ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第34話 絆の試練

 

 

『戦争』に勝利したハウリアの要求通り、帝国の亜人奴隷達は翌日中に全員解放された。

そしてハジメが飛空艇でフェアベルゲンまで送り届けた。

その際にアルフレリックに感謝され、あまり留まる気は無かったのだが、どうしても礼をしたいと言われて、大樹の周りの霧が薄くなるまでの数日の間だけフェアベルゲンに滞在した。

そして現在、亜人のシアを先頭に他のハウリア族が一行の周りを囲む形で樹海の中を進んでいた。

樹海の霧は方向感覚を狂わせるが、亜人はその霧の影響を受けないので、目的地である大樹に辿り着く為には亜人達の協力が必要不可欠なのだ。

そして当然、樹海の中では魔物達も襲ってくる。

樹海の魔物は普通の魔物よりも強い。

感覚が狂わされる霧も相まって、並の実力者ではあっという間にやられてしまうだろう。

しかし、大迷宮攻略者にとっては普通の雑魚と変わりないため別段気にする必要はないし、今のハウリア族も魔物に後れを取ることは無いだろう。

だが今、彼らは手を出さない。

理由は、大迷宮攻略が初めての光輝達のウォーミングアップ代わりだ。

ハジメの予想では、霧の影響も相まって苦戦すると思っていたのだが、

 

「はっ!」

 

光輝の聖剣の一撃が魔物を両断する。

勇者とは言っても、彼らの殆どの戦闘が、オルクス大迷宮での経験しかない。

濃霧に包まれたこの場所や、魔物の動きがオルクス大迷宮の魔物と違う事も相まってうまく戦う事が出来ない。

ハジメはそう思っていた。

しかし、蓋を開けてみれば、龍太郎と鈴はともかくとして、光輝の活躍は目覚ましいものがあった、

 

「そこだ!」

 

濃霧の中から襲い掛かって来る魔物を的確に察知し、聖剣の一撃で両断する。

真っ二つにされた魔物がドシャッ、と地面に落ちるのを見て、

 

「如何した光輝? 絶好調じゃねえか!」

 

苦労している自分とは違い、余裕で魔物を屠っている光輝を見て、龍太郎はそう口にする。

 

「この程度の魔物、俺の敵じゃないさ!」

 

光輝は余裕の笑みを浮かべながらそんな事を言う。

 

「…………思ったよりもやるね。勇者補正は僕の想像以上だったって事なのかな?」

 

ハジメが光輝の戦いを見てそう呟く。

因みに他のメンバーは、

 

「おらっ!」

 

拓也が大剣で魔物を真っ二つにする。

デジモンに進化できるメンバーも訓練に丁度いいという事で、進化せずに戦いに参加していた。

常に進化しているわけでは無いので、奇襲やデジヴァイスを手放してしまった時の備えだ。

拓也、輝二、輝一の3人は、元々戦闘経験が豊富という事もあり、危なげなく戦闘を行っている。

そして、他のメンバーも各々の戦い方で戦闘を行っていた。

まずは優花。

元々投術師であり、遠距離攻撃に優れていた彼女だったが、彼女は手に入れた神代魔法の1つ、空間魔法に高い適性を持っていた。

適正だけならユエや輝一を上回り、仲間内では最高の適性だった。

その優花の戦い方だが、

 

「界穿!」

 

自分の周辺に複数の空間ゲートを作り出し、

 

「はっ!」

 

それぞれにナイフを投擲。

そのナイフがゲートに飛び込むと、魔物達の死角に現れたゲートからナイフが飛び出し、急所に突き刺さり絶命する

この通り空間を飛び越えてナイフで攻撃できるようになり、優花の投擲術は更に強化された。

更に別の場所では、魔物達が同士討ちをしている。

 

「う~ん。自分で使っといてあれだが………えげつないな」

 

「楽だからいいじゃないか」

 

そう言ったのは幸利と恵理。

この2人は魂魄魔法に高い適性を持ち、幸利の魔物を操る能力は更に強化され、更に恵理の闇魔法も格段に効果が上がった。

その為、恵理の闇魔法で敵の意識を奪う、もしくは鈍化させた上で幸利が相手を操る能力を発動させれば、ほぼノータイムで相手を操る事が可能になっていた。

それこそ、その気になれば意志の強い人間相手でも操れる程に。

そして雫もハジメから送られた黒刀を手に活躍していた。

 

「ハッ!」

 

見事な一戦で魔物を切り裂く。

その切り口は、言い方はおかしいが、剣を使う者達の中では一番綺麗な切り口だった。

そんな彼らの戦いを見て、

 

「……………ッ………!」

 

ノイントが時折身体を震わせる仕草を見せていた。

何かをしたくて何も出来ないもどかしさ。

というより、何かできる筈なのにそのやり方を忘れているもどかしさをノイントは感じていた。

 

「私は…………」

 

ノイントはそんな自分に不安を感じていた。

そんな時、不意に拓也の背後から熊のような魔物が近付き、襲い掛かった。

 

「ッ!? しまった!」

 

拓也は咄嗟の事に焦った表情を見せる。

 

「拓也!」

 

優花も叫ぶが援護は間に合わない。

 

「ッ!」

 

拓也は防御も間に合わず、そのまま攻撃の直撃を受けると思われた。

その瞬間、

 

「拓也様!!」

 

そんな叫び声と共に、白い羽根が舞い散った。

ノイントの背中に純白の翼が広がったかと思うと、超スピードで飛翔。

同時に右手に大剣が現れそれを掴むと、片手で軽々と大剣を振り回し、拓也を襲おうとした魔物を切り裂いた。

 

「ッ!? ノイントッ……!」

 

突然の事に、拓也は驚愕する。

すると、

 

「拓也様に………手出しはさせません!」

 

ノイントの背中の白い翼が銀光を纏い、広げられた翼から魔物達に向かって羽根が射出される。

銀光を纏った羽根は着弾した対象を分解する。

銀の流星雨が魔物や樹木を次々と分解し、消滅させていく。

やがて、その銀の流星雨が止んだ時には、ノイントの前方には穴だらけの更地が広がっているだけだった。

 

「…………………ノイント、お前………」

 

その光景を前に佇むノイントに拓也は歩み寄る。

 

「……………私は………こんな力を持っていたのですね………」

 

ノイントは自分の手を見つめる。

 

「自分でも何故使えたのかは分かりません………ただ、拓也様が危険だと思った………そうしたら、身体が勝手に…………」

 

ノイントの記憶は失われたとはいえ、その力の使い方は身体が覚えているのだろう。

そして、そんな自分の手を見つめるノイントは、何処か不安そうにしているように拓也は思えた。

だから、

 

「ノイント………」

 

拓也はノイントの名を呼び、

 

「…………ありがとう」

 

そうお礼を言った。

 

「ッ………!?」

 

ノイントは驚いた様に目を見開いて拓也に振り返る。

 

「ありがとうノイント。お陰で助かった」

 

拓也はノイントのした事によって自分は助かったという事を伝える。

ノイントの行いは間違いでは無いと言いたかったのだ。

 

「あ……………」

 

ノイントは如何言えばいいのか分からず、戸惑っていた。

すると、

 

「ノイント、そう言う時は、どういたしましてって言えばいいのよ」

 

優花がそう口を出した。

 

「優花様………」

 

「『ありがとう』って言われたら『どういたしまして』。それがお礼を言われた時に返す言葉よ」

 

「あ………その………どういたしまして………?」

 

ノイントは自信無さげに答えた為、疑問形になっていた。

その様子に、拓也やハジメ達は和やかに笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

その後も問題無く樹海を進む一行。

その中で、

 

「大迷宮さえクリアできれば、俺達だって南雲くらい強くなれる。いや、南雲が非戦系天職であることを考えれば、きっと、もっと強くなれるはずだ」

 

光輝がそんな事を言った。

だが、

 

「……………そんなうまく行くもんなのか?」

 

龍太郎は疑問の声を零す。

 

「龍太郎? どういう意味だ?」

 

光輝が聞き返すと、

 

「いや、南雲が強ぇ理由の1つに、神代魔法があるって言うのは同意だけどよ………南雲が強ぇのはそれだけなのかと思ってよ」

 

龍太郎はそう言う。

龍太郎は自分が『雷』のスピリットに選ばれてから、『強さ』について考える事があった。

以前までの龍太郎は、光輝の事を『強い』と思っていた。

しかし、その光輝はスピリットに選ばれず、総合的に光輝よりも劣っていると思っていた自分がスピリットに選ばれた。

そして、自分が護るべき対象としている鈴もスピリットに選ばれた。

その事から、『強さ』とは何なのかという事を考える様になったのだ。

 

「何を言ってるんだ龍太郎! 非戦闘職で『無能』だった南雲が強くなった理由に、神代魔法を手に入れた以外に何があるって言うんだ?」

 

光輝は、ハジメが強くなったのは神代魔法が原因であると決めつけた物言いをする。

 

「いや、何って言われるとうまく言えねえけど………」

 

龍太郎は自分でもよく分かっていない為、言葉を濁す。

 

すると、

 

「みなさ~ん、着きましたよぉ~」

 

先頭のシアが振り返って皆に呼びかける。

そこには、以前と変わらず枯れているが朽ちる事の無い巨木が聳え立っていた。

 

「これが……大樹……」

 

「でけぇ……」

 

「すごく……大きいね……」

 

勇者パーティーがそう感想を漏らす。

ハジメが以前あった石板に向かって歩き出し、宝物庫から攻略者の証を取り出す。

 

「カム、何が起こるかわからないからハウリア族は離れてて」

 

「了解です、お頭。ご武運を」

 

ハジメの言葉にカム達はザッと跪いた後、散開する。

それを見届けると、ハジメはオルクスの指輪を石板の裏の窪みにはめ込んだ。

石板に文字が浮かび上がる。

 

〝四つの証〟

 

〝再生の力〟

 

〝紡がれた絆の道標〟

 

〝全てを有する者に新たな試練の道は開かれるだろう〟

 

前読んだ文章と全く同じものだった。

 

「これも前と同じだ。使う証は……【神山】以外のでいいか」

 

ハジメはそう言いながら攻略者の証をはめ込んでいく。

ハジメは適当に選んだようだが、おそらく無意識に攻略した順番にはめ込んでいる様だ。

証をはめ込むたびに石板の放つ光が強くなっていき、4つ目の証をはめ込んだ瞬間、石板の光が地面を伝って大樹に向かい、大樹そのものが輝き始めた。

 

「む? 大樹にも紋様が出たのじゃ」

 

「……次は、再生の力?」

 

ティオが興味深げに呟き、ユエがそう予測する。

大樹には七角形の紋様が浮かび上がり、明らかに何かしろと言いたげだ。

 

「じゃあ私がやるね」

 

再生魔法に一番適性のある香織がそう言って紋様に手を当てると再生魔法を発動させる。

更なる光が大樹を包む。

 

「あ、葉が……」

 

シアが呟く。

枯れていた大樹が瑞々しさを取り戻し、その枝に葉を生い茂らせていく。

瞬く間に緑の葉に覆われた大樹は、正に世界樹と呼ぶべきものに変化した。

 

「凄いな………」

 

「ああ………」

 

「これだけ大きさ………デジタルワールドでもそう無いぞ………」

 

拓也達も思わず呟く。

すると、大樹の幹の正面に亀裂が入り、ガパッと開いて洞が現れた。

 

「これが大迷宮の入り口………」

 

優花が呟く。

ハジメが一度皆に振り向くと、皆は頷いてその洞に足を踏み入れた。

大樹の洞の中に入ると、特に何があるわけでもなく、ドーム状に空間が広がっているだけだった。

 

「行き止まりなのか?」

 

光輝が訝しむ様に呟く。

だがその時、洞の入り口が閉じてしまう。

 

「出口が!?」

 

「閉じ込められたの!?」

 

龍太郎と鈴が慌てる。

 

入り口が完全に閉じて暗闇に包まれるが、すぐに足元が輝き始めた。

転移用の魔法陣だ。

 

「うわっ、なんだこりゃ!」

 

「なになに! なんなのっ!」

 

「落ち着いて! 転移系の魔法陣だ! 転移されるから気を引き締めて!」

 

ハジメが慌てる勇者パーティー達に一喝する。

そのまま一行は転移の光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

転移陣の光に包まれて一瞬意識が暗転した後、一行が転移した場所は木々が生い茂る樹海の中だった。

 

「っ……ここは……」

 

再び光を取り戻したハジメ達の視界に映ったのは、木々の生い茂る樹海だった。

大樹の中の樹海とは何ぞや?

と思わないでもない。

 

「みんな、無事か?」

 

光輝が意識をはっきりさせる為に軽く頭を振りながら仲間達を確認する。

 

「大丈夫だ」

 

「鈴も………」

 

その言葉に龍太郎と鈴が返事をする。

拓也達も無事なようで、転移したメンバーは全員要るようだ。

 

「南雲、ここが本当の大迷宮なんだよな? ……どっちに向かえばいいんだ?」

 

拓也達が飛ばされた場所は、樹海の中にぽっかりと空いた空き地であり、どちらに進めばいいのかという道標らしきものも無かった。

更に頭上は濃霧で覆われており、高所から辺りを見回すという方法も取れそうになかった。

 

「……取り敢えず、探すしかないよ」

 

ハジメは呟くと、近くの木の幹に手を当てた。

魔力のマーキングを施す″追跡〟の技能だ。

矢印が示され、どちらに向かったか分かる様にしている。

そして、一行が移動を開始しようとした時、

 

「………アンタ誰よ?」

 

突如として優花が呟いた。

その視線の先に居るのは拓也だ。

優花は、拓也をまるで敵の様に睨み付けていた。

 

「優花? どうし………」

 

「拓也の声で喋らないで! 拓也を何処へやったの!?」

 

拓也の言葉を遮ると、優花は拓也にナイフを突きつけた。

 

「優花はん!?」

 

「わわわっ!? 何やってるの~!?」

 

ボコモンとネーモンが慌てた様子で声を上げ、

 

「園部さん!? 一体何を!?」

 

光輝が戸惑いながら優花に声を掛ける。

 

「………そういう事じゃったか…………ご主人様の姿を偽るとはやってくれるのう………!」

 

すると、ティオが不機嫌そうに顔を顰めながら、金の眼を鋭くして拓也を睨み付け、部分竜化させた右腕の竜の爪を拓也に突きつけた。

 

「ティオさんまで!? 一体如何して………!」

 

シアも声を上げる。

 

「まさかっ……!」

 

すると、ハジメが何かに気付いた様に声を漏らすと、集中しながら全員を見渡す。

そして、

 

「くそっ………! 流石大迷宮……! いきなりやってくれるよ!」

 

ハジメが吐き捨てるようにそう言う。

 

「……ハジメさん? どうし――」

 

シアが、ハジメに声をかけたその瞬間、ハジメが素早い動作で何かを投げ、ユエと龍太郎、そして拓也をワイヤーで巻き付け、拘束した。

 

「ハ、ハジメさん!? ハジメさんまで一体何を!?」

 

「南雲! 一体、なんのつもりだ!」

 

状況を理解していない光輝がハジメに詰め寄る。

 

「……少し黙って」

 

ハジメは怒りを押し殺した声でそう呟くとユエの前に歩み寄っていく。

 

「ハジメ……どうしっ」

 

ユエがそう言い終わる前に、ハジメはドンナーの銃口をユエの額に押し付けた。

その直後、発砲音と共にユエの肩に銃弾が撃ち込まれる。

 

「な、何をやってるの! 南雲くん!」

 

雫が慌ててハジメを止めようとするが、

 

「雫ちゃん、待って」

 

香織は冷静な声で雫を制した。

 

「許可なくしゃべるな、偽物。紛い物の分際でユエの声を真似るな。次に、その声で僕の名を呼んでみろ。手足の端から削り落とす」

 

ハジメが凄まじい殺気を放ちながらそう言い放つ。

普段大人しめなハジメがここまで怒りを露にするのは稀だ。

 

「お前は何だ? 本物のユエは何処にいる?」

 

「……」

 

ユエの姿をした『何か』は答えない。

表情を無くして無言を貫いている。

 

「答える気はない……いや、答える機能を持っていないってことか。ならもういい。消えて」

 

ハジメはユエの形をした『何か』の頭をレールガンで吹き飛ばす。

頭部を失った『何か』の身体は一拍おいてドロリと溶け出すと、赤錆色のスライムの様なものになり、そのまま地面のシミになった。

同じように龍太郎の形をした『何か』も同じように吹き飛ばす。

拓也の方は既に優花とティオによって始末されていた。

そしてその2人も赤銅色のスライムになって溶けて消えた。

 

「ハジメさん……ユエさんと拓也さんは……」

 

「転移の際、別の場所に飛ばされたんだと思う。僅かに、神代魔法を取得する時の記憶を探られる感覚があった。あの擬態能力を持っている赤錆色のスライムに記憶でも植え付けて成り済まさせ、隙を見て背後からって感じじゃない?」

 

ハジメの説明を聞いて雫や鈴が納得したように頷いた。

 

「なるほどね。……それにしても、優花やティオさんはよくわかったわね」

 

「うんうん、鈴には見分けがつかなかったよ。どうやって気がついたの?」

 

その問いに優花は、

 

「別に……ただの直感よ。見た瞬間に分かったの。こいつは『拓也』じゃないって」

 

「妾は優花の様子からご主人様を注意深く観察して漸く、じゃな。見た瞬間に分かった優花は、流石はご主人様の正室と言った所じゃな」

 

ティオは笑みを浮かべながらそう言った。

惚気とも言える言葉に全員は苦笑するが、

 

「そ、そう言えば南雲君は何で分かったの?」

 

雫がハジメに問いかける。

 

「一度、偽者がいるって分かれば、後は注意して見れば〝魔眼石〟で違和感を見抜くことは出来るから」

 

質問にそう答えるハジメ。

一行は、行方不明になったメンバーを探す為に、行動を再開する事になった。

 

 

 

 

 

探索開始直後に蜂型の魔物の群れに襲われ、一応攻略者としてアピールするために光輝と鈴に任せてた所、光輝が難無く全滅させていた。

その様子を見て、

 

「……………天之河君のあの力………やっぱりどこかおかしい………勇者の力だとしても、あのパワーアップは不自然過ぎる………」

 

光輝の力に何処か不自然さを感じるハジメ。

それから30分ぐらいした時、

 

「「「「「キキィーーーーーッ!!!」」」」」

 

一行の前に猿型の魔物が飛び出してきた。

どこから手に入れたのか、棍棒や剣を持っている個体も居た。

その猿の様な見た目の通り、素早く、トリッキーな動きで翻弄しようとする。

 

「ちょこまかと………鬱陶しい!」

 

「わわわっ!?」

 

案の定、その動きに翻弄されて光輝は剣を躱された直後に別の個体から不意打ちを受けそうになるが、超人的な反射神経で迎撃に成功するが、鈴は完全に防戦一方だ。

見た限り猿型の魔物はある程度の知能はあるようで、個々の戦いではなく、連携を駆使して襲ってきている。

だが

 

「甘いよ………」

 

ハジメは猿の動きを完璧に見切ってレールガンにより次々に仕留めていき、

 

「うぉおおおおおりゃぁあああああああっ!!」

 

シアは大振りの攻撃でも、先の動きを読んで叩き潰し、

 

「うるさいのう………」

 

ティオが風魔法で切り裂き、

 

「消えなさい」

 

ノイントが銀光で次々と分解する。

 

「リヒト・ズィーガー!!」

 

輝二は猿のスピードに追いついた上で切り裂き、

 

「エーヴィッヒ・シュラーフ!!」

 

輝一は襲い掛かって来た猿をカウンターで纏めて薙ぎ払い、

 

「はいは~い! 援護だよ~!」

 

「これで如何だ……?」

 

恵理と幸利が魔物の意識を鈍らせたうえで、

 

「今よ!」

 

「ハッ!」

 

雫が見事な剣筋で切り裂き、優花がナイフを魔物の急所に投げつける。

 

「いいぞ~! 皆、その調子じゃハラ!」

 

「頑張れ~!」

 

ボコモンとネーモンが応援の声を上げる。

その時、その背後の木の上から、伏兵である猿の魔物がボコモンとネーモンを狙っていた。

 

「キキィ――――ッ!!」

 

隙を見て2人に襲い掛かる魔物。

 

「「え?」」

 

その鳴き声に振り返った2人に向かって猿の魔物が飛び掛かって来た。

 

「「わぁああああああああああっ!?!?」」

 

思わず抱き合いながら慌てふためく2人。

だがその時だった。

 

「キキィーーーーーッ!!」

 

近くの茂みから飛び出してきた、また別の猿の魔物が、ボコモンとネーモンを襲おうとした猿の魔物の横から飛びつき、そのままボコモン達を外れて地面を転がる。

すると、2匹の猿の魔物は、もつれあいながら2、3度回転し、片方の猿の魔物がマウントを取ると、もう1匹の猿の魔物を殴りつけ始めた。

 

「何だ………仲間割れ………?」

 

光輝が困惑した声を漏らすが、

 

「だが、これはチャンスだ………!」

 

やがて、殴られていた猿の魔物は完全に気絶し、動かなくなる。

そのマウントを取っていた猿の魔物が立ち上がり、振り返るタイミングを見計らって、光輝が聖剣を振り被りながら飛び掛かった。

 

「キ…………!?」

 

猿の魔物は驚いた様に硬直し、動けない。

 

(貰った!)

 

光輝は心の中でそう確信する。

そして次の瞬間、

 

―――ガキィィィィィィィィン!!

 

甲高い金属音が鳴り響いた。

 

「なっ!?」

 

光輝は驚愕の声を上げる。

何故ならば、猿の魔物の前にノイントが立ちはだかり、右手に持った大剣で光輝の聖剣の一撃を受け止めていた。

 

「………………!」

 

ノイントは光輝の聖剣を弾き、光輝を後退させる。

 

「如何いうつもりだ!?」

 

ノイントの行動に、光輝は叫びながら問いかける。

 

「………………」

 

その言葉にノイントは答えず、ただ、猿の魔物を護る様にその場に立ちはだかり続けている。

 

「……そうか。ついに本性を現したんだな! 魔物を護っているのがその証拠だ! やっぱり敵を引き入れるべきじゃ無かったんだ!」

 

光輝はそう叫びながら聖剣を構え直す。

すると、

 

「スピリット! エボリューション!!」

 

優花がデジヴァイスで進化する。

 

「フェアリモン!!」

 

フェアリモンとなってその場に現れる。

 

「園部さん! よおし……俺が前に出るから援護を頼む!」

 

光輝は優花が進化したことで一緒に戦ってくれると判断し、フェアリモンの前に出ながらノイントに飛び掛かる為に集中する。

すると、フェアリモンは両手の指に竜巻を発生させ、

 

「ブレッザ・ペタロ!!」

 

必殺技を放った。

……………光輝に向かって。

 

「へ…………? おわぁあああああああああああああああああああああああああっ!?!?」

 

光輝は素っ頓狂な声を漏らした後、竜巻によって高々と巻き上げられる。

 

「ちょっ!? ユウカリン!? 何やってるのさ!?」

 

鈴が思わず声を上げた。

 

「……………………」

 

その言葉にフェアリモンは答えず、

 

「…………ぐえ!?」

 

地面に落下した光輝が変な声を上げた。

そして、

 

「拓也に何してくれてんのよ!?」

 

その言葉にほとんどが押し黙った。

 

「「「「「「「……は?」」」」」」」

 

そして、その後に出てきた素っ頓狂な声。

フェアリモンは優花に戻ると、先程の殴り合いでボロボロになっていた猿の魔物に歩み寄る。

 

「…………拓也よね?」

 

そう問いかける優花。

 

「キィ!」

 

大きく頷く猿の魔物。

 

「拓也………」

 

優花はホッとした笑みを浮かべる。

 

「えっと、優花さん。まさかと思いますが拓也さんなんですか。その、私には魔物に見えるのですが……」

 

「わ、私も魔物に見えるわ。本当に神原君なの?」

 

シアと雫が驚愕した表情のまま確認を取る。

 

「優花がそう判断しているのなら間違いなかろう。こやつがご主人様を見間違えるとは思えん。それに、ノイントもおそらくそれに気付いてご主人様を守ってくれたのじゃろう?」

 

「………はい」

 

ティオの言葉にノイントは頷く。

 

「そうは言っても…………」

 

雫が戸惑った表情で拓也だという猿の魔物を見つめる。

優花達とは違い、拓也だという確証が持てないのだろう。

 

「………ハジメ、一先ず再生魔法を試してみたらどうだ?」

 

「そうだね。香織、頼める?」

 

「うん、分かったよ、ハジメ君」

 

輝二の言葉にハジメは頷き、香織に頼むと香織が前に出て、

 

「それじゃ、いくよ神原君。〝絶象〟!」

 

再生魔法を行使する。

猿の魔物の姿の拓也は再生魔法の光に包まれるが、そこには変わらず魔物の姿があった。

 

「……キキィ?」

 

「あれっ? 何で!? も、もう一度、〝絶象〟!」

 

香織が再度再生魔法を唱えるが、拓也は元には戻らなかった。

 

「どうして……」

 

「キキ……」

 

その理由が分からない2人は肩を落とす。

すると、

 

「……もしかしたら………この迷宮に入る為には元々再生魔法が必要なわけだし、迷宮の試練に関する事には何らかの対策が施されてるんじゃないのか?」

 

輝一がそう推測する。

 

「その可能性が高いかもしれないね…………でも、トラップにはまったわけでもないのに、スタート地点でゲームオーバーなんて有り得ないから、必ず元に戻る方法があるはずだよ。再生魔法が効かなかったのは、おそらくその変質が同じ神代魔法によるものだからじゃないかな。他にも特殊な方法が使われているんだろうし。挑戦者が再生魔法を持っているのは自明の理。あっさり治されちゃ試練の意味がないからね。いずれにしろ、先に進めば元に戻る方法がわかるはず」

 

ハジメの言葉に、魔物の姿の拓也は頷く。

その後、念話石によって意思疎通を可能にし、拓也である事の確認が取れた後、残りのユエと龍太郎を探す為に捜索が再会された。

尚、ゴブリンの姿にされていたユエに光輝が斬りかかってハジメに吹っ飛ばされたり、オーガの姿になって同じオーガと死闘を繰り広げていた龍太郎が居たなどの一面があったりした。

その後、中ボスらしきトレントを倒した後に生えた巨木が次のエリアへの入り口となり、俺達は再び転移することになった。

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

鳴り響く祝福の鐘………

新たな門出を祝う仲間達………

新郎である拓也の前に現れる花嫁とは!?

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

 

第35話 理想世界

 

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 

 





はい、第34話の完成です。
今回はティオではなく拓也に魔物化してもらいました。
前と同じではつまらないと思ったのでそれなりに変化を。
そして、やはり作者はノイントを気に入ってしまったのか活躍の場が多いです。
ノイントは今回から戦闘メンバー入りです。
それでは次回もお楽しみに。


P.S 今回の返信はお休みです。
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