ウルベルトの贈り物   作:読み物好き

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前回までのあらすじ
ももんが :全部任せる
デミえもん:お↑任せ↑↑ください↑↑↑


調査依頼

 吸血鬼(ヴァンパイア)騒動から暫く経ったエ・ランテルを鼻歌混じりに歩く一人の姿がある。

 

「あ、これ美味しそう」

「ベロスちゃん!これは新作の焼き菓子さ!持ってってよ」

 

 そう言っておじさんは笑顔でお菓子をくれる。

 

「あ、これすっごい良い!!」

 

 そう言うとおじいさんが笑顔で綺麗な石がついたアクセサリーをくれる。

 この街には優しい人が多い。

 

「あ、モモン!ハムスケー!おいでー!」

「殿!!守ってくだされ!」

「ベロスか!ハムスケも喜んでいる!遊んでやってくれ!」

「殿ぉ…」

 

「おや、モモン様じゃないですか。先ほどアインザック組合長が探していましたよ」

「組合長が?わかりました。行くぞハムスケ。ベロス、また後で話そう!」

 

 そう言ってモモンとハムスケは手を振って組合に歩いて行った。

 

 モモンは吸血鬼(ヴァンパイア)を倒したとかで有名になっていった。その後何個か依頼もこなして、アダマンタイト級と呼ばれる階級になったらしい。おそろい。

 

 今では漆黒と呼ばれてる。かっこいいと言ったら喜んでいた。それに比べて…エ・レエブルから戻ってから私達は変な呼び名で呼ばれてる。好きじゃないと姉上に伝えたが、呼び名等どうでもいいと言っていた。出て行く前のクレマンティーヌは私と姉上を交互に見て複雑な顔をしていた。また早く会いたい。

 

 そういえばモモンと会う度に姉上が変な目で見てる。あの表情は…あんまりいい事考えてない時の顔。姉上の考えてる事は顔を見れば何となくわかる。

 焼き菓子を片手にフラフラ歩いていると声をかけられた。

 

「──ちょっといいかな?あなた…三人チームの冒険者よね?オレンジ色の髪の軽戦士…チームに居る?」

「お姉さん誰?」

「私はー…旅の者だけど」

 

 そう言いながら視線はこっちをじっと見ている。左右で色が違う綺麗な瞳のお姉さん。

 

「……?これ欲しいの?あげるよー!」

 

 貰った菓子を渡すと少し困惑しつつも食べていた。

 少し会話を交わすと私達を探していたらしい。

 何でもクレマンティーヌの知り合いらしく、訪ねて来たらしい。

 

「それで…クレマンティーヌは何処にいるの?」

「王都に行くってー。後で私達も合流するんだー!」

「…王都ね」

 

「ところで第五位階を使うのはあなた?」

「姉上だよ!」

「何処に居るの?」

「あの顔の姉上は多分誰にも会わないよー」

 

 教えてあげると少し複雑そうな顔をして、離れた所に居た人達と何かを話して何処かに行った。

 暫く歩き、冒険者組合の扉を開く。用はないけどモモンも居るはず。

 受付のお姉さんがこちらに気づく。

 

八咫烏(ヤタガラス)のベロス様!最近オートス様をお見かけしませんが──」

 

 この名前は好きじゃない。三本の足がある鴉らしい、私達も三人で黒い衣装。そして神の使いとしての鳥だという。神の使いの如く、突如現れ悪魔を沢山倒したからそれが由来と聞いた。

 私は悪魔なんだけどなぁ……口にすると、姉上が凄く怖いから絶対口には出さないけど。でも…本当の事を言ったら、父上に辿り着く気もするんだけどなぁ。

 

「──ベロス様、本日はオートス様は?」

「居ないよー」

 

 そう告げると少し困ったような顔をしていた。

 話を聞くと何でも指名の依頼が来ていたらしい。姉上は忙しそうだから代わりに話を聞いてみる。何だかお姉さんが凄く複雑そうな顔をして言葉を濁してる。この人…物凄く失礼な事考えてない?私の勘はよく当たるから、多分考えてる。

 

「じゃあいいよ、受けない!」

「そ、それは…」

 

 それを受けて渋々説明していく。やっぱりこの人…私の事…馬鹿にしてなかった?絶対してる、そんな気がする。私…この人嫌いだなぁ…。姉上もたまーに私の事をあんまり頭良くないと思っている気がする。私だって父上にちゃんと作られたのに。

 

「──と、いう内容なのですが…」

 

 …あんまり真面目に聞いてなかった。

 新しく見つかった墳墓の調査?楽しそう。

 

「おっけー!いいよ!」

「本当ですか?ではこちらをオートス様かクレマンティーヌ様へお願いします。今回は多数のチームでの決行、及び守秘義務が課せられます、こちらにサインも必要ですので。詳しくはこちらに記載してあります」

 

 詳細が書かれた紙を受け取る。私だってちょっと頑張れば字くらい覚える。ふーん?難しく色々書いてあるけど…簡単に言えば見つけた物は全てブルムラシュー侯の私物とする。全ての情報は秘匿する事……これ、この人だけが得しない?まいっか。

 

「はい、サインしといたよー」

「え?あ…確かに」

「…字、書けないとか思ったでしょ」

「い、いえ…そのような…」

 

 …やっぱこの人嫌い!!面白そうだったから勝手に受けたけど姉上怒るかな。でも籠って考え事してるから外出も大事だよね、クレマンティーヌもそう言ってた。あ、でもクレマンティーヌが居ないのに依頼を受けたの不味いかな。

 そんな事を考えながら二階から降りて来た見慣れた姿に声をかける。

 

「モモーン!」

「ベロス?待っていてくれたのか?」

「そんな感じ!あと依頼受けたんだー」

 

「そうか!何時も楽しそうだな。私も組合長から急ぎの依頼を受けた所だよ」

「どんな?」

「ギガントバジリスクの撃破だそうだ」

「へぇー、モモンなら楽勝だよ!」

「ハッハッハ!そうだな、では直ぐに終わらせてくるとしよう!」

 

 その後も少し話をし、組合を後にするモモンを見送っていく。

 

「あ、そうだ。姉上に依頼の──あ、ニニャー!」

「ベロスさん、今日も元気ですね」

「うむ!元気なのは良い事である!」

「今日はオートスさん居ないの?残念だなぁ…」

 

 組合の見知った顔と会話に花を咲かせていく。

 暫く会話を満喫し、その日の終わりと共に宿屋への帰路へとついていく。

 

「ベロス、今日は何かありましたか?」

「なーんも!楽しかった!」

 

 あれ、でも何かあった気もする。まいっか。

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 ナザリック地下に足音が木霊する。

 一つは革靴のような小気味良い足音、一つは床を踏みしめる力強い足音。

 幾つか言葉を交わしながらその足音は扉へ向かう。

 

「やあピッキー……珍しい客だね」

 

 ピッキーと呼ばれたバーテンダーの衣装を身に纏った、キノコのような頭部を持つ者が肩をすくめている。

 

「いらっしゃいませ。デミウルゴス様、コキュートス様」

 

「アインズ様…私は…………デミウルゴス?」

「わらわは…なんて事を…あぁぁぁ…あ?デミウル…あ”ぁ”ぁ”ぁ”!!」

 

「アルベド…それにシャルティアとは珍しい組み合わせだね」

 

 バーに突っ伏せるようにしているアルベドと、頭を抱えながら酒を流し込んでいるシャルティアの姿がそこにある。

 毒に対する指輪を外し、出来上がっているアルベド。デミウルゴスを目に、その貢献に対し己の犯した失態を頭に浮かべ、シャルティアからは悲鳴のような声が上がっている。

 

「…お邪魔だったようだね。コキュートス、日を改めようか」

「ソノヨウダ、ソウシヨウ」

 

 そう告げ扉へ向かう二人の背に声がかかる。

 

「実はカクテル、ナザリックの改良が進みまして…お二方も是非お味見を…」

 

 振り向くとピッキーから悲痛な気配を感じる。

 何処に目があるのかすら分からないが、そう目が訴えかけている気がする。

 

「──それは…楽しみだね」

「遠慮シヨウ」

「コキュートス、少しは空気を読みたまえ」

 

 そう告げ席に座る。

 隣からは延々と怨嗟の様な、悲痛の様な声が鳴り響いている。

 

「ピッキー、この──ルだ──か──だね」

「申し訳あり──もう一度──お──いしても?」

 

 隣から壊れたラジオのように永遠と声が流れ出ている。

 悲痛な悲鳴と後悔の言葉で会話はかき消され、ピッキーと会話が成立しない。

 深くため息をつき、口を開く。

 

「…二人ともいい加減にしたまえ。ここは愚痴を吐く所ではなく、静かに楽しむ所だよ。そう願って作られた至高の御方にも失礼だという物だろう?」

 

 その声にピタリとラジオが止まる。

 

「…あぁぁぁ…わらわはアインズ様に何という事を」

「アインズ様の慈愛の御心に気が付けないだなんて…守護者統括…守護者統括ね…」

 

 少しの静寂の後に再度悲痛の声が響く。

 覚悟を決めて口を開く。

 

「…アルベド。君らしくもない、どうしたんだね。シャルティアもだ。コキュートスが話を聞くからその口を一度閉じたまえ」

「私ハ何モ言ッテイナイガ」

「たまには君も少し変わった経験をしたまえ」

 

 そう告げてシャルティアをコキュートスへ押し付けていく。

 

「──君の判断に従わなかった事は悪かったと思っているよアルベド」

「…結果的に私の判断をアインズ様は望まれていなかったわ」

「結果だけを見ればそうだった。だが本来であれば君の判断が正しい。本来は勝手な行動を取った私に非があったのだよ」

 

 そう告げるデミウルゴスを横目にアルベドが問いを投げていく。

 

「では何故?」

「目的を共にする同僚を疑いたくなかったのかね」

「…気持ち悪いわね。何か変な物でも食べたのかしら?」

「…バーで突っ伏している君には言われたくないね」

 

 コキュートスと静かに楽しむ予定が崩れていく音と共に、その後に続く話を聞いていく。

 

「──デミウルゴス、よくここに来るのかしら?」

「時間が合えばコキュートスと来る事がある。一人でもたまに来るがね」

「そう?私も来ようかしら?」

「…君やシャルティアは…アウラあたりを誘うのがいいんじゃないかね。女性同士、きっと話も弾むだろう?」

 

 何となく嫌な予感を覚え、心の中でアウラに詫びを入れつつそう告げる。

 ピッキーがそれとなく察し、新しいカクテルを用意する。

 奪う様にグラスを一気に呷り、おかわりを要求しているアルベドに苦笑しつつ話題を変えるべく話を投げる。

 

「折角の機会だ、普段しない話でもどうかな?」

「いいけれど。一体何を話すというの?」

 

「そうだね……──私は…ウルベルト様に会っている」

 

 その言葉は妙に大きく響いたようで、ピタリと静粛がバーに訪れる。

 

「それは本当でありんすの!?」

「ドウイウ事ダ?デミウルゴス」

 

 シャルティアとコキュートスが興味を示す。

 

「明確には覚えていないのだが、恐らくナザリックに異変が起こる前だろう。確かにウルベルト様が、私にそのお声をおかけくださった」

 

 全ての言葉を聞き逃すまいと皆が視線をデミウルゴスへと向けている。

 

「正確に全てのお言葉を思い出す事は難しい。だが…確かにこう仰ったのだ。同僚と共に世界の一つくらい征服してみせろと!我等はアインズ様にこの世界──宝石箱を捧げなければならない!であればだ!君達もするべきは後悔ではないだろう!勿論反省は必要だ、だがするべき事はナザリック、そしてアインズ様への貢献に全力を注ぐべきだろう!」

 

「ウルベルト様が…!ペロロンチーノ様も何処かに居られるんでありんすの!?」

「武人建御雷様モ…モシヤオ戻リニ…!!」

 

 先ほどの空気も嘘のようにその場に熱気が巻き起こる。

 至高なる御方がお戻りになられていた。もしや何処かに居られるのでは。そして…我らに期待をかけてくださっている!それを胸にシャルティアとコキュートスは大いに奮起する。

 それを耳に驚きながらも空いたグラスを下げるピッキーにデミウルゴスが声をかける。

 

「もう一杯貰いたいね、オススメはあるかい?」

「色々ございますが、どのような物をご所望で?」

「そうだね…後味が良いものがいい。何かあるかい?」

 

 軽く頭を下げ、複数の瓶を手にピッキーが一つのカクテルを用意する。

 

「どうぞ。こちら、ナザリックの外から採集された林檎を使用したカクテルです」

「ナザリックの外?」

「今後はアウラ様がお連れになられた森精霊(ドライアード)が栽培する予定だと聞いております」

 

 説明しながらピッキーが一つのカクテルを差し出す。

 下の方は美しい黄金色。上の方には美しい緑の色がある。緑が徐々に下がり、下の液体と混ざっていく様が炎のように美しい。

 

「美しいね…このカクテルに名前はあるのかい?」

「ございません。新作ですので」

「どうだろうピッキー。このカクテルの名だが──」

 

 言葉を掻き消すように力強く扉が開かれる。

 

「やあピッキー!おや、今日は賑やかだね!」

 

 覆面をした男性に抱えられたペンギンが声高々にそう告げる。

 椅子へと下され、口角を引き上げ口にする。

 

「私にも例の物を頼めるかな?何の話をされているので?」

「…ただの雑談だよエクレア。次回はもう少し静かに楽しみたいね。コキュートス、シャルティア、君達も嬉しいのは理解できるが…もう少し静かに楽しめないのかね?ここは馬鹿騒ぎする所ではないのだよ」

 

 そんな様子を横目にアルベドはグラスを見つめてポツリと呟く。

 

「至高なる御方々ね…至高なる御方…それはアインズ様…モモンガ様ただ御一人よ…」

 

 その呟きは誰の耳に入る事もなく消えていく。

 

 

 

 ・

 

 

 

 数日後の夕暮れのエ・ランテルに英雄が帰還する。

 街道を行くその姿に多くの者が目を輝かせている。

 

「あ!モモーン!皆もお帰り!」

「ベロスか!」

「も、戻ったでござるよ」

下等(ガガ)──小娘が」

 

 再三見下すのを止めろと命じられたナーベラルにほんの少し改善が見られる。

 ほんの少し過ぎて糠に釘となっているが。

 

「ナーベ…先に宿に戻っていてくれ」

「わかりました」

 

 アインズが心の中で小さく溜息を吐き出す。

 そんな中、ベロスが指を指しアインズに質問を投げていく。

 

「ハムスケの背中のそれ、何?」

「ん?ギガントバジリスクの尾だ。今回の依頼の物だな」

 

 それを耳にした多くの者が目を丸くして口にする。

 

「流石モモンさん!!これはまた凄いですね…」

「この程度は当然です」

「モモンは凄いよ!」

「ん?そうか?そうだな!」

 

 ご機嫌にベロスと話をしながら組合まで歩みを進めていく。

 依頼の達成報告と共に尾を引き渡しているとアインズに声がかかる。

 

「おお!モモン君!もう討伐してくれたのか?流石早いな!」

「組合長、遅くなりました。討伐より探す方に時間がかかってしまいました」

 

「モモン君、遅いどころか早すぎるくらいだよ!本当に頼りになる!ところで…帰還して早々すまない。また一つ依頼の相談があるんだが、部屋まで来てもらえるかね?」

「わかりました。お聞きしましょう」

 

 アインザックと共にアインズが二階へと消えていく。

 ベロスはフラフラと組合の中を歩き回っていく。

 顔見知りが居ない。それは珍しい事ではないが──。

 全体的に冒険者達が少ない。

 首を傾げて受付嬢に声をかける。

 

「何か今日、人少なくない?」

「あら…?ベロス様?何故ここに?」

 

 不思議そうに受付嬢がそう告げる。

 

「今日は例の調査依頼の前日ですので…もう皆様発たれております。前日に現地への集合、日が昇ると共に捜索のはずですが…八咫烏(ヤタガラス)の皆様はこれからでしょうか?」

 

「あ」

 

 依頼を受けたの忘れてた。

 ベロスの顔に忘れてた。と出た事で受付嬢が固まっていく。

 

「あの…大丈夫です…よね?」

「あー…うん、姉上も居るし、たぶん」

 

「ん?ベロス?どうした?」

 

 二階から降りて来たアインズが声をかける。

 

「何でもないよ!」

「何でもないではありません!!」

 

 組合には信用があるんです!と受付嬢として語っていくが、右から左に抜けていく。

 そんな様子を横目にアインズが声をかける。

 

「そういえばオートスさんとクレマンティーヌさんは来ていないのか?最近見ないが」

「姉上は宿で色々考え事してるよ。クレマンティーヌは今王都にいるー」

「なるほど?何やら問題のようだが、何かあったのか?」

 

「依頼なんだー。忘れてたやつ、今日出発だったんだー」

 

 受付嬢が力なく項垂れている。

 あの表情は姉上に少しだけ似てる。

 

「そ、そうか…大丈夫なのか?クレマンティーヌさんが不在…つまり前衛なしになるんだろう?」

「姉上が居るからへーきへーき。それに私も居るし」

「そうなのか?気を付けて行くんだぞ?」

 

「うん、他にも沢山チームが居るみたいだし大丈夫だよ!」

「ほう?大規模依頼なのか?私も組合長から依頼を相談されたんだが…これとは別か?」

「どんな依頼?」

 

「アンデッド師団がカッツェ平野に目撃されたらしい。調査と殲滅だそうだ」

「へぇー、モモンなら楽勝だよきっと!」

 

「ハッハッハ!そうだな、ベロスはどんな依頼なんだ?」

「新しく見つかった墳墓の調査だって!」

 

 教えてあげたらモモンは固まっていた。

 暫くしたら凄い勢いで組合長の部屋に走っていった。何でだろう。

 




ももんが:(白目)
べろす :(わくわく)
本作の称号八咫烏(ヤタガラス)を手に入れた!
今後八咫烏(ヤタガラス)は姉妹達の冒険者チームを指します。
オッスお願いしまーす!
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