ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第43話 変成魔法と概念魔法

 

輝一がライヒモンに進化し、己の闇の化身であったベルグモンを倒した後。

一行が休憩を取っていると、程なく新しい通路がこの場に繋がり、そこから光輝が現れた。

 

「皆! 無事だったか!」

 

光輝は嬉しそうに呼びかける。

 

「おめぇこそ無事だったんだな! 今回の試練も光輝には相性悪いんじゃねえかって心配してたんだぞ!」

 

龍太郎がそう返す。

すると、光輝は笑みを浮かべ、

 

「ははは! 何を言ってるんだ龍太郎? 俺があんな出鱈目を並べるだけの偽物に負けるはずないじゃないか!」

 

「………えっ?」

 

光輝の言葉に龍太郎は呆けた声を漏らした。

 

「い、いや、今回の試練って自分の闇に打ち勝たなきゃいけないやつだろ?」

 

龍太郎は困惑しながらそう問いかけるが、

 

「……? ああ、それっぽいような事を言ってこっちの不安を煽る作戦だろう。俺に闇があるはずないじゃないか!」

 

光輝は自信を持った笑みを浮かべてそういった。

 

「…………あ~、光輝ならあり得る………のか?」

 

龍太郎は少し釈然としないながらも、『光輝なら』という理由で無理矢理納得することにした。

 

 

 

合流した一同が先へ進むと、この空間に転移してきた時と同じような光の膜を発見し、注意深く警戒しながらその膜に飛び込むと、広い空間に出て、目の前には氷の神殿があった。

 

「……どうやら、今度は分断されなかったみたいだね」

 

「……ん。それにあれ」

 

「ふむ、どうやら、ようやく辿り着いたようじゃの」

 

「綺麗な神殿ですねぇ」

 

「……攻略……したんだ……ぐすっ」

 

「鈴ちゃん……やったね」

 

「……やったわね」

 

「おうよ。何回、死にかけたかわからねぇけどな」

 

「それは、あんたが毎回、後先考えず突貫するからでしょうが」

 

「いやぁ、ははっ、まぁ、結果オーライってことでいいじゃねぇか」

 

それぞれが感慨深い言葉を口にする。

氷の神殿に辿り着き、扉を開けると、そこには外観に似合わず、何処かの屋敷と思うほどの邸宅のエントランスがあった。

 

「見た目は神殿なのに、中身は住居だね」

 

「……ん。オスカーの隠れ家と似てる」

 

「言われてみればそうだね」

 

ハジメとユエ、香織がそう漏らす。

羅針盤の指し示す方向に従ってその中を探索すると、程なく魔法陣がある部屋に辿り着いた。

最早慣れたもので、彼らは迷うことなくその魔法陣に足を踏み入れた。

 

「………………変成魔法……か」

 

拓也は頭の中に刻み込まれたその魔法を口にする。

 

「簡単に言えば、生物を作り変える魔法か」

 

「これはまたとんでもない魔法ね………あのフリードってやつが強力な魔物を従えていたのは、この魔法のお陰だったわけね」

 

その魔法の内容を知り、フリードが多くの強力な魔物を従えることができていた理由をしる。

 

「よしっ………!」

 

光輝もガッツポーズしており、どうやら変成魔法を手に入れることができたようだ。

それはともかく、最後の神代魔法を手に入れたことを皆が喜び合おうとしたその時だった。

 

「ぐぅ!? がぁああっ!!」

 

「……っ、うぅううううっ!!」

 

ハジメとユエが突然頭を抱えて苦しみ始めたのだ。

 

「ハジメさん!? ユエさん!?」

 

「どうしたの、2人共!!」

 

「ハジメ!? ユエ!?」

 

「どうしたんだ!?」

 

それぞれが動揺しながら声をかけるが、

 

「落ち着かんか! 香織! 呆けるでない!」

 

「え? あっ、うん、直ぐに診るから!」

 

取り乱した皆にティオから叱咤が飛ぶ。

そのお陰で我を取り戻した香織が2人を診察しようとした時、

 

「っぁ……」

 

「……んっ」

 

2人は糸が切れた様に気を失ってしまった。

倒れそうになるところを、シアがハジメを、雫がユエを支える。

一体何が起こったのかと困惑する皆に、

 

「取り敢えず、2人を休ませんとの……」

 

こんな時でも冷静なティオがそう言う。

解放者の住処の中を探索し、客室の様なベッドがある部屋をいくつか見つけ、それぞれを寝かせる。

それから皆がリビングの様な部屋に集まると、

 

「一体ハジメさん達に何が起きたのでしょうか?」

 

シアがそう切り出す。

ここにいるメンバーの多くが首を傾げていた。

すると、

 

「倒れた2人の共通点じゃが…………全ての神代魔法を手に入れている事じゃマキ」

 

ボコモンがそう言った。

 

「それがどうしたの~?」

 

ネーモンが気の抜けた声でそういうと、

 

「むっ! もう忘れたんかい!!」

 

「アイタッ!?」

 

ボコモンがゴムパッチンを食らわせる。

 

「ハルツィナの大迷宮をクリアした時に聞いたじゃろう! 全ての神代魔法を手に入れた者には、新たな魔法が与えられると!」

 

「概念魔法か………!」

 

輝二がそう口にする。

 

「なるほど、ハジメとユエは、変成魔法に加えて概念魔法の知識も上乗せして書き込まれた。その影響で一時的に脳に負荷がかかって気絶したというわけじゃな」

 

ティオが納得する。

 

「あれ? じゃあ何で神原君は平気なの? 最初から南雲君達と一緒だったんでしょ?」

 

鈴が首を傾げながらそう問いかけると、

 

「俺はオルクスの大迷宮はクリアしたとは認められなかったんだ。まあ橋から落ちてデジタルワールドに行った後、戻ってきたのがボス部屋だからな。認められなくて当然だけど……」

 

拓也がそう説明する。

 

「ともかく、暫くすればハジメ君達は目を覚ますんだね?」

 

香織がそう言うと、

 

「ん~……! おそらくとしか言えんが………」

 

ボコモンは腕を組みながら唸りつつも、そう答える。

それでも、香織ははあからさまに安堵の表情を見せた。

 

 

 

 

暫くして2人が目を覚まし、気絶した理由を聞くと、やはり概念魔法に関する知識を追加で書き込まれたと言う。

それは、神代魔法に関する根本的な理解。

今までハジメや拓也達が使っていた神代魔法は、言わば人が理解できる程度にセーフティーが掛けられた簡易版。

それを根本的な所から理解するための知識を書き込まれ、脳がオーバーヒートを起こして気絶してしまったという事だ。

そして、それぞれの神代魔法を正確に言葉で言い表すなら、

生成魔法は、『無機的な物質に干渉する魔法』。

重力魔法は、『星のエネルギーに干渉する魔法』。

空間魔法は、『境界に干渉する魔法』。

再生魔法は、『時に干渉する魔法』。

魂魄魔法は、『生物の持つ非物質に干渉する魔法』。

昇華魔法は、『存在するものの情報に干渉する魔法』。

変成魔法は、『有機的な物質に干渉する魔法』。

だそうだ。

もちろんこれは拓也達に理解できるようにハジメ達が言い表した言葉であり、それらを完全に理解しているのは、ハジメとユエだけだろう。

 

「なるほどね。本当に、大きな、それでいて根本的な事柄に干渉できる魔法なのね。人が触れていい領域を超えているように思えるわ。……でも、そうすると、まだ帰還の為の概念魔法は生み出せそうにないってことかしら? 聞く限り、相当難易度が高いように感じるけれど……」

 

「うん。リューティリスが極限の意思なんてふわっとした説明をしていたけど、実際、その通りなんだよね。魂魄魔法と昇華魔法で〝望み〟を概念レベルまで引き上げて、それに魔力を付与して無理矢理事象を現出させる……簡単にいうと、そういうことなんだけど、普通は昇華魔法を使ったところで成功はしない。それどころか、概念魔法は、その時の意思を元にする。だから一度発現したからといって次回以降も安定して使えるというわけじゃない。普通は一回こっきりの魔法と言う訳」

 

「……ん。ハジメの生成魔法で羅針盤みたいに物へ付与しないと」

 

ハジメやユエがそう言う。

 

「でも、成功すればちゃんと地球に帰れるんだよね?」

 

鈴が期待を込めてそういうと、

 

「う~ん………理屈ではそういうことなんだけど…………」

 

ハジメは少し困ったように言葉を濁した。

 

「どうかしたのか?」

 

その様子に輝一が問いかけると、

 

「正直、帰るための概念魔法を生み出せる自信が無いんだよね。そりゃ帰りたいとは思ってるけど、その気持ちが『極限の意思』かどうかって言われるとちょっとね………」

 

ハジメとしては、一番の護るべき存在といえる香織が共にいるため、極限の意思と言えるほどの帰郷の念があるとは自分でも思えなかった。

 

「ええっ……!? じゃ、じゃあ私たち帰れないの………?」

 

鈴が落胆の気持ちを隠せずにそう言葉を零す。

 

「うん………………概念魔法ではね」

 

「そんな…………」

 

ハジメの言葉に、多くのメンバーがショックを受けたような表情になる。

そして、

 

「ここは大人しくあと半年ぐらい待って、デジタルワールド経由で帰るしかないね」

 

ハジメがあっけらかんとそう言った。

 

「「「「「…………………………………………え?」」」」」

 

長い沈黙の後、ショックを受けていたメンバーはあっけにとられた声を漏らした。

 

「………………今、帰れるって言った?」

 

鈴が確認を取る様に問いかける。

 

「…………? うん」

 

その問いかけに、ハジメは不思議そうにしながらも頷く。

 

「けど、概念魔法を生み出せないって………」

 

雫が更に問いかける。

 

「うん………概念魔法ではね」

 

ハジメが更に頷く。

 

「…………じゃあ、他の方法があるって事?」

 

優花が更に聞く。

 

「うん………元々神代魔法を探してたのは、保険みたいなモノだったし………」

 

ハジメの言葉が弱くなっていく。

 

「因みに、その方法は?」

 

幸利が詰め寄る。

 

「えっと………拓也がデジタルワールドに行ってから、またこっちの世界に戻ってきたのと同じく、トレイルモンで……………」

 

ハジメが冷や汗を流し始める。

 

「ってことは何だ? 最初っから帰れる算段は付いてたって事か?」

 

龍太郎も詰め寄る。

 

「う、うん…………拓也が戻ってきた時から、1年位間を置かなきゃいけないみたいだから、あと半年ぐらいは無理だけど……………言ってなかったっけ?」

 

ハジメが確認するように問いかけると、

 

「「「「「初耳だ(よ)!!!」」」」」

 

声を合わせてそう叫ばれた。

 

「ごめんなさい!」

 

ハジメはその場で土下座するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

氷雪洞穴を攻略し、出口へ進む一行。

しかし、そこにはフリードを始めとした魔人族や神の使徒が待ち構えていた。

魔王城へ招待される拓也達。

そして、自分と同じ姿を持つ神の使徒を見たノイントは、己の真実を知る!

 

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

 

第44話 ノイントの選択

 

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 

 

 

 






はい、第43話でした。
めっちゃ短くて済みません。
キリが悪すぎました。
でもって今回の一番の意外性は光輝が神代魔法習得したことでしょうね。
反対意見はあると思いますが、原作のハジメも厳密な意味では試練をクリアしたわけではないようなので、『自分の虚像を倒す』事が合格ラインだと判断しました。
なので虚像を倒した光輝は合格としております。
まあ、習得した所で活かせるところがあるとは思いませんが。
さて、次はいよいよノイントが自分の真実を知ることに……?
お楽しみに。

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