ウルベルトの贈り物   作:読み物好き

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前回までのあらすじ。
合流した。やったぜ!
会話パートが多いと文字が…増えるっ…(白目


第二幕
すれ違う想い


 

「この部屋を使ってください。暫くは不用意に出ないように」

 

 デミウルゴスが二人に告げる。

 力なく部屋へと入っていく姉と、心配そうに視線を投げている妹を目に考える。

 この二人こそウルベルト様に与えられた、共に事を成す為の同胞なのであろうか。

 

 ベッドに机、椅子と最低限の物が置かれている部屋。とは言えどナザリックの調度品。

 黄金の輝き亭程度とは比べ物にならない良部屋である。

 部屋やナザリックについて軽く説明を述べ、改めて部屋は出るなと念を押す。

 問題が起こるのは本意ではない。

 

「では私はこれにて。入り用があれば外に魔将を待機させてあります。彼らに伝えてください」

 

 そう告げデミウルゴスは退室していく。

 オートスは少しの後に椅子へと体を預け、小さく息を吐いていく。

 生き残った。生き残りはした。

 

「姉上…大丈夫?」

「……いいえ」

 

 大丈夫であるわけがない。何時もであれば口にも出さぬ言葉が心境を物語る。

 あの日、与えられた命令を遵守出来ていれば。あの部屋で待ち続けていればこんな事にはならなかったのだろうか。これは…与えられた命を破った罰なのか。

 

 賢く在れ。そう願われたはずなのに。

 与えられた命を厳守していれば。

 部屋を失う事も、探されていた者の命を狙う事もなかったのかもしれない。

 全てが間違っていたのかもしれない。そう、今までの行い全てが。

 屈辱と共に膝を折り、怨敵であり父の友だと語った者に助命された時、彼女の心は折れた。

 長い沈黙に耐え切れずベロスが再度会話のボールを投げていく。

 

「あ、あのさ、デミウルゴスだっけ。どう思う?」

 

 ウルベルト様が創造された…と奴は言っていた。

 ──いや、もういい。もう何も考えたくない。何も。

 何も答える事無く項垂れる。

 

 そんな姉の様子を目に、再度口を開き、閉じる。

 今は声をかけない方が良い気がする。

 ベットへと背を預け、ベロスは今までの出来事を思い起こしていく。

 

 …デミウルゴス?モモンは兄妹って言ってたけど…??えっと??私達より前に、父上とモモンは友達だった??つまり??その頃から居たなら姉上や私より早く??

 ……兄上???って事??………うーん…。でも何処かで聞いたんだよね。あの名前。

 

「──あっ」

 

 ベロスの脳裏に記憶が一つ思い出される。

 思い出の部屋を訪れた際、一人の悪魔が言っていた言葉。

 

『デミウルゴス様の使いの方でしょうか』

 

 思い出すと同時に心に小さな怒りと大きな悲しみが湧いていく。

 ベロスとしても牧場の件は当然許し難い。

 同時に友達(モモン)だと知った以上、これ以上対立を深めたいと思ってはいなかった。

 深い謝罪も目にした。なかった事にはできない。それでも──。

 

(そういえば、モモンも…雰囲気も喋り方も全然違った)

 

 共に過ごした期間は長いとは言えないかもしれない。それでも──悪人ではない事くらいは分かっている。

 戦いの場で会話を求めたアインズも、深い謝罪を行った姿も、姿形は違えどベロスの知るモモンであった。その後に見た姿。玉座の間で目にしたアインズは、彼女の目には──モモンとは異なる者に見えていた。

 

 疑問が頭に浮かぶ。本当に…あんな酷い事をモモンがしたのかどうか。ベロスの知るモモンであれば決してしない。どちらが本当の姿なのか。街の姿が嘘であったなら、玉座の間での姿が真実であるなら。あの謝罪は…嘘?

 ──ううん。そんなはずない。そんな…そんなはず…ない。

 …モモンがやったんじゃないなら。モモン以外の誰か。モモン以外の──。

 

 …………きっと、きっと全部私の勘違い。

 自分にそう言い聞かせ、頭に浮かんだ嫌な想像を心の中にしまっていく。

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 個室から自己嫌悪によるうめき声が響く。

 

「守護者達は何も悪くないのに…あの態度はなかったよなぁ………幻滅…されてないといいんだが…でも仕方なかった……いや、あの態度はないだろ俺…」

 

 アインズが自己嫌悪に陥っている原因。

 それは玉座の間を後にし、自室へと戻った後の事。

 少し前の話である。

 

 

『無事終わって本当に良かった。それにしてもアルベド…少しきつすぎじゃないか?』

 

 色々とあったが、無事──アインズ視線では二人の件は何とか上手く収まった。

 

『アルベドは流石に…考えすぎじゃないか?…でも散々警戒しろって言ったのは俺だしなぁ…』

 

 アルベドの立場なら…そうなるのか??アルベドの立場か…。ナザリックの守護者統括…現場の責任者…か?

 ──シャルティアの洗脳に続いて、俺が冒険者と共にナザリックに突入。その後牧場の破壊に次いで…姉妹との闘いか………。

 

 …信頼してた同僚が商売敵に情報をリーク。その上、社長が独断で、しかも残り猶予数時間のプロジェクトを丸投げ。何とかしたと思ったら、唯一の自社工場が原因不明の崩壊の上、社長が襲われ…襲ったやつを社長が連れてきた……うん…今度アルベドに謝っておこう…。労いも絶対必要だな…休暇…とかも作った方がいいか…?

 

 …本当にすまん、アルベド。そんな気持ちを胸にぼんやりと考える。

 ……姉妹との戦いにもプレイヤーは来なかった。本当に存在しているのか?

 いや、している事は間違いない。シャルティアの洗脳という事実がある。星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)ですら洗脳が溶けなかった。超位魔法すら跳ね除ける…そんな効果はワールドアイテムで間違いないはずだ。

 

『……星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)?』

 

 指輪に視線を移し、一つの可能性が頭に浮かぶ。

 

『…試してみる価値は…ある』

 

 同時に不安が過る。

 もし…ダメだったら。

 

『………その時は…その時だ』

 

 そうだ。あの二人にも約束した。もしダメでも…必ず見つけ出す。

 二人にも悪い事をした。オートスさんに至っては失墜する天空(フォールンダウン)まで打ち込んでしまったしな…。

 …仕方がなかった。大災厄(グランドカタストロフ)…ワールド・ディザスター相手に、あの時の俺に余裕は──。

 

『──あっ!!』

 

『ま…不味いぞ!不味い不味い不味い!!』

 

 アインズから素の悲鳴に近い声が上がる。

 一つの致命的なミス。それに気づいた故である。

 

『間に合うか!?いや、悩んでいる場合じゃない!!<完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)>!!』

 

 不可視となると同時に自室を後に姿を消していく。

 誰にも見つからずに速やかにナザリックを出る必要がある。

 敵対プレイヤーが居る以上、本来であれば単身外に出る等ありえない。狙ってくださいと言わんがばかりの行動だ。守護者達にも単身の行動は禁じたし、常に警戒するよう伝えている。それだけアインズが警戒している証明でもある。

 それを押してでも今だけはアインズが一人でなければならない。

 

 アインズが気付いた致命的なミス。それは戦闘跡である。

 あの戦闘で使われた大災厄(グランドカタストロフ)。その爪痕は深々と大地に残されている。

 牧場跡地──そこにも同じ力で大地へと爪痕が残されている。見る者が注意深く見れば気付く事は難しくない。牧場の一件を伏せた以上、これが判明する事だけは避けなければ。その思いがアインズを突き動かす。

 

 

『──探知系魔法に対する逆探知にも反応は…ない。……ナザリックからも監視されていない……よ、良かった…まだ気づかれていない…よな?……間に合った…』

 

 崩壊した大地の上空。安堵の息と共に魔法を大地にかけていく。

 大きく抉れ、巨大な亀裂の入った大地は徐々に修復され、緑が戻っていく。

 

『──そういえば、一人で外に出る…初めてかもしれないな』

 

 ぼんやりと草原に戻りつつある大地を眺め呟く。

 無事…証拠は消せた。勝手に外に出た事が皆に知れれば大騒ぎになるのはアインズにも想像がつく。プレイヤーの危険も潜んでいる。即座にナザリックへと戻るべきだろう。

 

『……<伝言(メッセージ)>』

 

 こんな事をしている時ではない。それは重々分かっているが、魔法を発動させていく。

 繋がる先がないように、魔法は効果を失い消えていく。

 友へと向けた伝言(メッセージ)。結果は頭では分かっていた。この世界に来た際に何度も試していたからだ。

 視線を指へと向けていく。

 

『……願い…か』

 

 アインズの意思と共に巨大な魔法陣が展開されていく。

 指輪が輝き、使用者の願いを待っている。

 一拍置き、心からの願いを口にする。

 

『──星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)!俺は──俺は願う!!俺の友人!ウルベルト・アレイン・オードルを!この場へと!!この場へと導いてくれ!!』

 

 

 ──その願いは聞き入れられる事はなく。魔法陣は細かな粒子となり風に乗り消えていく。

 その光景を前に怒りが沸く事は無かった。

 力なく消えゆく光を見つめるその姿こそ、彼の心境を語るには十分だった。

 

 どれだけの時間そうしていただろうか。

 アインズを現実に引き戻したのはアルベドからの伝言(メッセージ)

 今から戻る。一言だけ伝え、失意のままにナザリックへと帰還していく。

 

『アインズ様!!ご、ご無事で!!?』

『護衛も付けられず一体どちらに!!?』

 

 守護者達が口々に告げていく。

 

『………戦闘跡地を修復してきたのだ』

『修復!!?その程度の事、お命じくだされば──!!』

『…………私は…戻る』

 

 小さく告げて部屋へと戻る。

 その暫くの後に罪悪感へと変わり、自己嫌悪に陥っているのである。

 

 

「…最低だ。心配してくれた守護者達に対しての態度じゃないだろ…」

 

 確かにあの時は失意のどん底に居た。話しかけてほしくもなかった。

 だが原因は俺だ。勝手に外に出て勝手に機嫌を悪くして帰ってくる。最低すぎる。

 

「あ……愛想つかされたり…しない…よな…?」

 

 罪悪感と小さな不安が溜息に乗り口を出る。

 

「でも…あの場に誰も居なくて…本当に…良かった」

 

 願いを叶える事もなく消えていった魔法陣の粒子。あの光景は…あんな光景を…あんな思いをするのは俺だけでいい。何が…星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)だ。シャルティアの時といい、何の役にも立たないじゃないか。俺のボーナス返せよ本当に。何の意味もなく二度目の役目を果たした指輪を忌々しくも見つめていく。

 

「…だけど、確かに希望はあるんだ」

 

 今までであれば崩れ落ちてしまう程の絶望であった事だろう。

 だが今は違う。

 

 ウルベルトさんはきっと何処かに居る。それだけは間違いないはずなんだ。あの二人こそがその証明だ。その事実がアインズに大きな希望を与えている。

 

 ぼんやりと姉妹の事が頭に浮かぶ。

 そういえば…ウルベルトさんの子…守護者的なNPCという事なのか?

 それともこの世界で作った実子なのか?

 アルベドもNPCには居ないと言ってた。であれば後者か?

 

 つまり妻…ウルベルトさんに奥さんがいる??だとすれば、相手もやはりバフォメット??…ないだろうなぁ。俺だって骨の女が居たとして欲情するかと言われれば確実にNOだ。

 そしてワールド・ディザスターを所持していたという事は…子供にクラスは引き継がれる??

 この世界でレベル100まで上げる術があるという事か??

 つまり狩場…高レベルのモンスターがひしめき合う地域が存在する…??

 

 だとすれば、やはり現地の警戒は必須だ。

 今回の件だって、敵から見れば細事だったからこそ出てこなかった可能性もある。

 俺だってナザリック近辺の狩場で他PTが狩りをしようが、PKしようが気にも止めない。

 ……ゲームならだけどさ。

 ダメだ。不安になる。他の事──他の事を考えよう。

 

 …ベロスとは友達になったけど…この世界の初フレンドはウルベルトさんの子供だったわけで…。それって……フレンドなのか??

 そもそも…今でも俺は友達なのだろうか。

 彼女達の故郷を破壊してしまった俺が…正確には壊したのはデミウルゴスだけどさ…。

 

 デミウルゴスに任せたけど上手くやってくれてるかな…。

 上手くまとまった…とは思うけど、他の守護者達がどう感じているのかも気になる。

 考えていても仕方ないか…。少し様子を見てこよう。気も晴れるかもしれない。

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 足早に廊下を進むデミウルゴスの姿がある。

 その表情は珍しくも曇っている。

 

「…?」

 

 ふと背後を振り返る。

 ほんの小さく敷かれたカーペットが動いたような。

 

「…気のせいですか」

 

 歩みを進め、とある部屋へと入っていく。

 

(ビ…ビックリした……)

 

 振り返ったデミウルゴスの視線の先には不可視となったアインズの姿があった。

 

(バレてない…よな??心臓に悪いぞ)

 

 うーん…様子を見に来たものの、このまま俺も部屋に入るのは不味いよな。

 勝手に扉が開けば流石にどんな奴でも気付く。

 扉に近寄り耳を澄ます。小さく声が聞こえる。

 誰か中に居るのか??何を話しているのか気になるな。

 

(<兎の耳(ラビッツ・イヤー)>)

 

 アインズにピョコンと可愛らしい兎の耳が生えてくる。

 髑髏にウサ耳という何とも言えない組み合わせである。

 盗み聞きなんて良くないよなぁ…とは思いつつも耳を澄ませる。

 

「遅いでありんす」

「すまないね。皆揃っているようだね」

「…皆、議題は分かっているわね?」

「あの二人の事でしょ?」

 

 そんな会話が耳に入ってくる。

 今の声は…シャルティアにアルベド、それにアウラか?

 守護者達の集会か?これは良い。

 皆の思っている事が聞けるかもしれない。

 

「…それからでもいいわ。ではまずは──二人について。皆はどう考えているのかしら」

「そうでありんすねぇ…正直良い印象はないでありんす。特にでかい方」

「あんた散々だったもんねぇ」

「はぁ!?とどめを刺したのはわたしでありんすよ!?」

「はいはい。すごいすごい」

 

「喧嘩はその辺にして頂戴。ではアインズ様のお考えについて。ナザリックへと迎え入れると仰っていたけれど」

「え、えっと、アインズ様が言うなら…それがいいんじゃないでしょうか??」

「至高ナル御方ウルベルト様ノオ子。デアレバ当然デハナイノカ?」

「その通りだね。コキュートス」

 

「…本気で言っているの?」

「本気だとも。是非とも共にお役に立ちたい所だね」

 

 そんな会話を耳にアインズは胸をなで下ろす。

 取り越し苦労だったのか?それにしてもデミウルゴス、積極的だな。デミウルゴスに任せたのは正解だったかもしれない。

 

 共にか。一緒に行動する事で打ち解け事もあるのか??

 …どっちにしても…時間は必要だろうな…。

 しかし共に…。共にか…。また…また何時か皆と一緒に…。

 …そうだ、皆が残してくれた守護者達の事をもっと信用しろよ俺。盗み聞きなんて最低だ。建国の件だって全部任せてしまった。プレイヤーの件だって何一つ分かっていないんだ。もっと俺もしっかりしないと。

 自分に気合を入れなおし、アインズはその場を後にしていく。

 

「──ふざけるのはその辺にして頂戴。時間に余裕があるわけではないの」

「ふざける?アインズ様も仰っていたがね。アインズ様と同じく"私も"信用しているのだよ?誰かとは違う意見だ」

「……何が言いたいのかしら?詳しく聞きたいわね」

 

 デミウルゴスとアルベドの視線が交差する。

 地獄の炎と冷徹な氷。その表現が相応しいだろう。

 

「あ…あのさ、何?何かあった?ちょっと怖いんだけど?」

「二人共居なかったでありんすねぇ…。アルベドがウルベルト様がアインズ様を裏切った可能性がーとか言ったんでありんすぇ」

「はぁ!??アルベドあんた頭大丈夫!??」

 

「アインズ様の御命を狙われたのよ。それが例え──例えどんなに小さな可能性であろうと考慮するのは当然よ。同格の脅威が相手なら尚更だわ」

 

「言わんとする事はわかりんすよ?ただねぇ。小さいどころか可能性そのものがゼロでありんす。ゼロにゼロを掛けてもゼロでありんすよ。アインズ様も仰っていたでありんしょう」

 

「シャルティアあんた…………計算出来たんだ」

「はぁん!!?……あぁー、チビ助には掛け算は難しいでありんすかぁ?」

「はぁ!?」

「や、やめようよお姉ちゃん…」

 

 そんなやり取りを横に、デミウルゴスがアルベドへと告げていく。

 

「──…正直な所、君には──言いたい事も思う所もある。が…今はそれ所ではない」

「……そうね。その…通りだわ……」

 

 先程までの感情が嘘のように鎮火した二人に皆が首を捻っていく。

 静寂が訪れた部屋で口火を切ったのはデミウルゴスである。

 

「皆もよく聞いてくれたまえ。………本題だ。…非常に、非常に不味い状況だ」

「あの??えっと??な、何が不味いのでしょうか??」

 

 一拍置き、絞り出すようにデミウルゴスは口にする。

 

「…………アインズ様は恐らく──我々に失望されている」

「えぇ!?な…何で!!?あたし達何かした!!?」

 

「…何もしていない。…それが答えだよ。我々の失態を考えれば、未だ見捨てずに居られていてくれる事こそが正に慈愛のお心だ」

「わ、わかるように説明してほしいでありんす!!」

 

 皆の顔色が変わる。

 デミウルゴスが告げていく。

 

「我々は今まで…全てに失敗している。エ・レエブルではアインズ様が直接手を下され最上の結果をお持ちくださった」

「ダ、ダメなんでしょうか…」

「アインズ様に行動して頂く…恥ずべき事態だったわ…」

 

「続いてはシャルティア、君の洗脳だ。あの時はアインズ様自らが動かれ…我々は内部で意見の相違。何と無様な事だったか」

「そ、それは……」

 

「君を攻めているわけではない、まさかアンデッドである君を洗脳できる者が居るとは思わない…いや、アインズ様は常々警戒を怠るなと仰っていた。であればその可能性に思い至れなかったのは問題だ」

「で、でもそれはさぁ!」

 

「その後も問題だ。アインズ様は我々に任せる。ナザリックの利益となる事を考えよと仰られていた。ナザリックの利益を考えれば表舞台に出る事は必須だった」

「それは計画していたわ!」

 

「勿論だアルベド。だが…結果を見てくれたまえ。カルネ村を迅速に支配され、現地でのポーションの研究を行うと共に統治の実験。そして…アインズ様自ら冒険者を率いて事を起こしてくださった。我々の動きは遅すぎる。そう暗に告げてくださったのだね…本来我々がすべき事を…現状全てをアインズ様自らが行っているのだよ…」

 

 理解の色と共に皆の顔色が悪くなっていく。

 敬愛すべき主人に任された仕事。

 それを結果的に全てアインズ自らが行っている現状を認識したが故である。

 

「ま、待ってくんなまし!わ、わたし達だって──ス、スクロールの原料確保に成功したんでありんしょう!?」

「…そうだねシャルティア…だが……」

「…結果的に…失っているのよ。配置した多くの僕共々…場所に関しても……アインズ様は本当に安全なのかと幾度となく警告されていたわ」

 

 口をぱくつかせ、他に何か…何か我等に功績はと頭を回転させているがシャルティアには浮かばない。

 

「そして極め付けは件の二人組だ。考えてみればアインズ様は二人の事は…長く注視されていた。御自ら接触されて…だ」

「え、えっと。も、もしかして気付いておられた…のでしょうか??」

 

「恐らく…そうだろう。それでなければアインズ様があれ程の時間を割いて接触し続けた理由がない。アインズ様が常々警戒されている敵の存在、それを考えれば…強者との実戦の経験を我等に積ませるため…と考えればあの戦闘も納得出来る。ウルベルト様の幻影を前にしたアインズ様を思い出したまえ。全く動じておられなかった。事実を知らねば難しい。更にはその後、幾つかの会話で戦意を喪失させていた。これこそ知らねば出来ぬ御業だろう」

 

「そ…それは…」

「確かにあの幻影には…面食らったでありんす…」

「アレニ驚キヲ隠スノハ…難シカッタガ……」

 

 実際の所、戦いの相手が友達である事に確信を得た。そんな限界一歩手前のアインズが、更には友の姿まで目にし、呆然としていただけであるが、守護者達がそのように解釈するわけもなく。

 

「アルベドの提案だった記憶操作(コントロール・アムネジア)。…その前の話についてはこの際置いておこう。アインズ様は…例の本、あれを目にされる前から良しとされなかった。あれほど慎重に物事を運び、情報に重きを置くアインズ様が…だ。それも確信が無ければありえない事だろう」

「…じゃ、じゃあアインズ様は…」

 

「我等はアインズ様の御前で無様な失態を重ねてきた。──これだけの失態を前に未だ残られているのは奇跡に近いだろう…正に慈愛のお心を持つアインズ様であるが故だ。奇跡に近い…という事だよ」

 

「そして……例の件だ」

「皆も…知っているわね?アインズ様は…お一人で外へと出られたわ…」

 

「戻られたアインズ様は落胆なされていた…情報に重きを置かれる…これが正にそうだ」

「わ、わっかんない!ちゃんと説明してよね!?」

 

「…戦闘跡からは様々な情報が得られる。使われたであろう魔法、マジックアイテム、戦闘能力、規模──」

 

「その痕跡を…アインズ様が自ら消されにいかれたのよ…」

「あ、あの!!ぼ、僕じゃ…ダメだったんですか?」

 

「本来であれば…指示等されるまでもなく、それに気付き即座に行動すべきだった。アインズ様の落胆は…その程度すら行えなかった我々への…失望だろう…」

 

 恐怖と焦りに皆が心底震えていく。

 我等に失望され、アインズ様すらお隠れになる。

 それだけは絶対に避けねばならない。

 

「だが──だが、まだアインズ様はチャンスを与えてくださっている。エ・ランテルや魔導国は我々に一任されたままだ。撤回はされていない!」

 

 皆が食い入るようにデミウルゴスの話に集中していく。

 最早一つのミスとて絶対に許されない。

 

「アインズ様は常々ナザリックの戦力向上にも力を注がれていた。現地のスクロールの回収、武技という技術の研究、現地戦力の確保。当然別の目的も並行されているが、これは疑いのない事実だ」

 

 皆がその話に首を縦に振り、何一つとして聞き逃すまいと集中していく。

 

「ワールド・ディザスター。ウルベルト様もお持ちになるクラス、その実力は皆も知っての通りだ。戦力としては申し分ない。そしてアインズ様は仰られた、これより皆と同じくナザリックの一員としてと」

「──まさか!!?迎え入れるだけでなく、仕える事をも許されるとでも言いたいんでありんすの!?」

 

「そうでなければあのような物言いはなさらないだろう。そしてエ・ランテルの迅速な鎮圧。あれはアインズ様の御作りになられたモモンが存在しなければ、なり得なかった」

「エ・ランテル……関係ガアルノカ?」

 

「コキュートス、彼女達にはもう一つの姿がある。八咫烏。アダマンタイト級冒険者としての姿だ」

「…それを使え…って事??」

 

「概ねその通りだ。エ・ランテル…魔導国の事は我々に一任された。パンドラズ・アクターも引き続き指示を仰げと仰った。ナザリックの一員として…つまりモモンに加え、八咫烏という人間に対する強力な力。これだけのお膳立てをアインズ様が自らして頂いた…という事になる」

 

「…概ねってのは?」

「ナザリックの一員、それもウルベルト様の関係者である以上、使うというのは語弊がある。アインズ様のご対応も見ていただろう」

 

 皆が一瞬複雑な顔をするも、首を振り考えを追い出していく。

 ここで私情を挟み、これ以上の失態は取り返しがつかない。

 そこでアウラが一つ気付く。

 

「……あ、あのさ…あいつらの冒険者って…3人チームじゃ…」

「まさか…ウルベルト様の関係者が……も、もう一人って事でありんすの!!?」

 

「情報によればもう一人は武技を使う。それを加味すれば現地で拾った者の可能性も残っているが…恐らくそれを知る事から既にアインズ様は我々をお試しくださっている。先ずは所在を割り出す必要があるが…ニグレドは今手が離せない」

「二人に対する監視…絶対に必要よ」

 

「それには私も同意する。少なくとも今は一時とて目は離せない。三人目についても二人から聞き出せれば良いが、あの様子では少し難しいだろう。聞いた話では王都方面に向かったそうだ。姿形は割れている。王都方面へ影の悪魔(シャドウ・デーモン)を最低限を残し全て派遣する。セバス達にも連絡を。いいかね、これ以上の失態は何一つ…何一つとして絶対に許されない。何としてもアインズ様に我等の有用性を示さねばならない」

 

 皆が気を引き締め、続いて語られるデミウルゴスの計画を心に刻みこんでいく。

 

 

 

 

 

 

「くちゅんっ!…誰か噂でもしてんのー?」

 

 王都の一角で小さく呟く女性。

 彼女は巻き込まれた事の大きさを未だ知らない。




ももんが:このまま皆仲良くなれたらいいなぁ!(にこやか)
守護者 :(凍り付く音)
姉妹  :(心の折れる音)

合流したのに全然ほっこりしないんですけどぉ!!?
毎回行き当たりばったりで話を考える結果がコレェ!!
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