ウルベルトの贈り物   作:読み物好き

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前回のあらすじ。
カジット君、冒険者に計画が漏れた可能性を考慮し悲しみの5年を胸に家出。
かじっと:クソァ!!
くれまん:てへぺろ


廻り出す歯車

「面を上げよ」

 

 ナザリック大墳墓、玉座の間に声が響き渡る。

 アインズのその言葉に守護者達が己が主人へ視線を向ける。

 

「まずは皆ご苦労だった。状況と情報のすり合わせを行いたい。アルベド、デミウルゴス」

 アインズがそう告げるとアルベドが状況を説明していく。

 

「──以上です。大きな出来事となるのはエ・ランテルでの悪魔事件でしょうか。…こちらのせいでセバス達の王都出発が少し遅れております」

 

 無数の悪魔が出現、街全体を強襲。人的被害はほぼ発生が認められず。物的被害は中規模。(カッパー)冒険者2名と1人により殲滅されたとの事。後に3人チームとして再結成。組合はミスリル級への認定…か。

 報告を聞きアインズが口を開く。

 

「悪魔の種類は特定できているのか?」

「申し訳ございません、種類までは…低レベルの悪魔である事は確認済みです」

「そうか…被害を見るにこの世界ではそこそこか?それを倒したとされる冒険者の情報はどうだ?」

「第五位階魔法を使用したとされております」

 

 アインズは顎に手を当て考える。第五位階…アインズからすれば非常に弱い。

 が、この世界の基準──漆黒の剣や村での話を聞けば抜きん出ている。

 

「如何致しますか?捕獲して調査致しますか?」

「いや…不要だ。姿形は分かっているか?」

「はい、こちらに」

 

 そう告げ鏡のようなマジックアイテムに3名の姿が映し出される。

 

(あの時の三人か…(カッパー)から昇級…あの二人…やっぱりどこかで…)

 

「あ」

 

 アインズの口から声が出る。

 …思い出したぞ!確か宿屋でも会った冒険者か。…第五位階の魔法詠唱者(マジックキャスター)だったのか。やっぱり会っていたか…気になっていたもやもやが晴れた。

 

「如何なさいました?やはり捕獲を?」

 

 気付くと思わず出た言葉に守護者が反応している。忘れていたのを思い出したらつい出たんです。…とも言える雰囲気でもなく、何かないかと考える。

 

「あ…あー…うむ……第五位階…使いなら…死の騎士(デス・ナイト)より強いかと思ってな」

 

 よし!誤魔化せた!しかし…タイミングが気になる。この世界の情報を知るべく冒険者モモンを作った。宿屋で会った彼女達は確か…(カッパー)。第五位階ならもっと上の階級になっていてもいいんじゃないのか?同時期に登録されたのか…?或いは力を隠していた?まさか…俺と同じプレイヤー…か?

 

「他に情報はないか?」

「個体名はオートス、ベロス、クレマンティーヌとの事です。後は…山羊頭の悪魔を探しているとか。遠くから来た…との事です」

 

 山羊頭の悪魔…?山程居るぞ…うーん、名前にも覚えはない。遠くから来た?そのせいで(カッパー)?考えすぎか?わからん。守護者達に調べ…いや、それは危険だ。もし敵対するプレイヤーだった場合を考慮すると……友好的なプレイヤーか、敵対的なプレイヤーか…俺自身が一度接触してみるべきだ。

 

「…わかった。では次だ、モモンで得た情報を共有しよう。冒険者は階級が上がっていくと名声と名誉が──」

 

 冒険者として知った物事を改めて守護者達へと伝えていく。階級が上がる事による大きな名声。基本的に冒険者とは名ばかりのモンスター退治屋である事や、依頼中に耳にした話、生まれながらの異能(タレント)という存在、武技という未知の特殊能力(スキル)らしき物。ハムスケを始め現地のレベルに関するアインズの見解等を共有していく。

 

「──以上だ。私はモモンとして一度三人に接触を図る。細かな事はアルベド、デミウルゴスに任せる。今後も皆の忠義に期待する」

 

 情報共有が終わりアインズが玉座の間を離れていく。暫くの間守護者達が深く頭を下げる。

 そんな中アルベドが口を開く。

 

「デミウルゴス?これは組み込まない手はないわね?それにあのご様子…三人にも注意を払わなくてはならないわ」

 

「勿論だよアルベド!悪魔の襲撃!何と素晴らしいタイミングだろうね。このタイミングで任せて頂ける…つまり、アインズ様は我々の力をお試しになられているのだろう!」

 

「クフフ…そうね。ご期待に答えなくてはならないわ」

「あの、えっと?その、何の話ですか?」

 

 マーレが問いを投げる。

 

「そうね、先に三人の件を話しましょう」

「え、えっと…さ、三人の件…ですか?」

 

「先ほどアインズ様が仰っていたでしょう?名声と。次に死の騎士(デス・ナイト)より強い。そうも仰っていたわ」

「あの三人がアインズ様の御創りになられた死の騎士(デス・ナイト)より強い…?うーん、そうなのかなぁ…」

「…ソノ辺ノ者ニ比ベレバ弱クワナイ…ノカモシレヌ。鏡ゴシデハ…。ダガ、アインズ様ノ至高ナルアンデッド、死の騎士(デス・ナイト)ヲ上回ル等…」

 

 アウラとカチカチと顎を鳴らすコキュートスに疑問の色が見える。

 

「デミウルゴス?貴方はどう考えてるの?」

「そうだね、実験体。後はアインズ様の影であるモモンの名声…といった所だろう」

「その通りよ。まずは死の騎士(デス・ナイト)より強い。これは死の騎士(デス・ナイト)より強いアンデッド生成の素体なり得るという事よ。上位アンデッドの生成実験に丁度良いという判断でしょう」

 

 成程!と納得の声が上がる。

 

「なら殺して回収が一番?」

「待ちなさいアウラ、次に注目すべきお言葉はモモンよ」

「モモン…?」

 

 何故モモン?と皆がアルベドに目を向ける。

 

「その後のお言葉を思い出して頂戴。階級、名声、そしてモモン。これが何を示すのか…」

「な、何をって、あの、えっと?」

「モモンはアインズ様の影の姿。そして名声。つまりアインズ様はあの三人に重大な利用価値と可能性を見出したと見るべきよ。その下準備も兼ねて接触されるかしら?」

 

「アルベドさー、もうちょっと分かりやすく言えないわけ?」

 

「下等生物の中で第五位階魔法とはかなり上位…選ばれた者に入るらしいわ。あの三人を利用してモモンの名声の底上げといった所かしら。育ち切った所で殺すの。有名な冒険者が倒せなかった難敵をモモンとしてアインズ様が倒す。これで死体の回収もできて尚且つモモンの名声は大いに高まるというお考えよ」

 

 守護者達から納得の声が上がる。

 そんな光景を目にデミウルゴスは記憶を辿る。

 最近昔を思い出す事がある。古い記憶から最近の記憶まで。

 ──ウルベルト様は確かに居られた。何かを確かに…私に申し付けられた。一体何を…。

 何故あの時私は残って頂けるよう嘆願できなかったのか。

 砕けたパズルのピースを拾い集めるように、暗闇の中で記憶のピースを探し集めていく。

 …同僚。そうだ。私は同僚と何かを…。…同僚…つまりは守護者達?

 考えを打ち切るように声がかかる。

 

「デミウルゴス?今回の件、どう組み込むのが最適かしら?」

「──ではどうだろう。エ・ランテルで起こった悪魔の襲撃、これを利用し財を得るというのは?例の計画の宣伝効果も期待できる。お任せ頂いたからにはナザリックに利益を運ばねば」

 

 

 

 ・

 

 

 

「どうなっているのだ…」

 

 神殿の奥深くに声が響き渡る。

 集まる複数の人影は共通して困惑を浮かべている。

 

「報告書を見るに……」

 

 深い溜息が場へと流れていく。

 同じように何度か溜息が続き、レイモンが口を開く。

 

「ではもう一度簡潔に説明を。リ・エスティーゼ王国領のエ・ランテルにて悪魔が大量に発生。それを冒険者が撃破。ここまではよろしいですか?」

 

 皆が深く首を縦に振る。

 火の神官長ベレニス・ナグア・サンテイニが告げる。

 

「我々とて文字が読めないわけではない。疾風走破が冒険者。これはどういう事なのだ」

 

 今回の緊急会議で大きな問題となっていたのはそれだった。裏切者の疾風走破の所在が判明という風花聖典からの報告。それは良し。が、同時に大きな問題を呼んでいる。これには元漆黒聖典のレイモンも困惑を隠せずにいる。

 

「…見ての通りです。発生した悪魔を撃破したミスリル級冒険者…正確には元(カッパー)冒険者チームの一員として確認されました。現在はミスリル級となっているようです」

「叡者の額冠は…巫女姫の神器はどうしたと…?流石にこれは…」

 

 報告書に推測の記載はされている。しかし流石に信用できない。嘘で在れ。いや、嘘でしかない。そうだ、誤報。そう…そんなわけあるか。そんな気持ちが口を出た。

 レイモンからそれを裏切るように言葉が発される。

 

「…ある日から…羽振りが異常に良くなったとされています。美しいマジックアイテムが王都に流れたとの噂も……売った…と考えるのが…自然かと思われますが」

「そんな…馬鹿な事が…」

 

 崩れ落ちるように皆が口々にそう告げる。

 

「売った…として…何処に売ったのかは目星がついているのか?」

「あれはその辺の商人が買い取れる物ではありません。疾風走破とてそれは理解している…でしょう…。噂の真偽によりますが、恐らくは充分な資本がある組織。八本指ではないかと」

 

 皆の顔に落胆と怒りの色が浮かび上がる。またか。また王国…八本指か。王国を堕落させ、その上に巫女姫の神器まで…いや、それは疾風走破のせいか。

 ベレニスが口を開く。

 

「…疾風走破の所在は掴めたが如何する?」

「──殺すしかあるまい?国を裏切り、叡者の額冠を奪い、あろう事か金と引き換えるなど」

「火滅聖典を送り出し秘密裏に消すのがよかろう」

 

 レイモンがそれに対して意見を述べる。

 

「それは賛成しかねます。疾風走破の所属する冒険者チームは第五位階魔法を使用する魔法詠唱者(マジックキャスター)が居るとの事。疾風走破の力はご存じのはず、それに加え第五位階魔法の使い手。更に申せば多くの悪魔を撃破した、つまり戦闘経験は充分だと認識しています」

 

「だが野放しにしておく事はできぬ」

「そのチームを法国へは引き抜けぬのか?第五位階の逸材。陽光聖典無き今、野放しにするは惜しい」

 

「では誰が引き抜きを行うのだ?漆黒聖典か?奴らはもう出たか?」

「先の悪魔事件の報告の確認にて…少し出発が遅れましたが、破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)討伐の為に現在出払っております。番外席次を始め数名は待機しておりますが」

 

「あれを動かすのは…それに例の亜人はまだ見つからんのか?それにニグンはどうした。まだ戻らぬのか…」

 

 会議は踊る、されど進まず。

 どうするべきか、何をするのが正解か。そんな話が無限と続く。

 そして長い話の末に結論が出る。

 

「やはり…殺さねばならぬだろう。妖精(エルフ)との戦局が大きくなる前に脅威は確実に減らすのだ。交渉に長けた者を選抜せよ、機会を見て番外席次を出す。目標は王国、疾風走破と接触し抹殺、可能であれば残りの二人は引き抜く事とする」

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

「悪魔の討伐…ですか?」

 

 アインザックに冒険者組合に呼び出され歩む三人の姿がある。依頼主はエリアス・ブラント・デイル・レエブン。蝙蝠と称される知者だと聞く。多額の報酬と、領土内に過去出現した悪魔に関する情報の開示を条件に提示された。他の冒険者チームとの協力依頼と聞いているのが引っかかるが、彼女達としては協力依頼は避けたくも権力者との接触や情報は逃せない。

 

「よく来てくれた。茶は如何かな?都市長からの差し入れの物がある」

「お気持ちだけ頂きます」

「ありがとう!」

「それより甘い物がいいなー、ベロス様も喜ぶしさー」

 

 奔放な二名にオートスが眉間に皺を寄せている。

 

「では話の前に…本来ならばオリハルコン…私個人としてはアダマンタイトを名乗ってほしいのだが…ミスリル止まりとなった事を詫びさせてくれ」

 

 事件の後に都市長や魔術師組合長と話し合った結果、多くの悪魔を屠った第五位階の使い手を見す見す手放す事は難しい。是が非でもエ・ランテルに居ついて貰わねばという結論に至った。特に彼女達は他所からの旅人、出て行かれても困る。

 それであれば出て行き難いように…と階級を引き上げたが、一気に現エ・ランテルの最高位であるミスリルを超えるとなると別の問題が起こってくる。古参が快く思わないのだ。

 100歩譲って男であれば…街の者に子を残して貰うという方法もあるが…女性にはそれこそ難しい。見た所…三人とも男っ気はない。

 そんな視線に気が付いたのか、オートスが不機嫌そうに口を開く。

 

「何か?」

 

 女は勘が鋭いとはよく言ったものだとアインザックが苦笑いしながら本題を告げる。

 

「最近妙な事件が噂になっているんだが…悪魔による同時多発失踪を聞いた事は?」

「姉上?また──」

「違います」

 

 一瞬不思議そうな顔をしたアインザックが話を続ける。最近エ・レエブル領の村で悪魔による被害が出ている。その調査に当たってほしいとの事だった。問題となるのはその内容だ。

 悪魔が複数の場所に突如現れ、住民や資材、財産を奪い去っていく事件との事だ。王都冒険者である蒼の薔薇や朱の雫にも要請が出ているが、別の任務で中々大きく動けないとの事。エ・ランテルでの事件解決を耳にした領主、レエブン候から直々にこの件の調査及び討伐を願いたいとの話であった。

 詳しく話を聞きオートスは確信する。好機。多額の報酬…はどうでもいい。知りうる領土内での過去に渡る悪魔の情報の開示…我々が悪魔を探す事を把握している。頭の回る権力者への接触は逃せない。目立った事が日の目を見ましたか。

 

「わかりました。お受けします」 

 

 そう告げるとアインザックが安堵の息を吐き続ける。

 

「先に伝えた通り、今回は協力依頼という形になっている」

 

 入ってくれと告げると二人の影が部屋へと入ってくる。首にかけるは白金(プラチナ)のプレート。黒い全身鎧の男性に黒い髪の女性。アインズとナーベラルが入室する。

 

「紹介しよう。モモン君とナーベ嬢だ。君達と同じく、最近力を急速に示している者達だ。今回の依頼は多くの悪魔が複数の場所に現れると聞いている。故に2つのチームで当たってほしい。彼等は森の賢王と呼ばれる強大な魔物を使役している。実力は保障しよう」

 

「モモンといいます。こちらはナーベ。よろしくお願いします」

 

 そう告げ軽く頭を下げる鎧に出そうになる溜息を引っ込める。この女はあの時の…それにこの鎧、以前は(カッパー)だったと記憶しているが…白金(プラチナ)?それに分かっていたが協力とは面倒だ。かと言ってこのチャンス、逃す手はない。ならばせめて余計な揉め事は起こしたくない。そんな気持ちを裏切るように声が上がる。

 

「協力とかいらないんじゃないー?オートス様が居れば何でも楽勝だってー」

下等生物(フナムシ)風情が」

「…は?」

 

 二人の女性が一触即発の空気を醸し出している。

 

「やめなさいクレマンティーヌ。失礼しました。私はオートス、こちらは妹のべロス、彼女はクレマンティーヌです。ご無礼お詫びします。よろしくお願いします」

 

 そう告げ軽く頭を下げるオートスを前にアインズは考える。

 森の賢王を使役するとの噂を聞きつけたレエブン候という貴族から、高額な報酬に喜んで依頼を受けたまではよかった。蓋を開ければ接触してみるかと思った矢先の出会いに少し困惑したアインズだが、プレイヤーの可能性を警戒しその姿形をじっくりと観察する。

 観察した結果、オートスに対しアインズの中で一つの結論が出る。あ、この人苦労人だ。何となく同族意識が芽生える。わかる、わかるぞ…その気持ち。そんな一方的な思い。

 

「ナーベやめろ。こちらこそ失礼しました」

 

 そう告げアインズは頭を下げる。何だか会社員を思い出すなぁ…なんて事を考えながら。そしてベロスと紹介された女性から一つの視線を感じる。

 

「あの獣の飼い主のおじさん?」

「モモンさ──んに向っておじさん!?下等生物(ナメクジ)が…!」

「ナメクジ!?…ベロス様に向って言ったわけ?殺すぞ」

 

 その光景を目にしてオートスとアインズは似た考えが頭に浮かぶ。この依頼…受けたくない。

 面倒事になる未来しか見えない。が、オートスには権力者への接触と情報収集が、アインズにはプレイヤーかどうかの確認と多額の報酬が、断るという選択肢を選ばせる事はなかった。その思いがお互いから一つの溜息を引き出す。

 

「えー……ナーベが申し訳ありません、よろしくお願いします」

「…こちらこそ、妹や連れの者がご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします」

 

 外で待つハムスケを連れ、妙な縁で繋がった二人のチームは共に進む。

 悪魔が現れた地、エ・レエブルへ。

 




ももんが :(この人苦労人だ…)
おーとす :(この鎧苦労人だ…)
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