ありふれたフロンティアへ   作:友(ユウ)

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第45話 静かなる『木』

 

 

 

ノイントがアハトと決着をつける少し前、

 

「〝震天〟!」

 

アハト達とは別の場所から現れたフリードが空間爆砕魔法を捉えられていた者達に向けて放つ。

 

「くらえ。イレギュラー」

 

アルヴが指を打ち鳴らすと同時に特大の魔力弾がハジメに向かって放たれる。

 

「駆逐します」

 

何もない空間から使徒たちが現れ、一斉に襲い掛かってくる。

 

「ッ!?」

 

「皆っ!」

 

ハジメや光輝達が一斉に動き出した。

ハジメが自身に対する攻撃を捌き、光輝、雫、龍太郎が反射的に皆を守る盾になる。

 

「うぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

「少しでも威力をっ………!」

 

輝一と優花が空間魔法でフリードの魔法に干渉し、その威力を弱め、

 

「聖絶!!」

 

香織が人質となっていた異世界組を覆うように結界を張る。

他のメンバーも人質を守るために動いていた。

その為、次の瞬間起こったことに対処出来なかった。

 

―――ドォォォォォォン

 

天から光の柱が降り注ぎ、ユエを飲み込む。

 

「うっ、あ?」

 

「「ユエっ!」」

 

「ユエさん!」

 

ハジメ、香織、シアが叫ぶ。

 

ユエは光の柱から脱出しようとしているが、物理的にも空間的にも不可能らしい。

 

「くそっ! 皆をお願い!」

 

ハジメはそう言うとユエの方に向かっていく。

ハジメは光の柱を破壊するために飛び出すが、

 

「ふふ、させるわけがなかろう?」

 

アルヴが再び指を鳴らすと、夥しい数の魔物や使徒たちが現れ、ハジメの足止めをする。

 

「邪魔だっ!」

 

ハジメは限界突破を発動し、駆逐しながら突き進む。

その状況が拙いと思ったのか、攻撃がハジメに集中する。

しかし、そのハジメを結界が覆い、攻撃を弾いた。

 

「ハジメ君は、私が護る!」

 

香織が杖を構えながらそう言い放った。

 

「………ありがとう、香織」

 

ハジメは感謝の言葉を呟くと、パイルバンカーを宝物庫から取り出し、

 

「貫けぇっ!!」

 

凄まじい威力の杭が打ち出され、光の柱の表面を貫通する。

そして、その貫通痕を中心にビキビキと亀裂が奔っていく光の柱に、ハジメは義手の振動粉砕を発動させながら渾身の拳を放つ。

 

「はぁっ!!」

 

それによって光の柱が砕ける。

 

「っ、ユエ!」

 

ハジメは叫びながらユエに向かって手を伸ばす。

 

「ユエっ」

 

「……ここにいる」

 

ハジメの言葉にユエが応えた。

 

「よかった。ユエ、なんともない?」

 

「……ふふ、平気だ。むしろ、実に清々しい気分だ」

 

ユエは答えるが、その口調には違和感を感じる。

声は確かにユエのものだが、ユエはそんな喋り方はしない。

その時、

 

「下がるんだ! 南雲君!」

 

恵理の声が響く。

 

「恵理さ―――っ?」

 

ハジメが怪訝な声を漏らした瞬間、悪寒を感じて体を仰け反らせた。

その瞬間、ユエが放った貫手がハジメの胸を掠め、血が噴き出る。

 

「くっ!?」

 

「おっと、外してしまったか?」

 

「お前………」

 

「ふふふふ、本当にいい気分だよ、イレギュラー。現界したのは一体、いつぶりだろうか……」

 

ハジメは咄嗟に飛びのくが、

 

「エヒトの名において命ずる――〝動くな〝」

 

「ッ!?」

 

その瞬間、ハジメの動きが停止する。

ユエの姿をしたエヒトが、ハジメの血が付いたその手に舌を這わせた。

 

「ほぅ、これが吸血鬼の感じる甘美さというものか。悪くない。お前を絶望の果てに殺そうと思っていたのだが……なんなら、家畜として飼ってやろうか? うん?」

 

「ッ………恵理さん! ユエは……!」

 

「お察しの通り、薄汚い魂に体を乗っ取られてるね。まったく、ヒロインの身体を奪うなんて、悪霊じゃないか」

 

恵理は呆れた口調でそう言う。

 

「ッ! 皆! ユエの身体のダメージは再生能力でどうにかなる! 今は相手を制圧することだけを考えて!」

 

ハジメが直後にそう叫ぶ。

拓也達はその言葉を聞き、進化しようとデジヴァイスを取り出した。

しかし、

 

「エヒトの名において命ずる――〝動くな〝」

 

「「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」」

 

エヒトの口から再び発せられた命令。

進化しようとしたメンバーは動きを止めてしまう。

 

「か、体が………!?」

 

拓也は思わずそう零す。

 

「貴様らの事は『あやつ』から聞いてるのでな。進化されると少々厄介だ。封じさせてもらう」

 

エヒトは、どこか優雅さすら感じさせる動作でフィンガースナップを打ち鳴らした。

すると、拓也達が持っていたデジヴァイスが消え、エヒトの掌の上に浮かんでいた。

 

「デジヴァイスが!?」

 

輝二が叫ぶ。

更にエヒトがデジヴァイスを破壊しようと力を籠め、

 

「させません!」

 

その直前に銀色の閃光が飛び出した。

ノイントが分解能力を全開にしながら大剣を振り被り、エヒトに向かっていく。

だが、

 

「エヒトの名において命ずる――〝機能を停止せよ〟」

 

「ぁ――」

 

エヒトの命令により、ノイントの瞳から光が消えた。

銀光も輝きを失い、その勢いのまま地面を転がる。

エヒトが使徒の肉体を活動停止状態にしたようだ。

心を持ったとはいえ、その肉体は使徒のまま。

創造主の特権でその機能を失わせたのだ。

エヒトは目の前で倒れたノイントを見下ろす。

 

「まさか、人形が我に歯向かってくるとは予想外だ。これもまたイレギュラーの面白さというところか。だが、壊れた人形など我は要らぬ」

 

エヒトがノイントに手を翳し、

 

「やめろぉおおおおおおおおおっ!!!」

 

拓也の叫びと共に、バキンッと何かが砕ける音がしたかと思うと、拓也の身体が自由を取り戻し、拓也が飛び出す。

 

「これはこれは、私の〝神言〟を自力で解くとは。流石、イレギュラーといったところか」

 

だが、エヒトは余裕の態度を崩さない。

 

「エヒトルジュエの名において命ずる――〝動くな〟」

 

「があっ!?」

 

名前が違う。

いや、付け足されたその名によって放たれた命令は先程の拘束など歯牙にもかけない程の拘束力を発揮する。

その力によって拓也は再び身動きが取れなくなった。

 

「くくく。もしや貴様、我が作ったこの人形が気に入ったのか? もし我に忠誠を誓うなら、同じ人形を大量に用意してやるぞ?」

 

エヒトは誘うようにそう言う。

 

「ふざけるな………! 俺が惚れたのは『ノイント』だ! 心の無い人形なんかじゃねえ!!」

 

拓也は怒りに満ちた表情で叫ぶ。

 

「ぐぐぐ………!」

 

拓也は尚も抗おうとする。

 

「なら、貴様の目の前でお気に入りの人形を壊してやろう」

 

エヒトは再びノイントに手を翳し、

 

「ぐがぁあああああああああああああああああああああっ!!!」

 

拓也が突如獣のような咆哮を上げ、激しい赤いオーラに包まれた。

〝竜の本能〟のスキルを全開で使用したのだ。

次の瞬間、拓也が動き出してエヒトに襲い掛かる。

エヒトはひらりと身を躱して飛びのく。

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ………!」

 

拓也の目は赤く輝き、その声も獣の唸り声のようだ。

だが、拓也はノイントを傷つけようとはせず、まるで護る様にエヒトを睨みつけていた。

 

「なるほど、理性を完全に失うことで我の〝神言〟を振り解いたか」

 

エヒトは関心関心と言いたげにそう言う。

 

「ガァッ!!」

 

そして拓也は、闘争本能のままにエヒトに飛び掛かった。

だが、

 

「――〝天灼〟」

 

直後、無数の雷球が拓也の周りに現れ、強烈な雷撃を拓也に食らわせた。

 

「拓也っ!?」

 

「ご主人様っ!?」

 

優花とティオが悲鳴のような声を上げる。

轟音が収まると、

 

「ぐぅぅぅ………!

 

拓也は全身に火傷を負いながらもエヒトを睨み付けている。

ダメージは受けてもその闘争本能は衰えていない。

 

「耐えるだろうな。イレギュラー、お前ならば。だが、電撃をそれだけ浴びれば鈍ることは避けられまい? ――〝四方の震天〟――〝螺旋描く禍天〟」

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアアッ!?!?」

 

だが、エヒトは更なる追撃を加える。

 

「やめてぇええええええええっ!!」

 

「拓也ぁぁぁぁぁぁあっ!!」

 

仲間たちが叫ぶがエヒトの神言により動きを止められている。

すぐに動ける者は居なかった。

 

 

 

 

 

 

暗い闇の中、拓也の絶叫をノイントも聞いていた。

身体の機能は停止しても、意思は………『心』はハッキリと存在していた。

 

(動いて! 動きなさい私の身体!!)

 

闇の中でノイントは叫ぶ。

 

(ここで動けなければ、結局私は『人形』のままという事になってしまうのに!)

 

エヒトの一言で動けなくなってしまった自分を情けなく思い、そして悔しい。

 

(お願い! 動いてっ!!)

 

ノイントは尚も強く心で叫んだ。

その時、暗闇の中で金色に光る輝きを見た。

 

(あれは…………!)

 

闇の中で輝く金色の光。

それは、金色の腕輪。

 

(これは………あの時の………)

 

記録を取り戻したノイントは、『それ』を使って拓也と戦ったことを覚えている。

 

(ッ…………!)

 

ノイントは一瞬驚いたようだったが、すぐに気を取り直して『それ』に手を伸ばした。

 

(私に『力』を…………! 拓也様を『助ける力』を!!)

 

その思いを胸に、その金の腕輪をつかみ取った。

 

 

 

 

 

 

―――瞬間、エヒトの掌の上で浮遊していたデジヴァイスの1つ、拓也のデジヴァイスから、デジコードが飛び出した。

 

「何っ……!?」

 

エヒトは軽く驚いた様子を見せる。

そのデジコードは倒れているノイントを包んだ。

そして、卵のような形に覆うと、その場で浮かび始める。

 

「何をしようとしているのか知らんが、壊れた人形にもう用はない!」

 

エヒトはデジコードに包まれたノイントに手を翳し、

 

「〝雷龍〟!」

 

ユエが放つそれよりも明らかに巨大で密度の高い雷の龍が放たれた。

雷の龍が、ノイントを包むデジコードごと喰らわんとその咢を大きく広げ…………

次の瞬間、デジコードから走った金色の閃光が雷の龍を貫き、四散させた。

 

「ッ………!?」

 

エヒトは目を見開く。

そこに舞い散るのは金色の羽根。

いつの間にか、拓也を襲っていた魔法の嵐もすべてかき消されていた。

 

――バサッ!

 

その場に響く羽音。

大きく広がる金色の翼。

エメラルドに輝く盾と軽鎧、ガントレット、グリープ。

そして金の十字架が描かれたサークレット。

金の槍をその手に持ち、新たな姿となったノイントが拓也を支えながらそこにいた。

 

「…………拓也様には、これ以上手出しさせません!」

 

ノイントは敵意を込めた眼でエヒトを見据える。

しかし、エヒトは余裕の笑みを浮かべ、

 

「フッ、まさか我が作った人形にここまで反抗されるはな………」

 

エヒトは呆れたようにそう言うと、

 

「エーアスト、ツヴァイト、ドリッド、フィーアト、フィンフト」

 

エヒトが告げると、5人の神の使徒が隣に降り立つ。

しかし、他の神の使徒とは違い、その髪の色は白金だった。

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

5人の神の使徒が跪く。

 

「目障りだ。処分しろ」

 

「承知しました」

 

エーアストは立ち上がるとノイントに向き直る。

 

「愚かな事をしたものですね、ノイント。主に歯向かうなど」

 

「………………」

 

ノイントは無言だが、拓也をそっと地面に降ろす。

 

「ノ、ノイント………」

 

ボロボロになって正気に戻った拓也が、心配そうに声をかけるが、

 

「大丈夫です」

 

ノイントは微笑んでエーアスト達に向き直った。

 

「戦う気ですか? 無駄ですよ。我々はあなたの約2倍のスペックを持つように調整された駒。我々5人を相手にあなたが勝てる可能性はゼロです」

 

エーアストはそう告げる。

だが、

 

「言いたいことはそれだけですか?」

 

ノイントは平然と言い返すと、金の槍を構えた。

 

「…………かつての同胞とはいえ、容赦など期待しないことです」

 

エーアストはそう告げるが、

 

「私は、あなた達とは違います」

 

ノイントはそう言った。

 

「……………消えなさい!」

 

5人の神の使徒が一斉にノイントに飛び掛かり、

 

「…………………………エデンズジャベリン」

 

次の瞬間、ノイントは金色の閃光となって一気に貫いた。

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

エーアスト達は、何が起きたのかもわからず、身体の全て、もしくは大半を消滅させてその機能を停止させた。

 

「今のは……………」

 

本来はノイントより強い相手を瞬殺したことに拓也は驚きの声を漏らす。

そして、今のノイントの姿はどこかオファニモンを連想させた。

 

「まさか、さっきのデジコードはオファニモンの………!?」

 

ノイントはかつてスキャンしたオファニモン:フォールダウンモードのデータを、何らかの方法で使用し、今の姿になったのだと拓也は当てずっぽうに予想する。

更にノイントはエヒトを見下ろし、

 

「拓也様達のデジヴァイス………返していただきます!」

 

そう言い放った。

 

「人形の分際で神である我を見下ろすとは不敬な奴め。だが!」

 

エヒトが言い放った瞬間、ノイントの上空に空間ゲートが開いた。

 

「ッ!?」

 

ノイントは咄嗟に飛びのく。

直後、その空間ゲートから黒い羽をもったカラス天狗のようなデジモンが飛び出した。

 

「あいつはっ!」

 

輝二が見覚えがあるような声を上げる。

 

「あいつは、心を読むデジモン! カラテンモンじゃマキ!」

 

ボコモンが声を上げる。

カラテンモンは双剣を抜き放つとノイントに斬りかかった。

 

「くっ!」

 

金の槍で受け止めるノイント。

 

「はっ!」

 

ノイントは押し返して体勢を崩そうとしたが、カラテンモンはその前にひらりと自分から飛びのいて下がる。

 

「ッ………!?」

 

動きを完全に読まれたノイントは驚きの声を漏らす。

 

「貴様には心があるのだろう? ならば、心を読むこやつは天敵というわけだ」

 

まるで心など無い方がよかったなぁ、と言わんばかりにエヒトは嘲笑う。

 

「さて………邪魔が入ったがまずはこれを………」

 

エヒトは再びデジヴァイスを破壊しようと、意識を集中する。

 

「や、やめろっ!」

 

拓也は手を伸ばす。

しかし、先ほどの攻撃でボロボロの拓也はまともに動けない。

 

「くそっ……!」

 

「このままじゃスピリットが……!」

 

「何で動けないのっ……!」

 

それぞれが体を動かそうと躍起になる。

ノイントもエヒトに向かおうとしたが、カラテンモンに動きを読まれ、道を塞がれた。

 

「消えろ………」

 

エヒトは薄ら笑いを浮かべながらそう言って手を握りしめようとした。

その瞬間、

 

―――ガシッ!

 

「何っ!?」

 

突如どこからともなく伸びてきた『手』が、エヒトに右足首を掴んだ。

エヒトが何だと思う間もなく、勢いよく下に引かれ、地面に叩きつけられる。

 

「ぐはっ!?」

 

「エ、エヒト様!?」

 

「主様!?」

 

いきなり叩きつけられたエヒトに、フリードやアルヴが声を上げる。

更に叩き溶けた勢いでデジヴァイスが放り投げられた。

 

「な、何だ………!?」

 

そして、それに驚いたのは拓也達も一緒だった。

すると、エヒトの足を掴んでいた『手』が引っ張られるように戻っていく。

拓也達は思わずその行き先を目で追うと、ガチャンという音と共にその『手』がはまり込んだ。

そして、そこにいたのは薄茶色のずんぐりむっくりした人型。

 

「あ、あれはっ!」

 

その姿に見覚えのあった拓也は声を上げる。

 

「あれは、伝説の十闘士の1人! 『木』のアルボルモンじゃ!!」

 

ボコモンが指差しながらそう叫ぶ。

 

「アルボルモン!? 何で!? 『木』のスピリットはまだ俺のデジヴァイスの中に……!」

 

拓也は思わずそう言ったが、

 

「…………ノイントさんが変わったときに一緒に飛び出してきて俺の前に来たんだよ………」

 

どこか哀愁漂う声でアルボルモンがそう言った。

 

「その声…………浩介!?」

 

拓也が叫ぶ。

 

「そうだよ。俺だよ! ノイントさんの活躍に皆目を奪われてたから、誰にも気づかれずに『木』のスピリットを継承した遠藤 浩介だよ!!」

 

投げやりな叫びでそう言うアルボルモン。

 

「お、おう………」

 

思わず同情の声を漏らす拓也。

 

「それはともかく、今のうちにデジヴァイスを!」

 

「あ、ああ!」

 

拓也は気を取り直す。

他の皆もエヒトが叩きつけられたときに自由を取り戻していた。

 

「「「「「「「「「スピリット!!」」」」」」」」」

 

拓也達が叫ぶ。

それぞれのスピリットがその声に反応し、デジヴァイスが持ち主の下へと飛んできた。

それぞれがそれを掴むと、

 

「行くぞ!」

 

拓也の掛け声に合わせ、

 

「「「「「「「「「スピリット! エボリューション!!」」」」」」」」」

 

進化を開始した。

 

「アグニモン!!」

 

「ヴォルフモン!!」

 

「レーベモン!!」

 

「フェアリモン!!」

 

「ブリッツモン!!」

 

「チャックモン!!」

 

「グロットモン!!」

 

「ラーナモン!!」

 

「ジングウモン!!」

 

9人の闘士が姿を現す。

 

「おおっ! 何という事じゃ! 全ての十闘士が揃った!」

 

ボコモンが感嘆の声を上げる。

 

「前にも一度あったけどね~」

 

ネーモンが突っ込む。

 

「ぐぬ……しまった!」

 

エヒトがそういうが、

 

「エヒト! ユエの身体を返してもらうぞ!」

 

アグニモンがそう宣言する。

 

「ええい! 神である我に敵うと思うな! 〝五天龍〟!!」

 

『五天龍』。

それは火、雷、氷、風、土の最上級魔法に重力魔法を組み合わせ、それぞれ違う属性を持った5匹の龍を形作り、相手を攻撃するユエオリジナルの魔法。

エヒトが放つそれは、ユエのものよりも高威力だ。

それがアグニモン達に襲い掛かる。

だが、

 

「サラマンダーブレイク!!」

 

アグニモンが炎の龍に飛び込んだかと思うと自身の巻き起こした炎でそれをかき消し、

 

「トールハンマー!!」

 

ブリッツモンが雷の龍を、両手に集中させた雷と共に放ったハンマーアタックで粉砕し、

 

「ツララララララーーーーー!!」

 

氷の龍にチャックモンが飛び込み、内側から突き出した氷柱で貫き、

 

「ブレッザ・ペタロ!!」

 

風の龍をフェアリモンが竜巻で包んだかと思うと四散し、

 

「スネークアイブレイク!!」

 

グロットモンが自分のトゲ付きハンマーで土の龍に殴りかかると、粉々に粉砕した。

 

「くっ………!」

 

全ての龍を粉砕されたエヒトは悔しそうに歯噛みする。

 

「アルヴ! フリード!」

 

「「はっ!」」

 

エヒトの言葉でアルヴとフリードはその前に立ちはだかろうとした。

しかし、

 

「はいは~い! そんな事させるわけないでしょ?」

 

いつの間にかラーナモンがアルヴの真上に雲を作り出しており、

 

「レインストリーム!」

 

そこから大量の水が溢れ出し、アルヴを飲み込んだ。

 

「うぐぉっ!?」

 

突然の大量の水にアルヴは押し流される。

 

「アルヴ様!? 来い! お前たち!」

 

フリードが空間魔法でゲートを作り出すと、そこから大量の魔物が現れる。

すると、

 

「レーベモン!」

 

「ああ!」

 

ヴォルフモンとレーベモンが光の剣と槍を交差させると、

 

「光と闇………」

 

「その2つが混沌となり、全てを飲み込む………!」

 

光と闇が合わさり混沌を生み出す。

 

「「ケイオスフィールド!!」」

 

生み出された混沌の渦が現れた魔物達を飲み込む。

 

「なっ!?」

 

フリードはそのことに驚愕するが、

 

「ま、まだっ………!」

 

最強戦力の白竜を呼び出す。

しかし、

 

『童の事も忘れないで貰おうか!』

 

現れた白竜を、横から黒竜が組み付き、押し倒した。

竜化したティオだ。

 

『今じゃ!』

 

ティオが叫んだ瞬間、

 

「神起………発勝!!」

 

ジングウモンが神速の抜刀術で白竜の首を落とした。

 

「ウ、ウラヌスが………」

 

その事にフリードが一瞬呆然とした瞬間、

 

「いい加減に………!」

 

いつの間にかフリードの懐にハジメが飛び込んできており、左腕の義手を振り被っていた。

 

「終われぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

フリードの顎を見事なアッパーカットで打ち上げた。

 

「ぐふぁっ!?」

 

ハジメのステータスに、剛腕や振動破砕なども組み込んだ一撃は、フリードの意識と命を一瞬で刈り取った。

 

「ユエッ!」

 

そんなフリードを一瞥すらせずにハジメはエヒトに乗っ取られている、ユエを気に掛ける。

更に、空中でノイントを抑えていたカラテンモンだったが、

 

「ブロッケイドシード!」

 

突如として真下から伸びてきた植物の蔦に絡めたられた。

 

「ぬあっ!? 何だこれは!? この場の全ての心の声には耳を傾けていたはず!」

 

「………………」

 

カラテンモンの言葉を聞いて、心の声でも存在感無いのかと内心項垂れるアルボルモンこと浩介。

 

「アルボルモン……スライドエボリューション………!」

 

落ち込みながらもビースト形態に進化すると、

 

「ペタルドラモン!!」

 

植物の身体を持つトカゲのような地竜の姿となる。

そして、頭の周りにある葉を回転させ、

 

「リーフサイクロン!!」

 

鼻から木の葉交じりの竜巻を発射する。

 

「馬鹿なぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

カラテンモンはデジコードを浮かび上がらせる。

 

「ペタルドラモン! スライドエボリューション! アルボルモン!!」

 

再びアルボルモンの姿に戻ると。

 

「深淵に堕ちし魂よ…………木々の騒めきの中で落ち着き眠るがいい………このデジヴァイスが浄化する!」

 

アルボルモンはデジヴァイスを取り出し、デジコードをなぞる様に滑らせる。

 

「デジコード………スキャン!!」

 

その言葉と共に、カラテンモンのデジコードはデジヴァイスに吸い込まれ、デジタマとなって空に昇って行った。

 

「ユエッ!」

 

ハジメがエヒトに向かっていく。

だが、

 

「エヒトルジュエの名において命ずる! 『平伏せ』!!」

 

「ぐあっ!」

 

エヒトの言葉によって再びハジメが行動不能になる。

しかし、

 

「はっ!」

 

そのエヒトの右腕をアグニモンが掴んだ。

 

「何っ!?」

 

エヒトが驚愕の声を漏らす。

 

「どうやら、お前の言葉はデジモンには通用しないようだな?」

 

アグニモンがそう言う。

 

更に左腕をヴォルフモンが掴む。

 

「残念だったな」

 

「ば、馬鹿なっ!」

 

エヒトは狼狽える。

 

「エヒト、お前は『神』と唱ってはいるが、実際には魔法に長けた存在でしかない。デジモンに通用しないのがその証拠だ!」

 

レーベモンがそう指摘する。

 

「そして、ユエの身体を乗っ取ったのも、『魔法』の1つであるのなら、やりようはある!」

 

レーベモンはラーナモンに視線を向けると、

 

「はいは~い! わかってるよ~!」

 

ラーナモンは恵理の姿に戻ると、エヒトに近付いていく。

 

「くっ………エヒトルジュエの名において命ずる! 『近寄る………むぐっ!?」

 

エヒトは再び命令を発しようとしたが、アグニモンに口を塞がれた。

恵理はユエの頭に手を伸ばすと、

 

「君の魂は薄汚いからねぇ………ユエとの魂の差がすぐにわかるよ………!」

 

恵理はニンマリと笑みを浮かべると、

 

「ほいさっ、と!」

 

その手を勢い良く上げた。

その瞬間、ユエの身体から半透明の白い霧のようなものが抜け出した。

 

「ユエ!」

 

その瞬間、ハジメが飛び出して倒れようとしたユエの身体を支える。

 

「ユエ………だよね?」

 

ハジメは確認するように優しく呼びかける。

 

「…………ん、あんな奴に身体を乗っ取られるとは不覚」

 

ハジメの確認の言葉に頷きながらそう言うユエ。

 

「ユエ…………おかえり」

 

「ハジメ……………ん、ただいま」

 

ハジメはユエを抱きしめ、ユエもハジメの背に手を回す。

 

『ば、馬鹿な!? なぜこうも容易く!?』

 

余りにも簡単にユエの身体から引きはがされたことに宙に浮いていたエヒトの魂から焦燥の声がした。

 

「そんなの、予め対策してたからに決まってるじゃん」

 

『な、なんだと!?』

 

恵理の言葉に驚愕の声を漏らすエヒトの魂。

 

「……………ユエが封印されていた事に疑問を持ったのは、オルクス大迷宮をクリアした頃だよ」

 

「ハジメ………?」

 

ユエが初耳だと言わんばかりに声を漏らした。

 

「ユエの再生能力は確かに強力。だけど、その再生能力は魔力あっての事。魔力を枯渇させるまで攻撃し続ければ、ユエを殺すことはそう難しいことじゃないんだ」

 

ユエを殺す手はいくらでもあると言わんばかりにハジメは言う。

 

「だけど、ユエの叔父はあえてユエを殺さずに封印した。それは、ユエを守るためなんじゃないかと考えた。そして、フューレンで見たユエの天職は『神子』。明らかに神とかかわりがあると推測した。だから、神はユエの身体を乗っ取ろうとしてるんじゃないかと思った。だからユエの叔父は、神からユエの行方を晦ますためにオルクスの大迷宮に封印した。と、僕は推測した。だから、ユエが神に乗っ取られないように………もしくは乗っ取られても奪還できる対策をずっと考えていた」

 

「それでハジメは魂魄魔法に適性のある僕に協力を持ち掛けてきたのさ。僕は天職が降霊術師で、魂魄魔法にも適正バッチリだったからね。あらゆる可能性を考慮して試行錯誤した結果だよ」

 

恵理は改めてエヒトの魂に向き直ると、

 

「もちろん、引っぺがすだけじゃないよ。魂を昇天させる方法も研究済みさ。ま、こっちは僕の独断だけどね………!」

 

恵理は悪そうな笑みを浮かべながらエヒトの魂に近付く。

 

『や、やめろ! 我は神! 偉大なる神だぞ!』

 

「はいはい。自称神のイタいおっさんの魂ね~♪」

 

恵理はケタケタと笑う。

その瞬間、

 

―――ガキィッ!

 

と甲高い音が響いた。

見れば、恵理の首のすぐ傍に大鎌の刃が迫っており、それをレーベモンが槍で防いでいた。

 

「ちぃ………! もう少しの所を………!」

 

「毎回ワンパターンなんだ。お前は!」

 

それは死神のようなデジモン、ファントモンだった。

 

『おおっ! 貴様は!』

 

エヒトは歓喜の声を上げる。

 

『早く我を助けるのだ!』

 

そう促すエヒト。

 

「……………いいだろう。あのお方からもそれを命ぜられている」

 

ファントモンはそう言うと、懐からデジタマを取り出した。

 

「ほぅれ」

 

そのデジタマをエヒトに向かって放り投げる。

その直後、

 

『ぬわっ!?』

 

エヒトの魂がそのデジタマに吸い込まれる。

直後、そのデジタマに罅が入ったかと思うと、光が溢れた。

その後、そこに現れたのは、緑の蔦が合わさったような体を持つ巨大な人型の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

ファントモンにより、アルゴモンの身体を与えられたエヒト。

その力を存分に振るい十闘士を追い詰める。

しかし、スピリットの力を結集するとき、全てを超越する戦士達が復活する。

 

 

次回、ありふれたフロンティアへ

 

 

 

第46話 超越進化! カイゼルグレイモン&マグナガルルモン!!

 

 

 

今、ありふれた伝説が進化する。

 

 






はい、第45話でした。
休みなのでもう少し早く書けるかと思ったらなかなかモチベーション上がらずにここまで時間かかってしまいました。
で、木のスピリットを受け継いだのは我らが深淵卿こと遠藤 浩介でした。
どっちも存在感無さそうなので(笑)
でもって序とばかりにノイントもパワーアップ。
これは一応前から考えてました。
そして恵理のお陰でエヒトをユエから剝ぎ取るも…………
次回をお楽しみに。



P.S 今週の返信はお休みします。
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