新たな『鋼』のスピリットを受け継いでジングウモンに進化し、イーバモンを倒す事に成功した雫。
イーバモンを倒したことで、メルドを始めとした騎士達は洗脳から解放され、その場で倒れたが程なく目を覚ました。
「くっ…………俺は一体………?」
目を覚ましたメルドは辺りを見渡して状況を把握しようとした。
すると、
「………くそ………くそ、くそ! くそぉっ!! 何が優秀な手駒だ! あっさりやられてるじゃねえか!!」
檜山が喚き出した。
「大輔………?」
メルドが檜山に気付く。
その時、
「檜山………お前の負けだ。観念しろ」
輝二が檜山に剣を突き付けながら言った。
「ヒッ………! ゆ、許してくれ……! ちょっと調子に乗ってみたかっただけなんだ……!」
檜山は怯えた様子を見せながら後退りながら腰を抜かし、その場で尻餅を着くと、素早い動きで土下座の体勢に移行した。
「……………これだけの事を仕出かして、それで済むと思っているのか?」
しかし、輝二は厳しい目付きで檜山を睨み付け、剣を突きつけ続ける。
「た、頼む………許して……! 許してください……! 牢獄暮らしでも構いません! 命だけは…………!」
檜山はプライドをかなぐり捨て、みっともなく懇願を始める。
「ッ………! 勝手な事を! お前の行いが、どれだけの数の人の命を脅かした………いや、今も魔人族の襲撃によって脅かされ続けている! 大結界に細工したのもお前の差し金だろう!?」
「ち、違うんだ……! 奴らに逆らえば、殺されると思って仕方なく………!」
檜山はそう弁明するが、
「その割には、随分と好き勝手な事言ってたよね?」
チャックモンとなっている鈴がそう口を開いた。
その言葉に、ギクリと身体を震わせる檜山。
「女は奴隷、男は死ねと言っていたな」
それに続いてブリッツモンとなっている龍太郎もそう言う。
「そ、それは…………」
旗色が悪くなり、言い淀む檜山。
「ハッキリ言うが、お前はやり過ぎた。オルクス大迷宮での裏切りに続き、今回の騒動………お前には反省も後悔もしていない事が証明された」
「ヒッ…………」
「お前はこの国の法に基き、厳正な対処をして貰う。ほぼ間違いなく処刑だろうけどな」
「ッ………!?」
処刑という言葉に絶句する檜山。
「眠っていろ」
輝二は剣の柄で殴りつけて気絶させようと腕を振り上げた。
その瞬間、
「輝二!」
そんな叫びと共に、ジングウモンが輝二の隣に駆け込んでくると、太刀を抜いて一閃する。
ガキィ!と金属同士がぶつかり合う音が響き、何かが弾かれた。
そこには、
「チィッ! しくじったか……!」
かつて魔人族の女、カトレアに止めを刺したデジモン、ファントモンが大鎌が弾かれた体勢でそこに居た。
「ファントモン!」
輝二が身構える。
ファントモンは、檜山の隣に移動すると、
「た、助かった……! 早く助けてくれ!」
檜山は安堵の表情を浮かべながらそう捲し立てる。
するとファントモンは目を細め、
「…………最初からあまり期待はしていなかったが………究極体のイーバモンを与えてもこの程度の騒ぎしか起こせないとは………まあいい」
呆れた様にそう言うと、
「あへっ………?」
次の瞬間、檜山の首は宙を舞っていた。
ファントモンがその大鎌で首を刈り取ったのだ。
「なっ!?」
輝二が目を見開き、
「「「「「「「「「「きゃぁああああああああああああああっ!?!?」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「うわぁああああああああああああああっ!?!?」」」」」」」」」」
それを目撃した生徒達が悲鳴を上げる。
「余計な事を言われても困るのでな………」
血の滴る大鎌の刃を担ぎながら、ファントモンは言う。
「ッ………!」
輝二は厳しい目付きでファントモンを睨む。
その時、
「ひ、檜山君っ!?」
悲鳴のような声で檜山の名を呼ぶ声がした。
その声の先には、顔を青くした愛子と、助け出してきたハジメ達の姿。
輝二とジングウモンが一瞬そちらに気を取られた隙に、ファントモンはふわりと浮き上がりながら姿を消した。
「ッ!?」
ジングウモンは、太刀を構えながら辺りの気配を探ったが、
「…………逃げたようね」
ファントモンの気配を全く感じなくなり、逃げたのだと判断する。
すると、愛子が檜山の亡骸に駆け寄って来る。
檜山の顔は、何が起きたのか分かっていない素っ頓狂な表情をしていた。
「ああ………檜山君…………」
頭と身体が別れた無残な姿を見て、愛子は膝を着きながら涙を流した。
「先生………あなたの所為じゃありません。檜山は自分でこの道を選んだんです」
ハジメが慰めの言葉を掛ける。
「分かっています………でも、私がしっかりしていれば、檜山君を間違った道から連れ戻せたかもしれないと思うと………」
「それは無理だ」
震えながら口にした愛子の言葉に、輝二がハッキリとそう言った。
「あいつは罰を受けて牢獄に入れられたにも関わらず、反省も後悔も無かった。自分の行いを悪いとも思わず、最期まで自分の事しか考えなかった。こうなったのは当然の末路。因果応報だ」
輝二は冷酷とも言える言葉を続けた。
「……………………」
愛子は俯いたままだ。
すると、
「茶番はそこまでにして貰おう」
上空から声がした。
その場の全員が見上げると、グリューエン大火山にも現れた魔人族のフリードが、白竜に乗り、無数の灰竜を従えて降下してきた。
「お前は、グリューエン火山に居た………!」
輝二が見上げながらフリードに気付く。
「大切な同胞達と王都の民達を、これ以上失いたくなければ大人しくすることだ」
フリードの言葉と共に、灰竜達が他の生徒や兵士達に狙いを定める。
「くっ………!」
状況を把握しきれていないメルドや騎士達は、少なくとも国民達が危険に晒されている事だけは理解し、剣を手放す。
同じように光輝や生徒達も武器を手放した。
しかし、ハジメや輝二達は武器を手放さない。
「どういうつもりだ? 同胞の命が惜しくないのか? お前達が抵抗すればするほど、王都の民も傷ついていくのだぞ? それとも、それが理解できないほど愚かなのか? 外壁の外には十万の魔物、そしてゲートの向こう側には更に100万の魔物が控えている。お前達がいくら強くとも、全てを守りながら戦い続けることなど不可能だろう?」
フリードがそう言う。
「…………………………」
ハジメは何かを思案する様に目を伏せていたが、ふと目を開くと、宝物庫から拳大の感応石を取り出し、それを起動させた。
その瞬間、天から光の柱が降り注いだ。
その光は、王都の外にいる魔物も魔人族も全てを焼き尽くしていく。
やがて王都の外に居た魔物達の大半を蹂躙すると、フッと光の柱は消えて行く。
「なっ!?」
フリードが驚愕の声を漏らす。
「そんな在り来たりの脅しで僕達がいう事を聞くと思った? 勘違いしてるみたいだけど、僕達にとって王国や国民達は絶対に守らなきゃいけない対象って訳じゃないんだ。極力人死は避けるけど、自分達の命に代えても護りたいって訳じゃない。あくまで可能な限り助けてもいいってレベルなんだよ。100万の魔物だっけ? 呼びたいなら呼べばいいよ。今みたいに全部吹き飛ばすから。まあ、それでも多少は被害は出るだろうけど、王国が滅びるよりはマシだよね?」
ハジメは平然とした態度でそう言う。
魔物や魔人族を一瞬にして吹き飛ばされた事に、フリードの表情が憤怒に染まる。
しかし、今の光の詳細が分からなければ、いくら応援を呼んでも二の舞になる可能性が高い。
フリードは、唇を噛み切り、握った拳から血を垂れ流すほど内心荒れ狂っていたが、魔人族側の犠牲をこれ以上増やすわけにはいかないと、怨嗟の篭った捨て台詞を吐いてゲートを開いた。
「……この借りは必ず返すっ……貴様だけは、我が神の名にかけて、必ず滅ぼす!」
そう言い残すと、白竜や灰竜達と共にはゲートを潜って姿を消した。
それを見送って戻って来る気配が無い事を確認すると、
「はあぁぁぁぁぁぁぁ……………!」
ハジメは大きく息を吐いた。
「何とか引いてくれて良かったぁ………」
ハジメは安堵の表情を浮かべる。
先程の光は、ハジメの試作した太陽光収束レーザー砲だったのだが、先程の1発で壊れてしまっていたのだ。
ハジメはそれをハッタリで押し通しただけだった。
少しすると、魔物達の対応に当たっていたユエや優花達が、黒竜の姿のティオに乗って戻って来た。
ティオや拓也は、愛子とハジメを王宮近くに送り届けた後、仲間達の応援に行っていたのだ。
訓練場に降り立ったティオの背から、順番に拓也達が降りて来る。
拓也、優花、幸利、輝一、恵理、ユエ、シアときて、最後の1人が地面に降りた。
その瞬間、リリアーナの表情が変わった。
「みなさん! 離れて! 彼女は、愛子さんを誘拐した危険人物です!」
その言葉に、その場にいた光輝や他の生徒達、メルド達騎士団の面々が一斉に武器へ手をかけた。
「えっ………?」
突然警戒の意識を向けられた銀髪碧眼の女性、ノイントは戸惑いの感情を見せる。
「ま、待ってください皆さん!」
そんなノイントを庇うように前に立ったのは他でもない愛子だった。
「た、確かに彼女は私を攫いましたが、今の彼女は無害です!」
懸命に説明しようとわたわたする愛子を見て、その場の全員は毒気を抜かれた。
そして、今の彼女の現状を掻い摘んで説明すると、
「記憶喪失………ですか………?」
「ええ、今の彼女に以前の記憶はありません」
リリアーナはチラリとノイントを見ると、
「しかし、いくら記憶喪失とは言え、このまま放っておくわけには………」
「そこは俺が見ている事になった」
拓也が口を出した。
「神原さん……?」
「勝手な事を言って悪いと思うが、恩人にも頼まれたんだ。頼む」
拓也は頭を下げる。
「拓也様……」
ノイントは自分の為に頭を下げる拓也を見てその名を呟く。
「………分かりました。神原さん達には王国の危機を救って頂いた恩もあります。その願いを無下にするわけにもいきません」
リリアーナは渋々と納得した。
その後、王宮や王都の被害状況を数日にわたって調べられた。
その結果、国王のエリヒドや重鎮達は檜山によって殺されており、混乱が収まるまでは、リリアーナと無事だった王妃ルルアリアが王都復興の陣頭指揮を取るようだ。
王都も少なくない被害が出ていた。
それでもユエや優花達の奮闘で大きく被害を減らす事が出来たのは間違いない。
ノイントも監視付きという条件で滞在を許可され、主に拓也と行動を共にしている。
その拓也を見る優花の目が物凄いジト目だったのはご愛敬だろう。
そんな優花と拓也の関係だが、この数日で大きな変化があった。
それは、
「くぅ………2人がかりでもギリギリじゃとは………流石は御主人様じゃ………」
「拓也……………再生魔法の使い方………絶対に間違えてるわ………」
拓也の部屋から朝なのにティオと優花の2人がヘロヘロになって出てくるようになったことだ。
ティオを頑なに拒んでいた優花だったが、遂に受け入れてしまったのだ。
理由として、拓也の再生魔法の取得が大きな原因であった。
何故かはお察しである。
ただ、優花もそれだけでティオを受け入れたわけではない。
ノイントの話を聞く中で、ティオは命を懸けて拓也を護ろうとした。
そんなティオに、拓也も少なからず好意を持っていた事が、優花に決心させたのだ。
だが、
「のぅ優花? このままでは2人がかりでも体がもたんぞ?」
ティオがそう言う。
「…………どうしろって言うのよ…………?」
優花がやさぐれる様にそう言うと、
「せめてもう1人ぐらい側室増やさんか?」
「…………考えておくわ」
ぐったりした表情で優花はそう言うのだった。
そうして一段落したある日、
「ところで愛子さん。あの日、愛子さんが攫われた時に話そうとしていた事を聞いても良いでしょうか? 南雲さん達が神代魔法を取得している事と関係があると思いますが…………」
食堂に集まった生徒達と愛子を前に、リリアーナがそう切り出す。
何だかんだで今日まで説明する時間が取れなかったのだ。
愛子は一度ハジメに視線を向けると、ハジメは任せたと視線で訴える。
愛子先生は、コホンッと咳払いを一つするとハジメから聞いた狂神の話とハジメ達の旅の目的を話し、そして、自分が攫われた事や王都侵攻時の総本山での出来事を話し出した。
全てを聞き終わり、真っ先に声を張り上げたのはやはり光輝だった。
「なんだよ、それ。じゃあ、俺達は、神様の掌の上で踊っていただけだっていうのか? なら、なんでもっと早く教えてくれなかったんだ! オルクスで再会したときに伝えることは出来ただろう!」
非難するような眼差しと声音に、しかし、ハジメは面倒そうにチラリと光輝を見ると、溜息を吐いただけで何も答えない。
その態度に光輝は乱暴に席を立ち、ハジメに敵意を漲らせる。
「何とか言ったらどうなんだ! お前が、もっと早く教えてくれていれば!」
「それを言った所で、お前はその話を信じたのか?」
光輝にそう言ったのは輝二だ。
「何………!?」
光輝は輝二を睨む様に振り返る。
「お前の事だ。そんなのデタラメだの何だの言って信じなかっただろう?」
輝二は確信をもって問いかける。
「そ、そんな事は……………だ、だけど、そうだとしても、何度もきちんと説明してくれれば……」
光輝はそう言うが、
「そこまでする義理は無い。ハジメも言っていただろう? 裏切者を罰しないお前と共に戦う気は無いとな」
「ッ!?」
「お前の幼稚な正義感は俺達とは相容れない。いや、正義とは何かをわかっていない幼稚なお前を俺達は受け入れられない。それだけの事だ」
「正義は正義だろう!? 何をわかっていないというんだ!?」
その答えに輝二は溜息を吐くと、何を言っても無駄と言わんばかりに黙り込んだ。
「黙っていないで何か言ったらどうなんだ!?」
「いい加減にしなさい光輝」
そんな光輝に雫が声を掛ける。
「今のあなたは、思い通りにいかなくて癇癪を起してる子供にしか見えないわ」
雫は光輝にそう言い放つ。
「ッ………………」
光輝は黙り込んだ。
すると、
「……南雲さん達にお願いがあるのですが………暫く王都に残ってはもらえないでしょうか? せめて、王都の防衛体制が整うまで滞在して欲しいのですが……」
リリアーナがそう願い出る。
「本格的に神と事を構える様になるみたいだから、先を急ぎたいって言うのが本音なんだけど………」
ハジメがそう言うと、
「そこを何とか……せめて、あの光の柱……あれも南雲さんのアーティファクトですよね? あれを目に見える形で王都の守護に回せませんか? ……お礼はできる限りのことをしますので」
「あ~〝ヒュベリオン〟ね。ゴメン無理です。あれ、最初の一撃で壊れたんで……試作品だったし。改良しないと。まあ、でも………」
ハジメは一呼吸置くと、
「大結界ぐらいは直すつもりだから」
「南雲さん! 有難うございます!」
ハジメの言葉にリリアーナは表情をパァッと明るくさせる。
「ところで、南雲さん達は次はどこへ向かうおつもりでしょうか? 神代魔法を求めているなら大迷宮を目指すのですから、西から帰って来たのなら……樹海でしょうか?」
すると、続けてリリアーナがそう言う。
「うん、そのつもり。フューレン経由で向かうつもりだったけど、一端南下するのも面倒いからこのまま東に向かおうと思ってる」
その質問にハジメがそう答えると、
「では、帝国領を通るのですか?」
「そうなるね……」
「でしたら、私もついて行って宜しいでしょうか?」
「え? なんで?」
「今回の王都侵攻で帝国とも話し合わねばならない事が山ほどあります。使者と大使の方が帝国に向かわれましたが、会談は早ければ早いほうがいい。南雲さんの移動用アーティファクトがあれば帝国まですぐでしょう? それなら、直接私が乗り込んで向こうで話し合ってしまおうと思いまして」
「王女なのにフットワーク軽いな………」
呆れた様にそう言う幸利。
「まあ、助けを求めに王城から飛び出すぐらいだしな」
輝一が苦笑する。
「それもそうか」
幸利が頷くと、
「送るのはいいけど、帝都には入らないよ? 皇帝との会談なんて絶対付き添わないからね
?」
「ふふ、そこまで図々しいこと言いませんよ。送って下さるだけで十分です」
ハジメの言葉にリリアーナは苦笑いを浮かべてそう言う。
本音としてはついて来てもらい所なのだろう。
すると、
「だったら、俺達もついて行くぞ。南雲や輝二になんてリリィを任せられない。道中の護衛は俺達がする。それに、俺がこの世界を救う! そのためには力が必要だ! 神代魔法の力が! お前に付いていけば神代魔法が手に入るんだろ!」
「いや、場所くらい教えるから行くなら勝手に行ってよ。ついて来るとか迷惑なんだけど」
光輝の言葉にハジメが本気で嫌そうな顔をする。
すると、
「南雲君、一度でいいんです。天之河君達を大迷宮に連れて行っては貰えませんか?」
愛子がそんな事を言った。
「寄生したところで、魔法は手に入りませんよ? 迷宮に攻略したと認められるだけの行動と結果が必要です」
「それは分かっています。ですが、大迷宮の難易度を知ることで、今後の指針にしていただければと……………」
愛子は、大迷宮を甘く見ている光輝が勝手に大迷宮へ行き、命を落とす事を危惧していた。
ハジメは嫌々ながらも、良い教師と判断している愛子の頼みを無下に出来ず、一度だけという条件で許可を出したのだった。
その夜。
訓練場で光輝が1人剣を振っていた。
ただ、その振り方はお世辞にも良いものではなく、ただがむしゃらに剣を振り回しているだけだ。
その理由は、
「くそ! 何で皆南雲達ばかり頼りにするんだ! 香織や雫だけじゃなく、最近では龍太郎や鈴、畑山先生やリリィまで………!」
この世界に召喚される前までは、皆が自分を頼りにしていた。
自分が間違っているとは思わなかったし、皆も笑顔で肯定してくれた。
それが今ではどうだ?
頼りにされるのは『勇者』の自分ではなく『無能』だったハジメや、自分と反りが合わない拓也達だ。
「何で………! 俺は間違っていない筈なのに………!」
自分にそう言い聞かせるように光輝は剣を振る。
その時だった。
「そうだね。君は間違っていない」
突然声がした。
「ッ!? 誰だ!?」
光輝は咄嗟に剣を構えながら辺りを伺う
しかし、訓練場に居るのは光輝1人だ。
「ッ………!?」
光輝は声の主を探す。
すると、
――バサッ
羽音が聞こえた。
その音に空を見ると、月を背に、6対12枚の翼を広げた少年のシルエットが浮かんでいた。
「なっ………!?」
その姿に驚愕する光輝。
「な、何者だ!?」
光輝は気を取り直すと叫びながら問いかける。
すると、
「心配しなくていい。僕は君の敵じゃない」
「そんな事、信じられるか!?」
その声にそう返す光輝。
「君はこう思っている筈だ。何故誰も『勇者』である自分を頼らないのか? と」
「ッ!?」
「『力』があれば、全てを救って見せる。魔人族からも、狂った神からも、この世界を護って見せる………と」
「……………」
「そうすれば、『彼ら』に騙されている幼馴染たちも、自分の所へ戻って来てくれるはずだ」
「…………ッ! 何が言いたい!?」
光輝は叫ぶ。
すると、
「フフフ………僕は君を肯定するよ」
「えっ?」
少年から出た言葉に、光輝は素っ頓狂な声を漏らした。
「そう。君は間違って無い。間違っているのは周りだ」
「………………ああ」
「彼らは力があるから認められているだけだ。君にも同じだけの『力』があれば、間違いなく彼らよりも認められる」
「……………………そうだ」
「『力』さえあれば、きっと誰もが君を見直す」
「…………その通りだ!」
光輝は強く頷く。
「力が……! 力さえあれば元通りになるんだ! 香織も雫も……龍太郎も鈴も………! 皆俺の所に戻って来てくれるんだ! 『力』さえあれば!」
光輝はその願いを口に出す。
「その願いを叶えよう」
少年はそう言う。
少年は右手の手に平を上に向けながら前に出すと、そこに小さな光の球が浮かび上がった。
「これは『光の種』」
「光の………種………?」
光輝が呟くと、その光の球がかなりのスピードで飛んできて、そのまま光輝の額に吸い込まれるように消えていく。
「な、何をした!?」
光輝は突然の事に額を抑えながら後退った。
「心配しなくていい。『光の種』が君に宿っただけさ」
「俺に?」
「最初は気付かない程小さな力。しかし、その種は君の正義を養分に成長する」
「俺の………正義…………」
「その種は成長する度に君に力を与える。つまり、君が自分の正義を貫けば、それに相応しい力が得られるという事さ」
「ほ、本当か!?」
「ああ、本当さ。そして、その種が成長しきり、花開いた時、究極の力を得る」
「究極の………力…………!」
光輝はその言葉に嬉しさを隠せない。
笑みが零れる。
「その力さえあれば………香織も雫も………!」
「ただし、花が開くかどうかは君の『正義』次第だ」
「心配いらない! 俺が間違えるはず無いさ!」
自信に満ちた言葉を口にした時、ドクンと脈打つような感覚がして、光輝に力が沸き上がる感覚がした。
「これは………力が沸き上がって来た………?」
光輝は自分の身体の変化に驚く。
すると、
「これは驚いた。早速種が一段階成長した様だ」
少年は驚いたような声を漏らす。
「お前の言っていた事は、どうやら本当の様だな?」
その言葉に、少年は口元を吊り上げる。
「言った筈だよ。僕は君の敵じゃ無いと」
「それは悪かった。謝るよ」
「いいさ。それよりも、君には期待しているよ。この世界を救ってくれ、『勇者』よ」
「任せてくれ! この世界は俺が救う!!」
再びドクンと脈打つような感覚がして、光輝に力が沸き上がる。
すると、先程までの暗い顔が嘘のように晴れ晴れとした表情で、光輝は訓練場を後にした。
その直後、
「フフフ…………哀れな奴」
少年の口からそのような言葉が漏れる。
その傍らにファントモンが現れ、
「あなたも人が悪い………『光の種』などと噓を吐くなど」
「何、力が手に入る事は嘘じゃないさ。種が成長する度に宿主に力を与え、花開いた時には究極の力を得る。ただし、力を得るのは僕だけどね。ファントモン、君が見つけた宿主は素晴らしいよ」
「フフフ………『傲慢の種』の宿主に丁度よい人間を探す任を受けておりましたが、あれ程までに『傲慢』な人間もそうはおりますまい。もう1人の候補として、ヒヤマという者もおりましたが、あちらはどちらかと言えば『強欲』な人間でしたからな」
「くくく………あれ程『傲慢』な人間なら、花開くのもそう時間は掛からないだろう。あの花が咲き、僕が力を取り戻した時、僕の復讐が始まるんだ」
「十闘士………あなた様を一度倒した人間達ですか…………」
「運命の悪戯に感謝するよ。エヒトが呼び出した人間の中に、あの時の子供が3人も混じっていたとは………!」
少年は表情を歪める。
「ファントモン、お前にはこれからも働いてもらうぞ」
少年がそう言うと、
「御意。
ファントモンは、主であるその名を呼ぶのだった。
次回予告
ハジメが作った飛空艇で樹海に向かう一行。
その途中、シアの同族であるハウリア族が帝国の馬車を襲っているのを見かける。
樹海から離れた場所で活動していたハウリア族の目的とは!?
次回、ありふれたフロンティアへ
第31話 忍ぶウサミミ忍者軍団再び!
今、ありふれた伝説が進化する。
はい、第30話です。
予想してた方もいると思いますが、檜山はファントモンよって首チョンパされました。
あとは前作の流れとそう変わってないです。
何故かこのタイミングでティオを受け入れた拓也と優花。
その理由が(笑)
それでもギリギリだったり。
そして光輝の前に現れたのは何と…………
次回もお楽しみに。
P.S 今週の返信もお休みします。申し訳ない。