ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第41話 輝一の闇。ダスクモン再び!

 

 

 

ハジメや光輝の試練と同時刻。

輝一もまた試練の間に辿り着いた所だった。

 

「ここは…………?」

 

輝一は部屋の中央にある氷で出来た円柱に近付いて行く。

その円柱の表面には、鏡の様に自分の姿が映し出されている。

輝一が何気なく氷に映った自分の姿を眺めていると、

 

「………ッ!?」

 

氷に映し出された自分の顔が突然笑みを浮かべた為、反射的に飛び退いた。

即座に槍を構えて戦闘態勢に移行する。

その氷に映し出された自分が前に歩き出し、氷の中から出て来る。

その姿は、白い髪と白い衣服。

丁度輝一の姿とは真逆の色合いだ。

 

『………やあ、俺』

 

「…………俺の偽物か………!」

 

『ああ。俺はお前の偽物だ。だが、俺はお前自身を読み取って作り出されたモノ。お前自身でもある』

 

「…………お前(自分)を倒す事が、この試練のクリア条件という事か」

 

『その通りだ。自分自身に打ち勝つ事。それがこの大迷宮のコンセプトだ』

 

「なるほど………なら、早速始めようか」

 

輝一は先手必勝とばかりに構えていた槍を突き出す。

しかし、虚像は分かっていたかのように余裕をもって躱した。

だが、輝一は動揺せず、2撃、3撃と槍を繰り出す。

 

『フッ!』

 

虚像はその突きを躱しつつ、いつの間にか持っていた槍で輝一の槍を弾く。

 

「ッ………!」

 

輝一はその勢いに逆らわずに飛び退く。

そして槍を構え直すと、再び飛び掛かり、

 

「エーヴィッヒ・シュラーフ!!」

 

槍に闇の魔力を纏わせて虚像に向かって突き出す。

しかし、

 

『エーヴィッヒ・シュラーフ!!』

 

虚像は白い魔力を槍に纏わせて迎え撃った。

槍の矛先と互いの魔力がぶつかり合う。

更に闇の魔力と白い魔力も相殺し合った。

虚像の魔力は、色こそ白いものの、能力的には輝一の闇の魔力と同じ力を持っているようだった。

 

「俺のコピーという事は、同じ魔法とステータスを持っているという事か!」

 

輝一は軽く驚きながらも、虚像の力をそう分析する。

 

『その通りだ。俺がお前だという事を理解して貰えたか?』

 

「俺と互角の力を持っているという事は………な」

 

『フッ………それだけだと思ったら大間違いだ』

 

「何………?」

 

『さあ、本当の試練を始めようか』

 

虚像はそう言うと、輝一に飛び掛かりながら槍を上段から振り下ろす。

輝一は頭上で槍を横に構えてその一撃を受け止めた。

すると、

 

『なあ俺? 一体いつまで続けるつもりなんだ?』

 

虚像が輝一にそう問いかける。

その問いは、これまでの攻略中に自分の声で何度も問いかけられた言葉。

 

「………何の事だ?」

 

輝一が問い返すと、

 

『誤魔化すなよ。分かっているんだろう? お前は俺だからな』

 

虚像はニヤッと意地の悪い笑みを浮かべるとそう返した。

 

「ッ………! 知るかっ!」

 

輝一は僅かに動揺した様に虚像の槍を弾き返しつつ、自分の槍を薙ぎ払う。

虚像は後方に宙返りをしながらそれを躱すと地面に着地し、

 

『動揺したな? それが自覚している証拠だぞ?』

 

虚像がそう言うと、輝一は歯を食いしばり、

 

「黙れ!」

 

勢いに任せて槍を突き出す。

しかし、その突きは虚像にあっさりと受け流された。

 

お前()はつい先日まで気付いていなかった………いや、気付かない様にしていた。無意識に自分を騙し、考えない様にしていた』

 

「煩い!」

 

輝一は力任せに槍を振る。

しかしその攻撃は、いつもの洗練された技は見る影もなく、余裕で虚像に見切られる。

 

『しかし、この前遂に事実を突き付けられる時が来た。分かっているだろう? ハルツィナの大迷宮………感情の反転の試練の時だ』

 

「ッ…………!」

 

『輝二や拓也、ハジメ達は、見てわかるほどの殺意を恋人達に向けていた……………それはつまり、それだけ彼らが恋人達を愛している事の証明だ。だが、お前は如何だった?』

 

「俺はっ………!」

 

輝一が口を開こうとしたが、

 

『ああ。確かに恵理に対して嫌忌の感情を持った………………だが、それだけだ』

 

「ッ………!?」

 

『恵理から殺意を向けられようと、お前()は恵理に対して殺意を持つほどの感情は沸き上がらなかった。殺意で我を忘れることも無ければ、冷静さを失う事も無かった。その程度の嫌悪感しかお前は恵理に抱かなかった…………それはつまり…………』

 

「言うなっ!!」

 

輝一は思わず叫ぶ。

しかし、

 

お前()は、()()()()()()()()()()()()()!!』

 

「ッ!?!?!?」

 

無情にもその言葉が放たれ、輝一の表情が酷く歪む。

 

お前()が今まで恵理の恋人を演じてきたのは、恵理に対する罪の意識………贖罪の為だろう? お前()のあの時言った不用意な一言が、恵理をお前()に依存させてしまった事への!』

 

「ち、違う……! 俺は………」

 

『デジタルワールドから戻ってきて、少しした後、お前《俺》は自殺しそうだった恵理を止めた! 恵理を思いとどまらせる為に、『護る』という言葉を口にした。不用意にもな』

 

「それは………」

 

『その時は恵理の家庭環境など知る由も無かったことだが、追い詰められていた恵理に対してその言葉は劇薬だった。恵理はお前()にこれ以上無いほど狂い、依存した!』

 

「くっ………」

 

『そして、母さんの知り合いの弁護士の協力もあり、中村家から恵理の親権を勝ち取り、家へ迎え入れた事も、恵理の依存性に拍車をかけた! 恵理は完全にお前に依存し、狂気とも言える愛をお前に向けた! それこそお前の周りに居る女性を徹底的に排除しようとするほどに………!』

 

「…………………」

 

『恵理がそうなったのはお前()の責任。だからお前()は恵理の恋人を演じる事にした。恵理を狂わせてしまった罪を償う為に』

 

「……………めろ」

 

『恵理の気持ちはつり橋効果で一時の気の迷いだとも考えた。暫くすれば、心の熱も冷めるんじゃないかと………』

 

「…………やめろ」

 

『だが、恵理の気持ちは冷めるどころかますます燃え上がってしまった。遂には一線を越えてしまうほどに………あの時は、罪悪感を表情に出さないようにするのに必死だったなぁ?』

 

「………やめろ!」

 

『拓也やハジメは複数の女性を恋人にしたが、お前()よりかは遥かにマシだ。あいつらは、本気で恋人達を愛している。恋人役を演じているお前()とは違って』

 

「…………もう………」

 

『もし恵理がその事に気付けば、一体どれだけ傷付くのだろうな? 狂気的とはいえ、恵理は本気でお前()を愛している。そんなお前()が、庇護対象程度の感情しか向けていないと分かれば、恵理は絶望するだろう。今度こそ死を選ぶほどに』

 

「もう………やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

輝一は槍に闇を纏わせ虚像に飛び掛かる。

 

『はっ! やっと認めたな!』

 

虚像はその一撃をあっさりと往なす。

 

『そうやって激昂する事こそ自覚している何よりの証拠!』

 

「ッ!?」

 

お前()はたった今認めたんだ。恵理を愛していないことを!』

 

「お、俺は………」

 

輝一は槍を取り落とし、二、三歩フラフラと後退りすると、頭を抱える。

 

「う、うあっ………!」

 

『感じるぞ………お前の心に闇が広がっていくのを。苦しいならその闇を解放すればいい。そうすれば楽になれる………』

 

虚像はまるで誘惑する様に囁くと、黒い霧の様に身体を変化させ、輝一を包み始めた。

 

『全てを投げ捨ててしまえ。元よりお前()が恵理を愛しなければならない理由など無いのだから………』

 

そのまま闇となった虚像が輝一に纏わりつき、

 

「うわぁあああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

 

輝一は頭を抱えながら叫び声を上げる。

その声と共に、輝一の身体から闇のエネルギーが溢れ出した。

そしてその瞬間、虚像にも予想外の事が起こった。

輝一の懐からデジヴァイスが零れ落ちたかと思うと、そのデジヴァイスから『闇』のスピリットが浮かび上がる。

更に輝一から溢れ出した闇がスピリットに纏わりつくと、そのスピリットは醜悪な姿に形を変えた。

 

『ほう………これは』

 

虚像は輝一の記憶から、該当する物を見つけ出す。

 

『まさか汚れた『闇』のスピリットが復活するとは………フフフ……ますます面白い事になりそうだ………』

 

虚像の闇はそのまま輝一と同化し、更に汚れた『闇』のスピリットが輝一に近付き、共に闇に包まれた。

 

 

 

 

 

そして、輝二と雫が目撃したのは、丁度その時だった。

 

「な、何……これ………?」

 

雫が思わず呟く。

2人の目の前にあったのは部屋の中央で渦巻く巨大な闇。

そして、その闇の中央に立つ1つの人影。

それを見た瞬間、輝二の表情が驚愕に染まった。

 

「バカな………あれは………!?」

 

そして輝二は口にする。

その存在の名を。

 

「…………ダ……………ダスクモン…………!?」

 

輝二の言葉に雫は驚愕する。

 

「ダスクモン!? それって確か、輝一が仲間になる前の………」

 

「ああ………俺達が敵として戦った『闇』の闘士だ………」

 

輝二が苦い表情をする。

渦巻く闇をダスクモンが全て吸収すると、その全貌が明らかになる。

長い金髪を持つ青年の姿で纏う鎧は漆黒の髑髏を思わせるデザインに胸・両肩・両肘・両足の計七か所に目玉をあしらった禍々しい姿。

兜は目元のみを露出したフルメットとなっていて、そこから覗く目の下には血の涙を思わせる紋様が見てとれる。

それは紛れもなく、デジタルワールドの冒険の中で戦い、幾度も拓也や輝二達を苦しめた、あのダスクモンの姿だった。

 

「輝一…………なのか………?」

 

輝二が信じられないと言った表情で呟く。

確かに輝一は『闇』のスピリットに選ばれるほどの心の闇を持っていた。

しかし、今の輝一が自分の闇に負けるとは思えなかったのだ。

その時、ダスクモンが真紅の瞳で輝二達を見据え、両手についている獣の髑髏の口から紅の刃を飛び出させる。

 

「ッ!? 雫っ! 進化だ!」

 

「っ! 分かったわ!」

 

2人はデジヴァイスを取り出す。

 

「ダブルスピリット……! エボリューション!!」

 

輝二は2つのスピリットで融合進化を、

 

「スピリット……! エボリューション!!」

 

雫はヒューマンスピリットで進化する。

 

「ベオウルフモン!!」

 

「ジングウモン!!」

 

2人が進化を終えると、ダスクモンが紅の刃を振り被り、その場で一振りする。

その瞬間、凄まじい剣圧が地面を抉りながら2体に向かってくる。

それを飛び退いて躱す2体。

 

「ベオウルフモン! 輝一は如何して……!?」

 

「分からない……! だが、今はあいつを止めるのが先だ!」

 

「わ、分かったわ!」

 

ジングウモンは仲間である輝一に剣を向ける事に躊躇したが、ベオウルフモンの強い言葉に、刀を抜いた。

ベオウルフモンも大剣を振り被ってダスクモンに斬りかかる。

すると、ダスクモンは両腕の紅の刃をクロスさせてその一撃を受け止めた。

 

「如何したんだ輝一! 目を覚ませ!!」

 

ベオウルフモンがダスクモンに呼びかける。

 

「……………うるさい」

 

ダスクモンは小さく答えると、両手を勢い良く広げてベオウルフモンの大剣を弾き飛ばす。

 

「くっ! ジングウモン!」

 

ベオウルフモンは弾かれながらジングウモンに呼びかけると、

 

「はぁああああああああっ!!」

 

ダスクモンの背後からジングウモンが斬りかかった。

だが、

 

――ギィン!

 

「なっ!?」

 

ジングウモンが驚愕の声を上げる。

ジングウモンが放った一閃は、ダスクモンが背中を向けたまま、肩越しに翳した左手の紅の刃で防がれていた。

 

「スピードはあるようだが、軽いな」

 

ダスクモンは首を動かして背後のジングウモンに目をやると、肩の目玉がギョロリとジングウモンに向く。

 

「っ! ジングウモン! 離れろ!!」

 

「ッ!?」

 

ベオウルフモンが警告を飛ばし、更に悪寒を感じたジングウモンは直感的にダスクモンの鎧の目玉の視線から逃れる様に回避行動をとる。

その瞬間、その目玉から闇のエネルギーのビームが放たれた。

 

「くっ!?」

 

ジングウモンは、二の腕に掠めながらも直撃は避けた。

 

「大丈夫か!? ジングウモン!」

 

「ええ、かすり傷よ」

 

ジングウモンの肩の鎧の一部が抉られていたが、ジングウモン自身にはダメージは無い様だ。

 

「それにしても………何て強さ………」

 

ジングウモンは一度剣を合わせただけでダスクモンの強さを実感した。

 

「ああ。ダスクモンは、ヒューマンスピリットでも融合形態と同等以上の力を持っている」

 

ベオウルフモンはそう告げる。

かつてデジタルワールドでは、5体掛かりでダスクモンに敗北し、更にベオウルフモンに進化できるようになって何とか互角。

ビーストスピリットのベルグモンに至っては、融合体であるベオウルフモンとアルダモンの2体掛かりで何とか倒したのだ。

現在はベオウルフモンとジングウモンの2体掛かりとは言え、楽観はできないだろう。

 

「……………………」

 

すると、声を掛け合う2体を見て、何故か気に入らなそうに目を細めたダスクモン。

次の瞬間、空中に跳び上がり、

 

「ガイストアーベント!!」

 

鎧の目玉と両手の獣の頭蓋の口から闇のエネルギーを発射する。

ベオウルフモンとジングウモンは互いに離れる様に飛び退く。

すると、ダスクモンは瞬間移動した様にジングウモンの前に現れた。

 

「ッ!?」

 

ダスクモンの振るわれる紅の刃を何とか受け止めるジングウモン。

その勢いに弾き飛ばされるが、ジングウモンは体勢を立て直して上手く着地し、同時に刀を鞘に納め、抜刀の構えを取る。

 

「神起………!」

 

直後に地面を蹴った。

 

「…………発勝!!」

 

ダスクモンに向かって放たれる神速の抜刀術。

だが、

 

「………ゴーストムーブ」

 

ダスクモンが呟いた瞬間、その場からダスクモンの姿が消えた。

 

「なっ………!?」

 

ジングウモンは、必殺の一撃を放った直後の隙と、驚愕による硬直が合わさり、決定的な隙を晒してしまう。

そして、音もなくその背後に現れるダスクモン。

その紅の刃が振り被られ、

 

「やめろぉおおおおおおおっ!!」

 

ベオウルフモンが一直線に向かって来た。

だが、

 

「そう来ると思っていたぞ」

 

鎧の目玉がギョロリとベオウルフモンを向き、再びビームを放った。

ジングウモンを救うために焦っていたベオウルフモンに、その不意打ちは躱せなかった。

 

「ぐぁああああああっ!?」

 

ビームの直撃を受け、苦しむ声を上げるベオウルフモン。

進化こそ解けなかったが、大ダメージを受けてその場に倒れ込んでしまう。

 

「ベオウルフモン!」

 

ジングウモンは思わず駆け寄ろうとしたが、

 

「邪魔だ」

 

「きゃあっ!?」

 

ダスクモンの一撃で吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

「くっ………!」

 

ベオウルフモンは身を起こそうとしたが、

 

「…………終わりだ」

 

ダスクモンは既に紅の刃を振り被っていた。

そして……………

 

「ブラフマストラ!!」

 

無数の火球がダスクモンへと襲い掛かった。

 

「ッ!」

 

咄嗟に飛び退くダスクモン。

 

「ベオウルフモン! ジングウモン!」

 

その声に振り向けば、新たに出来た通路からアルダモンが技を放った体勢でそこに居た。

その傍にはノイントも居る。

アルダモンはダスクモンを見据えると、

 

「ダスクモン………!? 何故………!?」

 

その姿に驚愕の表情をする。

 

「アルダモンか………」

 

ダスクモンはアルダモンに向き直ると、

 

「だが、例え融合体とは言え、ここは『氷』のフィールド。『炎』の属性のお前は力が半減している。それで俺に勝てるかな?」

 

「くっ……!」

 

その言葉にアルダモンは歯を食いしばる。

戦いは、更に激しさを増そうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

強大な闇の力で襲い来るダスクモン。

拓也達の必死の呼びかけにもダスクモンは止まらない。

しかし、その前に恵理が現れた時、彼女は自分の真実を語り出す。

彼女の想いは輝一に届くのか!?

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

 

第42話 新たなる融合進化! ライヒモン誕生!!

 

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 

 

 

 






はい、第41話でした。
まさかこう来るとは誰が予想したでしょうか?
っていうか、こうしようと思いついたのは割と最近なんですけどね。
輝一が恵理と付き合っていたのは贖罪の為だという。
そしてその闇を虚像に突かれてダスクモンに進化してしまいました。
そして次回は何と………
お楽しみに。



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