原作要素もクロス先要素も薄味の文字数も少ない低カロリー作品です
続きは無いです
私は一般TS転生ウマ娘。
出自こそ多少アレだけど、どこにでもいる普通の女の子。
両親から多大な愛情を受け、すくすくと育ち、転生者特有の行動力でもって知識を蓄え、体を鍛え、中央トレセンに入学した。
そんな私には悩みがある。
それは
私の覚えるスキルだけなんかおかしい
ということだ。
「じゃあ、まずは自己紹介から始めていきましょう」
新入生歓迎会だとか学園施設案内などのレクリエーションを終えた後の教室にて私の大嫌いな時間の到来を告げられた。
ホームルームの時間に先生が教室の前に立ち宣言した。私にとっての死刑宣告。
別に、私がコミュニケーションをとるのが苦手だとか、人見知りをする性質だとかそういったことは特にない。
だがしかし、今生の、特にウマ娘同士の自己紹介に私がこれを嫌いになった理由がある。
「わかりやすく右端の先頭のあなたから」
先生がそう言って端の席に座っている子をさした。
この子の自己紹介と、そのうち来る私のを聞けば多分私が自己紹介が嫌いな理由がわかるはず
「はいはーい。私はアイタリン。適性とかはよくわかりません! 目標は手堅くオープン勝利! 夢はでっかくG1をいっぱい勝つ! 趣味は編み物! 一番得意なスキルは直線加速! ほかも加速系が割と得意だよ、妨害系は苦手だから得意な子おしえてね!」
そう。そう。これだ。
別段話す内容に変なところがあるわけじゃない。
例えば自分の適性は、前世でいう得意なこととかに相当する。
まぁ今の私たちは中学生なので一部有名クラブ所属で専門的なトレーニングを積んだ子や、名門で幼少期からトレーナーがついていた子でもない限りは大体不明、親や親戚の適性からの推察程度しかない。
目標や夢、前世と特に変わらないので話すことは特に無い。
趣味、これも前世と大して変わらないがウマ娘は走ることが、一般的な人間いわゆるヒトミミさん達はレース観戦だとかが前世に比べて多い。
などなど他のことを話す子も勿論いるが、大体こんな感じで前世と大きな違いはない。
ここまでは。
で、で、一番の問題である得意なスキル。
これが問題なんだよね。
前世のゲームみたいなスキルがこの世界にもあって、なおかつ自分が覚えているものは基本知覚出来るのだ。
流石にほかの子がどういったものを覚えているかなどを知覚出来る子は居ない、と言われている。
まぁ今後出てくるとか、ほんとはいるけど隠して権力者や名門が抱えてるとか噂されてたりする*1。ほぼ与太話だけど。
どうやって知覚出来るのかと言われると、当事者にしか理解できないものだと思うので説明も難しい。
別にステータスオープンだとか言って前世のゲーム画面のようなものが出るわけでなく、何となく漠然と頭に浮かんでくるというか、頭で念じるというか、これは本当に説明が出来ない。そういうものだと思ってほしい。
「ヴァッサゴです。趣味はゲーム、適性は多分中距離以下。夢はティアラを一つでも手に入れること。得意なスキルは前途洋々、好位追走とか回復系。加速系がそんなに得意じゃないから教えてくれると嬉しい」
ほかの子の自己紹介を聞くと、私が何でこの時間が嫌いなのかより理解が深まるかもしれない。
もちろん、私の悩みである覚えるスキルがおかしいというところに帰結するわけなんだけど。
初めのアイルコンちゃんも、今のヴァッサゴちゃんも、まず間違いなく次の子も、得意なスキルや得意技の紹介の後に付くのだ。
『教えてね』
『教えあおう』
なんて言葉が。
素晴らしき青春だ。
仲間と切磋琢磨し、お互いに得意な分野で助け合う。
もちろんライバル同士でお互いに敵になるわけで、私も最初はいずれライバルになる相手に自分の手札をさらけ出すのはどうなんだと思ったが、曰くウマ娘はいわゆるヒトと比べてはるかに仲間意識が高い、らしい。
だからめちゃくちゃ仲が悪くない限り、大抵はお互いに教えあい高めあうのが一般的で、私もこれまでそうしてきた。
まぁ、先輩方から聞いた話によるとトゥインクルシリーズに挑もうとする私たち競技ウマ娘は今までの幼少期と違い、トレーナの方針によりけりで控えるように指示されたりするらしいが。
とはいえ無いわけではない、というよりはまだまだひよっこであり、殻が取れていないどころか未だ卵のままである私たちにはそんなの基本関係のない話で、しばらくの間は普通に、頻繁にあるとも聞いた。
だからこそ嫌なんだけど。
それが一般的ということはコミュニケーションを円滑に行う上で避けて通れない行為と化しているということで。
何かを与えなければ見返りはない、なんていうほどの冷たい関係ではないものの、教えあうことで築かれる絆というのは固く尊いので無くすと非常にまずい。
つまるところ私のおかしなスキルも大々的に喧伝しなければいけないのだ。
これがほっんとーに、嫌で嫌で仕方がない。
理由はシンプルに恥ずかしいから。
どうにかこれをいい感じに切り抜けられないかと、あーでもないこーでもないと考えを巡らせていると私の前の子が自己紹介を終えたらしく、私の番が来た。
「ぁーっと、レオスエグザです。適性は不明、趣味はデータ収集。目標はG1勝利。得意な技は……あー……加速系です。他も割とそつなくこなせると思ってるから気になる人はぜひ」
スキルがおかしいなら名前を挙げなければいい。
いろいろ考えても結局こういったシンプルなのが一番なんだと小学2年生の時に私が得た答えだ。
現在までこの手法で耐え忍んできた。勝率は五割を割るけど。
勝率が振るわない理由は大抵、
「レオスさん、一番得意な技とかはないんですか?」
こうやって先生が助け舟を出してくるからだ。
自分に自信が持てずに得意なスキルを言わなかったり、言えなかったりする子は結構いるのだ。
そうすると教えあう段階にこぎつけず人間関係が円滑にいかなくなったりしてしまうこともある。
なので自分の出来は悪いけど先生が促したからという状況を作って言いやすくしてくれる。
私にとっては余計なお世話だけど。
でもこうなると言わざるを得ないんだよなぁ。
ちなみに嘘はつけない。
使えないスキルを騙ったところで何のメリットにもならない、というかデメリットにしかならないから。
得意技は無いっていうのは、全部高水準だからと宣える超傲慢かガチエリートでも無い限りは小学生未満のへっぽこ扱いになる。
それが許される子もいるが少なくとも私はそういうキャラにはなれない。
嫌だけど、非常に嫌だけど言うしかないか。
まぁ、接していけばいずればれるし、どうせ遅いか早いかなんだ腹をくくるしかない、よし頑張れ自分!
「…………ートです」
「え?」
「
何とも言えない、冷たくも生暖かい視線が私を貫いた。