超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown 作:シモツキ
光に、シェアエナジーに包まれていく部屋の中。この場に充満していた何かを覆い隠すように、上書きするように…空間ごと塗り替えていくように、光と共に変貌していく。
この感覚を、わたしは知っている。あの時もそうだった。多分、全く同じではないけれど…この力に満たされる、満ち溢れていく感覚は…間違いない。
「凄い…。これは…これって……」
うずめとくろめ。二人が力を合わせ、力を重ね合わせ、発動したとっておきの技…シェアリングフィールド。シェアエナジーに満ちた空間の中で、ネプギアは感嘆の声を漏らす。…あぁ、そっか…直接感じた事はなくても、貴女もこれも知っているんだものね。
「驚きましたわ…話には聞いていましたが、まさかこれ程のものとは……」
「正に切り札ってところか…ったく、味な事をしてくれるぜ」
「えぇ。本当に凄いわね、このシェアリングサークル…って、うん?」
皆も満ち溢れるシェアエナジーを感じて、驚き混じりの笑みを浮かべる。そしてノワールは、シェアリング『サークル』と言い…そこでノワールも、皆も気付く。名前も、範囲も、皆の知る「うずめのとっておき」とは違う事に。
「ふふーん、サークルじゃなくてフィールドだよ〜♪うずめ一人だったらうずめの周りにしか展開出来ないけど、くろめとだったらこんなにも広げられるんだ〜♪」
「ぎあっちが見せてくれた、あの世界でのデータを参考に、うずめと一緒に完成させたんだ〜♪凄いでしょ?くろめも凄いでしょ?」
その疑問に答えるように、自慢気に二人は言う。一人ではない、二人だからこそ出来る事なのだと、シェアリングフィールドの存在を誇る。
シェアリングフィールドは、完全にこの場を包み込んだ。溢れんばかりのシェアエナジーを感じさせてくれるだけじゃなく、わたしが期待していた通り、ずっと渦巻いていた違和感を消し去ってもくれた。
即ちそれは、今の今までわたし達が全力を出せなかった、出すに出せないと感じていた状況が覆ったという事。それだけでも十分な効果、逆転の一手で……けれど、それだけじゃない。
「…あっ、モンスターがへろへろになってる!」
「ふぅん…理由は分からないけど、モンスターにとっては居心地の悪い空間みたいねぇ。だったら……」
「ここからハンゲキ開始、ってことね!」
「がんばる…!(ふんす)」
「さぁて、それじゃあ…やるわよ、皆!」
真っ先に気付いたピーシェが声を上げ、プルルートや女神候補生の三人が続く。その言葉通り、これまでは引っ切りなしに突っ込んできたモンスターの大群の勢いが、今は明らかに衰えている。
ここまでの戦闘の消耗はあるとはいえ、こちらは快調、相手は不調。その絶好のチャンスを逃す理由はなく…一気にわたし達は、反撃に転じる。手始めに範囲攻撃の得意なロムちゃんとラムちゃん、それに蛇腹剣を伸ばした状態のプルルートがモンスターを薙ぎ払い、そこにわたしとピーシェが突っ込む。踏み込んでいって、わたしは刃を、ピーシェは爪を振るう。
「よーし、このチャンスを活かしてわたしは…ちょ、ちょっときゅーけー……」
「悪い、俺も少し休ませてくれ…やっぱまだまだ鍛錬が必要だな……」
「いえ、ウィードさんも凄かったです。ウィードさんも、大きいお姉ちゃんも…わたし達だけじゃ、きっとここまで持ち堪えられなかった。今があるのは、お二人のおかげです」
『ネプギア……』
これまでの思うように戦えなかった分を取り返すように、わたしが目一杯両手の剣を振るう中、視界の端では大きいネプテューヌとウィードが後退。展開後も動く事は出来ない様子のうずめとくろめを守っていたネプギアは、二人が下がってきたところで側に寄り、手早くネプテューヌへと我流の回復魔法を掛ける。
あくまで応急処置に留めたのか、すぐにネプギアはモンスターの迎撃を再開。こっちが大暴れしている事とモンスターの弱体化が合わさったおかげで、向こうはネプギア一人でも何とか持ち堪える事が出来そうな様子。
「この力は…シェアエナジーが、わたしの中に満ちてくる…?…く……ッ!」
「漸くまともに戦えるようになったわ…漸く、ねッ!」
困惑と、それに続く短い声。ちらりと上に視線を向ければ、防御姿勢を取るアルテューヌを、ノワールが斬撃で弾いていた。その瞬間しか見ていないから、断言は出来ない…けど、両手持ちをした大太刀の防御ごと、大剣とはいえ片手で振るった攻撃で弾いた辺り、それより前も連撃でアルテューヌの体勢を崩していたんだろうと思う。
シェアリングフィールドで、特殊なモンスターに対しては完全に優位を取り戻した。物量だけはどうにもならないけど、この調子なら時間はかかるけど十分押し返せる。一方でアルテューヌはといえば…今見た限り、動きは悪くなっていない。アルテューヌ個人の絶対的な脅威度は下がらないまま。でも、相対的な脅威度でいえば…もう、これまでとは違う。
「こうなると、三対一は少々過剰な気もしますけれど……」
「悪いが今はこっちも消耗してるからな。このまま圧倒させてもらう…ッ!」
ベールとブランの声が聞こえ、次の瞬間にはアルテューヌが床に降りてくる。直後に飛んで、そこに飛来した大槍と戦斧が殆ど同時に突き刺さる。
今も、アルテューヌにはノワール達三人が当たっている。さっきまでは、三人がかりでも押し留めるのが精一杯だった。だけど今は、優勢にまで変わっている。…当然ね。アルテューヌの動きは、ネプテューヌと大きくは変わらない…わたし達女神と同じ位なんだから、女神三人で優勢にならない筈がないもの。
「……よしッ!もう一踏ん張り、やってやろうじゃねぇか…!」
「いいね、流石男の子!それじゃあわたしも、もう一回頑張っちゃうよー!」
双剣状態のままモンスターを斬り付け、突き刺し、斬り裂く。二振りを同時に振り抜くと同時に、身体を捻りながら片脚を後ろへ突き出し、背後からきたモンスターを蹴撃で沈める。
その中で聞こえてきたのは、休んでいた二人の声。二人が戦線復帰すればネプギアの負担が減るし、そうなれば更にモンスターへの対応力が増す。アルテューヌが本性を現す前よりも、更に有利な戦況になり得る。
「もう、勝敗は決しちゃったみたいねぇ。降参するなら早い方が恥も沢山かかずに済むわよぉ?」
「わるいねぷてぬは、めっ!」
伸ばした斬撃に電撃魔法を纏わせる事で、攻撃力の増した蛇腹剣をプルルートが振るい、ピーシェがアッパーカットで大型のモンスターを殴り飛ばす。そのモンスターはアルテューヌの方へと飛んでいき、彼女を掠めて天井へと激突する。
このままなら、アルテューヌもモンスターも制圧出来る。小手先の策なら、幾ら弄されても正面から押し潰せる…それだけの状況に、今はある。向こうだって、それ位は分かっている筈で…けれどアルテューヌに、諦める気配はない。
「まだよ…まだわたしは、負けていない…!」
「どわっ!?…って、これは……」
「逃げる気ですの…!?」
宙から降ってくる複数のエクスブレイド。モンスター諸共突き刺すその攻撃に、いよいよなりふり構わなくなったかと一瞬思ったわたし。けど、違う。上からの声で分かったけど、このエクスブレイドは攻撃じゃなくて障害物。アルテューヌが反転し離脱する為の、隙を作る為の一手。
当然、それを見す見す許すようなわたし達じゃない。瞬時にエクスブレイドを回り込んで、ノワール達は追おうとする。でも……
「来なさい…ダークメガミッ!」
「……!」
逃げるアルテューヌを追う三人へ立ちはだかるように、空間を…シェアリングフィールドを斬り裂いて現れる、二体のダークメガミ。モンスターだけじゃなく、ダークメガミすら使役しているというのも、予め聞いてはいたけど…それでもダークメガミの出現は、少なくない衝撃をわたし達に与える。
現れるや否や、ダークメガミは全身からエネルギー刃を放って迎撃を始める。それ自体は全て避けるノワール達だけど、流石に即突破してアルテューヌを追撃…とはいかない。わたしも皆も、対応を余儀なくされる。
「くっ、邪魔を…ッ!」
「んー?前に戦ったのに比べると、なーんか弱そうねぇ」
「ぷるるとのいうとーり!みんなでがーっていけば、ばーってなってすぐたおせる気がする!」
モンスターを巻き込みながら無差別に放たれるエネルギー刃と、突破を図ろうとするノワール達へと向けられる掌底からの高出力ビーム。ただ確かに、聞いていた通りこのダークメガミからはこれまで戦ってきたもの程の圧力を感じない。シェアリングフィールドの影響の有無は分からないけど、モンスターと同時に相手取っても『厄介』以上の存在にはなり得ない。
だけどこれは、単なる時間稼ぎ。やられる前提で繰り出してきた、逃げる時間を作る為だけの謂わば障害。仮に完封出来ようとも、全員で当たった時点でアルテューヌの思う壺で……だからこそ、今求められるのは思い切りの良さ。そして真っ先に動いたのは、ユニ。
「お姉ちゃん達とセイツさんは行って下さい!それと、ネプギアも!」
「え、わ、わたしも…?この状況なら、セイツさん達だけでも……」
「正体はどうあれ相手はアンタのお姉ちゃんを偽ってた存在でしょ?ここはアタシ達が引き受けるから、行ってきなさい!」
「ユニちゃん…ありがとう!」
『感謝(するわ・しますわ・するぜ)、ユニ(ちゃん)!』
迎撃のエネルギー刃を貫きながら、ダークメガミへと撃ち込まれる一条の狙撃。それと共に飛んだ声に、ネプギアが反応し…半ば一喝するように、ユニがネプギアの背中を押す。
その言葉に弾かれるようにして、わたしは床を蹴る。ノワール達と共に、迎撃の中に突っ込んでいってダークメガミの注意を引く。その隙に、残る皆が準備を整えてくれる。
「ネプギアもおねえちゃんたちも、がんばってよね!ロムちゃん、ピーシェちゃん!」
「うん…っ!ピーシェちゃん、上から思いっきり…たたいて…!」
「たたけばいーの?よーっし!」
荒々しく、電撃を刃から迸らせながらプルルートが蛇腹剣を振り回し、モンスターの勢いを鈍らせる。それによって生まれた余裕を用いて、ロムちゃんとラムちゃんは床に杖を突いて集中。一拍の間を置いて、宙に巨大な魔法陣が現れる。
それに向けて跳躍するピーシェ。進路上にいた鳥型のモンスターを、まるで虫を払い除けるかのような動きで弾いて、床に対して斜めに展開した魔法陣の上へと回り込む。プロセッサの翼を横に開く事でブレーキを掛け、方向転換をすると共に拳を構えて…捻りと共に、一撃を繰り出す。
「ぴぃ…ぱーんちっ!」
後方から聞こえる、激しく高い破砕の音。直感的に回避行動を取った直後、わたし達の前へ、ダークメガミに無数の氷片が降り注ぐ。宙から斜めに、氷のシャワーが二体のダークメガミを叩く。
謂わばそれは、氷の散弾。破片一つ一つは大した威力じゃなくとも、それが雨の様にダークメガミの巨体を打ち続ける事で、迎撃を潰すと共にダークメガミの動きを封じる。更にダークメガミが強引に突破しようとすれば、ユニの狙撃が的確に邪魔をする事で、その動きを着実に潰す。
上手くやってくれると思っていたからこそ、わたし達はダークメガミ二体に突っ込んだ。迎撃に注力させる事で、これを回避出来ない状況を作り上げた。そして氷片の雨がダークメガミを縫い付ける中…わたし達は、その左右をすり抜ける。
「さ、頑張ってらっしゃい。本当はあたしも行きたいところだけど…今回はこのまま雑魚散らしで満足してあげるわぁ!」
大きいネプテューヌとウィードのサポートを受け、モンスターの大群を思う存分引っ掻き回しながら、プルルートが言う。その声を背に受けて、わたし達は速度を上げていく。逃走していったアルテューヌを、全力で…追う。
*
結界の様に部屋を、周囲の空間を包み込んだように見えたシェアリングフィールドだけど、実際には違った。うずめとくろめが解除をしなくても、そこから離れる事が出来る…そういう空間となっていた。
元の技…シェリングサークルも同様だった事を思えば、当然かもしれない。或いはまだ完全な完成版じゃないと聞いていたし、更に完成度が上がればフィールドを閉じる事も出来るようになるのかもしれない。ただ、どうであれ今、この時、シェアリングフィールドが外と中を隔絶する、独立した一つの領域を作り出すんじゃなく、外と繋がったままの…開きっ放しの空間である事は、間違いない。
「思ったよりも離されてしまいましたわね…。奥の扉から離脱されてしまった、などという事にならなければ良いのですが……」
「そうなったら痛いなんてレベルじゃねぇな。早いとことっ捕まえねぇと…」
ダークメガミに稼がれた時間を取り戻すべく、わたし達は大部屋を抜け、廊下を駆け抜ける。更なる時間稼ぎとして今し方用意したのか、元から放っていたのかは分からないけど、廊下でも何度か特殊なモンスターと遭遇し、わたし達は可能なら無視、廊下の広さ的に厳しきれば即座に撃破する事で進んでいく。
奥の扉…本性を現す直前、アルテューヌはそれについても言及していた。わたし達はその正確な場所は把握していない…出発前のブリーフィングでも『扉の場所の確認』という形で説明をしていた筈なのに、アルテューヌはあの時場所を理解しているかのような口振りをしていた。彼女を疑っていた、言動一つ一つに気を張っていたからこそ気付けたレベルの、些細な事ではあるけど…やっぱり詰めが甘いというか、見た目は完璧な割に言動は穴がある…そんな印象を、わたしはアルテューヌに持っている。
(…そういえば、犯罪組織にもそういう変装は完璧だけど、演技はそうでもない…って人がいたらしいわね。戦闘技能やエクスブレイドの事を考えると、ただの変装って線は確実にないけど…)
ふと頭に浮かぶのは、この場にはあまり関係のない思考。けれど、直後にある事に気付く。
神生オデッセフィアで戦った時だけでなく、今もアルテューヌはネプテューヌを思わせる戦い方をしていた。似てるだけで練度は大きく劣る…なんて事もなかったし、エクスブレイドだって形だけ同じの偽物だなんてわたしは微塵も感じなかった。
これはどういう事か。あまり有力な線とは思っていなかった、別次元のネプテューヌ…というのが真実だったっていう事なのか。…分からない。今もまだ、判断は出来ない。でも…今更気にする必要はないわね。それもこれも、全部直接訊けばいいんだもの。
「……!ちっ、また…ッ!」
「邪魔ぁッ!」
廊下の先に現れる、大型モンスター。とても横や上をすり抜ける事なんて出来そうにない、見るからに重厚そうなモンスターが進路を阻み、わたしは舌打ち…をした直後、ノワールが突出。向こうが威嚇をするかどうかの時点で肉薄し、真正面からモンスターを大剣で突き刺す。即座にわたし達も突っ込み、わたしとベールで追撃の刺突。最後にブランが戦斧を振り抜き、モンスターを沈める。速攻で片付け…その奥にあった部屋へと突入する。
「……!…アルテューヌ、さん…っ!」
一瞬「お姉ちゃん」と言いかけたような、そんな気がするネプギアの叫び。…部屋の中には、奥には、アルテューヌがいた。アルテューヌが、こちらに背を向けていた。
入った直後、死角となっていた部屋の左右からまたモンスターが襲ってくる。けど向こうの大部屋の様に、次から次へと新たな個体が出現するなんていう事はなく、すぐさまわたし達は殲滅。そしてわたし達が片付けたところで、アルテューヌはゆっくりと振り返りこちらを向く。
「…はっ、随分と余裕そうな態度じゃねぇか。待ってたぜ、野良犬…とでも言いそうだな」
「…そうね。待ってはいたわ。まだ、わたしは逃げる訳には…ここから離れる訳にはいかないもの」
わたし達が構える中、アルテューヌもまた大太刀をこちらに向けてくる。何か含みのある言い方と共に、こちらへ視線を向けてくる。
向こうの大部屋程ではないにしろ、ここもある程度の広さがある。加えてここもまだ、シェアリングフィールドの範囲内。体感的には、うずめとくろめから…発生源の二人から大きく離れた分、濃度は下がっている気がするけど…違和感の解消は、ここでも活きている。
「それは…それは、どういう事ですか!?お姉ちゃんは、お姉ちゃんはどこに……!」
「落ち着きなさい、ネプギア。お姉ちゃんなら…ここにいるじゃない」
「……っ…!」
「貴女……!」
一歩前に出て、ネプギアが再び叫びを上げる。それは妹としての、切実な叫びで…それにアルテューヌは、冷静に返す。姉を思うネプギアを煽るようなその言葉にネプギアは表情を歪ませ、ベールがアルテューヌを鋭く睨む。
「ふん。随分と余裕ぶってるけど、貴女が追い詰められている事には変わりないわ。離れる訳にはいかない?どうせそれも時間稼ぎの為の言葉でしょう?」
「それはどうかしらね。もしそう思うのなら、対話なんてせず、すぐさま仕掛けるべきなんじゃないかしら?」
「まるでそうする事を誘っているみたいな言い方だな。…と、見せかけてわたし達に攻撃を躊躇わせる魂胆か?ネプテューヌの姿をしてる割にゃ、中々厄介な駆け引きを仕掛けてくるじゃねぇか」
鼻を鳴らしてやり取りに割って入ったノワールにも、アルテューヌは返す。状況に不釣り合いな余裕と共に、仕掛けてくれて構わないとばかりに言い、ブランはその発言の真意を見定めんとする。
確かにブランの言う通り、どちらとも取れる。攻撃を誘ってるようにも聞こえるし、そう思わせて躊躇わせる…つまりは時間稼ぎをしてるようにも聞こえるし、裏の裏をかいてやっぱり誘いを…なんて風に、考えれば考える程分からなくなる、厄介な心理戦をアルテューヌは仕掛けてきている。…いや、違う。こういうのは、「どちらとも取れる」と思わせた時点で、殆ど思わせた側の勝利というもの。ここから逆転するとしたら、どちらかを選ぶと見せかけて、相手の反応から判別する位しかないけど、これだって確実な方法じゃない。結局のところ二択なんだから、いっそ一か八かでどちらか選ぶというのも、博打ではあるけど一手だと、わたしは思う。ただ、でも、アルテューヌもそういう「一か八か」に踏み切られるのは避けたいのか…更にわたし達を揺さ振る為の言葉を、言う。
「あぁそうだ。彼女には恨みがないし、貴女達の事も全員を恨んでいる訳じゃないから、一つだけ教えておくわ。彼女は…オリジンハート、イリゼはまだちゃんと生きているわ」
『……──っ!』
イリゼは生きている。その言葉に、わたし達は息を呑む。身体の奥から、何かが湧き上がってくるような感覚を抱く。分かっていた。分かり切っていた。イリゼが大丈夫な事なんて。疑いなく、心から、わたしはそう信じていた。加えてこれが、イリゼを襲った相手の言葉…今もわたし達に駆け引きを仕掛けてきている相手の発言だって事も理解している。それでも…その言葉は重く、強いものだった。
「さて…どうする?貴女達が何もしないでいるというなら…そうね。こちらから仕掛けさせてもらおうかしら」
「まさか、イリゼを人質にでもするつもり…!?恨みがないって言う癖に、イリゼを利用しようだなんて…ッ!」
「わたしは彼女が生きていると言っただけだわ。それの意味を、今ここで言った理由をどう取るかは、貴女達次第よ」
「……ッ、答えて下さいアルテューヌさん…!貴女は一体、何者なんですか…!?何が目的で、なんでこんな…ッ!今もどうして、そんな事を……ッ!」
「ネプギア、アルテューヌじゃねぇがほんとに落ち着け。完全に向こうのペースに乗せられてんぞ」
「この状況で冷静さを失うのは致命的ですわ。わたくし達は確かに追い詰めている。だからこそ、冷静さを失う事など……」
声を荒げるノワールにまたアルテューヌは飄々と答え、それに触発されるようにネプギアもまた声を上げる。
シェアリングフィールドによって状況は好転した。ここまでアルテューヌを追い詰めた。さっきまでに比べれば、遥かに余裕のある状況になったからこそなのか、ネプギアは一際感情的になっていて、それをベールとブランが窘める。落ち着け、冷静になれ…それは本当に正しい事で、その通りで……だけどそれを、わたしは手で制する。二人の事も、ネプギアもノワールも制して、アルテューヌの真正面に立つ。
「貴女が何者なのか。何が目的か。ネプテューヌの姿をしているのは何故か。クロワールとの関係に、モンスターの存在に、この街に…訊くべき事は沢山あるわ。今だって、貴女の狙いは何なのか、わたし達は見極めなきゃいけない。それはどれも重要な事で、それを確かめる為に、真実を掴む為に、わたし達はここにいる……」
「そうね、貴女達がそれを知ろうとする事は尤もよ。どれも気になって当然……」
「──なんて事は、今はどうだって良いわ。そんなの二の次三の次よ」
髪を強めに掻き上げて、わたしは自分自身の言葉を覆す。これにはアルテューヌもネプギア達も驚いて、一体何を、とわたしを見る。まあ、それはそうでしょうね。驚かれても当然だわ。…けど……
「わたしには、それよりも重要な事がある。何をおいてもしなくちゃいけない事がある。さて、それが貴女には分かるかしら?」
「…分からないと言ったら?」
「別に構わないわよ。わたしは貴女の様に隠しはしない。分からないなら教えるだけよ。…と、言っても別に難しい事なんかじゃないけどね。わたしはただ……」
語らないばかりのアルテューヌへ軽く皮肉も込めて、わたしは隠しはしないと返す。続けて、軽く肩を竦めて見せる。
セイツは何を言うのか。何より重要というのは何か。そんな疑問を、視線を感じる。わたしは勿体付けるように一拍置き、身体の力を一瞬緩め、アルテューヌすらもわたしの次の言葉へ意識を向けたその瞬間──床を全力で、全身全霊で、蹴る。
「……ッ!?」
目一杯の力で踏み切ると共に、突進の推力に出来る全ての圧縮シェアエナジーを一斉解放。文字通り爆ぜるような加速で以って、目を見開くアルテューヌへ向け肉薄を掛ける。
接近と共に振り出す、左の剣。本能的な反応なのか、アルテューヌはわたしの一太刀を掲げた大太刀で受ける。…そう、いい。それでいい。初めから左の一撃は、防御をさせる為の、そちらに意識を向けさせる為の誘い。そして本命は…右の腕。右剣を手放し、左剣への防御で薄くなった隙を突いて、そこを貫く右の拳を…放つッ!
「こッ、のぉぉぉぉおおおおおおッ!!」
手に感じる、確かな感触。それを抉るように、崩すように、腕を振り抜く。芯で捉えたアルテューヌの身体が吹き飛び、部屋の奥、壁へと背中から激突する。
「貴女はイリゼを、わたしの大切な妹を傷付けた。わたしの国民に襲い掛かった。だからわたしは決めていたのよ。貴女の意思が、真意が、背景がどうであれ、どんな状況状態であれ……話は貴女を、殴り飛ばしてからだってねッ!」
壁に身体を強かに打ち付け、床に落ちるアルテューヌに向けて、わたしは言葉を叩き付ける。凝縮した怒りを、拳と声に響かせる。
「…今日はやけに冷静だと思ったら…ここまでずっと我慢してたっていうか、この為に溜め込んでいた訳ね」
「ま、気持ちは分かるぜ?だらだらと雑に垂れ流すより、一発で思いっ切りぶちかました方がスッキリするもんだしな」
「しかしまあ、何よりもまず殴ってからとは…イリゼとコンビを組む事も少なくなかったわたくしとしては、姉であるセイツのスタンスがそういうものである事には少なからず心配の念を抱いてしまいますわ…」
「む…わたしだって、いつもこういうスタンスじゃないわよ?今回が特別、今回はとびきり怒ってたってだけ。それこそ、あの邪神の次位にはね」
呆気に取られていた皆が、わたしの所まで軽く跳んでくる。わたしは軽く肩を竦め…それからネプギアが拾ってくれた右剣を受け取って、構え直す。
自画自賛したくなる位綺麗に入った右ストレートだけど、これだけで決着になるだなんて事は微塵も思っていない。剣で斬り裂いたならまだしも、掲げられた大太刀の防御の隙間を突く事を兼ねて拳を叩き込んだんだから、ダメージは間違いなく入っているにしても、まだまだ戦闘は可能な筈。
「立ちなさい、アルテューヌ。策があるなら見せてみなさい。でももしハッタリで乗り切ろうとしてるなら、諦めなさい。今日のわたしは機嫌がいいの。今すぐ諦めて投降して全部吐くなら、真っ当に裁いてあげるわ」
どうせ降参なんてしないでしょうと思いつつも、敢えて呼び掛ける。思いっ切り殴り飛ばしたとはいえ、まだフラットな気持ちでアルテューヌを見るには程遠い。そもそも解決してないし、イリゼも戻って来てないんだから、フラットに見られる訳がない。そしてついさっきまでは向こうに心理戦を仕掛けられてきたんだから、今度はこっちが揺さ振る番。
皆も構え直し、刃をアルテューヌへと向ける。ちらりとネプギアを見てみれば、ネプギアはまだ複雑そうな顔をしていて…だけどちゃんと、武器は向けられている。なら今は、それで十分。最低限自衛さえ出来れば、わたし達で戦って、勝つだけ。
ここからアルテューヌはどう動くか。流石に諦めるなんて事はしない筈。だから仕掛けてくるか、それとも態度を崩さず駆け引きを図ってくるか。ただ何れにせよ、そろそろアルテューヌの本心を…隠れていない感情を見たいところ。その為に煽った部分もあるし、アルテューヌがネプテューヌではない事を見抜いていたと伝えた時みたいに、いい加減向こうも感情を曝け出して……
「…ふ、ふふ…ふふふふ……」
…そう、思っていた時だった。床に倒れていた状態から手を突き、膝を突き、身体を起こしたアルテューヌから、小さな笑い声が聞こえてきたのは。
「…アルテューヌ、さん……?」
静かな…だからこそ不気味な、アルテューヌの笑い声。なんであれ、感情を引き出せれば…とは思っていたけど、この反応は予想外。
追い詰められた事で正気を失ったのか。…それはない。そんな柔な相手じゃない。ならこれも、駆け引きの一つ?…それも、違う気がする。これまでとは明らかに違う雰囲気を、アルテューヌは纏っていて…そのまま彼女は立ち上がる。拳を撃ち込まれた頬に手を当てながら、ゆらりと立つ。
「今のは痛かった…痛かったわ…。だけど、それ以上に…それよりもずっと感謝してるわ、レジストハート…セイツ」
「感謝…?」
思ってもみない言葉を受けて、訊き返す。殴られて感謝?…まさか。そんな訳がない。でも、それなら…一体何に…?
「正直、わたしの事を見抜かれていると知った時は焦ったわ…。上手く貴女達を誘導して、完全に上手くいってると思っていたところで、出し抜かれていたのは自分の方だった、って知ったんだもの。やられたわ、本当にやられた…貴女達でも、貴女達の妹でもないからこそ、オリジンハートと同じように警戒していたつもりだったけど…やっぱりわたしは、そういう芸当は向いていないみたいね」
喋りながら、アルテューヌは視線を少しだけ動かす。恐らく見ているのは、ノワール、ベール、ブランの三人。
その三人でも、三人(というかノワールとブランの)の妹でもないからこそという言葉。オリジンハート…イリゼと同じようにという表現。この二つは、手掛かりになる。三人とネプギアを一緒くたにせず、「貴女達の妹」という言い方をした事を含めて、アルテューヌはわたしやイリゼの事は特別警戒する必要があって、逆にノワール達は特にって程ではなくて、ネプギア達女神候補生はその中間かノワール達寄り…そういう認識になる立場や知識、評価なんかを持つ存在だっていう、正体を探る上での情報になる。今、それを得た事でどれ程の意味があるかは別だとしても。
「それに、シェアリングフィールド…だったかしら?あれでの形勢逆転は、流石に肝が冷えたわ。全く、新しい女神の…いや、逆だったわね。昔のプラネテューヌの女神は、無法もいいところよ。限定的とはいえ、女神が自力でシェアエナジーを用意するなんて、女神の在り方に正面から喧嘩を売っているようなものじゃない。本当に、本当に予想外で……だからこそ、感謝してもし切れないわ。彼女達を、シェアリングフィールドなんていう規格外の存在を、ここに連れてきてくれた貴女に」
「……っ、だから何を言って──」
妙な余裕。根本的にこれまでとは違う態度。疑念ばかりが膨らんでいき、わたしの…わたし達の中で、さっさとけりを付けるという思考が薄れていく。
もしもこれがハッタリ、単なる時間稼ぎだったのなら、アルテューヌはこういう芸当に向いていないどころか、むしろ才能に溢れていると言っても過言じゃない。それ位に、今のアルテューヌの言葉と雰囲気には、引き込むだけの何かがある。
そして、アルテューヌは頬から手を離す。ゆっくりと離し、その手を握りながら…言う。
「こう言ってるのよ。この場を、シェアエナジーで包んでくれて…わたしにすらも、膨大なシェアエナジーを届けてくれてありがとう、ってね」
『……──っ!』
手が離れ、露わになった頬。わたしが全力で殴り付けた場所。そこには仄かな光が漏れ出る、亀裂があった。
切り傷じゃない。裂傷でもない。明らかにそういうものとは違う、異質な傷。普通の身体には、起こらないような状態。まるで、外殻が割れたような…そんな傷痕。そして漏れ出る輝きは…間違いなく、シェアエナジーの光。
「貴女…何者なの……」
「わたしはわたしよ、ネプテューヌよ。混乱しているようだけど…流石に妹なだけあって、ネプギアが一番答えに近付いているみたいね」
「ネプギアちゃんが…?」
「そんな…分からない、分かりませんよ…!わたしだって、何も……」
正体なんて、最初からずっと分かっていない。でも今は、わたしの予想し得る全ての可能性よりも、更に予想や想定を超えた何かなんじゃないかって気がしてきて、言葉が口を衝いて漏れる。
ネプギアが一番答えに近付いている。そう言われたネプギアは、首を横に振って否定する…けど、その言葉には自信が感じられない。頭では分からないと思っているけども、心のどこかで違う何かを感じている…そんな風に感じさせる、ネプギアの声。同時にそれは、ネプギアの動揺の深さも感じさせて…わたし達は、我に返る。
「ちッ…あっちがなんて言おうと、アルテューヌが私達の敵である事には変わりないわッ!」
「くそッ、結局向こうのペースに乗せられちまった…けど、それもここまでだッ!」
舌打ちしたノワールと、怒りを乗せた声を吐き捨てたブランの、同時突進。二人の攻撃を跳んで避けたアルテューヌに対し、わたしは左右の剣からそれぞれに圧縮シェアエナジー弾を発射。直撃は狙わず、その前で炸裂するようにして撃ち込み、その衝撃でアルテューヌの次なる行動を阻害。更にそれに合わせてベールが突っ込み、刺突と見せかけた動きからの横薙ぎで防御姿勢を取ったアルテューヌをその上から弾き飛ばす。
(この動き、防御に徹してる…?いや、でも…これは……)
息吐く間も与えない、連続攻撃。女神四人の攻撃という事もあって、アルテューヌは防御で手一杯の様子を見せる。けれどそういう状況を抜きにしても、アルテューヌに反撃の意思は見られない。今反撃する必要はない、ここで押し返す必要なんてない…そんな気配が、アルテューヌから感じられる。
でももう、それについて考えたり、ましてやそれを理由に止まる事なんてない。間違いなく優位に立っているのに…いや、こっちが確かに優位だからこそ、それに不釣り合いなアルテューヌの態度にこれまでは翻弄されてしまった。だからもう、今は倒すのみ。話なら、倒して捕らえた後でも十分出来る。
「これでッ!」
双刃刀形態の連結剣を、宙からアルテューヌに投擲。アルテューヌが大太刀で弾き返した瞬間を突いて、背後に回り込んだノワールが袈裟懸け。振り向いたアルテューヌが防御をすれば、今度はベールが側面から刺突を仕掛ける。ノワールの斬撃を受けたまま、体勢を変え刃の向きも変える事でアルテューヌはベールの攻撃も受け止めるけど、ノワールの攻撃を受け止めた状態から更に勢いに乗ったベールの刺突を受け止め切れる筈もなく、二人の力で押し切られる。ならばと後ろに跳んだアルテューヌに対し、弾かれた連結剣をキャッチしていたわたしは、連結を解いて上から急襲。アルテューヌが跳んだ状態から更に床を蹴って距離を伸ばした事で、連結剣はどちらも空振り床を斬る…というのは想定内で、即座にわたしは身体を跳ね上げ、腕の振り上げと手首のスナップで連結剣を纏めて投げる。これはアルテューヌも避け切れず、二本共アルテューヌの身体を掠める。
ここまで連携しても、防御に専念しているアルテューヌには掠めるのが限界?…いいや違う。これはまだ、連携の途中。それを示すように、体勢を立て直そうとするアルテューヌの直上には、既に攻撃体勢を整えた、戦斧を振り被った状態のブランがいた。振り抜かれる一撃に、アルテューヌは咄嗟に大太刀を掲げるけど…その一撃は、咄嗟の防御なんかじゃどうにもならない。振り下ろされた戦斧は、あっさりと大太刀を叩き落とす。それでも何とか身体へは当たらないよう、アルテューヌは一歩後ろへ下がり…その肩を、振り下ろしの慣性を利用し一回転した、戦斧から手を離したブランの踵落としが直撃する。重い蹴撃を諸に受けたアルテューヌは押し込まれるようにして床に叩き付けられ、身体は跳ねて床から宙へ。
『ネプギア(ちゃん)ッ!』
完全に無防備となったアルテューヌ。反射的にわたし達は、全員がネプギアを…完全にフリーで、このチャンスを最も活かせる状態のネプギアを呼ぶ。わたし達の声に弾かれたように、ネプギアは床を蹴り、アルテューヌへと向かっていく。
横に構えられたネプギアのM.P.B.L。アルテューヌはまだ無防備のままで、後は振り抜くだけで決定的なダメージが入る。そしてその状態のままネプギアは肉薄し、横薙ぎがアルテューヌに向かって放たれ……
「──ネプギア」
「……──っっ!」
ほんの一瞬。それは、本当にほんの一瞬の事だった。アルテューヌの表情を見たのか、それとも何か声を掛けられたのか、わたしには分からなかったけど…ネプギアの動きが、鈍った。腕の振りが、M.P.B.Lの斬撃が遅くなって…紙一重で、アルテューヌは躱す。無防備な状態からでは躱すのが精一杯だったのか、再び床に落ち…すぐに立ち上がり、宙へと飛ぶ。
「…ごめん、なさい…わたし、わたし……」
M.P.B.Lを降ろし、項垂れるネプギア。そのネプギアの側に、わたし達は降り立ち…新たな怒りが、湧き上がる。ネプギアを、姉を思う彼女に苦悩を抱かせている、アルテューヌに。
けど…わたし達も、反省しなきゃいけない。ネプギアの今の状態は分かっていたのに、チャンスを前にわたし達全員がネプギアの名を呼んでしまった。それは、それだけネプギアが信頼出来るという事でもあるけど…だとしてもわたし達は、自分達の判断ミスを自覚しなくちゃいけない。
「ふふ…助かったわ、ネプギア。本当に貴女は賢い子ね」
「……ッ…アルテューヌッ!」
そんなネプギアを、まるで煽るようなアルテューヌの言葉。それにノワールは怒りの形相を浮かべ…いや、ノワールだけじゃない。ベールもブランも怒りを露わにしている。多分わたしも、同じ表情をしている。理由はどうあれ、姉として振る舞っていた存在が、妹を苦しめる…その行いが、許せない。
けれど、アルテューヌは肩を竦める。むしろ心外だとばかりに、視線をわたし達の方へと移す。
「言っておくけど、今のは心からの称賛よ。それに、貴女達もネプギアには感謝をするべきだわ」
「テメェ、何を…ッ!」
「だって、もしネプギアが躊躇わなかったら、わたしをあのまま斬っていたら…貴女達は、貴女達の仲間の『ネプテューヌ』に重傷を負わせる事になっていたんだもの」
「……!?…なん、ですって…?」
尚も煽るつもりか。そうわたし達が憤る中で、アルテューヌが発した言葉。それにわたし達は息を呑む。
あのままだったら、ネプテューヌも重傷を負っていた。それは一体どういう事か。アルテューヌとネプテューヌは、ダメージがリンクしてるって事なのか。それとも、もっと…もっと単純な事なのか。アルテューヌへ攻撃する事が、目の前の存在への攻撃が、そのままネプテューヌを攻撃するって事なのか。だとしたら、それは…つまりそれは──。
「漸く…漸く時が満ちたわ!レジストハートに、わたしの妹に感謝を!そして見るが良いわ、ブラックハート、グリーンハート、ホワイトハート!今の…今の、わたしの姿をッ!」
高揚感の灯る声で、アルテューヌは言い放つ。気付けば頬の亀裂は広がっていて、漏れる光も強まっていた。肩にも同じような亀裂が、光があった。
何が起こるか分からない。でもわたし達にとって良いものじゃない事は、止めなきゃいけない事だけは間違いない。間違いないけど…もう、止められない。間に合わない。
光に包まれるアルテューヌ。何か違うものか混ざり合ってはいるけと、それは正しくシェアエナジーの光。女神が放つものと、同じ輝き。そして次の瞬間、光の本流はわたしの視界を埋め尽くす。
『……っ!』
左手で目元を覆う。右手は構えを崩さない。神経を張り詰め、光が収まっていくのを待つ。
どれ程の時間かは分からない。多分短い間で、でも一瞬よりは遥かに長い間の光で……収まると共に、わたしは視線を走らせる。
初めに見たのは、床に倒れ伏すネプテューヌの姿。でも、それだけじゃない。ネプテューヌの姿だけじゃない。確かにそこにいる、倒れ伏すネプテューヌと共に──宙にはもう一つ、悠然と立ち翼を広げたネプテューヌの姿があった。
今回のパロディ解説
・「悪いが今は〜〜圧倒させてもらうッ!」
機動戦士ガンダム00に登場するキャラの一人、ロックオン・ストラトス(ニール・ディランディ)の台詞の一つのパロディ。まあ、流石に三対一なら圧倒も出来るというものです。
・「〜〜待ってたぜ、野良犬〜〜」
ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICONに登場するキャラの一人、G5 イグアスの台詞の一つのパロディ。ゆっくり振り向くシーンがAC6であった筈…と思った結果、彼(厳密には微妙ですが)がそうでした。
・「今のは痛かった…痛かったわ…〜〜」
DRAGON BALLシリーズに登場するキャラの一人、フリーザの名台詞の一つのパロディ。しかしアルテューヌは四段階の変身能力を持っている…とかではありません。多分。
昨日より、デート・ア・ライブの二次創作、『デート・ア・ライブ DEAR EL MANA』の投稿を開始しました。こちらも良かったら是非読んでみて下さいね。