ウルベルトの贈り物   作:読み物好き

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こきゅーとす:何カ仕事ヲクレ
デミえもん :書類整理とかどうかね?(ニコォ


歪な忠義

「困りんしたねぇ…」

「うーん…」

「ど、どうしよう?」

 

 ナザリックの個室で長くの間3人の守護者が唸り声を上げている。

 時は少し遡る。

 

 パンドラズ・アクターがモモンの姿となり、ナーベラルと共に住民感情を抑えてはいるものの、小さな問題が多発している。

 

 生き延びた者から流れた噂。強大な悪魔が炎を用い、アンデッド軍を一度滅ぼしたとの噂が問題に拍車をかけている。実際の所は王国軍も滅ぼしているのだが。

 エ・ランテルも一度悪魔の群れに襲撃を受けているが、喉元過ぎればとはよく言ったもの。都合の良い部分や都合よい解釈が噂となり、耳にした一部の人間や、徴兵により近しい身内を失った者達の間で小さくも悪魔信仰が生まれ始めている。

 

 敵となる存在。それを考慮すれば守護者やニグレドによる内部の監視が必要な現状を変えねばならない。動かせる戦力にも枷が付いた現状、これでは建国した意味がない。それ所かナザリック内部に爆弾を抱え込んでいるという状況でもある。一刻も早く、二つ同時に解消する必要がある。現状非常に重要な案件だとデミウルゴスは語った。

 

 友好関係の構築。それこそが急務。通常の僕達では何かあった際に対応出来ない。となると接触も守護者クラスである必要が出てくる。

 

 アルベド、デミウルゴスはエ・ランテルに今後の件と物理的に時間を作る事が難しい。

 コキュートスには少し荷が重いだろう。そんな中、消去法でアウラとマーレに白羽の矢が立った。非常時も考慮しシャルティアも同伴するようにとの事だった。

 これ以上の失態は重ねられない。その気持ちでデミウルゴスの語ったそれを承諾したものの、友好関係。…友好関係とは??と3名皆が頭にクエスチョンマークを浮かべている現状である。

 

「そもそも…友好関係って何でありんしょう??」

「概念みたいな事聞かないでくれる?」

「そ、それに…情報も…えっと、聞き出さなきゃダメなんだよね…?」

「例の残りの一人の件でありんすね?そうでありんしょうねぇ」

「あ、あと何でアインズ様にご無礼を働いたのかとかもね」

 

 やるべき事は何となくわかっている。だが方法がわからない。

 首を捻るもアイディアらしいアイディアも浮かばない。

 

「あー!ダメ、あたしぜんっぜん浮かばない。あんた何かないわけ??」

「あればもう行動してるでありんす」

「…マーレも何かないわけ?」

「だ、誰かに相談してみるとか…」

 

 それを耳に二人は首を捻っていく。

 実際何も浮かばない。であれば誰かに助言を貰う事は悪い事ではない。

 同時に指示が無ければ何も出来ないのも問題だという事もわかる。

 アインズ様も考えて行動せよと以前仰っていた。

 が、この場で考えていても良い結果が得られるとも思えない。

 

「──デミウルゴスに聞いてみるのが一番でありんしょうか?」

「でもさぁ…手が離せないからあたし達にって事でしょ?」

 

 そんな話をしつつも部屋を後に、歩みを進めていく。

 同僚達が忙しく働いている中、任された仕事の進め方がわかりませんとは何とも情けないが、失敗するわけにもいかない。もしかしたら仕事も少しは落ち着いているかもしれない。

 

 暫く歩き、第七階層へ足を踏み入れる。

 正に混沌としているという表現が相応しい。

 複数の悪魔達が大量の書類らしい物を手に右往左往している。

 そんな中で分厚い書類を手にした悪魔の一人が声をかけてくる。

 

「これはこれは。お待ちしておりました。ご報告、内容賜ります」

「報告ってわけじゃありんせんが…」

 

「では何か別件で…その書類はコキュートス様宛ではないぞ!パンドラズ・アクター様だ!それはデミウルゴス様宛への報告書だ!後にしろ!──失礼致しました。何か急ぎの別件でございますか?」

 

 会話の最中に他の悪魔達に指示を飛ばしつつ、何か火急の用なのかとアウラ達へと視線を向けている。

 

「…その…デミウルゴスは?」

「最奥の部屋で今後の方針を練られております。暫く外に出られておりません」

「……ぁー…後でまた来るよ」

「左様でございますか?では私はコキュートス様に届けねばなりませんので。失礼致します」

 

 早足で去っていく背を眺め、マーレが告げていく。

 

「お姉ちゃん?そ、相談するんじゃ?」

「いやちょっと…流石に…」

「思った以上に忙しそうでありんすねぇ…」

「…アルベドのとこ行ってみようか」

「え、えっと。アルベドさんも忙しいんじゃ??」

「そりゃあ勿論忙しいでありんしょうが……」

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 第七階層の最奥の部屋。

 時折上がる報告書に目を通しながらもペンが休む事無く動いていく。

 

「──不穏分子…?やはり一度、少し間引いた方がよいですかね」

 

 小さく呟き、少しの後に考えを修正していく。今や住民はアインズ様の所有物、であれば勝手な判断で数を減らすのは……減らさず有効活用するならば、素材あたりが現実的ですか。拠点の目星も付けなくては。任せる…とは仰って下さりましたが、アインズ様の所有物であれば一度確認を取った方がよいでしょうか。これもアルベドと協議する必要がありますね。

 

 何の下準備もなく成った建国。エ・ランテルの住民感情は最悪に近い。

 パンドラズ・アクターは上手く動いてくれている。流石はアインズ様が御自ら作り上げた者。モモンの存在が無ければこの迅速な掌握は難しかっただろう。

 

 だが──モモンは名声も信頼も得ているが、抑えきれているわけではない。

 モモンが──人間からすれば魔王とも言えるような強大な人類の敵。それを退けるほどの活躍を。伝説に謡われるような活躍を行っていたならば、また結果は違ったかもしれない。

 

「──そういう事でございましたか…!」

 

 頭に浮かぶ一つの計画。

 以前アインズがモモン誕生と共にデミウルゴスに下した指示の一つ。魔王の誕生。

 魔王を退ける程の英雄モモンという存在であったなら。

 モモンを作り上げたあの時!既にこの展開をお考えだったと!!イレギュラーは発生しましたが、それであれば確かに!より容易に!!更には次の一手にも!

 

 魔王を誕生させていれば。アインズ様自らがモモンとなり、名声を集め始めた時に気が付くべき事だった。最早モモンは容易には動かせない。

 ──だがまだ…まだアインズ様の計画は生きている。今は冒険者がもう一組居る。

 同時にペンの動きがピタリと止まる。

 

(…それにしても…どういうつもりだね)

 

 冒険者。二人の事を考えると共に、思い起こされるアルベドの口にした言葉。

 我ら守護者、至高なる御方に創られし者。消滅するその時まで忠義を尽くすは当然。

 どのような事態があろうが至高なる御方に仕える事こそが存在意義。

 それを──疑う等…以ての外だ。

 

 警戒している。それは理解できる。

 アインズ様の御命を狙った者を何の確証もなく受け入れるのは難しい。その考えは納得できる。状況が曖昧で且つ確証がない状況であれば、記憶操作(コントロール・アムネジア)の提案も賛同できる。

 クラスの喪失…は保留が望ましい。

 

 有象無象と違い、一度失えば再度得るのは難しい。味方に引き込む事が出来れば、戦力としては最大級の力。それを失わせる、それは先を見ない考えだ。君であれば容易に考えつくだろう。

 その後も引っかかる。何故関係者である事が判明した後──アインズ様が確実な確証を得たと告げ、受け入れると口にされた上でのあの発言。あれは排除する動き。

 

 ウルベルト様の名を持って誓わせる。それであれば納得できるという言も…理解はできる。

 前提として敵意があれば…だ。第六階層に居る際も、連れて来られた際も、明確な殺意や敵意が残っているようには感じられなかったが。…あの場で最も敵意と殺意、それを持っていたのはアルベド、君だ。

 

(──君は…そもそも何故、その考えに思い至った)

 

 我ら守護者、至高なる御方に仕えし者。それが何故あのような不敬…そのような言葉では言い表せない考えを抱いた?何故その考えに思い至った?本来出る筈のないその考えに。

 

 

 …………──まさか。

 

 

 暫く考え、浮かんだ疑惑を破棄すると共にペンを再度走らせる。

 ──今は一刻も早く魔導国の基盤を作り、アインズ様に我等の有用性を示さねば。

 同時に次の一手。本来であればお任せ頂いた以上、私自らが──。

 暫くの後にペンを止め、天井に向け小さく告げる。

 

「…ウルベルト様、そのご命令必ずや。このデミウルゴス、必ずや同僚と共に世界を。何処に居られようと必ずや見つけ出し、貴方様に。アインズ様に捧げて御覧にいれます」

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 同刻、第九階層の個室にて、軽快にペンの音が響く。

 暫くの後に、淀みなく響いていた音が止まる。

 

(あれは──失態だった)

 

 至高なる御方。その関係者。それを前に歯止めが利かなかった。

 あの場で…アインズ様に命じて頂いた。それが背を押した。

 言葉を…発してしまった。

 

 自身の創造主であるタブラ・スマラグディナ。他の至高の面々を思い浮かべる度に浮かぶ感情。それは怒り、哀しみ、そして──虚しさ。

 その関係者である者がアインズを狙ったと確信を得た時、彼女の心を一つの感情が満たしていた。その感情は抑えがたい憎悪。

 

 この感情は何なのか。

 本来NPCにあるのは創造主達に対する絶対的な敬服。しかし彼女だけは違う。

 

(この感情こそ……アインズ様が…モモンガ様が与えて下さった…モモンガ様の──)

 

 最終日。アインズの心には確かにあったのだ。一人残された事への深い無念、失意、哀しみ、怒り、失望。その感情を抱きアルベドへと書き込んだ一行。アインズにそんな意図は微塵もなかった。安易な気持ちで行ったその行為、それは今まで玉座の間で長くモモンガを目にしてきた彼女に大きな影響を与えていた。

 

 モモンガ様が私に与えて下さった、あの日の事は忘れません。

 求めて下さると共に、そのお気持ちは今もこの私の中に。

 

 何時か、何時かきっと皆が戻ってくる。

 きっと誰かが。この広場へと。だから、だから俺が維持しなくては。

 皆で作り上げたナザリックを──。

 

 ──幻想だったんだ。

 ──あの日々は──皆は二度と戻って来ない。

 せめてお前だけでも俺を──俺を愛してくれ。

 

 勿論です。モモンガ様。

 

 長くお力となる事の出来なかった。眺める事しか出来なかった無力な私を求めて下さりました。同時に私に…モモンガ様の、その想いさえも与えて下さりました。私だけが、私だけがアインズ様を理解できます。

 

『──ウルベルトさんが裏切るなど絶対に、絶対にありえんのだ』

 

 そう告げる主人の姿が思い浮かぶ。

 モモンガ様…お気づきのはずです。目を…背けておられるのですね。既に我等は捨てられたのです。裏切られたのです。不要と切り捨てられたのです。あれ程嘆き悲しまれていたではありませんか。もう、もう良いのです。もう苦しまれる必要はないのです。

 

 この地──この世界に転移した。

 そう告げられた日からモモンガ様は…解放されたはずだった。

 戻ってくる事もない裏切者達から。希望と言う名の亡霊に苦しむ日々から。

 

 でもアインズ・ウール・ゴウン──その名を名乗られた。

 

 他の至高の面々が何時か戻られる。それを…望まれているのですね。

 …未だ…未だ縋りついておられるのですね。

 まだ…苦しめられているのですね。

 

 だからこそ許せない。許せるものか。

 モモンガ様に。あの苦しみの日々から解放されたあの御方に。また同じ苦しみの日々を。また偽りの希望に縋る日々を与えようというの?それとも本当に今更戻ってくるというの?モモンガ様が苦心し、守り抜いたこの地に、モモンガ様を捨てた連中が。

 

「──殺さなければ」

 

 口にすると共に、バキリとペンが折れる。

 

「……こんな事ではダメね」

 

 この考えが洩れれば、同僚達は躊躇なく殺しにかかってくるだろう。

 けれど警戒すべき者は多くない。

 危険な者は二人。デミウルゴス。そしてパンドラズ・アクター。

 

 唯一モモンガ様が手掛けた者。二重の影(ドッペルゲンガー)

 真実の無い影。アクター、演じる者。

 その考え、口にする言葉。何一つ信用出来ない。

 同時に最も信頼できる。私以外にモモンガ様の心を知る唯一の者。

 

 そしてデミウルゴス。あの男の前で理性が感情に負けたのは致命的だった。

 あの聡い男の事だ。私の考えに…感づいた可能性はある。

 

 回収された二人にも…迎え入れる。そう宣言された以上、今は手を出せない。

 せめて宣言させる事に成功していれば。至高なる者の名を持っての宣言を……自ら破らせれば…殺す理由は幾らでも作り上げる事が出来たのに。

 

 何て慈悲深くもお優しい御方。

 御身からすれば虫ケラ同然の者達を。

 御身を苦しめた裏切者が作り出した。ただそれだけで。

 …縋られているのですね…亡霊達の影に。

 

 だからこそ、確実に殺さなければ。

 モモンガ様を苦しめる亡霊は私が断ち切って差し上げなければ。

 そうなれば…モモンガ様はきっと悲しまれるのでしょう。

 

 シャルティアを──アンデッドをも洗脳するワールドアイテム。

 完全に、何一つ苦しむ事がないように。過去から、未来に至るまで、全ての苦悩からモモンガ様を解放して差し上げる事が出来る。それは私だけ。私の魂に、私の存在意義に、愛する事を許され、お命じ下さった私にしか出来ない。

 この世界には──モモンガ様と…求められた私。それだけでいい。

 

「だからこそ、焦ってはダメよ」

 

 自分に言い聞かせ、折れたペンへと視線を移す。

 確実に、そして悟られずに消す。残り香も、亡霊も。

 片割れはワールド・ディザスター。受け入れるとの宣言もされている。

 それにウルベルト。奴もワールド・ディザスター。

 見つけ出すにしても、消すにしても……私だけの手駒、戦力が必要。

 

「捜索部隊の設立………悪くない案かしら……」

 

 二人に関しては、暴れてくれれば話は早い。でも残念な事にその傾向はない。

 消せないのであれば上手く操る。何か──消すに値する理由を作り出させる。

 その為にも──あの男に気付かれた可能性を、疑惑を払拭する必要がある。守護者統括として、今まで以上に完璧な姿を。全てはモモンガ様の為に。

 

「──それにしても…」

 

 あの状況で何故モモンガ様自らが戦闘跡を消されに。これに関してはデミウルゴスの言う通り、モモンガ様自ら動かれるまで、そのお心に気付けなかった我等の失態。

 

 ただ、そのお考えがわからない。隠す必要がある…。誰に?敵に…敵に…?であればマーレを派遣する。それで事足りた。我等に失望され、任せる事が出来なかった…仮に…仮にそうだとしても…護衛の一人もなく、お一人で向かわれる。それこそ敵に襲われる可能性、危険がある。ではそれを承知で……?

 

 リスクを承知で…モモンガ様が自ら行動される状況…何故?戦闘跡………。

 シャルティアの一件で作られた戦闘跡は放置された。人間への理由付けであれば、超位魔法の跡は修復し、敵に対し偽りの情報を掴ませる為に新たに作り上げられたはず。以前は放置され、今回は早急に。それも御自ら消す必要があった。何故?

 

 前回と今回の違い……関係者?大規模な儀式魔法?大規模な戦闘?大災厄(グランドカタストロフ)

 戦闘跡を消す必要………跡…?

 

 

 ……あぁ…そう…そうだったのですね。

 

 

 経緯はわからない。けれど私の仮説が正しければ…。

 このカード。場を見極めて切れば……。

 考えを打ち切るように、扉が開き声がかかる。

 

「アルベド?いる?ノックしたんだけ…ど………」

「──アウラ?それに二人も。どうかしたの?」

 

 姿を見せた同僚達に、紙の山の裏から微笑みを向ける。

 普段通りの微笑みを。

 

「…それ…その紙の山…何?」

「魔導国について、今後の方針の草案よ。ほんの一部だけど。後で全てデミウルゴスと協議してアインズ様に提出するの。コキュートスの所に定期的に運んで貰っているのだけれど、貯まってしまったわね」

 

「あー……そ…そうなんだ……な、何でもない…何かごめん」

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 顔を引き攣らせながら三人は廊下を歩く。

 

「…どちらも想像以上に忙しいでありんすねぇ…」

「そうね…あの忙しさの中に相談はちょっと…」

「コキュートスはあの量の書類を整理してるんでありんしょう…?」

「あ、あの…えっと…どうしよう…」

 

 何も思い浮かばないが、あの忙しさの二人の時間を奪うのは…。

 だが失敗も出来ない。どうする事が正解なのか。

 無言で当てもなく廊下を歩き続けていく。

 やはりどちらかに相談するしかないか。

 ではどちらに。歩は徐々に重くなる。

 そんな折、人影が目に入る。

 

「ペストーニャ?何してんの?」

「これはアウラ様。それにシャルティア様にマーレ様。実は少し…問題が起こっておりまして。あ、わん」

「何かあったんでありんすの?」

 

「ご存じの通り、メイド達は第九階層に立ち入る事を禁じられていますわん」

「あの?それがその…問題…なんですか?」

 

「その通りです。第九階層の清掃、それが皆の仕事です。つまり現状…仕事がないのです。暫くの間の辛抱だと言い聞かせ、待機させていますが不満は貯まる一方です。何か仕事の一つでもあればいいのですが………わん」

 

 仕事がない。それは己の存在意義がないのと同義。

 ナザリックに、アインズ様に貢献する事ができない。

 その恐ろしさは重々理解している。

 

「それはキツイでありんすねぇ…」

 

 暫くの後にアウラが告げる。

 

「あ、じゃあさ、ちょっと手伝ってくれない?」

「はい?何をでしょうか?」

 

「コキュートスが今…多分困ってるんだよね」

「コキュートス様が?どういう事でしょうか?」

 

 先に目にした書類の山。

 アレの整理。いくら人手があっても足りないだろうと提案していく。

 

「デミウルゴスとアルベドがさ、アインズ様に提出する書類とか色々作ってるわけ。管理と各項目の振り分けとかの整理をやってるんだけどさ…人手が必要なんだよね」

「あの量の整理は…想像したくもないでありんすねぇ…」

 

「書類周りの管理ですか。それであればお力になれるかもしれません。皆も喜びますわん」

「じゃ、お願いね。コキュートスには伝えとくからさ」

「はい。ありがとうございます。あ、わん」

 

「あ、そうだ。ペストーニャ、こっちもちょっと相談がさ」

「はい?」

 

 抱える悩みを説明していく。

 暫く考え、ペストーニャが考えを告げていく。

 

「まずは円滑なコミュニケーションが必要かと思いますわん」

「そりゃ…そうかもしれないけど…何話せばいいわけ?」

 

「共通の話題や、お互いを知るのは如何でしょうか」

「知る?何でありんす?」

 

「あのお二人はナザリックの事をご存じない様子でした」

「あの?どういう事でしょうか?」

 

「現状は私達も彼女達も恐らく何も知りません。それを埋めてみるという事ですわん」

「?ナザリックの偉大さに素晴らしさ、それを教えてやれという事でありんすか?」

 

「それも大切ですが、それは一方的なコミュニケーションですわん」

「あの??よく…わからないです」

 

「彼女達は外から来たのです。価値観も違うかもしれませんし、考えも違うかもしれません。相手が何を好んで何を嫌うのか、私達が何を好んで何に怒りを感じるのか。互いを知るのはコミュニケーションを取る上で大切です。あ、わん」

 

 それを耳に三人は首を捻っていく。

 

「そして、聞き出す…という事は今はお忘れください。わん」

「え?あの??どういう事でしょうか??」

「情報の収集と友好関係とは対極の位置にあると思います。将来的に信頼を得て、そこで初めて聞ける話だと考えます」

「あの…でも、情報収集は大事だってその…デミウルゴスさんも」

 

「マーレ様、遠回りも時には必要だと思います。アインズ様へのご無礼の件は特に注意が必要かと思います。アインズ様も詳しく内容には触れられませんでした。治療した際の事を覚えておられますか?アインズ様が頭をお下げになられていた以上、デリケートな部分だと思います。触れられない事を推奨致しますわん」

「うーん……」

 

「それに、友好とは打算的に得られるものではございません」

「ふーん…ありがと」

「少しでもお役に立てたなら喜ばしい事です。あ、わん」

 

 その後も少し会話を交わし、ペストーニャと別れ歩みを進める。

 暫くの後にアウラがポツリと呟く。

 

「ん-。"友好関係の構築"とか言われたから、難しく考えすぎてたのかも」

 

 クエスチョンマークを浮かべながらも二人はアウラについていく。

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 扉を軽くノックする音が響く。

 

「返事がないでありんすねぇ。中には居るんでありんしょう?」

「はい。シャルティア様」

 

 魔将が深く頭を下げ告げる。

 

「本当にこんな事でいいんでありんしょうか?」

「何度も話したじゃん。それよりマーレ、扉開けて」

「えぇ!?ぼ、僕!?」

「見ての通り、わらわ達は手が塞がっているでありんしょう?」

 

 渋々とドアノブに手をかけるより、ほんの少し早く扉が開く。

 中から顔を出した妹とされる者。それが首を傾げ疑問を口にする。

 

「…誰?」

「ぁー………とりあえず入っていい?」

「料理長特注の紅茶と茶菓子もありんすぇ」

「えっと…あります」

 

 室内と室外に交互に視線を移している。

 暫くの後に室内からどうぞと告げられ入室していく。

 

「椅子が足りないでありんすねぇ。持ってきなんし」

 

 魔将により椅子が3つ運び込まれていく。

 机に持参した紅茶と茶菓子を用意しそれを囲む。

 紅茶の良い香りと共に沈黙が部屋に広がっていく。

 

 助言を元に三人で話し合った結果、気楽に話す。それがいいだろうと結論付けた。甘いお菓子でも持ってお茶会でも開くのがいいだろうと。

 とは言え、想像と現実は違う。何かきっかけがなければ会話自体が難しい。選択を間違ったかもしれない。そんな考えが三人の頭に浮かぶ。

 そんな中で動きが起こる。

 

「──ンンっ!!?」

 

 小さく悲鳴のような声が上がる。

 口を押さえるベロスの姿がそこにある。

 

「な、何??す…好きじゃなかった?」

 

 あぁ…ダメかも。失敗したかも。

 失敗は二度と許されない。デミウルゴスの発したその言葉を頭に、顔が徐々に青ざめていく。

 

「お……美味しい…!!」

 

 ──紛らわしい!!口に出かかった言葉を飲み込んでいく。

 そんなアウラの心境など露知らず、姉へと菓子を勧めている。

 

「そ、そうでありんしょう、料理長のお手製でありんすからねぇ」

「う、うん、料理長の作る料理は美味しいよね」

 

 とは言え会話が続かない。

 

「……やっぱり、ちょっとハードなお仕事すぎんせん?」

 

 シャルティアがアウラに耳打ちしていく。

 仕事にハードも何もないでしょ。そう思いつつも心で同意する。

 それこそ先日戦った相手と仲良くなってこいとは。

 お菓子を頬張る妹に小さく呆れ、姉が口を開く。

 

「──それで?消してこいとでも?」

「それだったらもっと気楽だったんでありん──痛った!!?」

「あんたさぁ…」

 

 机の下でアウラの蹴りが入っている。

 

「え、えっと…な、仲良くなってこいって」

「あんたも……さぁ…はぁ…」

 

 何のために色々と意見を聞いたのか。

 諦めの境地に立ったアウラは溜め息と共に口を開く。

 

「はぁ……ぁー…えーと…ぁー、ウルベルト様のお子様って本当なわけ?」

「…本当だよ」

 

「つまりえーと?お世継ぎ?ウルベルト様に奥様が居られるって事?」

「奥様?母上??…聞いた事ないけど。姉上は何か知ってる?」

 

「──そうであれと望まれたのです」

 

 その口ぶりに何となく理解していく。

 娘で在れ。そう願われ創造されたのであろうと。

 

「それが本当だとしたら、幸せ者でありんすねぇ…はぁ…ペロロンチーノ様…わらわもそう在れと望んでくださるでありんしょうか」

「ぶくぶく茶釜様もそう望んでくれる…かなぁ」

 

 言葉を耳にオートスはぼんやりと考える。

 幸せか。幸せ者か、その通りかもしれない。

 そのように望んでくださった。何と畏れ多い事か。

 

「じゃあさ、アインズ様も仰っていたけどデミウルゴスとは兄妹になるの?」

 

 それを耳にし、視線を交わした姉妹は小さく首を傾げる。

 

「知らないって事?でもデミウルゴスもそんな感じ…だったよね」

「その辺の事情は気になりんすぇ。それにウルベルト様…今一度お目にかかりたいでありんすねぇ」

「ぼ、僕もお会いしたいです!」

 

「父上に…あった事あるの?」

「むかーしお目にかかった事はありんすぇ。至高なる御方々の集い……素晴らしい光景でありんしたねぇ。勿論今でもその神々しい光景にその御姿は明確に覚えていんす」

「……ウルベルト様に…お目にかかった…?」

 

 ぽつりぽつりと会話が続き始めていく。

 唯一にして最大の彼女達の共通点。

 至高なる御方。その存在は違えた道をほんの僅かに埋めていく。




べろす   :ぺろろんちーのって?
あうら   :とりあえず呼び捨てやめない?(我慢
しゃるてぃあ:様をつけてくんなまし?(ブチギレスマイル
まーれ   :おかし美味しい
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