ウルベルトの贈り物   作:読み物好き

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ももんが :オォイ!?
じるくにふ:見つけちゃった


チームアップ

「組合長、大変申し訳ないがアンデッド師団の殲滅は一度キャンセルさせて頂きたい」

「ど、どうしたのだねモモン君」

 

 扉を物凄い勢いで開き、今までにない剣幕で迫るモモンにアインザックが引いている。

 

「新しく墳墓が見つかったとか?そちらの調査に向かわせて頂きたい」

「み、耳が早いな…だが…ちょ、ちょっと…近いぞ…モモン君」

 

 服を整えアインザックが口にする。

 

「墳墓の件だが…アダマンタイト2チームは過剰だろう?指名の依頼があった八咫烏の力は君も知っているはずだ、多くの冒険者も共に行く。それに目撃されたらしいアンデッド師団、事実であればこれは放ってはおけないだろう?それに決行は明日…もう一日もないぞ?皆既に集合地点へと向かっている頃だが」

 

 それを受けアインズは出ない汗が大量に流れていく感覚を味わっていた。

 墳墓ってナザリックだろ!?何故バレたんだ!?

 確かに土で隠した程度だが…!どうなっている!?一体誰が見つけた!?誰が依頼を!?

 シャルティアを洗脳したプレイヤーか!?俺達の拠点だと知って人間を使って捜索を!?

 抑制され冷静になっていく。

 

 …どうする!?ここで仮に止めたとしても…無理だ!

 明日だと!?ふざけるな!!

 仮に今回止めたとしても組合に知られた以上、必ず依頼が発生する!!

 そうだ!ポニョペニョコと対になるもう一体の拠点として…!!

 抑制され冷静になる。

 

 …ダメか。結局その後調べる事になる。

 それにしても…俺達の拠点に…仲間達と作り上げたナザリックに土足で踏み入るだと!?

 許せるか!!!冒険者を皆殺しにして脅威を知らせ、近寄らせないように…。

 ダメだ…あの姉妹に危険が及ぶ…。

 怒りと焦りに抑制されていく。

 

 ん?待てよ?一度あの二人を遠ざけて、冒険者を皆殺しにして……。

 ダメか…それでは余計にアダマンタイト級に依頼が行く。

 依頼…依頼か。

 

 ふと、以前のアインズでは決して出ない考えが頭を過る。

 

 ──冒険者は依頼を受けた以上、それも当日に断るのは難しい。

 自らの意思で来た者なら躊躇なく殺す。

 だが…今回のはそうじゃない…顔見知りだっているかもしれない…。

 

 …ナザリックに無礼を働かないのであれば…生かして帰してやってもいい。

 

 街で人間として長い時間を共に過ごしたからか。

 或いは仲間達を頻繁に思い出していたからか。

 或いは姉妹──ベロスの影響か。

 アインズ自身には自覚が無くとも心に小さく生まれた種。

 人間としての小さい心の種が殺すという行為に否定を浮かべていく。

 

 …威圧し、脅威が知り渡れば皆帰るか…?

 …ダメだ。脅威となれば…アダマンタイトである姉妹に依頼が行くのは間違いない。

 仮にモモンに依頼が来て踏破したとなれば…様子を見に来られて気付かれる。

 モモンが突破に失敗したとなれば、八咫烏にも依頼が行く可能性が高い。

 

 くそ!組合に知られた地点で一度は二人を依頼で向かわせ追い返す必要があるのか!?

 他に方法は…それも今後の依頼も止める方法…思い浮かばん!

 

 傷付けるなと命じた結果…二人に何も手を出せず、階層を次々踏破されてもダメだ。

 …意見を言える位置に俺が居る事が必須だ。

 

 今後の依頼を止める方法…多くの冒険者と共に、二つのアダマンタイトチームが参加し、探索に失敗する…!それであれば危険すぎて誰一人近寄らなくなる!それが成功さえすれば危険地帯として人すら来なくなるかもしれない!

 …俺にはそれしか思い浮かばない!

 

 抑制され冷静になる、焦る、抑制される、怒りが湧く、抑制される。

 それを何度か繰り返し、考えていく。

 どうすれば俺が意見を言える立場で参加できる?

 暫くの後にベロスの言葉を思い出す。

 すまん!と思いつつ、これしかないと口を開く。

 

「実は八咫烏のクレマンティーヌさんが不在なのです」

「何!?」

 

 アインザックが目を白黒させている。冗談ではない、依頼当日にチームに欠員。

 彼女達は魔法詠唱者(マジックキャスター)。前衛無し等ありえない。

 ──実際の所は何の問題もないのだが、アインザック達が知る由もない。

 

「そして…ナーベが…その…体調を崩しまして…」

「何だと!?まさか共に病か!?大丈夫なのかね!?」

「だ、大丈夫です。病ではありません、少し気分が優れないとかで…しばらく休みたいと」

「気分が優れない?病…ではないのだろう?」

「はい、ただその…体調が優れず…」

 

 体調不良…厳しいか?ただ俺にはそれくらいしか思いつかない…。

 そんな様子を暫く見ていたアインザックが何かに辿り着き口を開く。

 

「……そうか、女性だしな…いや、すまん事を聞いた」

 

(何だか知らんが納得してくれた。良かった。助かった。すまんナーベ)

 

「そこでです、組合長」

「何だね?」

 

「私は前衛、彼女達は後衛です。彼女達とチームアップで臨みたいと思います。調査後、速やかにアンデッド師団は殲滅します。どうか我儘を聞いて頂きたい」

 

「……なるほど、お互いにチームが欠けているから…か?」

「その通りです」

 

「だが…当日の依頼に突如名乗りを上げるのか?」

「姉妹に危険が及びます」

 

 アインズの本心が無意識に口を出て行く。

 暫く眺めていたアインザックが何かに思い至り、小さく笑い口を開く。

 

「英雄色を好むと言うが……モモン君!君もこの街に尽くしてくれた、何とかしよう。オートス嬢は確かに美形だが…ナーベ嬢を蔑ろにしてはいかんよ?それとも君は小さい子が好きなのかね?」

 

「は?色?小さい子?美形?」

 

「恥かしがらなくていい!分かっているよモモン君!…実際チームメンバーが足りないのでは仕方ない、幸いアンデッド師団は目撃情報があるだけだ。漆黒と八咫烏なら墳墓の探索程度、直ぐに終わるだろう。その後はアンデッド師団も頼んだよ!」

 

「頑張ってくれたまえ!エ・ランテルはいい所だと強く勧めてくれると助かるよ!」

 

 アインザックは依頼内容を詳しく説明し、アインズの肩を力強く叩く。

 戦友を見るように笑顔で見送るアインザック。

 アインズは頭にクエスチョンマークを浮かべて部屋を後にする。

 人目がない事を確認し、小声で詠唱を行っていく。

 

 ──<伝言(メッセージ)>

 

<ナーベか?私だ>

<<如何なさいましたか>>

<色々あってだな…暫く宿の部屋を出るな>

<<部屋を…ですか?>>

<そうだ。誰か来ても無視せよ>

<<わかりました>>

 

<伝言(メッセージ)>

 

<アルベドか?>

<<アインズ様!!ご連絡頂けるとは!何かございましたか?>>

 

 暫くぶりの連絡に、アルベドから歓喜の声が帰ってくる。

 

<緊急事態だ…ナザリックが人間に知られた>

 

<<…承知しました。即座に迎撃と捕獲の準備を行います、第一階層へ守護者と高レベルの僕を集めます>>

<いや、その……>

 

「モモーン。話終わったの?」

 

 アインズの無い心臓が跳ねる。

 階段の下からベロスが顔を見せている。

 

<すまんアルベド!後程戻る!>

 

 早口で伝え伝言(メッセージ)を切り、振り返る。

 聞こえてないだろうな…と、全身から汗が出ている気分を味わい声をかける。

 

「ベ、ベロス…あー…墳墓だが…私も行く事になったよ」

「そうなの?」

「…ナーベが不調でね…悪いが一時的にチームを組めないかな?」

「モモンと?いいよ!あ、でも姉上に伝えないと。一緒に行こ!」

「あ、ああ…そうだな」

 

 ベロスに手を引かれ、アインズはフラフラと冒険者組合を後にする。

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 怪しい光を放つ本を手に呟く者が居る。

 

「これもハズレ……やはりこの近辺に死の支配者(オーバーロード)…アンデッドは居ないのか?」

 

 ぼんやりと虚ろな目をした兵士の姿がそこにある。

 記憶のページをパラパラ捲りっていく。

 暫く捲り、所々に一筆書き込んでいく。

 数ページを破り取り、本を閉じ兵士を部屋の外へと放り出す。

 

「いって…あ?あれ?ここは…?俺は……休みで…酔っぱらってたか?」

 

 ブツブツ言いながら兵士はふらふら歩いていく。

 

「一日一度の制約さえなければ…いえ、それはウルベルト様に不敬」

 

 ベロスの目を盗み、一日一度、適当な兵士から記憶の情報を集めつつも考えていく。

 そろそろ王都へ赴きクレマンティーヌと合流するべきか。

 指輪を下賜した以上、アレは最早私の庇護下に入った。

 誰であろうが手を出されては面白くない。

 何よりこの地では何も情報が出そうにない。

 

 死の支配者(オーバーロード)はこの付近には居ないか?吸血鬼(ヴァンパイア)の住処に攻め入って来たのか?

 出る事のない答えに天井を見上げる。

 そんな中、聞きなれた廊下を駆ける音がする。

 

「姉上!依頼!依頼だよ!!」

「ベロス?今は依頼──」

 

 依頼等、今は受けません。そう告げようとして声が喉で詰まる。

 ベロスの後ろから現れた姿を目にして。

 

「ど、どうも。お久しぶりです」

 

 …何故この鎧がここに居る。

 

「……状況を説明してください」

 

 辛うじて言葉を絞り出す。

 

「モモンと一緒の依頼なんだー!」

「──よろしくお願いします」

 

 何?今、私の妹は何を言った?共同依頼だと?

 よろしく?まさかもう引き受けたのか?

 この自演鎧と?…それは私もだが…。

 

「…どのような内容ですか?」

「未発見の墳墓の調査!」

 

 それを耳に表情から感情が抜け落ちていく。

 未発見の…何?墳墓?墳墓だと?

 ──ここは人間の勢力圏内、ならば未発見の墳墓等あるはずがない。

 突如見つかった、或いは出現したと考える事が正しい。

 ならば潜むは…死の支配者(オーバーロード)か…?

 それとも滅んだ吸血鬼(ヴァンパイア)か?或いは別の何か…。

 

「姉上?大丈夫?」

 

 服を引かれて現実に帰ってくる。

 何であれ好き好んで関わりたくない。

 そんな気持ちが口を出て行く。

 

「…失礼しました。墳墓…墳墓には……その──」

「──余り良い思い出がなく……以前虫が群れておりましたので」

 

 苦しい言い訳が口を出る。

 自分自身に嫌気がさしていく。もう少しまともな言い訳は出ないのか。

 不思議そうにそれを聞いたベロスが口を開く。

 

「え?姉上は蟲を──」

「…暫く黙っていてください」

 

 ベロスの口へ手をやり考える。

 小さく深呼吸し、アインズへ告げていく。

 

「…その依頼ですが…断れませんか?我々としては…勿論…受けて…もよいのですが………今は…今はクレマンティーヌが居りませんので。前衛が居ないのは…その…そう、我々は魔法詠唱者(マジックキャスター)ですので」

 

 死の支配者(オーバーロード)が潜んで居る可能性がある場所の探索?冗談ではない。

 こちらからわざわざ会いに行く?馬鹿な。

 それを受けアインズが口を開く。

 

「それは承知してます。うちもナーベが調子を崩してしまい…組合長から今回は私が前衛、お二人が後衛としてとの事です」

 

 アインズも必死だ。

 ここで断られ、後にアインズが居ない時や知らぬうちに二人に依頼が。

 或いは個人の興味で来たら最悪の事態になり兼ねない。

 その時でも傷付けぬ為にと、罠や配下に手を出させなければ二人は無事だ。

 だがそれでは階層が踏破されてしまう。

 

 それを阻止できるのは、前衛として共に入り、意見を述べれる今のみだ。

 危険だと判断させ、近寄らない様に…無傷で何とか追い返さねば。

 元より墳墓に関わる気がないオートスの心境等露知らず、全力で頭を回転させる。

 

「……そ、そうですか…組合長が…ですか……せ…戦闘を想定すると…そう、息の合った連携が必要になりますので、やはり少し難しいでしょう」

「…それは……えー…た…確かに……で、ですので!ですので以前!以前共に戦った私というわけです!」

 

 …よし!繋がった!これなら…矛盾はない。ないよな?

 ないはずだ!完璧じゃないか!?これなら姉妹の安全は確保できる!

 言い淀むオートスを前に、アインズは安堵の息を心で吐き出す。

 

 この鎧…!何故頑なに墳墓に連れようとする!?

 アインズと対照的にオートスは苛立ちが膨れ上がっていく。

 

「…さ、先ほども申しました通り……私は──墳墓……遺跡に…良い思い出がなく」

「虫でしたか?丁度虫よけのマジックアイテムがありますのでお貸しします」

 

 虫除け…というか最低位の者を近寄らせないガチャの外れアイテムなんだが…。

 まぁ虫くらいは寄ってこないだろう。来ないよな?

 それに女性は虫嫌いなのは…よくわかる。

 黒棺(ブラックカプセル)を見たかつての仲間達を思い出して納得していく。

 

 ──糞が!!虫除けのマジックアイテムだ!?

 そんな都合の良い物があってたまるか!!

 一方でオートスのイラつきが最高潮に達していく。

 

 

「姉上…顔が怖いよ…勝手に受けて悪かったからさ…」

 

 

 そう告げたベロスの顔を目に、爆発寸前の怒りが鎮火していく。

 最近疲れた。そのせいか?一度…休みたい。

 小さく息を吐き出し、暫く沈黙の後に小さく告げる。

 

「……一度詳細をお聞きしても?」

 

 墳墓…死の支配者(オーバーロード)が潜むのか、滅ぼされた吸血鬼(ヴァンパイア)が潜んでいたのか。

 無関係か、それも不明だ。話を聞く程度ならいいだろう。

 

「複数の冒険者チームで──」

 

 アインズがアインザックに聞いた話を説明していく。

 複数の冒険者チームで墳墓を探索。

 今回前衛はアインズ(モモン)、姉妹が後衛のチームとして動く。

 

 話を聞いていくうちに、幾つか考えが浮かんでいく。

 複数の冒険者チーム…ならば好機とも考えられる。

 生贄(冒険者)を送り込み、様子を見る。危険であれば即座に帰還する。

 

 今回の依頼で幾つか確認出来る事がある。

 もし死の支配者(オーバーロード)が潜むなら、個であるかどうか。

 個であれば、敵対された所で我ら二人で滅ぼせる。好んで敵対する気はないが。

 問題なのは強力な配下が居た場合…或いは死の支配者(オーバーロード)が配下であった場合。

 それはないか。あんなのがそうほいほいと居てたまるか。

 そう考えていく。実際はほいほい居るのだが。

 

 古い遺跡であるなら、また別の角度で情報が得られるかもしれない。

 準備を怠らなければ…死ぬ事もまずないだろう。

 囮を送り込み、様子を見て判断する…完全に悪い話でもないか?

 

「姉上これ…忘れてたんだ…ごめんなさい」

 

 ベロスがポケットからクタクタになった紙を手渡していく。

 しょんぼりとしている妹に小さく溜息をつき目を通す。

 指名の依頼…ブルムラシュー?聞いた名だ。六大貴族か。

 耳にする噂や立ち回りから…恐らくは売国奴。

 

 色々な可能性が頭を巡る。

 王国は──残念な国だ。自力で発見した?…情報を掴まされたと考えるべきだ。

 では──他国…ブルムラシュー…帝国が裏で糸を引いている。何故だ?

 これを受けるは将来的な帝国の弱みとなるか?

 

 それに一度受けた依頼を断るのも折角手にした名声に傷を付ける。

 暫く思案を巡らせて口を開く。

 

「──わかりました。準備を整えます。探索は何日後ですか?」

「…明日の早朝です。これから集合地へ向かいます」

 

「…は?」

 

 オートスから出た事のない声が宿屋へ木霊する。

 




おーとす:明日って…明日ですか?(困惑)
ももんが:明日って…明日です(疲弊)
べろす ;明日って明日だよ!(わくわく)
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