超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown   作:シモツキ

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第十九話 今度は俺達が

 何やらまた、只事じゃない何かが起きている、起き始めている…その事を、俺も多少は聞いていた。聞いてはいたが、きちんと説明されていた訳じゃなかった。

 理由は考えるまでもない。特務監査官の一人とはいえ、俺はうずめやくろめと違って女神じゃないし、特務監査官にしたって本来の役目は各国の女神と教会の監査。前任のイリゼが動き易いよう、便宜を図って設置された役割でもあるらしいが…とにかく特務監査官というのは有事の時、それの対処に直接関わる仕事ではない以上、情報共有されなくたってまあ仕方ない。それは俺も理解している。

 ただ…知らない内に、現状を把握出来ていない内に、イリゼが大変な事になったと知った時は…歯痒かった。図に乗るなって話かもしれないが、それでも仲間の…うずめ共々色々世話になったイリゼが大変だって時に、その事すら知らなかったっていうのは、やり切れない思いがあった。…だからこそ、迷いはない。そのイリゼを探す為に、セイツ達へ協力をする事には。

 

「じゃあ、皆がどの程度把握してるのか分からないし、事のあらましを一から説明していくわ」

「ああ、頼むよせいっち。これ位知っているだろう、という思い込みも、知らないって把握してる筈だ、という逆側からの思い込みも、情報共有と状況把握においてはマイナスにしかならないからね」

 

 イリゼを探し、取り戻す為の話し合い…の、前の腹ごしらえを終えて、俺達は改めて話し合いを始める。まずは、と説明を提案したセイツに、くろめがこくりと一つ頷く。……因みにこの時、うずめは「そういやせいっちって、スイッチと似てるよな」…と言っていた。…うん、まあ、似てはいるけど…正直、だからなんだ感が凄い…。

 

(未開領域に、天界に、人のいない街、か…前の事を思い出すな…)

 

 説明を聞く中で頭に浮かぶのは、俺とうずめがいた次元…零次元と呼ばれる事になった次元の事。実態は色々違うとはいえ、箇条書きのように要素を上げていけば、何も分からない場所だったり、信次元じゃない(いや、天界は信次元の一部らしいが)空間だったり、無人だったりと、かなり似ているような気もする。

 だが、当然違う事も多いし、何より似ているからって参考になる事なんて、殆どない。似ていたとしても、全く……

 

「…って、んん?」

「おや、どうかしましたかウィードさん

(・ω・`)」

「いや、まさかとは思うが…俺達の知るネプテューヌじゃないネプテューヌって、くろめみたいな存在…じゃないよな…?」

『それは……』

 

 ふと頭に浮かんだ、一つの可能性。それを聞いた皆の視線は、自然とくろめの方を向く。

 勿論、根拠はない。ただ単に、敵対している同じ姿の…つってもうずめとくろめは全く同じって訳じゃないが…別人っていう前例が、すぐ側にいたから思い付いたってだけの事。そしてそれはくろめも理解しているようで、俺の方を見て肩を竦める。

 

「まぁ、ないとは言い切れないね。何せオレはそのねぷっちの事を、話でしか知らない。判断材料が少な過ぎる今じゃ、否定し切る事は出来ないさ」

「それはその通りね。相手が何者なのか全く分からないっていうのも、女神の皆に慎重なスタンスをとってほしい理由の一つだし」

「…と、なると…いりっちを探すのに加えて、そのねぷっちについて調べる事もやった方がいいか?」

「そうですね、天界に何かしら手掛かりがあるかもしれませんし、頭の片隅には置いておいてほしいですが…二兎追う者は一兎をも得ず、とも言います。色々と分かっていない今だからこそ、一つ一つ進めていってほしいと思います( ̄^ ̄)」

 

 意識はしてほしいけど、まずはイリゼの事を、とイストワールさんは言う。セイツもそれに深く頷く。それは現状を踏まえた最善の選択…ではあるんだろうが、姉妹だからこそ、イリゼの事を優先したいって気持ちもあったのかもしれない。……因みにここで、くろめも「今更だけど、いりっちってイノッチと似ているね」…と言っていた。うーむ、流石同一人物…そしてこっちはほんとに今更だ…。

 

「こほん、話を戻すわね。といっても、何がどうして今に至るのかは、一通り話した訳だけども。今のウィードの質問以外に、何か訊きたい事はあるかしら?」

「んー…あ、なら一つ訊きたいんだが、いりっちが最後にいた場所…ってか、戦闘になった場所か?…は、どこか分かってるのか?」

「あぁ、それなら一度何人か枢機部隊(カーディナル)の隊員に来てもらって、どこなのか確認をしてくるつもりよ。流石にその付近に倒れてる…って事はないだろうけど、何か手掛かりが残ってる可能性は十分あるし」

「じゃあ、オレからも一つ。質問というか、お願いなんだが…その枢機部隊(カーディナル)やいりっちと行動を共にしていた三人と、少し話す事は出来るかい?やっぱりこういうのは、当事者から聞く事で分かるもの、伝わるものがあるからね」

「構わないわ。勿論、三人が了承してくれれば…だけど」

 

 色々と考えていそうな顔で、くろめは尋ねた。最近…ではなく結構前から感じてる事だが、本来の『うずめ』から二人に分かれたからか、くろめはここにいるうずめや嘗てのうずめよりも、思慮深いように思う。…まあ、だからって別にうずめが短慮って訳じゃないが。じっくりしっかり考えられるくろめは頼もしいし、思ったまま、感じたままに行動出来る、行動に移せるうずめは格好良い…そう思うのがこの俺、ウィードです。

 と、いう訳で本題前の説明と確認は終了。くろめの件はまた後程って事になり…本題、調査の内容へと話は移る。

 

「さて、皆にお願いする天界の調査だけど、分かっての通り目的はイリゼを見つける事よ。拠点としてうちの教会を使ってくれて構わないし…調査の為に必要なものは、なんだって用意するわ」

「…おう。必要だって感じたものや事があれば、遠慮なく言わせてもらうぜ。俺だって、いりっちの事は全力で探すつもりだからな」

「ありがと、うずめ。それと、調査は出来る限り定期的に…というか、可能なら毎日教会に戻ってきてほしいの」

「それは、こまめに調査結果を報告してほしい…って事か?」

「それもあるけど、一番は貴方達の無事を確認する為よ。普段ならともかく、今は天界も何があるか分からないし、イリゼ達の言う『街』が他にもあるかもしれないからね」

「街の中からじゃ通信が繋がらないんだったね。戻る頻度が少ない場合、何事もなく調査しているだけか、何かしらの問題が起きて戻れなくなっているのかが判別し辛くなる…うん、そういう事であれば異論はないよ」

 

 セイツからの日帰り調査を求められ、俺達は頷く。日帰りってなると調査出来る範囲は限られるだろうが…まあそこは、日帰りで調べられる範囲を一通り終えてから考えればいい事だろう。そんな風に俺は思い…そこで今度は、イストワールさんが声を上げた。

 

「…あの、セイツさん。その口振りだと、調査は三人に任せるおつもりのようですが…セイツさんは行かなくても良いのですか?(´・ω・`)」

「うん?勿論わたしだってやれる限りはやるつもりよ。…けど、わたしまで神生オデッセフィアを離れたら、うちは女神が不在になっちゃうでしょ?それにパーティーの皆も協力してくれるなら、うずめ達ばかりじゃなくてそっちにも同行したいし…まあ、その時々で柔軟に立ち回ろうと思ってるわ」

「そういう事ですか。もし調査に専念したいと思っているようでしたら、神生オデッセフィアの方はわたしが何とか、とも思っていましたが…本当に、もうセイツさんは大丈夫なようですね(´∀`)」

「ええ、当然よ。…イストワールの、おかげでね」

 

 にこりと笑うセイツに、イストワールさんも笑みを返す。落ち着いている、感情に任せた判断をしていない…イストワールさんが安心しているのは、きっとそういう事。そして二人のやり取りを見ていたくろめは、セイツに対して「頼れるだろう?イストワールは」…と言っていた。その時のくろめの表情は、少し嬉しそうで…セイツはそれに、笑みを浮かべたまま頷いた。

 

「っと、そうだ。未開領域と天界で遭遇した…というより、ネプテューヌの姿をした存在が使役してたと思われるモンスターについても話しておかないとね。まあ、貴女達なら余程の物量でもない限り遅れを取るとは思わないけど……」

 

 これを言い忘れちゃいけない、と言うようにセイツはそのモンスターについても分かっている事を俺達に語る。でもってそれが済んだ後は、より細かい話に移っていった。そしてその話も、一通り終わり…くろめは吐息を漏らす。

 

「…ふぅ。一先ず今話して決められるのはこの程度だろうね。まだ決まっていない部分は、当事者達に話を聞いた上で決めるとして…せいっち。どうしようもない…ほんっとうにどうしようもない晩年でプラネテューヌの女神史に泥を塗り付けたオレが言うのは烏滸がましいにも程があるんだが…うん、どうせくろめが言ったって十中八九どころか十中二十位の割合でブーメランになるし、何ならくろめの言葉を聞いたら女神としての格が下がる可能性すらあるから、くろめ的には雑音だと思って無視する事をお勧めするけど──」

「ちょっ、ストップストップストーップ!ネガティヴ過ぎて脱線してる!本題からどんどん外れていってるって!」

「なんか、変身が得意な精霊みたいになってるわね、くろめ……」

 

 話し合いの最中、殆ど聞いてるだけだった俺と違い、イストワールさんやセイツと色々な意見を交わしていたくろめ。そのくろめはここまでの話に区切りをつけるような口振りをすると共に、セイツに何かアドバイスを……すると思ったら、ネガティヴ状態になってしまった。自虐するだけで、全然話が進まない状態になってしまった。取り敢えず突っ込みながら肩をぐわんぐわん揺らす事で、何とかくろめの平常心を引き戻す事が出来たが…同じ唐突な周りが見えなくなるモードでも、方向性がマイナスな分くろめの方がより見てられないんだよな…。…いや、うずめはうずめで、見てるこっちが恥ずくなる位になったりする場合もあるから、結局どっちもどっちだが……。

 

「…すまない。見苦しいところを見せたね…」

「大丈夫よ。…いや、大丈夫というか…思わず抱き締めたくなったわっ!やっぱりくろめの後ろ向きさ加減は周りに殆どいないレベルだからつい見入っちゃうし、その心に慰めと励ましを目一杯送りたくなるっていうか……」

「はい、セイツさんも落ち着きましょうね。セイツさんがいつものセイツさんに戻った事は嬉しいですが、それはそれとして落ち着きましょう(。-∀-)」

「…話、進まねーな……」

「だな……」

 

 反省と共にくろめが我に返ったと思ったら、今度はセイツが自分から思い切り脱線していった。そんなセイツは、穏やかな…けど明らかに呆れてる感じがする声音のイストワールさんに窘められていた。…半眼を浮かべるうずめに、同意をする俺だった。

 

「失礼しました、くろめさん。…して、セイツさんに何をお伝えしたかったのですか?(´・ω・`)」

「あ、あぁ…せいっちももう休んだ方がいいんじゃないかな?もしかすると、色々感情を揺さぶられ過ぎて逆に感じられなくなってるのかもしれないが…君は相当疲弊している筈だよ」

「それは……そうね。…うん、そうさせてもらうわ。くろめ、気遣いありがと」

「この位、どうって事ないさ。それに、何れにせよ今話せる事、決められる事は大方出尽くしたんだ。であれば尚更、今日はもう休んだ方がいいだろうからね」

 

 全く以ってその通りなくろめの言葉に、セイツは首肯。そのままセイツは休む事にし…俺達もこのまま教会に泊まる事に。

 

「天界の調査か…なんか久し振りに、冒険って感じだな」

「確かに、こういうのは前の戦い以来だもんな。あーいや、冒険…って程じゃない、温泉までのちょっとした探索みたいな事なら、少し前にもしたが…。…そういや、くろめは天界に行った事あるんだっけ?」

「あるよ、と言っても詳しく案内出来る程ではないけどね」

 

 神生オデッセフィアの教会にある、来客用の部屋ならこれまでも何度か使わせてもらった事がある…って事で、どの部屋を使っていいかだけ聞き、案内は遠慮し三人で向かう。

 

「…にしても、クロワール、か……」

「クロワールって言やぁ……あー」

「そういう事だ。…感じるさ、責任位」

 

 ぽつりと呟いたくろめにうずめが反応し…それにくろめは首肯をする。何が、とは言わないくろめだったが…俺にだって、その意味は分かる。

 前の戦いにおいて、くろめとクロワールは協力関係だった。二人は暫く前まで、仲間だった。信頼し合う仲間って訳じゃなく、利害の一致の延長線上…って感じだったらしいが、だとしても協力し合っていた相手が今また、何かしらの目的でもって悪事を働いているって知れば、思うところがあるのは普通の事。

 

「…くろめ、それは……」

「大丈夫さ、ウィード。責任は感じるが、負い目は感じちゃいない。むしろ、丁度良い機会だと思っている位さ」

「丁度良い機会?」

「皆はオレを止めてくれた。オレの過ちを、力尽くで潰してくれた。そんな皆に、オレの罪…それに纏わる事の尻拭いまでしてもらったんじゃ、オレは誰にも顔向け出来なくなるからね」

 

 だから、この件は絶対に遂行する。そんな風に、くろめは小さく口角を上げる。そのくろめの様子を見て、俺とうずめは顔を見合わせ…頷く。これなら安心だ、と。そういう事なら、俺も…俺達も、尚更頑張らないとな、と。

 そして俺達は、来客用の部屋がある場所へと到着。俺は自分が割り当てられた部屋に入り…さも当然の様に、うずめとくろめも入ってくる。

 

「…うずめもくろめも、そういうところあるよな……」

『……?』

 

 半眼と共に俺が言えば、二人は何の事だかさっぱり分かっていない様子で首を傾げる。ほんと、遠慮がないっていうか、躊躇いがないっていうか…幾ら俺が拒否しないからって、普通に俺に続いて入ってくるのはどうなのよ、二人共。俺が変な気起こしても文句言えないぞ?……まぁ、変な気は起こさないが。流石に俺も、イリゼを連れ戻す為に全力を尽くそう、って話をした直後に変な気起こすような男じゃないが。…後、二人が揃って首を傾げるの、ちょっと…いやかなり可愛いな…。

 

「…なんか、疚しい視線を感じるんだが…」

「部屋に入った途端にそれとは……」

「おいこら勝手に人の視線を疚しいもの扱いすんな」

「じゃ、疚しい気持ちはねーのか?」

 

 元はと言えば二人が当たり前な感じで入ってきたからじゃないか、なんて言わせないうずめの視線。同じようにじーっと見てくる、くろめの瞳。二人から問い詰められる形になった俺は、半ば逃げるように視線を逸らし…頬を掻きながら、白状をする。

 

「……いや、その…首傾げるの、可愛いなぁとは思ってた…」

「あ、お、おう…そっか…」

「それは、その…うん……」

 

 ぴくっ、と肩を小さく震わせた後、今さっきまでとは打って変わって静かな様子になる二人。そのおかげで俺はこれ以上追求される事はなく、しおらしくなった二人も見れて一挙両得…なんて事はなく、それはそれで気不味い、何とも落ち着かない空気になってしまった。しかもこういう時の沈黙は、気不味さを加速させるもので……居た堪れない気持ちになった俺は、慌てて別の話を振った。

 

「と、ところで二人共、調査に感して一つ訊きたい事があるんだけど…いいか?」

「…訊きたい事?」

「訊きたい事があったなら、話し合いをしていた段階で訊くべき…と言いたいところだけど、その表情だとさっきは訊かなかった理由がありそうだね」

「理由、って程大層なものはないが…まぁ、そんなところだ」

 

 上手く話を逸らせた事に安堵しつつ、俺は頷く。この話を振ったのは、逸らす為だが…二人に質問があったのは、本当の事。

 

「今回の件、うずめとくろめに話が来るのは分かる。さっきくろめは自分達をそこそこの戦力にはなるって言ってたし、実際女神の二人はそこそこなんてレベルじゃない強さだ。…けど、俺はそうじゃない。実力で二人に大きく劣るのは明らかだし、知略や経験で二人に勝ってる訳じゃない。でもって、俺は二人と同じ特務監査官って立場で呼ばれたんだと思うが……」

「特務監査官は別に全員で動かなきゃいけない訳じゃないし、特務監査官である事が必要になる調査でもない」

「あぁ。…だから、俺は付いていく必要があるのか…いや、付いていってもいいのかな、って思ってさ」

 

 俺の言いたい事を理解し引き継いだくろめに軽く首肯する事で返し、結論を口にする。この調査は、俺抜きでやった方が良いんじゃないか…そう考えている事を、二人へ伝える。

 勿論、調査が嫌な訳じゃない。俺は二人の力になりたいし、イリゼを助けられるなら、その為に出来る事をしたい。けど、役に立てないのなら…足を引っ張ってしまうようなら同行しない方がいいし、もしそうだっていうなら…悔しいが、それは受け入れる。零次元の時と違って、他に頼る当てがない訳じゃないし、何より今回はうずめ一人じゃないんだから。

 

「…………」

「…………」

「……?えーっと…うずめ?くろめ?」

 

 問いに対する二人の最初の反応は、沈黙。肯定でも否定でもない、ただ俺をじーっと見つめる二人の様子に、俺は困惑し…二人は同時に息を吐く。

 

『はぁ…必要あるに決まってるだろ(う)』

 

 最初の溜め息だけでなく、そこからの言葉もほぼ同じで、タイミングすら完璧に合った二人の返し。うずめとくろめ、二人に揃って必要だ、と言われるのはこう、じーんとくるものがあって…少し照れ臭い気分になった俺は、また頬を掻いた。

 

「や、その…ありがと、二人共。…じゃあ、理由を聞いても…?」

「理由も何も、考えてみろよウィード。俺が【オレ】と二人で調査に出たとして…上手くやれると思うか?」

「あー…うん、納得した」

「そんな即納得されるのも、それはそれで不服だが…まあ、【俺】の言った通りさ。方針が食い違うとか、理念の問題とかのレベルじゃなくて、普通にやり取りするだけでもオレ達だけだといがみ合う結果になるのは明白だ」

 

 何ともシンプルな…けど確かに無視の出来ない理由を聞いて、俺は納得。周りに人がいる状況でも二人は言い争いになったりするんだから、そのうずめとくろめが二人だけで調査をするってなったら、些細な事で文句を言い合う二人の姿が浮かぶ浮かぶ。

 って訳で、俺…というか、仲裁出来る人が必要だってのは理解した。そこで「でもそれは、俺じゃなくても…」なんて事は言わない。うずめもくろめも俺に遠慮してより適任の人がいるのに名前を上げない…なんて事はする訳がないし、そんな二人が俺を必要としてくれるなら、俺はそれに応えるまで。…けど、それはそれとして…うーん……。

 

「…なぁ、二人共。そもそもの話として、二人共同じ『うずめ』だろ?んで、別次元の同一人物とかじゃない、本当に同じ『うずめ』から別れた存在…みたいな感じだろ?なのにどうして、こう…普段は馬が合わないんだ?」

 

 これは、前々から薄っすら思っていた事。これまでは、思っても何となく流していた事。対照的な部分も多い二人の意見が対立したり、シンプルに言い合いになったりする事自体はそんなに不思議でもないが…二人は性質が違うだけの同一人物…って感じの筈。実際共通してる部分はあるし、どっちの『うずめ』からも、嘗ての…守護女神だった頃のうずめを感じる瞬間は幾度もあった。

 究極的には、二人のやり取りは全て、自問自答とも言える筈。なのにどうして考えがぶつかり合ったり、場合によっては口喧嘩になったりするのか。その理由が、俺にはどうしても分からず…だからこその、問い。

 

「そりゃ…んー?…言われてみると、確かに変だな…なんつーか、俺的には【オレ】の事を、同一人物ってか、もう一人の自分だとは思ってるが、だからって自分自身とやり取りしてる感じはないってか…けどそれも変な話だよな……」

 

 それもそうだな、とうずめは腕を組んで考え始める。むむむ、と頭を捻ってるっぽい様子を見せる…が、中々答えは出てこない。するとそんなうずめの姿にくろめは肩を竦め、俺の方へと向き直った。

 

「【俺】の方は思い至ってないようだが、そう難しい話でもないよ。まず一つ挙げるなら、確かにオレと【俺】は元を同じくする存在、同一人物な訳だけど、それはあくまで元々の話…謂わばスタート地点が同じというだけだ。そしてオレも【俺】も、当然完成された存在なんかじゃない。だから、スタート地点は同じでも、そこからの体験や人間関係が違っていれば、その影響で今の在り方も多少なりとも変わるというものさ」

「あ、そりゃそうか。【オレ】は零次元でのウィードとの時間を過ごしてねぇ訳だし、俺も『うずめ』を知らない段階の大きいねぷっちとの出会いは経験してない訳だしな」

「……加えてオレには過去の記憶がある。それだって、要素としては大きいというものだ。例えばプラネテューヌでの、ウィードとの記憶…思い出とか、ね」

「…当てつけか?今のは」

「まさか。オレは補足説明と例を挙げただけだよ」

 

 そうか、元は同じでもそこから先は違うのか…と納得したのも束の間、瞬く間に嫌な空気が流れ始める。うずめの声には不服の色が籠り、くろめの返しにもわざとらしさが混じる。

 突然こうなったトリガーは…うずめの言った、『俺との時間』かもしれない。つまり、くろめは嫉妬心からこんな事を…そう思うと男としては悪くない気持ちもあったりするが、俺は二人が険悪になる事なんて望んじゃいない。

 

「あー、っと…くろめはさっき、まず一つって言ったよな?って事は、他にも何か思い当たる節はあるのか?」

「…まあ、ね。後二つ程思い付くけど、片方はもっと単純且つ根本的な理由さ」

「と、いうと?」

「ウィードは今、オレと【俺】とのやり取りを、自分との対話みたいに考えているだろう?けど、普通それは自分の内側で行われるもの…仮に自分で自分の考えを否定するとしても、そこで行われるのは『自ら気付いて訂正する』というものだ。決して、外側から…今ここにいる自分ではない存在から、指摘される形で行われるようなものじゃない」

「あぁ、そうい…うぅん?」

 

 再び話を逸らした俺。一瞬の間こそあったものの、くろめは普通に答えてくれて、二つ目の理由にも俺は納得…しかけたが、うん?…となった。全く理解出来ない訳じゃないが、分かるような分からないような…そんな状態に陥った。ちらりと見てみれば、うずめも「……?」…って感じの顔をしていて、ある意味話を逸らす事には成功していたが、今度はこっちが気になって…こう、もにょる。

 

「要は、自分との対話と言ったって、普通は面と向かって話す訳じゃない…そういう事さ」

「あ、そう言われると分かり易いな。てか、それはほんとその通りだったわ…」

「…んで、残りの一つは?」

 

 さらっと纏めてくれた事で、今度こそ理解。俺が二度目の納得をする中、今度はうずめがくろめに問い掛け…くろめは、黙る。一瞬、お前の質問になんか答えるか、的な事かと思って不安になったが、どうもそういう訳じゃなく…俺は気付く。ほんの僅かだが、くろめの表情が曇った事に。

 

「…それは、言わなくても分かるだろう?ウィードには分からなくても、【俺】には」

「はぁ?分かるだろうも何も、分からねぇから訊いてるんだぞ?」

「本当に分からないと?あぁいや、意識していないだけの可能性は確かにあるか」

「だから、何だってんだよ。話す気はあるんだよな?なら、勿体ぶらずに……」

「──自己嫌悪、だよ」

 

 中々言わない事に不満を抱いた様子のうずめ。そんなうずめに向けて、うずめの言葉を遮る形で、くろめは言った。自己嫌悪だ、と。

 その瞬間、やり取りが止まる。俺も、うずめも、発された理由に言葉を失い…くろめだけが、淡々とした声で続ける。

 

「知っての通り、【俺】は『うずめ』の善性を、オレは『うずめ』の悪性を煮詰めたような存在だ。【俺】にとってオレは、自分の悪い部分を濃縮して具現化したような存在だ。一目で分かる悪、嫌悪すべき存在…しかもそれが自分なんだと、自分自身の側面の一つなんだと顔を合わせる度に突き付けられれば不快になるのは当然の事だし、否定したくなるのは当たり前の事だ。自分の悪い部分、駄目な部分も受け入れる事が強さだ、なんて言ったりもするが、オレ達の場合は違う。なんたって、オレも【俺】も『うずめ』から発生した存在であって、オレの中から善性が分離して【俺】になった訳でもなければ、【俺】から悪性が分離してオレになった訳でもないんだからな」

「お前…何を言い出すかと思えば、またそんな…俺は別に、【オレ】の事を……」

「本当に、全く嫌悪していないと?自分のものじゃない悪性を持った、けれど自分自身だという認識から逃れられないオレを見て、本当に何も不快感を抱かないと?」

「…………」

 

 じっと見つめる…自分自身を見つめるようなくろめの瞳の前で、うずめは黙る。黙り込む。…否定は出来ない、否定し切れない、そんな風に。

 

「別にこれに関しては、嫌悪していようと構わない。むしろ、していないと返された方が疑わしく思うね。それに何より、オレだってそうだ。【俺】は、オレよりも昔のオレに、守護女神だった頃の『うずめ』に似ている。内面の深い部分はともかく、表面的にはね。だから、見る度、話す度に思い出すんだよ。愚かで、身勝手で、皆の事を見ているつもりでちゃんと見えていなかった、オレ自身の駄目さ加減を。…そして、痛感するんだよ。もうどれだけ後悔しても遅いんだって」

「…【オレ】……」

「どうしようもない自分と、どうにもならない事実を目の当たりにすると、腹立たしさすら浮かんでくる。自己嫌悪から逃れられなくなる。…そういう事だよ。同じ自分であり、外側から見る自分だからこそ感じる自己嫌悪。こればっかりは、それこそどうしようもないのさ」

 

 苦々しげな顔をするでもなく、皮肉たっぷりに言うでもなく、最後まで淡々と語り、どうしようもないんだと締め括った。そういうものとして受け入れている、別に困ってなんかいない…そんな風に、くろめは言い切った。

 確かに、どうしようもないし、どうにもならないんだと思う。現状言い合いをする事はよくあっても、本気の喧嘩…それこそ殴り合いにまで発展する事はほぼないし、どこぞの魔術師殺し宜しく会話しないなんてような事はない…ぶっちゃけ偶に二人揃って妄想モードに入って仲睦まじく話してる時すらあるんだから、過剰に気にする必要はない、しても仕方ない事と割り切ってしまった方が楽なんだろう。…でも……

 

(…嫌だな、それは)

 

 そういう事じゃない。そういう話じゃない。この話の発端は俺だし、くろめの語った事は正しいのかもしれないが…それをただ受け入れるのは、そういうもんだと流すのは、嫌だった。たとえ本人は大して気にしていなくとも、悪性だの自己嫌悪だの言わせておいて何もなしなんて、はいそうですかなんて…真っ平御免だ。だから俺は、くろめに向き直る。向き直り、側に寄る。

 

「…ウィード?急にどうし……」

「くろめ。俺は、くろめが好きだ」

「んぇっ!?」

 

 突然の、面と向かっての告白に、素っ頓狂な声を上げるくろめ。まぁ、そりゃそうだ。突然面と向かって「好き」だなんて言われたら、びっくりもするし変な声も出るだろうさ。

 後ろからは、うずめの咽せた声も聞こえてくる。そっちに意識を向けると…というよりくろめの事以外を考えると、途端に俺も恥ずかしさが募ってくる。じゃあどうするか。…そんなの、恥ずかしさを振り切れるよう突っ走るしかない。

 

「うぃ、ウィード!?いきなり何を……」

「好きだ。前から好きだ。今も変わらず好きだ」

「ぶふッ!?い、いやだから……」

「具体的に何が好きかって言うと──」

「だから待てって!待って、待ってってばぁ!」

 

 真っ赤な顔で、わたわたとしながらくろめが俺にしてくる制止。いつもはクールで達観した雰囲気も醸すくろめのこういう姿は何とも可愛く、ついもっとわたわたさせたい気持ちに駆られるが、ここはぐっと我慢し訊く。

 

「うん、どうしたよくろめ」

「ど、どうもこうもあるか!唐突!唐突過ぎるだろう…!?」

「唐突も何も、いつだって俺はくろめが好きだぞ?」

「だっ…だーかーらぁぁぁぁ!…うぅ……」

 

…ごめんなさい嘘です。我慢出来なくて、もっとわたわたさせました。…今度こそ自重しよう。じゃなきゃ、ちゃんと伝えたい事が伝わらないもんな。

 

「悪い、今のは冗談だ。…いや、好きだってのは本気なんだが、まあそれはそれとして…俺は昔くろめが、『うずめ』が好きだったから、くろめも…なんて思ってる訳じゃねぇし、今も昔も気持ちは変わらないんだ。同じように思ってるんだよ」

「…もしかして、オレを気遣ってくれてるのか…?だったら別に、オレは気落ちしてなんか……」

「いいから聞けって、後先に言っておくが俺は言いたい事言ってるだけだからな。…今も昔も気持ちは変わらない、それはくろめも『うずめ』だからだよ。ちゃんと『うずめ』らしさが、今のくろめにもあるからなんだ」

「…それは、当たり前……」

「そうだな、当たり前だ。…だからさ、自分を『うずめ』の悪性を煮詰めたような存在だなんて言うなよ。確かにくろめは『うずめ』のそういう部分の比重が大きいってか、そっち寄りなのかもしれないが…だとしても俺は、悪性がくろめの本質だなんて思っちゃいない。くろめが喜んだり楽しんだりする姿も、今みたいに好きだって言われてテンパる…顔を赤くしながらも割と嬉しそうにする姿も、卑屈な事言ったりしながらも、自分のしてきた事と絡めながらも、誰かの為に頑張ろうとする姿も、全部知ってるんだ。だから、俺の前でそんな事言うな。俺といる時は、そんな風に思わなくていいんだよ」

 

 俺は、不満だった。くろめの本質が悪性だなんて事を認めるのも、受け入れるのも。ただ、それだけだった。たったそれだけで…でも絶対に、譲れなかった。

 はっきりと、しっかりと言い切り、俺はくろめの頭に触れる。触れて、ゆっくりと撫でる。女神を撫でるなんて、普通はまぁ畏れ多い事だが…既に抱き締めたりもしてきたんだ、今更だ。

 

「…本当に、そう思ってる…?」

「本当に、そう思ってる」

「……うん…」

 

 撫でられるまま、上目遣いでじっと見てくるくろめに、そのままの言葉で返す。飾る必要なんてないと、真実だけを言葉にする。

 小さく、本当に小さく頷くくろめ。今のくろめは、普段の頼もしさなんて全くない、普通の女の子の様で…改めて俺は、思う。こんな姿を、表情をするくろめの本質が、悪性なんかであるもんか。

 

「…さて、と。くろめ、ちょっと待っててもらってもいいか?」

「……?…いいけど……」

「ありがとな。んじゃ…しれーっとフェードアウトしようとするんじゃねーっての、うずめ」

「……っ!」

 

 ぽふぽふ、と最後に軽く頭を叩いて、俺はくろめの頭から手を離す。上目遣いのまま、どうしたんだろうか、というような顔をするくろめは本当に可愛くて眼福ものだったが、今はその気持ちを脇に置く。そして振り向くと共に、もう一人のうずめへと声を掛ける。

 

「…いや、だって…こういうのをただ見せられるのって、滅茶苦茶居た堪れないし……」

「それは、まぁ…すまん……」

「でも、そうだな。俺だって俺が善性の塊、【オレ】が悪性の塊だなんて思わねぇよ。ちょっと悔しい気持ちもあるが、【オレ】に対するウィードの言葉はその通りだと思うし…何より俺は、さっき【オレ】の言葉を否定出来なかったからな。どこぞの絆巡る疾風さん宜しく、純粋な光…じゃなくて善性の心だけを持ってるなら、ちゃんと否定してる筈だろ?」

 

 そう言って、うずめは自分に対して軽く呆れるように笑う。…こうやって、前向きに…いがみ合う事の多いくろめに対しても、肯定の意思を示せるのが、うずめの良いところだと思う。今言った通り、くろめへの嫌悪の感情があったとしても…いや、ある上で、悪性の塊だとは思わないと言える事が、良いところであり強さなんだ。だから俺は、うずめにも言う。

 

「うずめも、同じだからな?」

「同じ…?」

「前にも言ったが、俺の中にあるうずめを想う気持ちは、過去や記憶からきてる訳じゃねぇ。勿論、どっかにはその部分もあるのかもしれないが…俺がうずめを大切に思うのは、大事に思うのは…いいや、格好良い女神で、可愛い女の子で、そんなうずめが好きだって思うのは、今ここにいるうずめと過ごして、一緒に歩んできた今の俺だ。はっきり言う、言い切ってやる。たとえ俺が、ウィードじゃなかったとしても、過去の繋がりなんてない存在だったとしても…絶対に、うずめの事を好きになってたよ」

「……っ、ウィード……」

「俺がくろめを想う気持ちと、うずめを想う気持ちは別物だ。どっちが上だって事はねぇし、どっちも今の俺にはなくちゃいけない…ウィードって男の、一部なんだ。…だからさ、遠慮するなって。くろめにも、俺にも…自分自身にも。全然凄くなんかない俺だけど…うずめをこれからも笑顔に、幸せにするって事だけは約束するからさ」

 

 さっきと同じように…けれど今度は逆の手で、うずめの頭も撫でる。格好良くて、可愛くて…凄くてでも普通なうずめを、撫でる手で感じる。

 別に、うずめは悲しんでいた訳じゃない。さっきのくろめの様に、認めたくなかった訳でもない。…ただ、遠慮はしてほしくなかった。うずめの事だから、遠慮の自覚なんてないんだろうけど…だからこそ、遠慮なんかするなって伝えたかった。遠慮は要らないと、思ってほしかった。

 それに…俺はうずめの事も、くろめの事も、本当に大事に思ってる。だから…片方だけになんて、出来ないんだよな。

 

「…なんだよ、急に…急にそんな事言い出して、なんかちょっとキザにもなって……」

「男にはな、格好付けたい時があるんだよ。…あ、っていうかうずめには言ってなかったな。うずめ、好きだ。超好きだ。滅茶苦茶好きだ」

「うぇっ!?ぁ、や、なんだよそれ!?おまっ、そんな忘れ物を後から提出するみたいに言われても……」

「嫌だったか?」

「…嫌じゃない…後、ほんとはうずめにはないのかな…?…って、ほんのちょっとだけ思ってた……」

「そっか。そういうところ含めて、ほんと好きだぞ、うずめ」

「〜〜〜〜っっ!」

 

 かぁぁ、と顔が真っ赤に染まって俯くうずめ。耳まで真っ赤になったうずめは、ぷるぷると震えていた…いやほんと、マジで思う。こんなうずめとくろめで、誰が上下付けられるんだ、って。少なくとも俺は無理だ。絶っっっっ対に、無理だ。

 そうして俺は、もう少しの間うずめを撫でる。相変わらず真っ赤なままのうずめだったが、全く嫌がる様子はないし、何なら俯く直前頬は緩んでた気がするし、それを思うとすぐには止められない。止められる訳がない。どんなに凄い女神でも、こういうところは普通の女の子で、だから俺は女神としては勿論、一人の女の子としても……

 

「…なぁ、ウィード。ちょっとって言うのは…後、どれ位なのかな?」

「へ?…あ、えーっと……」

「…遠慮するなっていうのは、何も【俺】だけじゃないんだろう?…くろめも、遠慮しなくていいんだよね?」

「それは…それは、勿論だ。遠慮なんか、これっぽっちも必要ねぇよ」

 

 背後から俺の横へ、空いている腕側の方へときたくろめの、何やら思惑…というか、単に痺れを切らしただけじゃないように思える言葉。一瞬それに戸惑った後、俺は勿論だとはっきり返し……た次の瞬間、うずめを撫でていた方の腕を、うずめにがしっと掴まれる。

 

「…そうだな、遠慮は要らねぇだろうさ。けど…それはそれとして、まだ俺のターンだ」

「おいおい、さっきまで何も言えない位真っ赤になってた癖によく言うよ。それに、それを決めるのは【俺】じゃない。そして勿論、オレでもない」

「…ああ、それはそうだな。そこはちゃーんと、ウィードに決めてもらわないとな」

「お、おおぅ……」

 

 ここにきて二人の激突…かと思いきや、なんと視線は俺の方に。もう一方の腕もくろめに掴まれ、両方から逃がさないとばかりに力を込められ…追い詰められたのは、まさかの俺。い、いやぁ…これが俗に言う、両手に花ってやつかぁ。はっはっは、はっはっはっは……

 

「ウィード?正直に言えばいいんだからな?」

「ふふ。勿論オレは分かっているよ、ウィード」

 

 にこぉ…と何だか凄く圧のある笑みを浮かべるうずめと、一見穏やかな…けど奥底が全く見えない感じの笑みを見せるくろめの、ダブル責め。思わず後退った俺の脚はベットに引っ掛かり、そのまま座る形となる。逃げ場すらなくなった俺に、更にうずめとくろめが迫る。うーんピンチ、大ピンチ。というかこのままだと、更に迫られる気がする。そんな感じが、凄くする…!

 

(…くっそぉ…でも結局、やっぱり可愛いんだもんなぁ……)

 

 最終的にはそこに、好きだって気持ちに行き着いてしまうんだから、困ったもの。…いや、前言撤回。いつも最終的にそこに辿り着けてるんだから、俺は幸せだ。それはそれとしてやたら苦労する事も多いけど…だとしてもやっぱり、幸せだ。俺は心から、そう思う。

 

 

 

 

……え?この後どうなったかって?それは、まぁ…ご想像に、お任せします。

 

 

 

 

 翌日、俺達はイリゼと協力をした三人や、軍人の人達にも話を聞いた。それによって、大きな発見が…って事は特になかったが、今はなくても、後々何かあるかもしれない、と思って記憶に留めておく事にした。

 

「さぁて、いよいよいりっちを探す調査の始まりだ。気張って行こうぜ?」

「応よ。まずはやる気が肝心だもんな」

「まあ、それはそうだね。ないよりはある方がいいだろうさ」

「うんうん、やる気!元気!森脇!ってね!」

 

 そして今、俺達は神生オデッセフィア教会のシェアクリスタルの間…セイツが開いてくれた、天界への扉の前にいる。くるりと俺達の方は振り向いたうずめの言葉に、俺達は頷きを返す。

 まだやる事があるらしいセイツは、今回同行しない。だからここにいる、セイツを抜いたメンバーで出発する事になる。うずめ、くろめ、それに大きいネプテューヌ。全員頼れる仲間で、全員が心強いメンバーだ。そんな三人と共に、俺はイリゼを探す為に天界へ……

 

『…って、何でここに大きい(ネプテューヌ・ねぷっち)が!?』

 

 行く直前に、びっくりした。それはもうびっくりした。俺は勿論、うずめだって、くろめだって、驚きのあまり軽く飛び退いてしまった。

 

「ふふーん、わたしも話を聞いて志願したのさ!イリゼはわたしの友達でもあるし、わたしも皆の為に出来る事をしたかったからね!」

「そ、そうだったのか…けど、そういう事なら心強いな。戦闘面は勿論だが、大きいねぷっちは旅の経験も豊富な訳だしよ」

「でしょでしょー?…ところでわたし、結構前から一緒にいたよね?この部屋にも一緒に歩いてきたよね…?何で今更その反応を……?」

 

 頼もしい、といううずめの言葉に俺達が頷けば、大きいネプテューヌは機嫌良さそうな顔をし…それから俺達をじーっと見てくる。そんな大きいネプテューヌの視線から、俺達は目を逸らした。…何でって、それはまぁ…都合だよな、都合…。

 

「あはは…もう確認も済んでるし、特別言う事はないけど…皆、宜しくね?気を付ける事と、予定通りに戻ってくる事…それを約束して頂戴」

「あぁ、約束するよ。自分で言う事ではないけど、慎重に事を進めるのは得意だからね」

「俺も、皆程の強さはないからな。その分用心深く動く事には慣れてるつもりだ」

「それなら良かったわ。じゃあ…お願いね」

 

 小さく笑ったセイツが次に見せたのは、真剣な眼差し。イリゼを思う、姉の瞳。それに俺達は深く頷き、前に出る。

 何か特別な事をする訳じゃない。この扉を潜るだけの事。ただでも、自分にとって未知の場所っていうのは、緊張を抱かせるもので…そこで大きいネプテューヌが、更に一歩前に出る。前に出て、俺とうずめを見る。

 

「うずめ、ウィードくん、久し振りの旅…っていうか調査、頑張ろうね!」

「ああ、頑張ろうぜ!」

「確かに前の事を思い出すな。…俺もやれる限り頑張るぜ、大きいネプテューヌ」

 

 明るく真っ直ぐな声を発する大きいネプテューヌの言葉にも、俺とうずめは頷いた。俺達の返しを受けた大きいネプテューヌは満足気に笑って…それから、くろめの方へと向く。

 その瞬間、くろめはぴくっと肩を震わせる。大きいネプテューヌとくろめ、二人は無言で見つめ合い…そして、大きいネプテューヌは言った。

 

「えへへ。これでまた、一緒に頑張れるね。くろめ」

「……っ!…そう、だね…また、宜しく頼むよ。大きいねぷっち」

 

 さっき俺達に見せたのとは違う…本当に嬉しそうな、大きいネプテューヌの笑み。それにくろめはさっきより大きく肩を震わせ…笑った。ぎこちなくだけど、心からのものだって分かる笑みを浮かべた。

 イリゼを探す為の、天界の調査。探す場所としては、あまりにも広く…多分、一日二日じゃ成果は上がらない。どれだけ掛かるか分からない。…それでも、やるんだ。容易じゃない事なら、尚更…一歩ずつ、進んでいくんだ。これまで俺が、俺達が、してきたように。




今回のパロディ解説

・イノッチ
V6の元メンバーであるタレント、井ノ原快彦さん又は、おちこぼれフルーツタルトの主人公、桜衣乃の愛称の事。何気にどちらもアイドルですね。勿論男女の違いはありますが。

・「〜〜変身が得意な精霊〜〜」
デート・ア・ライブのヒロインの一人、七罪の事。ネガティヴなキャラという事で七罪を挙げましたが、メンタルの弱さという意味では、オリゼも七罪にちょっと似てる…かもしれません。

・「〜〜どこぞの絆巡る疾風さん〜〜」
キングダムハーツシリーズの主人公の一人、ヴェントゥスの事。正と負で二人に分かれた存在、というと彼及びヴァニタスを連想しますね。うずめくろめは単純に正負で分かれた訳でもないですが。

・「〜〜やる気!元気!森脇〜〜」
タレント、森脇健児さんのYouTubeチャンネルの事。前にやる気元気いわき、のパロディネタはやった覚えがあります。というか、森脇さんのは実際それが元ネタな気がしますね。

・『〜〜何でここに大きい(ネプテューヌ・ねぷっち)が!?』
なんでここに先生が!?のパロディ。前にもパロネタにした覚えがある…というか、「何でここに〜〜が!?」は、使える場面が多い為逆に意図せずパロディ状態になっている事もありそうです。
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