オファニモン:フォールダウンモードに進化したノイントを、アルダモンに進化した拓也が倒し、デジコードをスキャンしたが、元の姿に戻ったノイントは記憶を失っていた。
「…………なあ、本当に何も覚えてないのか?」
「はい………本当に何も思い出せないのです」
拓也が改めて問いかけるが、ノイントは頷き、拓也の言葉を肯定する。
拓也は演技している可能性も考慮したが、先程までのノイントの性格を考える限り、態々記憶喪失のフリをするとは思えないし、今の彼女の様子からは嘘をついているようには思えない。
「…………ノイント。お前の名前だ。その名を聞いても何も思い出せないのか?」
「ッ!? それが……私の名前………」
ノイントは驚いた様に目を見開いたが、すぐに考え込む様に黙り込むと、
「………ごめんなさい。やはり、何も思い出せません………」
ノイントは申し訳なさそうに謝った。
「…………これはマジっぽいな…………」
拓也は小声でボソッと呟く。
その時、黒竜姿のティオが近付いてきた。
「ご主人様!」
心配そうな声色で呼びかけるティオ。
「ティオ!」
振り向きながら応える拓也。
「拓也!」
「神原君!」
続いて背中に乗っていたハジメと愛子も、安堵した様に拓也に呼びかけた。
「ハジメ! 先生!」
拓也は答えたが、ハジメとティオは拓也の腕に抱かれているノイントを見て気を張り詰めた。
「ご主人様………その女は危険では………?」
いつでも対処できるように警戒しつつ、問いかけるティオ。
「あ~、それがな…………記憶喪失になったみたいなんだよ、コイツ」
拓也は困った表情を浮かべながらそう言った。
「記憶………」
「喪失………?」
ハジメと愛子が訝しむ様にそう言う。
「ああ、多分間違いない」
拓也がそう言うと、
「………でも、記憶喪失になったとしても、放っておくのは危険じゃない?」
ハジメは警戒を緩めない。
「そうなんだよな~…………ホントどうしよう?」
拓也がそう言うと、
「今の内に『対処』するべき………というのが最善じゃろうな」
ティオは言葉を濁したが、要は無力な内に止めを刺すべきだと言っているのだ。
「その考えはもちろん分かるが…………」
拓也はそう言いながら再びノイントを見る。
記憶を失ったせいか、先程までの無表情が嘘のように不安そうな表情をしている。
すると、拓也は一度目を伏せ、何か悩む様に考えを巡らせたあと、
「………………………ッ!」
決心した様に目を開いた。
そして、
「すまん、ハジメ、ティオ。こいつの事は、一旦俺に任せてくれないか?」
そう口にした。
「ご主人様!?」
「拓也!?」
拓也の言葉が意外だったのか、ティオと、ハジメが驚きの声で拓也を呼ぶ。
「お前達の言いたい事も分かる。多分、そっちの方が安全だという事も…………だけど、オファニモンにも出来る事ならこいつに『心』を与えてやって欲しいと頼まれたんだ。俺は、その願いを無為には出来ない」
「拓也…………」
「………それに…………こんな顔をしてる奴に手を上げるなんて、俺にはできねえよ」
「ご主人様………」
前半の言葉も嘘では無いだろうが、拓也にとっては後半の言葉の方が大きな理由だ。
すると、
「ご主人様がそう判断したというのなら、妾は反対せぬよ」
ティオがそう言った。
「ティオ……!」
ティオの答えに、嬉しそうに笑みを浮かべる拓也。
「それが、ご主人様が選んだ『選択』なのじゃろう?」
「ッ………ああ! その通りだ!」
拓也は頷く。
「まあ、このままほっとくのも危険だろうし、それなら近くで監視しといたほうがいいかな?」
ハジメも取ってつけた様な理由を口にしながら警戒を解く。
ハジメとしても、拓也の『選択』を尊重したのだろう。
「…………あの、一体如何いう事でしょうか?」
状況を理解できないノイントは、拓也に問いかける。
「まあ、簡単に言えば、暫くお前の面倒は俺が見る事になった、ってことだ」
「えっ……!?」
驚いた顔をするノイント。
「記憶を失って行く当ても無いんだろ?」
「え………あ…………はい…………」
ノイントは申し訳なさそうに頷く。
「そんなお前を放っては置けないから、暫くは俺達と一緒に居ろ」
「………よろしい………のですか………?」
ノイントはやや不安げに聞き返す。
「いいから言っているんだ」
「……………はい………よろしく………お願いします…………」
ノイントは拓也の腕に抱かれながら俯くと、再び顔を上げ、
「あの…………」
拓也に呼びかけた。
「何だ?」
拓也が聞き返すと、
「………名前を………お聞かせください…………」
ノイントは若干遠慮がちにそう言って来た。
拓也は一瞬驚いた様にハッとなり、
「………拓也………神原 拓也だ」
そう名乗った。
「拓也………様…………」
まるでその名を刻み付ける様に自分の胸に手を当てながらそう反復するノイント。
それが、記憶………いや、記録を失ったノイントが、初めて記憶に刻み付けた最初の名前だった。
その後、拓也達は崩壊した教会の様子を見に来ていた。
その結果は、
「跡形もないね…………」
ハジメが呟く。
「単なる余波でこの惨状とはのう………」
竜化を解いたティオが辺りを伺いながらそう口にする。
2人の言葉通り、教会の総本山があった所は、単なる瓦礫の山と化していた。
一応結界もあったのだが、オファニモンFMの力は余波だけでも結界諸共建物を破壊するのには十分すぎた。
「………一体何があったのでしょう?」
「……………戦いの流れ弾に当たっただけだ」
記憶を失ったノイントは、この惨状の原因が自分だという事も知らずにそう漏らすが、拓也はその事を伏せて、戦いの巻き添えになった事だけを口にした。
「その…………教会の皆さんは…………?」
愛子が恐る恐る口にする。
「多分、纏めて吹き飛んだだろうね」
「教会の結界があったが故に、結界を破られる事など想定してはおらん筈じゃしのう………完全な不意打ちじゃった。無防備な所にあの爆発では助からんじゃろ」
「そう……ですか………」
ハジメとティオの言葉で、愛子は人の死にショックを受けた。
「気に病まないでください先生。教会の連中は、クラスメイト達を戦いに駆り立てた張本人です。戦いを押し付けて自分達は後方でのうのうとしていたんです。因果応報って奴ですよ」
「確かにそうかもしれませんが…………」
それでも辛そうな顔をする愛子を、ハジメは黙って抱きしめた。
それから暫くの間、愛子の嗚咽が響いた。
暫くして、
「大丈夫ですか? 先生」
落ち着いたころを見計らってハジメが声を掛けた。
「はい……すみません。みっともない所を見せて………もう大丈夫です」
愛子はハジメから離れて涙を拭う。
すると、
「取り込み中のところ悪いがハジメよ。人がおる………明らかに普通では無いようじゃがの」
ティオがある方向に視線を向けながらそう言った。
その言葉に全員がティオの視線を追うと、瓦礫の上に立つ坊主頭の男が居た。
服装からすると、お坊さんや僧のようにも思える。
しかし、ティオの言う通り普通の人間では無い様で、淡い光を纏い、僅かに透けている。
すると、その男はまるでついてこいと言わんばかりに背を向けた。
「ついて来いって事か?」
拓也がそう判断すると、
「うん。もしかしたら、ここにある神代魔法と何か関係があるのかもしれない」
ハジメもそう推測する。
「悪いけど先生もついて来て。何が起こるか分からないけど、あの男の正体を確かめないわけにもいかないから………」
「は、はい………」
ハジメの言葉に愛子はおっかなびっくりに返事をする。
その男を追うと、こちらの様子を伺いながら出たり消えたりを繰り返し、拓也達をある場所へ連れて行こうとしているのがわかった。
拓也達は警戒を緩めずにその男を追って行くと、その男がある場所で立ち止まった。
「目的地に着いたのか?」
拓也が呟くと、その男がある方向を指差す。
その直後、指差したその先にあった瓦礫が浮かび上がって退かされ、その下にあった魔法陣が露になった。
「これは………転送用の魔法陣?」
ハジメがそう判断する。
警戒しながらも、ハジメ、愛子、ティオ、拓也、そしてノイントはその魔法陣に足を踏み入れる。
すると、魔法陣が輝き、一同はある場所へ転送された。
転送された場所は、そこそこの広さを持つ円形の部屋だった。
その中央に拓也達は転送される。
その直後に拓也達の足元に神代魔法の魔法陣が浮かび上がった。
「あっ……! これは………魂魄魔法?」
一緒に居た愛子が声を漏らした。
愛子にも神代魔法が継承されたのだ。
「ふうむ………どうやら魂に干渉できる魔法の様じゃ」
「なるほど、ミレディがゴーレムの身体に魂を定着させて生き永らえていた原因はこれだね」
ハジメがようやくわかったと納得する。
「魔法…………」
記憶を失っているノイントは、ただ困惑するだけだ。
すると、転送された向きの正面に、一冊の本と指輪が置かれていた。
指輪は攻略者の証だろう。
ハジメが本に目を通す。
「ラウス・バーン………この人がこの神山の大迷宮の創設者みたいだね………何々………迷宮の攻略条件については、大迷宮攻略の証を2つ以上所持し、神に対しての信仰心を持っていない事………神の力が作用している何らかの影響に打ち勝つ事………以上の条件を満たせばこの場を教えるものが現れる………ってことは、あの坊主頭の男の人が現れた時点で、大迷宮攻略は認められていたって事か………」
ハジメはそう言うと、
「ハジメ、考察も良いけど早く王都に戻った方が良いんじゃないか?」
拓也がそう言うと、
「そうでした! 王都が襲われているんですよね! 皆無事で居てくれれば………!」
愛子が気を取り直す。
「そうだね………早く皆と合流しよう」
ハジメがそう言った。
時は少し遡る。
輝二、雫、ボコモン、ネーモン、香織、リリアーナは隠し通路から王城へ向かっていた。
ユエ、シア、ティオ、優花、幸利、輝一、恵理は有事の際の為に王都で待機し、拓也とハジメは愛子の救出の為に神山へ向かった。
愛子を助けた後、預ける先は光輝達しか思い浮かばなかったので、その彼らが洗脳を受けていないかどうかを確認するための意味も含めている為、光輝と付き合いが長い輝二、雫、香織がリリアーナを送り届けるメンバーに選ばれている。
隠し通路から王宮の中に侵入し、就寝中であろう光輝の部屋に向かおうとしていた。
しかしその途中、凄まじい爆発音と同時に王都全体に響き渡るガラスが割れるような音がした。
「何だ!? 今の音は!?」
輝二は思わず叫ぶ。
「これはっ………まさかっ!?」
リリアーナが信じられないと言った表情で窓に駆け寄った。
「そんな……大結界が……砕かれた?」
王都の夜空には、大結界の残滓たる魔力の粒子がキラキラと輝き舞い散りながら霧散していく光景が広がっていた。
「どうしてこんなに脆くなっているのです………? これではすぐに………!」
大結界は数百年に渡り魔人族の侵攻から王都を守ってきた守りの要。
それが砕かれたという事は、悪夢以外の何物でもない。
『聞こえるかの? 妾じゃ、状況説明は必要かの?』
香織の持つ念話石が輝き、そこから声が響いている。
王都に残してきたティオの声だ。
「お願いティオ」
香織がそう返すと、
『心得た。王都の南方1km程の位置に魔人族と魔物の大軍じゃ。グリューエン火山に現れたあの白竜やデジモンらしきやつらもおるぞ』
「まさか本当に敵軍が? そんな、一体どうやってこんなところまで……」
ティオの報告に、リリアーナ王女が表情を険しくしながらも疑問に眉をしかめる。
「空間魔法だろう。補助用のアーティファクトか何かを使えば大群ごと転移することができるかもしれない」
輝二がそう推測する。
『一先ずこちらは妾達で何とかしよう。そちらは予定通り勇者達と合流するのじゃ』
「わかった。そっちも気を付けてね!」
香織がそう返事をすると、通信を終える。
「急ごう!」
香織の言葉に全員が頷いた。
同じ頃、異変を感じた生徒達も起き出していた。
その筆頭が龍太郎と鈴だ。
2人は光輝の部屋を訪ねて光輝を起こし、メルド達と合流する事を持ちかけた。
その時、兵士の1人が呼びに来て、大結界が破られ、10万もの大軍が押し寄せている事が伝えられた。
そのため、光輝も一度メルドと合流するべきだと思い直し、生徒達はその兵士に連れられて訓練場までやって来た。
するとそこには、既に騎士達が集まり、ずらっと並んでいた。
「……………?」
しかし、龍太郎は何故か違和感を感じていた。
すると、
「ね、ねえ龍君………何だかおかしくない?」
鈴が不安そうに聞いてくる。
「おかしい?」
確かに龍太郎も違和感を感じているが、おかしいとは何なのかと聞き返す。
「………どうしてこの人たち………こんなに落ち着いているの?」
「ッ!?」
鈴の言葉で龍太郎はハッとなった。
数百年破られた事のない大結界が破られ、10万もの大軍が押し寄せている今、いくら訓練を積んでいる騎士達とは言え、全く動じてないのは確かにおかしい。
「ッ! 待て光輝!」
龍太郎は、兵士に促されて広場の中央に移動しようとした光輝の肩を掴んで止めた。
「龍太郎……? どうしたんだ?」
光輝は呆けた顔で振り返る。
光輝はオルクスでの一軒があってから訓練にも身が入らず、何処か上の空だった。
その為、現状の違和感にも気付いていない様だ。
「騎士達の様子がおかしい! 余りにも冷静過ぎる!」
「何を言ってるんだ? それは皆訓練された騎士だから………」
「だからって1人も動揺してねえのは明らかに変だろ!」
考える事を放棄している光輝に龍太郎は怒鳴りつける様に叫んだ。
すると、
「…………ッククク………!」
何処からか笑い声が響いた。
すると、広場の中央にある壇に人影が登り始めた。
それは、
「檜山!?」
牢獄に入れられていたが、いつの間にか姿を消した檜山だった。
「ははっ、いつ気付くか楽しみにしてたけどよ、まさか最初に気付くのが坂上なんて思わなかったぜ!」
檜山は口元を吊り上げながら声を上げて笑いながらそう言う。
「檜山! 無事だったのか!」
だが、光輝から出てきたのは安堵を感じさせる声だ。
その声に、途端に不機嫌そうな表情になる檜山。
「は? 何嬉しそうな顔してんだテメエ?」
そう問いかける檜山。
「え? 何を言ってるんだ? 行方不明になったクラスメイトが無事だったんだ。嬉しいに決まってるじゃないか!」
光輝の表情と声は、演技でも何でもなく、本心からそう思ってるようだった。
「この状況でそんな言葉が出て来るなんて、笑えるを超えてムカつくぜテメエはよ!」
檜山は光輝を睨み付ける。
「このバカ野郎! いい加減気付け! 兵士達の様子がおかしいのは檜山が何かしたって事だよ!」
龍太郎が身構えながらそう叫んだ。
「な、何を言ってるんだ龍太郎? 仲間の檜山がそんな事する筈…………」
光輝は龍太郎の言葉を否定しようとしたが、
「ああ、その通りだぜ! こいつら全員俺の意のままに動く人形なんだよ!」
檜山が下種な笑みを浮かべながら龍太郎の言葉を肯定する。
すると、兵士達の間からメルドが姿を現した。
「メルドさん!?」
光輝が叫ぶ。
しかし、メルドの額には、紫色に輝く不気味な模様が浮かび上がっていた。
形的には、漢字の『王』という文字が近いだろうか。
目も焦点が合っておらず、敵意に満ちていた。
兵士達もヘルムを被っている為見えなかったが、全員同じように紫色の模様が額に浮かび上がっている。
「ひ、檜山…………何故……?」
光輝が檜山に呼びかける。
「何故かって? そんなもん、俺がそうしたいからだよ! 俺はずっと気に食わなかった。この俺を見下すお前も! 俺より下の筈なのに、白崎と恋人になった南雲の奴も! どいつもこいつも俺をバカにしやがって!」
「お、俺は見下してなんて………」
「そうやって自分で気付いてねえところが、もっと気に食わねえんだよ! ちょっと勉強ができて強いからってリーダー振りやがって!」
檜山は憎々し気に光輝を睨む。
「………けど、漸く俺にもツキが回って来たぜ…………この力があれば、皆俺の思いのままだ! 南雲に奪われた白崎だって手に入れられる! 最高だぜ!」
「ひ、檜山………」
檜山の様子を見て、絶望的な表情になる光輝。
「女は皆俺の奴隷にしてやるよ。男は要らねぇ。死んでくれや」
檜山は何でもない様に『死ね』と口にする。
すると、メルドを筆頭に騎士達が剣を抜く。
「くっ………」
「ど、どうしよう、龍君……」
恩師であるメルドと戦う事に躊躇する龍太郎や鈴。
そんな彼らに、
「やれ!」
檜山は躊躇なく命令を下した。
騎士達が剣を振り被って生徒達に襲い掛かる。
だが、
―――キィンッ!
生徒達の周りに結界が張られ、騎士達の剣を弾いた。
「何ッ!?」
檜山が驚愕の声を漏らし、
「これは………」
光輝が不思議そうに自分達の周りに張られた結界を見渡す。
すると、
「みなさん! 一体、どうしたのですか! 正気に戻って!」
訓練場の入り口から叫ぶリリアーナの姿。
その近くには、輝二、雫、香織、ボコモン、ネーモンの姿もある。
「…………檜山………!」
輝二は静かな声で檜山を睨み付ける。
考えるまでも無く、檜山がこの騒動の原因だと分かったからだ。
「チッ、もう来やがったか………」
檜山は舌打ちして吐き捨てる。
だが、一緒に居た香織の姿を見てニヤリと笑った。
「皆! 大丈夫!?」
雫が叫ぶ。
「雫! 輝二達も!」
「シズシズ! カオリン!」
龍太郎と鈴が嬉しそうに叫ぶ。
輝二と雫は駆け出して最前列の光輝達の前に並ぶ。
そして、操られたメルドを目にした。
「メルド団長……!」
雫が痛々しそうにメルドを見つめる。
すると、輝二が檜山を見上げ、
「お前の仕業だな?」
確信をもって問いかける輝二。
「ああ。その通りさ」
檜山はあっさりとその言葉を認める。
「それと、白崎を連れて来てくれて助かったぜ。迎えに行く手間が省けた」
香織は既に俺の物と言わんばかりの物言いでそう言う檜山。
その言葉に顔を顰める香織。
「私は君の物じゃないよ」
香織はそう言うが、
「心配するな、すぐに俺の物になる」
即座に言い返す檜山。
すると、檜山は手を上げる。
それを合図にしたようで、訓練場の周りから、白い布を被った幽霊のようなデジモンが十数体現れた。
「あれはゴースト型のデジモン! バケモンじゃ!」
ボコモンが叫ぶ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【Digimon Analyzer】
バケモン:成熟期 ゴースト型 ウイルス種
必殺技:ヘルズハンド、デスチャーム
備考: 頭からすっぽりと布を被っている幽霊デジモン。必殺技の『ヘルズハンド』は掴んだ敵を地獄に引きずり込んでしまう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「デジモンか!」
輝二が叫ぶ。
すると、
「龍太郎! 谷口!」
輝二が2人に呼びかけた。
それの意味する所を察した2人は頷く。
そして、輝二、龍太郎、鈴の3人はデジヴァイスを取り出した。
突き出したデジヴァイスの画面に光が走り、それぞれにヒューマンスピリットの形が描かれる。
前に突き出した3人の左手に、デジコードの輪が発生した。
そのデジコードの輪に、右手に持ったデジヴァイスの先をなぞる様に滑らせる。
「「「スピリット……! エボリューション!!」」」
3人がデジコードに包まれる。
デジコードの中では、3人がスピリットを纏っていく。
顔に。
腕に。
体に。
足に。
3人の身体にスピリットが合わさる。
そして、そのデジコードが消えたとき、3体の伝説の闘士が現れた。
「ヴォルフモン!!」
「ブリッツモン!!」
「チャックモン!!」
ヴォルフモンを筆頭に、カブトムシのような姿の人型をしたサイボーグ型デジモンの『雷』のブリッツモンと、雪だるまを思わせる姿の獣人型デジモンの『氷』のチャックモンが現れる。
「おおっ! あれこそ伝説の十闘士、『雷』のブリッツモンと『氷』のチャックモンじゃマキ!」
ボコモンが叫ぶ。
「だから言わなくても知ってるし」
ネーモンがすかさずツッコむ。
「うるさい! 知らん者達もおるじゃろ!」
「アイタッ!?」
ボコモンがネーモンにゴムパッチンを食らわせた。
その時、バケモン達が襲い掛かって来る。
だが、
「リヒト・ズィーガー!!」
ヴォルフモンが光の剣を抜いて3体のバケモンを切り裂く。
「ミョルニルサンダー!!」
ブリッツモンが掲げた右手に雷が発生し、その拳を地面に叩きつけると、雷撃が迸り、広範囲にわたってバケモンを巻き込んだ。
「カチカチコッチン!!」
チャックモンが口から吐く絶対零度の吐息で複数のバケモンを氷漬けにしていく。
3体の闘士の攻撃で、バケモン達はあっという間に全滅した。
「チィ………」
檜山は悔しそうに舌打ちした後歯噛みする。
そして、
「大人しくしてもらうぞ! 檜山!」
ヴォルフモンが檜山を確保する為に飛び掛かる。
追い詰められた檜山は、
「………………ヒヒッ!」
妖しい笑みを零した。
「ッ!?」
その笑みを見たヴォルフモンは怪訝に思った。
その瞬間、何処からともなく紫色の光の矢のようなものが飛んできてヴォルフモンの背中に突き刺さった。
「ぐあっ!?」
ヴォルフモンは空中でバランスを崩し、落下する。
「ヴォルフモン!?」
「輝二!?」
ブリッツモンと雫が叫ぶ。
すると、地面に倒れたヴォルフモンが起き上がろうとする。
その姿にホッとする雫だったが、すぐに光の矢が飛んできた出所を探ろうと視線を走らせる。
その時、兵士達が分かれるように移動し、その間から細長い金属の頭部と機械の触手をもったデジモンが姿を見せた。
「あ、あれはイーバモンじゃマキ!」
ボコモンが叫ぶ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【Digimon Analyzer】
イーバモン:究極体 サイボーグ型 ウイルス種
必殺技:プラネットデストロイヤー
備考: 宇宙人のような姿のサイボーグ型デジモン。右手の銃で相手を洗脳し、左手の銃で必殺技プラネットデストロイヤーを放つ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「いかん! イーバモンは相手を洗脳する能力を持っておるじゃハラ!」
ボコモンが切羽詰まった表情で叫ぶ。
「ええっ!? それじゃあ………!」
ネーモンがその言葉に驚きながらヴォルフモンに振り向いた。
ヴォルフモンが立ち上がり、顔を上げると、
「ォォオオオオオオッ!!」
獣のような咆哮を上げ、その額に不気味な紫の模様を浮かび上がらせていた。
「ヴォルフモンが洗脳された~!?」
ネーモンが両手を上げながら驚愕を露にする。
「こ、輝二………!?」
雫がヴォルフモンに呼びかける。
「ゥゥゥッ………!」
そのヴォルフモンは、雫へと光の剣を向ける。
「う、嘘………輝二…………」
雫が絶望的な声を漏らし、
「ォオオオオオオオッ!!」
ヴォルフモンが雫へと飛び掛かった。
「輝二………!」
雫がその様子を現実感が無い視界で見つめ、
「やめろヴォルフモン!!」
その横からブリッツモンが体当たりでヴォルフモンを吹き飛ばした。
「りゅ、龍太郎…………輝二が……輝二が………」
「しっかりするんだ雫! ボコモンの言う通りなら、ヴォルフモンはあいつの力で操られてしまっただけだ! 奴を倒せば元に戻る筈だ!」
ブリッツモンが叫ぶ。
その時、ヴォルフモンが起き上がって再び向かってくる。
「チャックモン! 俺達でヴォルフモンを止めるぞ!」
「わかったよ!」
ブリッツモンはチャックモンと共にヴォルフモンに向かって行く。
「ゴメンねヴォルフモン! スノーボンバー!!」
チャックモンは謝りながら4連装のミサイルランチャーのような武器を構え、氷の球を連続で発射する。
しかし、ヴォルフモンはそれを跳躍で躱すと、
「ォオオッ!」
左腕からレーザーを放つ。
「うわっ!?」
チャックモンは直撃して後ろに吹きとばされる。
「チャックモン!? くそっ!」
ブリッツモンは角に電撃を溜め、
「ライトニングボンバー!!」
ヴォルフモンに向かって突撃する。
空中のヴォルフモンはそのまま直撃するかに思えたが、
「ゥヴッ!」
ブリッツモンの肩を蹴って直撃を回避すると、ブリッツモンの背中に回り込む。
「何だと!?」
ブリッツモンが驚愕した瞬間、光の剣の2刀が背中に叩き込まれた。
「ぐわぁああああああっ!?」
そのまま地面に激突するブリッツモン。
「駄目じゃ……! あの2人はスピリットを受け継いでから日が浅い! まだうまくスピリットの力を使いこなせておらん!」
ボコモンが悲痛な声を上げる。
「ヒヒッ! 最高だな! 俺を見下してた源の野郎も俺の思うがままだ! これが俺の力だ!」
檜山が歪んだ笑みを浮かべる。
すると、
「そんなのアンタの力じゃない! そのデジモンの力よ!」
雫が叫ぶ。
「はっ! それを言ったらそいつらだって同じじゃねえか!」
檜山はそれが如何したと言わんばかりの笑みで言い返してきた。
「ち、違う!」
雫は否定する。
「何が違う? スピリットって奴は元々デジモンの力じゃねえのか!?」
檜山の言葉に、雫は完全には否定できない。
だが、
「違う………! 輝二達は違う! アンタなんかとは違う!!」
それでも雫は否定する。
輝二達が、目の前の男と同じだとは認めたくは無かった。
「はっ! いくら否定したって、コイツにかかればあっという間に俺に従順になるのさ」
檜山はそう言いながらイーバモンに目を向ける。
「ああそうだ。従順になったお前を、洗脳を解いた源の目の前で犯してやるのも面白そうだな」
良い事を思いついたと下品な笑みを浮かべる檜山。
イーバモンが右手の銃を雫に向ける。
雫は俯いたまま動かない。
「雫ちゃん!」
香織は叫ぶが、他の生徒達を護る為に結界を維持しているので応援に回れない。
ブリッツモンとチャックモンも、ヴォルフモンの相手をするだけで精一杯だ。
すると、
「違う………絶対に違う! 輝二達とスピリットは………!」
雫は顔を上げ、叫んだ。
「力を合わせて一緒に戦っているのよ!! デジモンの力に甘えているだけのアンタとは違う!!」
雫は決意をした目でイーバモンを似た見つける。
「だから私も戦う! 輝二と一緒に!」
そう叫んだ瞬間、イーバモンの右手の銃から紫色の光の矢が放たれた。
その瞬間、ヴォルフモンの懐が輝き、光が流星の様に飛び出し、ブリッツモンとチャックモンの間を抜けて雫の方へ飛んでいった。
「何だ!?」
「あの光は?」
ブリッツモンとチャックモンが思わずその光を目で追う。
イーバモンの紫の光の矢が雫に命中するかに思われた瞬間、ヴォルフモンから飛び出した光がその前に割り込んだ。
その直後、イーバモンが放った光の矢が反射し、檜山の方に飛んできた。
「なっ!?」
跳ね返った光の矢は、檜山のすぐ横を通過する。
見れば、雫の前には鏡のような盾を構えた全身が金属と鏡で構築された身体を持ったデジモンが存在していた。
「あ、あなたは………」
雫が半ば呆然と呟く。
すると、
「あ、あれは伝説の十闘士の1人、『鋼』のメルキューレモンじゃ!」
ボコモンが叫ぶ。
メルキューレモンは無言で頷くと、光に包まれ2つのスピリットの形を取った。
だが、次の瞬間、それらのスピリットに罅が入ったかと思うと、外側が砕け散り、全く別の形のスピリットとなった。
元は鏡を持った人形のような形のヒューマンスピリットと、目玉と口がついた緑の球体が連なったビーストスピリットだったのだが、ヒューマンスピリットは緑色の戦国武将の甲冑のような形へ。
ビーストスピリットは緑色の狼のような形へと変化した。
そして雫の前に緑と赤に彩られたデジヴァイスが現れ、スピリットはそのデジヴァイスへと吸い込まれる。
そのまま雫の手に収まった。
「私の………デジヴァイス………?」
目を瞑ってそのデジヴァイスに意識を向ける。
「感じる…………『鋼』の力を………!」
そして目を見開き、突き出したそのデジヴァイスの画面には『鋼』の紋章が浮かび上がっていた。
突き出したデジヴァイスの画面に光が走り、ヒューマンスピリットの形が描かれる。
前に突き出した雫の左手に、デジコードの輪が発生した。
そのデジコードの輪に、右手に持ったデジヴァイスの先をなぞる様に滑らせる。
「スピリット……! エボリューション!!」
雫がデジコードに包まれる。
デジコードの中では、雫がスピリットを纏っていく。
顔に。
腕に。
体に。
足に。
雫の身体にスピリットが合わさる。
そして、そのデジコードが消えたとき、新しい『鋼』の闘士が降り立った。
「ジングウモン!!」
デジコードが消えて現れたその姿は、まるで女武者のような姿をしていた、
雫と同じ黒髪を、額当てとポニーテールで纏めた女性型。
緑を基調とした和風の甲冑を纏い、太刀を携え、左腕には円鏡のような盾が装備されている。
「雫ちゃんが………進化した…………」
香織が驚きながら呆然と呟く。
「雫もメルキューレモンじゃなくなったね………」
「輝一はんの時と同じく、『鋼』のスピリットも真の姿を取り戻したんじゃマキ!」
ネーモンとボコモンがそう言う。
ジングウモンの姿を見た檜山は歯を食いしばり、
「俺の言う通りにならない女なんて必要ねえ! イーバモン! 吹き飛ばしちまえ!」
檜山が叫ぶと、イーバモンは左手の銃を構える。
右手の銃は洗脳の力を持っていたが、左手の銃は完全な破壊光線だ。
「プラネットデストロイヤー!!」
その銃から強力な破壊光線が放たれる。
その威力の直撃を受ければ、如何に十闘士とは言え無事では済まない。
すると、ジングウモンは左腕に装備された円鏡のような盾を構えると、
「
破壊光線がその鏡に吸い込まれるように消え、次の瞬間、そのままの威力で跳ね返った。
「なっ!?」
檜山は驚愕するが、イーバモンはそのまま自分の必殺技の直撃を受ける。
「ウワァァァァァッ!?」
悲鳴を上げるイーバモン。
いくら強力なデジモンとは言え、自分の必殺技を受ければ大ダメージは必至だ。
金属製の身体に罅が入り、バチバチと放電する。
「おおっ!? あの盾はメルキューレモンのイロニーの盾と同じ力を持っておるのか!」
ボコモンが驚いた声を上げる。
するとジングウモンは、左腰の鞘に入った太刀の柄に手を掛けると、抜刀の構えを取る。
イーバモンは何とか銃を構え、ジングウモンに狙いを定めようとしたが、
「…………神起っ…………!」
ジングウモンの姿が掻き消え、気付いた時には太刀を抜き放った状態でイーバモンの後ろに移動していた。
そしてジングウモンは抜き放っていた太刀を自分の顔の前で鞘に納めつつ、
「………発勝!!」
キンッと鍔鳴りを響かせた瞬間、イーバモンの身体に斬撃が奔った。
「ウギャアァァァァァァァァァァァァッ…………!?!?」
自分の必殺技で受けたダメージも相まって、致命的な一撃となった。
イーバモンはデジコードを浮かび上がらせる。
ジングウモンはその前に進み出ると、
「邪念に溺れし魂よ…………!」
ジングウモンがデジヴァイスをその手に持つ。
「『鋼』の意志にて浄化する!」
突き出したデジヴァイスの側面のボタンを押し込み、デジヴァイスの上部に光が迸る。
「デジコード……スキャン!」
デジヴァイスをデジコートに沿ってなぞる様に滑らせると、デジヴァイスにデジコードが吸い込まれ、それに伴いイーバモンが消滅していく。
デジコードを吸い込みきると、あとに残されたデジタマが上空に登っていき、光の粒子と共に消え去った。
すると、イーバモンを倒したことで洗脳の力が消え、ヴォルフモンやメルドを始めとした騎士達の額の模様が消え、意識を失ってバタバタと倒れる。
ヴォルフモンは倒れた際、デジコードに包まれて輝二に戻ってしまった。
「輝二!」
ジングウモンが輝二に駆け寄る。
ジングウモンが輝二を抱き起こすと、輝二の瞼がゆっくり開かれる。
「………雫か」
「ええ…………」
「…………面倒をかけたようだな?」
「気にしないで。私が危ない時は輝二が助けてくれる。だから、輝二が危ない時は私が助けるわ」
ジングウモンはそう言い切る。
「フッ………そうだな。ありがとう、雫」
「どういたしまして」
静かに微笑を浮かべる輝二に、ジングウモン………雫も嬉しそうに微笑むのだった。
次回予告
イーバモンを退け、騎士達の洗脳も解いた雫達に拓也やハジメ達が合流する。
しかし、そこにフリードが現れ、百万の魔物が控えていると宣言する。
それに対し、拓也達の選ぶ選択は………
次回、ありふれたフロンティアへ
第30話 王都侵攻終結
今、ありふれた伝説が進化する。
はい、第29話です。
土曜日が休日出勤だったので結構ギリギリになりました。
遂に雫が進化。
結局はオリジナルデジモンとなりました。
決め台詞は自分なりに考えてみましたが如何だったでしょうか?
因みにジングウモンのデータとしてはこんな感じです。
ジングウモン:ハイブリット体 突然変異型 ヴァリアブル種
必殺技:
備考: 『鋼』のヒューマンスピリットが雫の意志で突然変異を遂げた姿。姿形こそ女武者であるが突然変異型である。八咫鏡はメルキューレモンのイロニーの盾と同じく敵の攻撃を跳ね返す力を持っている。そしてイロニーの盾の1つが変化した『鋼』の太刀を持つ事で、防御に長けていたメルキューレモンと比べて攻撃にも長けている。必殺技は、神速の抜刀術『神起発勝』。
P.S 今日の返信はお休みします。
『鋼』のスピリットの形態はどうする?
-
メルキューレモン、セフィロトモンのまま
-
既存の別デジモンを引っ張って来る
-
オリジナルデジモンで!