超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown 作:シモツキ
教会の占領。こう書くとなんだか物騒だし、実際その道中で荒事になるのはほぼ間違いない訳だけど、とにかく字面が物騒過ぎる。他の施設や建物ならまだしも、教会を占領となると、一気に国を落とそうとしてる感が出てきてしまう。しかもそれに女神である私が協力だなんて、そこだけ見ると神生オデッセフィアが侵略を仕掛けたみたいになっちゃうから、ほんとに何とも言えない気持ちになる。
そんな教会への占領を何故するかといえば、それは教会に何かあるのかもしれないから。街の外に向かおうとすると出てくるモンスターは、街から出られないようにしているのかも…と予想が出来るけど、教会の方はその辺りの理由が見えてこない。少なくとも、教会の周辺でモンスターが現れたところで、街からの脱出防止に役立ったりはしない。となると、何か別の理由がある筈で、同時に「教会に近付かれたくないからモンスターで阻んでいる」と考えるのが普通。更に街の外へ出られないように、ここから脱出出来ないようにしている事と合わせて考えると、「教会に脱出の糸口があるからなんじゃ?」…という結論に辿り着く。明確な証拠がある訳じゃない、状況からの推理ではあるけど、違和感のない考えではあるし、それを聞いた私も納得をした。
はっきりとしている、脱出の為の占領計画。けどそれは、すぐ実行されるのかと言われると……そうでもない。
「うーん…ここにも無さそうか…」
街の一角、運輸業の倉庫らしい場所を見回っていた私は、ここも駄目かと駐車場を後にする。近くを同様に調べていた皆と合流し、結果を伝え合う。
「そうか、やはりなかったか…」
「この辺りは倉庫や工場も多いし、もしかしたら…と思ったけど、見立てが外れたわね…」
「うぅ、ごめんね皆…折角見つけた車両を私がお釈迦にさせちゃったばかりに……」
上手くいかないものだ、と腕を組む乙戦ちゃんとスカネクの言葉に、私は申し訳なさから謝罪で返す。
占領はすぐに行われる訳じゃない。危険の大きい計画だからこそ、しっかり準備したいというのが三人の考えで、その内の一つに車両の確保というものがある。ある程度の距離まででもいいから、襲ってくるモンスターを強引に突破し、更にその後も壁として活用出来るような車両を用意しておきたいという考えが三人にはあって、その要素を満たせる…尚且つ爆破させれば多数のモンスターを纏めて倒す事も出来る補給車両は、正にうってつけの車両だった訳だけど、その車両は私を助ける為に爆破させてしまった。私も三人の存在を知らなかったとはいえ、後少し女神化するのが早ければ教会の占領に補給車両を使えたかもしれないと思うと、申し訳なさが心の中から拭えない。
「イリゼがそれを気にする事はないわ。あそこでの行動は全て、私達の意思でやった事。第一、過ぎた事を気にしても仕方ないもの」
「東ザナちゃん…」
「それに、あの車両と引き換えに貴女が戦力として加わったと思えば、トレードとしては上々よ。…それ位の期待は、してもいいんでしょう?」
「それは、勿論。車両なんかに遅れを取る私じゃ、女神じゃないよ」
貴女の責任じゃないし、無駄な損失でもない。そう言ってくれる東ザナちゃん。彼女の言葉に感謝しつつ、私は東ザナちゃんの『期待』に肯定を示し……内心で、「やっぱりこっちが素なんだなぁ…」と呟きを漏らす。
何度か見受けられた、スカネクと乙戦ちゃんからの、東ザナちゃんへの妙な視線。その意味が暫く分からなかった私だけど…結論から言うと、それは東ザナちゃんが『柔和で穏やかなキャラ』を私へ向けて装っている事に対する、彼女の素を知っているが故の視線だった。
そして見て分かる通り、聞いて分かる通り、東ザナちゃんの素はそんな感じじゃない。スカネク程ではないにしても、どっちかっていうとクールなタイプで、少し堅い感じもある。……見るも聞くも、活字媒体じゃ無理?分からない?…それは、まぁ…うん…。
「ただ実際問題として、このまま見つからないのであれば、計画を修正する必要はあるわね」
「ふー、む…それに関してだが、車両を用いるというのはあくまでわたし達三人で占領する前提での作戦だ。であれば、イリゼも加わった今、車両を使う事に拘る必要はないのではないか?」
「確かに、前提が変わっている事は考慮すべきだったわね。…けど、イリゼが車両の代役をする訳でもないし…というより出来る訳がないし、車両に関してはあった方がいい、という事に変わりないと思うわ」
「…私が女神化して、皆を抱えて迎撃を躱しつつ教会まで突撃。その後は全力で動き回って撃破して回れば、車両の代役も……」
「待ちなさい。その女神化というのに対して、イリゼは普段なら無い違和感を覚えてるんでしょう?他に手がないならともかく、そうでもない時に不要なリスクを負うものじゃないわ」
代役は無理でしょう、というスカネクの発言に対し、本当に無理だろうかと私は考えてみる。人の姿では無理にしても、女神化すれば強行突破も踏み込んでの連続撃破による壁の代わりも出来るんじゃないかと結構真面目に考え…けどそれは、東ザナちゃんに止められる。スカネクと乙戦ちゃんも、それに頷く。
「…ほんとに違和感だけで、案外何ともなかったりするかもしれないよ…?」
「そうじゃなかった場合、貴女の力を戦力として見込んでいた私達は間違いなく危機に晒されるかもしれないけどね」
「うっ…ごめん、それはそうだね……」
「分かってくれたのならいいわ。…それに、面と向かって自分の事を友達だと言ってくれる相手には、無用な危険なんて冒してほしくないもの」
「東ザナの言う通りだな。危険のない戦いを望むのはナンセンスだが、わたしもイリゼに、必須ではない危険を冒してほしいとは思わないよ」
「教会を占領出来れば万事解決すると決まってる訳じゃない、って問題もあるわ。イリゼにとって女神化が切り札なら、それはまだ温存するべきでもあるんじゃないかしら」
ぴしゃりと尤もな論理で私に切り返した後、少しだけ東ザナちゃんは表情を緩める。うん、と乙戦ちゃんも深く頷き、スカネクも別の視点から二人に同意する。三人の言葉はどれも真っ当なもので、私は自分の考えを引っ込める。
素はクールで今みたいに少し厳しいところがある東ザナちゃんだけど、優しい性格である事は変わらない。多分本人にそう言ったら否定するだろうけど、私には分かる。スカネクもそうだし、乙戦ちゃんもそう。やっぱり私は、人との縁に恵まれている。
(うん、そうだよね。仲間の為に頑張る事は大切だけど、仮に危険になるのが自分一人だったとしても、その相手が望んでいない事をするのは違う…当たり前の事だよね)
私も皆の立場なら同じ事を言ったと思う。でも行う側になっただけで、普段なら当然の事として気付けるような物事も失念してしまう…我ながら、情けないものだね。私を仲間として受け入れてくれた三人の為にも、まだまだ私は成長しないと。
──そう。三人は私を仲間として受け入れてくれた。順序的に言えば、スカネクからの力を貸してほしいという言葉で始まった事ではあるけど、私にとってそれは重要じゃない。同じ目的を持って、協力し合う関係となった…だからこそ私は惜しみなく協力を、と思ったんだけど、それが安易な考えに繋がらないよう気を付けなくっちゃ。
「…けど、こうなると選択ミスが痛いな…MGでなくても、パンツァーがあれば割と使えただろうに……」
「それは、外で待っている味方の話?」
「うん。もしこっちに戦力を回していて、向こうで何かあったら、その場合間違いなく後悔してたし、たらればでしかないんだけどさ」
「何にせよ、ここで立ち話をしていても何か見つかる訳じゃない。もう少し代わりの車両を探しつつ、四人で動く場合の作戦を練り直すとしようか」
怪訝な顔をしたスカネクに答え、私は肩を竦める。今のアヴァラスの状況が分からない以上は、単独で動いた事が正解だったかどうかなんて判断出来ないし、最終的な結果を受けなきゃ何とも言えない。
それから私達は乙戦ちゃんの言葉に頷き、街の中を歩いて回る。車両自体は普通に見つかるけど、条件に合うものってなると…やっぱり、難しい。
(…というか、街のレベルの割には車両が少ないような……)
一度私は立ち止まり、ぐるりと一周見回す。ここにあるのは、結構栄えている街。少なくとも、神生オデッセフィアよりは技術レベルが高いと思う。その一方で人っ子一人いないのは、何とも違和感が強いというか、不気味なものだけど、それはこの際置いておくとして……気になるのは、車両の少なさ。
人がいない以上、走っている車両がないのは分かる。けど単に人がいないだけなら、もっと車庫や駐車場にあってもおかしくない筈。けど、実際は私達が求めている大型車両どころか、車両全般が全然ない。建物は立ち並んでいるのに、車両は全然ないというのは、明らかに変。
「……そうだ。今気付いたけど、条件に合う車両だったら工事現場とかにもありそうじゃない?」
「工事現場か…確かにそれは考えてなかったな」
「そうね。けど、一つ問題があるわ」
「問題?」
「工事現場なんて、虱潰しに探さなきゃ見つからないって事よ」
「あっ……」
ふと思い付いた、「こんなのどう?」という意見。でもスカネクのご尤も過ぎる返しで私の意見は即座に頓挫。とはいえまあ、これは仕方ない。民家にしろ工場にしろ商業施設にしろ、建物はある程度立地や周辺の建物、利便性なんかも考えて建てられるものだけど、工事なんて必要な時、必要な場所で行われる以上、どこにあってもおかしくないし、それ故に場所を予想する事なんて殆ど困難。もし見つけたら調べてみる価値はあるだろうけど、これ目的で探し回るのは、あんまり現実的な選択じゃなかった。
「うーん…他に大型車両がありそうな場所…大型車両ってなると、街中の販売店には置いてないだろうし…」
「あっても店内だと確保に苦労するわね。第一、中が見えない店舗も少なくないし」
「だよね…(車両が少ないのもそうだけど、建物も一体どういう事なんだろう…)」
それもあまり期待出来ない、と言った様子の東ザナちゃんの返しに、難しいなぁ…と私は肩を落とす。それと共に、おかしいのは車両の少なさだけじゃないと考える。
謎の空間に入ってしまった事や、連絡が通じない事等に気を取られていて、気付いた当初は「そういうものなのか」と軽く受け入れてしまっていたけど、中に入れない、そもそも建物としてちゃんと機能してるのかすら怪しい建造物だらけ…っていうのも、あまりにもおかし過ぎる。実質ただの置物、飾りでしかないって意味じゃ、ゲームでよくある立入を前提としていない建物の様で……そうだ。この街に見覚えがあるのって、ここが仮想世界形成装置で作り出された仮想空間に似てるからじゃない?仮想空間も運用上必要のない建物は基本張りぼてだし、建物以外も不要なものは省略されたり簡略化されたりしてるし、それに関しては街の住民についても同様。…と、なると…ここは仮想空間か、それに近い場所?
(可能性としては、なくもない…けど、それを『内側』から確認するのは困難、か……)
ここが通常の空間じゃない、現実的じゃないのは明白だけど、仮想空間なのか、それとも何らかの能力や魔法によって作られた場所なのかなんて、確かめようがない。仮想空間なら、仮想空間に入る…というか意識を飛ばす為の機器が必要だし、それを使った覚えはないから仮想空間ではないんだろう、っていうのも、「実際には機器を使っているけど、その時の記憶は仮想空間に入る際に封じ、その前後の記憶を違和感ない形で繋ぎ合わせた」…という可能性があるから、正直記憶や認識も当てにならない。何せ仮想空間は仮想なだけあって何でもありだから、「これはあり得ない」なんてそれこそあり得ない。
「…ゼ、イリゼ」
「へ?あ、呼んだ?」
「呼んだどころか、質問もしたのだが…」
「そ、そっか、ごめん…えと、何の話…?」
と、あれこれ考えていた私は周りへの意識が薄くなっていて、乙戦ちゃんに呼び掛けられている事に少しの間気付かなかった。これは恥ずかしい…けど、悪癖が出てしまわなかっただけ、まだマシかもしれない。どちらにせよ、乙戦ちゃんを無視する形になってしまった訳だから、それは申し訳ないんだけども…。
「戦い方の確認だが、イリゼが得意とするのは近距離戦…それも積極的に仕掛けていくタイプだと考えて間違いないだろうか」
「うん、そうだね。女神化すれば中距離以上の攻撃手段も増えるし、どんな相手にも積極的に仕掛ける訳じゃないけど…対モンスターに関しては、その認識で問題ないよ」
「となると、前衛はイリゼに任せたいところね。当然一番攻撃に晒され易いポジションだから、無理にとは言わないけど……」
「構わないよ。だってスカネクは…じゃないや、スカネクも東ザナちゃんも火力のある遠隔攻撃が出来るんだもんね。乙戦ちゃんには火力支援をしてもらって、二人には適宜距離を切り替えながら立ち回ってもらうのが良いと思うんだけど、どうかな」
「イリゼが良いのなら、私も構わないわ。出来るだけサポートするから安心して頂戴」
それで良いなら、と東ザナちゃんは頷く。私が前衛でスカネクと東ザナちゃんは中衛、乙戦ちゃんが後衛…特に捻りのない、至って普通の配置ではあるけど、モンスターが相手なら変に捻った策を講じるよりも、各々が動き易い、得意なポジションで戦うのが一番。
勿論、決めるのは配置だけじゃない。私は三人の戦う姿を短時間しか見ていないし、三人からした私も同様な訳だから、互いに何が出来て、どうするのが得意なのかをもっと話し、状況に応じた動き方を決めていく。そうしつつも、視線では車両を探し、頭の片隅でも乗り物がありそうな場所を考える。
多分、もっと柔軟に考えるべきなんだ。強行突破とその後の壁にするのが目的だから、あんまり脆かったり小さかったりするのは駄目だけど、突撃中は速度が出ていれば攻撃を受ける機会は少ないだろうし、吹っ飛ばされたり穿たれたりでもしない限り、多少破壊されても壁としての機能は保たれる。だから戦闘に耐えられるとか、堅牢な作りになっているだとか、そういう視点ではあまり見なくても良いのかもしれない。ただまあ現状じゃ、条件に合致する車両『は』中々見つからない…じゃなく、そもそも車両自体が中々見つからない訳だから、柔軟に考えたとしてもそう簡単には見つからな……
(……うん?…待った、
思考を重ねる中、私は先程頭の中にふっと浮かんだ単語の一つを思い出す。別に特別な意図があった訳じゃない、偶々その表現を使ったってだけの、『乗り物』という単語を。
それを思い出した事で、私の思考は一度止まる。止まり、再び動き出し…これまでとは全く違う発想が、選択肢が、思い浮かぶ。
「…あのさ、皆。一つ思い付いた事があるんだけど…聞いてもらってもいい?」
数歩先へ進み、私はくるりと振り返る。皆の前に立つ形を取り、三人へと呼び掛ける。
一体何事か。そんな風に首を傾げる三人へ向けて、私は自分のアイデアを伝える。それを聞いたスカネクと東ザナちゃんは目を丸くし…乙戦ちゃんは、顎に親指と曲げた人差し指を当てて考え始める。
「…そうだな、出来ない事はないだろう。むしろ問題は、皆がそれを受け入れられるかどうかだが……」
「問題ないわ。私がその程度で怖気付くと思う?」
「強行突破の時点で安全策には程遠いもの。そういう方向のリスク上昇なら、私も特に気にはしないわ」
「であれば、見事やり遂げてみせよう。…勿論、使える物が見つかれば、ではあるが…まあ、見つかるだろう。…多分」
最後の一言で急に自信のなくなった乙戦ちゃんに、私達は苦笑い。とはいえその言葉通り、結局のところ使える物が見つからなくちゃ始まらない。取らぬ狸の皮算用で終わってしまう。
だから私達は早速進路を変更。ビルの屋上まで駆け上がり跳んで、そこからありそうな場所を探す。ぐるりと見回し、見つけ、その施設へと急行する。そして……
「…あった」
きっとある、ある筈だ。そんな思いと共に到着した私達が発見した、私のアイデアの核となる存在。それを無事に発見、乙戦ちゃんの占領により使える状態へとした事で、私達は頷き合う。
これさえあれば成功間違いなしだ!…って訳じゃない。でも、これでまた一歩…脱出へと、近付いた。
*
長かったような、短かったような、中位のような…え、中位ってなんだって?長いと短いの間だから、中位だよ?大きい妹、小さい妹、中位の妹っていうのと同じだよ?このシリーズ読者や原作ファンの皆からすれば、どっちかっていうと大きい姉と小さい姉の方が馴染み深いだろうけど。…あれ、何の話だっけ?あ、というかまだ全然内容に入ってなかったっけ…こほん。
今思うとほんと、長いようにも短いようにも感じる時間を、準備を経て、ここまで来た。大変な事も、苦労した事も、逆に「おっ、順調じゃーん!これなら余裕余裕!余裕過ぎて時間空いちゃったね!ゲームしよーっと!」…的な感じの事もあって、毎日濃密だった。これまでだってわたしの日常は毎日濃くて刺激的だった訳だけど、それとは違う濃さが、毎日あった。
でもそれも、もうすぐ終わる。もうすぐ終わって、始まる。終わりは新たな始まり…なーんて、ね!
「ふっ…来たね、皆」
背中越しに、椅子越しに、わたしは皆に声を掛ける。ゆっくりと椅子を回転させて、皆の方に向き直る。
「いや、何呼び付けておいて遊んでるのよねぷ子」
「あ、いいなぁそれ。わたしもやりたいなぁ」
「だってほら、こんな『THE・偉い人のオフィスチェア』って感じの椅子に座ってたら、一回はやってみたくなるでしょ?」
「分かるです。実はちょっと、わたしもやってみたかったり…」
「でしょでしょ?こんぱもおっきいわたしも、後で座ってみてくれていいからねっ」
早速向けられた、あいちゃんからの遠慮ない一言。それを軽く流したわたしは、こんぱとおっきいわたしににこっと笑って一つウインク。ほんと、元から執務室のシーンなんて少ないし、そこにわたしって要素とわたし以外にも何人もいるってシチュエーションとなると、ほんとに滅多にないから、これまでやってみたくてもやる機会がなかったんだよねぇ。…え、わたしがもっと、前からちゃんとデスクワークをしていれば、これまでにも機会はあったんじゃないかって?んもう、そういうのは言いっこなしだよ。
「それで、どうしたのお姉ちゃん」
「あ、うん。皆も知っての通り、遂に明日でしょ?…そう、遂に明日大博覧会のプレオープンが始まるのだっ!」
「誰に言っているんですかそれは…(ーー;)」
立ち上がり、ばーん、と効果音が出てきそうな感じで仁王立ちしたわたしに対し、いーすんが呆れ気味に突っ込んでくる。
まあ、それはともかくとして…本当に明日は、大博覧会のプレオープン。準備が終わって、本番が始まる。本当の本番に向けた『試験』がプレオープンな訳だけど、このまま正式なオープンを迎えちゃっても良い位の自信がある。わたしは本気でそう思ってるし、皆もそう思わせてくれる位、頑張ってくれた。
「でも、ほんとに『遂に』って感じですねぇ」
「漸くここまで漕ぎ着けたっていうか、始めはまた無茶苦茶な事をって思ったけど…実現まで、もう目前まで来ちゃったわね」
「あれ、なんか二人は途中で企画倒れになりそうだって思ってた感じ?」
「え、そうなの!?二人共、酷い…!」
「いやまぁ、ねぇ?最初からやる気は感じてたし、真面目にやってるとも思ったけど、なんたってねぷ子だし」
「わたしも楽しそうだとは思っていたですけど、ねぷねぷってすぐ興味が別のものに移り易いですし…」
こんぱとあいちゃんの発言…を受けたおっきいわたしの解釈で、わたしはショックを受けたフリをする。…までは良かったけど、二人共その解釈を全然否定してくれなかったから、今度は本当にちょっとだけどショックを受ける。うぅ、あいちゃんだけならともかく、こんぱまでだなんて……。
「ネプテューヌさんは、悪い意味でこれまで多くの実績がありますからね。そういう印象を持たれるのも仕方のない事でしょう( ̄^ ̄)」
「い、いーすんまで…ネプギア!おっきいわたし!二人はわたしの味方だよね…?」
「もっちろん!自分は味方だって、某平等なだけの人外さんも言ってたからね!」
「…えっと…あはははは……」
「おおぅ、味方はおっきいわたしだけだった……」
対照的な反応をする二人に…というかネプギアに、更にちょっとダメージを受ける。…まぁ、いーすんの言う通りではあるんだけど…ね。
「まあ、過ぎた過去より今は今の事、未来の事だよ!実績の話をするなら、今回の事で大きくプラスになるでしょ?」
「そ、そうだね。これだけ大規模な事を企画して成功にまで漕ぎ着けたなら、一気に『お姉ちゃん凄い!』って雰囲気が逆転する事間違いなしだよっ!」
「ギアちゃん、それだと今現在はねぷねぷが低く評価されてるって言ってるようなものです…」
「前から思ってたけど、ネプギアってこういう時のフォローが杜撰というか、勢い任せてフォロー対象に激突かましてる節があるわよね…」
「うぅ…返す言葉がないです……」
フォローになってないフォローをされたわたし以上に落ち込むネプギアを見て、わたし達は苦笑い。ネプギアには悪いけど、ほんと今のネプギアのフォローは、こんぱとあいちゃんの言う通りで……まあでもなんか、嬉しいよね。可愛い妹のネプギアと、記憶をなくしてからの初めての友達であるこんぱとあいちゃん…まあ、厳密にはまずこんぱと出会って、ちょっと後にあいちゃんと出会ったんだけどね。このシリーズだと、そこの描写がないんだけどさ。…こほん。そんな二人とが、『わたしの』妹や友達って感じじゃなくて、わたし抜きに親しい間柄になってるっていうのが、ほんと感慨深いっていうかなんていうか…。…別に、最近そうなったんじゃなくて、前からそうなんだけど…自然だからこそ、逆に気付けてなかった事…って感じかなぁ。
「こほん。これまでの評価をこの件一つでひっくり返そうというのは、些か以上に都合の良い考え方ですが、一手程度では変わらないのだから、と言って何もしないよりは、ひっくり返してやろうと奮起する方が余程良いです。特にネプテューヌさんの場合、実績はともかく人柄は多くの国民が好意的に捉えている訳ですからね(´・∀・`)」
「そうそう。一手じゃ変わらないからって言って、何もしなかったら、もっと何も変わらないからね」
「おぉ、自然且つ良い感じのパロディを入れてくるとは…やるね、おっきいわたし!」
「…はぁ。ここでわたしの言葉を少しでも胸に留め、今回の件で満足せずに今後も…と考えて下さる事を少し期待していたのですが、やはり人も女神もそう簡単には変わりませんね…( ̄◇ ̄;)」
「あ、ごめんごめんいーすん!いーすんの言葉はばっちり響いてるから大丈夫!」
「本当ですか…?(´・ω・`)」
「ほんとほんと!…でもさ、まずは大博覧会でしょ?」
まず謝って、次に大丈夫だって言って…それからわたしは、ちょっとクールダウン。もう明日だけど、目前だけど、まだ大博覧会は終わってないどころか始まってすらいないんだもん、と皆を見回して言う。
自信はあるけど、もう成功したつもりになるのは違う。それ位はわたしも分かってるし、これからの事を考える前に、目の前の事を大事にしなきゃいけないとも思う。成功したつもりになって考えるのは、虎と狸のご機嫌ようってやつだからね。……あれ?なんか違う?これだとただの、狸大ピンチの状況でしかないよね?…うーん…三千文字位前に、正解があったような気もするけど…ま、いっか。
「ねぇねぇちっちゃいわたし、ちっちゃいわたしはここまで頑張ってきた訳だけどさ、大博覧会の最中も色々やる事あるの?」
「あるよー。開会式は勿論だけど、その後も色んなところに顔を出すつもりだからね」
「お姉ちゃん、その辺り大丈夫?ただ回るだけでも、あっちこっち行くのは大変でしょ?」
「そこはほら、当日テンションで乗り切る予定だから大丈夫!わたし、そういうの得意だし!」
「いや、そういう事じゃなくて…うーんでも、大丈夫なのかな…お姉ちゃん、これまで何度も現場を見に行ってたし…」
大変だったり疲れてたりしても、テンションやその場の雰囲気次第では、意外と何とかなっちゃうもの。そしてわたしは、そういうのに乗るのが大得意。
って訳で、少し心配そうなネプギアに向けて胸を張る。こうやって自信満々な姿を見せれば、ちょっとはネプギアも安心してくれるだろうしね。
「で、結局ねぷ子はなんで私達を呼んだのよ。まさか、実は間に合ってない作業があったから、今から手伝ってほしい…とかじゃないでしょうね?」
「!?」
『えぇ!?本当にそうだった!?』
「なーんちゃって、今のは『見抜かれた!?』的な反応をしてみただけなのさ!」
「し、心臓に悪い事をしないでほしいですねぷねぷ…」
これはボケのチャンス!何ならあいちゃんからの振り同然!…と思ってボケたら、結果微妙な雰囲気に。いや、まぁ…確かに悪い冗談だってのは分かるよ?分かるけど、ここでボケなきゃわたしじゃないし…。
「まあ今度こそちゃんと言うと……あー…」
「うん?どしたの、ちっちゃいわたし」
「…いや、その…これまでも頑張ってくれたけど、明日からも頑張ろー、えいえいおー…的なのしたくて呼んだって言ったら、流れ的に怒られそうな気がして……」
「…確かに重要な事ではないですし、『それだけの為に…?』感はありますね。先程の悪い冗談がなければ、まだまぁいいか…と思う事も出来たでしょうが…(。-_-。)」
「おおぅ、ついさっきの自分が今の自分を追い詰めるぅ…」
「ここまで完璧な身から出た錆もそうそうないわよね」
こんな事ならさっきの冗談は言わなきゃ良かった、と後悔しても時既に遅し。ただでも、駄目かも…と感じていたのはここまでで、こっから一気に雰囲気が変わる。
「でも、気持ちは分かるです。大きな事の前日って、えいえいおーってやりたくなるですよね」
「ですよね。それをやると、何だか頑張るぞって気持ちになるというか…いや、そういう時って大概、元からやる気はありますけど…」
「やって損はない事だよね。よっし、ここは一つやってやろうじゃないの!」
でも、と言ったこんぱを皮切りに、ネプギア、おっきいわたしと理解を示す言葉が続く。当然それは、わたしにとってありがたい流れで…しかもそこで、あいちゃんといーすんも「まぁ、やりたくない訳じゃないけども」って感じの事を言ってくれて…こ、これは…いける…!
「えと…じゃあ、えいえいおーしてもOK…?」
ちょっと下手に出る感じでおずおずと訊くわたし。それに真っ先に返ってきたのは、「もっちろん!」というおっきいわたしの声で、ネプギアとこんぱも頷いてくれる。最後にあいちゃんといーすんが、仕方ない…って感じに肩を竦めて…皆の視線が、わたしに集まる。
それはそうだ。えいえいおーしたいと言いつつ、わたしは座ったままなんだから。だからわたしは椅子から降りて、机を回って皆の方に。
「…なんかこう、『えー、この度は皆様のご協力のおかけで、プロジェクトをここまで進める事が出来ました』…的な入りからの方がいい?」
「お、お姉ちゃんのキャラとはかけ離れ過ぎてないかな……」
「だよねー。って訳で、こほんっ!わたしが全力を挙げて準備してきた大博覧会のプレオープンはもう目前!まずはその事に拍手!」
『お、おー』
「ここまできたのは偏にわたしの努力と才覚があってこそ!…ではあるけど、やっぱ皆が協力してくれたから、一緒に凄いものを作り上げようって思ってくれたからだと思うんだ。ネプギア達もそうだし、ここにいない皆もそう。たっくさんの人がここまで一緒に作り上げてきてくれたから、目前にまで辿り着けた。だから、ありがとね。皆」
一回ちょっと拍手を貰って、そこからわたしは自画自賛した後、本当に必要だったもの、一番の力を言葉にする。ここまで来れたのは皆のおかげ…そんな当たり前の事を、改めて言って、感謝を伝える。
「けどまだ成功した訳じゃないんだから、油断しちゃ駄目だよ?成功して、大団円になった時こそ、本当にやったね!って言える瞬間なんだから。だから、明日からも頑張ろうね。絶対成功させようね!と、いう訳で最後に…いくよ、えいえいおー!」
『おーっ!』
ここまで来られただけでも嬉しいけど、それで満足しちゃ駄目だし、それで満足するようなわたしじゃない。ここまで来たからこそ、ここでもう一度エンジンを掛け直した方が良い。そういう意味もあっての、わたしからのえいえいおーで…皆もおー、と続いてくれた。
「よし、これからも頑張ろうの儀式完了!ほら皆、今日は夜更かしせず、早く寝るようにね!」
「それを言うなら、そもそも呼ぶんじゃないっての。私とコンパはプラネタワーに住んでる訳じゃないんだから」
「もー、言い返す隙が皆無な事言わないでよあいちゃーん。あ、何ならいっそ、二人もプラネタワーに…と思ったけど、ねぷねぷ一行の最初の拠点にして、実家の様な安心感があるこんぱのアパートにもう行けなくなっちゃうのは嫌だなぁ…」
「わたしのアパートは、普通の所だと思うですけど…そう思ってもらえてるなら、きっと大家さんも喜ぶです」
「ネプテューヌさん、そういう話をしているとお二人の帰る時間がどんどん遅くなってしまいますよ(・ω・`)」
「あ、それはそうだね。じゃあこれにて話終了!画面暗転!次のシーンいくよー!」
引く時はさっさと引く!って事で、わたしは話を終わりにしてこんぱとあいちゃんを見送る。二人共企画運営にはほぼ関わってないけど、それぞれの担当で大博覧会に必要な事を担ってくれてるし、それは他の皆もそう。皆で作り上げているのが、大博覧会。
さてさて、それじゃあ画面暗転…は呼んでる皆がスリープ状態にしたり電源切ったりしないとならないから、アスタリスクを貼って終わりにしないとね。えーっと、この辺り…かな?
*
……あっ、ちょっとズレた!一応ちゃんと場面転換としては機能してるっぽいけど、修正しないと…よし、今度こそ終わり!
*
今回の話はここで終わりだと思った?残念♪まだ終わりじゃないのでした〜!
「お姉ちゃん、それってアイエフさんのネタ…っていうか、台詞なんじゃ…?」
「まーね。でもほら、言う機会はそうそうなさそうだし、代わりに言っても良いかな〜、って」
寝る準備を整えて、パジャマ姿にもなっている今のわたしがいるのは、ネプギアとの共用部屋。ここにいるのはわたしと、ネプギアと、そしておっきいわたし。
「ん〜、今日まで頑張ってきたし、明日はゆっくり寝てようかな〜…なんて」
「えぇー、さっき一緒にえいえいおーしたのにおっきいわたしは明日協力してくれないの?」
「あはは、冗談だよ冗談。でも、わたしが大博覧会を直接手伝える事なんてほぼないと思うんだよね。技術とか知識面ではほんとそうだし、ちっちゃいわたしが色んなところに回って人目に触れたりTVに出たりするなら、単純作業の手伝いでも『あれ!?女神様別の場所にいるんじゃないの!?』ってなって変な混乱を招いちゃうし」
手伝うにしてもねぇ、とおっきいわたしは伸びを一つして、ついでに座ったまま脚もぐぐっと伸ばす。するとそれだけで胸がたゆんっと揺れて、脚の長さとか肉付きの良さも強調されて……むむ、同じわたしながら悔しい。これがとにかく、とても悔しい。まぁ、わたしも女神化さえすれば同じ位のないすばでーになるし、女神にとっては女神化状態こそが真の姿な訳だから、そっちで負けてなければ良い気もするけど…っていうか、女神の姿のわたしとおっきいわたしなら、どっちの方がスタイル良いんだろう…気になるけど、これははっきりさせない方が色々良いような気もする…。
「まあそれもそっか。いやぁ、同一人物である事がここでネックになってくるとは…」
「けど、わたしだけ何もしないのも居心地が悪いし、本当にやれる事がなかったら、その時はこれまで通りクエストでもやってくるよ。大博覧会の最中だって、モンスターは遠慮なんてしてくれないしさ」
「でもそうなると、大きいお姉ちゃんは博覧会を楽しめないですよね…何とかならないかな……」
「ストップネプギア、一つ大きな間違いをしてるよ」
「へ?間違い…?」
「『大』博覧会だよっ!」
「あ、あー…そうだね、ただの博覧会じゃなくて、大博覧会だもんね…」
ネプギアのちょっとしてるようでちょっとしていない間違いを訂正した後、でもそうだよなぁとわたしは考える。皆には頑張ってほしいけど、頑張るだけじゃなくて、大博覧会を楽しんでほしい。
でもってそれは、おっきいわたしだってそう。直接とか間接とか関係なく、力を貸してくれたおっきいわたしが一人街から離れてクエストなんて、そんなのわたしも嬉しくないもん。
「うー、ん…ここは逆に、おっきいわたしがわたしの役目をして、わたしが大きいわたしの代わりにクエストするとか?」
「おー、それは名案!…じゃないよちっちゃいわたし…流石に同じわたしでも女神の役目は果たせないっていうか、無茶振りも良いところだよ…」
「そう?おっきいわたしはわたしと同じで器用だし、案外出来るんじゃない?」
「いやいや、ちょっとちっちゃいわたしのフリするだけならともかく、本格的にだなんて無理だって。同じわたしだからこそ言うけど、女神ってほんと凄いんだよ?真似しようとして真似出来るものじゃ、絶対ないって」
じっとわたしの方を見て、ちょっと真面目なトーンでそれは無理だよ、とおっきいわたしは返してくる。否定される事は予想していたけど、真面目に返されるなんて思ってもみなくて…これにはネプギアも目を丸くしていた。
「……?どうしたの、二人共。そんな、明るく可愛い人気者美少女を見るような顔して…」
「お姉ちゃんもそうだけど、そういうのをさらっと言えるのって、ある意味凄いですよね…」
『いやぁ、まあ事実ですからっ!』
「わぁ、二人揃って言われるとなんかこう、圧が……」
「あはは。で、話を戻すけど…何かわたしに対して、気になる事があった?」
「あ、うん。おっきいわたしが、思った以上に真剣に無理だって言ってきたから、ちょっと驚いた感じかな」
ふふーん、と二人揃って胸を張った後、改めて訊かれたわたしは言う。答えを得たおっきいわたしは「あー」と声を出した後、わたし達を見て一つ頷く。
「そりゃそうだよ。二人は女神だから、見られる側だから分からないだろうけどさ、見る側からすれば、女神はいつだって…ではないけど、色んなところで凄いんだなぁ、って感じさせてくれるんだもん」
「でも、わたしからすれば、大きいお姉ちゃんも凄いですよ?わたしにはない色んな知識や経験がありますし、ここのところだって色んな事を手伝ってくれてましたし、これまでも……」
「ストップストップ、そう思ってくれるのは嬉しいし、ネプギアに言ってもらえるなら誇らしくもあるけど、そういう事じゃなくて…なんていうのかな…ちょっとした場面からここぞって時まで、沢山の場面、沢山の瞬間で、国を、人を、世の中を見て、そういうレベルで考えて、言って動いて…それを自然に出来てるのが、凄いんだよ。二人もそうだし、皆もそうだし…くろめも、そうだった。わたしがくろめを止められなかったのは、友達として、くろめに寄り添ってあげる人も必要だって思ったからだし、きっと止められる存在がいるからってのもそうだったんだけど…今思えば、色々間違ってはいても、『女神』としての思い、意思を掲げて進もうとしていたくろめの在り方に、手伝いたいって思っちゃってた部分もあると思うんだよね。…今、みたいにさ」
その進むっていうのも、結局は後ろ向きっていうか、後退側に突き進んでた感じだけどね。…最後はそう言って、おっきいわたしは肩を竦めた。
おっきいわたしの語った、『人』として感じる女神の凄さ。それは本当に、わたしとしては意識していない事で、言われてみればそうなのかもって事で…それもまた、おっきいわたしの感じる凄さなんだと、思う。
「そういう訳だから、やっぱり無理だよ。出来る範囲の事はするけど、やっぱちっちゃいわたしがちっちゃいわたしとして何かをする時は、ちっちゃいわたしじゃなくっちゃ、ね」
「そっか……あれ?…もしかして、エール送ってくれてる?」
「うぇ?…あ、そ、そうそうそーゆー事!流石ちっちゃいわたし、分かってるぅ!」
「…偶にわたしもこういう事するけど、これってこんなにあからさまだったんだね……」
「それは、まぁ…うん……」
人の振り見て我が振り直せならぬ、別次元の自分の振り見て我が振り直せを実感したわたしは、ネプギアと小声で話しつつ、物凄く苦笑い。わたしがエールに感じたのは、偶々そんな感じになっただけっぽくて…だけど、別に良いよね。プラスに感じられたなら、そういう事にしておいても。
「それにほら、明日からのはあくまでプレオープンでしょ?正式な大博覧会はまだ先だし、わたしはその時に楽しませてもらうよ」
「…おっきいわたし自身がそう言うなら、わたしも無理強いしてまでプレオープンに…とは言わないよ。イリゼだってそうだしね」
折角のプレオープンなんだから、おっきいわたしにも楽しんでほしいけど、本人がこう言うのなら、それでも参加してもらおうとするのは…エゴだよ、それは!…なんて、ね。
だからわたしは、頷く。プレオープンを成功させて、正式な開幕に繋げようって。イリゼと同じように、そこで楽しんでもらおうって。
「じゃ、寝よ寝よ!あ、この際だし三人で、ネの字になって寝る?」
「何を言ってるんですか、大きいお姉ちゃん…」
「だよねー。やるならネじゃなくて、ねの字だよね〜」
「そっちも訳が分からないよ…活字じゃなきゃ違いすら分からないよ、お姉ちゃん…」
そんなこんなで、わたしとネプギアはそれぞれの部屋に。おっきいわたしは、共用部屋の布団の中に。
ベットに横になって、目を閉じる。これまでだって頑張ってきた。でも、上手くいく自信はある。これからも頑張らなきゃいけないけど、この調子ならきっと大丈夫。
(…うん。大丈夫だよね。大丈夫だから…頑張ろう)
頑張ろう、と心の中で自分に言って、わたしは寝る。大成功を目指して、ここまでの努力が…わたしが『女神』として頑張ってきたものが、形になる瞬間を夢見て。
──でも、その日も見たのは悪夢だった。そして…わたしは知る事になる。わたしの、今のわたしの、皆から見たパープルハートの……現実を。
今回のパロディ解説
・大きい妹、小さい妹、中位の妹
物語シリーズの登場キャラの一人、阿良々木月火の台詞の一つのパロディ。特に有名な訳でもない、単なるネタの一つですが、やっぱり何故か印象に残るネタや発言ってありますよね。
・「〜〜某平等なだけの人外〜〜」
めだかボックスに登場するキャラの一人、安心院なじみの事。自分は味方だ、というあの台詞、自分に勝つ…という類いの発想に対する捻くれた返しみたいなものですが、それはそれとして良い台詞ですよね。
・「〜〜一手じゃ変わらない〜〜もっと何も変わらないからね」
ガンダムSEEDシリーズの主人公の一人、キラ・ヤマトの名台詞の一つのパロディ。この台詞はほんと、使える機会もそこそこありますし、使えるタイミングなら基本自然に入れられる気がします。
・今回の話はここで〜〜じゃないのでした〜!
魔法少女まどか☆マギカの登場キャラの一人、美樹さやか…を用いたネタのパロディ。…ですが、ネプギアも言っている通り、原作ゲームではアイエフの戦闘時の台詞の中にも同様のものがあったりしますね。