ベオウルフモンの危機に駆けつけたアルダモン。
しかし、相性の悪いフィールドの為、アルダモンの力は半減している事をダスクモンに指摘される。
「くっ………!」
それを自覚しているのか、悔しそうに歯を食いしばる。
今のアルダモンが出せる力は、通常時のアグニモンやヴリトラモンレベルが精々という所だろう。
そして過去、ダスクモンにはアグニモンやヴリトラモンではダスクモンに全く歯が立たず、挙句の果てには仲間達を見捨てて逃げ出してしまった苦い思い出がある。
だが、それでもアルダモンは怯まない。
構えを取って戦闘意思を示す。
「やはり立ち向かってくるか………」
ダスクモンは呆れたようにそう漏らすと、紅の刃を構え、アルダモンに突進した。
アルダモンを切り裂かんと振るわれる刃。
「ッ………!」
アルダモンはルードリー・タルパナを反転させ、二股の矛先のようにすると、ダスクモンの紅の刃を挟み込むように受け止めた。
「はあっ!」
しかし、ダスクモンは反対の手の刃を振るう。
「ちぃっ!」
アルダモンは舌打ちしながら同じように反対の腕のルードリー・タルパナで受け止めた。
「この程度でやられるかよ………!」
ヒューマンスピリットのみでありながら、融合体と同等以上のスペックを誇るダスクモンにアルダモンは強がって見せる。
「………そうでなくては面白くない」
ダスクモンは涼しい顔でそう言うと、一旦飛びのいて距離を取った。
その時、
「リヒトアングリフ!!」
起き上がったベオウルフモンが左腕の武装を展開し、ミサイルとレーザーを放つ。
ダスクモンは爆発に呑まれた。
「ベオウルフモン!」
「アルダモン、大丈夫か!?」
「ああ! でも、輝一は何故またダスクモンに………」
「信じられないが、おそらく試練の影響で心の闇に呑まれてしまったのかもしれない………」
「そんな………」
アルダモンも信じられないと言いたげな表情をする。
煙が晴れていくと、大したダメージを受けていないと思わせるダスクモンの姿が現れた。
「輝一! 一体どうしたんだ!? 目を覚ませ!」
アルダモンはそう呼びかける。
「……………うるさい!」
アルダモンの呼びかけも、ダスクモンは切って捨てながら、再び斬りかかってくる。
「くっ!」
その前にベオウルフモンが立ちはだかり、一撃を受け止めた。
「そこよ!」
その瞬間、再びジングウモンがダスクモンの背後から斬りかかった。
「甘い!」
ダスクモンはもう一本の紅の剣でジングウモンの刀を受け止める。
だが、
「「今だ(よ)! アルダモン!!」」
2人が同時に叫ぶ。
その瞬間、
「はぁあああああああああああっ!!」
アルダモンが拳を握りしめ、大きく振りかぶりながら突っ込んできた。
しかし、
「舐めるなぁあああああああっ!!」
ダスクモンが叫ぶと、その体から闇のエネルギーが放出され、ベオウルフモン、ジングウモン、そしてアルダモンを吹き飛ばした。
「「うわぁああああああああああああああっ!?」」
「きゃぁあああああああああああああっ!?」
それぞれが悲鳴を上げながら吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
闇に包まれたダスクモンは、紅の瞳を輝かせると、その場で飛び上がり、
「ダスクモン! スライドエボリューション!!」
その姿を醜悪な巨鳥へと変えていく。
「ベルグモン!!」
漆黒の巨大な翼の羽搏きによって暴風が吹き荒れる。
「くっ……! ベルグモンッ………!」
「これがビーストスピリット!?」
ベオウルフモンがベルグモンの名を叫び、ジングウモンがその存在感に戦慄する。
すると、額の第三の目が輝き、
「マスターオブ………ダークネス!!」
紅の破壊光線が放たれた。
3体は咄嗟に飛びのいたが、着弾時に大きな爆発が起こる。
「「うわぁあああああああっ!?」」
「きゃぁあああああっ!?」
その爆発で吹き飛ばされる3体。
「拓也様!?」
退避していたノイントが叫ぶ。
だが、ここで飛び出しても足手纏いにしかならないことが分かっているため、飛び出すことはしない。
「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
ベルグモンは迷宮そのものを揺らすが如く咆哮を上げる。
そのまま足の鋭い爪で襲い掛かろうとしたとき、
「アルティメットサンダー!!」
「でやぁっ!!」
ベルグモンの側頭部に強烈な電撃と2本のトマホークが着弾する。
その攻撃に怯み、攻撃を中断した。
その攻撃を放ったのは、
「ボルグモン! ブリザーモン!」
アルダモンの叫んだ通り、新たに出来ていた通路の入り口に、ボルグモンとブリザーモンがいた。
その傍らにはボコモンとネーモンの姿もある。
更に、
「ハリケーンボンバー!!」
「ギルガメッシュスライサー!!」
ベルグモンに追撃するのはギガスモンとシューツモン。
その攻撃を受けたベルグモンは、後退する。
すると、
「あ、あれは十闘士の一人、『闇』のベルグモン!? なぜじゃ!? なぜまたベルグモンが!」
「え~!? どうして~!?」
ボコモンとネーモンが驚愕しながら叫ぶ。
「『闇』の闘士………? ならあれは輝一なのか!?」
ボルグモンも驚きながら叫ぶ。
「ええっ!? 『闇』のビーストスピリットって、あんなに怖い姿なの!?」
ブリザーモンも驚きながらそう言うが、
「違う! 確かにベルグモンは『闇』のビーストスピリットじゃが、輝一はんが自分の闇に打ち勝ったことで、『闇』のスピリットは生まれ変わり、レーベモンとカイザーレオモンのスピリットになったんじゃマキ! それがなぜ再びベルグモンに……!?」
「もしかして、この迷宮の試練の所為だったりして~?」
ボコモンの言葉に、ネーモンがそういうと、
「まさかとは思うが………それしか考えられん」
ボコモンは信じたくないと言わんばかりだが、その可能性が高いことを示唆した。
その時、
「マスターオブダークネス!!」
再び紅の破壊光線を放つベルグモン。
それぞれは散開して避ける。
そして散り散りに駆け回ると、
「ブラフマストラ!!」
アルダモンが側面から攻撃を仕掛ける。
その攻撃にベルグモンがそちらを振り向けば、
「リヒトアングリフ!!」
逆サイドからベオウルフモンが攻撃する。
更に、
「グレッチャートルペイド!!」
ブリザーモンが伸ばした髪の毛の束がベルグモンの足に絡みつく。
「ぐぐっ………」
ブリザーモンだけでは力負けしていたが、
「ウインドオブペイン!!」
頭上からシューツモンが強烈な風の刃を叩きつけ、その勢いをプラスしてベルグモンを地面に叩き落とした。
すると、ギガスモンが勢いよく飛びあがり、
「アースクエイク!!」
空中から勢いをつけて両腕を地面に叩きつけると、ギガスモンの周囲の地面が爆砕。
ベルグモンを再び宙に浮かせる。
「ヴヴォァアアアアアアアアアアッ!?!?」
さらにそこにジングウモンが駆け込んできて、
「ジングウモン! スライドエボリューション!!」
ジングウモンがデジコードに包まれ、使用スピリットをビーストスピリットに変更する。
そして、
「マカミモン!!」
デジコードが消えて現れたのは翠の装甲に覆われた狼型のデジモンだった。
「あれが新たな『鋼』のビーストスピリットの姿か!」
ベオウルフモンが驚愕しながら叫ぶ。
マカミモンはそのまま空中に飛び上がると、空中に足場があるように宙を駆ける。
そしてベルグモンに向かっていくと、体の至る所から鋼の刃が飛び出した。
「
全身が凶器と化したその状態で、ベルグモンに突っ込んでいく。
「はぁあああああああああああっ!!」
マカミモンはその俊敏性と空中を駆けまわる能力を生かし、縦横無尽に駆け回りながらベルグモンに傷を負わせていく。
「凄いな……! マカミモン」
その強さに思わずそうこぼすアルダモン。
ベルグモンが再び地に落ちると同時にマカミモンはその場を離脱した。
何故なら、ボルグモンが頭部の砲身をベルグモンに向けていたからだ。
「フィールドデストロイヤー!!」
その砲口から、強烈な砲撃が放たれた。
凄まじいエネルギーの奔流がベルグモンを襲う。
「やったか!?」
ボルグモンは期待を込めてそういうが、
「そういうのは、やってないフラグっていうんだよ!」
そんな声が聞こえた。
その声にボルグモンが振り向けば、ハジメを先頭に、香織、ユエ、シア、ティオ、そして恵理の姿があった。
その直後、
「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
耳を劈く咆哮と共に爆煙が吹き飛ばされ、ベルグモンがその姿を見せつける。
「これだけやっても倒せないの!?」
シューツモンがベルグモンの耐久力に驚愕する。
「こうなったら………」
すると、ブリザーモンが思いついたように振り向き、
「出番だよ! 恵理!」
そう叫んだ。
「へっ? 僕かい?」
恵理は、自分を指差しながら意外そうにそう零す。
「そうだよ! 恵理の愛で木村君の目を覚ましてあげるんだよ!!」
ブリザーモンはそう叫ぶと、恵理は少し困ったような顔をして、
「う~ん…………それは無理じゃないかなぁ~?」
どこか悟ったような雰囲気でそう答えた。
「えっ?」
恵理の言葉にブリザーモンが困惑していると、ベルグモンの視線が恵理を捉えた。
「………………恵理」
ベルグモンが恵理の名を呟く。
「そうだよ木村君! 君の愛する恋人の恵理だよ!」
ブリザーモンはそれをチャンスと捉えたのかそう捲し立てる。
だが、
「……………………ヴヴォァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
ベルグモンは大人しくなるどころか、より一層の闇のエネルギーを放出しながら咆哮を上げた。
「くっ!?」
「うっ……!?」
「わぁあああああああっ!? 何で!?」
それぞれがその衝撃に耐える。
ベルグモンは咆哮を終えると再び恵理を見据え、
「ベルグモン! スライドエボリューション!」
デジコードに包まれ縮んでいき、
「ダスクモン!!」
再びダスクモンとなって表れた。
「……………恵理………!」
ダスクモンは恵理の名を口にしながら恵理を睨みつけた。
「輝一…………」
対する恵理は、やはり悟ったような表情でダスクモンを見つめ返す。
次の瞬間、ダスクモンは恵理に接近すると左手で恵理の胸倉を掴んで地面に叩きつける。
「うっ!?」
恵理は苦しそうな声を漏らすが、ダスクモンは右腕から紅の刃を出現させるとそれを振り被った。
「恵理!?」
「やめろ輝一!!」
仲間たちが叫ぶがその紅の刃が突き出され、恵理の首のすぐ横の地面に突き刺さった。
いつでも恵理の首を切り裂ける体勢だ。
地面に仰向けに倒れる恵理と、押さえ付けるダスクモンの視線が交差する。
すると、
「……………やっぱり、君が闇に呑まれてしまった原因は僕なんだね………輝一」
恵理はそうつぶやく。
すると、ダスクモンは何かに耐えるように体を振るわせた後、
「………俺は…………俺は………!
全てを吐き出すような勢いでそう叫んだ。
「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」
その言葉に全員が驚愕する。
「…………………」
恵理は黙っていた。
「………俺はお前を愛そうとした。それがお前を俺に依存させてしまった俺の贖罪だと思った! だが、ハルツィナの感情の反転の試練で分かってしまった。やはり俺はお前を愛していなかったと!!」
「…………………」
それでも恵理は黙っている。
「俺にとって、お前は所詮庇護対象でしかなかった! それ以上にはなり得なかった!!」
「……………………」
「これが俺だ! お前をずっとだまし続けてきた、木村 輝一という罪人の本性だ!!」
ダスクモンは全てを吐き出し終えたと言わんばかりに息を吐いた。
すると、
「………………そんな事…………」
そこで初めて恵理が口を開く。
そして出てきた言葉は、
「…………そんな事、始めっから気付いてたさ。 君が僕を愛していない事ぐらい」
「何…………?」
ダスクモンが虚を突かれたと言わんばかりに呆けた。
「そもそも、僕が何のために僕達は夫婦だって言い広めたと思ってるのさ? 外堀埋めるために決まってるじゃん」
恵理が次々に驚愕の事実を口にする。
「なら何故……!? 何故俺が愛していないと知りながら関係を続けた!? 俺はお前を騙して………!」
「そんなの、僕が輝一を愛してるからに決まってるよ!」
恵理はそう即答した。
「なっ………!?」
「輝一が僕を愛していなくても、僕は輝一を愛してる。それはもうどんな手を使ってでも輝一を僕のものにしたいってぐらいね。鈴曰く僕はヤンデレだぜ? 僕を愛していない位で僕が輝一を愛することをやめるだなんて、甘く見ないで欲しいな?」
「恵理……………」
「だから覚悟しなよ輝一。これからも僕は君を逃がすつもりはないぜ?」
ダスクモンは後退り、頭を抱え始めた。
「恵理………俺は…………! うわぁあああああああああああああああああああああああっ!?!?」
その叫びと共に、ダスクモンの姿が不安定になり、まるで吐き出されるように輝一がダスクモンの内部から飛び出してきた。
輝一はそのまま地面に膝をつき、両手も地面に突く。
「はあ……はあ…………」
「輝一」
そんな輝一に恵理が近づく。
「恵理…………俺は…………」
輝一は申し訳なさそうに項垂れる。
「輝一、僕は諦めないぜ。絶対に輝一を本気で振り向かせて見せるから」
その言葉に、輝一は顔を上げる。
「だから謝る必要なんかないさ。愛してるぜ、輝一!」
まるで宣戦布告のように恵理は笑みを浮かべながら言い放った。
「………………恵理」
その姿に輝一も小さく笑みを浮かべる。
その時、
『まさか、あの状況から俺を振りほどくとはな………』
輝一と同じ声がした。
『ならば試練の再開だ。俺を打ち破って見せろ!』
見れば輝一の虚像が再びダスクモンの闇と一体化しようとしている。
「させるか! スピリット!!」
輝一はスピリットを呼ぶ。
ダスクモンの内部から、レーベモンのスピリットと、カイザーレオモンのスピリットが飛び出してきた。
そのスピリットは再び輝一のデジヴァイスに収まる。
しかし、ダスクモンの闇は消えてはいなかった。
「なんだと!?」
『なるほど。どうやらお前に深い闇がスピリットを2つに分けたようだ。丁度いい』
ダスクモンの闇を虚像が纏っていくと、再びダスクモンとなってその場に現れた。
『これはお前の闇そのもの! この俺に打ち勝てるか!?』
それを見ると、輝一は立ち上がり、
「皆! 手を出さないでくれ!」
輝一はそう叫ぶ。
「輝一!? しかし……!」
ベオウルフモンは一瞬躊躇する。
「頼む! 俺は今度こそ自分の闇に打ち勝たなければいけないんだ!」
「輝一…………ッ! わかった!」
ベオウルフモンは、葛藤を見せるが最終的に了承した。
「行くぞ! 俺の闇!」
輝一はデジヴァイスを構える。
「スピリット! エボリューション!!」
輝一はヒューマンスピリットを使って進化する。
「レーベモン!!」
レーベモンとなってその場に現れると、槍と盾を構えた。
ダスクモンも紅の刃を構える。
「はぁあああああああああああああっ!!」
『ぉおおおおおおおおおおおおおっ!!』
互いが同時に飛び出し、中央で激突する。
レーベモンの繰り出した槍をダスクモンが左の刃で受け止め、ダスクモンが繰り出した右の刃をレーベモンが盾で防ぐ。
その場で弾き合うと距離を取り、
「エントリヒ・メテオール!!」
レーベモンは胴の獅子の口から闇のエネルギーの砲撃を放ち、
「ガイストアーベント!!」
ダスクモンは鎧の目玉から光線を放つ。
それらがぶつかり爆発を起こす。
2体は同時に飛び出し、
「エーヴィッヒ・シュラーフ!!」
「エアオーベルング」
レーベモンは闇を纏った槍の一撃を。
ダスクモンは両手の紅の剣で紅の月を描き、渾身の一撃で突撃する。
槍と双剣が激突し、爆煙を吹き飛ばす。
「くっ………!」
その激突はレーベモンが僅かに押し負けた。
レーベモンは吹き飛ばされつつ体勢を立て直して地面に着地する。
「まだまだ!」
レーベモンはそう叫ぶとデジコードに包まれた。
「レーベモン! スライドエボリューション!!」
レーベモンは使用スピリットを変更し、漆黒の獅子へと姿を変える。
すると、
「ならばこちらも!」
ダスクモンはその場で飛び上がると、
「ダスクモン! スライドエボリューション!!」
同じようにデジコードに包まれ、
「ベルグモン!!」
再びベルグモンとなって表れた。
カイザーレオモンは駆けだすと、
「シュバルツドンナー!!」
口から圧縮した闇のエネルギー弾を放つ。
それはベルグモンの翼の付け根に着弾。
「うぉおおおおおおおっ!!」
カイザーレオモンはシュバルツドンナーを連射。
次々とベルグモンに着弾していく。
だが、
「ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
ベルグモンが咆哮と共に羽搏くと闇のエネルギーが噴出し、シュバルツドンナーをかき消す。
更に、ベルグモン自身にもあまりダメージは見られなかった。
「くっ……!」
カイザーレオモンは悔しそうに歯噛みする。
『諦めろ。お前は
ベルグモンとなった虚像はそう言うと、
額の第三の目にエネルギーを溜め始める。
「俺は………負けない……!」
カイザーレオモンは全身に闇のエネルギーを纏っていく。
そして、
「マスターオブ………ダークネス!!」
ベルグモンの額の目から破壊光線が放たれ、
「シュバルツ・ケーニッヒ!!」
カイザーレオモンは闇のエネルギーで出来た獅子を纏いながら突撃した。
破壊光線と闇の獅子が激突。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
カイザーレオモンは破壊光線を弾きながらベルグモンへ向かっていく。
だが、
『甘いぞ!!』
虚像の叫びと共に放たれるエネルギーが増加。
「なっ!?」
驚愕の声と共に、闇の獅子が打ち破られた。
破壊光線がカイザーレオモンに直撃。
そのまま吹き飛ばされ、地面に着弾。
大きな爆発に呑まれた。
「ぐわぁああああああああああっ!?!?」
カイザーレオモンの悲鳴と共に、デジコードに包まれ、輝一の姿に戻ってしまった。
地面に倒れている輝一。
「ううっ……!」
うめき声をあげているので生きてはいる。
「輝一!」
ベオウルフモンは心配そうな声を上げる。
しかし、
「ま、まだだ………!」
輝一はそれでも立ち上がる。
体中がボロボロで、立っているのがやっとでも、輝一は立ち上がった。
「俺は………もう………自分の闇に負けるわけにはいかない………!」
『ふん。往生際が悪いぞ!』
ベルグモンはそういうと、輝一の周りを飛び始め、翼の先端を地面に擦り始めた。
そこからは怪しい赤い線が描かれる。
その赤い線で輝一を中心に円を描くと、
「ゾーンデリーター!!」
描いた線から闇がせりあがってきた。
それは、巨大な口が円の内部を飲み込むが如く。
ゾーンデリーター。
描いた円の内部を完全消滅させてしまう技だ。
その技を受けてしまえば、たとえ融合体のアルダモンやベオウルフモンでも消滅してしまうだろう。
そんな技が、今は生身の人間である輝一に向かって放たれた。
しかも現在の輝一は満身創痍。
ゾーンデリーターの範囲から逃げ出すことも難しい。
輝一が徐々に闇の口に呑まれていく。
「輝一!」
ベオウルフモンが叫ぶ。
「俺は………負けない…………!」
それでも輝一は諦めない。
「俺は………もう一度始めなきゃいけないんだ………! 恵理との関係を………!」
輝一は自分の闇と向き合って改めて気付いたのだ。
恵理に対して、罪悪感というフィルターを通して見ていた事に。
「今度はちゃんと………恵理自身を見てあげるんだ…………それでやっと始められるんだ…………俺達の本当の関係を………!」
輝一は自分の望みを口にする。
それで恵理を愛せるかはわからない。
それでも、今までの偽りの関係ではない、本当の関係を始められる。
「だから俺は…………負けられないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
輝一は渾身の力で叫んだ。
その瞬間、闇の口が閉じ切った。
「輝一ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」
ベオウルフモンの悲痛な叫びが響く。
『終わりだ!』
ベルグモンがそう宣言した。
闇の内部で、輝一は佇んでいた。
技が発動し、この内部空間が消滅するのに幾ばくも無いだろう。
だが、輝一の手には確かな輝きがあった。
「これは…………?」
輝一はその輝きに目を向ける。
その光はデジヴァイスの画面から放たれていた。
そしてその画面には、一対の翼を表すような紋章が浮かび上がっていた。
「この紋章は………」
そこに浮かび上がっていたのはセラフィモンの紋章だった。
その輝きが強さを増し、輝一を包み込んだ。
白い光の中、輝一の周囲にヒューマンスピリットとビーストスピリットが浮かび上がる。
「ヒューマンスピリット………ビーストスピリット…………」
その2つのスピリットに目をやる。
そして輝一は一度目を伏せると、
「…………感じる…………力を…………新しい力を感じる…………これは………!」
再び目を見開き、感じた力を開放するためにデジヴァイスを掲げた。
その画面に、ヒューマンスピリットとビーストスピリットが重なって描かれた。
突き出した左手に、球状となったデジコードが発生する。
そのデジコードに右手に持ったデジヴァイスをなぞるように滑らせる。
「ダブルスピリット………! エボリューション!!」
輝一の身体をデジコードが包んだ。
「ぐっ………ああああああああああああああっ!!」
叫び声を上げる輝一。
デジコードの中で、2つのスピリットを同時に纏っていく。
手。
体。
足。
そして頭部に2つのスピリットが重なる。
レーベモンとカイザーレオモン。
人と獣の力を兼ね備えた闘士。
その名は、
「ライヒモン!!」
『終わりだ!』
ゾーンデリーターの空間の外でベルグモンが宣言する。
しかしその瞬間、ゾーンデリーターの黒い空間の壁に突如として罅が広がった。
『何っ!?』
ベルグモンが驚愕の声を漏らした瞬間、その空間が割れるように破壊された。
「くっ………いったい何が起こったんだ!?」
アルダモンがその衝撃に耐えながら前を向いた。
すると、そこには一つの人影があった。
それは、頭部、手、足、関節部分がレーベモン。
肩から腕、体、腿がカイザーレオモン。
更にその手には槍を持ち、背中にも金の翼があった。
『なんだ? お前は!?』
ベルグモンが問いかけると、
「………俺は………『闇』の闘士の融合形態…………ライヒモン!!」
そう名乗りを上げるライヒモン。
「ライヒモン…………もしや、輝一はんがダブルスピリットエボリューションした姿なのか!?」
ボコモンがそう叫ぶ。
『馬鹿な!? お前の記憶にはそんな進化はなかったはず!』
驚愕の声を上げるベルグモン。
「当然だ。たった今進化できるようになったのだからな」
ライヒモンはそう答える。
『くっ! たとえ新たな進化ができたとしても、この強大な闇の力に勝てるものか!』
ベルグモンが闇のエネルギーを吹き出しつつ額にエネルギーを溜める。
『マスターオブ……ダークネス!!』
第三の目から放たれる破壊光線。
「ロート・クロイツ!」
それに対し、ライヒモンの頭部の獅子の目から放たれる紅の光線。
それらがぶつかり合うと、一瞬拮抗したかと思うと、次の瞬間には一方的にライヒモンのロート・クロイツがマスターオブダークネスを押し始めた。
『なんだと!? ぐわぁあああああああああっ!?!?』
押し切られると思っていなかったベルグモンは直撃を受けてそのダメージから地に落ちる。
すると、ライヒモンは背中の金の翼で空中に飛び立ち、ベルグモンの真上に来ると、手の槍を振り被り、その槍に闇を集中させ始めた。
そして、
「
闇を纏った槍が投げ放たれた。
その槍がベルグモンの体に突き立つと、ベルグモンを闇の球体が覆った。
ライヒモンの必殺技、『
それは、効果範囲内の物理法則を無力化させる技であり、この効果範囲内では、あらゆる事が許される。
その闇の中で起こっていることを知っているのは、ライヒモンのみ。
その闇が砕けたとき、ベルグモンはズタボロになっており、成す術なくデジコードを浮かび上がらせた。
ライヒモンがその前に降り立つと、
「乱されし邪悪な心よ。闇に埋もれて眠るがいい。このデジヴァイスが浄化する!」
その手にデジヴァイスが握られる。
「デジコード………! スキャン!!」
デジヴァイスをデジコードになぞる様に滑らせると、デジコードがデジヴァイスに吸い込まれていく。
それに伴ってベルグモンの姿が消え、同時に輝一の虚像も消え去った。
それを見届けると、ライヒモンはデジコードに包まれて輝一の姿に戻る。
すると、
「輝一!」
恵理が輝一に呼び掛けた。
輝一が振り返ると、
「流石輝一だね!」
恵理が満面の笑みを浮かべながらサムズアップしていた。
輝一は一度目を伏せると、
「………ああ!」
目を開けると同時に笑いかけた。
それは今までの困ったような笑みではなく、輝一から恵理へ向けられた本当の笑み。
ここから始まる、2人の新しい関係の始まりの笑みだった。
次回予告
全ての試練を突破した拓也達はついに最後の神代魔法を手に入れる。
しかし、その時ハジメとユエに異変が起こる。
2人にいったい何が起こったのか!?
次回、ありふれたフロンティアへ
第43話 変成魔法と概念魔法
今、ありふれた伝説が進化する。
はい、第42話でした。
今回は輝一の中心な話でした。
輝一と恵理の関係はこんな感じでどうでしょうか?
納得できますかね?
そして登場ライヒモン。
ライヒモンの必殺技についてはよくわからんのでこんな感じで。
あとはオリジナルビーストスピリットのマカミモンです。
マカミモンの情報は以下の通りで。
マカミモン:ハイブリット体 サイボーグ型 ヴァリアブル種
必殺技:『
備考: 『鋼』のビーストスピリットが雫の意志で突然変異を遂げた姿。
緑色の鋼鉄の狼の姿をしたサイボーグ型デジモン。
空中を自由に駆け回る事ができる。
身体中には無数の刃が隠されており、近付くものはバラバラにされる。
得意技は空中を駆けまわり素早い動きで敵を食い破る『オオクチ』。
必殺技は身体中に隠された刃を展開し、全速力で突撃して敵をバラバラに粉砕する『
こんな感じで。
P.S今回の返信はお休みです。