ウルベルトの贈り物   作:読み物好き

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忙しいと作業が…止まる。
そうすると今まで書いた内容が頭から抜ける。アブなぁい!


それぞれの一日

 シャルティアが無事正気に戻った事に安堵し、落ち着きを取り戻したアインズは一度情報の整理と共有の為、潜伏中のセバスを除く者達を集めていた。

 

 アインズは考える。一体誰の仕業なのか。何故シャルティアを洗脳し、あの場に置き去りにした?シャルティアに目星をつけた理由は何だ?セバスやソリュシャン、モモンであるならまだわかる。だが何故シャルティアを狙った?様々な考えが浮かんでは消えていく。

 

 シャルティアとの闘いの最中に現れた悪夢の蝿蜂(ナイトメアフライビー)…森に原生していたとは思えない。プレイヤーの仕業…だとしたら。アレを使役できる者…上位悪魔か上位蟲系種…。

 …まさか。エ・ランテル、エ・レエブルで起こった悪魔事件、まさかあれもプレイヤーの仕業だったのか?…エ・レエブルと言えばあの三人の事を皆に伝えなくては。色々な考えが頭を巡り口を開く。

 

「我々に敵対する者が存在する。皆も気を引き締めよ。そして伝えておく必要がある。エ・レエブルの悪魔事件についてだ」

 

 少しの間を置き、あれもシャルティアを狙ったプレイヤーの仕業かもしれん。そしてあの三人はプレイヤーではないだろう。と続けようとした際にデミウルゴスが口を開く。

 

「計画をあそこまで見事に昇華して頂けるとは!このデミウルゴス、至上の喜びにございます!」

(…え?突然何?デミウルゴス?何を言ってるんだ?)

 

 目を向けると守護者達が尊敬の眼差しを向けている。

 暫くの沈黙後に絞り出すように告げる。

 

「──デミウルゴス…念のため…理解した事を皆に伝える事を許す。…シャルティアの件もある。今は情報に齟齬があってはならん。皆が完璧に状況を理解できるよう、分かりやすく…そう!シャルティアは不在だった!今から始めて聞く者にも…分かりやすく!分かりやすく説明せよ!!」

 

 こ、これで…俺にも何か状況がわかるだろう…。わかるよな?どういう事だ?シャルティアとは無関係なのか?どうなってるんだ?

 デミウルゴスが指を立て皆に伝えていく。

 

「今回我らが起こした悪魔事件!あれは良い下準備であったと共に、多くの利益をナザリックは得た!そしてアインズ様自らが最上の成果として収めてくださった!」

(…は?)

 

 我らが…?聞き間違えか?とアインズが守護者達に目を向けると、皆理解の色を示している。

 

「これにより多くの財、宣伝効果、そしてアインズ様の影の姿であるモモンは莫大な名声を得た!」

(あの…?)

 

「──エ・ランテルで発生した悪魔を利用し、それが広がったように見せかける。これにより悪魔という脅威を人間達が強く認識し、脅威だと宣伝してくれるわけだ。ここまでは皆理解しているね?」

 

(はい?はい!!どういう事ですか!?)

 

「さて、次に今回得た利益の説明だ。召喚による悪魔。つまりナザリックへの被害は一切なく、今回王国でも豊かな地で多大な金銭、そして大量の物資を得た!これによりナザリックは多大な利益を得たわけだ」

 

(被害ゼロでの金銭!?…素晴らしい!!…じゃなくて!?あれはデミウルゴスの指示だったのか!?つまり俺達の襲撃!?)

 

 その後も嬉々として語っていくデミウルゴスを眺め暫くの間アインズは発光し続ける。

 

「──以上だ。皆、理解したね?」

 

 …説明が終わってしまった…。はい!はい!!半分程度しかわかりませんでした!例の計画って何だよ!?魔王って!?心の中で手を上げる。あれでわかるか!!なぁシャルティア?

 希望を胸にシャルティアに顔を向けると頷いている。

 シャルティア?今のでわかったのか?ほんとに?怒らないからわからなかったと言ってくれ。

 そんなアインズにデミウルゴスが追撃をかけていく。

 

「ところでアインズ様、あの子供はあれでよかったのでしょうか?攫った方が今後を見据えれば多大な価値があったと思うのですが」

「……よい。私に考えあっての事だ」

 

 無論、アインズは何の話か分かっていない。

 

「…なるほど、そういう事ですか。流石はアインズ様!」

 

 なるほど?アインズとかいう知者がまた新たに何か指示したのか?

 そんな奴がいるのか、今度紹介してくれ。

 

(アインズとやらよ、発言を許す。全て説明せよ)

 

 心の中でそんな現実逃避をしていく。

 そんなアインズにデミウルゴスが告げる。

 

「アインズ様、続けて報告よろしいでしょうか?」

 

 デミウルゴスが尻尾をくねくね動かしている。

 ダメです。もうやめてください。

 そう願いつつ顎で許可を出す。

 

「この度、第三位階のスクロールに耐えうる皮の確保に成功致しました!」

 

 その報告にアインズは現実逃避から帰ってくる。

 分かりやすい!そして消耗品の確保!素晴らしい!

 

「それは素晴らしい!よくやったデミウルゴス!それで何という動物だ?量はいるのか?」

 

「聖王国両脚羊…アベリオンシープと命名致しました。多数生息しておりますので、生態系への影響はございません。家畜化及び他種と組み合わせによる繁殖実験を行っています。成功すればより高位の皮となるやもしれません」

 

 大いに喜び、羊?…混合魔獣(キマイラ)か?と少し頭を傾げるアインズ。

 喜ぶ主人の姿に大いに幸せを噛み締め、デミウルゴスの尾がゆらゆら揺れている。

 他の守護者達から羨ましい…と視線が注がれ更に尻尾が大きく揺れていく。

 

「──では家畜化…という意味では飼育場等も必要か?何か必要な物はあるか?」

 

「アインズ様のその大いなるお心に感謝致します。しかし問題ございません、現地にて素晴らしい地を発見致しました。認識阻害がかけられた地下室でございます。そこそこの広さもございます。そこを拠点とし、部屋の拡張、皮の採集及び加工、事務処理、繁殖実験と行っております」

 

 流石はデミウルゴスだとアインズが褒め称え、一つ浮かんだ疑問を投げる。

 

「──認識阻害のかかった地下室…というのが気になるが…今回のシャルティアを洗脳した敵対者やプレーヤー等は居ないのだな?」

 

「勿論でございます。調べた所、古い本の残骸や古い骨の残骸等がございました。小奇麗でしたので何者かが使用していた可能性はございますが…。周囲には敵となり得る者は確認できませんでした。恐らくは亜人や異形種が住み着いていたのではないかと思われます」

 

拷問の悪魔(トーチャー)女性の悪魔(サキュバス)に加え、護衛の者や隠密として影の悪魔(シャドウ・デーモン)も複数配置しております」

 

「そうか、わかった。ギルド拠点等でないのであれば問題なさそうだな」

 

 よかった。消耗品の補充ができるかどうかは非常に重要なポイントだ。だが…羊?羊でスクロールが作れるなら現地でも、もう少し質の高いスクロールがあっても…セバスからの報告では第一階層程度だったが…。いや、混合魔獣(キマイラ)は現地の人間では狩れないのか?ふむ?多数生息している混合魔獣(キマイラ)?今度見てみるか?

 現実に戻り、少し冷静になった事で伝えるべき事を思い出す。

 

「──皆に伝えておくべき事がある。例の三人だが…あれを傷付ける事がないよう注意せよ。私の方でプレイヤーでもないと判断した」

 

 こう伝えておけば問題ないだろう。

 アインズは続けて言葉を述べていく。

 

「皆に改めて伝える。今回の敵は絶対に許されぬ事をした。だが…今は情報が足りない。警戒を怠らず物事に当たれ」

 

「そして今一度伝える。今回はデミウルゴスの機転により、守護者達同志での争い…仲間達の残した大切なお前達が争うという悲劇を回避する事ができた。よいな、盲目的に従う事が全てではない。考えを巡らせよ。今本当にすべき事は何かを考えるのだ!」

 

 皆がその言葉と感動に打ち震え、深く頭を下げる。

 その光景にアインズは再度プレイヤーへの怒りが燃える。

 仲間達の残した子供達に向け…敵は…決して許されない事をした。絶対に…見つけ出して殺す。いや、一生の苦しみを与えてやる。そんな憤怒の炎が燃え上がり抑制される。

 

 冷静になり今後どうするかと思案を巡らせていく。今回のデミウルゴスの働き、財と消耗品を得たらしい。そしてアルベドの暴走…俺の失態をデミウルゴスがカバーしてくれた。ナザリックの事は任せても大丈夫だろう。

 

 では俺が今すべき事は何だ…?情報を集める事か。ナザリックとは別の角度で情報を集める。モモンとしての時間を増やし、冒険者として情報を。そうすればあの姉妹とも何時でも話せるしな。

 後半が本音の様な気もしつつ考えを伝えていく。

 

「今後私は冒険者としての視線で敵の情報を集める。ナザリックについてはアルベド、デミウルゴスに任せる。判断に困る時はデミウルゴス…とアルベドに相談せよ。無論、今回のような大きな問題や目ぼしい情報が出れば私に即座に報告せよ」

 

「アインズ様…!!このデミウルゴス!必ずやそのご期待にお答えいたします!」

「うむ、期待している。少々忙しくなるだろうが頼んだぞ」

 

 深く頭を下げるデミウルゴスの姿を目にそう告げる。

 

「そして、繰り返しになるが…皆、思考を働かせよ!敵は確実に存在する!思考を働かせ、協力し合う事を期待する!」

「はっ!」

 

 一糸乱れぬ返答と守護者達のやる気に満ちた顔を目に、これなら大丈夫だろうとアインズは玉座の間を後にする。

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 帝都の請負人(ワーカー)御用達の歌う林檎亭奥で二人の請負人(ワーカー)が話をしている。

 依頼人は細い線の黒いフードを深く被った者。

 恐らく女性か…?という程度しか請負人(ワーカー)にはわからない。

 

「…正気か?この依頼」

「勿論」

「金額に間違いはないのですか?」

「当然」

「胡散臭いな…断ったら?」

「構わないが、守秘義務は忘れるな」

 

「私は受けましょう」

「わかった」

「俺達はチームで相談しても?」

「構わない」

 

 少し離れた所で請負人(ワーカー)フォーサイトが話を始める。

 痩せた女性の魔法詠唱者(マジックキャスター)、アルシェが口を開く。

 

「どんな依頼?」

 

 リーダーのヘッケランが難しい顔をして口を開く。

「…墳墓の調査、そして王国のアダマンタイト級冒険者の実力の調査だ」

 

 神官、ロバーデイクがそれを受け答える。

「墳墓…ですか」

 

 半森妖精(ハーフエルフ)、イミーナも口にする。

「まさかアダマンタイトと戦って来いって?」

 

「…未発見の墳墓の調査、これは問題じゃない。実力の調査も別に戦えってわけじゃないらしい、アルシェの生まれながらの異能(タレント)を使う。可能なら戦闘を見てこいって話だ」

「じゃあ何の問題が?」

 

「王国冒険者と偽装して、王国の冒険者組合を通して依頼を受けろだとよ。プレートや身分を証明する物、それに組合の依頼に至るまでは向こうさんが用意するそうだ」

 

「…胡散臭い」

「私もそう思います」

「うん、理由がわからない。何で断らないの?」

 

「前金、金貨400枚。成功報酬1000枚だそうだ」

 

 それを受け皆が目を見開く。金貨1000枚。そう出せる額ではない。

 4人で割っても一人頭350枚。破格の仕事だ。

 アルシェが動揺しつつも口を開く。

 

「ど、どうするの?う、受ける?」

「私は…ヘッケランの判断に任せる」

「未発見の墳墓…発見品はどうなるのです?」

 

「王国からの依頼内容次第になるらしい」

 

 それを受け皆が考える。

 仮に手を出すなという依頼だったら実入りがない。

 だがそれをカバーするには十分すぎる額である。

 

「他のチームは?」

「天武が受ける。ヘビーマッシャーと竜狩りは人数が多いからな」

「なるほど」

 

 暫くの相談の後に結論に至る。

 

「受けよう」

 

 総意と共にヘッケランが依頼人の元へ歩みを進める。

 

「その依頼受ける」

「わかった。守秘義務を忘れるな」

「わかってるさ」

 

「では、これがプレート。お前達は今から白金(プラチナ)チーム。出身はローブル聖王国、悪魔の噂を聞きつけ稼ぐために王国へ来た」

「ああ…わかった」

 

「お前はこっちだ。お前達は今からミスリル冒険者。出身は竜王国、腕試しに各地を放浪している」

「私がミスリル…不満ですが、まぁいいでしょう」

「待て。奴隷を連れていたな?そいつらは連れていくな。面倒になる」

「は?本気で言っていますか?」

「一人が不安なら連れていけ」

「…いいでしょう、置いて行きましょう」

 

 そう告げチームの人数分のプレートと書類を手渡していく。

 

「前金だ。守秘義務を忘れるな。準備を整えエ・ランテルへ向かえ。組合で話を通して依頼が来るまで待機しろ」

 

 大量に金貨が詰まった袋を手渡し依頼人は去っていく。

 

「さて…じゃあ行きますかね」

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 宿屋で長く思案を巡らせる女性の姿がある。

 

 あの鎧、あの死の支配者(オーバーロード)と何か関係が?

 少し前に目にした謎の死の支配者(オーバーロード)吸血鬼(ヴァンパイア)との闘い。

 強者の存在を目に出来た。それはいい。

 

 ──暫くの後にあの鎧が戻ってきた。

 それも…さも激戦でしたと言わんがばかりの傷を鎧に負って。

 

 話を聞くと魔封じの水晶を破壊する事で暴走が起こり、それを利用し吸血鬼を撃破したと語っていた。真実をその目にしていた彼女としては、何を言っているんだこの鎧は…と困惑するしかなかったのだが。

 

 溜息をつき状況を整理していく。

 

 死の支配者(オーバーロード)があの鎧に擬態して…いや、ない。

 あれは魔法詠唱者(マジックキャスター)。それが大剣…それはない。

 完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)を使用して…いや…ないな。

 それならもう少し筋力以外の戦い方をするだろう。

 何よりあの鎧が死の支配者(オーバーロード)であるならば、あの女も共に居たはず。

 

 では…あの鎧の傷は何だ?

 …己の名声を高める為の虚偽申告?あの時見せた怒りが引っかかるが……欲に塗れた人間のやる事であれば…納得できなくもない。そんな男がベロスのお気に入りとは…。

 

 ベロスと言えば妹にこの事を告げるかどうか。

 今はやめた方が良いか。何時もの調子で死の支配者(オーバーロード)がどうと周りに口にされたら困る。

 …だが伝えずにベロスが何か敵対されるような行いを…。

 いや…妹は賢くはないが馬鹿ではない。

 特に直観というか…何か…妙な…妙な所に関しては優れている。問題ないだろう。

 

「だがあれ程の力が潜んで居た…ありえるか?」

 

 独り言を口にする。

 …ありえる。私達こそが客観的見ればそれに該当する。

 

 オートスは大きなため息を吐き出す。

 こんなもの不毛な考えだ。

 

「…今まで通り過ごす…それがいいか」

 

 長い思考の末に一つの結論に行き着く。冒険者として今まで通りに人間として情報を集め、大きく動く事は避ける。今は情報がない。

 下手に大きく動き、死の支配者(オーバーロード)に敵対されても面白くない。

 まずは…アレと敵対を避ける事だ。変に目立つ事もないように、戻った後も適度に依頼を受け、冒険者として過ごしてきた。冒険者として、人間として違和感はないはずだ。

 エ・ランテル、エ・レエブルと既に力を示し、長く時間が経っている。死の支配者(オーバーロード)にとって我々が目障りならば既に敵対していたはず。

 

「……エ・レエブル?」

 

 エ・レエブルの悪魔事件が頭を過る。あの悪魔達は貴族の子供を攫った。当時は深く考える事もなかったが…攫う…お遊び…ではない。権力者である者の子を攫い、メイドは殺せど母となる者は生かしていたと聞く。家族は傷付けず子を攫う……。

 脅し…貴族を脅すために…明確な目的ある行動。

 あれだけ大量に手数を揃えたとなると……力ある者が背後に必ずいる。

 

「──まさか」

 

 あの悪魔事件はあの死の支配者(オーバーロード)が起こした事件だとしたら。

 そうなると二つの疑問が湧く。何故邪魔をした我々と、あの鎧を放っておく?

 

 …鎧が仲間や擬態……であればあの場で我々を排除、或いは敵対したはず。宝や子を狙った襲撃であるなら当然として、もし名声を得る為の…私の様に自演をしていたのなら、それこそ我らを生かしておく必要がない。我々の方が名声があった。その者が死に、そこで生き残り多くを助ける。それが名声を稼ぐ上で最上だ。

 やはり鎧は無関係か?

 

 …それともあの事件は吸血鬼(ヴァンパイア)が?それが切っ掛けで死の支配者(オーバーロード)が敵対した?

 

「…考えた所で分かっている事は一つしかないか」

 

 死の支配者(オーバーロード)は我々を敵視していない。或いは気付いていない。

 もし敵意があればとうに動いているだろう。

 

 この地を離れるべきかもしれない。

 あれとは…関わりたくはない。

 超位魔法を無詠唱で放つような、ふざけた存在と好き好んで関わってたまるか。

 

 …そういえばズーラーノーンとかいう、アンデッドを崇拝する組織が居るとクレマンティーヌが言っていたが…まさかな…。何にしても今は情報が無さすぎる。

 一人で情報を集めるのは時間がかかり過ぎるか。

 迅速に調べるべき事を調べ、この地を去る。それがいい。

 暫く幾つか考え、紙にサラサラと文字を書いていく。

 

「クレマンティーヌ」

「はい!」

「王都へ向かい情報を集めて貰えますか」

「王都ですか?」

「私はもう暫くこの地で調べる事があります。暫くは一人となりますが…貴女は人間の中では強いですし、指輪もあります。大丈夫でしょう」

「わかりました!何を調べれば?」

 

「ズーラーノーンとかいう組織が存在するかどうか、アンデッドを崇拝、或いはそれに準ずる組織が居るかどうか。そして…そうですね、裏組織に当たる…八本指の情報を集めてください。目立つような行動は慎み、趣味は程々に。詳しくはこれを読んでください」

 

 クレマンティーヌにそう告げ指示を書いた紙を手渡す。

 死の支配者(オーバーロード)に敵視されないうちに、さっさと情報を集めて次を目指すが良いだろう。

 接触するなら裏組織か王族だろう。それ以上に情報を持つ者が居るとは思えない。

 事を起こすにしてもこの地は不味い。

 

「えー、クレマンティーヌ行っちゃうの?」

「先に行ってますね、ベロス様」

「むー…気を付けてね」

 

 そう告げ手を広げるベロスにクレマンティーヌは首を傾げる。

 

「気!を!付!け!て!ね!」

 

 そう告げ再度手を広げる。

 オートスに目をやると疲れたように、抱き着けと手で伝えている。

 

「あ、はい。ありがとうございま"ず!?」

 

「べ、ベロ…ベロズざま"…」

「気を付けてね!」

 

 笑顔で友に抱き着き無事を祈る。

 傍から見れば微笑ましいがミシミシと音が鳴っている。

 顔が真っ赤になり鼻血が出ていく。

 

「…私へ行う力加減で抱き着くと…死んでしまいますよ」

 

 暫くの後、解放されたクレマンティーヌがふらふらと歩いていく。

 あれが…死の感覚か…と少し虚ろになりながら宿を後にする。

 

 目指すは王都リ・エスティーゼ。

 八本指が蔓延る地へと一人の女性が足を進めていく。




ももんが:羊…山羊…?
あるべど:山羊…確かに居るっちゃ居ます(山羊人(バフォルク)感)
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