超次元ゲイムネプテューヌ Origins Unknown   作:シモツキ

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第三十四話 自分との激突

 神次元との交信を終えたいーすんとセイツが、わたし達に言った第二の策。アルテューヌを誘い出す為の攻めの策…それとは逆の、アルテューヌにいーすんを攫われてしまった場合に備えた、原天界帰をさせない為の守りの策。

 それは、いーすんといーすん…原天界帰の核になる信次元のいーすんと、同一人物なだけあって同じ見た目をした…だけど当然、神次元の住人だから信次元の歴史の記録なんてしてないし、オリゼが創り出した訳でもない神次元のいーすんに入れ替わってもらう事で、一切アルテューヌに悟られる事なく原天界帰を躱す作戦。確かにこれは、有効に働きそうな策で…だけど凄く、危険な策でもあった。だってこれは、騙す策なんだから。この策に助けられる状況っていうのは、いーすんが攫われた後…既にいーすんがピンチの状態になってるって事だから。その状況で、騙されたって知ったら、何をされるか分からない…だから二人からその策を聞いたわたし達は、そこに一工夫加える事にした。いーすんを守れるように…もう一つ、仕込みを用意した。

 

「…こうして対面するのは、あの時以来かしらね」

「えぇ。あの時は、貴女がわたしを騙してくれたわね」

 

 アルテューヌと、向かい合う。自分と同じ姿をした…同一人物以上に同じ、だけどわたし自身では決してない、過去のわたしと正対する。

 あの時…イリゼの携帯端末でアルテューヌから呼び出された時、わたしは欠片も冷静じゃなかった。だからまんまと、アルテューヌの策略に嵌まってしまった。だけど、今は違う。立場も、状況も…わたしの、状態も。

 

「けど、これは一体どういう事かしら?まさかいーすん、隕石から作った矢か何かにでも刺されたの?」

「別に今のは、わたしの能力という訳ではありませんよ。わたしはあくまで、協力を得ただけです

(´・ω・`)」

 

 ちらり、とアルテューヌはいーすんへと視線を向ける。口振りは落ち着いているけど…その瞳からは、驚きを感じる。アルテューヌからすれば、紙から突然わたしが現れたんだもの。驚かない訳がない。

 そのアルテューヌの問いに答える形で、いーすんは首を横に振る。いーすんが否定して…クロワール、クロちゃんが口を開く。

 

「…驚かせてくれるじゃねぇか。まさか、切り取ったねぷのーとのページにも、封印能力があるなんてよ」

「この発想に行き着いたのは、他でもない貴女のおかげよ。同じように、切り取ったページを利用した貴女の…ね」

「はッ、そりゃつまり自分の行いが、周り回ってきたって訳か。因果応報ってのは恐ろしいもんだな」

 

 やられたもんだぜ、と大仰にクロちゃんは肩を竦める。怪訝な顔をするアルテューヌに、続けてクロちゃんは軽く伝える。おっきいわたしが持つ本…ねぷのーとと呼んでいる、魔導書の存在を話す。

 ねぷのーとのページ。切り取った一枚。それが、わたしがこの場に現れた絡繰り。おっきいわたしに頼んで、わたしをねぷのーとの中に封印してもらって、そのページを切り取った上でいーすんに持っていてもらった。万が一攫われた時、いーすんを守る事が出来るように、外出する時は毎回そうしてもらう…そういう事になっていた。流石に切り取ったページの封印能力は一時的且つ使い切り、切り取る前じゃないと封印出来ない…みたいな制約も色々あって、その制約と、わたしもわたしでずっとページの中にいる訳にはいかない事から、外出の度に同じ手順を踏まなきゃいけなくはなるけど、それでもこの案を採用しておいて良かった。採用したからこそ、こうして神次元のいーすんを守る事が出来るんだから。

 

(…まぁ、流石にここまで早速機能するとは思わなかったけど…)

 

 上手くいったとはいえ、正直今日いーすんが攫われた事については驚きでしかなかった。まだ今日は攻めの策を始める前、攻めの策の中で神次元のいーすんが自然に振る舞う事が出来るよう、普段のいーすんと同じような事をしてもらう…って目的で、出掛けてもらっただけだったから。セイツも護衛とかじゃなくて、本当にただ同行しただけ、ネプギア経由でいーすんの普段を神次元のいーすんに伝える役目として、一緒に出掛けただけだったから。

 当然わたしも、今日はまだ試すだけというか、考えていた通りにやれるかどうかを確かめるつもりしかなかった。だから本当に驚きだったし…作戦に向けた準備段階でも、試しにという形でやっていて良かった。今は、本当にそう思う。

 

「…もっと早くわたしを出してくれても良かったのよ?」

「すみません。ここに来るまでは、そもそも身動きが取れませんでしたし…焦ってすぐにお呼びするよりは、機を見計らう方が良いと思ったんです。わたしの正体を秘匿している間は、逆に安全だったとも言えますしね(´・∀・`)」

「流石は神次元のいーすん。こっちのいーすんと同じように、結構肝が据わってるわね」

 

 確かにそれはその通り。向こうはいーすんが必要なんだから、下手に動かない方が安全とも言えるし…自分が神次元のイストワールだって明かしたタイミングも、そこからの立ち振る舞いも、やり取りの主導権を握る事で確実にわたしを呼び出す為のものだったんじゃないかと思う。ただそれでも、ヒヤヒヤした。封印状態でも音は聞こえるからこそ、気が気じゃなかった。

 だけど、だとしても…こうして今、わたしはアルテューヌと正対している。想定した形とは大きく違うけど…これでやっと、これまでの借りを返せる。

 

「投降しろ…だなんて言わないわ。貴女は…わたしが、倒す」

「倒す?まさか、もう勝った気でいるの?」

「貴女こそ、真っ当に戦ってわたしに勝てるつもりなの?過去のわたしが、今のわたしに」

 

 ぴくり、とアルテューヌの眉が揺れる。これは別に、必要な煽りなんかじゃない。だけど、アルテューヌは…彼女はもう、ただの敵で括れるような相手じゃない。

 

「正に一触即発…って感じだな。…どうするつもりだよ、アルテューヌ」

「どうもこうも、今は一対一よ?この状況で、わたしが退くとでも?」

「ま、そりゃそうだよな。だったら良い事を教えてやるよ。向こうのネプテューヌは今、恐らく本領発揮が出来ねぇ。なにせ、ねぷのーとにゃ封印している相手の力を吸収する効果もあるからな」

 

 そうだろ?…という視線を向けてくるクロちゃん。勿論そんな視線に答える義理はない…けど、内心でわたしは舌打ちをする。見抜かれている事に、こんな形でクロワールの存在が障害となった事に、ほんの少しだけ焦りを抱く。

 今クロちゃんが言った通り、今のわたしは十全の力を発揮出来る状態じゃない。戦う前から消耗している、そんな状態。それに、他にも考えるべき…考慮すべき事がある。

 

(ここは天界、だったら時間さえあれば皆が来る事も出来る。一対一のこの状況、わたしの手で倒したいところだけど…今はわたし達としての勝利を優先するべきかしらね…)

 

 見える景色は、間違いなく天界のもの。天界の街の事も考えると、やっぱりアルテューヌ達は天界を拠点に活動しているのかもしれない。加えてここで、一対一で戦って勝つ事で得られるのはわたしの満足感だけであって、それより優先するべき事なんて沢山ある。本来負わなくても良かった危険を背負ってまで協力してくれた神次元のいーすんを守る事もそうだし、アルテューヌだけじゃなくクロワールだって放っておく訳にはいかないし…一対一に拘るより、味方と一緒に戦う方が、絶対に勝率は高い。そして勝利はイリゼの奪還に繋がる以上、今は冷静に……

 

「……──ぁ…」

 

 その時だった。そう考えている時だった。そういう思考になったからこそだった。これまでは目の前にいるアルテューヌへの警戒やいーすんの事、それにここがどこなのかって事に意識が向いていて気付かなかった…自分の中で優先度が下がっていた、クロちゃんの近くで鎮座する結晶体。その正体に…わたしは気付く。

 薄紫且つ半透明の結晶体から感じるのは、シェアエナジー。という事は恐らく、アルテューヌが用意したもの。でも、そんな事はどうでもいい。どうだっていい。大事なのは、その中に見えるもの。その内側に映るもの。それは、そこにいるのは──。

 

「……っ、イリゼ……」

 

 一瞬、激情に駆り立てられる。怒りと衝動が燃え上がる。そこにいるイリゼに…イリゼを利用しようとしているアルテューヌと、イリゼをこんな目に遭わせている自分の、両方を殴り付けたくなる。

……でも、この前とは違う。爆ぜる前に、爆ぜる寸前で、怒りは胸の中で留まる。前とは…違う。

 

「…騙して、傷付けて、利用までして…ふん、見下げ果てた根性ね。あの時の自分の選択は正しかったんだって実感するわ」

「あの時?」

「記憶を取り戻さなくて良かった、って事よ。記憶を取り戻す事で、貴女の様な性根に成り下がるなら……やっぱりそんな記憶は、わたしにとって無価値同然ねッ!」

「……ッ…こっちこそ、貴女に価値を感じられるのなんて真っ平御免よ。過去を捨てた、切り捨ててのうのうとしていた貴女なんかにはね…ッ!」

 

 鼻を鳴らして、睨め付ける。言葉に、声に、これ以上ない位の否定を込めて…そしてわたしは、地面を蹴る。

 叩き込む斬撃。振り出した大太刀を止めるのは、同じく大太刀。刃と刃で斬り結び…互いに弾く。

 

「下がっていて、いーすん!」

「支援…を期待しても仕方ないわね、下がってて頂戴!」

「わ、分かりました…!(>_<)」

「おう、俺に期待なんかせず戦え戦え」

 

 ほぼ同時に、わたしとアルテューヌは声を上げる。着地し、即座に再び地面を蹴って、得物を突き出す。その時、アルテューヌもまたわたしと全く同じ動きをしていて…突き出した大太刀同士が擦れ合う。身体を捻って、わたしもアルテューヌも刺突を躱す。

 

(きっとネプギア達なら、ここまで辿り着く。だからまずは、それまでいーすんを守りながら時間を稼ぐ。でも、それはそれとして…イリゼを取り戻せるチャンスがあれば、何が何でも取り戻す…ッ!)

 

 ここが天界である以上、インカムでの通信は出来ない。繋がらない事はもう確認済みだし、他の手段も基本的には使えない。神次元のいーすんはこっちのいーすんより次元の扉を開く事に関しては長けてるみたいだけど、それだってこんな状況じゃ上手くいくか分からない。もっと言えば、ここには更に次元の扉を開く事が得意なクロちゃんがいる以上、開こうとしているのを察知されたり、干渉されたりする…なんて事も、あるかもしれない。だから、こっちから皆に場所を教えたり、応援を頼んだりする事は出来ない。

 だけどこっちには、切り取ったねぷのーとのページが…おっきいわたしとの繋がりがある魔導書の一部がある。その気配、残滓の様なものを辿る事で、わたし達の足取りを探せる筈。天界へ移動した時点で当然途切れてしまうんだろうけど…途切れたという事実があれば、きっと天界や別次元の存在を思い付く筈。確証はない、希望的観測だけど…ネプギアは賢い子だから、大丈夫。

 

「甘い攻撃ね。積み重ねはこっちが上よ…ッ!」

「残念だったわね、記憶を取り戻さなくたって身体は覚えてるものよ…ッ!」

 

 翼を広げ、飛び回りながら何度も激突する。横薙ぎを仕掛け、回避からの斬り上げを後退で躱し、同時の袈裟懸けでまた斬り結ぶ。押し切ろうかとも思ったけど…すぐにその考えを頭から捨てる。思うところはあれど、相手もまた『わたし』。だったらパワーにしろスピードにしろ大きく上回る事は出来ないだろうし……

 

「…軽いわね。随分と消耗しているようじゃない…ッ!」

「ち……ッ!」

 

 逆に力で押し込まれ、振り抜きで姿勢を崩される。続けざまの一太刀はそのまま崩れた姿勢で落下する事によって寸前で回避し、避けた直後に立て直す。立て直しながら、次の攻撃を潰す形で突き上げるようなショルダータックルを下から仕掛ける。

 今は何とかなった。けどもう、完全にわたしの消耗具合はアルテューヌに把握されている。…わたし自身、自分がどの程度ねぷのーとの封印で消耗したのかを痛感する。相手がアルテューヌだからこそ、そのアルテューヌにどの程度押し負けたかで、自分の消耗具合が明確になる。

 

「それに…緩い、緩いわ。自分が相手だと、こうも太刀筋の鈍りが分かるものなのね」

「緩い?ここまで普通に打ち合っておいて、よくそんな事を言えるわね」

「言えるわよ、緩さが伝わってくるんだもの。…わたしは、貴女とは違う。日和って守護女神戦争(ハード戦争)を投げ出した貴女とは、勝利への飢え方が違うのよ…ッ!」

「何を…どこぞの血に飢えた狼みたいな事を…ッ!」

 

 片手で軽く大太刀を回したかと思えば、脇構えの様な姿勢で突っ込んでくるアルテューヌ。対するわたしは大太刀とは逆側の斜め前へ飛ぶ事で、突進の勢いをそのまま乗せた斬撃を回避。即座に振り向き、回転からの斬撃を放ち…同じように振り向いたアルテューヌと攻撃がぶつかる。せめぎ合う中で、大太刀越しに鋭い視線を向けられる。そんな視線一つで臆するようなわたしじゃないけど…それと共に発された言葉に、わたしは腹立たしさを抱く。

 

「わたしは皆が納得する道を、皆で選んだつもりよ。それを投げ出したなんて、随分な言い方ね…!」

「納得?単に想定していなかった事態になって、守護女神戦争(ハード戦争)どころじゃなくなっただけでしょう?第一貴女は、守護女神戦争(ハード戦争)での事を殆ど知らない癖に…!」

「……っ…だったら貴女は、守護女神戦争(ハード戦争)を続けるべきだったとでも…!?」

「そう、言ってるのよッ!」

「な……ッ!?」

 

 ただの押し合いじゃ、さっきの二の舞になる。技術面も、同じわたしな以上力の劣勢を覆せるとは思えない。だからわたしは押し合いに固執せず、せめぎ合いとなればすぐに下がって次の攻撃を仕掛けるか、直後に蹴りを放つかをして対応する。

 その中で、言葉もまたぶつけ合う。腹立たしさをぶつければぶつける程、返ってくる言葉に一層腹立たしくなってくる。一体何が嫌なのか。一体何が気に食わないのか。緩いだの投げ出しただの言うのなら、継戦こそが望みだったのか。わたしは反射的にそう言って…直後、返ってきた言葉に唖然とする。アルテューヌからの肯定に、唖然とさせられる。

 

「貴女…本気で言ってるの…!?本気で、戦争を……」

守護女神戦争(ハード戦争)よ、昔はともかくわたしが…わたしの時代に争っていたのは、あくまでわたし達守護女神だけよ…!やっぱり、分かっていないんじゃない…ッ!」

「自分達だけだから、いいとでも…ッ!?だとしたら、好戦的が過ぎるんじゃないの…ッ!?」

「好戦的?ふんッ、本っ当に…分かって、ない、みたいねッ!」

 

 斬撃に言葉を乗せるようにして、何度もアルテューヌは踏み込みからの斬撃を打ち込んでくる。それをわたしは、捌きながら下がって凌ぐ。隙を見て、コンパクトな振りでのカウンターを返す。アルテューヌは力任せの機動で強引に躱し、また仕掛けてくる。現状わたしより明白に有利と言える、力の余裕を活かした真正面からの攻防を展開する。

 でもそれより…激しい連続攻撃よりも、それと共に発される言葉の方が、わたしにとっては衝撃だった。わたしには理解の出来る主張じゃなくて…アルテューヌもまた、気に食わないような表情に変わっていく。斬撃へ更に力が籠り、より叩き付けるような攻撃になって…わたしに迫りながら、アルテューヌは言う。

 

守護女神戦争(ハード戦争)は、女神の戦いよ!国の威信を掛けた、国の象徴である女神同士の、国を…国民を背負った戦いなのよ!それを、よく分かってもいない貴女が終わらせようとした事も…ッ!国を背負っていながら決着を付けようとしなかった三人も…ッ!わたしは、絶対に…認めないッ!」

 

 大上段からの、振り抜かれる一撃。叩き付けられる言葉に意識を割かれた事でわたしは躱せず、掲げた大太刀で受け止める。衝撃が大太刀から全身に走って、わたしは大地の一つに落とされる。

 

「ネプテューヌさん!Σ(゚д゚lll)」

「…大丈夫よ、いーすん…この程度でやれるわたしじゃないわ……」

 

 地面に激突した事で巻き上がる砂煙。それを横薙ぎで払ったわたしは、いーすんへと言葉を返す。

 直後に感じる、本能が訴える危機。考えるより先に後ろへ跳べば、一瞬の後大剣が、エクスブレイドがわたしのいた場所を押し潰す。

 

(わたしが砂煙を払って、姿が見えるようになるのを待ってたって訳ね…)

 

 飛び掛かるようにして空から襲ってくるアルテューヌの攻撃を後方宙返りで躱し、着地と同時に踏み切り突っ込む。逆袈裟に対してアルテューヌは横に跳び、且つ身体をわたしの方へ回して横から蹴りを打ってくる。迫る蹴りを、大太刀から離した片手で受け止め…衝撃を受け流すべく、蹴りとは逆側へ向けて跳ぶ。

 

「よく分かっていないわたしが…えぇ、そうね。それは否定出来ないわ。だって、覚えていないんだもの。わたしがわたしになった時はもう、守護女神戦争(ハード戦争)どころじゃない状況になっていたんだもの」

「そう言う割には、全く殊勝な雰囲気じゃないわね。不満だって事しか伝わってこないわよ?」

 

 追ってくるアルテューヌの攻撃を、小刻みなステップで捌きながらわたしも切り返す。わたしは躱したり逸らしたりしてからのカウンターで、アルテューヌは防御から押し返す形でのカウンターで、『攻撃後』という隙を狙い、大太刀を振る。

 心の中で反響するのは、認めないというアルテューヌの言葉。その気持ちは、理解出来る。出来るけど…受け入れはしない。受け入れる事なんて出来ない。

 

「不満?不満なんて軽いものじゃないわ。わたしはいい、わたしに対する否定だったらその一つや二つ、飲み込んだって構わないもの。けど…皆の気持ちを、皆の選んだ道までを否定するのは許さないわ…!ノワールの思いを、ベールの意思を、ブランの決意を…それを否定する事なんて、ましてやそれを知らない…触れる事すらしていない貴女には、絶対に否定なんてさせはしない…ッ!」

 

 幾度目かの打ち込みを、刀身の根元近くで受け止める。そこから手首と肘の両方を回して、アルテューヌの大太刀を下方へと押さえ付ける。そうしながら、アルテューヌへとわたしの言葉を叩き付ける。

 アルテューヌは認めないと言った。わたしだけでなく、ノワール達の事も否定した。それは許さない、それは許せない。ノワール達が、自分の責務を放棄したように言われる事は。だってわたしは、知っているんだから。三人は国を、国民を、大事な人達の思いを背負っているからこそ…『これまで』に固執せずに、『これから』を選んだんだから。勿論それが正しい選択で、ノワール達は正解を選ぶ事が出来たんだ…なんて、傲慢な事を言う気はない。だけどわたしは、友達として…同じ女神として、皆の選択と決心を尊敬しているからこそ…わたしもアルテューヌのその言葉は、絶対に認めたりなんかしない。

 そしてわたしは、アルテューヌを見据える。わたしの意思を、アルテューヌに示す。

 

「知らない?知らない、ね…ふっ、あははははッ!それを貴女が言うのね、他でもない貴女が…ッ!」

「……っ!何が、面白いの…!?」

「だって、そうでしょう?…わたしは、貴女が記憶を取り戻さなかったから…記憶を取り戻す道を捨てたから、知る事も触れる事も出来なかったんだから…ッ!」

 

 返される視線に、怒気が籠る。捻り、上を取る事で押さえていた大太刀が、少しずつ力で押し返される。

 

「否定するのは許さない?否定なんてさせない?…過去を、記憶を、わたしを一方的に否定しておきながら、知りもせずに要らないと切り捨てた貴女が…どの口が、それを言っているのよッ!」

「それは…そうかも、しれないけど…だけど…ッ!」

「だけど何よ!?それはそれ、これはこれ?だったらやっぱり、貴女にわたしを否定する資格なんてないわ!貴女が自分の事を差し置いて否定するなら、わたしもわたしの考えで否定する…貴女の事も、三人の事もッ!」

「く、ぅ……ッ!」

 

 言い返せない。もしアルテューヌ…記憶を失うより前の、過去のわたしが要因に、わたしが記憶を取り戻そうとしなかったから、というのがあるのなら、アルテューヌが知らないのはわたしのせいだから。わたしがアルテューヌから、知る機会を奪ってしまったようなものだから。

 動揺が響くように、更に大太刀を押し返される。そしてアルテューヌは言葉を張ると共に、強引にわたしの姿勢を崩す。咄嗟に放った蹴りは垂直跳びで躱されて、更にそこからアルテューヌも蹴りを突き出してくる。避けられない…そう感じたわたしは蹴りへ向けて頭突きを放ち、多少なりともその威力を相殺する。それでも勢いを殺し切れず、わたしは背後へ数歩よろめく。

 

「だと、しても…わたしはノワール達への否定を、認めたりなんてしない…!知らないというのなら、教えてあげるわ…!わたしのせいで知る事も出来なかったのなら、尚更聞かせてあげるわ…!ノワール達の事を、皆の事をッ!」

「知っているわよ?一人じゃ勝てないからって、三人で共謀してわたしを脱落させようとした三人の事ならねッ!」

 

 力を抜き、仰向けに倒れ込む。次の瞬間には、わたしの首があった場所をアルテューヌの大太刀が横に薙ぐ。斬撃が通り過ぎるのに合わせてわたしは足を屈ませ、跳ね上げ、ハンドスプリングの要領で下から蹴りを腹部へ打ち込む。アルテューヌは両腕を交差させる事で防ぎ、後ろへ飛んで衝撃を殺し、構え直す。

 

「共謀…確かにそんな事も、言っていたわね…!」

「情けないものでしょう?わたしに敵わず、同じ敵と手を組んで、挙句今は決着も付けないまま…わたしは三人の事をそれぞれが強敵だと思っていたけど、今からすればとんだ勘違いだったわ」

「…貴女、本当にそう思っているの?」

 

 呆れたように言うアルテューヌ。その事は…わたしが天界から落ちる直前の事はわたしも聞いた事があるし、確かに三人がわたしを脱落させる為に手を組んだのは、間違いないのかもしれない。

 だけどそれより気になるのは、さっきも言った、決着を付けていない事へ対する非難。わたしへの怒りは分かる。ノワール達への敵意も、ずっと戦ってきたんだからある意味当然。でも…それだけは、理解が出来ない。

 

「決着を付ける事が、そんなにも大事なの?貴女は言ったわね、守護女神戦争(ハード戦争)は国と国民を背負う戦いだって。けど、プラネテューヌの皆は…ううん、信次元の皆は、継戦を、決着を付けるまで戦う事を望んでなんかいなかったわ。だったら…今の在り方こそが、女神としても正しいんじゃないかしら?」

「…確かにね。国民が望んでいないのに続けるとしたら、そんなものはただの独り善がりでしかないわ」

「だったら……」

「でも、言った筈よ。守護女神戦争(ハード戦争)は、それどころじゃなくなっただけに過ぎないって。そしてそれは、国民の皆にとっても同じ事。有耶無耶になって、有耶無耶のまま今まで至って…そんな事で、本当にいいとでも思っているの?誰も望んでいなかった、結果的にそうなってしまっただけのものを、そのまま受け入れる事が正しいだなんて…わたしは、思わないッ!」

 

 掲げた手の先、そこに現れるエクスブレイド。腕の振りに合わせて放たれたそれをわたしは飛んで躱し、わたしも同じようにエクスブレイドを放つ。アルテューヌもまた跳躍し回避…するどころか、わたしのエクスブレイドの鍔を踏んで、蹴り出し加速を掛けてくる。

 それは、わたしも思い付いた事だった。だけど最初から消耗している今のわたしじゃ、上手くいかない可能性がある…そう思って断念をした動きだった。

 

「この…ッ!」

「一手、遅いッ!」

 

 迫るアルテューヌと大太刀で打ち合う。勢いが乗っている分アルテューヌの斬撃の方が重く、わたしの方が弾かれる。けどこうなる事は分かっていたから、わたしは仰け反る力を利用し蹴り上げる。この蹴撃でアルテューヌの手から大太刀を跳ね飛ばす。

 ここまでは良かった。けど次の瞬間、足首を掴まれ振り回される。歯を食い縛り、何度かその状態から逆の脚での膝蹴りを放ったけど…アルテューヌの言う通り、一手遅かった。単純なパワーやスピードだけじゃなくて、こういう時の姿勢制御やそこからの立て直しにも、封印による消耗が響いていた。わたしの膝蹴りが届く間際、アルテューヌは振り抜くようにして手を離し…再びわたしは、地面へと打ち付けられる。

 

「ぐッ……!」

 

 背中と腰に、激しい衝撃が走る。アルテューヌの方も目一杯の力で投げたからか、すぐに追撃をしてくる事はなかったけど、わたしが受けたダメージもさっきの墜落より大きい。

 ならばとわたしは、敢えて隙を晒すように、ゆっくりと起き上がる。この誘いに乗って仕掛けてくるなら反撃に移るし、乗ってこないなら慌てて起き上がるよりも身体への負荷を減らせる。そしてアルテューヌが選んだのは…後者。まだ余裕だとばかりの雰囲気を見せながら、わたしが蹴り飛ばした…落下してきた大太刀を掴む。

 

(…このまま戦ったら、十中八九ジリ貧になる。皆が来るまで持ち堪えられれば…とも思うけど、今の状態じゃどこまで持つかは分からない。…だったら、一か八か……)

 

 真っ直ぐに構え直して、アルテューヌを見上げる。アルテューヌもまた、わたしを見下ろし構え直す。

 まだ、焦るような状況じゃない。まだまだわたしは戦える。けど…今は良くても、今よりずっと後は?ここから更に消耗したら?ネプギア達の到着が、かなり遅れたら?…そう考えると、不安感は拭えない。それに、封印による消耗の事は知っていたけども、それについて教えてくれたおっきいわたしは、決してねぷのーとの力の全てをきちんと把握してる訳じゃない。だから、単なる消耗以外の何かがある可能性も否めない。

 懸念が募る中、頭に浮かぶのはネクストフォームという選択肢。シェアエナジーの消費が激しくなる一方で、教会のシェアクリスタルから届くシェアエナジーの量は減る…結果活動時間が大きく制限されるネクストフォームは、本来だったら今みたいな時間稼ぎには向いていない能力だけど、ネクストフォームなら今の戦況を間違いなく変えられる。時間稼ぎじゃなくて、そのまま倒す事だって可能かもしれない。勿論決め切れずに活動限界を迎える危険も十分あるけど、持ち堪えられなくなる危険があるのは今も同じ。なら、このままじゃジリ貧になる事が見えてる現状維持より、ハイリスクだとしても……

 

「…ふん、流石にわたしなだけあって、消耗してても中々しぶといわね。このままじゃ、貴女を倒すのにもう暫くかかりそうだわ」

「…なら、モンスターでもけしかける?貴女はそれが得意なんでしょ?」

「いきなり現れておいてモンスターの用意を求めるなんて、勝手なものね。…悪いけど、その期待に応える気はないわ。モンスターじゃ、貴女を倒すには足りないもの」

 

 モンスターじゃ足りない。そう語るアルテューヌから感じるのは、向こうも攻めあぐねてる…なんていう、都合のいいものじゃない。感じるのは、むしろ逆。アルテューヌには…まだ、何かがある。

 

「貴女、何を……」

「見せてあげるわ。今のわたしの…存在を否定されたわたしの、もう一つの姿を」

 

 直後、アルテューヌの身体から漏れ出るように、シェアエナジーとは違う力が周囲に漂う。暗い色の…けど負のシェアエナジーが放つ闇色とも違う光が、アルテューヌの身体を包み込む。そして、次の瞬間、アルテューヌの姿を包んでいた何かの力が収束し……爆ぜるように、解き放たれる。

 一瞬、反射的に、わたしは目を閉じてしまった。警戒はしていたし、即座に開いたけど、確かに一瞬目を閉じてしまっていて…一度閉じた目を開いた時、そこには変わらずアルテューヌがいた。──その身を、その姿を変容させた、これまでよりも明らかに異質なアルテューヌが。

 

「その、姿は……」

「勿論、プロセッサユニットを変えただけじゃないわよ?それとも、RPGの定番みたいに第二形態にでもなると思った?」

 

 アルテューヌの言葉通り、容姿そのものは殆ど…少なくとも、ぱっと見る限りでは変わっていない。プロセッサこそ大きく変容している…というか、大分露出度が上がっているけど、それ以外の差異といえばせいぜい胸元に何かの紋様がある位で……

 

「……待って、わたしって記憶を失う前は露出狂だったの…?」

「馬鹿言わないで…それを言ったらグリーンハートも似たようなものでしょうが…」

「それは、そうだけど…流石にちょっと、それはどうなのよ…?」

「心配しないで頂戴、自覚はあるわ」

 

 まさか、と一抹の不安を覚えたわたしが訊くと、アルテューヌは不服そうに返してくる。流石に自分が望んでそういう格好をしている訳じゃない、記憶を失う前のわたしは決して露出狂だったなんて事はないと分かって、少し安心はしたけど…それでもこう、何とも言えない気持ちになる。

 だって、腕とか脚とかはしっかりプロセッサに包まれてるけど、胴は…胸と腰回りは水着位にしかプロセッサがないのよ?それも普通の水着じゃなくて、マイクロビキニレベルというか、腰回りは本当に最低限で済ませてる感じだし、胸元なんかは両方の斜め下から前にかけてプロセッサが張り付いているだけに見えるし、幾ら何でもこれは…って、うん…?

 

(…待って…この姿、このプロセッサって……)

 

 緊張状態が続いた事と、あまりにも衝撃的な格好…しかももう一人のわたしがその格好をしているという事実を目の当たりにした事で気付くのが遅れたけど…わたしは、この姿を知っている。見た事がある。そう、これは…あれは……

 

「わたしはこの姿、あまり好きじゃないの。だから…一気に終わらせてもらうわ」

「……──ッ!」

 

 自分の中に浮かんだ、戦闘には直結しない思考。ほんの僅かとはいえ、それに気を取られた直後、新たな姿となったアルテューヌは突っ込んでくる。反射的にわたしは防御体勢を取る…けど、速い。これまでよりも、明らかに、明白に…速い…ッ!

 

「ぅ、ぐ…ッ!」

「油断したの?拍子抜けでもしてたの?もしそうなら、そう考えた自分を恨む事ねッ!」

 

 さっきの空中での打ち合いと違って、今度は翼を広げて、地面を踏み締めた上での防御だった。それでもわたしは弾かれ、仰け反る。続けざまにアルテューヌは身体を回し、後ろ蹴りでわたしの腹部を蹴り込んでくる。諸に喰らったわたしは跳ね飛ばされ…更に迫るアルテューヌの追撃。

 

「そこッ!」

「……ッ、そう上手くいくとは…思わないでッ!」

 

 右手で持っている大太刀を地面に突き立て、続けて両足も地面に付ける事で急減速。それを見越していたように、驚く事なくアルテューヌは得物の間合いに入った瞬間上段から刃を振り下ろしてくる。

 蹴撃の痛みが鈍くお腹に残る感覚を味わいながらも、わたしは両足を離す。わたしと地面との設置面が大太刀の刃だけになり、遠心力でわたしは大太刀を軸に回る。その動きで以ってアルテューヌの斬撃を躱し、逆に遠心力を乗せた裏拳をアルテューヌの顔へと振り出す。けれどアルテューヌは、減速する事なくそのまま駆け抜ける事で裏拳を回避。避けた直後に反転し、再度わたしに向けて斬撃を放つ。

 

(やっぱり速い…速いけど、対応し切れない程じゃない…!)

 

 二度目の斬撃は横跳びで躱す。連続して打ち込まれる斬撃を、反撃なんて狙わず、避ける事だけを考えて何とか全て凌ぎ切る。

 回避に専念したのは、アルテューヌの動きを見る為。能力が向上している事は、最初の一撃で分かっていたけど、もっとよく把握する為に、それが今のわたしじゃ対応しようがないものなのかどうかを見定める為に、避けて、躱して、間近で見た。そして、決して斬り上げを後方宙返りで避けた直後、わたしは反撃に打って出る。

 

「今度は、こっちの番よッ!」

 

 上下逆さまになった状態から、手首の捻りを利用して大太刀を投げる。それ自体は軽く躱されたけど、着地と同時に地面を蹴る事で、その回避先へと勢い良く飛び蹴り。素早く後方へ跳ぶ事で飛び蹴りも躱すアルテューヌに対し、今度はエクスブレイドを打ち込む。通常よりも小さい、普通の大剣サイズに留める事で精製にかかる時間を短縮して、アルテューヌの次の動きを潰す。

 アルテューヌがエクスブレイドを叩き落としている隙に、わたしは接近。上手く回避先を誘導した事で、進路上に刺さっている状態となっていた大太刀を飛びながら回収し、勢いそのままに袈裟懸けを仕掛ける。

 

「はぁああぁぁぁぁッ!」

 

 大太刀…刀というのは、引き斬るもの。そこに技術が伴わなくちゃ、本来の切れ味を、強みを発揮出来ないもの。だけど今は、力任せに叩き付ける。とにかく力を、重さを最優先にした一撃をぶつけて、今のわたしの力が通用するかを確かめる。

 まだ、ネクストフォームを使う訳にはいかない。さっきまではそうしようと思っていたけど、今は状況が変わった。向こうが未知の力を使ってきている以上、活動時間に難のあるネクストフォームはまだ出せない。今のままじゃ太刀打ち出来ないなら話は別だけど、多少なりとも食い下がれる状況であれば、もっと相手の能力や強みを把握してから……

 

「……っ…!?」

「隙有りッ!」

「しまッ、きゃあぁぁぁぁっ!」

 

 その時感じた、違和感。わたしの振り出した大太刀と、アルテューヌが防御の為に掲げた大太刀、それぞれの刃を伝ってわたしに流れ込んでくる、何かの感覚。上手く言葉に出来ないけど、それでも『不味い』という事だけは分かる、危険な感触。

 いけない、不味い。本能的にわたしはそう感じた。感じたからこそ、反射的に叩き付ける力を緩めてしまった。そして、アルテューヌにその隙を突かれる。一気に押し返され、姿勢を崩され、フルスイングの斬撃に襲われる。わたしは碌な防御体勢も取れず、大太刀諸共跳ね飛ばされる。

 

「喰らいなさいッ!」

 

 さっき以上に動き出しの速い追撃。さっき以上に崩れたわたしの体勢。わたし目掛けて大太刀が突き出され、瞬きするよりも早く刺突が迫る。何とかわたしは、仰向け気味の身体をほんの少しだけ下にずらし…直後、お腹から胸元に掛けて鋭い痛みが走る。アルテューヌの刺突が、真っ直ぐに斬り裂く。

 

「はぁ…はぁ…く……ッ!」

 

 刺突で裂いた状態から、更に大太刀を振り下ろし捌こうとしたアルテューヌ。その寸前に拳を突き出して、アルテューヌを退ける事が出来たわたし。着地し、姿勢を整えて…けど、今のは痛い。重傷ではないけど、まだ動けるけど…お腹の中程から首の一歩手前までを、プロセッサ毎斬られた。痛みと血の量からして、浅い傷でも…ない。

 

「偽者でもない、自分と同じ姿をした相手を…同じわたしを斬るっていうのは、あまり気分のいいものじゃないわね」

「これまで散々わたしを嵌めておいて、よく言うわ…」

 

 一目瞭然な、明白なダメージ。加えてわたしは数度地面に叩き付けられ、腹部を諸に蹴られてもいる。元々の消耗と合わせて、結構不味い蓄積をしている。それに、さっきの感覚は…恐らくネプギア達が天界の街で感じたのと、同質のもの。これもわたしにとっては、無視出来ない。

 対するアルテューヌは、まだほぼ無傷。ここまで打ち合って、体力は消耗してるんでしょうけど、まず間違いなくわたしより余裕がある。それは、大太刀を振って刃の血糊を落とす様子からも、見て取れる。

 

「次は外さないわ」

「わたしは、やられないわよ」

 

 鋭い視線と、刃の斬っ先を向けられる。募る痛みを頭から振り払い、わたしもまた得物を構える。

 やられない、とは言ったものの、旗色は悪い。ネクストフォームなら…とも思うけど、流れ込むあの感覚と、ネクストフォームの相性が分からない。シェアエナジーの消耗が激しいネクストフォームは、不足回避の為に流れ込んでくる力を積極的に取り込んでしまう…なんて事があるんじゃないかと、不安がちらついて仕方がない。そして、わたしがネクストフォームへの踏み切りを躊躇う中…「あぁ、そういえば」と、不意に思い出したような声を上げたネプテューヌは言う。

 

「折角だから名乗っておこうかしらね」

「名乗る…?」

「姿には、それに合った名前が必要。そして名前は、知られていなくちゃ意味がない…そうでしょう?」

 

 そう言って、構えを解いたアルテューヌは軽く髪を掻き上げる。そうしてアルテューヌは、わたしを見据え…告げる。

 

「これは混沌の力。本来存在し得ないわたしの、仮初の姿を形作った力。故にこの姿は、今のわたしは──パープルハート・カオスよ」

 




今回のパロディ解説

・「〜〜隕石から作った〜〜刺されたの?」
ジョジョシリーズに登場するアイテムの一つ、(スタンドの)矢の事。紙(ページ)への封印やそこから現れる…というのは、意識した訳ではなかったのですが何ともエニグマっぽいですね。

・「〜〜どこぞの血に飢えた狼〜〜」
デュエマシリーズに登場するキャラの一人、佐々木コジローの事。直前でアルテューヌが言った、勝利への飢え方…というのも、彼の代名詞的な台詞のパロディです。

・「〜〜RPGの定番みたいに第二形態にでもなると思った?」
RPGにおけるボスキャラ、特にラスボスやそれに近いボスが持つ場合が多い要素の一つの事。ネプテューヌシリーズも、マジェコンヌがこれをやる事が多いですね。
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