ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第37話 昇華魔法

 

 

 

反転の試練が終わって暫くすると、天井近くの大樹の一部が輝き始めてそこから新たに枝が伸び始める。

それは、先程ゴキブリのボスが現れた広場に繋がり、階段の様に上へ続く道となる。

一行はそれを見ると頷き合い、新たな道を登り始めた。

新たに現れた枝を登っていく。

先頭を歩くハジメの両側には香織とユエがぴったりとくっ付いており、背中にはシアがくっ付いて片時も離れようとはしない。

因みに輝二と雫、輝一と恵理、龍太郎と鈴もピッタリとくっ付いている。

だが、その中の輝一と恵理だが、

 

「…………………」

 

輝一が何処か元気無さげに恵理を見下ろしていた。

 

「? どうかしたのかい、輝一」

 

その視線に気付いた恵理がそう聞くと、

 

「………いや、何でもない」

 

一度目を伏せた後、笑みを浮かべて顔を上げた。

 

「?」

 

恵理は唯首を傾げるだけだ。

そして拓也だが、

 

「……………………」

 

右腕には優花。

左腕にティオが抱き着いている。

そして背中にはノイントが寄り添う。

その状況に、拓也は困ったような笑みを浮かべていた。

優花とティオは元より、反転の試練の影響でノイントの感情が一気に芽生えた為、拓也への愛情を自覚し、その感情のまま行動に移していた。

感情が芽生えたとはいえ、まだ相手との距離感というものが良く分からない為、ノイントは心のままに行動する事しかやり方を知らない為だ。

そんな彼らの様子を光輝が何とも言えない表情で見ていた。

新たに出来た枝の通路を登り切ると、今までと同じように洞が出来ていた。

更に同じようにその洞へ入ると転移陣が起動し、光に包まれる。

次の瞬間目の前に広がったのは、庭園だった。

面積は学校の体育館程度。

小さな水路や芝生の地面が美しい風景を作っている。

するとティオが底辺の端まで歩いていき、その外を見下ろすと、

 

「ご主人様よ。どうやらここは大樹の天辺付近みたいじゃぞ?」

 

そう言うティオの言葉に拓也達も端まで行って見下ろすと、雲海の様に樹海を覆う濃霧の光景があった。

 

「凄ぇ………」

 

拓也はその光景に思わず呟く。

 

「ホントね………まるで雲の上に居るみたいだわ……」

 

同意する様に優花が呟く。

 

「……………でもおかしくないハラか? ハジメはんの飛空艇から見た時は、樹海の中にこんな大樹なんて無かったんじゃマキ」

 

「そうだったね~。少なくとも、入る時の大樹はもっと小さかったね~」

 

そう言ったボコモンとネーモンの言葉にそう言えばそうだとそれぞれに疑問が浮かぶ。

 

「……う~ん。隠蔽する魔法でも働いてるのかな?」

 

「……ん。闇系統にそういう魔法はある……魂魄魔法ならもっと……あるいは空間をずらしてる?」

 

「もしくはその両方か……だな」

 

ハジメとユエの推測に輝二も口を挟む。

すると、ハジメが水路に囲まれた小さな島を見つめ、

 

「やっぱり、ここがゴールみたいだね」

 

その呟きにそれぞれが………特に光輝達のパーティーが感嘆の息を漏らしている。

その島に足を踏み入れると、そこに立てられていた石板から魔力の光が水路を伝い、それ自体を輝かせる。

 

「………水路自体が魔法陣になっているのか」

 

輝一がそう呟いた時、頭の中に新しい神代魔法の知識が刻まれる。

すると、目の前の石板に絡みついた樹がうねり始め、人の胸像の様な形を取った。

見た感じ女性の様だ。

 

『まずは、おめでとうと言わせてもらうわ。よく、数々の大迷宮とわたくしの、このリューティリス・ハルツィナの用意した試練を乗り越えたわね。あなた達に最大限の敬意を表し、ひどく辛い試練を仕掛けたことを深くお詫び致します』

 

その女性の胸像が口を開いた。

恐らく今までと同じ、解放者が遺した言葉の様だ。

 

『しかし、これもまた必要なこと。他の大迷宮を乗り越えて来たあなた方ならば、神々と我々の関係、過去の悲劇、そして今、起きている何か……全て把握しているはずね? それ故に、揺るがぬ絆と、揺らぎ得る心というものを知って欲しかったのよ。きっと、ここまでたどり着いたあなた達なら、心の強さというものも、逆に、弱さというものも理解したと思う。それが、この先の未来で、あなた達の力になることを切に願っているわ。あなた達が、どんな目的の為に、私の魔法―― 〝昇華魔法〟を得ようとしたのかは分からない。どう使おうとも、あなた達の自由だわ。でも。どうか力に溺れることだけはなく、そうなりそうな時は絆の標に縋りなさい。わたくしの与えた神代の魔法〝昇華〟は、全ての〝力〟を最低でも一段進化させる。与えた知識の通りに。けれど、この魔法の真価は、もっと別のところにあるわ』

 

その言葉に、ハジメは食い付くように前のめりになりかけた。

 

『昇華魔法は、文字通り全ての〝力〟を昇華させる。それは神代魔法も例外じゃない。生成魔法、重力魔法、魂魄魔法、変成魔法、空間魔法、再生魔法……これらは理の根幹に作用する強大な力。その全てが一段進化し、更に組み合わさることで神代魔法を超える魔法に至る。神の御業とも言うべき魔法――〝概念魔法〟に。概念魔法――そのままの意味よ。あらゆる概念をこの世に顕現・作用させる魔法。ただし、この魔法は全ての神代魔法を手に入れたとしても容易に修得することは出来ないわ。なぜなら、概念魔法は理論ではなく極限の意志によって生み出されるものだから。わたくし達、解放者のメンバーでも七人掛りで何十年かけても、たった三つの概念魔法しか生み出すことが出来なかったわ。もっとも、わたくし達にはそれで十分ではあったのだけれど……。その内の一つをあなた達に』

 

彼女がそう言った直後、石板の中央がスライドして懐中時計の様なものが出てきた。

ハジメがそれを取ると、しげしげと見つめる。

 

『名を〝導越の羅針盤〟――込められた概念は〝望んだ場所を指し示す〟よ』

 

その言葉に召喚されたメンバーの心臓が跳ねたのを感じた。

 

『どこでも、何にでも、望めばその場所へと導いてくれるわ。それが隠されたものでもあっても、あるいは――別の世界であっても』

 

「っ……」

 

その言葉に誰かが息を呑んだ。

 

『全ての神代魔法を手に入れ、そこに確かな意志があるのなら、あなた達はどこにでも行ける。自由な意志のもと、あなた達の進む未来に幸多からんことを祈っているわ』

 

そう言い終えると、樹で出来た胸像は再び元の石板に絡みつく樹へと戻っていった。

それから暫く静寂がその場を支配する。

すると、

 

「ユエ、念の為に聞くけど……昇華魔法を使えば……空間魔法で………………世界を越えられる?」

 

ハジメが地球組の誰もが思っているであろう事を、魔法のエキスパートであるユエに問いかけた。

 

「…………………」

 

ユエはその問いに直ぐには答えず、目を瞑ってしばし思考に没頭する。

ハジメの期待に、ユエは自分の持つ知識を総動員して可能性を探っているのだろう。

やがて結論が出たのか、ゆっくりと瞼を開くとハジメと目を合わせ、

 

「…………ごめんなさい」

 

「そう……」

 

ユエから出た答えは否であった。

だが、ハジメもそれは予想していたのか落胆は無い。

しかし、ユエはハジメの期待に応えられなかった事を悔いているのか、俯いてしまう。

ハジメはそんなユエの頭を撫でながら、

 

「気にしなくていいよ。あわよくばって思っただけ。必要な神代魔法はあと一つ。それを手に入れればいいだけだから。なんにせよ、ユエがそんな顔をする必要はないよ」

 

気にしないようにそう言った。

ユエは嬉しそうにその手を受け入れている。

そこへ、

 

「な、なぁ、南雲。さっきの話……その概念魔法が使えるようになれば……」

 

光輝が恐る恐る声を掛ける。

光輝の言いたいことを理解したハジメは頷き、

 

「うん。帰れると思うよ。少なくとも、転移先はこの羅針盤が教えてくれる」

 

「そう……か……」

 

ハジメの言葉に光輝は希望を見た表情になった。

だが、若干自信無さげにも見える。

その顔を見たハジメはふと気になり、

 

「天之河君………もしかして君、駄目だった?」

 

「うっ!?」

 

ハジメがそう言うと、図星だったのか光輝は胸を押さえた。

 

「龍太郎と鈴はクリアできたみたいね」

 

雫が特に落ち込んでいない2人を見てそう判断する。

 

「ああ。光輝にはワリィが、〝昇華魔法〟って奴の使い方が頭ん中に入って来たぜ」

 

「私も同じく」

 

龍太郎と鈴はそう答えた。

 

「俺達の方も全員クリアできたみたいだな」

 

拓也は全員を見渡しながらそう判断した。

光輝はその事実に何処か納得いかなそうな顔をしている。

しかし、ハジメはそれをスルーし、

 

「とにかく、一度フェアベルゲンに戻って、少しゆっくりしよう。ゴキブリの大群は軽くトラウマだよ。精神ダメージがヤバイ……香織とユエとシアに癒されたい」

 

「うん! いっぱい甘えさせてあげるね!」

 

「くふふ……いっぱいして上げる」

 

「わ、私も、膝枕とか! いろいろしますよぉ! 何ならその先も!」

 

いつも通りのハジメ達に俺は軽く苦笑した。

 

 

 

 

 

フェアベルゲンに戻って来た拓也達は、アルフレリック達から快く客室を用意された。

因みに部屋割りはハジメ、香織、ユエ、シアで一部屋。

輝二、雫で一部屋。

輝一、恵理で一部屋。

龍太郎、鈴で一部屋。

光輝、幸利で一部屋。

ボコモン、ネーモンで一部屋。

そして……………

 

「な、なあ優花…………ティオは分かるんだが…………何でノイントがここに?」

 

拓也がやや狼狽えながら一緒に居る優花に問いかける。

拓也の目の前には、優花とティオ。

そしてノイントが立っている。

その問いかけに優花は、

 

「……………だって拓也、ノイントの事好きでしょ?」

 

若干ふてくされた様に腕を組み、顔を背けながら答える。

 

「いっ!?」

 

その言葉に拓也は激しく動揺した。

 

「い、いや……好きって………そりゃノイントの事は嫌いじゃないけど………!」

 

「隠してもバレバレよ。私が拓也の事を解らない筈ないでしょ」

 

拓也は物申そうとしたが、優花にぴしゃりと言い切られてしまう。

 

「い、いや、けど俺は………」

 

「………もちろん、拓也が私の事を一番に想ってくれてることは分かってるわ。そこは私も理解してるし、疑ってもいないわ」

 

その言葉に、拓也はちょっとだけホッとした。

すると、優花は軽く溜息を吐き、

 

「どっちかと言えば、原因は私の方なのよ。拓也の想いを受け止め切れない自分が不甲斐ないわ。だからティオも受け入れたわけだし」

 

「まあ、受け入れるまでに大分意地を張っておったがのう」

 

ティオがやれやれと言いたげにそう言うと、

 

「ご主人様にも分かり易く言えば、2人でもご主人様の相手は大変だったという事じゃ。それで、もう1人位側室増やさんかと優花と相談して居ったんじゃが…………」

 

ティオはそう言いながらノイントを見る。

 

「ノイントに感情が芽生えた事で、同時に御主人様への愛情も自覚しよったからの。それならば丁度いいと思っての」

 

「まあ、心配事も無い訳じゃないけどね…………」

 

ティオと優花はそう言う。

 

「ちょ、ちょっと待て! お前達は良くてもノイントは………」

 

「…………私はお2人が言っている事はよく分かりません。しかし、拓也様への愛が示せるというのなら、私は全て受け入れる所存です」

 

ノイントは、決意を持った表情でそう言う。

 

「そういうわけよ。こうなったらとことん甲斐性見せて見なさい!」

 

優花は吹っ切れた様にそう言い、

 

「なに、心配せずともご主人様なら3人相手でも満足させられるじゃろ」

 

ティオは当然の如く笑みを浮かべ、

 

「至らぬことがあるかと思いますが………よろしくお願いいたします」

 

ノイントはそう言って頭を下げる。

そして…………………

 

 

 

 

 

 

翌日の朝。

拓也と共に満足そうに眠る一糸纏わぬ3人の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

ハルツィナの大迷宮を攻略した拓也達。

彼らは最後の神代魔法を手に入れる為、シュネー雪原へと向かう。

最後の大迷宮に待つ試練とは!?

 

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

 

第38話 最後の大迷宮

 

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 

 

 

 

 





はい、第37話です。
大半が前作のコピペでした。
だってこの辺弄る所が思いつかないし…………
その代わり、氷雪洞穴では結構変える予定でいます。
お楽しみに。
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