超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown 作:シモツキ
狙いの分かったアルテューヌに対する、攻めの策と守りの策。どっちも完璧な策って訳じゃないけど、これまでよりずっと状況が良くなった。今度こそ、本当にこっちから動けるようになった。
(…けど、それはわたしの成果じゃない…わたしの、やってた事って……)
ほんの少しでも、微かでも手掛かりになるものが見つかれば。そう思って、わたしは過去の資料やデータを片っ端から洗っていった。非効率で、望むような結果が出るかどうかも分からない…なんて事は分かった上で、それでも、ちょっとでも可能性があるならって、毎日時間を費やしてきた。
だけど…わたしは何も成果を出せないまま、状況が変わった。この変化に、わたしのしてきた事は何も関係していない。だからつまり、それは…わたしのやってきた事は、何の意味もない…やってもやらなくても変わらない、無駄な行為だったって事。
「…はぁ…すぐに成果が出る訳ない、なんて事は分かったけど…分かったけど、さ……」
気持ちが沈む。まただ、また頑張っていた事が上手くいかない。これまでと違って裏目には出ていないけど…もしもこの時間を別の何かに使っていたら、もっと何か出来たかもしれない。他の何かをしていれば、そっちで何かを見つけられたのかもしれない。くろめやウィードくんは必死に戦って切り抜けて、大きなものを掴んできたのに、わたしはネプギアに心配を掛けただけで……
「なーに辛気臭い雰囲気してるのよ」
「うわっ…あ、ノワール…」
「う、うわって何ようわって…前ならともかく、後ろから声掛けられてうわっ、はないでしょうが…」
いきなり後ろから…二つの策が決まって、会議も終わって、自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていたところで掛けられた声。驚いて振り返ると、声を掛けてきたノワールは半眼でこっちを見ていた。
「…じゃあ、のわっ…で」
「それは私の持ちネタでしょうが!貴女は普通にねぷって言いなさいよ、ねぷって…って、持ちネタでもないわよ!?」
「……一人で何言ってんの…?」
「…うん、ごめん…今のに関しては、貴女の言う通りだわ……」
自分で言った癖にノリ突っ込みみたいな感じで突っ込んでくるノワールに、流石にちょっと引くわたし。…あれかな…ノワールも疲れてるのかな……。
「…こほん。で、何やってるのよネプテューヌ」
「何って…歩いてただけだけど……」
腰に片手を当てて、ノワールはわたしを見つめてくる。それに答えるわたしだけど…返ってきたのは、呆れたような溜め息一つ。
「あのねぇ…そんな事訊く訳ないでしょ。…今の貴女は、アルテューヌが貴女を偽ってた時以上にらしくないわよ」
「…ごめん」
「別に謝れとは言ってないわよ。言ってないし…ここでまず謝るなんて、本当にネプテューヌらしくないわ。…自覚ないの?」
ノワールの視線が鋭くなる。けど、怒ってるって感じはなくて…真剣に訊いてるんだっていうのが、伝わってくる。…自覚、か…自覚があるかっていえば……
「…うん、あるよ。けど今は、明るく愉快に…なんて状況でもないでしょ?」
「真面目に真剣に、って状況でもこれまで平然とふざけてきたのに?」
「…わたし、ノワールや皆にもうちょっと真面目にやれ、って感じに怒られた事、度々あると思うんだけど……」
「そうね。そういう事も言ってきたし、実際普段はもう少し控えてほしいと思っていたわ。…けど、今の貴女は違うでしょ?周りの意見に耳を傾けて、改善していこう…なんて、前向きな気持ちで立ち振る舞いを変えてる訳じゃないわよね?第一…真面目なのと暗いのとは、まるで違うわ」
前向きな気持ちでの事には見えない。真面目である事と、暗いのとは違う。…目を逸らしたりせずに言うノワールに、わたしは言い返せない。…その通りだから。その通りだと思うから。わたしだって、今の自分がこれまでよりも良い、これまでの欠点をちゃんと改善出来てる自分だ…なんて風には、思っていないから。そういう思いがあるから、わたしは何も返せなくて…そうしてわたしが黙っていると、ノワールは続ける。
「気持ちとして、明るく愉快に…なんて考えられないっていうのなら分かるわ。ネプテューヌが色々責任を感じるのも理解出来る。…でも、それは…今のネプテューヌは、違うんじゃないの?そうやって辛気臭い雰囲気していたら、状況が良くなる…なんて事はない位、ネプテューヌだって分かってるでしょ?」
「…厳しいね、ノワールは」
「…私はネプギアに、貴女の事を気にしてあげてって言ったのよ。その時から今に至るまで色々あったし、そのせいできっとネプギアには心労をかけちゃってる。だから私には、ネプギアへの責任があるし……何より貴女の事を心配してるのは、ネプギアだけじゃないわ。ユニだって、他の皆だって心配してる。というより、今の貴女は誰がどう見ても元気じゃない…見てて心配になるような雰囲気なのよ。皆に心配だって思わせちゃうのは、ネプテューヌだって不本意でしょ?違う?」
言われて初めてわたしは知る。ネプギアが、そんな頼まれ事をしてただなんて。それに、ノワールの言う通り…わたしは皆に、心配を掛けたい訳じゃない。気に掛けてほしい訳なんかじゃない。ただでさえ全然上手くいってないのに、迷惑ばっかり掛けちゃってるのに、その上で心配までさせちゃうのは…不本意以外の、何ものでもない。
「…ごめんね、ほんと」
「だから…はぁ。…いいわよ、もう。無理に明るくしろだなんて言わないし、本来底抜けに明るい貴女が無理に明るく振る舞ったって、それはそれで違和感凄い事になっちゃうだろうし。だからせめて、しゃんとしなさい。明るくなくてもいいから、最低限『暗い』って感じるような貴女からは脱却しなさい。…その為に手伝いが必要だったり、相談に乗ってほしい事があったりしたら、力になるから。こうやって発破を掛けた以上、掛けっ放しなんて無責任な事はしないから」
「ノワール…」
思わずまた出ちゃった「ごめん」って言葉に、ノワールは一瞬怒ったような顔になって…けどその表情は、その雰囲気も、呆れたようなものに変わる。…変わる、っていうか…きっと、呆れてる。
それでもノワールは、ただ呆れるだけじゃなくて、提案してくれる。提案した上で、力になるとも言ってくれる。それは責任感の強いノワールらしい、厳しいだけじゃないノワールらしい言葉で、わたしを思いやってくれている気持ちで……
「……もしかして、ノワールも心配してくれてたの…?」
「へっ?…い、いやまぁ…それは……」
「っていうか、気に掛けてはくれたんだよね…?だから今も声を掛けてくれたし、ネプギアに声を掛けたのだって、わたしの事を気にしてくれてたから、だよね…?」
「なっ、やっ…それは、その……」
「…違った…?」
「……ち…違わない、けども…!」
あんまりわたしは察しが良い方だとは思わないけど、流石に分かる。勿論、今のわたしの状態が同じ女神として腹立たしいとか、そういう思いもあったんだろうけど…そういう感情含めて、ずっとわたしを気に掛けてくれてたんだって。
で、違うのかと訊けば、ノワールは顔を赤くしながら、なんかちょっと不満そうに違いはしないと返してきた。そんなノワールの姿を見て…わたしはちょっと、笑ってしまった。
「ちょっ、何笑ってんのよ!?今の笑う流れじゃないわよね!?」
「あ、ごめ…って、この謝罪も三回目か…」
「しれっと原作での台詞を挟んでくるのも止めてくれる!?なんか急に調子取り戻したわね貴女!」
「わたしだって別に、暗い調子でやろうとして暗くなってた訳じゃないし…後、わたし的にはそもそも、真面目にやってるつもりだっただけで、調子崩してたなんてつもりは……」
「どこがよ、ここのところパロディもメタ発言も主人公だって言い張る事も碌にしてないじゃない。何なら貴女視点なの久し振りじゃない。しかもそれに言及すらしてないし…私からすれば今の貴女は、壊滅的にフォームが崩れてるからね?」
「い、言われてみれば、それは確かに…というかノワールもノワールでメタ発言し過ぎっていうか、今日はノワールが変なフォームになってるっていうか……」
「誰のせいだと思ってるのよ、変なフォームにならざるを得ないこっちの身にもなりなさいよね」
「その文句はなんか、理不尽な気がするんだけど…。…けど、調子を取り戻した、か…。それに理由があるとすれば…ノワールと、お喋りしたから…かな?」
「うっ…ネプテューヌのそういうところ、ほんっと困るのよね…!」
もう話す事はないとばかりに、ぷいっと背を向けて歩いていくノワール。…でも…なんだかんだ長い付き合いだから、分かる。一見怒ってるように見えるノワールだけど、あれは本気で不快に思ってる時の反応じゃないって。
(せめて、しゃんと…か…)
今の自分が皆からどう見えているか。それで、どう思われているか。…これまでの自分の行動と、そこから抱かれてるイメージの事は散々考えてたのに、今の自分の事は全然考えてなかったし、気付いてもいなかった。だからまた、わたしは失敗した。特にネプギアは、ネプギアがわたしに色々気を遣っている事なんて分かっていたのに…何にも、していなかった。
もう、反省するしかない。ずっとわたしは反省しっ放しで、反省してもまた失敗を重ねている。…けど、なんていうか…これまでよりは、落ち着いて受け止められている。これまで散々後悔してきたから?これまでと違って、大失敗とか取り返しの付かない何かが起きる前に指摘されて気付いたから?それとも…言ってくれたのが、ノワールだから?
「…うん、きっとそうだ」
別に、ネプギアが悪い訳じゃない。ネプギアは、何も悪くない。だけどやっぱり、ネプギアは妹で、どんなに出来が悪くてもわたしはお姉ちゃんだから、情けないとか、不甲斐ないとか、そういう気持ちの方が強くなっちゃった。だけど、ノワールは違う。同じ守護女神で、付き合いも長くて、わたしにとっては初めて出来た女神の友達…あの頃はまだ、イリゼの正体が分からなくて、多分女神なんだろうって状態だったから、はっきり「女神だけど、友達」だと思えたのはノワールで…そういうノワールだから、気兼ねない相手だから、真っ直ぐ受け止める事が出来た…そんな気が、する。
だから、感謝したい。感謝しなきゃって、思う。その感謝を返す為には、どうしたらいいか。一つは勿論、ノワールの言う通りしゃんとする事、皆に心配させない事で、もう一つは……
「…わたしが、決める。アルテューヌは…わたしが、倒す」
手を握る。自分で、言葉にする。…初めて相対した時は、怒りに任せて突っ込んだ結果、状況を悪くする事しか出来なかった。そのせいで、天界への突入の時は何も出来なかった。
…もう、同じミスはしない。攻めの策と守りの策、この二つで…今度こそ、アルテューヌを追い詰める。わたしの事は…わたしが、片を付けるんだ。
*
「あ、セイツさん。そちらのボトルも一ついいですか?(・ω・`)」
「これね?」
指差された商品の一つを手に取り、確認をした上で持っている買い物籠へと入れる。至って普通の、何ら珍しくもない人用の商品。けどこれも、イストワールからすればビックサイズもビックサイズな商品なのよね、とわたしは軽く感想を抱く。
今わたしとイストワールがいるのは、プラネタワーの近くにある大型スーパー。商品を籠に入れた事からも分かる通り…今は、イストワールとお買い物中。
「…やっぱり、身体が小さいのって凄く不便よね。言ってみれば、自分だけ社会全般の規格と合わない訳だし」
「慣れてしまえば、不便を感じる事もない…という事はありませんが、それでも割り切れるものですよ。食事に関しては、食費が大変安価に済む、という利点もありますしね( ̄∀ ̄)」
「女神を直接支える立場の存在が食費で頭を悩ませる事があったら、世も末だと思うけどね…」
会話をしながら店内を回り、イストワールが必要としているものを買っていく(勿論厳密には、レジを通す際に買う訳だけど)。こうして共に買い物をする事で、イストワールが普段何を買うのか、彼女の生活の一端を知る事が出来る…気がする。
「そういえば、貴女とこうして買い物に出るのは久し振り…どころか、ひょっとして初めてじゃない?」
「そうですね。そもそもこれまでは、セイツさんと二人で外出する事自体が殆どなかった訳ですし
(。・ω・。)」
「…ごめんなさいね。ここでの外出が…というより、こうして外出する事自体が、こんな形になっちゃって」
「気にしないで下さい。わたし自身、協力したいと思ったからこそ行動している訳ですし…ある意味、セイツさんと買い物という経験が出来たのも、今回の件があったからこそですからね(´・∀・`)」
「物は考えよう、って事?…そうね、そう思ってくれるなら、わたしも少しだけど気が楽になるわ。…でも…今度はほんとに、普通に出掛けたいものね」
「それはまあ、そうですねぇ(。-∀-)」
イストワールと顔を見合わせ、小さく笑いながら肩を竦める。物は考えようではあるけど、やっぱりこういう形じゃなくて、もっと自然に、気軽に出掛けるようにしたい。その方がきっと、のびのび話せる筈だし、のんびりと見て回れる筈だから。……今の時点でも、割とのびのび話せてるように見える?それはまあ、そうよ。場数を踏めば、緊張する状況であっても『ある程度は』普段通りに話せるものだし。
(…ほんと、まさかこんな形になるとは…ね)
レジへと向かいながら、わたしは考える。勿論これは、ただイストワールの買い物にわたしが付き合っている訳じゃない。アルテューヌに対する二つの策、それに必要な『イストワールの普段の、自然な行動』を把握しておく為に、知識だけじゃなく実際に回ってみる事が今日の目的。
だから、言ってしまえばこれも作戦の一貫。…買い物の内容は、完全にイストワールの私用だけど。
「しかし、少し意外ですね(´・ω・`)」
「……?意外?」
「いえ、セイツさんの事なので、これも『デート』として気持ちが舞い上がるものかと思っていたんです。けど、現状特にそんな事はない…んですよね?(・・?)」
「…………」
「……あぁっ!?た、確かにぃ!」
「忘れていたんですか!?∑(゚Д゚)」
ぴしゃーん!…と雷に打たれた…ような衝撃を受けるわたし。愕然としたわたしの反応に、イストワールもイストワールで驚愕をする。い、言われてみたらそうじゃない…これ状況的には、普通にデートじゃない…!ただの買い物といえばそれまでだけど、わたし基準じゃこれも十分デートよ、デート認定出来る範囲よ…!なのに、それなのに言われるまで気付かなかったなんて……!
「うぅ…三人をデートに誘う事も失念してたし、何をやってるのよわたし…。わたしからデートを抜いたら、ただの良い女神じゃない……」
「しれっと自画自賛してますね、セイツさん…そしてその部分はマイナス要素だって自覚もあるんですね、セイツさん……(~_~;)」
「え、別にマイナス要素だとは思ってないわよ?…まぁ、世間一般からすればちょっと特殊な趣味だって自覚はあるけど」
自分を自分たらしめる大きな要素の一つがすっぽ抜けていたっていうのは、それはもうショック。良い悪いじゃなくて、とにかくショック。そしてそのショックを引き摺りながら、イストワールと街を歩いていると…いや、イストワールは歩いているんじゃなくて浮いてるんだけど…少し真面目な顔をしたイストワールは、横からわたしを見つめて言う。
「…やはり、イリゼさんの事がずっと頭の中から離れないのではないですか?( ̄^ ̄)」
「それは……」
もしかして。そんな風に言うイストワールの言葉に、わたしは見透かされたような感覚を抱く。
実際のところ、どうかは分からない。でも、違うとは言えなかった。自分の中でも、ないとは言い切れない…そんな思いがあった。だってそれだけ、イリゼの存在は…家族の存在は、わたしの中では大きなものだから。だから、自分の気付かないところで心に絡み付き続けてるとしても…おかしくは、ない。
「…かも、しれないわ。よく見ているのね、イストワール」
「わたしも、わたしなりに皆さんを見て、支えてきたつもりですからね。これまでも、これからも
(´・∀・`)」
感心と、感嘆。こうして察する事が出来たのは、わたしの心を理解出来ていたのは、イストワールがわたしを…わたし達女神を、よく見ているから。
自分の事は、自分が一番よく分かっている…これはよく否定されがちだけど、それは図星や自分にとって不都合な事を否定したい時にばかり使われるから、『本当は分かっていない』…という結論に至り易いだけで、実際はそんな事ない。局地的に見て、その局地の専門家と素人である自分という限定的な状況においてはそういう事もあるってだけで、全体的に見れば局地の専門家より自分の方が知っているのは当然の事。だって、誰だって自分と最も長い付き合いがあるのは、自分自身なんだから。謂わば自分は、自分の専門家なんだから。
だけど同時に、自分はどうやったって、自分を主観でしか見られない。客観的に見ようとしても、『客観的を意識した主観』にしかならない以上、自分には分からない自分、自分じゃ気付けない自分っていうのも…確かに、ある。そしてイストワールが気付いていたのは…わたしの、そういう部分。
(…本当に、凄いものね。イストワールって)
元々軽んじてなんかいなかったけど、今回の一連の件が起こって以降は、わたしの中でのイストワールがどんどん凄くなっている。共に戦う女神や仲間とも違う、別の立場、別の形からわたしや皆を支え、力になってくれるイストワールの凄さ。それをこれまでよりも深く実感する事が出来たのも…ある意味、今回の件があったから。…ま、詰まるところ世の中どこで何があるか分からないし、いつどんな事が起こるかも分からないって事よね。
「さて、次は…っと、ちょっと待ってて頂戴」
店を出た後は街の中を少し歩いていたわたしだけど、そこで耳に嵌めていたインカムに通信が入る。その事をイストワールに伝え、わたしは入ってきた通信に答える。
「どうかしたの?」
「近くに花鳥園があるのを知っていますか?そこは前に、イリゼさんといーすんさんが二人で行った事のある場所らしいんです」
「へぇ、そうなのね。まだ時間があるし、行ってみようかしら」
「それでは、細かい場所をお伝えしますね。……あっ…」
「え、ネプギア?何かあったの?」
「すみません、今嘘を言いました…。ちゃんと調べたら、言った程近くありませんでした……」
「別に13㎞って言った訳でもないんだから、そんな謝罪はしなくても…。…だとしても、歩きじゃ結構時間が掛かるって程ではないんでしょ?」
真面目なのも謙虚なのも良い事だけど、気にし過ぎは良くない…と、通信越しにわたしは苦笑。その後、改めて場所を訊き、花鳥園の事をイストワールに話す。本人もその気になってくれて、わたし達はそこへと向かう事にする。
今さっき入った通信は、唐突なものじゃない。今回わたしは、今みたいに情報を受けたり、逆にこっちから質問なんかをしたりしながら、イストワールと出掛けている。…うん、インカムでサポート受けつつってなると、ほんとデートよね。本当に、なんでわたし気付かなかったのかしら。…別に相手は精霊じゃないけど。外見的には、むしろ妖精って感じだけど。
「セイツさんは、このようなところは初めてですか?(´・ω・)」
「そうね、初めてよ。花鳥園にしろ、それに近いテーマパークにしろそうだけど…こういう場所って、特別な理由がなければ仮に近くにあっても案外行かないものじゃない?」
「確かに元々好きであったり、誰かと遊びに行く…といった理由がなければ、一人で行く事はあまりありませんね。…と言っても、わたしもセイツさんも普通の立場や生活をしている訳ではないので、わたし達が特殊という可能性もありますが…(。-_-。)」
それはない…とも言い切れないのが実際のところ。わたしも他の女神の皆も、世間一般の『普通』からあまり離れ過ぎていないような生活をしているつもりではあるけど、それにも限度があるし、本当のところは分からない。…コンパやアイエフに訊いてもいいけど…わざわざ今訊く程の事でもないし、ねぇ?
とまあそんな会話もしながら向かい、わたし達は花鳥園へ到着。中はどういう感じになっているのか、一体どんな花や鳥がいるのか。そんな風に、ほんのり期待を抱きながら入園したわたしだったけど……
「うぅ…猛禽類の、猛禽類の獲物を見るような目が……(>_<)」
「こういう事も、身体が小さいと弊害として表れるのね…」
出てきた時、イストワールはすっかり疲れてしまっていた。獲物の気分を味わった事で、精神的に疲労してしまっていた。…うん、まぁ…なんというか…凄く、予想外の展開だわ…。
「…でも、楽しくはありましたね(・∀・)」
「…獲物を見る視線が?」
「そんな訳ないでしょう…それ以外の部分が、です(ーー;)」
「あ、やっぱり?まあそうよね。因みにだけど、イストワールは一人で出掛けた時、鳥に襲われたりとかは……」
「……聞きたいですか?(´・_・`)」
「い、いや…止めておくわ……」
真顔…とも違う、ただ少なくとも明るくはない顔文字に、それと共に発された声に、これは訊かない方がいいかもしれない…と辞退するわたし。実際のところ、どうかは分からない。そんな経験なんてした事ないのかもしれない。…でも、訊かないでおく事にした。…仮にあったとしても、それはそれでなんて返せばいいか分からないしね……。
「ま…まぁ気を取り直しましょ、気を。…あ、わたしも楽しかったわよ?素敵なところだと思ったわよ?」
「……?…あ、気を取り直さなきゃいけないような場所だった訳ではない、というフォローですか?
(´・Д・)」
「そ。こういう事は、ちゃんと言っておかないとね」
くるりと振り返り、花鳥園に向けて言う。気を取り直す…って部分含めて、イストワール以外誰も聞いていないとは思うけど、それでも言っておく。だって、わたしは女神だもの。聞いている人がいるかどうかに限らず、そこに人の頑張りがあるって分かっているものを悪く言うなんて、わたしが思う女神の在り方には反しているもの。
とまぁ、そんなやり取りもしつつわたし達はまた歩いていく。今度は商店街へと入り、とあるお肉屋でコロッケを買う。
「ここのコロッケは、ネプテューヌのイチオシらしいわ。…ネプギアからの情報だけど」
「そうなんですね。確かに衣はサクサクしてますし、味も良いですし、ネプテューヌさんが高評価をするのも分かります。…ですが……(´・∀・`)」
「えぇ。コロッケそのものの評価じゃないけど、一番の理由は店主さんでしょうね。あのノリと明るさなら、きっとネプテューヌと気が合うもの」
揚げたてのコロッケを食べながら、ネプテューヌの事を話す。勿論買ったコロッケは一つだけ。それを二人で分けて…というか、その大半をわたしが貰って、分かれた一部をイストワールが食べる。
「…早く、けりを付けたいわ。イリゼの事は勿論だけど…やっぱり、ネプテューヌがネプテューヌらしくないのは、調子が狂うもの。わたしも、皆も」
「そうですね。やはり、わたしも頑張らなくてはᕦ(ò_óˇ)ᕤ」
「…提案したわたしが言うのもアレだけど、あんまり気負い過ぎないで…というか、無理に頑張らないでね?だって、貴女は……」
普段は底抜けに明るい、転んでもただじゃ起きないどころか地面に刺さってでも笑いを取ろうとするネプテューヌだからこそ、今のネプテューヌはやっぱり嫌だし、何とかしたい。何とかしてあげたい。だけどそれは、わたしの思い。もしそれを理由に、イストワールが頑張ろうとしてるなら、それは違う。わたしはわたしで頑張るべきで、そのつもりで、イストワールが必要以上にその負担を背負う必要なんてない。彼女の事だから、それ位は分かっていると思うけど、一応わたしは釘を刺しておこうとし……
「……!待って下さい…今、ネプテューヌさんがいたような気が……Σ(・□・;)」
「ネプテューヌが…?」
…ぴくりと肩を震わせたイストワールの言葉で、状況は一変する。すぐさま、わたしは視線を走らせる。
今日、ネプテューヌが出掛けるなんて話は聞いていない。であれば、浮かぶ可能性は三つ。イストワールの気のせいか、ネプテューヌに似た人を見間違えたか……或いは、アルテューヌか。
「イストワール、姿が見えたのはどこ?」
「見間違いでなければ、わたしが見たのはあの路地に入っていく姿です( `ω´)」
「あそこね。…イストワール、貴女はここで動かないで頂戴」
一瞬の思考で、わたしは確かめる事を選択。意識を臨戦態勢へと切り替えながら、素早くイストワールの言った路地へと飛び込む。けれどそこに、ネプテューヌらしき姿は……いや、違う…!今度はわたしにも見えた…!角を曲がる瞬間だったからはっきりとじゃないけど、ネプテューヌらしき『誰か』の姿が…!
(ここは戻って、イストワールとプラネタワーまで退避する?…いや、あれがアルテューヌで、わたし達が気付いた事も認識してるなら、この場での退避はむしろ、こっちの策を気取られる可能性がある…!だったら……)
再びの思考を経て、わたしは追おうと決める。同時にネプギアへ通信を掛け、今の状況とわたしは追う事、イストワールの安全確保の為に応援を送ってほしい事を手早く話す。
「やっぱり、アルテューヌはプラネテューヌに出入りしている…?…なら、目撃情報なんかに目を光らせておくのもいいかもしれないわね…」
アルテューヌらしき姿が見えた角を曲がる直前で止まり、曲がった瞬間に斬り付けられる…なんて事があってもいいよう、最大限神経を張り詰めて曲がり角の先へと身を踊らせる。曲がった先は、脇道がちらほらと見える路地裏で…アルテューヌの、彼女らしき存在の姿はない。
曲がる前、わたしはネプギアに連絡を入れていた。今さっきも、一瞬足を止めていた。だからその間に、アルテューヌに逃げられてしまった?…ううん、まだよ。まだ、諦めるには早い…!
「ふ……ッ!」
女神化をし、路面を蹴る。素早く裏路地を突っ切り、曲がり角一つ一つを一瞬で見て確かめていく。ここまでは気付かれずに後を追う事を考えていたけど、その為に取り逃してしまえば本末転倒。ならばとわたしは気付かれない事より取り逃さない事を重視し、全力で追う。そしてその判断が功を奏し、再びわたしはアルテューヌらしき存在の姿を目で捉える。
(…間違いない…あの姿は、アルテューヌだわ……!)
抱く確信。より強まる緊張感。けれど同時に、確信を得た事でわたしは二つの選択肢を突き付けられる。このまま距離を詰めて、アルテューヌとの交戦に入るか、ここから再び気付かれないよう尾行をして、仕掛けるタイミングを伺う…或いはアルテューヌが拠点としている場所まで案内をしてもらうかという、二択に突き当たる。
成功した場合に得られるリターンの事を考えれば、後者を選びたいところ。仮に気付かれて逃走されたとしても、今の距離なら十分追い掛ける事が出来る。だけど、都合の良いタイミングまで泳がせるっていうのは、それまでアルテューヌを好きにさせる事と同義。恐らくアルテューヌはプラネテューヌの国民に危害を加えるなんて事はしないと思うけど、何か企んでいる可能性はある。後者の選択肢には、常に「あの時即座に仕掛けていたら」…という後悔をする可能性が付き纏う。
どうするか。どちらを選ぶか。どっちが最善の手か。…それは、そんなのは……
「…勿論、前者に決まってる……!」
再び路面を蹴って加速する。角を曲がってばかりのアルテューヌへ対して、どんどん距離を詰めていく。
何の目的でアルテューヌがプラネテューヌに現れたのかは分からない。何か企んでいるのかもしれないし、またプリンを買いに来ただけかもしれない。それは、今の段階じゃ分からない。だからこそ、ここで仕掛ける。ここで止める。それに、相手は末端の存在じゃなくて謂わば首謀者。わざわざ泳がせなくても、ここで捕らえる事が出来れば一気に事態は解決に向かう。
(けど、この動き…もしかして、わたしに気付いている…?だとしたら……)
確かに距離は縮んで行っている。けれど同時に、妙にアルテューヌは進路変更を繰り返している。少なくともそれは、はっきり目的地が決まっている、そこに向けて進んでいるって感じの動きではなくて…むしろまるで、移動そのものを目的としているような動き。或いは、道に迷っているような動き。
だけど、後者はまずあり得ない。もしそうなら、もっと途中で止まったり、見回したりする筈だから。それがないって事は…やっぱり、わたしに気付いている可能性が高い。
ならもうどちらにせよ、泳がせる選択肢はない。逃げられない内に、接敵するのみ。だからその為にわたしは、またも角を曲がったアルテューヌへ即座に追い付くべく三度目の加速。脚部のプロセッサに装填した圧縮シェアエナジーを解放して、一瞬でアルテューヌが曲がった角へと到達。更に角へ手を引っ掛け、急速ターンで角の向こうへと身を乗り出す。もしまだ逃げようとしているなら強引に止めるまで、待ち構えているならすぐさま戦闘に入るまで、今度こそわたしはここで……
「……──え…?」
……そう、思っていた。ここから先は、戦いあるのみ。そのつもりで、わたしは突っ込んだ。…だけど、そこに…アルテューヌの、姿はない。そして、わたしが飛び込んだ角の先にあるのは…行き止まり。
「そ、そんな馬鹿な…」
いない。道も、続いていない。それは、全く予想していなかった展開。もしや見間違えたのか、曲がっていなかったのかと元の通りに戻るけど、当然そんな訳がない。ここまでずっと追い掛けてきたんだから、アルテューヌが確かにいたっていうのも、間違いない。
「……っ、まさか…飛んだ…!?」
はっとして、すぐさまわたしは飛翔。周囲の建物よりも高い位置まで上がってぐるりと見回す…けど、空にも行き止まりの向こう側にも、アルテューヌの姿は微塵もない。やっぱりアルテューヌは…どこにも、いない。
わたしが見たのは幻覚だった?アルテューヌは転移か何かの技術を有している?それともクロワールが次元の扉を開いて離脱した?…それか、ひょっとして…実は行き止まりに見えるここが、どんでん返しみたいになってて壁の中に空間があるとか……?
「…って、流石にないか…けど、だったらどういう事よ…どうして、アルテューヌの姿が……」
行き止まりは行き止まり。本当に何の仕掛けもない…と、わざわざ背中を付けてみてまで確かめたわたしは、訳が分からず片手で頭を押さえる。
本当に、なんでアルテューヌが消えたのかが分からない。わたしの知る限り、次元の門もそんな一瞬で開いて一瞬で消せるようなものではなかった筈だし、そうなると転移とか透明化とか、わたしの知らない技術を使われたとしか思えない。だってここは行き止まり、他に進める道なんてないんだから。ここにあるのは、恐らく近くの店の物であろう鍵付きのケース位で……
「…………」
そのケースに、近付く。それ自体は、何の変哲もない、本当にただの鍵付きケース。だけど、よく見ればそのケースと後ろの壁の間には、隙間があった。大人じゃまず通れない、けど子供だったらギリギリ通れそうな隙間があって……わたしはそのケースをずらす。横からではなく、真正面から後ろの壁を見える状態にして…そしてわたしは、発見する。──そこにあった、身を屈めれば大人でも通ることが出来そうな穴を。
(ここから逃げた、って事?だとしたら、姿が見えなくなったのも頷けるけど…普通、こんなの分かる?最初からケースが退かされていて、アルテューヌが入りつつ元に戻したとかでもない限り、ここに来てすぐ気付く事なんて……)
あり得ない。そんな事は、普通に考えてあり得る筈がない。某答えを出す者とか、実は異能でも何でもない超推理とかでもない限り、ケースの裏にある穴を即座に逃げ道として活用するなんて、出来たりはしない。もしも出来るとするなら、何故かケースが退かされている状態だったとかの都合の良い想定を排するなら、そんなのは……
「……元から、知っていたとでも言うの…?」
普通ならそれもあり得ない。だけど、ここはプラネテューヌで、アルテューヌは…ネプテューヌは、このプラネテューヌの守護女神。そしてネプテューヌは…記憶の失う前のネプテューヌもまた、気軽に国民と仲良くなり、普通に遊んだりする性格だったのなら…例えば子供達と街の中で鬼ごっこやかくれんぼをして、その中でここの存在を知る事が過去にあったのだとしたら…。
これもまた、かなり都合の良い想定ではあるけど、『ネプテューヌ』ならあり得なくはない。暫くはあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていたのも、わたしに距離を詰めさせ、さっきわたしが直面した「一瞬で消えた」という状況を作る為の準備だったとも考えられる。考えられて、しまう。
「……っ…やられた…地の利は向こうにあるって、考えるべきだった…」
もう遅いと思いつつ穴の向こう入ってみるけど、やっぱりアルテューヌの姿はない。完全に撒かれた、してやられた。元々こっちも偶然アルテューヌを見つけただけだから、天界の時の様な作戦失敗って訳ではないけど…だとしても、悔しい。
…と、この時はまだ、単に撒かれただけだと思っていた。ただ、偶然のチャンスを逃しただけだって思っていた。…だけど…違う。わたしは、気付く。
「…あれ、ここって……」
穴を抜け、進んだ先をわたしは知らない。でも、さっきよりもずっと、近くに人の…大勢の人が行き交う音が聞こえている。明らかにさっきまでより、大通りに近い位置へと来ている。
じわり、と心の中に馴染み始める不安。嫌な予感。まさか、でももしや…そんな風に思いながら、わたしは女神化を解き更に歩く。一番近くの角を曲がり…そしてわたしは、大通りに出る。わたしが路地へと入った位置とは少し離れている…けれど同じ通りに、イストワールと一緒にいた場所近くへと、ここが繋がっていたのだと知る。
「イストワール?…イストワール…!?」
抱いた予感が、一気に噴出。わたしはイストワールの名前を呼びながらすぐに目を走らせるけど、どこにもイストワールの姿は見えない。
真面目なイストワールが、今の状況を理解した上で、待っていてと言ったにも関わらずどこかへ行ってしまう事なんて、まあまずない。もしネプギアか誰かが来てくれたなら、イストワールと合流した事を連絡してくれる筈だけど、それもなかった。
だとしたら、あり得る可能性は二つのみ。イストワールにとって無視出来ない、やむを得ない事情があって移動したか……何者かによって、移動をさせられたか。
「…くッ……!」
拳を、握り締める。自分の判断ミスに、想定の甘さに、怒りが込み上げる。
もしアルテューヌがわたしの考えた通り、あの穴の存在を初めから知っていたのなら、穴がどこに繋がっているのかを知っていてもおかしくない。そして、わたしを撒きつつあの通りに戻る事を考えていたとしたら…これ程目的に合致した抜け道もまた、ない。
(先を、越された……ッ!)
偶々だと思える状況で、偶然を装う事で、イストワールを囮にアルテューヌを誘い出す。それがわたし達の、攻めの策だった。今日の外出は、その為の準備だった。アルテューヌ次第の部分もあるけど、悪くない策だって、わたしは思っていた。
だけどどんな策も、どれだけ確実だと思える作戦でも、実行しなければ意味がない。実行出来なければ、その策は無いのと変わらない。実行する前に仕掛けられてしまえば…やりようがない。あまりにも単純で、あまりにも当然で…だからこそ失念していた、想定すらしていなかった、本来ならば気を付けるべき要素。それを突かれた。やられてしまった。
向こうも、アルテューヌもイストワールが外出したタイミングを狙おうと考えていたのか、それとも今回は本当に偶々遭遇しただけだったのかは定かじゃない。だけどもし、偶々だったとしたら…偽りの偶然を利用しようとしたわたし達は、本当の偶然にやられた事になる。…本当に…本当に、気を付けるべきなのに、なまじ策を考えたばかりに、想定していなかった。考えていなかった。その策を実行するより先に──アルテューヌに、先手を打たれてしまうなんて。
今回のパロディ解説
・「すみません、今嘘〜〜ありませんでした……」
BLEACHに登場するキャラの一人、市丸ギンの台詞の一つのパロディ。直後のセイツの「13㎞」からも分かる通り、卍解絡みの台詞のパロディです。
・インカムでサポート受けつつ〜〜精霊じゃないけど
デート・ア・ライブの事。セイツといえばデート、デートといえばデート・ア・ライブ…ですかね。因みに同時連載中のデートの二次創作の方も、現状は全然デートしてません。
・某答えを出す者
金色のガッシュに登場する能力の一つ、アンサー・トーカーの事。あれがあれば即気付ける事でしょう。しかしあの渦になっている目を見ると、ぬら孫の氷麗を思い出しますね。
・某異能でも何でもない超推理
文豪ストレイドッグスに登場するキャラの一人、江戸川乱歩の異能の事。しかしこの通り、実際には単に推理力が凄いだけ、シンプルに頭良いだけとの事ですね。