超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown   作:シモツキ

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第二十二話 零れ落ちた手掛かり

 最後の、軍を交えた激突になった場所。空中艦が不時着した場所。その他可能性のある場所を、一つ一つ調べてきた。地道で、着実に進んでいる…とも言い切れない、可能性を一ヶ所ずつ潰していくような形で、手掛かりを探してきた。

 調査、っていうと何かちょっと格好良いが、実際には成果ゼロ続きだった。もしやこれは、ひょっとしてこれなら…そう思えるものも時偶にあったが、その悉くが空振りだった。成果の上がらない調査、何かしら見つけられるだろうと思って始めたのに進展がなく、段々と後がなくなっていく焦燥感…十分に石を用意したのに一向に高レアが出ず、出たと思ってもすり抜けまくってる時のガチャの様な、嫌な感覚を抱かずにはいられない状況が続いていた。…我ながら変な例えな気もするが、そんな感じなんだから仕方ない。…ごほん。

 ただ…俺達は初めから、最も可能性のある場所を残していた。リスクも相応にある場所だからこそ、後に回していた場所があった。そして、遂に…その場所の調査へと、俺達は踏み切る。

 

「ここか…」

 

虹の橋を渡り終えて、俺はここ周辺の大地の中でも一際大きいこの場所をゆっくりと見回す。見回して、一つ息を吐いて…思った事を、言う。

 

「…ぱっと見、何もないな」

「だな」

「だね」

「某ガーディアンデッキの使い手位なんもないねぇ」

 

 何とも拍子抜けな光景に対する呟きに、三人全員が同意をする。俺はもう一度見回し、やっぱりぱっと見何もない場所など再確認し…本当にここで良いんだろうか、と少し不安になった。

 ここは、イリゼが入ったという『街』のある場所。より正確に言えば、入り口…と言うべきものがある場所。だが聞いていた通り、目で見て分かるものは何もない。本当に、何もないようにしか見えない。

 

「けど、見えずとも確かにこの場に『在る』からこそ、イリゼは街の中に入って、彼女達とも出会ったんだ。であれば調べる価値は十分に…いや、どこよりもある筈だよ」

「だよね。でも、見えないからうっかり街の中に入っちゃう危険性もあるし…押しちゃ駄目だよ?絶対に押しちゃ駄目だよ?」

「いや押さねぇよ…普通に洒落にならねぇって…」

「虹の橋の上でも、絶対に押しちゃ駄目だよ?」

「だから洒落にならねぇって!な、何を求めてんだねぷっちは…」

 

 ちらちらと含みのある視線を向けてくる大きいネプテューヌに、うずめが突っ込みで返す。…そういや大きいネプテューヌって、初めて会った時は落ちてきたんだよな…まさか、落ちる事に何か拘りでも…?

 と、ちょっと下らない事を考えていたところで、特務監査官になった際に貰ったインカムから声が聞こえてくる。

 

「あー、聞こえていますか?こちらゴッドイーター、私達は移動完了です」

「っと、こちらウィード。こっちも移動完了だ」

「ここからは、細心の注意が必要になるわ。お互い、慎重に行きましょ」

「だが万が一の時は、いつでも呼ぶのだぞ?仲間を、友を守る事もまた王の使命なのだからな!」

 

 ゴッドイーター、ニトロプラス、それにミリオンアーサーからの交信。彼女達三人、通称第三期パーティー組の三人は今、『街』の空間(話を聞く限り、レーダーに映らない場所と街の広さとは合ってないらしいが)を挟んだ反対側にいて、複数地点から調べていくという寸法になっている。

 更に近くには、第一期や第二期組の面々もいる。彼女達は緊急事態…例えばモンスターの強襲や、街の空間が広がっていた場合なんかに備えてこの大地には踏み入れずに待機をしている。

 これまでとは違う、フルメンバーでの行動と対応。可能性も危険性も高いからこその、万全の態勢での調査。

 

「んじゃ、調べていくとしようぜ。今度こそ、何か手掛かりを見つけてやろうじゃねぇか」

 

 ぱんっ、と右手の拳を左の掌に当てたうずめに、俺は頷く。見つけてやるさ、と俺も心の中で意気込んで、調査を始める。…まぁ、実際にやる事はこれまでと同じで、歩き回って何かないか探すだけだが。

 

「…ふーむ…調べる価値はあるとはいえ、こうもだだっ広いとどこから手を付けたらいいか分からなくなるな…」

「そういう時は、『ここから調べてみよう』じゃなくて、『ここは無いだろう』って視点で見ていくのも一手だと思うなー」

「消去法、という事か。流石はねぷっち、考え方が柔軟だね」

「でしょー?という訳でー、まず上!空が綺麗だね!でも何もなーし!次に下!草が生えてて土もあるね、虫がいたら捕まえたい!でも何もなーし!よーしこれで二つ減ったよ!」

((あ、これは駄目だ))

 

 まずは消去法で範囲を削るのも手だ、という大きいネプテューヌの発言に、くろめは納得を示す。俺とうずめも、すぐにそういう考えが出てくるネプテューヌの頭の回転に感心をし……たのも束の間、数秒後には「やっぱりネプテューヌはネプテューヌかぁ…」という感想になってしまった。…いや、ほんと消去法の発想は良いと思うけどさ…。

 

「っと、そういや看板があったって話だったよな。それ調べてみるか」

「あー、いりっちが妙な看板、って言ってたらしいあれか。行ってみようぜ」

 

 消去法はまあ、行き詰まった場合に改めて考えるとして、一旦話に聞いていた看板を探しにいく。分かっている範囲での地形データや『街』との境界が表示されている端末で今いる場所を確認しつつ、四人で見回しながら進む。

 

「うーんと…看板、看板…乾パンって、パンっていうけど実際はビスケットだよね」

「あぁ、あれは保存食である堅パンから取られてるらしいよ」

「ほへー、教えてくれてありがとねくろめ。それじゃあお礼に、ゼリーあげるよ」

「はは、ありがとうねぷっち……って待った、今ねぷのーとから出さなかったかい…?」

 

 道中でも周囲を見回し何か気になるものがないか探す。それと共に、くろめと大きいネプテューヌはまた会話を交わす。

 知識へのお礼として、大きいネプテューヌが渡したゼリー。それをくろめは取り敢えず仕舞おうとして…ぴたり、とその手が止まる。

 

「うん、そうだけど…駄目?」

「いや、その…虫の標本というか、籠代わりにしてるねぷのーとから出したゼリーってなると、昆虫ゼリー感が……」

「ひ、酷い…くろめってば、わたしが友達にお礼で昆虫ゼリー食べさせようとする女だと思っていたの!?」

「あ…ち、違うんだねぷっち、オレはそんなつもりじゃ……」

「……あれ?今出したのって、おやつ入れてるページからだったよね…?こっちの餌のページじゃなかったよね…?」

「ねぷっちぃ!?」

 

 がびーん!…という擬音が浮かんでいそうな顔で、声を裏返らせるくろめ。…皆さん、信じられますか?彼女これでも、一度は幾つもの次元や世界を巻き込む大災厄を起こした首謀者の一人なんですよ?……尤も、くろめの…『うずめ』の素はこんな感じな訳だが。

 

「おーい、ふざけてねーでちゃんと探せよ?いりっちは今も頑張ってるのかもしれねぇんだからな?」

「くっ…オレは別に、ふざけたかった訳じゃないからな……」

「ははは、分かってるよくろめ。…さて、多分イリゼの見つけた看板っていうのは、あれだろうな」

 

 不服そうなくろめに軽く声を掛け、それから俺は発見したものを…不自然にぽつんと立った、一般の看板を指で差す。

 聞いていた通り、看板が立っているのは街との境目ギリギリの位置。データも暫定的なものである以上、この付近では何より慎重に動かなきゃいけない。そしてそれは三人も理解していて、俺達は四人固まって動く。

 

「看板の内容は…んー、ただの注意書きって感じ?」

「みたいだな。危険だの入るなだのが書いてあるだけで、なんで駄目なのかは一切書いてねぇっぽいが…」

「…これは一体、誰が立てたものなんだろうね。女神のねぷっちの姿をした存在やクロワールなら、何故入るのを止めるような看板を用意するのか。この看板で逆に興味を引かせて誘い込もうと考えたのか。或いは別の第三者だった場合、その人物がどこに行ったのかも気になるし、もっと言えば街が彼女達の目論見で作られた訳じゃない、彼女達の行動前から存在していたものだっていう可能性も……」

 

 看板を読んだり触れてみたり、この看板の存在について考えて見たりと、少しの間ここに留まる。ついでにゆっくりと背面を覗いて見たりもしたが…後ろにも、特に何も書いていない。

 

「何か、あると思ったんだけどなぁ…」

「いーや、まだ何もないって判断するのは早計ってもんだぞ?確かに見た目で分かる情報なんてほぼねぇが、よく調べる事でまだ何か分かるかもしれないだろ?」

「それはまあそうだが…よく調べるって、どうするんだ?」

「…引っこ抜いて持って帰るとか?」

「こんなもん引っこ抜いてきたら、全員『えぇ…?』ってなると思うけどな…」

 

 流石はうずめというか、何というか…そんな感じの発言に俺は苦笑しつつ、一応看板を端末のカメラで取っておく。それから俺達は四人で、更には他のメンバーとも少し話して、境の部分をぐるりと一周する事に決める。

 

「うぅーん…こういう調査は中々これだ、ってものは見つけられないものだけど、それにしたって全然何にも見つからないね…」

「ぶっちゃけ想像と違うというか、勿論最後まで頑張るつもりだが…天界にある街の、その周辺に来るだけで俺は手掛かりを見つけられると思っていたのかなぁ…」

「確かに、いい加減成果が欲しいものだね。前に見つけたモンスターの一部もこれといった情報にはならなかったし、ここでも成果が上げられず仕舞いでは、オレも少し不安になる」

「やっぱ、看板持って帰るべきじゃねーか?それか、看板の下に何か埋まってる可能性も…あ、そうだよ。ひょっとしてあの看板は、危険を知らせる物…と見せかけて、実は地面に埋まっている何かの場所の目印として立てられている…みたいなパターンあるんじゃね?」

 

 ここならきっと、って期待をしていた分、その期待が空振りに終わりそうだと思うと「ならどうしたら…」って焦りが心の奥底から滲んでくる。うずめはまだ前向きで、看板に関して一つ可能性を思い浮かべているようだが…うーん、それもどうなんだろうか。そんな、タイムカプセルを埋めてるんじゃあるまいし…。

 

「地面かぁ…カセキ岩とか宝石岩とか埋まってたらどうする?何なら人も一緒に埋まってて、岩を賭けて勝負になるかもしれないよ?」

「そうなったら俺はどっから突っ込めばいいか分からねぇよ…。けど、ほんとあの看板気になるんだよなー。滅茶苦茶不自然だから、その分色々想像しちまうっていうか…」

「……あ。…なぁ、くろめ。あんまり気乗りはしないかもしれないってか、嫌なら即断ってくれていいんだが…くろめの力で何とかなったりしないか?」

「妄想能力の事かい?…ウィードが望むなら、上手い事手掛かりが見つかる…或いは向こうから女神のねぷっちの姿をした存在が来てくれる都合の良い展開を思い浮かべてみてもいいよ。ただ、オレ的にはあまりお勧め出来ないかな」

「その口振りだと、手段として問題がある…って感じだな。どういう事だ?」

「まず後者、都合の良い行動をさせる…というのは、そもそも上手くいく見込みが薄い。オレの、『うずめ』の妄想能力は具体的に思い浮かべる事が必要になる以上、他者の行動に直接干渉するのは難しいんだ。細部まで考えなくちゃ成立しないが、人の行動…それも一瞬ではなく『一連の流れ』全体を徹頭徹尾、意識的に細部まで想像するというのは、考えても考えてもキリがない事だからね」

「そういうものなのか…うん?けど確か、うずめの妄想は前に行動を操作していたような……」

「それは意識と無意識の差、だろうね。無意識というのは、案外広く、そして深く考えているものなんだよ。そして、前者だが…変質した今のオレの妄想能力で具現化するものは、例外なく『歪み』が伴う。そしてもし、手掛かりの持つ情報に歪みが生じてしまった場合、それがミスリードとなって誤った方向へ進んでしまうかもしれないとオレは考えている。不甲斐ない話だが、オレはどこがどう歪むかを把握する事も出来ないから…ね。…分かってもらえたかな?」

 

 うずめと大きいネプテューヌのやり取りを聞く中で、ふと思った事をくろめに訊く。くろめの妄想能力なら…と思った訳だが、どうやらそれも現実的ではないらしい。

 いや、でもまだ他に打つ手がない訳じゃない。そもそも手掛かりがどこにもないと決まった訳じゃない。世の中で起こる事件の殆どは、たとえ用意周到に進められたものでもどこかしらに、何かしらで証拠が残るものなんだから、話を聞く限り相手を想定外の事態に追い込んだイリゼに繋がる手掛かりはきっとある。…と、思っていたんだが……

 

『…だ、駄目だー……』

 

 ぐるりと一周をして、一周してしまって、再び看板の前に来たところで俺達は揃って肩を落とす。境に沿って一周した事で分かったのは、やっぱこの範囲内に街があるというのは無理があるな…って事位。天界と街とは違う次元になっているのか、空間が歪んでいるのか、どういう事かは分からないが、ただの不可視な街って事はないんだろう。…が、そこに確信を得たとしても、イリゼにゃ一切繋がらない訳で…はぁ、こうなってくるともう、根本的な問題に目を向けなきゃいけないかもしれないな……。

 

「…まあ、そういうのに向いた面子感はないよな…俺含めて……」

『……?』

 

 連日共に天界を歩き回ってきた三人の事を順に見て、俺は乾いた笑いを漏らす。この面子にしろ女神にしろパーティーにしろ、まー大概変人ばっかりだしサラダボウル状態な訳だが、残念ながら探偵は特にいないのだった。

 

「…ふぅ。十中八九何もないだろうけど、この状況じゃ何もやらないよりはマシか…。【俺】、看板の下を掘ってみるつもりなら協力しよう」

「おいこら、微塵も期待してねぇみたいな声音で言うんじゃねーよ。そんな言い方するなら、もし自己増殖する赤い生体物質が出てきても分けてやらねーからな?」

「出る訳あるか、ここをどこだと思ってるんだ【俺】は…っと、悪いが前言撤回させてもらおう。そろそろ一旦合流する時間だ」

 

 妙なやり取りをうずめとしていたくろめは、ふと時間を確認し、全員へと目をやる。言われた俺も端末で時間を見て、確かにパーティーの皆と一旦合流すると決めていた時間が近付いてるな、と教えてくれたくろめに頷く。

 めぼしい発見はなかったが、仕方ない。もしかすると向こうのチームは何か見つけたかもしれないし、後方から見ていたメンバーが何かに気付いたかもしれない。希望的観測ではあるが、それ位の事は考えて……

 

「おわっ」

「おっと、大丈夫か?」

「あ、うん。ありがとね、ウィードくん」

「お、おう…(し、質量が……)」

 

 ちょっとした地面の窪みに足を取られたのか、躓いた大きいネプテューヌ。隣にいた俺は咄嗟に身体を回転させつつ両腕を出して、ネプテューヌの肩を掴む事でその身体を支える。

 その瞬間、止めた瞬間にたゆんっ!…と大きく躍動をしたネプテューヌの胸元。にこりと笑ったネプテューヌは気付いていない…というか気にも留めていないようで、けれど男としては非常に目の毒。比較する訳じゃないが、別に大きい方が良いって言う訳でもないが、うずめやくろめでは多分実現不可能なレベルの躍動がその瞬間起きて…しかも何か感じ取ったのか、うずめとくろめがじとーっとした目を向けてきたもんだからさあ大変。これは不味い、ここで下手を打てば三人全員から白い目で見られる、と俺の頭はこの場を乗り切る為にフル回転で思考を始め……だが俺が答えを出すより先に、大きいネプテューヌが声を上げた。

 

「あれ?…ウィードくん、もしかして今わたし、ウィードくんに怪我させちゃったりした…?」

「へ?いや、してないが…なんでだ?」

「いや、ほら…これって血の痕じゃない…?」

 

 突然なんだ?と困惑する俺の前で、大きいネプテューヌは下を指差す。指の向いた方を見てみれば、確かにそこには赤い点…乾き切ってはいるが、血痕らしきものがあった。

 それが血痕じゃないか、という思考には即座になった。大きいネプテューヌが「血の痕」と言わなかったとしても、多分すぐにそう思っていた気がする。…なんたって、同じようなものをつい最近見たばかりなんだから。

 

「…うずめ、これは……」

「あぁ、多分これもいりっちの……」

「…………」

「…………」

『……(イリゼ・いりっち)の…?』

 

 くろめと大きいネプテューヌが怪訝な顔をする中、俺とうずめは顔を見合わせる。

 行方不明になる前、最後の戦いがあった場所にも、イリゼの血痕らしきものはあった。それがあるから、俺もうずめもここにある血痕もイリゼのものなんじゃないか、と考えた。けど、ここと向こうとは、そこそこ距離が離れている。ここに向こうのような戦闘の跡がない以上、ここでも戦闘が起きていたとは考え辛い。

 それなのに、ここにも血痕が付いている。どっちもイリゼの血痕なら、って前提だが、血痕があるのなら、ここでも…『街』の前でもイリゼは流血をしていたって事になる。ここで怪我をした?血の流れるような何かがあった?それとも…イリゼは向こうからここまで移動してきた?…いいや、違う。どれも可能性はゼロじゃないが、最もあり得る、状況的に最も可能性が高いと言えるのは……

 

「…こりゃ、皆に真っ先に伝えなきゃいけねぇ事が出来たな」

「だな…。けど、問題はこっからだ。もしそうだっていうなら、この先の道も多分楽じゃねぇ」

「ちょ、ちょっとー?二人だけで分かったような顔してないで、わたし達にも教えてよー」

「…むぅ……」

 

 どうやらうずめも同じ考えに至ったようで、俺達は頷き合う。続けて大きいネプテューヌからは気になるという視線を、くろめからは何やら不満そうな視線をそれぞれ向けられる。

 勿論、自分が思い至った事を隠すつもりなんてない。話し、情報共有をし、俺やうずめの考えが本当に合っているかどうかを確かめる。そしてその上で、今後の事を考えていく。イリゼを助ける為の…次の事を。

 

 

 

 

「──イリゼは、天界の街の中にいる?」

 

 日々調査を重ねてくれているうずめ達からの、これまでで最大最高の報告。その報告を聞いたわたしは、思わずおうむ返しにしてしまった。

 

「実際にいりっちを見た訳じゃねぇから、あくまでその可能性があるって段階だけどな。けど、俺達はそう思ってる」

「…どういう事なのか、聞かせて頂戴」

 

 真面目な顔でわたしを見てくるうずめに、言葉を返す。イリゼの居場所が(まだざっくりとだけど)分かったかもしれない。それはわたしにとって、凄く大きな可能性で…けれど自分でも少し驚く位には、わたしは冷静だった。街から何とか脱出したイリゼが、また街に戻っている…そんな予想の斜め上を行く可能性に、気持ちの昂りよりも驚きや疑問が上回ったからなのかもしれない。

 

「今日の調査で、俺達は血痕を見つけたんだよ。いりっちのものじゃねぇかと思う血痕がな」

「血痕…うん、あり得るわね。話じゃイリゼは相当な出血をしていたようだし。でも、どうしてそれがイリゼの血痕だと?」

「いりっち達とねぷっちの姿をした相手側との戦闘があった場所でも、同じように血痕が残ってたからだ。…まあ、生身で戦ってたのはいりっちだけじゃねぇし、今思えばいりっちの血痕じゃない可能性もあった訳だが…ほんといりっちは、思い込みとか先入観を与えるのが得意だよなぁ」

「いや、まぁ…こんな形で評価されても、イリゼはぽかーんとするだけでしょうけどね…」

 

 イリゼの手掛かりを見つける、そこでイリゼが戦っていた…そういう思考や前提条件に無意識の内に誘導されて、イリゼの血だと最初から思い込んでいた。苦笑しながらうずめはそういう風に言って、わたしはそれに肩を竦める。他の皆も軽く苦笑いをし…話を続ける。

 

「んで、俺とウィードは思ったんだよ。戦闘のあった場所と、そうじゃない場所の両方に、いりっちの血痕が残ってる。これはつまり、いりっちが移動してきた…って事じゃねーのか、ってな」

「けど、イリゼが自力で移動してきた…ってのは考え辛いだろ?ただでさえぼろぼろだったところに空中艦の一斉射を受けて、更にそこからそこそこ離れてる二点間を移動したのか…って話になるし、移動出来るだけの余力があったなら、扉を開いて自力で下界に戻ってくればいいだけなんだからよ」

「それについては、強引に天界と下界を繋げるまでは開こうとしても開けなかったらしいし、開けるようになってる、って事を知らなきゃ再度開こうとはしないでしょ、とも言えるけど…確かにそうね、一理あるわ」

 

 引き継ぐ形で追加の説明をしてくれたウィードに、少し考えた後に頷く。どうして開けなくなっていたかは分からないけど、そこから開けるようになったのは、強引に天界と下界を繋げた…繋がるだけの衝撃が走った事で、開けないようにしていた『何か』が吹き飛んだんじゃないか…というのが、イストワールの見立て。

 二点間をイリゼは移動している。でもイリゼが自力で、自分の意思で移動したとは考え辛い。そしてうずめ達は、クロワールが待ち構え、ネプテューヌの姿をした存在も現れた街の中に、イリゼがいるんじゃないかと考えている。…そこまで説明されれば、もう考えなくても分かる。思い浮かぶ可能性は…一つ。

 

「…だから、イリゼは移動したけど、イリゼが移動した訳じゃない。イリゼは移動させられた…街の中に連れていかれた、っていう事ね」

「そう。これが、わたし達が調査で掴んだ可能性。あり得ない話じゃ、ないでしょう?」

「大きいねぷっちの言う通り…ってこら、俺とヴィートの発見を自分の手柄みたいに言うなよねぷっち…」

「いやでも、街の側で血痕を見つけられたのはわたしがあそこで躓いたからでしょ?それに調査は皆でやってたんだから、成果も誰かのものじゃなくて、皆のものなんだよ、うん」

「言ってる事はその通りだけど、それは大きいネプテューヌが堂々とした様子で言う事ではないと思うんだよなぁ…」

 

 半眼で突っ込むうずめとウィードの言葉、そのどちらを受けてもふふん、とした様子を崩さない大きいネプテューヌに、わたし達は揃って苦笑い。まあでも、大きいネプテューヌの言ってる事は本当にその通りよね。発見に至ったのはうずめとウィードの二人だけだったとしても、調査を頑張ってくれたのは、皆同じなんだもの。

 

「こほん。ウィード達から話を聞いて、全員で二点間を見て回った結果だが、間にある他の大地でも、何ヶ所かで血痕を見つけられたよ。だからオレとしても、十分あり得ると思うが…どうかな?せいっち」

「裏付けも取れてる、って訳ね。…えぇ、わたしも信じるわ。賭けるわ。二人の…皆の掴んだ、可能性をね」

 

 少しだけ、考える。明らかにおかしな部分、不自然な部分がないか考えて……くろめに、頷く。皆に、わたしの答えを示す。…けど、天界の『街』ね。これは、やっぱり……。

 

「よっしゃ、それじゃ今度こそこれからの話だな。街の中にいりっちがいる可能性が高いんだ、向こうに気付かれない内にさっさと突入を…って、言いたいところだが……」

「入ったら普通の手段じゃ出られないのが厄介だな。イリゼ達が脱出に使った扉が、今も使えるとは限らねぇし。…イストワールさんの力なら、出られるのか…?」

「イストワールの力もクロワールの力も同種である以上、出られるかどうかで言えば出られるだろうね。けど、他にも気にするべき事は色々とある筈だよ。広い街の中でどう探すか、向こうに気付かれて再度逃げられるのを防ぐ為にはどうすればいいか、そもそも誰が突入するか……」

「んー、どう探すかについては、また血痕を辿ればいいんじゃないの?…あ、でも『こっからここの間にある』…って分かってなきゃ難しいか…わたし達が見つけた血痕と血痕の間も、結構離れてたし……」

 

 どこにいるか分かったなら、次はどうやって助けるか。そんな自然な流れに乗って、うずめ達は言葉を交わす。

 そう、全くその通り。推測の通りなら、イリゼは向こうの手の内にある訳だし、街のどこか、じゃまだ場所を特定出来たとは言い切れない。ここから先の、どう動くかを考えるのは当然の事で…だけどその前に、とわたしは皆に待ったを掛ける。

 

「…皆。隠していた訳じゃないけど、わたしも皆に伝える事があるわ」

「へ?…あ、まさかわたしに続いてうずめが原作シリーズの新作主人公に抜擢された話!?」

「違うわよ!?な、何で今その話をすると思ったの!?」

「いやほら、もうすぐ発売だし」

「抜擢された話なら、むしろその情報が出たタイミングでするでしょ…というか久し振りの時事ネタね…」

「新作か…そういやぬらりん達に最近会ってなかったな。今回の事が終わったら、会いに行くか…」

「ぬるーっとフラグ立てるなよ、うずめ…いや、フラグとしちゃ内容が弱いからセーフか…?」

 

 らしいといえばらしいけど、一撃で話を脱線させる大きいネプテューヌの返しに辟易。わたしはがっくりと肩を落とし…全くもう、と肩を揺らして気を取り直す。

 

「そうじゃなくて、街への突入の話よ。…街への突入は、わたし達も考えていたわ。わたし達、各国女神の皆でね」

「…各国女神の皆で?せいっち、各国には今も調査に関して待ったをかけていたんじゃないのかい?」

「えぇ。でもそれは調査の話で、街への突入となれば話は別よ。作戦の内容的に、戦力の出し惜しみは出来ない…というより、下手に戦力を限定すると、こっちに正面突破じゃない意図があるんじゃ…って警戒されちゃう危険があるから、向こうが策を講じてきても真っ向から突っ切れる位の戦力を投じる方が堅実なのよ」

「そうか…そういう事なら納得だよ。そういえば、そもそも皆を止めていたのも私情ではなかったね」

「その通りよ。『皆まで下手に調査に動くのは危険』っていうのは、こっちが後手に回っている状態だったからで、先手を取れればまた話は変わってくるもの」

 

 先日話した事、決まった事を、皆へと伝える。説明をすれば、くろめはすぐに理解をしてくれる。…というか、わたしから上手く情報を引き出してくれている。おかけでうずめ達もふむふむ、と頷いていて…やっぱり元黒幕、元ラスボスポジの女神は違うわね。こっちのマジェコンヌも、イリゼ達にかなり信頼されてるし。

 

「んーと、つまり皆でわたしの…わたしの?…偽者っぽい相手のところにカチコミかけようって事だよね!女神の皆と今から一緒に、これから一緒に殴りに行くんだね!」

「いやそんな、二人してマイクの前で歌ってる感じで行く訳じゃないわよ…しかも、カチコミって……こほん。まあでも、気分的にはそんな感じよ。どんな目的や思いがあろうと、イリゼにしてくれた事の落とし前として、一発殴る位はしないと気が済まないもの」

「…殴るだけでいいのか?」

「まさか。まず殴る、取り敢えず殴る。スタート地点はそこからって事よ」

 

 そんな訳ないでしょう?とわたしが返せば、訊いてきたウィードは苦笑い。一方で隣のうずめは頷いていて、それから持ち上げた拳を握る。

 

「いりっちには恩があるし、第一友達だ。俺だって、いりっちが戻って来れたら全部水に流そう…だなんて考えちゃいねぇ。…協力してもらうのは調査までだ、なんて言わねぇよな?」

「あら、さっきのわたしの言葉を聞いてなかったの?作戦の内容的に、出し惜しみは出来ない…だからわたしは、初めから皆の事も戦力として考えていたわよ?」

「それは良かった。だったらオレも、ここからも全力で力を貸すとしよう」

 

 皆は変わらず協力の意思を示してくれている。戦力としても、気持ちとしても、凄くありがたいし…わたしはそんな皆を、頼りにしたいと思っている。

 だけどそれは、単純な戦力じゃない。皆なら単純な戦力としても頼もしいけど…今ここにいる皆だからこそ頼める事、頼みたい事が、わたしにはある。

 

「…ねぇ皆、皆にはやってもらいたい事があるの。はっきり言って予想…ううん、想像に過ぎない、だから徒労に終わるかもしれないし、気持ち良くやれるかどうかも分からない事だけど…それでも頼んだら、やってくれる?」

 

 佇まいを正し、皆を見つめる。それが重要な事だと、皆は即座に理解をしてくれて、わたしを見つめ返してくれる。

 勿論、内容を言わずに答えを求めるつもりなんてない。頼みたい以上は、相手が誰であれきちんと説明するのが礼節ってもの。

 そしてわたしは、皆へと伝える。わたしの考えている事を。わたしには出来ない、他の女神の皆にも出来ない…今の皆だからこそ、頼める事を。

 

 

 

 

 大上段から、急降下に合わせて振るわれる刃。両脚で地面を踏み締めて、M.P.B.Lを掲げて受ける。峰側を左手でも持つ事で、確実にその一太刀を受け止める。

 

「よく、受け止めた…わねッ!」

「これ位は、ねッ!」

 

 ぶつかり合う得物同士を間に挟んで、上から向けられるお姉ちゃんの眼差し。せめぎ合いになった直後、お姉ちゃんは身体を下に振って、M.P.B.Lを潜る形で両脚での蹴りを放ってくる。

 それをわたしは、踏み切り真後ろへ跳ぶ事で回避。跳びながら銃口を向け、着地と同時にトリガーを引く。三点バーストの光弾でお姉ちゃんを撃つ。

 

(やっぱりこの距離じゃ避けられるよね…なら……!)

 

 偏差射撃を仕掛けるわたしだけど、お姉ちゃんは前も後ろも上も下も、細かく斜めに動く事で上手く射撃を躱していく。わたしの狙いから、微妙にずれた位置取りで躱しながら着実に距離を詰めてくる。

 だったら、とわたしはタイミングを見計らい、次の射撃をする…というタイミングで射撃を光芒での照射に移行。避けた瞬間に合わせる形で、薙ぎ払いでお姉ちゃんに迫っていく。

 けど、お姉ちゃんだってこれ位じゃ動じない。一度薙ぎ払いを避けた後は、更に照射で追うわたしに対し、薙ぎ払いが追い付くより先に一気に接近を仕掛けてくる。ここまでにある程度近付いていた事もあって、あっという間に肉薄をする。ただ近付くだけじゃなく、既に攻撃動作にも入っている。そんなお姉ちゃんを目の前に捉えたわたしは、真っ直ぐ見据えて…前に、出る。

 

「ふッ…でやぁああぁっ!」

 

 間合に入る寸前、遠隔攻撃をしていたわたしが自分から距離を詰めてきた事に、流石のお姉ちゃんも目を見開く。そのお姉ちゃんに向けて、わたしは左手でギア・ナックル。炎を纏った拳を突き出し……ギリギリのところで、わたしの拳は空を切った。

 寸前のところで、わたしを飛び越えるように飛んで躱したお姉ちゃん。でもわたしも即座に反転を掛けて、照射をとめていたM.P.B.Lで振り向きながら横薙ぎ一閃。同じように反転からの袈裟懸けを掛けていたお姉ちゃんの大太刀と、刃同士でまたぶつかり合って…お姉ちゃんの、気配が緩む。

 

「…見事な反射と反応ね。近距離でも遠距離でも脅威さが殆ど変わらないのは、相手にすると恐ろしいものだわ」

「ありがと、お姉ちゃん。けどお姉ちゃんの反応速度だって、やっぱり凄いと思うな。だってここだ、ってタイミングで仕掛けても、悉く避けられるか防がれるかしちゃった訳だし」

「えぇ、守護女神だもの。…さてと、この位にしておくとするわ。ありがとう、ネプギア。わたしに付き合ってくれて」

 

 大太刀を下ろして微笑むお姉ちゃんに、わたしも笑う。わたしもわたしで緊張を解いて、数歩下がりながらゆっくりと息を吐く。

 今わたし達がいるのは、プラネテューヌの生活圏外。お姉ちゃんにモンスターの討伐クエストを誘われて、討伐対象を倒した後にはお姉ちゃんからのお願いを受けて模擬戦もした。討伐クエストからの連戦だった訳だけど…流石お姉ちゃん。まだ余裕って感じだなぁ…。

 

「…けど、ネクストフォーム無しで良かったの?確かネクストフォームってまだ完全に使いこなせてる訳じゃないんだよね?」

「…良いのよ、これで。確かに強大な力を勿体ぶるのは良くないけど、得てして大きい力っていうのは、それに見合った地力がなくちゃ、振り回されたり良くも悪くもその力ありきで戦おうとしちゃうものだもの」

「…つまり、本来の…っていうか、元々の実力を十分なものにする事が、ネクストフォームを使いこなす事にも、より強くなる事にも繋がる…って事?」

「そういう事。ネプギアは理解が早いわね、偉いわ」

「えへへ…」

 

 褒められたわたしは嬉しくて、自然に頬が緩む。それを見ていた(と思う)お姉ちゃんは少しの間考えるような顔をして、何だろう…と思った直後、わたしの頭を撫でてきた。

 いきなり…ではないけど撫でられて、初めに感じたのは恥ずかしさ。でもすぐに嬉しさも湧き上がってきて、わたしは更に頬が緩むのを感じる。

 

「…………」

「……?…お姉ちゃん?」

「あ、あぁ…いやその、今更?…って思うかもしれないけど…ネプギアはしっかり者なのに、割とこういう事には抵抗…ないわよね」

「え?あ…勿論わたしだって、誰にでも撫でられたら同じような反応する訳じゃないよ?」

「それはそうよね。うん、変な事言ってごめんなさい」

「ううん、気にしないで。わたしが撫でられてもいいかなって思うのなんて、お姉ちゃんと…コンパさんとアイエフさんと、イリゼさんと…んー、いーすんさん…もいいよね…パーティーの中でも、大人っぽい皆さんなら別に嫌じゃないし、ノワールさんやベールさん、ブランさんだって……」

「えと…ネプギア…?本当に、誰が相手でも同じような反応する訳じゃないのよね……?」

 

 ちょっと不安そうな顔をするお姉ちゃんの返しを受けて、わたしは我に返る。た、確かに今のは良くなかった…でも、わたしの周りは良い人とか尊敬出来る人とかが沢山だし、そういう人に撫でられるなら嫌じゃないっていうのは、普通…だよ、ね…?

 

「ま、まあそれはともかく…折角だから、もう少し付き合ってくれるかしら?」

「うん、いいよ。次は何をするの?」

「次はこれからきっと必要になる戦いに向けて、貴女の理解力や分析力、戦術眼なんかを確かめておきたいわ」

 

 模擬戦の後だから、新しい技の開発とかかな?…と思っていた、協力する側だと思っていたところへの、意外な回答。予想外の答えにわたしは戸惑い、頬を掻く。

 

「え、っと…それは、どうしたら……」

「別に、難しい事じゃないわ。教会に戻る道中で、貴女から見た女神の皆の強みと弱み、どういう戦法や傾向を持つかを話してくれればそれでいいの。どれだけ皆を分かっているか、どれだけ把握しその在り方を捉えられているか…そこにはさっきわたしが挙げた要素が詰まっていると思わない?」

「それは、確かに…そっか、そうだよね。何となく、相手に対する見方だと思っていたけど、そういう力って味方と協力する時にも発揮されるものだもんね」

 

 納得のいったわたしは、お姉ちゃんに頷く。それからその場を後にして、空を飛びつつユニちゃん達の事を順に話していく。

 お姉ちゃんは、わたしの力を確かめておきたい…って言っていたけど、話す中で、わたし自身皆の長所や得意なものを再確認していく事が出来た。もしかしたら、それも含めてお姉ちゃんはわたしに言ったのかもしれない。

 

「…だから、相手の調子を崩すって意味ではイリゼさんとも似てるっていうか、やり方が違うだけで狙いはほぼ同じなのがセイツさんだと思うんだ。…ユニちゃん達やノワールさん達に比べると、一緒に戦った回数が今はまだ少ないから、多分…ではあるんだけどね。…って感じで、どうかな?」

「ばっちりよ。というか、予想以上に一人一人丁寧に話してくれて嬉しいわ。…よく、見てるのね」

「わたしの場合、状況に合わせて前に出る事も後ろで戦う事もあるから、自然に皆が見えてくるって部分が大きいんじゃないかな。お姉ちゃんの事だって、よく見えてるよ?」

「ふふ、そうかもしれないわね。…うん、これだけ聞ければ十分よ」

 

 女神候補生の皆から始まって、お姉ちゃん以外の守護女神の皆さんの事を話して、セイツさんの話に続いて…と八人分話したところで、十分だとお姉ちゃんは言った。…正直、自分で自分の分析をしたり、お姉ちゃんの目の前でお姉ちゃんの話をするのは恥ずかしいなぁと思っていたから、自分含めてわたしが知っている、わたし達が出会ってきた全員を…とかじゃなくて、セイツさんまでで終わってちょっとほっとした。

 それから戻ってきたわたし達は、プラネタワーの敷地内に着地する。女神化を解いて、出入り口へと歩いていく。

 

「あ、ネプギアー。お腹空いてない?」

「え?うん、空いてるよ。もしかして、何か作ってくれるの?」

「まっさかー。わたしが作れると思う?」

「ううん」

「お、おおぅ…即答で否定されると、その通りでもまあまあダメージあるものだね…」

「あはは、冗談だよお姉ちゃん。お腹空いてるなら、何か作ろっか?」

「もう、ここまで付き合ってくれたネプギアに、何か作らせるなんてお姉ちゃんのする事じゃないでしょ?」

 

 すぐ作れる、簡単なものなら…と思ったわたしだけど、お姉ちゃんは首を横に振る。その後携帯端末を取り出して、何かを調べ始める。

 

「えー、っと…こうして……実はさー、ちょっと行ってみたいお店があるんだよね」

「行ってみたい…あ、それってもしかして…」

「そう。このプラネテューヌの女神の気分を体験出来る、ケモ耳プレイングマネージャーを筆頭に軍人や女王が働く新感覚のカフェ、その名もプラネテューヌの天蓋──」

「いやそれどこのお店!?そ、そんなお店プラネテューヌに本当にあるの!?」

 

 ひょっとして、少し前にわたしが扉越しにお姉ちゃんと話したあの件かな?…と思ったわたしだったけど……全然違うところだった。予想の斜め上を行くというか、明後日の方向に吹っ飛んでいくような返しだった。

 

「まあ、全部冗談なんだけどね」

「なんでそんな冗談を…えぇと、本当はどこ行きたいの…?」

「プリン屋さん」

「プリン屋さん…?お菓子屋じゃなくて、プリン屋さん…?」

 

 え?…と思ってお姉ちゃんが見せてくれた画面を見ると、本当にプリン屋さん…プリン専門店はあった。うん、確かにお姉ちゃんなら行ってみたくなるよね。

 

「あ、このプリンわたしも食べてみたいかも…」

「でしょ?ネプギア、どう?一緒に行かない?」

「ふふっ、勿論。行こっ、お姉ちゃん」

 

 話をした事で段々とプリンを食べたくなってきたし、そうでなくても用事がない時にお姉ちゃんが誘ってくれたんだから、わたしに断る理由なんてない。だからわたしは行き先をプラネタワーの中からそのお店へと変えて、お姉ちゃんと一緒にプラネタワーの敷地から出る。

 

「ぷっ、りっ、んー。ぷっ、りっ、ん〜♪」

「ご機嫌だね、お姉ちゃん」

「運動した後の甘いものは格別だし、それがプリンなら尚更なのは間違いなしだからね!…モンスター討伐と模擬戦を運動って言うかどうかは別として」

「そっか。…ね、これからも訓練がしたくなった時は呼んでね?わたしがいつでも、力になるから」

 

 後ろで軽く指を絡ませる形で手を組みながら、隣を向いてわたしは言う。協力すると、力になると。

 それを聞いたお姉ちゃんは、目を丸くする。そのままわたしの事を少しの間見つめて…それから、言う。

 

「…ありがとう、ネプギア。お姉ちゃんが、妹に力になってもらうなんて、変かもだけど…宜しく、ね」

 

 少しだけ躊躇うというか、色んな気持ちが混ざり合ったような、そんな表情をしたお姉ちゃん。でもその後は、わたしの思いに応えてくれて…わたしはお姉ちゃんに、しっかりと頷く。

 あの後改めて話し合って、今は突入に関する計画も進んでいる。それに向けて、わたしもやるべき事、頼まれた事がある。そして…今ここにいる、隣にいるお姉ちゃんを支えたい思いも、ある。だからわたしは、どれかじゃなくて、どれも精一杯の力を尽くせるように…頑張るんだ。




今回のパロディ解説

・「某ガーディアンデッキの使い手〜〜」
デュエマシリーズに登場するキャラの一人、南藻奈已の事。なんもない、と言えば彼ですね。因みに私は種族の中では(光の)エンジェル・コマンドが好きです。

・「〜〜カセキ岩とか〜〜岩を賭けて勝負〜〜」
カセキホリダーシリーズにおける要素の一つの事。地面に埋まってたり、勢い良く飛び出てきたり、そもそも持って帰らずずっと地中で待ってたりと、元ネタからして突っ込みどころが色々ありますよね。

・〜〜変人ばっかりだしサラダボウル状態〜〜
変人のサラダボウルのパロディ。というか実際、ネプテューヌシリーズは色んな次元が出てきますし、Originsシリーズはコラボした作品も結構あるので、そういう意味でもサラダボウルかなと思います。

・「〜〜自己増殖する赤い生体物質〜〜」
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONにおける要素の一つ、コーラルの事。天界にコーラルがあったら、そりゃまあどの国も確保に動きますね。軍拡の進む今の信次元にとっては非常に助かる物質です。

・「〜〜うずめが原作シリーズの新作主人公に抜擢された話!?」
原作シリーズの一つ、爆走次元ネプテューヌVS巨神スライヌの事。これを書いている(投稿する)段階ではまだ未発売ですが、もう少ししたら『既に発売した作品』という事になりますね。

・「〜〜今から一緒に、これから一緒に殴りに行くんだね!」
YAH YAH YAHの歌詞の一部のパロディ。でも実際のところ、セイツはこの歌の様に明るい感じではなく、かなりの怒りを抱いて殴りに行く事でしょう。

・「〜〜このプラネテューヌの女神〜〜プラネテューヌの天蓋──」
アンジュ・リリンクにおけるイベントの一つのパロディ。勿論そんなお店はありませんが、もし女神の体験が出来るとしたら……割と普通の生活もしてるので、案外拍子抜けなお店になるかもですね。
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