のリリアーナが何故護衛も付けずにこんな場所で隊商と共に居たのかを訊ねた。

すると、リリアーナは俯き、

 

「…………愛子さんが………攫われました…………」

 

申し訳なさそうに、驚愕の事実を口にした。

そして、その口からその時の様子が語られ始めた。

 

 

 

 

 

拓也達がホルアドを発ってから約3週間後。

教会が正式に拓也達一行を異端者認定したのだ。

その時王都に戻ってきていた愛子は抗議したが全く聞き入れて貰えず、不自然な程あっという間に異端者認定が決まってしまった。

そして、同じく不自然さを感じていたリリアーナも愛子に相談を持ち掛けた。

王宮内の様子が何処かおかしい事。

父親であるエリヒド国王は、今まで以上に聖教教会に傾倒し、時折、熱に浮かされたように〝エヒト様〟を崇め、それに感化されたのか宰相や他の重鎮達も巻き込まれるように信仰心を強めていった事。

そして、挙句の果てに投獄されていた檜山が姿を消し、同時に様子のおかしい兵士が現れ始めた事。

その事を聞いた愛子は、ハジメ達から聞いた話を夕食の席でするので、リリアーナにも同席して貰う事にした。

そして、夕食の時間になり、愛子が夕食の部屋へ行こうとした時、彼女の前に銀髪の教会修道服姿の女性が現れた。

 

「はじめまして、畑山愛子。あなたを迎えに来ました」

 

銀髪の修道女の言葉に困惑しつつも、愛子は返事をする事にした。

 

「えっと、はじめまして。迎えに来たというのは……これから生徒達と夕食なのですが」

 

「いいえ、あなたの行き先は本山です」

 

「えっ?」

 

有無を言わせぬ物言いに愛子はたじろぐ。

そこで、女性が影から夕日の当たる場所へ進み出てきた。

その人物を見て、愛子は息を呑む。

同性の愛子から見ても、思わず見蕩れてしまうくらい美しい女性だったからだ。

夕日に反射してキラキラと輝く銀髪に、大きく切れ長の碧眼、少女にも大人の女にも見える不思議で神秘的な顔立ち、全てのパーツが完璧な位置で整っている。

身長は、女性にしては高い方で170cm程。

白磁のようになめらかで白い肌に、スラリと伸びた手足。

胸は大きすぎず小さすぎず、全体のバランスを考えれば、まさに絶妙な大きさ。

だが、その顔は無表情。

感情そのものが無い印象を受けた。

 

「あなたが今からしようとしていることを、主は不都合だと感じております。あなたの生徒がしようとしていることの方が〝面白そうだ〟と。なので、時が来るまで、あなたには一時的に、退場していただきます」

 

「な、なにを言って……」

 

狼狽える愛子を他所に、銀髪の修道女は淡々と続ける。

近寄ってくる美貌の修道女に、愛子は無意識に後退った。

その時、修道女の碧眼が一瞬、輝いたように見えた。

途端、愛子は頭に霞がかかったように感じ、反射的に魔法を使うときのように集中すると、弾かれた様にモヤが霧散した。

 

「ッ!?」

 

「……なるほど。流石は、主を差し置いて〝神〟を名乗るだけはあります。私の〝魅了〟を弾くとは。仕方ありません。物理的に連れて行くことにしましょう」

 

「こ、来ないで! も、求めるはっ……うっ!?」

 

愛子は咄嗟に詠唱を始めようとしたが、それよりも早く修道女の拳が鳩尾に突き刺さっていた。

意識が闇に落ちる最中、愛子は修道女の呟きを聞いた。

 

「ご安心を。殺しはしません。あなたは優秀な駒です。あのイレギュラーを排除するのにも役立つかもしれません」

 

イレギュラーという言葉に、愛子はハジメや拓也の姿を思い浮かべたが、その直後に愛子の意識は途切れたのだった。

気を失った愛子を、重さを感じさせない仕草で担ぎ上げる銀髪の修道女。

すると、

 

「…………?」

 

何かに気付いた様に廊下の先に意識を向けて探るように視線を這わせた。

しばらく、じっと観察していた修道女は、おもむろに廊下の先にある客室の扉を開く。

その部屋のとある場所には、リリアーナが隠れていた。

彼女は愛子の話を聞くために生徒達が夕食を食べる部屋に向かっていたのだが、その途中愛子と銀髪の修道女の話し声が聞こえ、様子を窺っていた所、修道女が愛子を気絶させた瞬間を目撃したのだ。

その為、リリアーナは咄嗟にこの客室に逃げ込んだ。

修道女は、このリリアーナの気配を察したのだろう。

そして、中に入り部屋全体を見回すと、クローゼットに近寄り、勢いよく扉を開けた。

しかし、中には何もなく、修道女は首を傾げると再び周囲を見渡し、あちこち見て回った。

だが、リリアーナが隠れていた場所は、王族しか知り得ない隠し通路。

更に隠し通路全体に気配遮断のアーティファクトが使用されており、そう簡単に見つかる事は無かった。

やがて、何もないと結論づけたのか愛子を担ぎなおすと、部屋を出て行こうと踵を返そうとした。

その時、

 

「おやおや? 何か探し物かい、エヒトの人形?」

 

年若い少年の声が響いた。

その声はリリアーナにも聞き覚えは無い。

しかし、それ以上に不思議に思った事は、その声はリリアーナの隠れている場所から考えると、窓際から聞こえて来ていたのだ。

リリアーナがこの客室に入った時、間違いなく部屋の中には誰もいなかった筈だ。

新たに部屋に入って来たのなら、声は扉側から聞こえる筈。

それなのに、その少年の声は窓際から聞こえて来ていた。

 

「…………あなたでしたか…………」

 

修道女は、疑問が解消したと言わんばかりに声を漏らす。

先程感じた気配は、この声の持ち主なのだろうと解釈した様だ。

 

「…………何か御用ですか?」

 

相変わらずの淡々とした声色で問いかける修道女。

 

「なに、少し手助けしてあげようと思ってね」

 

「必要ありません」

 

少年の声に、修道女はにべもなく断る。

 

「いいのかい? このままだと君は負けるよ?」

 

「………この私が、イレギュラー如きに遅れと取るとでも?」

 

「ああ、断言してもいい。このまま彼らと戦えば、君は確実に負ける。君お得意の分解の力も、彼らには通用しないしね」

 

少年の声は、確信を感じさせる自信に満ちた声色だった。

まるでそれがこの世の真実だと言わんばかりに。

 

「………………………ッ」

 

リリアーナには声しか聞こえないが、修道女が不機嫌になった様に思えた。

すると、ひたひたと裸足で歩く様な足音を立てると、

 

「そこでこれを君にあげよう」

 

その言葉と共に、コトリと机の上に何かを置く音が響く。

 

「………金の腕輪ですか?」

 

「ああ。これには僕の力の一部が込められている。必要になった時にこれに願えば、君に『力』を与えてくれるよ」

 

「これがあれば、遅れは取らないと?」

 

「ああ。少なくとも無様に負けることは無いと約束しよう」

 

「………………」

 

「………疑っている様だね?」

 

「主の客人と言えど、あなたを信じる要素が見当たりませんので」

 

「フフフ…………まあいいさ。僕としてはどちらでも構わない。君が無様に負けようと僕には関係の無い事さ。だが、君がエヒトの命令を遂行出来なかったと知ったら、エヒトも大層がっかりするだろうね。いや、がっかりはしないか。『使えない『駒』だった』と興味を無くす程度だろうね」

 

「ッ…………」

 

「さあ、どうする?」

 

「…………………いいでしょう。何を考えているのかは分かりませんが、ここはあなたの目論見に乗ってあげましょう」

 

修道女がそう言うと、カチャリと先程言っていた金の腕輪を装着したのだろう音が響く。

すると、銀髪の修道女が部屋を出ていく気配がした。

リリアーナはそのまましばらく息を潜める。

まだ少年の声の主が残っているからだ。

下手に動けば勘付かれる可能性がある。

リリアーナはそう思っていた。

だが、

 

「…………………さて」

 

少年の声の主はそこで一呼吸置くと、

 

「助けを呼ぶのなら早くした方が良い。もたもたしていると間に合わなくなるよ?」

 

その言葉は明らかにリリアーナに向かって投げかけられたものだ。

 

「ッ!?」

 

リリアーナは一瞬動揺する。

 

「僕としては彼女が負けようと一向に構わない。精々楽しませてくれ」

 

そんな声が聞こえると、バサッという羽音を最後に、客室から気配が消えた。

 

「………………ッ」

 

リリアーナは、何故見逃されたのかも分からないままに、助けを求める為に隠し通路から王宮を脱出した。

 

 

 

 

 

 

「あとは知っての通り、隊商にお願いして便乗させてもらいました。まさか、その途中で賊の襲撃に遭い、それが切っ掛けで雫たちと合流できるとは思いませんでしたが……少し前までなら〝神のご加護だ〟と思うところです……しかし……私は……今は……教会が怖い……一体、何が起きているのでしょう。……あの銀髪の修道女は……少年のような声の主は………お父様達は……」

 

リリアーナは恐怖に震えるように自分の身体を抱きしめている。

 

「…………なあ、思ったんだがその国王や重鎮達の変わりようって…………」

 

幸利が思い当たることがある様にそう口を開く。

輝一も同じ事を思ったのか頷き、

 

「ああ。メルジーネ海底遺跡の試練で見た。あの過去映像にそっくりだ………」

 

同意する様に頷く。

 

「……………あと、先生が攫われたのはこの世界の真実を話そうとしたからだろうね…………くっ……その事が裏目に出るとは…………」

 

ハジメが後悔しながらそう言う。

 

「取り敢えず、先生を助けに行くのは決定だね」

 

ハジメの言葉がリリアーナにとって意外だったのか、

 

「宜しいのですか?」

 

そう確認した。

それに対し、ハジメは肩を竦める。

 

「勘違いしないで欲しいんだけど、王国のためじゃない。先生の為だよ。あの人が攫われたのは僕が原因でもあるし、放って置くわけにはいかない」

 

「愛子さんの……」

 

ハジメの答えにリリアーナは若干肩を落とすものの、皆が付いて来てくれることには変わりないと思ったのか気を取り直す。

 

「まぁ、流石に全部放っておくのは後味悪いから、先生を助ける序に原因を探る程度はしてあげるよ」

 

「……ふふ、では、宜しくお願いしますね。南雲さん……」

 

リリアーナの言葉に、ハジメは王都へ向けてアクセルを踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

愛子の救出に向かった拓也とハジメの前に現れた神の使徒ノイント。

一時は戦いを有利に進めるものの、彼女は与えられた力を解放し、ヴリトラモンを追い詰める。

拓也が窮地に陥った時、起こった事は…………

 

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

第28話 復活の融合進化! アルダモン飛翔!!

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 

 

 






はい、第27話の投稿です。
今回は原作通りにリリアーナとの合流ですが、その内容には若干の差異が………
はたして謎の少年の声とは!?(すっとぼけ)
それでは次回をお楽しみに。


『鋼』のスピリットの形態はどうする?

  • メルキューレモン、セフィロトモンのまま
  • 既存の別デジモンを引っ張って来る
  • オリジナルデジモンで!
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